(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122593
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】誘電体組成物および電子部品
(51)【国際特許分類】
C04B 35/495 20060101AFI20240902BHJP
H01G 4/12 20060101ALI20240902BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20240902BHJP
H01G 4/10 20060101ALI20240902BHJP
H01B 3/12 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
C04B35/495
H01G4/12 540
H01G4/30 515
H01G4/10
H01G4/30 201L
H01B3/12 335
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030216
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】戸村 勇登
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
5G303
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AE04
5E001AJ02
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC19
5E082BC31
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG27
5E082FG46
5E082GG10
5G303AA01
5G303AB12
5G303AB16
5G303BA06
5G303CA01
5G303CB03
5G303CB06
5G303CB15
5G303CB18
5G303CB21
5G303CB30
5G303CB32
5G303CB33
5G303CB39
5G303CD01
5G303CD04
5G303CD06
5G303CD07
5G303DA04
5G303DA05
5G303DA06
(57)【要約】
【課題】耐湿性および機械的強度に優れた誘電体組成物および電子部品を提供することを目的とする。
【解決手段】主相と、主相とは異なる組成を有する2次相と、を有し、主相の主成分はタングステンブロンズ型構造を有する酸化物であり、2次相の主成分はバリウム、ストロンチウムおよびカルシウムから選択される少なくとも1種、マンガン、ケイ素、ならびに酸素を含む酸化物である誘電体組成物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主相と、前記主相とは異なる組成を有する2次相と、を有し、
前記主相の主成分はタングステンブロンズ型構造を有する酸化物であり、
前記2次相の主成分はバリウム、ストロンチウムおよびカルシウムから選択される少なくとも1種、マンガン、ケイ素、ならびに酸素を含む酸化物である誘電体組成物。
【請求項2】
前記誘電体組成物の断面において、前記2次相が占める面積割合が0.5%以上10%以下である請求項1に記載の誘電体組成物。
【請求項3】
前記誘電体組成物の断面において、前記2次相の平均円相当径が1μm以下である請求項1に記載の誘電体組成物。
【請求項4】
前記2次相における元素換算でのモル比基準による元素組成について、バリウムとストロンチウムとカルシウムとの含有率の和をC(AE)として、マンガンの含有率をC(Mn)として、ケイ素の含有率をC(Si)としたとき、
0.15<C(AE)/C(Mn)<1.5かつ0.2<C(AE)/C(Si)<2を満たす請求項1に記載の誘電体組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の誘電体組成物を備える電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体組成物および電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
キャパシタなどの電子部品に用いられる誘電体組成物は高い誘電特性とともに高い絶縁抵抗を有することが望ましく、タングステンブロンズ型構造を有するセラミック材料はその好例である。
【0003】
一方、誘電体組成物を上述のような電子部品へ適用する際は、優れた誘電特性や絶縁性だけでなく、信頼性も確保する必要があり、機械的強度や耐湿性の向上が課題となる。
【0004】
たとえば、特許文献1では、機械的強度の向上を目的として、主相および2次相の成分としてニオブおよび鉛を含む圧電磁器組成物が開示されている。しかし、環境負荷が大きい鉛の使用は好ましくない。また、耐湿性に関する改善効果は確認できていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、耐湿性および機械的強度に優れた誘電体組成物および電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る誘電体組成物は、主相と、前記主相とは異なる組成を有する2次相と、を有し、
前記主相の主成分はタングステンブロンズ型構造を有する酸化物であり、
前記2次相の主成分はバリウム、ストロンチウムおよびカルシウムから選択される少なくとも1種、マンガン、ケイ素、ならびに酸素を含む酸化物である。
【0008】
本発明に係る誘電体組成物は、耐湿性および機械的強度に優れている。その理由としては必ずしも定かではないが、下記の理由が考えられる。前記2次相は主相粒子の粒界や三重点に形成されやすく、これにより2次相を介して主相粒子同士の結合が強くなるため、誘電体組成物の機械的強度が向上する。また、2次相が水分の侵入を防止するため、誘電体組成物の耐湿性が向上する。
【0009】
前記誘電体組成物の断面において、好ましくは、前記2次相が占める面積割合が0.5%以上10%以下である。
【0010】
これにより、高い誘電率を維持しつつ、耐湿性がより向上する。
【0011】
2次相が占める面積割合(以下では「2次相面積割合」とする)が0.5%以上10%以下の場合は、2次相面積割合が0.5%未満の場合に比べて、主相粒子の粒界や三重点のうち、2次相が形成されている領域が多いことから、2次相の効果が十分に発揮されることにより、耐湿性がより向上すると考えられる。
【0012】
また、2次相面積割合が0.5%以上10%以下の場合は、2次相面積割合が10%を超える場合に比べて、高い誘電率を維持することができる。2次相は主相に比べて誘電率が低いため、2次相面積割合が高くなり過ぎないようにすることにより、誘電体組成物全体として高い誘電率を維持することができると考えられる。
【0013】
前記誘電体組成物の断面において、好ましくは前記2次相の平均円相当径が1μm以下である。
【0014】
2次相が十分に小さいことで、誘電体組成物に荷重が印加されたときの応力が分散し易くなり、機械的強度がより向上すると考えられる。
【0015】
前記2次相における元素換算でのモル比基準による酸素を除いた元素組成について、バリウムとストロンチウムとカルシウムとの含有率の和をC(AE)として、マンガンの含有率をC(Mn)として、ケイ素の含有率をC(Si)としたとき、
好ましくは、0.15<C(AE)/C(Mn)<1.5かつ0.2<C(AE)/C(Si)<2を満たす。
【0016】
C(AE)、C(Mn)およびC(Si)が上記の関係を満たす場合、2次相粒子が主相粒子とより密着しやすくなり、水分の侵入をより抑制するため、耐湿性がより向上する。
【0017】
また、本発明に係る電子部品は、上記の誘電体組成物を含む誘電体層と、電極と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの概略断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す積層セラミックコンデンサの誘電体層の概略拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.積層セラミックコンデンサ
1.1.積層セラミックコンデンサの全体構成
本実施形態に係る電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサ1が
図1に示される。積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層2と、内部電極層3と、が交互に積層された構成の素子本体10を有する。この素子本体10の両端部には、素子本体10の内部で交互に配置された内部電極層3と各々導通する一対の外部電極4が形成してある。素子本体10の形状に特に制限はないが、通常、直方体状とされる。また、素子本体10の寸法にも特に制限はなく、用途に応じて適当な寸法とすればよい。
【0020】
1.2.誘電体層
誘電体層2は、後述する本実施形態に係る誘電体組成物から構成されている。
【0021】
誘電体層2の1層あたりの厚み(層間厚み)は特に限定されず、所望の特性や用途等に応じて設定することができる。通常は、層間厚みは30μm以下であることが好ましく、より好ましくは15μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下である。
【0022】
1.3.内部電極層
本実施形態では、内部電極層3は、各端部が素子本体10の対向する2端面の表面に交互に露出するように積層してある。
【0023】
内部電極層3に含有される導電材としては特に限定されない。導電材として用いられる金属としては、たとえばパラジウム、白金、銀-パラジウム合金、ニッケル、ニッケル系合金、銅、銅系合金等が挙げられる。なお、ニッケル、ニッケル系合金、銅または銅系合金中には、リンおよび/または硫黄等の各種微量成分が0.1質量%程度以下含まれていてもよい。また、内部電極層3は、市販の電極用ペーストを使用して形成してもよい。内部電極層3の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよい。
【0024】
1.4.外部電極
外部電極4に含有される導電材は特に限定されない。たとえばニッケル、銅、スズ、銀、パラジウム、白金、金あるいはこれらの合金、導電性樹脂等公知の導電材を用いればよい。外部電極4の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよい。
【0025】
1.5.誘電体組成物
図2は誘電体層2を構成する誘電体組成物の概略拡大断面図である。
図2に示すように、本実施形態に係る誘電体層2を構成する誘電体組成物は、粒子状の主相22と、主相22とは異なる組成を有する2次相24と、を有する。また、2次相24の存在状態については特に制限されず、粒子状であってもよく、主相22の粒界や三重点に存在していてもよい。2次相24は主相22の粒界や三重点に形成されやすい傾向がある。
【0026】
主相22の主成分はタングステンブロンズ型構造を有する酸化物である。
【0027】
主相22を構成する元素の合計量(mol)に対する主相22の主成分を構成する元素の合計量(mol)の割合は、90mol%以上である。
【0028】
主相22を構成するタングステンブロンズ型構造を有する酸化物としては特に限定されず、たとえばBa2SrCaLa2Zr4Nb3Ta3O30、Ba5Nb4Ta6O30、Ba4Sr2Zr2Ta8O30、Ba3Ca3La2Zr4Nb3Ta3O30、Ba4Ca2Zr2Nb8O30、Ba3Sr3TiZrNb3Ta5O30、Sr5Ta10O30、Sr4La2Ti2Zr2Nb3TaO30、Ca5Nb10O30などが挙げられる。
【0029】
2次相24の主成分はバリウム、ストロンチウムおよびカルシウムから選択される少なくとも1種、マンガン、ケイ素、ならびに酸素を含む酸化物である。
【0030】
2次相24を構成する元素の合計量(mol)に対する2次相24の主成分を構成する元素の合計量(mol)の割合は、90mol%以上である。
【0031】
2次相24における元素換算でのモル比基準による酸素を除いた元素組成について、バリウムの含有率をC(Ba)(単位:mol%)、ストロンチウムの含有率をC(Sr)(単位:mol%)、カルシウムの含有率をC(Ca)(単位:mol%)、バリウムとストロンチウムとカルシウムの含有率の和をC(AE)(単位:mol%)、マンガンの含有率をC(Mn)(単位:mol%)、ケイ素の含有率をC(Si)(単位:mol%)とする。
【0032】
C(Ba)は、好ましくは0~90mol%である。
【0033】
C(Sr)は、好ましくは0~90mol%である。
【0034】
C(Ca)は、好ましくは0~90mol%である。
【0035】
C(AE)は、好ましくは5~90mol%である。
【0036】
C(Mn)は、好ましくは5~90mol%である。
【0037】
C(Si)は、好ましくは5~90mol%である。
【0038】
C(AE)/C(Mn)は、好ましくは、0.15<C(AE)/C(Mn)<1.5を満たし、より好ましくは0.45≦C(AE)/C(Mn)≦1.1を満たす。
【0039】
さらに、C(AE)/C(Si)は、好ましくは0.2<C(AE)/C(Si)<2を満たし、より好ましくは0.45≦C(AE)/C(Si)≦1.1を満たす。
【0040】
誘電体組成物には、主相および2次相を構成する主成分とは別に、副成分として、アルミニウム、マグネシウム、バナジウム、ハフニウム、モリブデン、タングステンおよび希土類元素などが酸素を除いた元素換算で合計で10mol%未満含まれていてもよい。
【0041】
本実施形態に係る誘電体組成物は、実質的にアルカリ金属および鉛を含まないことが好ましい。「アルカリ金属および鉛を実質的に含まない」とは、誘電体組成物に含まれる酸素以外の元素を100mol部としたとき、「アルカリ金属および鉛」の合計が10mol部以下であることであり、好ましくは5mol部以下であることを言う。
【0042】
本実施形態に係る誘電体組成物がアルカリ金属を実質的に含まない場合、焼成時のアルカリ金属の蒸発による、誘電体組成物の組成ずれや、炉の汚染を防ぐことができる。
【0043】
また、危険物質に関する制限令(Restriction of Hazardous Substances Directive(RoHS))などで鉛の使用が規制されているが、本実施形態に係る誘電体組成物は鉛を実質的に含まない。
【0044】
1.5.1.主相および2次相を特定する方法
主相22および2次相24を特定する方法としては、誘電体組成物の任意の断面について、電子顕微鏡または電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)による反射電子像を得て、反射電子像のコントラストの差を利用して、主相22と2次相24とを判別することにより、主相22および2次相24を特定してもよい。
【0045】
また、EPMAを用いてマッピング分析を行うことにより、誘電体組成物の任意の断面について、2次相24を特定してもよい。具体的には、バリウム、ストロンチウム、カルシウム、マンガンおよびケイ素についてマッピング分析を行う。マッピング分析結果から、バリウム、ストロンチウム、およびカルシウムのいずれか1種類以上と、マンガンと、ケイ素とが共通して存在する領域を2次相24として特定してもよい。
【0046】
なお、観察視野は特に限定されないが、5~25μm×5~25μmの領域であってもよく、観察視野数は5以上であり、測定対象とする2次相24の数は5以上であることが好ましい。
【0047】
また、誘電体組成物は等方的な物質であるため、観察対象とする誘電体組成物の断面は、位置や方向を定めない任意の面でよい。本実施形態では、作製した積層セラミックコンデンサ1の積層方向(Z軸方向)に沿った誘電体層10(誘電体組成物)の断面を観察対象としてもよい。
【0048】
1.5.2.主相および2次相における元素組成を測定する方法
主相22および2次相24における元素組成を測定する方法としては特に限定されず、電子顕微鏡と、エネルギー分散分光(EDS)、波長分散分光(WDS)または電子エネルギー損失分光法(EELS)とを組み合わせた方法などが挙げられるが、本実施形態では、EPMAを用いてもよい。具体的には、特定した各々の2次相22に対してEPMAによる点分析を行い、当該2次相24における酸素以外の元素組成を定量し、各2次相24におけるバリウム、ストロンチウム、カルシウム、マンガン、ケイ素のモル濃度を算出して、その平均値を、それぞれC(Ba)、C(Sr)、C(Ca)、C(Mn)、C(Si)としてもよい。
【0049】
また、特定した各々の主相22に対してEPMAによる点分析を行い、当該主相22における元素組成を定量し、各主相22における各元素のモル濃度を算出して、その平均値を算出してもよい。
【0050】
1.5.3.2次相面積割合
誘電体組成物の断面において、2次相面積割合は、好ましくは0.5%以上10%以下である。
【0051】
2次相面積割合の算出方法としては、たとえば観察視野における特定した2次相24の面積を合計して、当該観察視野における2次相24の面積割合を算出し、各観察視野における2次相24の面積割合の平均値を、誘電体組成物の断面における2次相面積割合としてもよい。
【0052】
1.5.4.2次相の平均円相当径
誘電体組成物の断面において、2次相24の平均円相当径は、好ましくは1μm以下である。
【0053】
2次相24の平均円相当径の算出方法としては、たとえば観察視野における特定した各々の2次相24について、その面積から円相当径を算出し、各2次相24の円相当径の平均値を、誘電体組成物の断面における2次相24の平均円相当径としてもよい。
【0054】
<
積層セラミックコンデンサの製造方法>
次に、
図1に示す積層セラミックコンデンサ1の製造方法の一例について説明する。
【0055】
本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1は、従来の積層セラミックコンデンサと同様の公知の方法で製造することができる。公知の方法としては、たとえば、誘電体組成物の原料を含むペーストを用いてグリーンチップを作製し、これを焼成して積層セラミックコンデンサ1を製造する方法が例示される。以下、製造方法について具体的に説明する。
【0056】
まず、誘電体組成物の出発原料を準備する。本実施形態では、当該出発原料は粉末であることが好ましい。誘電体組成物の出発原料として、主相22を構成する複合酸化物の仮焼き粉末と、2次相24を構成する複合酸化物の仮焼き粉末と、を準備する。
【0057】
主相22の出発原料としては、主相22の主成分であるタングステンブロンズ型結晶構造を有する複合酸化物に含まれる各金属の酸化物、または、焼成により当該複合酸化物を構成する成分となる各種化合物を用いることができる。各種化合物としては、たとえば、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物等が例示される。
【0058】
たとえば、2価の金属元素と4価の金属元素と5価の金属元素とが含まれる複合酸化物が主相22を構成する複合酸化物の主成分である場合、2価の金属元素の炭酸塩粉末、4価の金属元素の酸化物粉末、5価の金属元素の酸化物粉末を準備する。なお、各粉末の平均粒子径は、たとえば、0.1~1.0μmの範囲内である。
【0059】
準備した出発原料を所定の割合に秤量した後、ボールミル等を用いて所定の時間、湿式混合を行う。混合粉を乾燥後、大気中において1200℃以下で熱処理を行い、主相22を構成する複合酸化物の仮焼き粉末を得る。
【0060】
2次相24の出発原料としては、主相22の出発原料と同様に、酸化物、各種化合物等を用いることができる。たとえば、バリウムの酸化物または炭酸塩粉末、ストロンチウムの酸化物または炭酸塩粉末、カルシウムの酸化物または炭酸塩粉末、マンガンの酸化物または炭酸塩粉末およびケイ素の酸化物粉末を準備する。比表面積の大きい微粒子を用いて出発原料同士の反応性を高める観点から、出発原料粉末の平均粒子径は250nm以下であることが好ましい。
【0061】
続いて、準備した出発原料を所定の割合に秤量した後、ボールミル等を用いて所定の時間、湿式混合を行う。混合粉末を乾燥後、熱処理を行い、2次相24を構成する複合酸化物の仮焼き粉末を得る。
【0062】
このとき、熱処理の温度が900℃より高温の場合、2次相24を構成する複合酸化物の安定性が向上し、主相22を構成する複合酸化物の仮焼き粉末と混合して焼成した際に、2次相24の成分が主相22に固溶しにくくなるため、2次相24が形成され易くなる。
【0063】
したがって、2次相24を構成する複合酸化物の安定性を高め、主相22を構成する複合酸化物の仮焼き粉末と混合して焼成した際に2次相24として残存させ易くするためには、900℃よりも高温での熱処理が好ましく、より好ましくは、1100~1400℃で1~10時間熱処理を行う。
【0064】
また、後の工程である焼成が還元雰囲気で行われる場合、2次相24を構成する複合酸化物の熱処理を大気中ではなく、焼成時の雰囲気と近しい条件にすることにより、焼成中における2次相24を構成する複合酸化物の安定性が向上し、2次相24の成分が主相22に固溶しにくくなるため、2次相24が形成され易くなる。言い換えると、焼成中における2次相24を構成する複合酸化物の安定性を高め、焼成後に2次相24として残存させるためには、熱処理の雰囲気を焼成時の雰囲気と近しい条件にすることが好ましい。
【0065】
得られた2次相24を構成する複合酸化物の仮焼き粉末をボールミル等を用いて粉砕する。本実施形態では、2次相24を構成する複合酸化物の仮焼き粉末の粉砕条件を変えることで2次相24の粒径を変化させることができる。たとえばボールミルの粉砕時間を変えることで2次相24の粒径を調整することができる。
【0066】
なお、2次相24の粒径を変化させる方法は特に限定されない。たとえば、2次相24を構成する複合酸化物の仮焼き粉末の出発原料を変えることや、2次相24を構成する複合酸化物の仮焼き粉末の熱処理温度を複合酸化物の安定性を損なわない範囲で変えることによっても2次相24の粒径を変化させることができる。
【0067】
得られた主相22を構成する複合酸化物の仮焼き粉末と、2次相24を構成する複合酸化物の仮焼き粉末と、を混合および解砕し、誘電体組成物原料粉末を得る。誘電体組成物原料粉末の平均粒子径は、たとえば、0.5~2.0μmである。
【0068】
続いて、グリーンチップを作製するためのペーストを調製する。得られた誘電体組成物原料粉末と、バインダと、溶剤と、を混練し塗料化して誘電体層用ペーストを調製する。バインダおよび溶剤は、公知のものを用いればよい。また、誘電体層用ペーストは、必要に応じて、可塑剤等の添加物を含んでもよい。
【0069】
内部電極層用ペーストは、上述した導電材の原料と、バインダと、溶剤と、を混練して得られる。バインダおよび溶剤は、公知のものを用いればよい。内部電極層用ペーストは、必要に応じて、共材や可塑剤等の添加物を含んでもよい。
【0070】
外部電極用ペーストは、内部電極層用ペーストと同様にして調製することができる。
【0071】
上記した各ペースト中のバインダおよび溶剤の含有量は特に制限はされず、通常の含有量であればよい。たとえば、バインダは1~5質量%程度、溶剤は10~50質量%程度であればよい。また、各ペースト中には、必要に応じて各種分散剤、可塑剤、誘電体材料、絶縁体材料等から選択される添加物が含有されていてもよい。これらの総含有量は10質量%以下とすることが好ましい。
【0072】
分散剤の種類は任意である。たとえば、界面活性剤型分散剤、高分子型分散剤を用いることができる。可塑剤の種類は任意である。たとえば、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチルを用いることができる。誘電体材料の種類は任意である。たとえば、Ba3ZrNb4O15系、Ca3TiTa4O15系を用いることができる。絶縁体材料の種類は任意である。たとえば、Al2O3、SiO2を用いることができる。
【0073】
得られた各ペーストを用いて、グリーンシートおよび内部電極パターンを形成し、これらを積層してグリーンチップを得る。
【0074】
焼成前に、グリーンチップに脱バインダ処理を施す。脱バインダ処理条件としては、昇温速度を好ましくは5~300℃/時間、保持温度を好ましくは400~800℃、温度保持時間を好ましくは0.5~24時間とする。また、雰囲気は、空気もしくは還元雰囲気とする。また、上記した脱バインダ処理において、脱バインダ処理の雰囲気は加湿してもよい。加湿する方法は任意である。たとえばウェッター等を使用すればよい。この場合、水温は5~75℃程度が好ましい。
【0075】
脱バインダ処理後、グリーンチップの焼成を行い、素子本体10を得る。焼成条件としては、以下のような条件が例示される。焼成温度は、好ましくは1100~1400℃である。焼成温度が1100~1400℃の場合は、焼成温度が1100~1400℃を下回る場合に比べて素子本体10をより緻密にすることができる。焼成温度が1100~1400℃の場合は、焼成温度が1100~1400℃を上回る場合に比べて下記の3つの効果を得ることができる。1つ目は、内部電極層3の異常焼結を抑えることができることから電極の途切れを防ぎ易い。2つ目は、内部電極層3を構成する材料の拡散を抑えることができることから容量変化率を良好に維持することができる。3つ目は、主相22を構成する複合酸化物粒子の粗大化を抑制することができることから、高温負荷寿命を向上させることができる。
【0076】
また、昇温速度は好ましくは7000~20000℃/時間である。昇温速度を上記の範囲内とすることにより、主相22と2次相24との反応を抑制して、焼成後の誘電体組成物(焼結体)において2次相24を維持することが容易となる。また、焼成時の温度保持時間、および、焼成後の冷却速度は任意である。焼成後の主相22粒子の粒度分布を0.5~5.0μmの範囲内に制御し、主相22粒子同士の体積拡散を抑制するために、温度保持時間は好ましくは0.1~1.0時間であり、冷却速度は好ましくは100~500℃/時間である。
【0077】
また、焼成雰囲気としては、加湿したN2とH2との混合ガスを用い、酸素分圧が10-2~10-6Paであることが好ましい。内部電極層3がニッケルを含む場合、酸素分圧が低い状態で焼成を行うことにより、ニッケルの酸化を抑制することができ、導電性を向上させることができる。さらに、ニッケルを主成分とする導電材に対し、アルミニウム、ケイ素、リチウム、クロム、鉄から選択された1種類以上の内部電極用副成分を含有させることで、ニッケルの耐酸化性をより向上させることができ、酸素分圧が高い雰囲気で焼成する場合でも、内部電極層3の導電性を確保することが容易となる。
【0078】
焼成後、得られた素子本体10に対し、必要に応じてアニール処理を行う。アニール処理条件は、公知の条件とすればよく、たとえば、アニール処理時の酸素分圧を焼成時の酸素分圧よりも高い酸素分圧とし、保持温度を1100℃以下とすることが好ましい。
【0079】
また、上記の脱バインダ処理、焼成およびアニール処理は、独立して行ってもよく、連続して行ってもよい。
【0080】
上記のようにして得られた素子本体10の誘電体層2を構成する誘電体組成物は、上述した誘電体組成物である。この素子本体10に端面研磨を施し、外部電極用ペーストを塗布して焼き付けし、外部電極4を形成する。そして、必要に応じて、外部電極4の表面に、めっき等により被覆層を形成する。
【0081】
このようにして、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1が製造される。
【0082】
本実施形態に係る誘電体組成物は、主相22と、主相22とは異なる組成を有する2次相24と、を有し、主相22の主成分はタングステンブロンズ型構造を有する酸化物であり、2次相24の主成分はバリウム、ストロンチウム、カルシウムから選択される少なくとも1種と、マンガンと、ケイ素とを含む酸化物である。本実施形態に係る誘電体組成物は、耐湿性および機械的強度に優れている。その理由としては、下記の理由が考えられる。
【0083】
2次相24は主相粒子22の粒界や三重点に形成されやすく、これにより2次相24を介して主相粒子22同士の結合が強くなるため、誘電体組成物の機械的強度が向上する。また、2次相24が水分の侵入を防止するため、誘電体組成物の耐湿性が向上する。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々異なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0085】
上述した実施形態では、本発明に係る電子部品が積層セラミックコンデンサである場合について説明したが、本発明に係る電子部品は、積層セラミックコンデンサに限定されず、上述した誘電体組成物を有する電子部品であれば何でもよい。
【0086】
たとえば、上述した誘電体組成物から成る単層の誘電体基板に一対の電極が形成された単板型のセラミックコンデンサであってもよい。
【0087】
また、本発明に係る電子部品は、コンデンサの他、フィルター、ダイプレクサ、共振器、発信子、アンテナなどであってもよい。
【実施例0088】
以下、実施例および比較例を用いて、本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0089】
主相22の出発原料として平均粒径1.0μm以下の炭酸バリウム、炭酸ストロンチウム、炭酸カルシウム、水酸化ランタン、酸化チタン、酸化ニオブ、および酸化タンタルの各粉末を準備した。
【0090】
表1に各試料の主相22の組成を識別するための「主相記号」を示している。また、表1の「主相記号」は、表2A、表3A、表4A、表5A、表6Aおよび表7Aに記載の各試料の「主相記号」に対応している。
【0091】
準備した主相22の出発原料の各粉末を表2A、表3A、表4A、表5A、表6Aおよび表7Aに示す組成となるように秤量した。
【0092】
秤量した粉末を、分散媒としてエタノールを用いてボールミルにより24時間湿式混合して混合物を得た。その後、得られた混合物を乾燥して混合原料粉末を得た。その後、大気中で保持温度1200℃、保持時間4時間の条件で熱処理を行い、主相22を構成する複合酸化物の仮焼き粉末を得た。
【0093】
次に、2次相24の出発原料として、平均粒径が50~200nmである、炭酸バリウム、炭酸ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸マンガン、および酸化ケイ素の各粉末を準備した。
【0094】
準備した2次相24の出発原料の粉末を表2A、表3A、表4A、表5A、表6Aおよび表7Aに記載の2次相24の元素組成または表2A、表3A、表4A、表5A、表6Aおよび表7Aに記載の2次相24の元素組成比となるように秤量し、分散媒としてエタノールを用いてボールミルにより24時間湿式混合して混合物を得た。
【0095】
得られた混合物を乾燥して混合原料粉末を得た。
【0096】
得られた混合原料粉末を加湿したN2-H2混合ガス雰囲気(酸素分圧は10-5~10-9Pa)で保持温度1100~1300℃、保持時間4時間の条件で熱処理を行い、2次相24を構成する複合酸化物の仮焼き粉末を得た。
【0097】
2次相24を構成する複合酸化物の仮焼き粉末をボールミルにより粉砕した。2次相24を構成する複合酸化物の仮焼き粉末の粉砕時間を1~24時間の間で変えることで2次相24の粒径を調整した。
【0098】
上記の方法で得られた主相22を構成する複合酸化物の仮焼き粉末および2次相24を構成する複合酸化物の仮焼き粉末を混合および解砕し、誘電体組成物原料粉末を得た。誘電体組成物原料粉末において、主相22を構成する複合酸化物の仮焼き粉末の量に対して混合する2次相24を構成する複合酸化物の仮焼き粉末の量を変えることで、主相22に対する2次相24の存在割合を調整して、2次相面積割合を調整した。
【0099】
誘電体組成物原料粉末1000質量部に対して、トルエン+エタノール溶液(トルエン:エタノール=50:50(質量比))、可塑剤(フタル酸ジオクチル(DOP)(ジェイ・プラス製))および分散剤(マリアリムAKM-0531(日油製))を90:6:4(質量比)で混合した溶剤を700質量部添加し、混合物を得た。
【0100】
得られた混合物を、バスケットミルを用いて2時間分散させ、誘電体層用ペーストを作製した。なお、全ての試料において、誘電体層用ペーストの粘性が約200cpsになるように調整した。具体的には、トルエン+エタノール溶液を微量添加することで粘度の調整を行った。
【0101】
内部電極層3の原料として、平均粒径が0.2μmのニッケル粉末、平均粒径が0.1μm以下のアルミニウムの酸化物粉末、および、平均粒径が0.1μm以下のケイ素の酸化物粉末を準備した。アルミニウムおよびケイ素の合計がニッケルに対して5質量%となるように、これらの粉末を秤量し、混合した。その後、加湿したN2とH2との混合ガス中において1200℃以上で熱処理した。熱処理後の粉末をボールミル等により解砕することで、平均粒径0.20μmの内部電極層3の原料粉末を準備した。
【0102】
準備した内部電極層3の原料粉末100質量部、有機ビヒクル(エチルセルロース樹脂8質量部をブチルカルビトール92質量部に溶解したもの)30質量部、およびブチルカルビトール8質量部を、3本ロールにより混練、ペースト化し、内部電極層用ペーストを得た。
【0103】
作製した誘電体層用ペーストをPETフィルム上に塗布してグリーンシートを形成した。この際に、乾燥後のグリーンシートの厚みが10μmとなるようにした。
【0104】
次いで、内部電極層用ペーストを用いて、所定パターンの内部電極層3をグリーンシート上に印刷した。その後、PETフィルムからグリーンシートを剥離することで、内部電極層3が所定パターンで印刷されたグリーンシートを作製した。
【0105】
次いで、内部電極層3が所定パターンで印刷されたグリーンシートを複数枚積層し、加圧接着することによりグリーン積層体とした。さらに、グリーン積層体を所定の形状に切断することにより、グリーンチップを得た。
【0106】
得られたグリーンチップについて、脱バインダ処理、焼成およびアニール処理を行うことで素子本体10を得た。脱バインダ処理、焼成およびアニール処理の条件は以下に示す通りである。また、脱バインダ処理、焼成およびアニール処理において、雰囲気ガスの加湿にはウェッターを用いた。
【0107】
(脱バインダ処理)
昇温速度:100℃/時間
保持温度:400℃
温度保持時間:8.0時間
雰囲気ガス:加湿したN2とH2との混合ガス
【0108】
(焼成)
昇温速度:10000℃/時間
焼成温度:1200~1400℃
温度保持時間:0.5時間
冷却速度:100℃/時間
雰囲気ガス:加湿したN2とH2との混合ガス
酸素分圧:10-5~10-9Pa
【0109】
(アニール処理)
保持温度:800~1000℃
温度保持時間:2.0時間
昇温、降温速度:200℃/時間
雰囲気ガス:加湿したN2ガス
【0110】
得られた各素子本体10の誘電体層2(誘電体組成物)についてX線回折測定を行った結果、得られたX線回析パターンより、誘電体組成物がタングステンブロンズ型の結晶構造を有していることが確認できた。
【0111】
得られた素子本体10の端面をサンドブラストにて研磨した後、外部電極4としてIn-Ga共晶合金を塗布し、
図1に示す積層セラミックコンデンサ1と同形状の各積層セラミックコンデンサ試料を得た。なお、以下では、積層セラミックコンデンサ試料を「試料」と記載することがある。
【0112】
得られた積層セラミックコンデンサ試料のサイズは、いずれも3.2mm×1.6mm×1.2mmであり、誘電体層2の厚み7μm、内部電極層3の厚み2μm、内部電極層3に挟まれた誘電体層2の数は50層とした。
【0113】
(2次相の有無)
得られた各積層セラミックコンデンサ試料の積層方向(Z軸方向)に沿った誘電体層2(誘電体組成物)の断面を研磨し、10μm×10μmの視野を5視野分に対して、EPMAを用いて、マッピング分析を行った。マッピング分析結果から、バリウム、ストロンチウムおよびカルシウムのいずれか1種類以上と、マンガンとケイ素とが同時に検出された領域を、2次相24として特定した。2次相24の有無を表2A、表3A、表4A、表5A、表6Aまたは表7Aに示す。
【0114】
(2次相の元素組成)
5つの独立した2次相24の各々に対してEPMAによる点分析を行い、当該2次相24における酸素以外の元素組成を定量し、各2次相24におけるバリウム、ストロンチウム、カルシウム、マンガン、ケイ素のモル濃度の平均値を、それぞれC(Ba)、C(Sr)、C(Ca)、C(Mn)、C(Si)とした。結果を表2A、表3A、表4A、表5A、表6Aまたは表7Aに示す。
【0115】
(2次相面積割合)
観察視野において、特定した各々の2次相24の面積を合計して、当該視野における2次相24の面積割合を算出し、各視野における2次相24の面積割合の平均値を、誘電体組成物の断面における2次相面積割合とした。結果を表2B、表3B、表4B、表5B、表6Bまたは表7Bに示す。
【0116】
(2次相粒の平均円相当径)
観察視野において、特定した各々の2次相24について、その面積から円相当径を算出し、各2次相24の円相当径の平均値を、誘電体組成物の断面における2次相24の平均円相当径とした。結果を表2B、表3B、表4B、表5B、表6Bまたは表7B。
【0117】
(機械的強度)
20個の試料に対して、測定器(商品名:5543、Instron社製)を用いて試料の長辺方向の中央部での曲げ強度を測定した。測定時に試験片を支える2点間の治具距離は400μmとし、測定速度は0.5mm/minとし、得られた値の平均値から機械的強度を判定した。具体的には、35MPa以上が「A+」、30MPa以上35MPa未満が「A」、25MPa以上30MPa未満が「B」、20MPa以上25MPa未満が「C」、20MPa未満が「D」と判定した。結果を表2B、表3B、表4B、表5B、表6Bまたは表7Bに示す。
【0118】
(耐湿性)
耐湿性の指標として、PCBTを以下の通り行った。試料をFR4基板(ガラスエポキシ基板)にSn-Ag-Cu半田で実装し、プレッシャークッカー槽に投入し、120℃、湿度95%の雰囲気下で50Vの電圧印加を100時間行う加速耐湿負荷試験を実施した。各試料について、500個ずつ試験を実施し、不良の発生率から耐湿性を判定した。具体的には、0.2%未満が「A+」、0.2%以上1.0%未満が「A」、1.0%以上2.0%未満が「B」、2.0%以上3.0%未満が「C」、3.0%以上が「D」であると判定した。結果を表2B、表3B、表4B、表5B、表6Bまたは表7Bに示す。
【0119】
(比誘電率)
積層セラミックコンデンサ試料に対し、25℃において、デジタルLCRメータ(YHP社製4284A)にて、周波数1kHz、入力信号レベル(測定電圧)1Vrmsの信号を入力し、静電容量を測定した。そして、比誘電率(単位なし)を、誘電体層2の厚みと、有効電極面積と、測定の結果得られた静電容量とに基づき算出した。比誘電率は高い方が好ましい。結果を表2B、表3B、または表5Bに示す。
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
表1~表7Bより、主相の主成分はタングステンブロンズ型構造を有する酸化物であり、2次相の主成分はバリウム、ストロンチウムおよびカルシウムから選択される少なくとも1種、マンガン、ケイ素、ならびに酸素を含む酸化物である場合(試料番号9~50、59~128)は、主相の主成分の組成にかかわらず、耐湿性および機械的強度の判定がB以上であり、耐湿性および機械的強度に優れていることが確認できた。
【0134】
主相の主成分はタングステンブロンズ型構造を有する酸化物であり、2次相の主成分はバリウム、ストロンチウムおよびカルシウムから選択される少なくとも1種、マンガン、ケイ素、ならびに酸素含む酸化物である場合(試料番号9~30、83~94)を比較すると、誘電体組成物の断面において、2次相面積割合が0.5%以上10%以下である場合(試料番号10~29、84~87、90~93)は、耐湿性の判定がA以上であり、機械的強度の判定がB以上であり、なおかつ、同じ主相組成での比較においては2次相面積割合が10%より大きい場合に比べて比誘電率が20~30以上高い値を維持できることが確認できた。
【0135】
主相の主成分はタングステンブロンズ型構造を有する酸化物であり、2次相の主成分はバリウム、ストロンチウムおよびカルシウムから選択される少なくとも1種、マンガン、ケイ素、ならびに酸素を含む酸化物である場合(試料番号9~50、59~128)を比較すると、誘電体組成物の断面において、2次相の平均円相当径が1μm以下である場合(試料番号13~28、96~98、100~128)は、耐湿性および機械的強度の判定がA以上であることが確認できた。
【0136】
主相の主成分はタングステンブロンズ型構造を有する酸化物であり、2次相の主成分はバリウム、ストロンチウムおよびカルシウムから選択される少なくとも1種、マンガン、ケイ素、ならびに酸素を含む酸化物である場合(試料番号9~50、59~128)を比較すると、0.15<C(AE)/C(Mn)<1.5かつ0.2<C(AE)/C(Si)<2を満たす場合(試料番号17~25、105~113、118~126)は、耐湿性がA以上であり、機械的強度がA+であることが確認できた。