(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122599
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】転写シート、転写シートの製造方法、外装部材の製造方法および外装部材
(51)【国際特許分類】
B32B 7/022 20190101AFI20240902BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240902BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20240902BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20240902BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240902BHJP
B44C 1/17 20060101ALN20240902BHJP
【FI】
B32B7/022
B32B27/30 A
B32B27/40
C09J7/30
C09J201/00
B44C1/17 B
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030228
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 沙織
(72)【発明者】
【氏名】秋田 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】川崎 啓史
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝二
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 治
【テーマコード(参考)】
3B005
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
3B005FA04
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3B005GB01
4F100AB01A
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4J040KA35
(57)【要約】 (修正有)
【課題】耐傷性に優れ、かつ第1保護層および第2保護層の耐候密着性が良好な転写層を転写可能な転写シートを提供する。
【解決手段】転写シート10は、離型フィルム1と、離型フィルムの一方の面に配置された転写層と、を有し、転写層は、離型フィルム側から第1保護層2および第2保護層3をこの順に有し、第1保護層は、第1硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、第2保護層は、第2硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、第1硬化性樹脂組成物の硬化物、および第2硬化性樹脂組成物の硬化物は、それぞれ、(メタ)アクリル成分およびウレタン成分を含有し、転写シートの断面サンプル片を樹脂埋設法およびミクロトームを用いて作製した場合において、第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、150MPa以上300MPa以下であり、第2保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、2MPa以上50MPa以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装部材の製造に用いられる転写シートであって、
前記転写シートは、離型フィルムと、前記離型フィルムの一方の面に配置された転写層と、を有し、
前記転写層は、前記離型フィルム側から、第1保護層および第2保護層を、厚さ方向において、この順に有し、
前記第1保護層は、第1硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、
前記第2保護層は、第2硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、
前記第1硬化性樹脂組成物の硬化物、および、第2硬化性樹脂組成物の硬化物は、それぞれ、(メタ)アクリル成分およびウレタン成分を含有し、
前記転写シートの断面サンプル片を、樹脂埋設法およびミクロトームを用いて作製した場合において、
前記第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、150MPa以上、300MPa以下であり、
前記第2保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、2MPa以上、50MPa以下である、転写シート。
【請求項2】
前記第1硬化性樹脂組成物が、電離放射線硬化性樹脂組成物である、請求項1に記載の転写シート。
【請求項3】
前記第1硬化性樹脂組成物が、電子線硬化性樹脂組成物である、請求項1に記載の転写シート。
【請求項4】
前記第1硬化性樹脂組成物が、ウレタン(メタ)アクリレートを含有する、請求項1に記載の転写シート。
【請求項5】
前記第2硬化性樹脂組成物が、熱硬化性樹脂組成物である、請求項1に記載の転写シート。
【請求項6】
前記第2硬化性樹脂組成物が、ウレタン(メタ)アクリル系樹脂を含有する、請求項1に記載の転写シート。
【請求項7】
前記第2硬化性樹脂組成物が、ポリカーボネート系ウレタン(メタ)アクリル共重合体を含む熱硬化性樹脂組成物である、請求項1に記載の転写シート。
【請求項8】
前記第1保護層が、前記耐候剤として、紫外線吸収剤および光安定剤の少なくとも一方を含有する、請求項1に記載の転写シート。
【請求項9】
前記第1保護層が、前記耐候剤として、トリアジン系紫外線吸収剤を含有する、請求項1に記載の転写シート。
【請求項10】
前記第2保護層が、前記耐候剤として、紫外線吸収剤および光安定剤の少なくとも一方を含有する、請求項1に記載の転写シート。
【請求項11】
前記第2保護層が、前記耐候剤として、トリアジン系紫外線吸収剤を含有する、請求項1に記載の転写シート。
【請求項12】
前記第2保護層の前記第1保護層とは反対側の面に、接着層を有する、請求項1に記載の転写シート。
【請求項13】
前記接着層が着色剤を有する、請求項12に記載の転写シート。
【請求項14】
前記接着層の断面におけるインデンテーション硬さは、100MPa以上、300MPa以下である、請求項12に記載の転写シート。
【請求項15】
前記第2保護層の前記第1保護層とは反対側の面に、意匠層を有する、請求項1に記載の転写シート。
【請求項16】
前記意匠層の前記第2保護層とは反対側の面に、接着層を有する、請求項15に記載の転写シート。
【請求項17】
請求項1から請求項16までのいずれかの請求項に記載の転写シートの製造方法であって、
前記離型フィルムの面に、前記第1硬化性樹脂組成物および前記耐候剤を含有する第1組成物を塗工し、硬化させ、前記第1保護層を形成する第1保護層形成工程と、
前記第1保護層の前記離型フィルムとは反対側の面に、前記第2硬化性樹脂組成物および前記耐候剤を含有する第2組成物を塗工し、硬化させ、前記第2保護層を形成する第2保護層形成工程と、
を有する、転写シートの製造方法。
【請求項18】
請求項1から請求項16までのいずれかの請求項に記載の転写シートを準備する準備工程と、
前記転写シートの前記第2保護層側の面と、基体と、を対向させ、両者を密着させる密着工程と、
を有する、外装部材の製造方法。
【請求項19】
第1保護層、第2保護層、接着層および基体を、厚さ方向において、この順に有する外装部材であって、
前記第1保護層は、第1硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、
前記第2保護層は、第2硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、
前記第1硬化性樹脂組成物の硬化物、および、第2硬化性樹脂組成物の硬化物は、それぞれ、(メタ)アクリル成分およびウレタン成分を含有し、
前記外装部材の断面サンプル片を、樹脂埋設法およびミクロトームを用いて作製した場合において、
前記第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、150MPa以上、300MPa以下であり、
前記第2保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、2MPa以上、50MPa以下である、外装部材。
【請求項20】
前記基体は、アクリル板、ポリカーボネート板、不燃板、金属板、塩化ビニル板、メラミン板または炭素繊維強化プラスチック板である、請求項19に記載の外装部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、転写シート、転写シートの製造方法、外装部材の製造方法および外装部材に関する。
【背景技術】
【0002】
金属部材および樹脂部材等の基体に、転写シートにおける転写層(転写シートから転写される層)を転写することで、基体を加飾することが知られている。例えば、特許文献1には、剥離層と、剥離層に剥離可能に取り付けられた意匠転写層とを含み、意匠転写層は、剥離層側から、加熱接着可能な第1表面層と、加熱接着可能な第2表面層とをこの順で含む、意匠転写シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
転写シートは、例えば、離型フィルム、第1保護層および第2保護層を、厚さ方向において、この順に有する。このような転写シートにおいて、第1保護層および第2保護層の密着性は不足しやすい。第1保護層は、典型的には、離型フィルム上に第1保護層形成用の組成物を硬化することで作製される。その硬化した第1保護層上に、第2保護層を形成するため、第1保護層および第2保護層の密着性は不足しやすい。また、外装部材(屋外用の部材)は過酷な環境に曝されるため、外装部材の製造に用いられる転写シートにおける転写層を構成する、第1保護層および第2保護層には、良好な初期密着性のみならず、良好な耐候密着性が求められている。また、転写シートには、基体に転写した転写層の表面が耐傷性を有することが求められている。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、耐傷性に優れ、かつ、第1保護層および第2保護層の耐候密着性が良好な転写層を転写可能な転写シートを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示においては、外装部材の製造に用いられる転写シートであって、上記転写シートは、離型フィルムと、上記離型フィルムの一方の面に配置された転写層と、を有し、上記転写層は、上記離型フィルム側から、第1保護層および第2保護層を、厚さ方向において、この順に有し、上記第1保護層は、第1硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、上記第2保護層は、第2硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、上記第1硬化性樹脂組成物の硬化物、および、第2硬化性樹脂組成物の硬化物は、それぞれ、(メタ)アクリル成分およびウレタン成分を含有し、上記転写シートの断面サンプル片を、樹脂埋設法およびミクロトームを用いて作製した場合において、上記第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、150MPa以上、300MPa以下であり、上記第2保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、2MPa以上、50MPa以下である、転写シートを提供する。
【0007】
また、本開示においては、上述の転写シートの製造方法であって、上記離型フィルムの面に、上記第1硬化性樹脂組成物および上記耐候剤を含有する第1組成物を塗工し、硬化させ、上記第1保護層を形成する第1保護層形成工程と、上記第1保護層の上記離型フィルムとは反対側の面に、上記第2硬化性樹脂組成物および上記耐候剤を含有する第2組成物を塗工し、硬化させ、上記第2保護層を形成する第2保護層形成工程と、を有する、転写シートの製造方法を提供する。
【0008】
本開示においては、上述の転写シートを準備する準備工程と、上記転写シートの上記第2保護層側の面と、基体と、を対向させ、両者を密着させる密着工程と、を有する、外装部材の製造方法を提供する。
【0009】
本開示においては、第1保護層、第2保護層、接着層および基体を、厚さ方向において、この順に有する外装部材であって、上記第1保護層は、第1硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、上記第2保護層は、第2硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、上記第1硬化性樹脂組成物の硬化物、および、第2硬化性樹脂組成物の硬化物は、それぞれ、(メタ)アクリル成分およびウレタン成分を含有し、上記外装部材の断面サンプル片を、樹脂埋設法およびミクロトームを用いて作製した場合において、上記第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、150MPa以上、300MPa以下であり、上記第2保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、2MPa以上、50MPa以下である、外装部材を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本開示においては、耐傷性に優れ、かつ、第1保護層および第2保護層の耐候密着性が良好な転写層を転写可能な転写シートを提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示における転写シートを例示する概略断面図である。
【
図2】本開示における転写シートの製造方法を例示する概略断面図である。
【
図3】本開示における外装部材の製造方法を例示する概略断面図である。
【
図4】本開示における外装部材の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
下記に、図面等を参照しながら、実施の形態を説明する。ただし、本開示は、多くの異なる態様で実施することが可能であり、下記に例示する実施の形態の記載内容に限定されるべきではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状について模式的に表す場合があるが、これはあくまで一例であり、限定して解釈されるべきではない。
【0013】
本明細書において、ある部材に、他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」あるいは「下に」と表記する場合、特に断りの無い限り、ある部材に接するように、直上あるいは直下に、他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合と、の両方を含む。また、本明細書において、ある部材の面に、他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「面に」と表記する場合、特に断りの無い限り、ある部材に接するように、直上あるいは直下に、他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合と、の両方を含む。
【0014】
以下、本開示における、転写シート、転写シートの製造方法、外装部材の製造方法および外装部材について、詳細に説明する。
【0015】
A.転写シート
図1(a)は、本開示における転写シートを例示する概略断面図である。
図1(a)に示すように、転写シート10は、離型フィルム1と、離型フィルム1の一方の面に配置された転写層Xとを有する。転写層Xは、離型フィルム1側から、第1保護層2および第2保護層3を、厚さ方向D
Tにおいて、この順に有する。また、
図1(b)に示すように、転写シート10は、第2保護層3の第1保護層2とは反対側の面に、接着層4を有していてもよい。また、
図1(c)に示すように、転写シート10は、第2保護層3の第1保護層2とは反対側の面に、意匠層5を有していてもよい。また、
図1(d)に示すように、転写シート10は、意匠層5の第2保護層3とは反対側の面に、接着層4を有していてもよい。
【0016】
本開示における転写シートは、第1保護層2が、所定の第1硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含み、所定の方法により作製した転写シートの断面サンプル片の断面におけるインデンテーション硬さが所定の範囲にある。さらに、第2保護層3が、所定の第2硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含み、所定の方法により作製した転写シートの断面サンプル片の断面におけるインデンテーション硬さが所定の範囲にある。本開示によれば、良好な耐候密着性および耐傷性を有する、外装部材用の転写シートとなる。
【0017】
上述したように、転写シートにおいて、第1保護層および第2保護層の密着性は不足しやすい。ここで、化粧シートの場合、通常、基材層上に意匠層を形成し、次に、意匠層上に第2保護層を形成し、次に、第2保護層上に第1保護層を形成する。第1保護層は、典型的には、第2保護層上に形成された第1保護層形成用の組成物を硬化することで作製されるため、第1保護層および第2保護層の密着性は良好になる。これに対して、転写シートの場合、通常、離型フィルム上に第1保護層を形成し、次に、第1保護層上に第2保護層を形成し、次に、第2保護層上に意匠層を形成する。第1保護層は、典型的には、離型フィルム上に第1保護層形成用の組成物を硬化することで作製される。その硬化した第1保護層上に、第2保護層を形成するため、第1保護層および第2保護層の密着性は不足しやすい。
【0018】
第1保護層には良好な耐傷性が求められるため、第1保護層の柔軟性は低いことが好ましい。また、本願の発明者等は、第2保護層は、硬化した第1保護層と密着(初期密着及び耐候密着)するために、ある程度の柔軟性が必要であることを知見した。さらに、昼夜の温度差および季節の違いによる温度差等の温度変化が繰り返されるような環境下において、第1保護層が第2保護層に追従できず、耐候密着性が悪化する場合があることを知見した。
【0019】
本発明者等は、樹脂埋設法およびミクロトームを用いて作製した転写シートの断面サンプル片を測定して得られるインデンテーション硬さは、例えば、機械研磨等により作製した断面サンプル片を測定して得られるインデンテーション硬さに比べて、層の柔軟性をより正確に評価できることを知見した。そして、本発明者等は、上記転写シートの断面サンプル片を、樹脂埋設法およびミクロトームを用いて作製した場合において、上記第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さが所定の範囲にあり、かつ、第2保護層の断面におけるインデンテーション硬さが所定の範囲にあることにより、耐傷性に優れ、かつ、第1保護層および第2保護層の耐候密着性が良好な転写層を転写可能な転写シートとなることを見出した。
【0020】
また、外装部材(屋外用の部材)には、内装部材(屋内用の部材)に比べて、高い耐候性が求められる。例えば、化粧シートを用いて外装部材を製造する場合、強度向上を目的として、化粧シートに透明樹脂層を設ける場合がある。この場合、透明樹脂層は比較的厚い層であるため、例えば透明樹脂層に十分な量の耐候剤を添加することで、高い耐候性が付与される。これに対して、透明樹脂層に該当する層を有しない転写シートに、高い耐候性を付与することは、技術的な困難性が高い。本開示においては、通常、第1保護層および第2保護層の両方が耐候剤を含有する。これにより、第1保護層に求められる特性(例えば、耐傷性、耐摩耗性等の表面特性)、および、第2保護層に求められる特性(例えば密着性)を維持しつつ、高い耐候性を付与することができる。
【0021】
1.第1保護層
本開示における転写シートは、第1保護層を有する。第1保護層は、外装部材の表面特性(例えば耐傷性、耐摩耗性等)の向上に寄与する。第1保護層および離型フィルムは、直接接触するように配置されていることが好ましい。
【0022】
(1)インデンテーション硬さ
本開示において、転写シートの断面サンプル片を、樹脂埋設法およびミクロトームを用いて作製した場合における、第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、通常、150MPa以上であり、180MPa以上であってもよく、190MPa以上であってもよい。第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さが低いと、良好な耐傷性、耐摩耗性が得られない可能性がある。一方、第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、通常、300MPa以下であり、280MPa以下であってもよく、250MPa以下であってもよい。第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さが高いと、第2保護層に対する第1保護層の追従性が低くなり、良好な耐候密着性が得られない可能性がある。
【0023】
第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、例えば、第1保護層を作製するための第1硬化性樹脂組成物における硬化性樹脂の官能基数により、調整できる。例えば、電離放射線硬化性化合物の官能基数を少なくすることで、第1硬化性樹脂組成物の硬化物において、架橋点を少なくできるため、より柔軟な構造とすることができ、インデンテーション硬さを低くすることができる。
【0024】
第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、以下の方法で、樹脂埋設法およびミクロトームを用いて作製した断面サンプル片を、下記のインデンテーション硬さの測定方法により測定して得られた値である。
(測定用断面サンプル片の作製方法)
転写シートを任意の大きさに切断することにより、カットサンプルを作製する。カットサンプルを樹脂(常温硬化タイプのエポキシ2液硬化樹脂)で包埋し、室温で24時間以上放置して硬化させることにより、カットサンプルを樹脂で包埋してなる包埋サンプルを作製する(樹脂埋設法)。ミクロトームを用い、包埋サンプルを垂直に切断し、測定対象である層の断面を露出させた、インデンテーション硬さ測定用の断面サンプル片を作製する。具体的には、凍結切削システム(Leica EM FC6、ライカマイクロシステムズ社製)を取り付けたウルトラミクロトーム(Leica EM UC6、ライカマイクロシステムズ社製)およびダイヤモンドナイフを用いて、-120℃の環境下で、測定対象である層の断面を露出させた断面を作製する。常温環境下で切削加工した断面に比べ、断面荒れを抑制することができ、押し込み試験に適した断面が得られる。特に、柔らかい材料の場合に、断面荒れを抑制することができる。
【0025】
(インデンテーション硬さの測定方法)
本明細書における「インデンテーション硬さ」とは、ナノインデンテーション法によって測定される。ナノインデンテーション法は、試料表面に圧子を押し込み除荷する過程において、荷重と変位を連続的に測定し得られた荷重-変位曲線から力学量を算出する手法である。
【0026】
具体的に、第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、上述した測定用サンプルの切断面に対して、下記ナノインデンターを用いて、バーコビッチ圧子(材質:ダイヤモンド三角錐)を垂直に押し込んで測定する。測定装置及び測定条件は以下の通りである。ここで、バーコビッチ圧子を押し込む位置は、第1保護層の厚み方向の略中心とすることが好ましい。略中心とは、第1保護層の厚みをT[μm]と定義した際に、第1保護層の厚み方向の中心からのズレが±0.1T以内であることを意味する。また、充填剤(例えば、シリカ)などの微粒子が層中に含まれる場合には、微粒子を避けた位置に上記バーコビッチ圧子を押し込む。
【0027】
・使用装置:ナノインデンター(TI 950 TriboIndenter、BRUKER社製)
・使用圧子:バーコビッチ圧子(型番:TI-0039、BRUKER社製)
・押し込み制御方式:変位制御方式(リフト動作不使用)
・最大押し込み深さ:100nm
・押込みレート:10nm/秒
・負荷時間:10秒(0→100nmまで押込む)
・保持時間:5秒(100nm一定)
・除荷時間:10秒(100nm→0へ戻す)
・測定回数:5回
【0028】
第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、下記のようにして算出することができる。まず、圧入荷重P(N)に対応する圧入深さh(nm)を連続的に測定し、荷重-変位曲線を作成する。作成した荷重-変位曲線を解析し、最大圧入荷重Pmax(N)を、そのときの圧子と第1保護層の断面とが接している投影面積A(mm2)で除した値として、インデンテーション硬さHITを算出することができる(下記式(1))。
HIT=Pmax/A …(1)
ここで、Aは標準試料の溶融石英を用いて装置標準の方法で圧子先端形状を補正した接触投影面積である。
【0029】
本明細書において、第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、同じサンプルに対して、位置をずらして5回測定し、これらの算術平均値とする。なお、測定ごとに、5μm以上ずらして測定した。測定の際には、圧子形状の補正が正しくできていること、装置の動作および計測に問題がないことを確認するために、装置メーカーの標準試料である溶融石英を用いて、基準値の±5%以内の計測ができていることを確認することが好ましい。また、インデンテーション硬さの測定の雰囲気は、温度23℃±5℃、湿度40%~65%とする。
【0030】
(2)樹脂成分
第1保護層は、第1硬化性樹脂組成物の硬化物(架橋構造体)を含有する。また、第1硬化性樹脂組成物の硬化物は、(メタ)アクリル成分およびウレタン成分を含有する。(メタ)アクリル成分とは、アクリル成分またはメタクリル成分をいう。ウレタン成分とは、ウレタン結合をいう。また、第1硬化性樹脂組成物の硬化物の割合は、第1保護層を構成する全樹脂成分に対して、例えば70質量%以上であり、90質量%以上であってもよく、95質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
【0031】
第1硬化性樹脂組成物としては、例えば、電離放射線硬化性樹脂組成物および熱硬化性樹脂組成物が挙げられる。電離放射線硬化性樹脂組成物としては、例えば、電子線硬化性樹脂組成物、紫外線硬化性樹脂組成物が挙げられる。これらの中でも、重合開始剤が不要のため臭気が少なく、着色が生じにくいことから、電子線硬化性樹脂組成物が好ましい。
【0032】
電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性官能基を有する化合物(以下、「電離放射線硬化性化合物」ともいう)を含む組成物である。電離放射線硬化性官能基は、電離放射線の照射によって架橋硬化する基である。電離放射線硬化性樹脂組成物は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を少なくとも含有することが好ましい。(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基またはメタクリロイル基をいう。また、電離放射線硬化性樹脂組成物は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物の他に、ビニル基、アリル基等のエチレン性二重結合を有する官能基を有する化合物を含有していてもよい。
【0033】
電離放射線硬化性化合物の官能基数としては、2以上20以下が好ましく、2以上18以下がより好ましく、2以上15以下が更に好ましい。第1保護層のインデンテーション硬さを上記範囲に調整しやすいためである。
【0034】
電離放射線とは、電磁波または荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものをいう。電離放射線としては、例えば、電子線(EB)および紫外線(UV)が挙げられる。また、電離放射線の他の例としては、X線、γ線等の電磁波、α線、イオン線等の荷電粒子線が挙げられる。
【0035】
電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性化合物として、ウレタン(メタ)アクリレートを少なくとも含有することが好ましい。(メタ)アクリレートとは、アクリレートまたはメタクリレートをいう。また、電離放射線硬化性樹脂組成物は、ウレタン(メタ)アクリレートの他に、電離放射線硬化性化合物として、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレートの少なくとも一種をさらに含有していてもよい。
【0036】
電離放射線硬化性樹脂組成物は、ウレタン(メタ)アクリレートとして、カプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。また、電離放射線硬化性樹脂組成物は、カプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートと、カプロラクトン変性されていないウレタン(メタ)アクリレートとを含有していてもよい。この場合、第1保護層に含まれるカプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートの含有量をMCLUAとし、カプロラクトン変性されていないウレタン(メタ)アクリレートの含有量をMUAとする。MUAおよびMCLUAの合計に対するMCLUAの質量比(MCLUA/(MUA+MCLUA))は、例えば、10質量%以上90質量%以下であり、20質量%以上80質量%以下であってもよく、30質量%以上70質量%以下であってもよい。
【0037】
電離放射線硬化性化合物がカプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートを含有する場合、カプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートの官能基数は、2以上9以下が好ましく、2以上5以下がより好ましい。カプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートの官能基数を上記範囲内にすることにより、第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さを上記範囲に調整しやすいためである。
【0038】
カプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートは、通常、カプロラクトン系ポリオールと、有機イソシアネートと、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応により得ることができる。合成法としては、例えば、ポリカプロラクトン系ポリオールと有機ポリイソシアネートとを反応させて、両末端に-NCO基(イソシアナート基)を含有するポリウレタンプレポリマーを生成させた後に、ヒドロキシ(メタ)アクリレートと反応させる方法が挙げられる。
【0039】
カプロラクトン系ポリオールとしては、市販されるものを使用することができ、好ましくは2個の水酸基を有し、数平均分子量が好ましくは500~3000、より好ましくは750~2000のものが挙げられる。また、カプロラクトン系以外のポリオール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等のポリオールを1種または複数種を任意の割合で混合して使用することもできる。有機ポリイソシアネートとしては、2個のイソシアネート基を有するジイソシアネートが好ましく、黄変を抑制する観点から、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4′-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が好ましく挙げられる。ヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、カプロラクトン変性-2-ヒドロキシエチルアクリレート等が好ましく挙げられる。
【0040】
カプロラクトン系ポリオールを使用する場合、カプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートは、カプロラクトンジオール系ウレタン(メタ)アクリレートであることが好ましい。カプロラクトンジオール系ウレタン(メタ)アクリレートとは、カプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートのうち、末端がジエチレングリコールであるウレタン(メタ)アクリレートをいう。カプロラクトンジオール系ウレタン(メタ)アクリレートを用いることで、第1保護層に、割れおよび白化が生じることを抑制できる。
【0041】
電離放射線硬化性化合物の数平均分子量は、例えば、1000以上10000以下であり、2000以上10000以下であってもよい。数平均分子量は、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された平均分子量である。
【0042】
例えば、電離放射線硬化性化合物が、紫外線硬化性化合物である場合、電離放射線硬化性化合物は、光重合開始剤および光重合促進剤の少なくとも一方を含むことが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α-アシルオキシムエステル、アシルフォスフィンオキサイド、チオキサントン類が挙げられる。光重合促進剤としては、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルが挙げられる。
【0043】
また、第1硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂組成物であってもよい。熱硬化性樹脂組成物の詳細については、後述する「2.第2保護層」に記載する内容と同様である。
【0044】
(3)耐候剤
第1保護層は、通常、耐候剤を含有する。耐候剤としては、例えば、紫外線吸収剤および光安定剤が挙げられる。第1保護層は、紫外線吸収剤および光安定剤の少なくとも一つを含むことが好ましい。第1保護層は、1種または2種以上の紫外線吸収剤を含んでいてもよい。同様に、第1保護層は、1種または2種以上の光安定剤を含んでいてもよい。
【0045】
第1保護層に含まれる紫外線吸収剤としては、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、オキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、シアノ(メタ)アクリレート系紫外線吸収剤等の有機系紫外線吸収剤、二酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛等の無機系紫外線吸収剤が挙げられる。これらの中でも、トリアジン系紫外線吸収剤がより好ましい。
【0046】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が挙げられる。ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス[2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2'-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノールが挙げられる。
【0047】
第1保護層に含まれる紫外線吸収剤の含有量は、電離放射線硬化性化合物100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上10質量部以下であり、0.8質量部以上8質量部以下であってもよく、1質量部以上5質量部以下であってもよい。紫外線吸収剤の含有量が多いと、紫外線吸収剤のブリードアウトが発生する可能性があり、紫外線吸収剤の含有量が少ないと、十分な紫外線吸収性能が得られない可能性がある。
【0048】
第1保護層に含まれる光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニルメタクリレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、2,4-ビス[N-ブチル-N-(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ]-6-(2-ヒドロキシエチルアミン)-1,3,5-トリアジン)が挙げられる。
【0049】
第1保護層に含まれる光安定剤の含有量は、電離放射線硬化性化合物100質量部に対して、例えば、1質量部以上10質量部以下であり、1.5質量部以上8質量部以下であってもよく、2質量部以上5質量部以下であってもよい。光安定剤の含有量が多いと、光安定剤のブリードアウトが発生する可能性があり、光安定剤の含有量が少ないと、十分な光安定性が得られない可能性がある。
【0050】
(4)添加剤
第1保護層は、シリコーン化合物、重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、接着性向上剤、酸化防止剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、防汚剤、消泡剤、充填剤、耐摩耗剤、抗菌剤、抗ウィルス剤、防カビ剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0051】
(5)第1保護層
第1保護層の厚さは、例えば、2μm以上20μm以下であり、3μm以上15μm以下であってもよく、4μm以上10μm以下であってもよい。第1保護層が薄いと、十分な耐候性が得られない可能性があり、第1保護層が厚いと、第1保護層にクラックが生じやすくなり、良好な密着性が得られない可能性がある。
【0052】
2.第2保護層
本開示における転写シートは、第2保護層を有する。第2保護層および第1保護層は、直接接触するように配置されていてもよく、他の層を介して配置されていてもよい。
【0053】
(1)インデンテーション硬さ
本開示において、転写シートの断面サンプル片を、樹脂埋設法およびミクロトームを用いて作製した場合における、第2保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、通常、2MPa以上であり、5MPa以上であってもよく、10MPa以上であってもよい。一方、第2保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、通常、50MPa以下であり、40MPa以下であってもよく、30MPa以下であってもよい。第2保護層の断面におけるインデンテーション硬さが高いと、第1保護層との密着性(特に初期密着性)が低くなる可能性がある。なお、転写シートの断面サンプル片の作製方法および第2保護層の断面におけるインデンテーション硬さの測定方法は、上述した第1保護層で記載した方法と同様である。
【0054】
(2)樹脂成分
第2保護層は、第2硬化性樹脂組成物の硬化物(架橋構造体)を含有する。また、第2硬化性樹脂組成物の硬化物は、(メタ)アクリル成分およびウレタン成分を含有する。また、第2硬化性樹脂組成物の硬化物の割合は、第2保護層を構成する全樹脂成分に対して、例えば70質量%以上であり、90質量%以上であってもよく、95質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
【0055】
第2硬化性樹脂組成物としては、例えば、熱硬化性樹脂組成物が挙げられる。熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも熱硬化性樹脂を含む組成物であり、加熱により、硬化する組成物である。熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂として、ウレタン(メタ)アクリル系樹脂を少なくとも含有することが好ましい。第2硬化性樹脂組成物は、ウレタン(メタ)アクリル系樹脂の他に、熱硬化性樹脂として、(メタ)アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、尿素メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂の少なくとも一種をさらに含有していてもよい。また、熱硬化性樹脂組成物は、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤等の硬化剤をさらに含有していてもよい。
【0056】
また、第2硬化性樹脂組成物が、ウレタン(メタ)アクリル系樹脂を含有する場合、ウレタン(メタ)アクリル系樹脂は、ウレタン(メタ)アクリル共重合体であることが好ましく、ポリカーボネート系ウレタン(メタ)アクリル共重合体であることがより好ましい。ポリカーボネート系ウレタン(メタ)アクリル共重合体は、ポリカーボネートジオールと(ジ)イソシアネートとを反応させて得られるポリカーボネート系ポリウレタンポリマーに、(メタ)アクリルモノマーをラジカル重合させて得られる樹脂である。
【0057】
(ジ)イソシアネートとしては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、n-イソシアネートフェニルスルホニルイソシアネート、o-イソシアネートフェニルスルホニルイソシアネート、p-イソシアネートフェニルスルホニルイソシアネート等の芳香族イソシアネート;1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式イソシアネートが挙げられる。
【0058】
(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0059】
ポリカーボネート系ウレタン(メタ)アクリル共重合体における、(メタ)アクリル成分およびウレタン成分の合計に対するウレタン成分の質量比([ウレタン成分]/([(メタ)アクリル成分]+[ウレタン成分])は、例えば、65質量%以上95質量%以下であり、70質量%以上90質量%以下であってもよい。上記質量比を65質量%以上にすることで、ポリカーボネート系ウレタン(メタ)アクリル共重合体におけるポリカーボネート構造の割合を多くすることができるため、ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体の構造がよりリジットになる。そのため、第2保護層の断面におけるインデンテーション硬さを所定の値以上に調整することができる。また、上記質量比を95質量%以下にすることで、第2保護層の断面におけるインデンテーション硬さを所定の値以下に調整することができる。
【0060】
(3)耐候剤
第2保護層は、通常、耐候剤を含有する。耐候剤としては、例えば、紫外線吸収剤および光安定剤が挙げられる。第2保護層は、紫外線吸収剤および光安定剤の少なくとも一つを含むことが好ましい。耐候剤の好ましい種類および態様については、上記「1.第1保護層」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。特に、第2保護層は、トリアジン系紫外線吸収剤を含むことが好ましい。また、第2保護層は、ヒンダードアミン系光安定剤を含むことが好ましい。
【0061】
第2保護層に含まれる紫外線吸収剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上50質量部以下であり、3質量部以上40質量部以下であってもよく、10質量部以上35質量部以下であってもよい。また、第2保護層に含まれる紫外線吸収剤の含有量(樹脂成分100質量部に対する含有量)は、第1保護層に含まれる紫外線吸収剤の含有量(樹脂成分100質量部に対する含有量)より多くてもよい。
【0062】
第2保護層に含まれる光安定剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上15質量部以下であり、1質量部以上15質量部以下であってもよく、3質量部以上10質量部以下であってもよい。また、第2保護層に含まれる光安定剤の含有量(樹脂成分100質量部に対する含有量)は、第1保護層に含まれる光安定剤の含有量(樹脂成分100質量部に対する含有量)より多くてもよい。
【0063】
(4)添加剤
第2保護層は、シリコーン化合物、重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、接着性向上剤、酸化防止剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、防汚剤、消泡剤、充填剤、ブロッキング防止剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0064】
(5)第2保護層
また、第2保護層の厚さは、例えば、2μm以上10μm以下であり、3μm以上8μm以下であってもよく、3μm以上5μm以下であってもよい。第2保護層が薄いと、第1保護層との密着性(特に初期密着性)が低くなる場合がある。一方、第2保護層が厚いと、温度変化が繰り返されるような環境下において、第2保護層の動きが大きくなり、良好な耐候密着性が得られない可能性がある。
【0065】
3.転写層
本開示における転写シートは、離型フィルムと、その離型フィルムの一方の面に配置された転写層と、を有する。転写層は、離型フィルム側から順に、第1保護層および第2保護層を少なくとも有する。転写層は、第1保護層および第2保護層を有していてもよく、他の層をさらに有していてもよい。他の層としては、例えば、意匠層および接着層が挙げられる。転写層は、第2保護層の第1保護層とは反対側の面に、接着層を有していてもよい。また、転写層は、第2保護層の第1保護層とは反対側の面に、意匠層を有していてもよい。また、転写層は、離型フィルム側から順に、第1保護層、第2保護層、意匠層および接着層を有していてもよい。
【0066】
転写層の厚さは、例えば8μm以上であり、10μm以上であってもよく、12μm以上であってもよく、14μm以上であってよい。転写層が薄いと、十分な耐候性が得られない可能性がある。一方、転写層の厚さは、例えば50μm以下であり、40μm以下であってもよく、30μm以下であってもよい。
【0067】
(1)接着層
本開示における転写シートは、第2保護層の第1保護層とは反対側の面に、接着層を有していてもよく、有していなくてもよい。本開示における転写シートが後述する意匠層を含む場合、意匠層の第2保護層とは反対側の面に、接着層を有していてもよい。
【0068】
接着層は、転写シートにおける転写層を構成する層において、基体と接する層であることが好ましい。この場合、接着層は、転写層と基体との密着性を向上させるために配置される。接着層は、接着性を有する成分を含有してもよい。接着性を有する成分としては、(メタ)アクリル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル系樹脂、エステル系樹脂、エポキシ系樹脂、イミド系樹脂、ゴム系樹脂が挙げられる。
【0069】
接着層は、いわゆる粘着層であってもよい。粘着層は、常温で粘着性を有している。粘着層に含まれる樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ビニル系樹脂、エステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ゴム系樹脂、アイオノマー系樹脂が挙げられる。
【0070】
また、接着層は、いわゆるヒートシール層であってもよい。ヒートシール層は、熱により粘着性を発現する。ヒートシール層に含まれる樹脂としては、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、ポリアクリルポリオール、ウレタン樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、スチレン-アクリル共重合、アクリル-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アミド樹脂、シアノアクリレート樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられ、これらを単独で、または、複数種を組み合わせて使用できる。この中でも、外装部材製造時の加工性および転写層と基体との密着性を向上させるために、アクリル樹脂、ポリアクリルポリオールおよびウレタン樹脂の少なくとも一種を用いることが好ましい。特に、アクリル樹脂が好ましい。
【0071】
転写シートの断面サンプル片を、樹脂埋設法およびミクロトームを用いて作製した場合における、接着層の断面におけるインデンテーション硬さは、特に限定されないが、例えば、100MPa以上、300MPa以下であり、120MPa以上、270MPa以下であってもよく、140MPa以上、250MPa以下であってもよい。接着層の断面におけるインデンテーション硬さが上記範囲であれば、例えば、意匠層との間において、良好な耐候密着性が得られる。なお、転写シートの断面サンプル片の作製方法および接着層のインデンテーション硬さの測定方法は、上述した第1保護層で記載した方法と同様である。
【0072】
接着層の厚さは、例えば、1μm以上30μm以下であり、2μm以上10μm以下であってもよく、3μm以上8μm以下であってもよく、3μm以上5μm以下であってもよい。接着層の厚みが上記範囲内であると、外装部材を製造時、接着層と基体との密着性を良好にしやすくできる。
【0073】
本開示において、接着層は、着色剤を含んでいてもよい。着色剤としては、後述する意匠層における着色剤が挙げられる。接着層が着色剤を含むことにより、転写層に意匠性を付与することができる。すなわち、接着層は、後述する意匠層の機能を共有していてもよい。
【0074】
(2)意匠層
本開示における転写シートは、第2保護層の第1保護層とは反対側の面に、意匠層を有していてもよく、有していなくてもよい。意匠層を設けることで、外装部材の意匠性が向上する。意匠層および第2保護層は、直接接触するように配置されていてもよく、他の層を介して配置されていてもよい。
【0075】
意匠層としては、例えば、ベタ層(インキをベタ塗りした層)、絵柄層(インキを印刷した層)が挙げられる。転写シートは、意匠層として、離型フィルム側から順に、絵柄層およびベタ層を有していてもよい。絵柄層における絵柄(模様)としては、例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様、草花模様が挙げられる。
【0076】
意匠層は、通常、着色剤およびバインダー樹脂を含有する。着色剤としては、例えば、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、ニッケルアゾ錯体、フタロシアニンブルー、アゾメチンアゾブラック等の有機顔料(染料を含む)、アルミニウム、真鍮等の金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等のパール顔料が挙げられる。
【0077】
バインダー樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリルポリオール系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、エステル系樹脂、アミド系樹脂、ブチラール系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタンアクリル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル共重合体、塩素化プロピレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、酢酸セルロース系樹脂が挙げられる。中でも、アクリルポリオール系樹脂とウレタン系樹脂とを組み合わせて用いることがより好ましい。
【0078】
転写シートの断面サンプル片を、樹脂埋設法およびミクロトームを用いて作製した場合における、意匠層の断面におけるインデンテーション硬さは、特に限定されないが、例えば、100MPa以上、300MPa以下であり、120MPa以上、270MPa以下であってもよく、140MPa以上、250MPa以下であってもよい。意匠層の断面におけるインデンテーション硬さが上記範囲であれば、例えば、接着層または第2保護層との間において、良好な耐候密着性が得られる。なお、転写シートの断面サンプル片の作製方法および意匠層のインデンテーション硬さの測定方法は、上述した第1保護層で記載した方法と同様である。
【0079】
意匠層は、必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤、硬化剤、可塑剤、触媒等の添加剤を含有していてもよい。意匠層の厚さは、例えば、0.5μm以上20μm以下であり、1μm以上10μm以下であってもよく、2μm以上5μm以下であってもよい。
【0080】
(3)第2離型フィルム
本開示における転写シートは、第2保護層の第1保護層とは反対側の面に、第2離型フィルムを有していてもよい。例えば、転写シートをロール状に巻き取って製造した場合に、ブロッキングの発生を抑制できる。第2離型フィルムは、通常、後述する密着工程の前に、転写シートから剥離される。第2離型フィルムの詳細については、後述する第1離型フィルムに記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0081】
4.離型フィルム
本開示における転写シートは、第1保護層の第2保護層とは反対側の面に、離型フィルム(第1離型フィルム)を有する。離型フィルムおよび第1保護層は、直接接触するように配置されていてもよく、他の層を介して配置されていてもよい。
【0082】
離型フィルムは、樹脂フィルムを含むことが好ましい。樹脂フィルムに含まれる樹脂としては、例えば、エステル系樹脂、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、アミド系樹脂、イミド系樹脂、カーボネート系樹脂が挙げられる。
【0083】
樹脂フィルムは、エステル系樹脂またはオレフィン系樹脂を含有することが好ましい。エステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート-イソフタレート共重合体が挙げられる。これらの中でも、転写シートを製造する際の熱収縮、および、電離放射線の照射による収縮が生じにくいという観点から、PETまたはPBTが好ましく、PETがより好ましい。
【0084】
オレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体が挙げられる。これらの中でも、転写シートを製造する際の熱収縮、および、電離放射線の照射による収縮が生じにくいという観点から、ポリプロピレンが好ましい。
【0085】
樹脂フィルムは、延伸フィルムであってもよく、未延伸フィルムであってもよい。延伸フィルムにおける機械方向(MD)における延伸倍率は、例えば5倍以上30倍以下である。延伸フィルムにおける幅方向(TD)における延伸倍率は、例えば5倍以上30倍以下である。また、離型フィルムの厚さは、例えば、10μm以上200μm以下であり、15μm以上150μm以下であってもよく、20μm以上100μm以下であってもよい。
【0086】
本開示における離型フィルムは、目的とする第1保護層の表面形状によって、鏡面フィルムを使用することもできるし、低艶フィルムを使用することができる。
【0087】
離型フィルムが低艶フィルムである場合、離型フィルムの転写層側とは反対側に位置する第1面の60°グロス値は、例えば、90以上であり、100以上であってもよく、110以上であってもよい。第1面の60°グロス値が上記値以上であることにより、離型フィルムを剥離しなくても、意匠の視認性に優れる転写シートとなる。そのため、離型フィルムを剥離しない状態で欠点検査が可能となり、作業性が向上する。また、離型フィルムをそのままマスキングとして使用することができるため、プラスチック利用量の削減を図ることができる。一方、離型フィルムの第1面の60°グロス値は、例えば、200以下であり、160以下であってもよく、140以下であってもよい。
【0088】
離型フィルムの第1面の60°グロス値とは、以下の方法により測定された値である。転写シートから剥がした離型フィルムを、光沢のない黒台紙の上に第1面が上になるように置き、グロスメータ(「マイクロトリグロス(機種名)」、BYKガードナー社製)を用いて、JIS Z 8741:1997の方法3に準拠して60°鏡面光沢度を測定する。
【0089】
また、離型フィルムの転写層側に位置する第2面の60°グロス値は、例えば、40以下であり、35以下であってもよく、30以下であってもよい。離型フィルムの第2面の60°グロス値が上記値以下であれば、離型フィルムを剥離した後の転写層が低艶感を発現する。一方、第2面の60°グロス値は、例えば、3.0以上であり、5.0以上であってもよく、10以上であってもよい。第2面の60°グロス値が低いと、第1保護層の樹脂が細かいマット形状に入り込み、剥離が困難になる可能性がある。また、狙った形状を賦形できなくなる可能性がある。
【0090】
離型フィルムの第2面の60°グロス値とは、以下の方法により測定された値である。
転写シートから剥がした離型フィルムを、光沢のない黒台紙の上に第2面が上になるように置き、グロスメータ(「マイクロトリグロス(機種名)」、BYKガードナー社製)を用いて、JIS Z 8741:1997の方法3に準拠して60°鏡面光沢度を測定する。
【0091】
第1面の最大高さRzは、例えば、0.8μm以下であり、0.6μm以下であってもよく、0.4μm以下であってもよい。Rz(最大高さ)は、JIS B0601:2013に規定される輪郭曲線の山及び高さパラメータの一つであり、基準長さにおける輪郭曲線の中で、最も高い山の高さと最も深い谷の深さとの和である。よって、Rz(最大高さ)が上記範囲であると、光の乱反射が抑制され、意匠の視認性が向上する。一方、第1面の最大高さRzは、例えば、0.1μm以上であり、0.2μm以上であってもよい。
【0092】
離型フィルムの第1面の最大高さRzは、離型フィルムの第1面の任意の箇所の長方形(1024μm×768μm)を測定領域として、下記測定装置および下記条件で測定された値である。
・測定装置:形状解析レーザ顕微鏡(VK-X1000、株式会社キーエンス製)
・対物レンズ:50倍
・測定モード:形状測定モード
・測定ピッチ:12μm
・測定品質:高速モード
・スキャンモード:レーザーコンフォーカル
【0093】
また、本明細書において、Rz(最大高さ)は、任意の10箇所における測定値の平均値である。
【0094】
離型フィルムは、第2面の最大高さRzが、例えば、2.0μm以上であり、3.0μm以上であってもよく、4.0μm以上であってもよい。第2面の最大高さRzが低いと、離型フィルムを剥離した後の転写層が低艶感を発現しにくい。一方、第2面の最大高さRzは、例えば、6.0μm以下であり、5.0μm以下であってもよい。第2面の最大高さRzとは、離型フィルムの第2面に対して、上記第1面の最大高さRzの測定方法と同様の方法で測定した値である。
【0095】
本開示における離型フィルムは、特に限定されず、単一の層であってもよいし、多層構造を有していてもよい。離型フィルムが低艶フィルムである場合、例えば、上述の第1面を含むフィルム層と、フィルム層の転写層側の面に配置され、かつ、上述の第2面を含むマット層と、を有することが好ましい。
【0096】
(i)フィルム層
フィルム層は、上述した第1面を有するものであれば、特に限定されないが、上述した樹脂フィルムであることが好ましい。
【0097】
(ii)マット層
マット層は、上述した第2面を有するものであれば、特に限定されないが、例えば、樹脂成分、およびマット剤としての粒子を含有する。以下、樹脂成分、およびマット剤としての粒子を含有するマット層を、第1のマット層と称する。第1のマット層における樹脂成分は、典型的には、硬化性樹脂の硬化物(架橋構造体)である。一方、樹脂成分は、熱可塑性樹脂であってもよい。中でも、第1のマット層は、硬化性樹脂の硬化物を含有することが好ましい。第1のマット層が、硬化性樹脂の硬化物を含有することで、第1保護層に対する離型性が良好になる。
【0098】
離型フィルムの第2面が第1のマット層の表面である場合、上述の60°グロス値および最大高さRzは、粒子の種類の選択、平均粒子径および含有量の調整等によって、調整できる。
【0099】
硬化性樹脂としては、例えば、電離放射線硬化性樹脂および熱硬化性樹脂が挙げられる。電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、電子線硬化性樹脂および紫外線硬化性樹脂が挙げられる。
【0100】
電離放射線硬化性樹脂(電離放射線硬化性化合物)は、電離放射線の照射により架橋重合反応を生じ、3次元の高分子構造に変化する材料であれば限定されない。電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、電離放射線の照射により架橋可能な重合性不飽和結合またはエポキシ基を分子中に有する、プレポリマー、オリゴマーおよびモノマーが挙げられる。本開示においては、電離放射線硬化性樹脂を1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。中でも、電離放射線硬化性樹脂をとして、多官能モノマーおよびオリゴマーの少なくとも一方を用いることが好ましい。
【0101】
電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系樹脂;シロキサン等のケイ素系樹脂;エステル系樹脂;エポキシ系樹脂が挙げられる。(メタ)アクリレート系樹脂とは、アクリレート系樹脂またはメタクリレート系樹脂をいう。
【0102】
電離放射線硬化性樹脂の重量平均分子量は、例えば、500以上、80,000以下であり、1,000以上、50,000以下であってもよい。重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレンを標準物質に用いて測定される値である。
【0103】
電離放射線硬化性樹脂として、重量平均分子量が500以上である、多官能モノマーまたはオリゴマーを少なくとも含有することが好ましい。このような多官能モノマーまたはオリゴマーとしては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系樹脂が挙げられる。
【0104】
一方、熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和エステル系樹脂、ウレタン系樹脂(2液硬化型ポリウレタンも含む)、エポキシ系樹脂、アミノアルキッド系樹脂、フェノール系樹脂、尿素系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、メラミン系樹脂、グアナミン系樹脂、メラミン尿素共縮合系樹脂、珪素系樹脂、シロキサン系樹脂が挙げられる。
【0105】
粒子としては、例えば、無機粒子、合成樹脂粒子が挙げられる。無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリンが挙げられる。合成樹脂粒子としては、例えば、アクリルビーズ、ウレタンビーズ、ナイロンビーズ、シリコーンビーズ、シリコーンゴムビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリオレフィンワックス(例えば、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス)が挙げられる。
【0106】
粒子の平均粒子径は、1.0μm以上、10μm以下であることが好ましく、2.0μm以上、8.0μm以下であることがより好ましい。
【0107】
また、第1のマット層における粒子の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、80質量部以下であり、より好ましくは5質量部以上、60質量部以下である。
【0108】
第1のマット層は、必要に応じて、離型剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、酸化防止剤、レベリング剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、熱ラジカル発生剤、アルミキレート剤等の添加剤を含有していてもよい。第1のマット層の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.1μm以上、10μm以下である。
【0109】
第1のマット層は、例えば、硬化性樹脂を含有するマット層形成用インキを、フィルム層の一方の面に塗工し、硬化させることにより、得られる。
【0110】
マット層としては、例えば、一方の面が不規則なシワにより構成される凹凸形状を有する層(第2のマット層)であってもよい。このような第2のマット層の材料および形成方法としては、特開2022-149930号公報に記載の離型層の材料および形成方法を採用することができる。
【0111】
第1のマット層および第2のマット層は、フィルム層の一方の面の全面に形成されていてもよいし、フィルム層の一方の面の一部領域に形成されていてもよい。フィルム層の一方の面の全面とは、フィルム層の一方の面の90%以上の領域をいう。マット層は、フィルム層の一方の面の95%以上を覆うように配置されていてもよく、100%を覆うように配置されていてもよい。一方、マット層は、フィルム層の一方の面の50%以下を覆うように配置されていてもよく、40%以下を覆うように配置されていてもよく、30%以下を覆うように配置されていてもよい。
【0112】
また、低艶フィルムとしては、上述したように、フィルム層およびマット層を有する構成に限られず、単一の層であってもよい。例えば、第1のマット層で例示した粒子が練りこまれたマットフィルムを使用することもできる。この場合、転写層側とは反対側に位置する第1面と、転写層側に位置する第2面の60°グロス値およびRzは、同程度となる。
【0113】
B.転写シートの製造方法
図2は、本開示における転写シートの製造方法を例示する概略断面図である。まず、
図2(a)に示すように、離型フィルム1を準備する。次に、
図2(b)に示すように、離型フィルム1の面に、第1硬化性樹脂組成物および耐候剤を含有する第1組成物を塗工し、硬化させ、第1保護層2を形成する。次に、
図2(c)に示すように、第1保護層2の離型フィルム1とは反対側の面に、第2硬化性樹脂組成物および耐候剤を含有する第2組成物を塗工し、硬化させ、第2保護層3を形成する。これにより、離型フィルム1と、第1保護層2および第2保護層3を、厚さ方向D
Tにおいて、この順に有する転写シート10が得られる。
図2において、転写層Xは、第1保護層2および第2保護層3に該当する。また、転写シート10の断面サンプル片を、樹脂埋設法およびミクロトームを用いて作製した場合における、第1保護層2の断面におけるインデンテーション硬さが所定の範囲にあり、かつ、第2保護層3の断面におけるインデンテーション硬さが所定の範囲にある。
【0114】
本開示によれば、上述した理由により、良好な耐候密着性および耐傷性を有する、外装部材用の転写シートが得られる。
【0115】
1.第1保護層形成工程
本開示における第1保護層形成工程は、上記離型フィルムの面に、上記第1硬化性樹脂組成物および耐候剤を含有する第1組成物を塗工し、硬化させ、上記第1保護層を形成する工程である。第1組成物は、第1保護層形成用の組成物である。第1硬化性樹脂組成物および耐候剤については、上記「A.転写シート」に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0116】
第1組成物を塗工する方法としては、例えば、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法が挙げられる。第1組成物を塗工することで、第1塗工層が得られる。第1塗工層を硬化する方法としては、例えば、電子線、紫外線等の電離放射線を照射する方法、熱を加える方法が挙げられる。
【0117】
2.第2保護層形成工程
本開示における第2保護層形成工程は、上記第1保護層の上記離型フィルムとは反対側の面に、上記第2硬化性樹脂組成物および耐候剤を含有する第2組成物を塗工し、硬化させ、上記第2保護層を形成する工程である。第2組成物は、第2保護層形成用の組成物である。第2硬化性樹脂組成物および耐候剤については、上記「A.転写シート」に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0118】
第2組成物を塗工する方法としては、例えば、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法が挙げられる。第2組成物を塗工することで、第2塗工層が得られる。第2塗工層を硬化する方法としては、例えば、熱を加える方法が挙げられる。
【0119】
3.その他の工程
本開示における転写シートの製造方法は、第1保護層形成工程および第2保護層形成工程に加えて、上述した転写層に属する層を形成する工程を有していてもよい。例えば、本開示における転写シートの製造方法は、第2保護層の第1保護層とは反対側の面に接着層を形成する接着層形成工程を有していてもよい。接着層の形成方法としては、接着層を形成する組成物を、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法等の公知の方式で塗工し、必要に応じて、乾燥、硬化することによって形成できる。例えば、本開示における転写シートの製造方法は、第2保護層の第1保護層とは反対側の面に意匠層を形成する意匠層形成工程を有していてもよい。意匠層の形成方法としては、例えば、第2保護層の第1保護層とは反対側の面に、着色剤、バインダー樹脂および溶剤を含有するインキを塗工する方法が挙げられる。また、上述した各工程により得られる転写シートについては、上記「A.転写シート」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0120】
C.外装部材の製造方法
図3は、本開示における外装部材の製造方法を例示する概略断面図である。まず、
図3(a)に示すように、転写シート10を準備する。
図3(a)に示す転写シート10は、離型フィルム1、第1保護層2、第2保護層3および接着層4を、厚さ方向D
Tにおいて、この順に有する。次に、
図3(b)に示すように、転写シート10の第2保護層3側の面と、基体20と、を対向させ、両者を密着させる。「転写シート10の第2保護層3側の面」とは、離型フィルム1を基準とした場合に第2保護層3側に位置する、転写シート10の面をいう。
図3(a)に示す転写シート10は接着層4を有するため、「転写シート10の第2保護層3側の面」は、接着層4の面に該当する。次に、
図3(c)に示すように、転写シート10から離型フィルム1を剥離する。これにより、第1保護層2、第2保護層3、接着層4および基体20を、厚さ方向D
Tにおいて、この順に有する、外装部材100が得られる。
【0121】
本開示によれば、上述した転写シートを用いることで、良好な耐候密着性および耐傷性を有する外装部材が得られる。
【0122】
1.準備工程
本開示における準備工程は、上述した転写シートを準備する工程である。転写シートについては、上記「A.転写シート」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0123】
2.密着工程
本開示における密着工程は、上記転写シートの上記第2保護層側の面と、基体とを対向させ、両者を密着させる工程である。転写シートおよび基体を対向させる際に、両者を直接接触するように配置してもよく、両者の間に他の層を介して配置してもよい。例えば、転写シートが接着層を有さない場合には、接着剤層が配置される。
【0124】
本開示における基体の材料としては、特に限定されることなく、樹脂、木材、金属、非金属無機材料、紙、不織布又は織布等を、用途に応じて適宜選択できる。
【0125】
本開示における基体の一例としては、樹脂部材が挙げられる。樹脂部材に用いられる樹脂としては、例えば、塩化ビニル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、エステル系樹脂、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系共重合体(ABS系樹脂)、フェノール系樹脂、セルロース系樹脂、ゴム、ポリカーボネート樹脂、メラミン樹脂が挙げられる。樹脂部材は、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ザイロン繊維、ボロン繊維、ポリエチレン繊維等の繊維を含有してもよい。繊維を含有することにより、樹脂部材の強度を向上させることができる。また、基体の他の例としては、木質部材が挙げられる。木質部材としては、例えば、木材単板、木材合板、パーティクルボード、木質繊維板が挙げられる。木質部材に用いられる木材としては、例えば、杉、檜、松、ラワンが挙げられる。
【0126】
また、基体の他の例としては、金属部材が挙げられる。金属部材に用いられる金属としては、例えば、鉄、アルミニウムが挙げられる。また、基体の他の例としては、窯業部材が挙げられる。窯業部材の材料は、ガラス、陶磁器等のセラミックスであってもよく、石膏等の非セメント窯業系材料であってもよく、ALC(軽量気泡コンクリート)等の非陶磁器窯業系材料であってもよい。また、窯業部材として、ケイ酸カルシウム板を使用することもできる。
【0127】
基体は、転写シートとの密着性向上を目的として、表面処理が施されていてもよい。例えば、基体がアルミニウム部材である場合、表面処理としては、アルマイト処理、化成処理、メッキ処理、塗装処理、ブラスト処理、研磨処理等があげられる。例えば、基体が窯業部材である場合、UVコート処理、塗装処理等があげられる。
【0128】
基体の形状は、特に限定されず、例えば、板状、シート状、立体形状が挙げられる。また、基体は、平面部を有していてもよく、曲面部を有していてもよく、平面部および曲面部の両方を有していてもよい。また、基体は、凸部、凹部、凸条部、凹条部、貫通部の少なくとも一つを有していてもよい。
【0129】
本開示における基体としては、中でも、アクリル板、ポリカーボネート板、不燃板、金属板、塩化ビニル板、メラミン板または炭素繊維強化プラスチック板が好ましい。不燃板としては、例えば、繊維強化セメント板が挙げられ、中でも、ケイ酸カルシウム板が好ましい。
【0130】
密着工程においては、転写シートの第2保護層側の面と、基体とを対向させ、両者を密着させる。両者を密着させる方法としては、例えば、ラミネート法が挙げられる。ラミネート法では、例えば、転写シートおよび基体の積層体を、転写シート側から加熱および加圧する。加熱および加圧の方法としては、例えば、ロール転写装置を用いる方法が挙げられる。ロール転写装置のロール温度は、例えば200℃以下であり、180℃以下であってもよい。ロール温度が高いと、転写シートが必要以上に軟化する可能性がある。一方、ロール転写装置のロール温度は、例えば100℃以上であり、110℃以上であってもよく、120℃以上であってもよい。また、本開示における外装部材の製造方法は、密着工程の後に、第1保護層から離型フィルムを剥離する剥離工程を有していてもよい。
【0131】
3.外装部材
本開示における外装部材は、第1保護層、第2保護層、接着層および基体を、厚さ方向において、この順に有する。また、外装部材は、第1保護層の第2保護層とは反対側の面に、離型フィルムを有している離型フィルム付外装部材であってもよく、離型フィルムを有しない外装部材であってもよい。
【0132】
本開示における外装部材は、例えば建材(建築構造物の外装部材)である。建材は、例えば、住宅、事務所、店舗、病院、診療所、一般道路及び高速道路、農業ハウス等に用いられる。外装部材の用途としては、例えば、外壁、屋根、軒天井、戸袋、窓枠、扉、扉枠、手すり、塀、物干台が挙げられる。また、外装部材の具体的な用途としては、一般道路及び高速道路等における防音壁又は風防壁、バルコニーの仕切り板、フェンス、テラス又はカーポートにおける屋根部材、農業用ハウスを構成する透明部材等が挙げられる。
【0133】
また、本開示における外装部材は、建材(建築構造物の外装部材)以外には、例えば、車両、船舶及び航空機の外装部材、産業用機械の外装部材、並びに各種レンズの外装部材等として用いられる。車両の外装部材としては、例えば、サイドウインドウ、リアウインドウ、ルーフウインドウ、フロントウインドウ及びクォーターウインドウなどの窓材;ヘッドライトカバー、ウインカーランプレンズ、リフレクター;並びにピラーが挙げられる。車両としては、例えば、自動車、鉄道車両、建設機械、及びゴルフカートなどの軽車両が挙げられる。産業用機械の外装材としては、例えば、工作機械における視認用窓材が挙げられる。レンズとしては、例えば、信号機のレンズが挙げられる。
【0134】
D.外装部材
図4は、本開示における外装部材を例示する概略断面図である。
図4(a)に示すように、本開示における外装部材100は、第1保護層2、第2保護層3、接着層4および基体20を、厚さ方向において、この順に有し、上記第1保護層2は、第1硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、上記第2保護層3は、第2硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、上記第1硬化性樹脂組成物の硬化物、および、第2硬化性樹脂組成物の硬化物は、それぞれ、(メタ)アクリル成分およびウレタン成分を含有する。また、外装部材100の断面サンプル片を、樹脂埋設法およびミクロトームを用いて作製した場合において、上記第1保護層2の断面におけるインデンテーション硬さは、150MPa以上、300MPa以下であり、上記第2保護層3の断面におけるインデンテーション硬さは、2MPa以上、50MPa以下である。ここで、接着層4は、意匠層の機能も有していてもよい。さらに、
図4(b)に示すように、外装部材100は、第2保護層3と接着層4との間に、意匠層5を有していてもよい。
【0135】
本開示によれば、第1保護層が、所定の第1硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含み、断面におけるインデンテーション硬さが所定の範囲にあり、かつ、第2保護層が、所定の第2硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含み、断面におけるインデンテーション硬さが所定の範囲にあることにより、耐傷性に優れ、第1保護層および第2保護層の耐候密着性が良好な外装部材となる。
【0136】
1.第1保護層
本開示における外装部材は、第1保護層を有する。第1保護層は、外装部材の表面特性(例えば耐傷性、耐摩耗性等)の向上に寄与する。第1保護層は、外装部材の最表層であってもよい。
【0137】
本開示において、外装部材の断面サンプル片を、樹脂埋設法およびミクロトームを用いて作製した場合において、第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、通常、150MPa以上であり、180MPa以上であってもよく、190MPa以上であってもよい。第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さが低いと、良好な耐傷性、耐摩耗性が得られない可能性がある。一方、外装部材の断面サンプル片を、樹脂埋設法およびミクロトームを用いて作製した場合において、第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、通常、300MPa以下であり、280MPa以下であってもよく、250MPa以下であってもよい。第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さが高いと、第2保護層に対する第1保護層の追従性が低くなり、良好な耐候密着性が得られない可能性がある。
【0138】
第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さの調整方法は、上記「A.転写シート」に記載した方法と同様である。
【0139】
外装部材における第1保護層におけるインデンテーション硬さは、以下の方法で、樹脂埋設法およびミクロトームを用いて作製した断面サンプル片を測定して得られた値である。
(測定用断面サンプル片の作製方法)
外装部材を任意の大きさに切断することにより、カットサンプルを作製する。カットサンプルを樹脂(常温硬化タイプのエポキシ2液硬化樹脂)で包埋し、室温で24時間以上放置して硬化させることにより、カットサンプルを樹脂で包埋してなる包埋サンプルを作製する(樹脂埋設法)。ミクロトームを用い、包埋サンプルを垂直に切断し、測定対象である層の断面を露出させた、インデンテーション硬さ測定用の断面サンプル片を作製する。包埋サンプルの切断方法は、上記「A.転写シート」に記載した方法と同様である。
【0140】
インデンテーション硬さの測定方法は、上記「A.転写シート」に記載した方法と同様である。
【0141】
第1保護層の樹脂成分、耐候剤、添加剤および厚さについては、上記「A.転写シート」に記載した方法と同様である。
【0142】
2.第2保護層
本開示における外装部材は、第2保護層を有する。第2保護層および第1保護層は、直接接触するように配置されていてもよく、他の層を介して配置されていてもよい。
【0143】
外装部材の断面サンプル片を、樹脂埋設法およびミクロトームを用いて作製した場合において、第2保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、通常、2MPa以上であり、5MPa以上であってもよく、10MPa以上であってもよく、15MPa以上であってもよく、20MPa以上であってもよい。一方、第2保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、通常、50MPa以下であり、40MPa以下であってもよく、30MPa以下であってもよい。第2保護層の断面におけるインデンテーション硬さが高いと、第1保護層との密着性(特に初期密着性)が低くなる可能性がある。なお、外装部材の断面サンプル片の作製方法および第2保護層の断面におけるインデンテーション硬さの測定方法は、上述した第1保護層で記載した方法と同様である。
【0144】
外装部材における第2保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、転写シートの第2保護層の断面におけるインデンテーション硬さよりも大きくなる場合がある。転写によって圧縮されるためである。
【0145】
第2保護層の樹脂成分、耐候剤、添加剤および厚さについては、上記「A.転写シート」に記載した方法と同様である。
【0146】
3.接着層
本開示における外装部材は、接着層を有する。接着層としては、上記「A.転写シート」に記載した接着層と同様のものが挙げられる。また、外装部材における接着層の断面におけるインデンテーション硬さは、転写シートの接着層の断面におけるインデンテーション硬さよりも大きくなる場合がある。転写によって圧縮されるためである。本開示における外装部材の接着層は、上述した転写シートが接着層を有さない場合には、転写シートと基体との間に配置される接着剤層であってもよい。
【0147】
4.意匠層
本開示における外装部材は、意匠層を有していてもよい。意匠層としては、上記「A.転写シート」に記載した意匠層と同様のものが挙げられる。また、外装部材における意匠層の断面におけるインデンテーション硬さは、転写シートの意匠層の断面におけるインデンテーション硬さよりも大きくなる場合がある。転写によって圧縮されるためである。
【0148】
5.基体
本開示における基体については、上記「C.外装部材の製造方法」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0149】
6.外装部材
本開示における外装部材については、上記「C.外装部材の製造方法」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0150】
本開示は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【実施例0151】
[実施例1]
離型フィルム1(鏡面PETフィルム E5001、東洋紡株式会社製)の一方の面に、下記の第1保護層形成用の組成物1を、乾燥後の塗工量が5g/m2となるように塗工し、乾燥した。その後、電子線(加圧電圧:90kV、5Mrad(50kGy))を照射し、厚さ5μmの第1保護層を形成した。
<第1保護層形成用の組成物1>
・電離放射線硬化性樹脂組成物:100質量部
(カプロラクトン系ウレタンアクリレート:30質量部)
(ペンタエリスリトールトリアクリレート(水酸基含有アクリレート):50質量部)
(アクリレート:20質量部)
・トリアジン系紫外線吸収剤:2質量部
(ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(品名:TINUVIN479、BASF社))
・反応性官能基を有する光安定剤:2質量部
(品名:サノールLS-3410、日本乳化剤株式会社)
・溶剤:適量
【0152】
次に、得られた第1保護層の面にコロナ放電処理を施した後に、下記の第2保護層形成用の組成物1を塗工し、乾燥させ、厚さ5μmの第2保護層を形成した。
<第2保護層形成用の組成物1>
・ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体:100質量部(ウレタンとアクリルの比率は9:1)
・ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤:17質量部(商品名:TINUVIN400、BASF社)
・ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤:13質量部(商品名:TINUVIN479、BASF社)
・ヒンダードアミン系光安定剤:8質量部(商品名:TINUVIN123、BASF社)
・ブロッキング防止剤:9質量部(シリカ粒子、平均粒径3μm)
・硬化剤:25質量部(ヘキサメチレンジイソシアネート)
・溶剤:適量
【0153】
次に、得られた第2保護層の面に、アクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート)を含むヒートシール剤を塗工、乾燥し、厚さ5μmの接着層を形成した。これにより、離型フィルム、第1保護層、第2保護層および接着層(ヒートシール層)を、厚さ方向において、この順に有する転写シートを得た。
【0154】
[実施例2]
下記の方法により作製した離型フィルム2の一方の面に、下記の第1保護層形成用の組成物2を、乾燥後の塗工量が5g/m2となるように塗工し、乾燥した。その後、電子線(加圧電圧:90kV、5Mrad(50kGy))を照射し、厚さ5μmの第1保護層を形成した。
【0155】
<離型フィルム2の作製>
厚み50μmPETフィルム(E5101、東洋紡株式会社)のコロナ処理面に、下記の熱硬化性樹脂組成物を乾燥後の塗布量が3g/m2となるように塗工し、40℃オーブンで5日間養生した。これにより、フィルム層およびマット層を有する離型フィルムを得た。
<熱硬化性樹脂組成物>
・ポリエステルポリオール樹脂:100質量部
・硬化剤:15質量部(ヘキサメチレンジイソシアネート)
・マット剤:15質量部(シリカ粒子、平均粒径3μm)
・溶剤:適量
【0156】
<第1保護層形成用の組成物2>
・電離放射線硬化性樹脂組成物:100質量部
(カプロラクトン系ウレタンアクリレート:30質量部)
(ペンタエリスリトールトリアクリレート(水酸基含有アクリレート):70質量部)
・トリアジン系紫外線吸収剤:2質量部
(ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(品名:TINUVIN479、BASF社))
・反応性官能基を有する光安定剤:2質量部
(品名:サノールLS-3410、日本乳化剤株式会社)
・溶剤:適量
【0157】
次に、得られた第1保護層の面にコロナ放電処理を施した後に、上記第2保護層形成用の組成物1を塗工し、乾燥させ、厚さ5μmの第2保護層を形成した。
【0158】
次に、得られた第2保護層の面に、樹脂成分および顔料を含む下記インキ組成物1をグラビアコーティングにより塗工、乾燥し、柄層およびベタ層を含む厚さ3~5μmの意匠層を形成した。得られた意匠層の面に、アクリル樹脂と塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体とを6:4(質量比)で含む接着剤組成物1をグラビアコーティングにより塗工、乾燥し、厚さ2μmの接着層を形成した。これにより、離型フィルム、第1保護層、第2保護層、意匠層および接着層を、厚さ方向において、この順に有する転写シートを得た。
<インキ組成物1>
・インキの樹脂成分(ウレタン樹脂とポリアクリルポリオールの混合樹脂(質量比20:80))
・顔料(有機顔料及び無機顔料)
【0159】
[実施例3]
マット剤が練りこまれた離型フィルム3(厚さ50μmのPETフィルム、ヘーズ(Hz):83%、全光線透過率(Tt):68%、60度鏡面光沢度16%)の一方の面に、下記の第1保護層形成用の組成物3を、乾燥後の塗工量が5g/m2となるように塗工し、乾燥した。その後、電子線(加圧電圧:90kV、5Mrad(50kGy))を照射し、厚さ5μmの第1保護層を形成した。
<第1保護層形成用の組成物3>
・電離放射線硬化性樹脂組成物:100質量部
(カプロラクトン系ウレタンアクリレート:60質量部)
(ウレタンアクリレート:40質量部)
・トリアジン系紫外線吸収剤:2質量部
(ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(品名:TINUVIN479、BASF社))
・反応性官能基を有する光安定剤:2質量部
(品名:サノールLS-3410、日本乳化剤株式会社)
・溶剤:適量
【0160】
次に、得られた第1保護層の面にコロナ放電処理を施した後に、下記の第2保護層形成用の組成物2を塗工し、乾燥させ、厚さ5μmの第2保護層を形成した。
<第2保護層形成用の組成物2>
・ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体:95質量部(ウレタンとアクリルの比率は9:1)
・アクリルポリール:5質量部
・ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤:17質量部(商品名:TINUVIN400、BASF社)
・ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤:13質量部(商品名:TINUVIN479、BASF社)
・ヒンダードアミン系光安定剤:8質量部(商品名:TINUVIN123、BASF社)
・ブロッキング防止剤:9質量部(シリカ粒子、平均粒径3μm)
・硬化剤:25質量部(ヘキサメチレンジイソシアネート)
・溶剤:適量
【0161】
次に、得られた第2保護層の面に、樹脂成分および顔料を含む上記インキ組成物1をグラビアコーティングにより塗工、乾燥し、柄層およびベタ層を含む厚さ3~5μmの意匠層を形成した。得られた意匠層の面に、アクリル樹脂と塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体とを6:4(質量比)で含む接着剤組成物1をグラビアコーティングにより塗工、乾燥し、厚さ2μmの接着層を形成した。これにより、離型フィルム、第1保護層、第2保護層、意匠層および接着層を、厚さ方向において、この順に有する転写シートを得た。
【0162】
[実施例4]
上記離型フィルム3の一方の面に、上記第1保護層形成用の組成物2を、乾燥後の塗工量が5g/m2となるように塗工し、乾燥した。その後、電子線(加圧電圧:90kV、5Mrad(50kGy))を照射し、厚さ5μmの第1保護層を形成した。
【0163】
次に、得られた第1保護層の面にコロナ放電処理を施した後に、下記の第2保護層形成用の組成物3を塗工し、乾燥させ、厚さ5μmの第2保護層を形成した。
【0164】
<第2保護層形成用の組成物3>
・ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体:98質量部(ウレタンとアクリルの比率は9:1)
・アクリルポリール:2質量部
・ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤:17質量部(商品名:TINUVIN400、BASF社)
・ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤:13質量部(商品名:TINUVIN479、BASF社)
・ヒンダードアミン系光安定剤:8質量部(商品名:TINUVIN123、BASF社)
・ブロッキング防止剤:9質量部(シリカ粒子、平均粒径3μm)
・硬化剤:25質量部(ヘキサメチレンジイソシアネート)
【0165】
次に、得られた第2保護層の面に、樹脂成分および顔料を含む上記のインキ組成物1をグラビアコーティングにより塗工、乾燥し、柄層およびベタ層を含む厚さ3~5μmの意匠層を形成した。得られた意匠層の面に、アクリル樹脂と塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体とを6:4(質量比)で含む接着剤組成物1をグラビアコーティングにより塗工、乾燥し、厚さ2μmの接着層を形成した。これにより、離型フィルム、第1保護層、第2保護層、意匠層および接着層を、厚さ方向において、この順に有する転写シートを得た。
【0166】
[実施例5]
(外装部材の製造)
実施例1で得られた転写シートの接着層側の面と、基体(厚さ2mmのアクリル板(「コモグラス」、株式会社クラレ製))の一方の面とを対向させ、積層した。ラミネーターを用い、ラミロール温度170℃、搬送速度2m/minの条件で、転写シート側から加熱および加圧し密着させた。密着させた転写シートから離型フィルムを剥離し、外装部材を得た。
【0167】
[実施例6]
(転写シートの作製)
上記離型フィルム3の一方の面に、上記第1保護層形成用の組成物2を、乾燥後の塗工量が5g/m2となるように塗工し、乾燥した。その後、電子線(加圧電圧:90kV、5Mrad(50kGy))を照射し、厚さ5μmの第1保護層を形成した。
【0168】
次に、得られた第1保護層の面にコロナ放電処理を施した後に、上記第2保護層形成用の組成物2を塗工し、乾燥させ、厚さ5μmの第2保護層を形成した。
【0169】
次に、得られた第2保護層の面に、樹脂成分および顔料を含む上記のインキ組成物1をグラビアコーティングにより塗工、乾燥し、柄層およびベタ層を含む厚さ3~5μmの意匠層を形成した。これにより、離型フィルム、第1保護層、第2保護層および意匠層を、厚さ方向において、この順に有する転写シートを得た。
【0170】
(外装部材の製造)
基体として、転写面にエポキシ樹脂シーラー処理が施された、厚さ10mmの不燃板(繊維強化セメント板)を準備した。次いで、上記で得られた転写シートの意匠層側の面に、ホットメルト接着剤を塗工し乾燥させた。基体のエポキシ樹脂シーラー処理が施された面と、転写シートの接着剤が塗布された面とを対向させて、積層させた。ラミネーターを用い、ラミネートロール温度170℃、搬送速度2m/minの条件で、転写シート側から加熱および加圧し密着させた。密着させた転写シートから離型フィルムを剥離し、外装部材を得た。
【0171】
[比較例1]
上記離型フィルム3の一方の面に、上記第1保護層形成用の組成物2を、乾燥後の塗工量が5g/m2となるように塗工し、乾燥した。その後、電子線(加圧電圧:90kV、5Mrad(50kGy))を照射し、厚さ5μmの第1保護層を形成した。
【0172】
次に、得られた第1保護層の面にコロナ放電処理を施した後に、下記の第2保護層形成用の組成物4を塗工し、乾燥させ、厚さ5μmの第2保護層を形成した。
<第2保護層形成用の組成物4>
・アクリルポリオール:100質量部
・ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤:17質量部(商品名:TINUVIN400、BASF社)
・ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤:13質量部(商品名:TINUVIN479、BASF社)
・ヒンダードアミン系光安定剤:8質量部(商品名:TINUVIN123、BASF社)
・ブロッキング防止剤:9質量部(シリカ粒子、平均粒径3μm)
・硬化剤:25質量部(ヘキサメチレンジイソシアネート)
【0173】
次に、得られた第2保護層の面に、樹脂成分および顔料を含む上記インキ組成物1をグラビアコーティングにより塗工、乾燥し、柄層およびベタ層を含む厚さ3~5μmの意匠層を形成した。得られた意匠層の面に、アクリル樹脂と塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体とを6:4(質量比)で含む接着剤組成物1をグラビアコーティングにより塗工、乾燥し、厚さ2μmの接着層を形成した。これにより、離型フィルム、第1保護層、第2保護層、意匠層および接着層を、厚さ方向において、この順に有する転写シートを得た。
【0174】
[比較例2]
離型フィルム1(鏡面PETフィルム E5001、東洋紡株式会社製)の一方の面に、下記の第1保護層形成用の組成物4を、乾燥後の塗工量が5g/m2となるように塗工し、乾燥した。その後、電子線(加圧電圧:90kV、5Mrad(50kGy))を照射し、厚さ5μmの第1保護層を形成した。
<第1保護層形成用の組成物4>
・電離放射線硬化性樹脂組成物:100質量部
(カプロラクトン系ウレタンアクリレート:100質量部)
・ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤:2質量部(品名:TINUVIN479、BASF社)
・反応性官能基を有する光安定剤:2質量部(品名:サノールLS-3410、日本乳化剤株式会社)
【0175】
次に、得られた第1保護層の面にコロナ放電処理を施した後に、上記の第2保護層形成用の組成物1を塗工し、乾燥させ、厚さ5μmの第2保護層を形成した。
【0176】
次に、得られた第2保護層の面に、樹脂成分および顔料を含む上記インキ組成物1をグラビアコーティングにより塗工、乾燥し、柄層およびベタ層を含む厚さ3~5μmの意匠層を形成した。得られた意匠層の面に、アクリル樹脂と塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体とを6:4(質量比)で含む接着剤組成物1をグラビアコーティングにより塗工、乾燥し、厚さ2μmの接着層を形成した。これにより、離型フィルム、第1保護層、第2保護層、意匠層および接着層を、厚さ方向において、この順に有する転写シートを得た。
【0177】
[インデンテーション硬さの測定]
実施例1~4、比較例1および比較例2で得られた転写シートの第1保護層、第2保護層およびヒートシール層(実施例1)または意匠層(実施例2~4、比較例1および比較例2)について、上述した方法により、インデンテーション硬さを測定した。結果を表1に示す。
実施例5および実施例6で得られた外装部材の第1保護層、第2保護層およびヒートシール層または意匠層について、上述した方法により、インデンテーション硬さを測定した。結果を表1に示す。
なお、実施例6のインデンテーション硬さの値は、基体として、不燃板の代わりに厚さ2mmのアクリル板(「コモグラス」、株式会社クラレ製))を用いた場合において測定した外装部材における第1保護層、第2保護層および意匠層のインデンテーション硬さである。
【0178】
[密着性(初期)の評価]
実施例1~4、比較例1および比較例2で得られた転写シートの接着層(意匠層)側の面と、基体(厚さ2mmのアクリル板(「コモグラス」、株式会社クラレ製))の一方の面とを対向させ、積層した。ラミネーターを用い、ラミロール温度170℃、搬送速度2m/minの条件で、転写シート側から加熱および加圧し密着させた。密着させた転写シートから離型フィルムを剥離し、評価用部材としての外装部材を得た。実施例5および実施例6で得られた外装部材は、そのまま評価用部材として用いた。
【0179】
粘着テープ(「セロテープ(登録商標)」、ニチバン株式会社製)を、評価用部材の端部から5cm程はみ出るようにし、2.5cm×2.5cmの面積で貼り付けた。その後、貼り付けた粘着テープのはみ出た部分をつまみ、評価用部材の表面に対し45°の方向に粘着テープを剥がすことで、転写層の層間の密着性を確認し、下記の評価基準で初期密着性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0180】
<評価基準>
A:転写層の層間で剥離は生じなかった。
B:転写層の層間で剥離が生じた。
【0181】
[耐候密着性の評価]
上述した評価用部材に対し、メタルハライドランプ(MWOM)による下記促進耐候試験(下記の照射条件で20時間紫外線を照射した後、下記の結露条件で4時間結露を行う工程を1サイクルとして、前記サイクルを繰り返し行う試験)を700時間実施後、下記の通り耐候密着性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0182】
<促進耐候試験の条件>
(試験装置)
ダイプラ・ウィンテス社製、商品名「ダイプラ・メタルウェザー」
(照射条件)
照度:65mW/cm2、ブラックパネル温度:63℃、槽内湿度:50%RH、時間:20時間
(結露条件)
照度:0mW/cm2、槽内湿度:98%RH、時間:4時間
【0183】
粘着テープ(「セロテープ(登録商標)」、ニチバン株式会社製)を、促進耐候試験を実施した評価用部材の端部から5cm程はみ出るようにし、2.5cm×2.5cmの面積で貼り付けた。その後、貼り付けた粘着テープのはみ出た部分をつまみ、評価用部材の表面に対し45°の方向に粘着テープを剥がすことで、転写層の層間の耐候密着性を確認し、下記の評価基準で密着性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0184】
<評価基準>
A:転写層の層間で剥離は生じなかった。
B:転写層の層間で剥離が生じた。
【0185】
[耐傷性の評価]
上述した評価用部材について、第1保護層側の表面を、スチールウール(ボンスター、#0000)を用いて荷重300g/cm2で5往復して表面の状態を確認した。下記評価基準で耐傷性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0186】
<評価基準>
A:外観の変化はほとんど確認されなかった。
B:著しい傷付きと艶変化が確認された。
【0187】
【表1】
(※インデンテーション硬さは、実施例1~4、比較例1および比較例2は転写シートの各層の測定値、実施例5および実施例6は、転写品(外装部材)の各層の測定値である)
【0188】
表1に示すように、実施例1~実施例4の転写シートであれば、耐傷性に優れ、かつ、第1保護層および第2保護層の耐候密着性が良好な転写層を転写可能であることが確認された。同様に、実施例5および実施例6の外装部材によれば、第1保護層および第2保護層の耐候密着性が良好で、かつ、耐傷性に優れることが確認された。
一方、比較例1の転写シートは、第2層のインデンテーション硬さが高すぎるため、初期密着性および耐候密着性に劣ることが確認された。また、比較例2の転写シートは、第1層のインデンテーション硬さが低すぎるため、耐傷性に劣ることが確認された。
【0189】
このように、本開示においては、例えば、以下の発明が提供される。
【0190】
[1]
外装部材の製造に用いられる転写シートであって、
前記転写シートは、離型フィルムと、前記離型フィルムの一方の面に配置された転写層と、を有し、
前記転写層は、前記離型フィルム側から、第1保護層および第2保護層を、厚さ方向において、この順に有し、
前記第1保護層は、第1硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、
前記第2保護層は、第2硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、
前記第1硬化性樹脂組成物の硬化物、および、第2硬化性樹脂組成物の硬化物は、それぞれ、(メタ)アクリル成分およびウレタン成分を含有し、
前記転写シートの断面サンプル片を、樹脂埋設法およびミクロトームを用いて作製した場合において、
前記第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、150MPa以上、300MPa以下であり、
前記第2保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、2MPa以上、50MPa以下である、転写シート。
【0191】
[2]
前記第1硬化性樹脂組成物が、電離放射線硬化性樹脂組成物である、[1]に記載の転写シート。
【0192】
[3]
前記第1硬化性樹脂組成物が、電子線硬化性樹脂組成物である、[1]または[2]に記載の転写シート。
【0193】
[4]
前記第1硬化性樹脂組成物が、ウレタン(メタ)アクリレートを含有する、[1]から[3]までのいずれかに記載の転写シート。
【0194】
[5]
前記第2硬化性樹脂組成物が、熱硬化性樹脂組成物である、[1]から[4]までのいずれかに記載の転写シート。
【0195】
[6]
前記第2硬化性樹脂組成物が、ウレタン(メタ)アクリル系樹脂を含有する、[1]から[5]までのいずれかに記載の転写シート。
【0196】
[7]
前記第2硬化性樹脂組成物が、ポリカーボネート系ウレタン(メタ)アクリル共重合体を含む熱硬化性樹脂組成物である、[1]から[6]までのいずれかに記載の転写シート。
【0197】
[8]
前記第1保護層が、前記耐候剤として、紫外線吸収剤および光安定剤の少なくとも一方を含有する、[1]から[7]までのいずれかに記載の転写シート。
【0198】
[9]
前記第1保護層が、前記耐候剤として、トリアジン系紫外線吸収剤を含有する、[1]から[8]までのいずれかに記載の転写シート。
【0199】
[10]
前記第2保護層が、前記耐候剤として、紫外線吸収剤および光安定剤の少なくとも一方を含有する、[1]から[9]までのいずれかに記載の転写シート。
【0200】
[11]
前記第2保護層が、前記耐候剤として、トリアジン系紫外線吸収剤を含有する、[1]から[10]までのいずれかに記載の転写シート。
【0201】
[12]
前記第2保護層の前記第1保護層とは反対側の面に、接着層を有する、[1]から[11]までのいずれかに記載の転写シート。
【0202】
[13]
前記接着層が着色剤を有する、[12]に記載の転写シート。
【0203】
[14]
前記接着層の断面におけるインデンテーション硬さは、100MPa以上、300MPa以下である、[12]または[13]に記載の転写シート。
【0204】
[15]
前記第2保護層の前記第1保護層とは反対側の面に、意匠層を有する、[1]から[14]までのいずれかに記載の転写シート。
【0205】
[16]
前記意匠層の前記第2保護層とは反対側の面に、接着層を有する、[15]に記載の転写シート。
【0206】
[17]
[1]から[16]までのいずれかに記載の転写シートの製造方法であって、
前記離型フィルムの面に、前記第1硬化性樹脂組成物および前記耐候剤を含有する第1組成物を塗工し、硬化させ、前記第1保護層を形成する第1保護層形成工程と、
前記第1保護層の前記離型フィルムとは反対側の面に、前記第2硬化性樹脂組成物および前記耐候剤を含有する第2組成物を塗工し、硬化させ、前記第2保護層を形成する第2保護層形成工程と、
を有する、転写シートの製造方法。
【0207】
[18]
[1]から[16]までのいずれかに記載の転写シートを準備する準備工程と、
前記転写シートの前記第2保護層側の面と、基体と、を対向させ、両者を密着させる密着工程と、
を有する、外装部材の製造方法。
【0208】
[19]
第1保護層、第2保護層、接着層および基体を、厚さ方向において、この順に有し、
前記第1保護層は、第1硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、
前記第2保護層は、第2硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、
前記第1硬化性樹脂組成物の硬化物、および、第2硬化性樹脂組成物の硬化物は、それぞれ、(メタ)アクリル成分およびウレタン成分を含有し、
前記転写シートの断面サンプル片を、樹脂埋設法およびミクロトームを用いて作製した場合において、
前記第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、150MPa以上、300MPa以下であり、
前記第2保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、2MPa以上、50MPa以下である、外装部材。
【0209】
[20]
前記基体は、アクリル板、ポリカーボネート板、不燃板、金属板、塩化ビニル板、メラミン板または炭素繊維強化プラスチック板である、[19]に記載の外装部材。