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  • 特開-ポリウレタンチップフォーム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122598
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】ポリウレタンチップフォーム
(51)【国際特許分類】
   C08L 75/04 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
C08L75/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030226
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】平川 博丈
(72)【発明者】
【氏名】山田 和久
(72)【発明者】
【氏名】橘 正能
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CK021
4J002CK022
4J002GC00
(57)【要約】
【課題】
反発弾性率を低く抑えつつ、底付き感の改善されたポリウレタンチップフォームを提供する。
【解決手段】
ポリウレタンチップフォーム(100)は、反発弾性率が1%以上15%未満である第一ポリウレタンフォームの小片化物である第一ポリウレタンチップ(10)と、反発弾性率が15%以上60%以下である第二ポリウレタンフォームの小片化物である第二ポリウレタンチップ(20)とが、接着剤で接合されて構成され、ポリウレタンチップフォーム(100)における、第一ポリウレタンチップ(10)の総質量W1と、前記第二ポリウレタンチップ(20)の総質量W2との質量比が、W1:W2=50:50~95:5の範囲に調整される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反発弾性率が1%以上15%未満である第一ポリウレタンフォームの小片化物である第一ポリウレタンチップと、
反発弾性率が15%以上60%以下である第二ポリウレタンフォームの小片化物である第二ポリウレタンチップとが、
接着剤で接合されてなり、
前記第一ポリウレタンチップの総質量W1と、前記第二ポリウレタンチップの総質量W2との質量比が、W1:W2=50:50~95:5の範囲であることを特徴とするポリウレタンチップフォーム。
【請求項2】
前記ポリウレタンチップフォームの密度が70kg/m以上85kg/m以下であり、
当該ポリウレタンチップフォームの反発弾性率が25%以下である請求項1に記載のポリウレタンチップフォーム。
【請求項3】
前記ポリウレタンチップフォームの厚みが20mm以上50mm以下である請求項1または2に記載のポリウレタンチップフォーム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低反発の軟質ポリウレタンフォームからなるポリウレタンチップを含むポリウレタンチップフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
低反発性の軟質ポリウレタンフォームは、反発弾性率が低く体圧分散性が良好であるため、枕、マットレス、敷き寝具、ソファー、または椅子の座面等の様々な需要がある。低反発ウレタンフォームは、一般的にJIS K6400-3(2011)に基づき測定された反発弾性率(%)が15%未満の軟質ポリウレタンフォームを指す。
【0003】
また従来技術1では、低反発の軟質ポリウレタンフォームの粒状物をバインダーで結合させてなる粒状物成形体も提案されており、低反発の軟質ポリウレタンフォームと同様に低反発性が示されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-306283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら従来の低反発の軟質ポリウレタンフォームや特許文献1に記載される粒状物成形体は、優れた低反発性を示す反面、反発力が小さいため使用者の体重が付加された場合に、フォームの沈み込みが顕著であり当該使用者が床面を感じる、所謂、底付き感が発生する場合があり問題であった。
【0006】
本発明は上述の問題に鑑みてなされたものである。即ち、本発明は、反発弾性率を低く抑えつつ、底付き感の改善されたポリウレタンチップフォームの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のポリウレタンチップフォームは、反発弾性率が1%以上15%未満である第一ポリウレタンフォームの小片化物である第一ポリウレタンチップと、反発弾性率が15%以上60%以下である第二ポリウレタンフォームの小片化物である第二ポリウレタンチップとが、接着剤で接合されてなり、ポリウレタンチップフォームにおける、上記第一ポリウレタンチップの総質量W1と、上記第二ポリウレタンチップの総質量W2との質量比が、W1:W2=50:50~95:5の範囲であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記構成を有する本発明は、適度に低い反発弾性率を示しつつ底付き感が良好に改善されたポリウレタンチップフォームを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施態様であるポリウレタンチップフォームを斜視方向からみた概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明のポリウレタンチップフォームの概要についてまず説明する。
本発明のポリウレタンチップフォームは、反発弾性率が1%以上15%未満である第一ポリウレタンフォームの小片化物である第一ポリウレタンチップと、反発弾性率が15%以上60%以下である第二ポリウレタンフォームの小片化物である第二ポリウレタンチップと、が接着剤で接合されて構成される。かかる本発明のポリウレタンチップフォームにおいて、第一ポリウレタンチップの総質量W1と、第二ポリウレタンチップの総質量W2との質量比は、W1:W2=50:50~95:5の範囲である。本発明に関し、ポリウレタンチップフォームとは、複数のポリウレタンチップが接着剤で接合されて構成された発泡体である。より詳しくは、本発明のポリウレタンチップフォームは、上記第一ポリウレタンチップおよび第二ポリウレタンチップがいずれも複数使用され、これらのポリウレタンチップが混合された状態で、隣り合うポリウレタンチップ同士が接着剤で接合されて構成される。ポリウレタンチップ同士の接合態様は、特に限定されず、第一ポリウレタンチップ同士が接合した箇所、第二ポリウレタンチップ同士が接合した箇所、および第一ポリウレタンチップと第二ポリウレタンチップとが接合した箇所を含んでいてよい。
上述する本発明によれば、反発弾性率を低めに抑えつつ、底付き感が充分に改善されたウレタンフォームを提供することができる。
以下に、本発明のポリウレタンチップフォームの詳細についてさらに説明する。
【0011】
(第一ポリウレタンフォーム、第二ポリウレタンフォーム)
本発明に用いられる第一ポリウレタンフォームは、低反発性の軟質ポリウレタンフォームである。本発明に関し、低反発性の軟質ポリウレタンフォームとは、JIS K6400-3(2011)に基づき測定された反発弾性率(%)が15%未満の軟質ポリウレタンフォームを指す。
また本発明に用いられる第二ポリウレタンフォームは、JIS K6400-3(2011)に基づき測定された反発弾性率(%)が15%以上60%以下の軟質ポリウレタンフォームを指す。
【0012】
本発明に用いられる第一ポリウレタンフォームおよび第二ポリウレタンフォームは、それぞれ、本発明のポリウレタンチップフォーム以外の製品のために製造されたポリウレタンフォームの端材であってもよいし、使用済みのポリウレタンフォームであってもよいし、あるいは本発明のウレタンチップフォームのために製造されたポリウレタンフォームであってもよい。
【0013】
また本発明に用いられる第一ポリウレタンフォームおよび第二ポリウレタンフォームは、公知のポリウレタンフォームの製造方法に倣い上述する反発弾性率の範囲となるよう調整して製造されたものでもよいし、上述する範囲の反発弾性率を示す市販のポリウレタンフォームであってもよい。
【0014】
(第二ポリウレタンフォームの製造方法の一例)
まず第二ポリウレタンフォームの製造方法の一例を説明する。
第二ポリウレタンフォームは、ポリオール成分、ポリイソシアネート成分、発泡剤、触媒を含むポリウレタンフォーム原料を反応させてなる一般的な軟質ポリウレタンフォームの製造方法に倣い、反発弾性率が15%以上60%以下となるよう調整され製造される。以下に、第二ポリウレタンフォームの製造方法の一例についてさらに説明する。
【0015】
<ポリオール成分>
第二ポリウレタンフォームの製造に用いられるポリオール成分は、特に制限はなく、通常の軟質ポリウレタンフォームの原料として使用されるポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、またはポリマーポリオール等である。
上記ポリエーテルポリオールとしては、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、若しくはこれらの変性体、またはグリセロール・プロピレンオキシドポリマー等のグリセリンにアルキレンオキサイドを付加した化合物等が例示される。
上記ポリエステルポリオールとしては、アジピン酸等のポリオールと、プロピレングリコール、グリセリン、またはエチレングリコール等との反応により得られる縮合物、ポリカーボネート系ポリオール、またはラクトン系ポリエステルポリオール等が例示される。
上記ポリマーポリオールとしては、ポリエーテルポリオール中で、アクリロニトリルまたはスチレン等を共重合させてなるポリオールであって、ポリエーテルポリオール中にポリマー微粒子が分散されているものが挙げられる。
【0016】
<ポリイソシアネート成分>
第二ポリウレタンフォームの製造に用いられるポリイソシアネート成分は、上述するポリオール成分と反応してウレタン結合を構成可能な成分である。たとえばポリイソシアネート成分としては、イソシアネート基を2以上有する芳香族系、脂環族系、若しくは脂肪族系等のポリイソシアネート、またはこれらを変性して得られる変性ポリイソシアネートを1種または2種以上選択して使用することができる。具体的には、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート(クルードMDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、若しくはヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等のポリイソシアネート、またこれらのプレポリマー型の変性体、ヌレート変性体、ウレア変性体、若しくはカルボジイミド変性体等が挙げられる。これらのうちでも、発泡安定性に優れるという観点から、TDI、MDI、TDIとMDIの混合物は、本発明のポリイソシアネート成分として、好ましい。
【0017】
上記ポリイソシアネート成分の配合量は、通常、イソシアネートインデックスで表される。イソシアネートインデックスは、ポリイソシアネート成分に含まれるイソシアネート基(-NCO)と、ポリオールに含まれる水酸基(-OH)の当量比に100を乗じることで求められる。かかるイソシアネートインデックスに基づき、ポリオール成分とポリイソシアネート成分の配合比率を決定することができる。
【0018】
<発泡剤>
第二ポリウレタンフォームの製造に用いられる発泡剤は、軟質ポリウレタンフォームの製造に用いられる発泡剤から適宜選択して用いることができ、たとえば水など物理発泡剤が挙げられる。
【0019】
<触媒>
第二ポリウレタンフォームの製造に用いられる触媒は、非低反発性(即ち反発弾性率が15%以上)の軟質ポリウレタンフォームを作製するに適した1種、または2種以上が用いられる。上記触媒としては、たとえばトリエチレンジアミン(TEDA)、トリエチルアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N-メチルモルホリン、ジメチルアミノメチルフェノール、イミダゾール等の3級アミン化合物等のアミン系触媒等が挙げられる。また、スタナスオクトエート等の錫化合物、ニッケルアセチルアセトネート、オクチル酸スズ等のニッケル化合物やスズ化合物等の金属系触媒を用いることもできる。これら触媒としては単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。触媒の添加量は、ポリオール成分100質量部に対して0.3質量部以上1.0質量部以下が好ましい。
【0020】
<整泡剤>
またポリウレタンフォーム製造には、適宜、整泡剤を用いてもよい。整泡剤としては、ポリウレタンフォームの製造に用いられる公知のものを適用でき、例えば、シロキサン-ポリエーテルブロック共重合体やポリアルキレンオキシド-メチルシロキサン共重合体等のシリコーン系整泡剤が好適に用いられる。整泡剤の添加量は、ポリウレタンフォームのセルを均一且つ安定にするために、ポリオール成分100質量部に対して0.5質量部以上1.5質量部以下が好ましい。
【0021】
<他の添加剤>
本実施形態において用いられる上記以外の他の添加剤としては、可塑剤、充填剤、酸化防止剤、相溶化剤、着色剤、安定剤、紫外線吸収剤等の軟質ポリウレタンフォームの製造に際して一般的に使用可能な添加剤を挙げることができる。これらの添加剤の添加量は、本発明の効果を阻害しない範囲内において適宜選択できる。
【0022】
第二ポリウレタンフォームは上述するポリオール成分、イソシアネート成分、発泡剤、触媒および任意で添加されるその他の組成を反応させて、製造される。ただし、本発明に用いられる第二ポリウレタンフォームは、反発弾性率が15%以上60%以下である軟質ポリウレタンフォームであればよく、上述する製造方法に何ら限定されない。
【0023】
(第一ポリウレタンフォームの製造方法の一例)
第一ポリウレタンフォームは、上述する第二ポリウレタンと同様に、ポリオール成分、ポリイソシアネート成分、発泡剤、触媒等を含むポリウレタンフォーム原料を反応させてなる軟質ポリウレタンフォームの製造方法に倣い反発弾性率が15%未満となるよう調整され製造される。第一ポリウレタンフォームの製造方法は、後述する低反発性の調整に関する事項以外、適宜、第二ポリウレタンフォームの製造方法の説明が参照される。
【0024】
<低反発性の調整例>
反発弾性率を15%未満に調整するための手段は特に限定されないが、たとえば、ポリオール成分として、水酸基価50mgKOH/g以上60mgKOH/g以下であるポリオールAと、水酸基価225mgKOH/g以上500mgKOH/g以下であるポリオールBを併用するとよい。
たとえば水酸基価50mgKOH/g以上60mgKOH/g以下であり、かつ数平均分子量が1000以上5000未満の範囲であるポリオールAと、数平均分子量が500以上1000以下の範囲であり水酸基価225mgKOH/g以上500mgKOH/g以下であるポリオールBとを併用することにより、低反発性のポリウレタンフォームを容易に製造することができ好ましい。
【0025】
上述するポリオールAに対するポリオールBの配合比率は、同じか、ポリオールBが少ない範囲で適宜調整されるといい。好ましい低反発性を発揮させるという観点からは、ポリオールA100質量部に対し、ポリオールBが30質量部以上100質量部以下の範囲で含まれることが好ましい。
また所望の低反発性が示される範囲において、ポリオールAおよびポリオールBを含み、さらに異なるポリオール成分が配合されてもよい。
【0026】
尚、上述するポリオールAとポリオールBとを併用する場合、発泡剤として水および液化炭酸ガスを用いてもよい。液化炭酸ガスは、所定の圧力および温度において液状に調整された物理発泡剤であり、たとえばポリオール成分に溶解して用いられる。液化炭酸ガスは、発泡剤である水と比較して発泡力が3割程度であって、相対的に発泡力が弱く、ポリウレタンフォームの反発弾性率を低く抑えること貢献する。
【0027】
また上述するポリオールAとポリオールBとを併用する場合、上述する第二ポリオールの製造に使用可能な触媒と併用し、あるいは当該触媒に替えて、以下のアミン系触媒が使用されてもよい。
即ち、第一ポリオールの製造において使用が推奨されるアミン系触媒とは、化合物内にアミンを含み、ウレタン化反応を促進する化合物を指す。たとえば、アミン系触媒としては、たとえばトリエチレンジアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N',N'-テトラメチルヘキサメチレンジアミンなどの3級アミン類およびそのカルボン酸塩等が挙げられる。アミン系触媒は1種、または2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0028】
上述する第一ポリウレタンフォームの製造方法は、たとえば軟質ポリウレタンフォームの技術が開示される特開2018-197278を参照することができる。
【0029】
<ポリウレタンチップ>
第一ポリウレタンチップおよび第二ポリウレタンチップは、それぞれ第一ポリウレタンフォームおよび第二ポリウレタンフォームの小片化物である。小片化物の製造方法は特に限定されないが、たとえば、ポリウレタンフォームを破砕あるいは裁断して小片化物を作成してもよいし、ウレタンフォームを製造するために用いられる型枠として、複数の小室に区切られた型枠を用意し、小片のウレタンフォームを製造し、これをポリウレタンチップとして用いることも可能である。
本発明に用いられるポリウレタンチップの形状および大きさは特に限定されず、また複数の小片の形状および大きさは揃っていてもよいし、揃っていなくてもよい。たとえば、ポリウレタンチップは、長径が5mm~25mm程度の不定形な小片とすることができる。
【0030】
ポリウレタンチップを得るためにポリウレタンフォームを破砕する方法は特に限定されないが、たとえば、塊状のポリウレタンフォームを回転刃式粉砕装置等により小片化することができる。
【0031】
本発明のポリウレタンチップフォームを構成する第一ポリウレタンチップとして、1種の第一ポリウレタンフォームから形成された小片化物を用いてもよいし、2種以上の第一ポリウレタンフォームそれぞれから形成された小片化物を混合して用いてもよい。
また同様にポリウレタンチップフォームを構成する第二ポリウレタンチップとして、1種の第二ポリウレタンフォームから形成された小片化物を用いてもよいし、2種以上の第二ポリウレタンフォームそれぞれから形成された小片化物を混合して用いてもよい。
所望の物性を調整し易いという観点からは、たとえば第一ポリウレタンチップは、1種の第一ポリウレタンフォームから形成された小片化物を用いることが好ましい。
【0032】
本発明の所期の課題を充分に達成するため、本発明のポリウレタンチップフォームにおいて、第一ポリウレタンチップの総質量W1と、第二ポリウレタンチップの総質量W2との質量比は、W1:W2=50:50~95:5の範囲となるよう調整される。反発弾性率をより低く抑えつつ底付き感も良好に改善されたポリウレタンチップフォームを提供するという観点から上記質量比は、W1:W2=60:40~92:8の範囲であることが好ましく、W1:W2=70:30~90:10の範囲であることがより好ましい。
【0033】
上述のとおり得られた第一ポリウレタンチップと第二ポリウレタンチップとを所定の割合で混合し、さらに接着剤を入れて混合して混合物を得る。上記混合物を成形型内に充填し、充填された混合物を圧縮してチップ同士を接合させこれによってポリウレタンチップフォームを製造することができる。圧縮の際には、使用した接着剤の硬化に適した条件で圧縮作業を実施するとよい。尚、上記接着剤は、ポリウレタンチップフォーム同士を接着できるものであればよく、たとえば、ウレタン系接着剤が好ましい。接着剤の混合量は、特に限定されないが、第一ポリウレタンチップおよび第二ポリウレタンチップの総量100質量部に対して3質量部以上30質量部以下の範囲で適宜決定してもよい。
【0034】
(ポリウレタンチップフォームの物性)
<反発弾性率>
本発明のウレタンチップフォームは、反発弾性率が15%以上60%以下である第二ポリウレタンフォームの小片化物である第二ポリウレタンチップを有意に含むにも関わらず、反発弾性率が低く抑えられている。本発明のウレタンフォームの反発弾性率は、用途に応じて適宜決定することができる。たとえば反発弾性率が低めであり低反発特有の包み込まれるような感覚を良好に提供可能であるという観点からは、本発明のウレタンフォームの反発弾性率は、25%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、16%以下であることがさらに好ましく、15%以下であることがよりさらに好ましく、15%未満であることが特に好ましい。一方、本発明のウレタンフォームの反発弾性率の下限は特に限定されないが、概ね1%以上である。
【0035】
ポリウレタンチップフォームの反発弾性率は、JIS K6400-3(2011)に基づき測定される。
【0036】
<密度>
本発明のウレタンチップフォームの密度は特に限定されないが、たとえば70kg/m以上85kg/m以下であることが好ましく、75kg/m以上83kg/m以下であることがより好ましい。
上記範囲の密度を示すことによって、ウレタンチップフォームに自立性を付与しうる。一般的に低反発のウレタンフォームからなるマット等は、自立性に乏しく、たとえば保管時に厚み方向を横方向とし縦置きし壁などに立てかけた場合、マットの中間部が屈曲するなどして平板状を保てない場合があった。そのため、マットの主面を床面と対向させて横置きし(つまり床に敷いた状態で)保管することを余技なくされ、保管場所に大きな面積を要するという問題があった。しかし、上記密度である本発明のポリウレタンチップフォームであれば、縦置きして壁などに立てかけた場合でもしっかりと自立した状態を維持することが可能である。
【0037】
また、一般的に低反発のポリウレタンフォームを製造し、その後に所望の形状に裁断しようとした場合、ポリウレタンフォームの軟らかさにより切断面がよれてしまい綺麗な切断面が得られにくかった。これに対し、上記密度である本発明のポリウレタンチップフォームであれば、充分に密度が高いため、ウレタンチップフォームを所望の形状に裁断する場合に綺麗な切断面を有する所定形状のウレタンチップフォームを作成することができる。
【0038】
上記ポリウレタンチップフォームの密度(kg/m)は、JIS K7222(2005)に基づいて測定される。
【0039】
本発明の検討において、第一ポリウレタンチップと第二ポリウレタンチップとを混合させて製造されたポリウレタンチップフォームの反発弾性率は、ポリウレタンチップの混合割合に応じた値よりも低めの値が示される傾向にあることがわかった。また当該ポリウレタンチップフォームの底付き感を表す沈み量は、ポリウレタンチップの混合割合に応じた値よりも小さい値が示される傾向にあることがわかった。
【0040】
具体的に、反発弾性率がX1%であり、沈み量がY1cmである第一ポリウレタンフォームよりなる第一ポリウレタンチップと、反発弾性率がX2%であり、沈み量がY2cmである第二ポリウレタンフォームよりなる第二ポリウレタンチップとを、第一ポリウレタンチップ質量W1:第二ポリウレタンチップ質量W2=50:50の質量比で混合させ接着剤で接合させて製造されたポリウレタンチップフォームの例について説明する。この例では、反発弾性率X1%<反発弾性率X2%であり、沈み量Y1cm>沈み量Y2cmである。
上述のとおり得られたポリウレタンチップフォームの反発弾性率X3%は、上記X1%とX2%との中間値よりも有意にX1%寄りの値となり、かつ沈み量は上記Y1cmとY2cmとの中間値よりも有意にY2cm寄りの値となる傾向にある。尚、ここでいう中間値とは2つの数値のちょうど真ん中の値を意味する。
即ち本発明のポリウレタンチップフォームは、反発弾性率は第一ポリウレタンフォームの優れた効果が強く反映され、かつ沈み量(底付き感)は第二ポリウレタンフォームの優れた効果が強く反映される特有の効果を示すことがわかった。かかる理由は明らかではないが、低反発の第一ポリウレタンチップと相対的に高反発の第二ポリウレタンチップとを接合剤で接合して発泡体を製造することにより、当該発泡体内部において、第一ポリウレタンフォームとも第二ポリウレタンフォームとも異なる、特有の荷重分散が実現され、その結果、反発弾性率を低めに抑えつつ、底付き感が充分に改善された優れた発泡体が提供可能となったものと推察された。
【0041】
上述する本発明に特有の効果を良好に発揮させるという観点から、本発明のポリウレタンチップフォームの密度が70kg/m以上85kg/m以下であり、かつ当該ポリウレタンチップフォームの反発弾性率が25%以下であることが好ましく、上記密度が75kg/m以上83kg/m以下であり、かつ上記反発弾性率が20%以下であることより好ましい。
尚、反発弾性率が15%未満の低反発性のウレタンフォームの密度は、70kg/m以下となることが一般的である。そのため、反発弾性率を低く抑えつつ底付き感が改善され、かつ高い密度を示すウレタンフォームを提供可能とした点は、本発明の特徴の一つといえる。
【0042】
<伸び>
本発明のポリウレタンチップフォームの伸びは、特に限定されないが、使用感の良好なポリウレタンチップフォームを提供するという観点からは、90%以上150%以下であることが好ましく、95%以上145%以下であることがより好ましく、100%以上145%以下であることがさらに好ましい。
上述する範囲の伸びを示すポリウレタンチップフォームであれば、使用者の体の形状に追従し易く、当該体を面でしっかりと支えることが可能であり、結果として優れた体圧分散性が示され得る。
【0043】
上記ポリウレタンチップフォームの伸び(%)は、JIS K6400-5(2012)に基づいて測定される。
【0044】
<底付き感>
本発明のポリウレタンチップフォームは、従来の低反発のポリウレタンフォームまたはポリウレタンチップフォームにと比較して底付き感が良好に改善される。底付き感とは、使用者が使用した際に感じる官能的な評価であるが、たとえば分銅を用いて沈み量を確認することで客観的に評価することができる。
具体的には、試験に供される発泡体を厚さ30mm×縦300mm×横300mmの試験片に裁断する。室温下(22℃~23℃程度)において、試験台に載置された上記試験片の長辺の縁に分銅の縁を添わせ当該試験片上に分銅を載せ、30秒後に、分銅の載った箇所の試験片の厚みT(mm)を測定し、試験片の厚さ30mmから、上記試験片の厚みT(mm)を減じて沈み量(mm)を算出する。尚、上記分銅として、重さ10kg、押圧面10.5cm×15.9cm(約167cm)、面圧10kg/167cmの分銅が準備される。
厚さ30mmの試験片を用いて実施された上記測定において、沈み量は、15cm以下であることにより底付き感が有意に改善されるため好ましく、10cm未満であることにより底付き感が良好に改善されるためより好ましい。
【0045】
以上に説明する本発明のポリウレタンチップフォームは、枕、マットレス、敷き寝具、ソファー、または椅子の座面等の様々用途に適用可能である。特に本発明は厚みが20mm以上50mm以下であっても良好な底付き感を呈するため、薄厚みで軽量なマットや敷き寝具、座り心地の良い椅子の座面などを良好に提供することができる。
即ち、厚みが20mm以上50mm以下である本発明のポリウレタンチップフォームは、本発明の好ましい一形態として挙げられる。
底付き感が充分に改善される上、軽量性にも優れるという観点からは、上記厚みは25mm以上45mm以下であることが好ましく、25mm以上40mm以下であることがさらに好ましい。
【0046】
図1に本発明のポリウレタンチップフォームの一実施態様について斜視方向から見た概念図を示す。図1に示すポリウレタンチップフォーム100は、適度に薄い厚み(厚みT)の板状体であり、第一ポリウレタンチップ10および第二ポリウレタンチップ20が互いに密着し合い、図示省略する接着剤により互いに接着されている。厚みTは、特に限定されないが、上述するとおり、20mm以上50mm以下とすることができる。かかる厚みであっても、ポリウレタンチップフォーム100は、図1に示すように縦置きにして壁に立てかける程度で良好な自立性が示される。したがって、商品の保管時に倉庫などにおいて縦置きにし、複数のポリウレタンチップフォーム100を水平方向に並列して保管しやすい。たとえば厚みTが上下方向となるよう床にポリウレタンチップフォーム100を横置きし、上下方向に複数のポリウレタンチップフォーム100を重ねて保管した場合、下方に位置するポリウレタンチップフォーム100が潰れる虞があるが、本発明によれば縦置きが可能であるため、このような不具合も回避可能である。尚、図1は、本発明のポリウレタンチップフォームおよびこれに用いられるポリウレタンチップの寸法、形状および寸法比などを何ら限定するものではない。
【実施例0047】
以下に本発明の実施例について説明する。ただし以下に示す実施例は本発明を何ら制限するものではない。
【0048】
(第一ポリウレタンフォームの製造)
下記に示す原料を所定の配合量にて混合し混合物を調製し、常温(22℃±1℃)にてミキサーで3500回転/分の回転数で数秒混合した後、上記混合物を所定の容器に注入し、反応および発泡させることによって第一ポリウレタンフォームを作製した。JIS K6400-3(2011)に基づき測定された第一ポリウレタンフォームの反発弾性率は、12%であった。
【0049】
第一ポリウレタンフォームの製造に用いた各原料および配合量の詳細は以下の通りである。
・ポリオールA:水酸基価55.9mgKOH/g、数平均分子量3000、官能基3、ポリエーテルポリオール(アクトコールT-3000、三井化学SKCポリウレタン株式会社製)、50質量部
・ポリオールB:水酸基価240mgKOH/g、数平均分子量700、グリセロール・プロピレンオキシドポリマー、官能基3(VORANOL2070、ダウ・ケミカル日本社製)、50質量部
・イソシアネート:トリレンジイソシアネート(三井化学SKCポリウレタン株式会社製)、イソシアネートインデックス87
・アミン触媒:トリエチレンジアミン(TEDA-L33、東ソー株式会社製)、0.85質量部
・有機金属触媒:オクチル酸スズ(ネオスタンスU-28、日東化成株式会社)、0.07質量部
・発泡剤:水1.55質量部、
・酸化防止剤:亜リン酸エステル(JPE-13R、城北化学工業株式会社)、1質量部
・整泡剤:ポリアルキレンオキシド-メチルシロキサン共重合体(L-626、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン製)、1.1質量部
【0050】
(第二ポリウレタンフォームの製造)
下記に示す原料を所定の配合量にて混合し混合物を調製し、常温(22℃±1℃)にてミキサーで3500回転/分の回転数で数秒混合した後、上記混合物を所定の容器に注入し、反応および発泡させることによって第一ポリウレタンフォームを作製した。JIS K6400-3(2004)に基づき測定された第二ポリウレタンフォームの反発弾性率は、50%であった。
【0051】
第二ポリウレタンフォームの製造に用いた各原料および配合量の詳細は以下の通りである。
・ポリオールA:水酸基価55.9mgKOH/g、数平均分子量3000、官能基3、ポリエーテルポリオール(アクトコールT-3000、三井化学SKCポリウレタン株式会社製)、100質量部
・イソシアネート:トリレンジイソシアネート(三井化学SKCポリウレタン株式会社製)、イソシアネートインデックス110
・アミン触媒:トリエチレンジアミン(TEDA-L33、東ソー株式会社製)、0.3質量部
・有機金属触媒:オクチル酸スズ(ネオスタンスU-28、日東化成株式会社)、0.2質量部
・発泡剤:水2.5質量部、
【0052】
(第一ポリウレタンチップの作成)
上述のとおり得られた第一ポリウレタンフォームを回転刃式の破砕装置を用いて粉砕し、長径が5mm~25mm程度となるよう小片化し、これを第一ポリウレタンチップとした。
【0053】
(第二ポリウレタンチップの作成)
上述のとおり得られた第二ポリウレタンフォームを回転刃式の粉砕装置を用いて粉砕し、長径が5mm~25mm程度となるよう小片化し、これを第二ポリウレタンチップとした。
【0054】
(実施例1)
上述のとおり得られた第一ポリウレタンチップと第二ポリウレタンチップを用いて下記の方法でポリウレタンチップフォームを作成し、これを実施例1とした。
まず、第一ポリウレタンチップの質量W1と第二ポリウレタンチップの質量W2とが質量比W1:W2=50:50となるよう配合して混合し、さらに接着剤としてウレタン系接着剤を添加して混合して混合物を得た。上記混合物を成形型に充填し、適度な圧力をかけて密度を調整しつつ、接着剤を硬化させてチップ同士を接合させることで実施例1のポリウレタンチップフォームを得た。
【0055】
(実施例2~実施例6)
表1に示すウレタンチップの質量比に変更したこと以外は、実施例1と同様にポリウレタンチップフォームを製造し、実施例2~実施例6とした。
【0056】
(比較例1)
第二ポリウレタンチップを用いず、第一ポリウレタンチップのみを用いたこと以外は、実施例1と同様にポリウレタンチップフォームを製造し、比較例1とした。
【0057】
(比較例2)
第一ポリウレタンフォームを比較例2として用いた。
【0058】
(比較例3)
第二ポリウレタンフォームを比較例3として用いた。
【0059】
以上のとおり作製した各実施例および各比較例について、下記のとおり、密度(kg/cm3)、40%圧縮硬さ(N)、反発弾性率(%)、伸び(%)、沈み量(mm)の測定を行った。また沈み量から底付きかの評価を行った。これらの測定結果および評価結果はいずれも表1に示す。
【0060】
<密度(kg/cm3)>
JIS K7222(2005年)に基づき各実施例および各比較例の密度を測定した。
【0061】
<40%圧縮硬さ(N)>
JIS K6400-2(2012)に基づき各実施例および各比較例の密度を測定した。
【0062】
<反発弾性率(%)>
JIS K6400-3(2011)に基づき各実施例および各比較例の反発弾性率を測定した。
【0063】
<伸び(%)>
JIS K6400-5(2012)に基づき各実施例および各比較例の反発弾性率を測定した。
【0064】
<沈み量(mm)、底付き感>
試験に供される発泡体を厚さ30mm×縦300mm×横300mmの試験片に裁断した。室温(22.4℃)下において、試験台に載置された上記試験片の短辺の縁に分銅の縁を添わせ当該試験片上に分銅を載せ、30秒後に、上記短辺の分銅の載った箇所の厚みT(mm)を測定し、試験片の厚さ30mmから、上記試験片の厚みT(mm)を減じて沈み量(mm)を算出した。尚、上記分銅として、重さ10kg、押圧面10.5cm×15.9cm(約167cm)、面圧10kg/167cmの分銅を使用した。
上記沈み量を用い、以下の基準で底付き感を評価した。
◎・・・沈み量が10cm未満である。
〇・・・沈み量が10cm以上15cm以下である。
×・・・沈み量が15cm超である。
【0065】
【表1】
【0066】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)反発弾性率が1%以上15%未満である第一ポリウレタンフォームの小片化物である第一ポリウレタンチップと、
反発弾性率が15%以上60%以下である第二ポリウレタンフォームの小片化物である第二ポリウレタンチップとが、
接着剤で接合されてなり、
前記第一ポリウレタンチップの総質量W1と、前記第二ポリウレタンチップの総質量W2との質量比が、W1:W2=50:50~95:5の範囲であることを特徴とするポリウレタンチップフォーム。
(2)前記ポリウレタンチップフォームの密度が70kg/m以上85kg/m以下であり、
当該ポリウレタンチップフォームの反発弾性率が25%以下である上記(1)に記載のポリウレタンチップフォーム。
(3)前記ポリウレタンチップフォームの厚みが20mm以上50mm以下である上記(1)または(2)に記載のポリウレタンチップフォーム。
【符号の説明】
【0067】
10・・・第一ポリウレタンチップ
20・・・第二ポリウレタンチップ
100・・・ポリウレタンチップフォーム
図1