(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122592
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20240902BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240902BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
H01L29/78 652K
H01L29/78 653A
H01L29/78 658F
H01L29/78 657A
H01L29/78 652P
H01L29/06 301V
H01L29/06 301G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030215
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三村 智博
(72)【発明者】
【氏名】畑 謙佑
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 将伸
(57)【要約】
【課題】閾値電圧が変動すること抑制する。
【解決手段】基板11、ドリフト層13、ベース層14が順に配置され、ベース層14の表層部に形成された不純物領域15を有する半導体基板10と、不純物領域15およびベース層14を貫通してドリフト層13に達するトレンチ16の壁面に形成されたゲート絶縁膜17と、ゲート絶縁膜17上に形成されたゲート電極18と、不純物領域15およびベース層14と電気的に接続される第1電極31と、基板11と電気的に接続される第2電極32と、ゲート電極18と第1電極31との間に配置されてゲート電極18と第1電極31とを絶縁する層間絶縁膜20とを備える。半導体基板10のうちのトレンチ16と接する部分は、ダングリングボンドに窒素、水素、またはリンが結合された終端構造とされ、層間絶縁膜20は、ゲート電極と当接する当接絶縁膜21を含んで構成され、当接絶縁膜21は、堆積膜で構成されるようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレンチゲート構造を有する炭化珪素半導体装置であって、
炭化珪素からなる第1導電型または第2導電型の基板(11)と、前記基板上に形成され、前記基板よりも低不純物濃度とされた第1導電型のドリフト層(13)と、前記ドリフト層上に形成された第2導電型のベース層(14)と、前記ベース層の表層部に形成された第1導電型の不純物領域(15)と、を有する半導体基板(10)と、
前記不純物領域および前記ベース層を貫通して前記ドリフト層に達するトレンチ(16)の壁面に形成されたゲート絶縁膜(17)と、前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極(18)とを有する前記トレンチゲート構造と、
前記不純物領域および前記ベース層と電気的に接続される第1電極(31)と、
前記基板と電気的に接続される第2電極(32)と、
前記ゲート電極と前記第1電極との間に配置されて前記ゲート電極と前記第1電極とを絶縁する層間絶縁膜(20)と、を備え、
前記半導体基板のうちの前記トレンチと接する部分は、ダングリングボンドに窒素、水素、またはリンが結合された終端構造とされており、
前記層間絶縁膜は、前記ゲート電極と当接する当接絶縁膜(21)を含んで構成され、
前記当接絶縁膜は、堆積膜で構成されている炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
前記層間絶縁膜は、前記半導体基板の面方向に対する法線方向において、前記トレンチの開口部よりも外側まで突き出す形状とされている請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
炭化珪素からなる第1導電型または第2導電型の基板(11)と、前記基板上に形成され、前記基板よりも低不純物濃度とされた第1導電型のドリフト層(13)と、前記ドリフト層上に形成された第2導電型のベース層(14)と、前記ベース層の表層部に形成された第1導電型の不純物領域(15)と、を有する半導体基板(10)と、
前記不純物領域および前記ベース層を貫通して前記ドリフト層に達するトレンチ(16)の壁面に形成されたゲート絶縁膜(17)と、前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極(18)とを有するトレンチゲート構造と、
前記不純物領域および前記ベース層と電気的に接続される第1電極(31)と、
前記基板と電気的に接続される第2電極(32)と、
前記ゲート電極と前記第1電極との間に配置されて前記ゲート電極と前記第1電極とを絶縁する層間絶縁膜(20)と、を備え、
前記半導体基板のうちの前記トレンチと接する部分は、ダングリングボンドに窒素、水素、またはリンが結合された終端構造とされており、
前記層間絶縁膜は、前記ゲート電極と当接する当接絶縁膜(21)を含んで構成され、
前記当接絶縁膜は、堆積膜で構成されている炭化珪素半導体装置の製造方法であって、
前記ベース層、前記不純物領域、および前記トレンチが形成された前記半導体基板を用意することと、
前記トレンチの壁面に前記ゲート絶縁膜を配置することと、
前記半導体基板のうちの前記トレンチと接する部分におけるダングリングボンドに窒素、水素、またはリンを結合させて前記終端構造を構成することと、
前記ゲート絶縁膜上に前記ゲート電極を配置することと、
前記ゲート電極上を含む部分に前記層間絶縁膜を配置することと、
前記不純物領域および前記ベース層が露出するように、前記層間絶縁膜をパターニングすることと、を行い、
前記層間絶縁膜を配置することでは、堆積法によって前記当接絶縁膜を配置することを行う炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記層間絶縁膜をパターニングすることでは、前記半導体基板の面方向に対する法線方向において、前記トレンチの開口部よりも外側まで突き出す形状となるように、前記層間絶縁膜をパターニングする請求項3に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記半導体基板を用意することでは、素子部(RS)および温度センス部(RO)を有するものを用意し、
前記トレンチを形成することでは、前記素子部に前記トレンチを形成し、
前記当接絶縁膜を配置することの後、ノンドープポリシリコン(60)を配置することと、前記温度センス部に配置されたノンドープポリシリコンにイオン注入を行って第1導電型領域(52)と第2導電型領域(53)とが接続された温度センス素子(50)を構成することと、前記素子部に配置されたノンドープポリシリコンを前記当接絶縁膜をエッチングストッパとして除去することと、を行う請求項3または4に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレンチゲート構造を有すると共に炭化珪素(以下、SiCともいう)で構成されたSiC半導体装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、トレンチゲート構造を有すると共にSiCで構成されたSiC半導体装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、このSiC半導体装置は、トレンチゲート構造を有するMOSFETが形成されて構成されている。すなわち、SiC半導体装置は、n型の基板と、基板上に配置されるn型のドリフト層と、ドリフト層上に配置されるp型のベース層と、ベース層の表層部に形成されるn型のソース領域とを有している。また、SiC半導体装置は、ソース領域を貫通してドリフト層に達するように形成されたトレンチゲート構造と、ベース層およびソース領域と電気的に接続される第1電極と、基板と接続される第2電極とを有している。
【0003】
SiC半導体装置におけるトレンチゲート構造は、ドリフト層に達するように形成されたトレンチの壁面にゲート絶縁膜が形成され、ゲート絶縁膜上に、ドープトポリシリコンで構成されるゲート電極が埋め込まれることで構成されている。そして、ゲート電極と第1電極との間には、ゲート電極と第1電極とを絶縁するための層間絶縁膜が形成されている。詳しくは、このSiC半導体装置では、ゲート電極を構成するドープトポリシリコンのうちのトレンチの開口部側に位置する部分を熱酸化して層間絶縁膜を構成している。
【0004】
このようなSiC半導体装置では、ゲート電極に閾値電圧以上の電圧が印加されると、ベース層のうちのトレンチと接する部分に反転層が形成され、この反転層を通じて第1電極と第2電極との間に電流が流れるオン状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のようなSiC半導体装置では、界面準位を低下させるため、ベース層のうちのゲート絶縁膜との界面におけるダングリングボンドを窒素、水素、リン等の所定の原子で終端させた終端構造とすることがある。この場合、上記のようにゲート電極を構成するドープトポリシリコンを熱酸化して層間絶縁膜を構成すると、終端構造における窒素が酸素に置き換わる可能性があり、閾値電圧が変動する可能性がある。
【0007】
本発明は上記点に鑑み、閾値電圧が変動すること抑制できるSiC半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための請求項1は、トレンチゲート構造を有するSiC半導体装置であって、SiCからなる第1導電型または第2導電型の基板(11)と、基板上に形成され、基板よりも低不純物濃度とされた第1導電型のドリフト層(13)と、ドリフト層上に形成された第2導電型のベース層(14)と、ベース層の表層部に形成された第1導電型の不純物領域(15)と、を有する半導体基板(10)と、不純物領域およびベース層を貫通してドリフト層に達するトレンチ(16)の壁面に形成されたゲート絶縁膜(17)と、ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極(18)とを有するトレンチゲート構造と、不純物領域およびベース層と電気的に接続される第1電極(31)と、基板と電気的に接続される第2電極(32)と、ゲート電極と第1電極との間に配置されてゲート電極と第1電極とを絶縁する層間絶縁膜(20)と、を備え、半導体基板のうちのトレンチと接する部分は、ダングリングボンドに窒素、水素、またはリンが結合された終端構造とされており、層間絶縁膜は、ゲート電極と当接する当接絶縁膜(21)を含んで構成され、当接絶縁膜は、堆積膜で構成されている。
【0009】
これによれば、当接絶縁膜が堆積膜で構成されているため、当接絶縁膜を酸化した酸化膜等で構成する場合と比較して、終端構造における窒素が酸素に置き換わり難くなり、閾値変動が発生することを抑制できる。
【0010】
請求項3は、請求項1に記載のSiC半導体装置の製造方法に関するものであり、ベース層、不純物領域、およびトレンチが形成された半導体基板を用意することと、トレンチの壁面にゲート絶縁膜を配置することと、半導体基板のうちのトレンチと接する部分におけるダングリングボンドに窒素、水素、またはリンを結合させて終端構造を構成することと、ゲート絶縁膜上にゲート電極を配置することと、ゲート電極上を含む部分に層間絶縁膜を配置することと、不純物領域およびベース層が露出するように、層間絶縁膜をパターニングすることと、を行い、層間絶縁膜を配置することでは、堆積法によって当接絶縁膜を配置することを行う。
【0011】
これによれば、当接絶縁膜を堆積法で配置するため、当接絶縁膜を酸化した酸化膜等で構成する場合と比較して、終端構造における窒素が酸素に置き換わり難くなり、閾値変動が発生することを抑制したSiC半導体装置を製造できる。
【0012】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態におけるSiC半導体装置の断面図である。
【
図2A】
図1に示すSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図2B】
図2Aに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図2C】
図2Bに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図2D】
図2Cに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図2E】
図2Dに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図2F】
図2Eに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図3】第2実施形態におけるSiC半導体装置の断面図である。
【
図4A】
図3に示すSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図4B】
図4Aに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図4C】
図4Bに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図4D】
図4Cに続くiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0015】
(第1実施形態)
第1実施形態のSiC半導体装置について、
図1を参照しつつ説明する。なお、本実施形態では、半導体素子としてのMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistorの略)が形成されたSiC半導体装置を例に挙げて説明する。なお、SiC半導体装置は、ここでは特に図示しないが、素子部、および素子部の周囲に配置される外周部等を有している。そして、
図1に示すMOSFETは、SiC半導体装置のうちの素子部に形成されている。
【0016】
SiC半導体装置は、半導体基板10を用いて構成されている。本実施形態の半導体基板10は、SiCからなるn+型の基板11と、基板11上に配置されたn-型のバッファ層12と、バッファ層12上に配置されたn-型のドリフト層13とを有している。また、半導体基板10は、ドリフト層13上に配置されたp型のベース層14と、ベース層14の表層部に形成されたn+型のソース領域15とを有している。以下、半導体基板10のうちのベース層14側の面を半導体基板10の一面10aとし、半導体基板10のうちの基板11側の面を半導体基板10の他面10bとして説明する。なお、本実施形態では、ソース領域15が不純物領域に相当する。
【0017】
基板11は、例えば、比抵抗が30mΩ・cm以下(例えば、20mΩ・cm)とされ、表面が(0001)Si面とされ、(0001)Si面に対して0.5~5°のオフ角が設けられたものが用いられる。また、基板11は、例えば、n型不純物濃度が5.0×1018~1.0×1020cm-3とされる。なお、本実施形態の基板11は、MOSFETにおけるドレイン層を構成する。
【0018】
バッファ層12は、例えば、n型不純物濃度が1.0×1018~1019cm-3とされている。ドリフト層13は、例えば、n型不純物濃度が1.0×1015~5.0×1016cm-3とされている。
【0019】
ベース層14は、チャネル領域が形成される部分であり、例えば、p型不純物濃度が3.0×1017cm-3程度とされ、厚さが0.5~2μmとされている。ソース領域15は、ドリフト層13よりも高不純物濃度とされ、例えば、表層部におけるn型不純物濃度が2.5×1018~1.0×1019cm-3程度とされ、厚さが0.5~2μmとされている。なお、ドリフト層13、ベース層14およびソース領域15の膜厚等は、任意であり、上記に限定されるものではない。
【0020】
半導体基板10には、一面10a側からベース層14およびソース領域15を貫通してドリフト層13に達するようにトレンチ16が形成されている。そして、このトレンチ16の側面と接するように、上記のベース層14およびソース領域15が配置されている。なお、
図1では、1本のトレンチ16のみを図示しているが、実際のトレンチ16は、複数本が紙面左右方向に等間隔に配置されたストライプ状に形成されている。
【0021】
トレンチ16の壁面には、ゲート絶縁膜17が形成されている。ゲート絶縁膜17の表面には、ドープトポリシリコンにて構成されるゲート電極18が形成されている。本実施形態では、このようにしてトレンチゲート構造が構成されている。なお、ゲート絶縁膜17は、トレンチ16の壁面から半導体基板10の一面10aに渡って形成されている。つまり、ゲート絶縁膜17は、トレンチ16の壁面、および半導体基板10の一面10aにおけるトレンチ16の開口部周辺に成されている。但し、半導体基板10の一面10a上に形成されたゲート絶縁膜17は、ベース層14およびソース領域15を露出させるように形成されている。
【0022】
また、本実施形態のゲート絶縁膜17は、後述するように、CVD(chemical vapor depositionの略)法やPVD(physical vapor depositionの略)法によって形成される。つまり、本実施形態では、ゲート絶縁膜17が堆積膜で構成されている。このため、ソース領域15に接する部分の厚さが、ベース層14と接する部分の厚さに対し1.3倍以内とされている。
【0023】
そして、詳細は図示しないが、半導体基板10のうちのゲート絶縁膜17(すなわち、トレンチ16)との界面におけるダングリングボンドは、界面準位を低下させるための所定の不純物が結合された終端構造とされている。なお、所定の不純物は、窒素、水素、リン等が挙げられ、本実施形態では、窒素でダングリングボンドが終端させられている。
【0024】
ゲート電極18上には、トレンチ16の開口部を閉塞し、ゲート電極18と後述する上部電極31とを絶縁するための層間絶縁膜20が形成されている。本実施形態の層間絶縁膜20は、ゲート電極18と接する下層絶縁膜21と、下層絶縁膜21上に配置された上層絶縁膜22とを有している。下層絶縁膜21は、CVD法やPVD法等の堆積膜で構成され、例えば、酸化膜(SiO2)、窒化膜(SiN)、ノンドープポリシリコン等で構成される。そして、本実施形態では、CVD法およびPVD法が堆積法に相当する。上層絶縁膜22は、BPSG(Boro Phospho Silicate Glassの略)等で構成される。
【0025】
なお、下層絶縁膜21は、酸化膜等の1つの層で構成されていてもよいし、異なる2種類以上のものが積層されて構成されていてもよい。また、下層絶縁膜21は、堆積膜で構成されるため、面内方向における厚さのばらつきを抑制できるように、厚さが40nm以上とされることが好ましい。そして、ここでのノンドープポリシリコンとは、ゲート電極18と後述する上部電極31とを絶縁可能なほど不純物が少ない状態のことを意味しており、製造工程中に含まれ得る誤差程度の不純物が含まれることを除外するものではない。本実施形態では、下層絶縁膜21が当接絶縁膜に相当する。
【0026】
また、本実施形態の層間絶縁膜20は、トレンチ16の開口部を閉塞しつつ、半導体基板10の一面10aにおけるトレンチ16の開口部周辺に形成されたゲート絶縁膜17上に形成されている。言い換えると、層間絶縁膜20は、半導体基板10の一面10aに対する法線方向(以下では、単に法線方向ともいう)において、トレンチ16の開口部より外側に突き出した形状とされている。但し、層間絶縁膜20は、ゲート絶縁膜17と同様に、ベース層14およびソース領域15を露出させるように形成されている。つまり、ゲート絶縁膜17および層間絶縁膜20には、ベース層14およびソース領域15を露出させるようにコンタクトホール23が形成されているといえる。なお、法線方向においてとは、言い換えると、法線方向から視たときということもできるし、ドリフト層13とベース層14との積層方向から視たときということもできる。
【0027】
そして、本実施形態の上層絶縁膜22は、後述する上部電極31の埋込性を向上させるため、壁面が丸められている。
【0028】
半導体基板10の一面10a上には、ゲート電極18と絶縁され、コンタクトホール23を通じてベース層14およびソース領域15と接続されるソース電極としての上部電極31が配置されている。本実施形態では、上部電極31は、例えば、Ni/Al等の複数の金属にて構成されている。そして、複数の金属のうちのn型SiC(すなわち、ソース領域15)を構成する部分と接触する部分は、n型SiCとオーミック接触可能な金属で構成されている。また、複数の金属のうちの少なくともp型SiC(すなわち、ベース層14)と接触する部分は、p型SiCとオーミック接触可能な金属で構成されている。なお、本実施形態では、上部電極31が第1電極に相当する。
【0029】
半導体基板10の他面10b側には、基板11と電気的に接続されるドレイン電極としての下部電極32が形成されている。なお、本実施形態では、下部電極32が第2電極に相当する。本実施形態では、このような構造により、nチャネルタイプの反転型であるトレンチゲート構造のMOSFETが構成されている。そして、このようなMOSFETが複数配置されることで素子部が構成されている。
【0030】
以上が本実施形態におけるSiC半導体装置の構成である。このようなSiC半導体装置は、ゲート電極18に閾値電圧以上のゲート電圧が印加されることにより、ベース層14のうちのトレンチ16と接する部分に反転層が形成されて上部電極31と下部電極32との間に電流が流れるオン状態となる。
【0031】
次に、上記SiC半導体装置の製造方法について、
図2A~
図2Fを参照しつつ説明する。なお、
図2A~
図2Fでは、半導体基板10の他面10b側におけるバッファ層12や基板11等を省略して示している。
【0032】
まず、
図2Aに示されるように、ベース層14やソース領域15等が形成されると共に、トレンチ16が形成された半導体基板10を用意する。
【0033】
続いて、
図2Bに示されるように、CVD法やPVD法により、トレンチ16の壁面にゲート絶縁膜17を形成する。なお、この工程では、ゲート絶縁膜17は、半導体基板10の一面10a上にも形成される。その後、本実施形態では、酸素窒素(NO)雰囲気下で加熱処理を行い、半導体基板10のうちのゲート絶縁膜17との界面におけるダングリングボンドを窒素で終端させる窒素終端化処理を行って終端構造を構成する。言い換えると、ベース層14のうちのゲート絶縁膜17との界面におけるダングリングボンドを窒素で終端させて終端構造を構成する。
【0034】
次に、
図2Cに示されるように、CVD法等により、トレンチ16が埋め込まれるようにドープトポリシリコンを配置し、トレンチ16内にゲート電極18を形成する。また、半導体基板10の一面10a上に形成されたドープトポリシリコンをパターニングし、
図2Cとは別断面にてゲート電極18と接続されるゲート配線を形成しつつ、余分なドープトポリシリコンを除去する。
【0035】
続いて、
図2Dに示されるように、CVD法やPVD法等により、トレンチ16の開口部を閉塞するように、堆積膜で構成される下層絶縁膜21を形成する。この際、下層絶縁膜21をCVD法やPVD法にて形成するため、終端構造における窒素が酸素に置き換わることを抑制できる。
【0036】
次に、
図2Eに示されるように、CVD法等により、上層絶縁膜22を形成する。
【0037】
その後、
図2Fに示されるように、図示しないマスクを用いてドライエッチングを行い、ベース層14およびソース領域15が露出するように、ゲート絶縁膜17、下層絶縁膜21、上層絶縁膜22を同時にパターニングする。具体的には、ゲート絶縁膜17、下層絶縁膜21、上層絶縁膜22を同時にパターニングし、コンタクトホール23が形成された層間絶縁膜20を構成する。この際、上記のように、下層絶縁膜21および上層絶縁膜22にて構成される層間絶縁膜20は、法線方向において、トレンチ16の開口部より外側に突き出した形状となるようにする。その後、加熱処理を行い、上層絶縁膜22の壁面を丸める。なお、この加熱処理においては、終端構造における窒素が酸素に置き換わる可能性がある。しかしながら、本実施形態では、法線方向において、層間絶縁膜20(すなわち、下層絶縁膜21)がトレンチ16の開口部より外側に突き出した形状とされている。このため、加熱処理を行う際に酸素がゲート絶縁膜17と半導体基板10との界面に到達し難くなり、窒素が酸素に置き換わることを抑制できる。なお、窒素終端化処理以降の工程では、窒素終端化処理温度よりも50℃以上低い温度で工程を行うと良い。
【0038】
その後は特に図示しないが、半導体基板10の一面10a側に上部電極31を形成すると共に他面10b側に下部電極32を形成することにより、上記SiC半導体装置が製造される。
【0039】
以上説明した本実施形態によれば、層間絶縁膜20における下層絶縁膜21は、堆積膜で構成されている。このため、下層絶縁膜21を酸化した酸化膜等で構成する場合と比較して、終端構造における窒素が酸素に置き換わり難くなり、閾値変動が発生することを抑制できる。
【0040】
(1)本実施形態では、層間絶縁膜20(すなわち、下層絶縁膜21)は、法線方向においてトレンチ16の開口部より外側に突き出した形状とされている。このため、下層絶縁膜21を形成した後に酸化工程等を行う場合には、法線方向において下層絶縁膜21がトレンチ16の開口部内のみに配置されている場合と比較して、酸素がゲート絶縁膜17と半導体基板10との界面に到達し難くなる。したがって、終端構造における窒素が酸素に置き換わることをさらに抑制できる。そして、下層絶縁膜21によって終端構造における窒素が酸素に置き換わることを抑制できるため、下層絶縁膜21を形成した後に酸化工程を行うこともでき、製造工程の自由度を図ることもできる。
【0041】
(2)本実施形態では、ゲート絶縁膜17は、堆積膜で構成され、ソース領域15に接する部分の厚さが、ベース層14と接する部分の厚さに対し1.3倍以内とされている。このため、例えば、ゲート絶縁膜17を熱酸化で形成する場合と比較して、ゲート絶縁膜17における厚さの比率がばらつくことを抑制できる。すなわち、ソース領域15と接するゲート絶縁膜17の厚さがばらつくことを抑制できる。したがって、閾値電圧が変動することをさらに抑制できる。また、上記のように下層絶縁膜21を配置しているため、下層絶縁膜21を形成した後に酸化工程を行ったとしても、ゲート絶縁膜17が厚くなることも抑制でき、閾値電圧が変動することをさらに抑制できる。
【0042】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、温度センス部および外周部を配置したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0043】
本実施形態のSiC半導体装置は、
図3に示されるように、素子部RS、外周部RG、温度センス部ROを有する構成とされている。素子部RSは、上記第1実施形態で説明したMOSFETが形成されて構成されている。
【0044】
外周部RGは、素子部RSの周囲に配置されており、半導体基板10の一面10a側に、ベース層14と接続されるp型のリサーフ層41が形成されている。また、外周部RGは、半導体基板10の一面10a側であって、リサーフ層41を挟んでベース層14と反対側に、p型のガードリング42が形成されている。ガードリング42は、素子部RSを略囲むように形成されており、例えば、法線方向において、四隅が丸められた四角枠状や円環状等とされている。
【0045】
温度センス部ROは、温度センス素子50が形成されている。本実施形態の温度センス素子50は、ノンドープポリシリコンに不純物がドープされたpnダイオードで構成されている。具体的には、温度センス部ROでは、半導体基板10の一面10aに、絶縁膜51および下層絶縁膜21が配置されている。そして、温度センス素子50は、下層絶縁膜21上に、n型不純物がドープされたn型領域52と、p型不純物がドープされたp型領域53とがpn接合を構成するように配置されたpnダイオードで構成されている。なお、絶縁膜51は、ゲート絶縁膜17を配置する際に半導体基板10の一面10a上に形成された部分を用いて構成されている。
【0046】
以上が本実施形態におけるSiC半導体装置の構成である。次に、このようなSiC半導体装置の製造方法について、
図4A~
図4Dを参照しつつ説明する。
【0047】
まず、
図4Aに示されるように、素子部RSにベース層14やソース領域15等が形成されると共にトレンチ16が形成され、外周部RGにリサーフ層41やガードリング42等が形成された半導体基板10を用意する。
【0048】
続いて、
図4Bに示されるように、
図2B、
図2Cと同様の工程を行い、ゲート絶縁膜17を形成して終端化処理を行い、その後にゲート電極18を形成する。なお、本実施形態では、温度センス部ROに形成されたゲート絶縁膜17にて絶縁膜51が構成されている。
【0049】
次に、
図4Cに示されるように、
図2Dと同様の工程を行い、下層絶縁膜21を配置する。そして、下層絶縁膜21上に、ノンドープポリシリコン60を配置する。
【0050】
続いて、
図4Dに示されるように、図示しないマスクを配置し、温度センス部ROに配置されたノンドープポリシリコン60に、n型不純物をイオン注入してn型領域52を構成すると共に、p型不純物をイオン注入してp型領域53を構成する。なお、p型不純物およびn型不純物をイオン注入する前に、ノンドープポリシリコン60の結晶性を向上させるため、ノンドープポリシリコン60における半導体基板10側と反対側の表層部を酸化してもよい。なお、この酸化処理においても、ゲート電極18上に下層絶縁膜21が配置されているため、終端構造における窒素が酸素に置き換わり難くなる。
【0051】
次に、図示しないマスクを配置し、温度センス部ROに、n型領域52およびp型領域53で構成される温度センス素子50が構成されるようにノンドープポリシリコン60をパターニングする。また、素子部RSおよび外周部RGでは、ノンドープポリシリコン60を除去する。この際、下層絶縁膜21をエッチングストッパとして利用できるため、ノンドープポリシリコンのパターニングを容易に行うことができる。
【0052】
その後は特に図示しないが、上記
図2E以降と同様の工程を行う。すなわち、上層絶縁膜22を配置し、素子部RSにおけるベース層14やソース領域15が露出するように、ゲート絶縁膜17、下層絶縁膜21、上層絶縁膜22をパターニングしてコンタクトホール23を形成する。その後、上部電極31および下部電極32等を形成することにより、
図3に示すSiC半導体装置が製造される。
【0053】
以上説明した本実施形態によれば、層間絶縁膜20における下層絶縁膜21が堆積膜で構成されているため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0054】
(1)本実施形態では、ノンドープポリシリコン60を除去する際のエッチングストッパとして下層絶縁膜21を利用できる。このため、ノンドープポリシリコン60のパターニングを容易にできる。
【0055】
(第2実施形態の変形例)
上記第2実施形態の変形例について説明する。上記第2実施形態において、素子部RSにおける下層絶縁膜21がノンドープポリシリコン60を含んで構成されるようにノンドープポリシリコン60をパターニングするようにしてもよい。つまり、下層絶縁膜21は、例えば、酸化膜とノンドープポリシリコン60とが積層されて構成されていてもよい。但し、ノンドープポリシリコン60は、上部電極31と反応して金属シリサイドを形成する可能性がある。このため、上記第2実施形態のように温度センス素子50を構成する場合には、素子部RSにおけるノンドープポリシリコン60を除去する方が好ましい。
【0056】
また、上記第2実施形態における
図4Dの工程にて、ノンドープポリシリコン60の結晶性を向上させるため、ノンドープポリシリコン60における半導体基板10側と反対側の表層部を酸化させた場合には、酸化させた部分のみを除去する工程を行ってもよい。
【0057】
(他の実施形態)
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0058】
例えば、上記各実施形態では、層間絶縁膜20が下層絶縁膜21および上層絶縁膜22を含んで構成される例を説明した。しかしながら、層間絶縁膜20は、上層絶縁膜22を備えない構成としてもよい。
【0059】
また、上記各実施形態では、上層絶縁膜22もCVD法で構成される堆積膜である例について説明したが、上層絶縁膜22は、他の方法で構成された膜であってもよい。
【0060】
さらに、上記各実施形態において、層間絶縁膜20は、法線方向において、トレンチ16の開口部内に位置するように形成されていてもよい。
【0061】
そして、上記各実施形態では、第1導電型をn型、第2導電型をp型としたnチャネルタイプのトレンチゲート構造のMOSFETが形成されている例について説明した。しかしながら、SiC半導体装置は、例えばnチャネルタイプに対して各構成要素の導電型を反転させたpチャネルタイプのトレンチゲート構造のMOSFETが形成されて構成されていてもよい。さらに、SiC半導体装置は、MOSFET以外に、同様の構造のIGBTが形成された構成とされていてもよい。IGBTの場合、上記各実施形態におけるn+型の基板11をp+型のコレクタ層に変更する以外は、上記各実施形態で説明したMOSFETと同様である。
【符号の説明】
【0062】
10 半導体基板
11 基板
13 ドリフト層
14 ベース層
15 ソース領域(不純物領域)
16 トレンチ
17 ゲート絶縁膜
18 ゲート電極
20 層間絶縁膜
21 下層絶縁膜(当接絶縁膜)
31 上部電極
32 下部電極