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  • 特開-アンテナ装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122609
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 21/08 20060101AFI20240902BHJP
   H01P 5/12 20060101ALI20240902BHJP
   H01P 5/22 20060101ALI20240902BHJP
   H01Q 13/08 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
H01Q21/08
H01P5/12 G
H01P5/22 B
H01Q13/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030251
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000100746
【氏名又は名称】アイコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼岡 俊男
(72)【発明者】
【氏名】西川 延良
【テーマコード(参考)】
5J021
5J045
【Fターム(参考)】
5J021AA02
5J021AA07
5J021AA09
5J021AA11
5J021AB06
5J021CA03
5J021FA32
5J021JA02
5J021JA05
5J021JA06
5J045AA02
5J045CA02
5J045CA03
5J045CA04
5J045DA10
5J045FA02
5J045HA03
5J045JA12
5J045JA15
(57)【要約】
【課題】高周波数帯における広帯域のアンテナ装置を実現する。
【解決手段】アンテナ装置(100)は、誘電体基板(4)と、アンテナ素子(1,2)と、アンテナ素子(1,2)への給電の位相差が180°となるように、アンテナ素子(1,2)に給電する給電回路(3)と、を備える。給電回路(3)は、入力信号を90°の位相差を有する第1信号と第2信号とに分配する90°ハイブリッド回路(30)と、第1信号を90°の位相差を有する2つの第1位相差信号に分配する90°ハイブリッド回路(31)と、第2信号を90°の位相差を有する2つの第2位相差信号に分配する90°ハイブリッド回路(32)と、を有する。アンテナ素子(1,2)の間隔は、アンテナ素子(1,2)により放射される電波の波長の1/4の83%以上、かつ当該波長の1/4未満である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体基板と、
前記誘電体基板上に設けられた第1放射素子および第2放射素子と、
前記第1放射素子および前記第2放射素子への給電の位相差が180°となるように、前記第1放射素子および前記第2放射素子に給電する、前記誘電体基板上に設けられた給電回路と、を備え、
前記第1放射素子と前記第2放射素子との間隔は、前記第1放射素子および前記第2放射素子により放射される電波の波長の1/4の83%以上、かつ当該波長の1/4未満であり、
前記給電回路は、
入力信号を90°の位相差を有する第1信号と第2信号とに分配する入力分配回路と、
前記第1信号を90°の位相差を有する2つの第1位相差信号に分配する第1分配回路と、
前記第2信号を90°の位相差を有する2つの第2位相差信号に分配する第2分配回路と、を有し、
前記第1位相差信号を前記第1放射素子の2つの第1給電点に入力し、前記第2位相差信号を前記第2放射素子の2つの第2給電点に入力する、アンテナ装置。
【請求項2】
前記入力分配回路、前記第1分配回路および前記第2分配回路が90°ハイブリッド回路である、請求項1に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1および2には、複数の平面型のアンテナ素子が誘電体基板上に設けられたアンテナ装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-178175号公報
【特許文献2】特許第5306158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようなアンテナ装置によって5GHzというような高周波数帯の電波の送受信が困難であった。このため、高周波数帯では、広帯域のアンテナ装置が実現されていない。
【0005】
本発明の一態様は、高周波数帯における広帯域のアンテナ装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るアンテナ装置は、誘電体基板と、前記誘電体基板上に設けられた第1放射素子および第2放射素子と、前記第1放射素子および前記第2放射素子への給電の位相差が180°となるように、前記第1放射素子および前記第2放射素子に給電する、前記誘電体基板上に設けられた給電回路と、を備え、前記第1放射素子と前記第2放射素子との間隔が、前記第1放射素子および前記第2放射素子により放射される電波の波長の1/4の83%以上、かつ当該波長の1/4未満であり、前記給電回路は、入力信号を90°の位相差を有する第1信号と第2信号とに分配する入力分配回路と、前記第1信号を90°の位相差を有する2つの第1位相差信号に分配する第1分配回路と、前記第2信号を90°の位相差を有する2つの第2位相差信号に分配する第2分配回路と、を有し、前記第1位相差信号を前記第1放射素子の2つの第1給電点に入力し、前記第2位相差信号を前記第2放射素子の2つの第2給電点に入力する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、高周波数帯における広帯域のアンテナ装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係るアンテナ装置の構成を示す平面図である。
図2】上記アンテナ装置の構成を示す側面図である。
図3】上記アンテナ装置の電圧定在波比の特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施形態〕
以下、本発明の一実施形態について、図1図3を参照して説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係るアンテナ装置100の構成を示す平面図である。図2は、アンテナ装置の構成を示す側面図である。
【0011】
〈アンテナ装置の構成〉
図1および図2に示すように、本実施形態に係るアンテナ装置100は、アンテナ素子1(第1放射素子)と、アンテナ素子2(第2放射素子)と、給電回路3と、誘電体基板4と、地導体板5とを備えている。矩形を成す誘電体基板4の表面には、それぞれ平面導体からなるアンテナ素子1,2と、給電回路3とが設けられている。また、誘電体基板4の裏面の全面には、一様に形成された平面導体から成る地導体板5が設けられている。
【0012】
アンテナ素子1,2は、正方形を成しており、アンテナ素子1,2が放射する電波の波長λの1/4(λ/4)の電気長を有する平面状の放射素子である。アンテナ素子1,2は、地導体板5と同じく導体薄板によって形成されている。アンテナ素子1,2は、誘電体基板4の図1に示す横方向の一方の側端縁の付近に配置されている。アンテナ素子1,2は、図1において横方向と誘電体基板4の面上で直交する縦方向の側端縁で向き合っている。アンテナ素子1,2は、相互の間隔、より具体的には、上記の向き合う側端縁の間の間隔Dが、λ/4の83%以上、かつλ/4未満であるように配置されている。
【0013】
アンテナ素子1は、2つの給電点F11,F12(第1給電点)を有している。給電点F11は、アンテナ素子1における、上述した誘電体基板4の一方の側端縁から遠い側の、横方向の側端縁の中央に設けられている。給電点F12は、アンテナ素子1における、アンテナ素子2と向き合う側端縁と平行な他方の側端縁の中央に設けられている。
【0014】
アンテナ素子1は、給電点F11に縦方向から給電されるとともに、給電点F12に横方向から給電される。これにより、アンテナ素子1は、矢印A1,A2方向(縦方向)の偏波と、矢印B1,B2方向(横方向)の偏波(円偏波など)とを励振する。
【0015】
アンテナ素子2は、2つの給電点F21,F22(第2給電点)を有している。給電点F21は、アンテナ素子2における、上述した誘電体基板4の一方の側端縁から遠い側の、横方向の側端縁の中央に設けられている。給電点F22は、アンテナ素子2における、アンテナ素子1と向き合う側端縁と平行な他方の側端縁の中央に設けられている。
【0016】
アンテナ素子2は、給電点F21に縦方向から給電されるとともに、給電点F22に横方向から給電される。これにより、アンテナ素子2は、アンテナ素子1と同様な2つの偏波を励振する。
【0017】
給電回路3は、地導体板5と同じく、導体薄板によって形成されている。給電回路3は、アンテナ素子1,2への給電の位相差が180°となるようにアンテナ素子1,2に給電する。給電回路3は、分配回路として、90°ハイブリッド回路30(入力分配回路)と、90°ハイブリッド回路31(第1分配回路)と、90°ハイブリッド回路32(第2分配回路)とを有している。また、給電回路3は、給電端部33と、伝送線路34~39とを有している。
【0018】
給電端部33は、外部から給電される部分であり、図示しない同軸ケーブルが接続される。誘電体基板4の図1に示す横方向の他方の側端縁から縦方向に伸びるように形成されている。
【0019】
90°ハイブリッド回路30は、給電端部33から入力される入力信号を90°の位相差を有する第1信号と第2信号とに分配する回路である。90°ハイブリッド回路30は、λ/4の電気長を有する4本の位相遅延線30a~30dが矩形を形成するように接続されている回路である。位相遅延線30b,30dは、特性インピーダンスZ0を有し、位相遅延線30a,30cは、インピーダンスZr(Zr=Z0/√2)を有する。
【0020】
90°ハイブリッド回路30は、入力ポートP0と、出力ポートP01,P02とを有している。入力ポートP0は、位相遅延線30a,30dの接続点であり、給電端部33に接続されている。出力ポートP01は、位相遅延線30a,30bの接続点であり、出力ポートP02は、位相遅延線30b,30cの接続点である。
【0021】
90°ハイブリッド回路30は、出力ポートP01から、入力ポートP0に入力される入力信号に対して90°位相が遅れた第1信号を出力する。また、90°ハイブリッド回路30は、出力ポートP02から、第1信号に対して90°位相が遅れた第2信号を出力する。
【0022】
90°ハイブリッド回路31は、90°ハイブリッド回路30の出力ポートP01から出力される第1信号を90°の位相差を有する2つの第1位相差信号に分配する回路である。90°ハイブリッド回路31は、λ/4の電気長を有する4本の位相遅延線31a~31dが矩形を形成するように接続されている回路である。位相遅延線31b,31dは、特性インピーダンスZ0を有し、位相遅延線31a,31cは、インピーダンスZr(Zr=Z0/√2)を有する。
【0023】
90°ハイブリッド回路31は、入力ポートP310と、出力ポートP311,P312とを有している。入力ポートP310は、位相遅延線31a,31dの接続点である。出力ポートP311は、位相遅延線31a,31bの接続点であり、出力ポートP312は、位相遅延線31b,31cの接続点である。
【0024】
90°ハイブリッド回路31は、出力ポートP311から、入力ポートP310に入力される第1信号に対して90°位相が遅れた第1遅延信号を出力する。また、90°ハイブリッド回路31は、出力ポートP312から、第1遅延信号に対して90°位相が遅れた第2遅延信号を出力する。90°ハイブリッド回路31における第1遅延信号および第2遅延信号は、それぞれ第1位相差信号を構成している。
【0025】
90°ハイブリッド回路32は、90°ハイブリッド回路30の出力ポートP02から出力される第2信号を90°の位相差を有する2つの第2位相差信号に分配する回路である。90°ハイブリッド回路32は、λ/4の電気長を有する4本の位相遅延線32a~32dが矩形を形成するように接続されている回路である。位相遅延線32b,32dは、特性インピーダンスZ0を有し、位相遅延線32a,32cは、インピーダンスZr(Zr=Z0/√2)を有する。
【0026】
90°ハイブリッド回路32は、入力ポートP320と、出力ポートP321,P322とを有している。入力ポートP320は、位相遅延線32a,32dの接続点である。出力ポートP321は、位相遅延線32a,32bの接続点であり、出力ポートP322は、位相遅延線32b,32cの接続点である。
【0027】
90°ハイブリッド回路32は、出力ポートP321から、入力ポートP320に入力される第2信号に対して90°位相が遅れた第1遅延信号を出力する。また、90°ハイブリッド回路30は、出力ポートP322から、第1遅延信号に対して90°位相が遅れた第2遅延信号を出力する。90°ハイブリッド回路32における第1遅延信号および第2遅延信号は、それぞれ第2位相差信号を構成している。
【0028】
伝送線路34は、90°ハイブリッド回路30の出力ポートP01と90°ハイブリッド回路31の入力ポートP310とを接続する。伝送線路35は、90°ハイブリッド回路30の出力ポートP02と90°ハイブリッド回路32の入力ポートP320とを接続する。伝送線路34,35は、同じ長さを有している。
【0029】
伝送線路36は、90°ハイブリッド回路31の出力ポートP311とアンテナ素子1の給電点F11とを接続する。伝送線路36は、アンテナ素子1の給電点F11に上述した縦方向から給電するように縦方向を向く部分を有している。伝送線路37は、90°ハイブリッド回路31の出力ポートP312とアンテナ素子1の給電点F12とを接続する。伝送線路37は、アンテナ素子1の給電点F12に上述した横方向から給電するように横方向を向く部分を有している。伝送線路36,37は、同じ長さを有している。
【0030】
伝送線路38は、90°ハイブリッド回路32の出力ポートP321とアンテナ素子2の給電点F21とを接続する。伝送線路38は、アンテナ素子2の給電点F21に上述した縦方向から給電するように縦方向を向く部分を有している。伝送線路39は、90°ハイブリッド回路32の出力ポートP322とアンテナ素子2の給電点F22とを接続する。伝送線路39は、アンテナ素子2の給電点F22に上述した横方向から給電するように横方向を向く部分を有している。伝送線路38,39は、同じ長さを有している。
【0031】
給電回路3において、90°ハイブリッド回路30の出力ポートP01からアンテナ素子1の給電点F11,F12に至る経路と、90°ハイブリッド回路30の出力ポートP02からアンテナ素子2の給電点F21,F22に至る経路とは、同じ長さとなるように形成されている。
【0032】
〈アンテナ装置による効果〉
図3は、アンテナ装置100の電圧定在波比の特性を示すグラフである。図3は、図1に示すアンテナ装置100についてのシミュレーションの電圧定在波比の特性を示している。
【0033】
上記のように構成されるアンテナ装置100は、特に、アンテナ素子1,2と、給電回路3とを備えることに特徴がある。アンテナ素子1,2の間隔Dは、λ/4の83%以上、かつ当λ/4未満である。給電回路3は、アンテナ素子1,2への給電の位相差が180°となるようにアンテナ素子1,2に給電するように、給電回路3は、90°ハイブリッド回路30~32を有している。90°ハイブリッド回路30は、入力信号を90°の位相差を有する第1信号および第2信号に分配する。90°ハイブリッド回路31は、第1信号を90°の位相差を有する2つの第1位相差信号に分配して、アンテナ素子1に与える。90°ハイブリッド回路32は、第2信号を90°の位相差を有する2つの第2位相差信号に分配して、アンテナ素子2に与える。
【0034】
上記の構成では、アンテナ素子1,2の間隔Dが上記の範囲であると、アンテナ素子1,2間に弱い相互結合が生じて、影響を及ぼし合うようになる。これにより、図3に示すように、電圧定在波比(VSWR;Voltage Standing Wave Ratio)の2つの最低値についての周波数の間隔が広がる。それゆえ、帯域を広げることができる。
【0035】
具体的には、VSWRが1.2に達する周波数の範囲については、が5.3GHzおよび5.83GHzの間の約500MHzという広い帯域を確保することができる。また、実用上の帯域として使用される、VSWRが1.5以下となる周波数の範囲については、5.1GHzおよび6GHzの間の約900MHzという広い帯域を確保することができる。このように、アンテナ装置100によれば、5GHzというような高周波数帯の電波の送受信を可能にすることができる。
【0036】
本発明の発明者は、アンテナ素子1,2の間隔Dを上記の範囲で適宜変更し、アンテナ素子1,2への給電を給電回路3により上述したように行うことにより、上記のシミュレーションに示すように、広帯域を確保できることがわかった。また、実際に作製したアンテナ装置100によっても、広帯域を確保することが確かめられた。
【0037】
また、アンテナ装置100において、給電回路3は、信号を2つに分配するために、90°ハイブリッド回路30~32を用いている。これにより、アンテナ素子1,2への給電の位相差を容易に設けることができる。
【0038】
〔付記事項〕
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。また、実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0039】
1 アンテナ素子(第1放射素子)
2 アンテナ素子(第2放射素子)
3 給電回路
4 誘電体基板
30 90°ハイブリッド回路(入力分配回路)
31 90°ハイブリッド回路(第1分配回路)
32 90°ハイブリッド回路(第2分配回路)
D 間隔
F11,F12(第1給電点)
F12,F22(第2給電点)
図1
図2
図3