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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122587
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 3/70 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
E06B3/70 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030208
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀江 ユカリ
(72)【発明者】
【氏名】松村 心互
【テーマコード(参考)】
2E016
【Fターム(参考)】
2E016HA10
2E016JA11
2E016KA05
2E016LA01
2E016LC01
2E016MA01
2E016PA07
2E016QA15
(57)【要約】
【課題】扉体に対して見込み方向に並んで設けられるパネルを確実に支持することができる建具を提供する。
【解決手段】建具10は、扉体18、および該扉体18に対して見込み方向に並ぶ位置にあり固定具20によって固定されるパネル26を備える。固定具20はパネル26の下端および上端の少なくとも一方を支持するものであり、扉体18の表面材22に対してリベット44で固定される固定板36と、固定板36+からパネル26の方向に屈曲してパネル26の端部を支持する支持片38と、固定板36から扉体18の方向に屈曲して該扉体18に形成された第1切欠52に挿入された第1係合片40とを有する。第1係合片40は、正面視で扉体18の表面材22と重なるように形成されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉体、および該扉体に対して見込み方向に並ぶ位置にあり固定具によって固定されるパネルを備える建具であって、
前記固定具は、
前記扉体の表面に対して所定の固定箇所で固定される固定板と、
前記固定板から前記パネルの方向に突出して前記パネルの端部を直接または間接的に支持する支持片と、
前記固定板から前記扉体の方向に突出して該扉体に形成された切欠に挿入される係合片と、
を有し前記パネルの下端および上端の少なくとも一方を支持する
ことを特徴とする建具。
【請求項2】
前記係合片は、前記切欠に挿入された部分が正面視で前記扉体と重なるように形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記係合片における少なくとも先端部は、側面視で前記固定板と前記扉体との接触面の外周側端部を中心とした仮想円が前記扉体と交わるように形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項4】
前記係合片は、前記固定板における内周側部分の両端から屈曲して設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項5】
前記係合片は前記固定板の両側方の端部が屈曲して形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項6】
前記係合片は前記切欠の下縁に接触している
ことを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項7】
前記固定具は複数設けられ、前記パネルの下端および上端以外に少なくとも1つは前記パネルの側方部を支持する
ことを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項8】
前記支持片と前記パネルの端部とを接続するアタッチメントを有し、
前記アタッチメントは、前記支持片の表裏を挟持する挟持部によって前記固定具と固定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項9】
前記アタッチメントは押し出し形材で形成されており、4本で前記パネルの四周を囲い、
前記パネルの隅部で2つの前記アタッチメントが突き合わされる箇所では、L字形状のアングル材が2つの前記アタッチメントにおけるそれぞれの前記挟持部に挿入されている
ことを特徴とする請求項8に記載の建具。
【請求項10】
前記挟持部は前記パネルの端部より内周側の箇所から前記扉体の方向に突出している
ことを特徴とする請求項10に記載の建具。
【請求項11】
前記アタッチメントと前記扉体との対向面および前記挟持部で三方が囲われた凹部に、前記パネルと前記扉体との対向面にそれぞれ当接して外周方向に開口した補強材が設けられている
ことを特徴とする請求項10に記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉体、および該扉体に対して見込み方向に並んで設けられるパネルを有する建具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるように扉体は見込み方向に並んでパネルを設ける場合がある。このようなパネルは意匠上の効果がある。特許文献1では、固定具を介して扉体とパネルとを固定している。固定具は扉体の表面に当接されて取り付けられる板部と、該板部の下端から水平に延出してパネルの下端を支持する載置部とを有するL字形状となっている。板部は扉体に対してビス留めされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-122374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、パネルを厚くすると意匠上の効果向上が期待されるが、一方で重量増となり、ビス留め部には大きな鉛直方向の荷重が加わる。また、意匠上の効果を向上させるためにパネルと扉体との間に隙間を設けると、その隙間距離に応じてビス留め部にモーメント荷重が作用する。さらに、扉体の開閉に伴う変位によりビス留め部にはパネルの重量に応じた慣性力が作用する。これらの荷重に耐えるためにはビス留め部のビスを大径化し、またはビス本数を増やさなければならず実用的でない。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、扉体に対して見込み方向に並んで設けられるパネルを確実に支持することができる建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる建具は、扉体、および該扉体に対して見込み方向に並ぶ位置にあり固定具によって固定されるパネルを備える建具であって、前記固定具は、前記扉体の表面に対して所定の固定箇所で固定される固定板と、前記固定板から前記パネルの方向に突出して前記パネルの端部を直接または間接的に支持する支持片と、前記固定板から前記扉体の方向に突出して該扉体に形成された切欠に挿入される係合片と、を有し前記パネルの下端および上端の少なくとも一方を支持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、固定具は固定板の固定箇所だけでなく扉体の切欠に挿入された係合片が各種の荷重を分担することができる。したがって、扉体に対して見込み方向に並んで設けられるパネルを確実に支持することができる。また、固定箇所の荷重負担が軽減する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態にかかる建具を示す正面図である。
図2図1におけるII~II線視による縦断面図である。
図3図1におけるIII~III線視による横断面図である。
図4】パネルの分解斜視図である。
図5】固定具の斜視図である。
図6】扉体に固定された状態の固定具の斜視図である。
図7】パネルの下端に適用された固定具とその周辺を示す縦断面図である。
図8】パネルの下端に適用された固定具とその周辺を示す正面図である。
図9】パネルの上端に適用された固定具とその周辺を示す縦断面図である。
図10】パネルの右端に適用された固定具とその周辺を示す正面図である。
図11】第1変形例にかかる固定具の斜視図である。
図12】パネルの下端に適用された第1変形例にかかる固定具とその周辺を示す縦断面図である。
図13】第2変形例にかかる固定具の斜視図である。
図14】パネルの下端に適用された第2変形例にかかる固定具とその周辺を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明にかかる建具の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
図1は、本発明の実施形態にかかる建具10の正面図である。図2は、図1におけるII~II線視による縦断面図である。図3は、図1におけるIII~III線視による横断面図である。
【0011】
建具10は、例えばドアであり枠体12に対して左側のヒンジ14によって回動可能であり、戸先である右側部分が開閉する。扉体18の右側部分にはハンドル16がある。建具10は引き戸などであってもよい。
【0012】
建具10は、扉体18、および該扉体18に対して見込み方向に並ぶ位置にあり複数の固定具20によって固定されるパネル26を備える。固定具20はパネル26の下端に2つ、上端に2つ、両側方に2つずつがそれぞれ適度な間隔をもってバランスよく設けられている。これらの固定具20は全て同じものであるが、説明の便宜上下端の2つの固定具20Dとも呼び、上端の2つを固定具20Uとも呼び、両側方のものを固定具20Sとも呼ぶ。固定具20についてはさらに後述する。
【0013】
以下の説明では、扉体18の面直方向(図1の紙面奥行方向)を見込み方向という。見込み方向に沿った面については見込み面と呼ぶ。また、上下方向に沿って延在する部材について見込み方向に直交した水平に沿う方向を見付け方向と呼ぶ。さらに、水平方向に沿って延在する部材については見込み方向に直交した上下に沿う方向を見付け方向と呼ぶ。見付け方向に沿った面については、見付け面と呼ぶ。さらにまた、扉体18を基準としてパネル26が設けられている側を第1空間、その反対側を第2空間とも呼ぶ。つまり扉体18は第1空間と第2空間とを仕切っている。扉体18が玄関ドアである場合には、例えば第1空間が室外で第2空間が室内に相当する。
【0014】
扉体18は第1空間側および第2空間側に表面材22を備え、その間に断熱材24が設けられている。表面材22は、例えば金属板であり適度な強度を有するが、断熱材24はウレタンなどであって表面材22と比較して低強度となっている。扉体18は無垢材などであってもよい。扉体18が無垢材である場合には、後述する各切欠は貫通孔ではなく、やや深い有底穴とするとよい。
【0015】
本実施例におけるパネル26は、扉体18からみて第1空間側で、該扉体18の略中央に設けられ、該扉体18の1/3程度の幅であり、上下に長く延在しているが、大きさ、位置および数はこれに限られない。パネル26はいわゆる化粧板の一種であり、例えば扉体18とは異なる色、模様、質感とすることで単調でない意匠が得られる。また、後述するように扉体18とパネル26との間には隙間50(図7参照)が形成されており立体感が得られるようになっている。さらに、パネル26は適度に厚く形成されており重厚感が得られるようになっているが、実際にある程度の重量がある。
【0016】
図4は、パネル26の分解斜視図である。図4に示すようにパネル26の四周はアタッチメント28で囲われている。アタッチメント28は一種の框材であり、アルミニウム合金等の押し出し形材で形成されていて長手方向に略一様の断面を有している。アタッチメント28は、4本でパネル26の四周を囲っている。
【0017】
アタッチメント28は内周方向に開口してパネル26の端部を保持するコ字形状のパネル保持部28a(図7参照)と、該パネル26の端部より内周側の箇所から扉体18の方向に突出している挟持部28b(図7参照)とを有する。パネル保持部28aはシール32を介してパネル26の端部を保持する。挟持部28bは外周側の長片28baと内周側の短片28bbとを有し、その間に挟持隙間28bcが形成されている。長片28baには孔28baa(図7参照)が形成されている。短片28bbの先端はやや傾斜した屈曲部28bba(図7参照)が形成されている。
【0018】
パネル26の四隅部で2つのアタッチメント28が突き合わされる箇所では、L字形状のアングル材30が2つのアタッチメント28におけるそれぞれの挟持部28bの挟持隙間28bcに挿入されている。アングル材30と挟持部28bとはネジ34によって固定される。挟持部28bは後述するようにパネル26と固定具20との間を中継する中継部としての機能があるが、このようにアングル材30が挿入されることで4本のアングル材30を框組みする機能を兼ねている。
【0019】
図5は、固定具20の斜視図である。図6は、扉体18に固定された状態の固定具20の斜視図である。固定具20は4つの向きに設けられるが(図1参照)、図5図6に基づく説明では、便宜上、図示の状態を基準として内周~外周に沿う方向を高さとし、それに直交する方向を幅とする。固定具20は固定板36、支持片38、2つの第1係合片40、および2つの第2係合片42を備える。固定具20は、例えば素材を切断、穿孔、折曲げなどの加工をして得られる小さい部品である。固定具20は、例えばスチールなどの金属板であって適度な強度を有する。
【0020】
固定板36は、扉体18の中央の固定箇所に形成されたリベット孔43でリベット(締結具)44により表面材22に対して固定される。固定板36の固定手段はネジ(締結具)であってもよい。固定板36は、扉体18に対して基本的に機械的接合で固定されている。つまり、溶接、ロウ付け、接着など溶融・溶剤によらない締結具による固定であって、固定作業が容易であってかつ適度に高強度である。ただし、各固定具20においてそれぞれ1つのリベット44だけでは、パネル26を支持するのに強度不足の懸念があるため、後述する対策が採られている。
【0021】
支持片38は、固定板36の外周側端部から傾斜板46を介して第1空間側に屈曲している。支持片38はアタッチメント28を介してパネル26の端部を間接的に支持する。支持片38は、挟持部28b(図7参照)の挟持隙間28bcに挿入され、中央のネジ孔38aを通るネジ48によってアタッチメント28と固定される。挟持部28bはパネル26の端部より内周側の箇所から扉体18の方向に突出しているため、固定具20は視認されにくくなり、パネル26が扉体18から浮いているよう見え、好適な意匠となる。固定板36はアタッチメント28を介してパネル26を支持することから、扉体18とパネル26との間には隙間50が形成される。ただし、設計条件によってはアタッチメント28を介さずに支持片38で直接的にパネル26を支持するようにしてもよい。
【0022】
固定板36と支持片38との間には傾斜板46が設けられていることから、支持片38の端部と表面材22との間にはわずかな隙間が確保され、支持片38が視認されにくくなっている。ただし、設計条件によっては傾斜板46を省略して固定板36と支持片38とが直角になっていてもよい。傾斜板46は平板状に限らず円弧状であってもよい。
【0023】
第1係合片40は、固定板36における内周側部分の両端から屈曲して設けられている。つまり、第1係合片40は2つある。第1係合片40は適度な幅を有しており、本実施例では1つあたり固定板36の1/5程度の幅である。また、第1係合片40の長さは固定板36の高さの1/3程度である。第1係合片40は固定板36における内周側部分にあることから、リベット44による固定箇所よりも内周側になる。第1係合片40は見込み方向に対して傾斜しており、固定具20においては固定板36と第1係合片40との為す角度は鈍角となっている。つまり、第1係合片40は、固定板36の内周側端部から第2空間側でかつ内周側に向かって屈曲している。
【0024】
第2係合片42は、固定板36における両側方部分が第2空間側に屈曲して設けられている。つまり第2係合片42は2つある。第2係合片42は比較的小さく、本実施例では1つあたり固定板36の1/6程度の高さである。また、第2係合片42の長さは固定板36の高さの1/3程度である。第2係合片42は、リベット44による固定箇所とほぼ同じ高さにある。第2係合片42は見込み方向突出しており、固定板36と第2係合片42との為す角度は直角となっている。
【0025】
第1係合片40および第2係合片42は固定板26両端に設けられておりバランスがよい。特に、固定板36の中央にリベット44があると一層バランスが良い。第1係合片40の数は2つに限らず1または3以上でもよい。第1係合片40が1つの場合、固定板36と同幅であってもよい。
【0026】
図7は、パネル26の下端に適用された固定具20Dとその周辺を示す縦断面図である。図8は、パネル26の下端に適用された固定具20Dとその周辺を示す正面図である。図8では、パネル26およびネジ類を省略するとともにアタッチメント28挟持部28bを仮想線で示している。
【0027】
図6図8に示すように、これらの図で示す範囲内で扉体18の表面材22には矩形の第1切欠52が左右に並んで2つ形成され、さらに矩形の第2切欠54が左右に並んで形成されている。第1切欠52は位置および形状が第1係合片40に対応しており、第2切欠54は位置および形状が第2係合片42に対応している。第1係合片40は第1切欠52に対して斜めに挿入され、第2係合片42は第2切欠54に対して真っすぐ挿入されている。
【0028】
第1係合片40は第1切欠52の外周縁52a、内周縁52b、一方の側縁52cおよび他方の側縁52dに接している。第2係合片42は第2切欠54の外周縁54a、内周縁54b一方の側縁54cおよび他方の側縁54dに接している。この場合、外周縁52a,54aは下縁に相当し、一方の側縁52c,54cが左縁に相当し、他方の側縁52d、54dが右縁に相当する。
【0029】
2つの第1係合片40はそれぞれ下縁に相当する外周縁52aに接し、2つの第2係合片42はそれぞれ下縁に相当する外周縁54aに接していることから、リベット44とともにパネル26の自重による静的な下向き荷重を支える。したがって、リベット44に作用する剪断荷重が低減されるため、該リベット44を適度に小径化することができるとともに基本的に1つの固定具20に1本で足りる。ただし、設計条件によっては1つの固定具20に複数のリベット44を適用してもよい。
【0030】
第1係合片40は第1切欠52に対して上斜めに挿入されていることから荷重を受けにくい向きとなっているが、適度な横幅があって外周縁52aに対して線状に接し荷重W1を相応に負担することができる。第2係合片42は横幅が狭く外周縁54aに対して点状に接するが、第2切欠54に対して真っすぐ挿入されていて荷重W2を確実に負担することができる。
【0031】
第1係合片40の上面40a(少なくとも先端部40aa)は、側面視で固定板36と表面材22との接触面の外周側端部36aを中心とした仮想円Cが表面材22と交わるように形成されている。パネル26は比較的重量があり、しかも扉体18との間に隙間50が形成されていることから、固定具20Dには外周側端部36aを中心としたモーメント荷重Mが加わるが、第1係合片40は内周縁52bに内側から接しており、しかもモーメント荷重Mは仮想円Cに沿って表面材22と交わると想定されることから該モーメント荷重Mを支持することができる。したがって、リベット44に加わる引張荷重を低減させることができる。
【0032】
第1係合片40は、正面視で表面材22の裏面で領域Aと重なるように形成されている。図8では領域Aをドット地で示す。パネル26は比較的重量があることから、扉体18を開いたときに固定具20Uには第1空間側に向かって慣性による大きな動的荷重Fxが作用するが、第1係合片40は内周縁52bに内側から接しており、しかも第1係合片40が領域Aで表面材22と重なるように形成されていることから、該動的荷重Fxを支持することができる。したがって、リベット44に加わる引張荷重を低減させることができる。
【0033】
仮に、扉体18が引戸などである場合にはスライドしたときに固定具20Uには左右方向に慣性による大きな動的荷重Fyが作用する。図8では動的荷重Fyが左向きに作用するものとして図示する。第1係合片40は側縁52cに接しており動的荷重Fyの分力Fyを支持することができ、第2係合片42は側縁52cにしていることから動的荷重Fyの分力Fyを支持することができる。したがって、リベット44に加わる剪断荷重を低減させることができる。
【0034】
上記では係合片40,42は挿入対象となっている切欠52,54に対して四周全てが接すると説明したが、設計条件により一部に隙間があってもよい。例えば、2つの第2係合片42は、一方が左の側縁54cとの間に隙間があり、他方が右の側縁54bとの間に隙間があってもよい。第2係合片42の一方が側縁54cに接し他方が側縁54cに接していれば後述する動的荷重Fyの分力Fy図8参照)が左右いずれの方向であっても補完支持が可能である。各種荷重は固定具20Dと固定具20Uとの間、または左右の固定具20Sの間で補完指示してもよい。
【0035】
パネル保持部28aと扉体18との対向面28aa,18aおよび挟持部28bで三方が囲われた凹部56には、対向面28aa,18aにそれぞれ当接して外周方向に開口したコ字形状の補強材58が設けられている。補強材58は、例えば金属材である。補強材58の内周壁58aは挟持部28bと接している。内周壁58aには孔58bが形成されている。内周壁58aと挟持部28bとは多少離間していてもよい。ネジ48は段付き型であり、基端側の大径部が孔58b,28baaを通って支持片38に当接し、先端側のネジ部がネジ孔38aに螺合し、さらに最先端部が屈曲部28bbaに当接する。このようなネジ48によれば挟持隙間28bcのクリアランスによるガタつきを防止することができる。また、一部が屈曲部28bbaに当接することにより、短片28bbが負荷の一部を分担することができる。
【0036】
補強材58によればモーメント荷重Mが作用しても対向面28aaと対向面18aとが接近することが防止され、リベット44に加わる負荷を低減させることができる。また、扉体18が閉じられたときに挟持部28bには第2空間側に向かって慣性による大きな動的荷重作用するが、補強材58によって支持されるためネジ34に加わる剪断力を低減させることができる。補強材58は基本的にパネル26の下端に設けられた固定具20Dに適用されるが、設計条件により他の固定具20U,20Sに適用してもよい。
【0037】
図9は、パネル26の上端に適用された固定具20Uとその周辺を示す縦断面図である。固定具20Uは固定具20Dを上下逆にしてパネル26の上端に適用し、固定具20Dと同様に第1係合片40、第2係合片42が第1切欠52、第2切欠54に挿入される。
【0038】
固定具20Uではパネル26の自重による静的な下向き荷重が固定具20Dとは逆向きに作用する。2つの第1係合片40はそれぞれ下縁に相当する内周縁52bに接し、2つの第2係合片42はそれぞれ下縁に相当する内周縁54bに接していることから、リベット44とともにパネル26の自重による静的な下向き荷重W1,W2を支える。動的荷重Fx,Fyを支持する作用は固定具20Dと同様である。
【0039】
図10は、パネル26の右端に適用された固定具20Sとその周辺を示す正面図である。図10では、パネル26およびネジ類を省略するとともにアタッチメント28および挟持部28bを仮想線で示している。パネル26の左端に適用される固定具20Sは図10に示す状態と左右対称であることから説明を省略する。固定具20Sは固定具20Dを90度回転してパネル26の右端に適用し、固定具20Dと同様に第1係合片40、第2係合片42が第1切欠52、第2切欠54に挿入される。
【0040】
固定具20Sではパネル26の自重による静的な下向き荷重が固定具20Dとは90度異なる向きに作用する。2つの第1係合片40はそれぞれ下縁に相当する側縁52cに接し、2つの第2係合片42はそれぞれ下縁に相当する側縁54cに接していることから、リベット44とともにパネル26の自重による静的な下向き荷重W1,W2を支える。動的荷重Fxを支持する作用は固定具20Dと同様である。
【0041】
扉体18が引戸などである場合には、上記のとおり固定具20Sには左右方向の動的荷重Fyが作用する。図10では動的荷重Fyが左向きに作用するものとして図示する。第1係合片40は内周縁52bに接しており動的荷重Fyの分力Fyを支持することができ、第2係合片42は側縁54cにしていることから動的荷重Fyの分力Fyを支持することができる。したがって、リベット44に加わる剪断荷重を低減させることができる。
【0042】
固定具20Dはパネル26を下支えする位置にあって少なくとも静的な荷重を支持するのに好適である。また、固定具20Uはパネル26を吊り下げる位置にあって少なくとも静的な荷重を支持するのに好適である。つまり、パネル26を支持するのには、固定具20Dおよび固定具20Uの少なくとも一方が設けられているとよい。ただし、パネル26の側方部を支持する固定具20Sが少なくとも1つ設けられているとさらに好適である。
【0043】
このように、本実施の形態に係る建具10では、固定具20は固定板36のリベット44だけでなく切欠52,54に挿入された係合片40,42が各種の荷重を分担することができる。したがって、扉体10に対して見込み方向に並んで設けられるパネル26を確実に支持することができる。また、リベット44の荷重負担が軽減する。
【0044】
(第1変形例)
次に、固定具20の第1変形例にかかる固定具20Aとその適用態様について説明する。以下の変形例で固定具20と同様の部分については同符号を付してその詳細な説明を省略する。図11、は第1変形例にかかる固定具20Aの斜視図である。図12は、パネル26の下端に適用された第1変形例にかかる固定具20Aとその周辺を示す縦断面図である。
【0045】
固定具20Aは固定具20と同様に固定板36、支持片38、傾斜板46を有する。固定具20Aには上記の第2係合片42は設けられていなく、固定具20より簡易構造となっている。表面材22には第2切欠54が形成されていない。
【0046】
固定具20Aは上記の2つの第1係合片40に代えて2つの第1係合片60を有する。第1係合片60は上記の第1係合片40と幅および長さがほぼ同一となっている。第1係合片40は、固定板36の内周側端部から見込み方向に沿って第2空間側に向かって屈曲している。つまり、固定板36と第1係合片60との為す角度は直角となっている。表面材22には第1係合片40に対応した2つの第1切欠62が形成されている。第1係合片60は第1切欠62の外周縁62a、内周縁62b、一方の側縁62cおよび他方の側縁62dに接している。
【0047】
第1係合片60は第1切欠62に対して真っすぐ挿入されていることから荷重W1を受けやすい向きとなっており、しかも適度な横幅があって外周縁62aに対して線状に接し荷重W1を相応に負担することができる。このため第2係合片42がなくてもリベット44にかかる剪断力を相当に軽減することができる。
【0048】
第1係合片60の上面60a(少なくとも先端部60aa)は、側面視で固定板36と表面材22との接触面の外周側端部36aを中心とした仮想円Cが表面材22と交わるように形成されている。固定具20Aには外周側端部36aを中心としたモーメント荷重Mが加わるが、第1係合片60は内周縁62bに接しており、しかもモーメント荷重Mは仮想円Cに沿って表面材22と交わると想定されることから該モーメント荷重Mを支持することができる。したがって、リベット44に加わる引張荷重を低減させることができる。第1係合片60によるFy1の支持作用は上記の第1係合片40と同様である。
【0049】
(第2変形例)
次に、固定具20の第2変形例にかかる固定具20Bとその適用態様について説明する。図13は、第2変形例にかかる固定具20Bの斜視図である。図14は、パネル26の下端に適用された第2変形例にかかる固定具20Bとその周辺を示す縦断面図である。
【0050】
固定具20Bは固定具20と同様に固定板36、支持片38、傾斜板46、2つの第2係合片42、および2つの第2係合片42を有する。表面材22には2つの第2切欠54が形成されている。
【0051】
固定具20Bは上記の2つの第1係合片40に代えて2つの第1係合片64を有する。第1係合片64は上記の第1係合片40と幅および長さがほぼ同一となっている。第1係合片64は、固定板36の内周側端部から見込み方向に対して傾斜している。第1係合片64は、固定板36の内周側端部から第2空間側でかつ外周側に向かって屈曲している。つまり、固定具20Bにおいては固定板36と第1係合片64との為す角度は鋭角となっている。表面材22には第1係合片64に対応した2つの第1切欠66が形成されている。第1係合片64は第1切欠66の外周縁66a、内周縁66b、一方の側縁66cおよび他方の側縁66dに接している。
【0052】
第1係合片64は第1切欠66に対してフックが係合するような態様で挿入されていることから荷重W1を受けやすい向きとなっており、しかも適度な横幅があって外周縁66aに対して線状に接し荷重W1を相応に負担することができ、リベット44にかかる剪断力を相当に軽減することができる。
【0053】
第1係合片64における少なくとも先端部64aは、側面視で固定板36と表面材22との接触面の外周側端部36aを中心とした仮想円Cが表面材22と交わるように形成されている。固定具20Bには外周側端部36aを中心としたモーメント荷重Mが加わるが、第1係合片64は内周縁66bに接しており、しかもモーメント荷重Mは仮想円Cに沿って表面材22と交わると想定されることから該モーメント荷重Mを支持することができる。したがって、リベット44に加わる引張荷重を低減させることができる。第1係合片64によるFx1,Fyの支持作用は上記の第1係合片40と同様である。
【0054】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0055】
本発明にかかる建具は、扉体、および該扉体に対して見込み方向に並ぶ位置にあり固定具によって固定されるパネルを備える建具であって、前記固定具は、前記扉体の表面に対して所定の固定箇所で固定される固定板と、前記固定板から前記パネルの方向に突出して前記パネルの端部を直接または間接的に支持する支持片と、前記固定板から前記扉体の方向に突出して該扉体に形成された切欠に挿入される係合片と、を有し前記パネルの下端および上端の少なくとも一方を支持することを特徴とする。
【0056】
このような構成によれば、固定具は固定板の固定箇所だけでなく扉体の切欠に挿入された係合片が各種の荷重を分担することができる。したがって、扉体に対して見込み方向に並んで設けられるパネルを確実に支持することができる。また、固定箇所の荷重負担が軽減する。
【0057】
本発明にかかる建具は、前記係合片は、前記切欠に挿入された部分が正面視で前記扉体と重なるように形成されていてもよい。これによれば荷重の態様により、係合片が荷重を負担しやすくなる。
【0058】
本発明にかかる建具は、前記係合片における少なくとも先端部は、側面視で前記固定板と前記扉体との接触面の外周側端部を中心とした仮想円が前記扉体と交わるように形成されていてもよい。これにより、係合片がモーメント荷重を負担しやすくなる。
【0059】
本発明にかかる建具は、前記係合片は前記固定箇所よりも内周側の端部が屈曲しており、見込み方向に対して傾斜していてもよい。これによれば荷重の態様により、係合片が荷重を負担しやすくなる。
【0060】
本発明にかかる建具は、前記係合片は、前記固定板における内周側部分の両端から屈曲して設けられていてもよい。内周側部分から屈曲させると適度な幅が得られて荷重を支持しやすい。また、両端部を屈曲させるとバランスがよい。
【0061】
本発明にかかる建具は、前記係合片は前記固定板の両側方の端部が屈曲して形成されていてもよい。このように固定板の両側方部も係合片とすることができる。
【0062】
本発明にかかる建具は、前記係合片は前記切欠の下縁に接触していてもよい。これにより下向き荷重を支持しやすい。
【0063】
本発明にかかる建具は、前記固定具は複数設けられ、前記パネルの下端および上端以外に少なくとも1つは前記パネルの側方部を支持してもよい。パネルの側方部を固定具で支持すると一層確実な支持が可能となる。
【0064】
本発明にかかる建具は、前記固定具は前記固定箇所で前記扉体に対して、締結具による機械的接合で固定されていてもよい。このような締結具による機械的接合は、固定作業が容易であってかつ適度に高強度である。
【0065】
本発明にかかる建具は、前記支持片と前記パネルの端部とを接続するアタッチメントを有し、前記アタッチメントは、前記支持片の表裏を挟持する挟持部によって前記固定具と固定されていてもよい。このようなアタッチメントによればパネルと扉体との間に隙間が形成され立体的な意匠が得られる。
【0066】
本発明にかかる建具は、前記アタッチメントは押し出し形材で形成されており、4本で前記パネルの四周を囲い、前記パネルの隅部で2つの前記アタッチメントが突き合わされる箇所では、L字形状のアングル材が2つの前記アタッチメントにおけるそれぞれの前記挟持部に挿入されていてもよい。これにより挟持部を框組の手段として兼用することができる。
【0067】
本発明にかかる建具は、前記挟持部は前記パネルの端部より内周側の箇所から前記扉体の方向に突出していてもよい。これにより固定具が視認されにくくなり好適な意匠となる。
【0068】
本発明にかかる建具は、前記アタッチメントと前記扉体との対向面および前記挟持部で三方が囲われた凹部に、前記パネルと前記扉体との対向面にそれぞれ当接して外周方向に開口した補強材が設けられていてもよい。これにより、パネルの荷重を一層確実に支持することができる。
【符号の説明】
【0069】
10 建具、18 扉体、18a,28aa 対向面、20,20A,20B,20D,20S,20U 固定具、22 表面材、26 パネル、28 アタッチメント、28a パネル保持部、28b 挟持部、30 アングル材、36 固定板、38 支持片、40 第1係合片、42 第2係合片、44 リベット、46 傾斜板、50 隙間、52 第1切欠、54 第2切欠、56 凹部、58 補強材、60 第1係合片、62 第1切欠、64 第1係合片、66 第1切欠、C 仮想円
図1
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