(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012261
(43)【公開日】2024-01-30
(54)【発明の名称】ヘキサン酸、6-(ニトロオキシ)-、(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イル エステルの調製のための工業的方法及び高純度生成物
(51)【国際特許分類】
C07C 405/00 20060101AFI20240123BHJP
A61K 31/5575 20060101ALI20240123BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
C07C405/00 503T
A61K31/5575
A61P27/02
C07C405/00 507T
C07C405/00 507P
C07C405/00 CSP
C07C405/00 503A
C07C405/00 503E
C07C405/00 503F
C07C405/00 503K
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023111243
(22)【出願日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】22290046
(32)【優先日】2022-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】516217239
【氏名又は名称】ニコックス エス.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ズザボル・コヴァーチ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア・サンタネ・クストル
(72)【発明者】
【氏名】イレン・ホルトバージ
(72)【発明者】
【氏名】ユディト・ポティ
(72)【発明者】
【氏名】ガエル・ロンサン
(72)【発明者】
【氏名】ニコレッタ・アルミランテ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】不純物であるビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル)エステルを実質的に含まない、高純度の医薬品グレードであるヘキサン酸、6-(ニトロオキシ)-、(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステル、およびその調製方法を提供する。
【解決手段】ビマトプロストフェニル-ボロナートを6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸とカップリングさせることによる15-OHのビマトプロストのエステル化、及びボロナートエステル保護基の除去を含むワンポット反応調製工程、並びにそれに続く効率的な精製工程によって、効率的に調製する方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
1)還流温度、トルエン中で、ビマトプロストをフェニルボロン酸と反応させ、そして共沸蒸留により水を除去して、式(V):
【化11】
のビマトプロスト フェニル-ボロナートを得る工程;
2)前記溶液を25℃に冷却し、そしてN,N’-ジイソプロピルカルボジイミド、触媒量のジメチルアミノピリジン及び6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸を加えて、式(VI):
【化12】
の(1E,3S)-1-{(1S,5R,6R,7R)-7-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソヘプタ-2-エン-1-イル]-3-フェニル-2,4-ジオキサ-3-ボラビシクロ[3.2.1]オクタン-6-イル}-5-フェニルペンタ-1-エン-3-イル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアートを得る工程;
3)塩基性条件下で前記フェニル-ボロナート保護基を除去する工程;
4)有機相を分離し、そして前記溶媒を蒸発させる工程;
5)前記未処理生成物をジクロロメタン中で撹拌し、前記混合物を濾過し、そして溶媒を蒸発させて、式(I)の粗化合物を得る工程;
6)ジイソプロピルエーテル、アセトン及び水を40:15:0.5の体積比で含有する溶離液混合物を用いた順相重力シリカゲルカラムクロマトグラフィーを適用することにより、式(I)の粗化合物を精製する工程;
7)適切な純度の画分を収集し、そして前記溶媒を蒸発させて、式(I)の純粋な化合物を提供する工程;
8)工程7)の式(I)の純粋な化合物を、蒸留した塩化メチレン及びメタノール中に溶解し、蒸留した塩化メチレンとメタノールを30:1の体積比で含有する溶離液混合物を用いて重力クロマトグラフィーで前記溶液を精製し、適切な純度の画分を収集し、そして前記溶媒を蒸発させて、式(I)の純粋な化合物を得る工程;
9)工程8)の式(I)の純粋な化合物をエタノール中に溶解し、前記溶液を、活性炭を用いて処理し、その後、濾過により活性炭を除去し、真空下で蒸発により溶媒を除去して、純粋なヘキサン酸、6-(ニトロオキシ)-、(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イル エステルを生成する工程を含む、
式(I):
【化13】
のヘキサン酸、6-(ニトロオキシ)-、(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イル エステルの調製のための方法であって、
得られたヘキサン酸、6-(ニトロオキシ)-、(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イル エステルが、式(II)のビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル) エステルを含有せず、且つ、(≦)0.20%(HPLC面積%)以下の総不純物を含有することを特徴とする、方法。
【請求項2】
反応工程1)において、前記ビマトプロスト:フェニルボロン酸のモル比が、1:1.1である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
反応工程2)において、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド 2.0当量、ジメチルアミノピリジン 0.2当量、及び6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸 1.8から2.2当量が加えられる、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
反応工程3)において、前記フェニルボロナート保護基が、NaOH溶液を用いて除去される、上記の請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
フェニルボロナート保護基が、工程2)において得られた反応混合物をメタノールでクエンチし、次いで、塩化メチレンと0.5M NaOHの溶液としての6.3当量のNaOHの混合物を加えることにより除去される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
反応工程4)において、有機相が最初に硫酸水素ナトリウム水溶液で洗浄され、そして15%w/wのNaClの水溶液で2回洗浄される、上記の請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
(≦)0.20%(HPLC面積%)以下の総不純物量を含有し、且つ不純物である式(II):
【化14】
のビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル)エステルを全く含有しないか、又はHPLC検出限界を下回る量含有する、式(I)の化合物。
【請求項8】
HPLC検出限界が、0.01%w/wである、請求項7記載の式(I)の化合物。
【請求項9】
総不純物量が、(≦)0.15%(HPLC面積%)以下である、請求項7記載の式(I)の化合物。
【請求項10】
総不純物量が、(≦)0.10%(HPLC面積%)以下である、請求項9記載の式(I)の化合物。
【請求項11】
(≦)0.05%w/w以下の、不純物である式(III):
【化15】
の6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸 ビマトプロスト エステル、及び
(≦)0.05%w/w以下の、不純物である式(VII):
【化16】
、
の(1E,3S)-1-((1R,2R,3S,5R)-2-((2E)-7-(エチルアミノ)-7-オキソヘプタ-2-エン-1-イル)-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル)-5-フェニルペンタ-1-エン-3-イル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート、及び
(≦)0.05%以下の、不純物である式(VIII):
【化17】
の(1E,3R)-1-((1R,2R,3S,5R)-2-((2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソヘプタ-2-エン-1-イル)-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル)-5-フェニルペンタ-1-エン-3-イル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート
を含有する、請求項7から10のいずれか1項記載の式(I)の化合物。
【請求項12】
(<)0.05%w/w未満の、式(III):
【化18】
の6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸 ビマトプロスト エステル、及び
(≦)0.05%w/w以下の、式(VII):
【化19】
の(1E,3S)-1-((1R,2R,3S,5R)-2-((2E)-7-(エチルアミノ)-7-オキソヘプタ-2-エン-1-イル)-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル)-5-フェニルペンタ-1-エン-3-イル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート、及び
(<)0.05%未満の、式(VIII):
【化20】
の(1E,3R)-1-((1R,2R,3S,5R)-2-((2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソヘプタ-2-エン-1-イル)-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル)-5-フェニルペンタ-1-エン-3-イル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート
を含有する、請求項11のいずれか1項記載の式(I)の化合物。
【請求項13】
請求項7から12のいずれか1項記載の式(I)の化合物、及び少なくとも1つの薬学的に許容され得る賦形剤を含む、眼科用医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、高純度のヘキサン酸、6-(ニトロオキシ)-、(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イル エステルを調製するための工業規模の製造に適した方法、不純物であるビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル) エステルを実質的に含まない、高純度のヘキサン酸、6-(ニトロオキシ)-、(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イル エステル、及び前記高純度化合物を含有する眼科用医薬製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
以降、化合物(I)とも呼ばれる、ヘキサン酸、6-(ニトロオキシ)-、(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イル エステルは、以下の式(I):
【化1】
を有する。
【0003】
前記化合物(I)の化学名はまた、(1S,2E)-3-{(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソヘプタ-2-エン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル}-1-(2-フェニルエチル)プロパ-2-エン-1-イル-6-(ニトロオキシ)ヘキサノアートでもある。
【0004】
ヘキサン酸、6-(ニトロオキシ)-、(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イル エステルは、眼圧降下剤(IOP-lowering agent)として有効であることが証明されているプロスタグランジン類似体であり(Impagnatiello F, Toris CB, Batugo M, Prasanna G, Borghi V, Bastia E, Ongini E, Krauss AHP; Invest Ophthalmol Vis Sci. 2015; 56:6558-64)、そして開放隅角緑内障又は高眼圧症を有する患者における眼圧(IOP)降下薬としてのその有効性が評価されている。
【0005】
医薬品有効成分(複数可)(API(複数可))中の不純物の存在を研究し且つ監視することは、製造された製品における適切な品質レベルを確保するための、医薬品製造における中心的なトピックである。製造されたAPI中の各不純物の限界は、国際機関により公表される特定のガイドラインの主題である。ここ数年、遺伝毒性を有する可能性のある不純物、すなわち、遺伝子変異を伴うDNA損傷を引き起こす可能性のある不純物の定量化に対する重要性が高まっている。具体的には、1つ以上のアラート機能を有する不純物の限界は、特定のガイドラインに従って定められている。
【0006】
ヘキサン酸、6-(ニトロオキシ)-、(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イル エステルの調製方法は、既に報告されており;前記合成法は、オリジナルの化合物特許 国際公開公報第WO2009/136281号により、そして調製方法特許出願 国際公開公報第2019/162149号及び国際公開公報第2021/023693号により開示されている。国際公開公報第2019/162149号及び国際公開公報第2021/023693号に開示されている方法に従って調製される前記化合物(I)は、遺伝毒性を有する可能性のある化合物である式(II):
【化2】
のビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル) エステル、及び
式(III):
【化3】
の6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸 ビマトプロスト エステルである2つの主な不純物を含有する。
【0007】
化合物(I)に含有される他の公知の化学不純物は、式(VII):
【化4】
の5,6-trans-化合物(I)である(1E,3S)-1-((1R,2R,3S,5R)-2-((2E)-7-(エチルアミノ)-7-オキソヘプタ-2-エン-1-イル)-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル)-5-フェニルペンタ-1-エン-3-イル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート、
及び
式(VIII):
【化5】
の15-epi-化合物(I)である(1E,3R)-1-((1R,2R,3S,5R)-2-((2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソヘプタ-2-エン-1-イル)-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル)-5-フェニルペンタ-1-エン-3-イル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート
のような異性体不純物である。
【0008】
医薬品グレードの化合物(I)が油状物であり、且つ結晶化によって精製することができず、さらに、化合物(I)と不純物である式(II)のビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル) エステル及び式(III)の6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸 ビマトプロスト エステルが、類似した極性を有しているため、これらの不純物の存在は、医薬品グレードの化合物(I)の大規模な生産にとって重要な問題である。それゆえ、これらの不純物の除去は、前記方法の収率を低下させ、商業規模での化合物(I)の調製のコストを増加させるいくつかの精製を要する。
【0009】
国際公開公報第2019/162149号は、化合物(I)の調製のための工業的方法を開示している。前記方法は、式(IV):
【化6】
のビマトプロスト ブチル-ボロナートを形成するための、ブチル-ボロン酸を用いたビマトプロストのC9-OH及びC11-OHの保護、その後の、ビマトプロスト ブチル-ボロナート(IV)を6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル クロリドと反応させることによる、C15-OHのエステル化、並びにブチル-ボロナート保護基の除去を含む。前記粗化合物(I)は、フラッシュクロマトグラフィーにより精製される。前記6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル クロリドは、ε-カプロラクトンの開環反応とそれに続くジクロロメタン中のHNO
3及びH
2SO
4の混合物を用いた6-ヒドロキシヘキサン酸アルカリ塩のニトロ化により調製される6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸から合成される。前記中間体である6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸及び6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル クロリドは、精製せずに使用される。得られた化合物(I)は、0.15%から0.24%(HPLC面積%)のビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル) エステル(II)及び0.40%(HPLC面積%)の6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸 ビマトプロスト エステル(III)を含有する。
【0010】
前記式(II)のビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル) エステルは、(1E,3S)-1-{(1S,5R,6R,7R)-3-ブチル-7-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソヘプタ-2-エン-1-イル]-2,4-ジオキサ-3-ボラビシクロ[3.2.1]オクタン-6-イル}-5-フェニルペンタ-1-エン-3-イル6-(ニトロオキシ) ヘキサノアートのニトロオキシ基と遊離塩素アニオンとの交換反応によるエステル化工程の間に形成される副生成物であり;前記方法の最後で、ボロナートエステル保護基の除去は、15-(6-クロロヘキサノイル)ビマトプロスト エステルをもたらす。
【0011】
式(III)の6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸 ビマトプロスト エステルは、式(IV)のビマトプロスト ブチル-ボロナートと、中間体である6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル クロリドの不純物である6-[6-ニトロオキシヘキサノイル]オキシ}ヘキサノイルクロリドとの反応に由来し、エステル化後、ブチル-ボロナート保護の除去は、式(III)の6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸 ビマトプロスト エステルをもたらす。
【0012】
国際公開公報第2021/023693号は、式(III)の6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸 ビマトプロスト エステルの形成を減少させることを可能にする国際公開公報第2019/162149号に開示された方法の改善を開示した。この方法では、6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸は、6-ヒドロキシヘキサン酸アルカリ塩のニトロ化工程の最後で逆相クロマトグラフィーにより精製される。
【0013】
国際公開公報第2021/023693号の方法に従って調製された粗化合物(I)は、73%(HPLC面積%)のHPLC純度を有し、且つ最後のクロマトグラフィー精製前で、約0.1%(HPLC面積%)の式(II)の15-(6-クロロヘキサノイル)ビマトプロスト エステル、及び0.05%(HPLC面積%)未満(HPLC閾値)の6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸 ビマトプロスト エステル(III)を含有する。
【0014】
国際公開公報第2009/136281号に開示されている化合物(I)(実施例B-1)の合成は、式(IV)のビマトプロスト ブチル-ボロナートを形成するための、ブチル-ボロン酸を用いたビマトプロストのC9-OH基及びC11-OH基の保護、アセトニトリル中で硝酸銀によりニトラート誘導体に変換されるブチル-ボロナート保護形態のビマトプロストの15-(6-ブロモヘキサノイル)エステルを与えるための、6-ブロモヘキサノイル クロリドを用いたC15-OHのエステル化、ブチル-ボロナート基の除去、並びに逆相クロマトグラフィーによる生成物の精製を含む。上記の合成の主な欠点は、変異原性の可能性への構造的アラートを有する、等モル量よりも多い6-ブロモヘキサノイル クロリドの使用;排水中に大量の銀塩を生成する硝酸銀の使用;中間体であるビマトプロスト ブチル-ボロナートの15-(6-ブロモヘキサノイル) エステルの不完全なニトロ化に由来する、ビマトプロストの15-(6-ブロモヘキサノイル) エステル不純物の形成の可能性;及びビマトプロスト ブチル-ボロナートの15-(6-クロロヘキサノイル) エステルの不完全なニトロ化に由来する、副生成物である式(II)のビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル) エステルの形成である。ビマトプロスト ブチル-ボロナートの15-(6-クロロヘキサノイル) エステルは、ビマトプロスト ブチル-ボロナートの15-(6-ブロモヘキサノイル) エステルの臭素原子と遊離塩素アニオンとの間のハロゲン交換反応により形成されるエステル化反応の副生成物であり、それは、エステル化工程中に形成され、反応媒体中の塩基の存在により促進される。
【0015】
国際公開公報第2009/136281号は、最終生成物の不純物プロファイルに言及しておらず、発明者らにより実施された実験は、国際公開公報第2009/136281号により開示された方法に従って調製された化合物(I)が、約8.34%(HPLC面積%)の式(II)のビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル) エステルを含有することを示した。
【0016】
国際公開公報第2009/136281号はまた、15-アシルアルキニトラート ビマトプロスト誘導体(実施例N-1及びO-1)の調製のための代替法を開示している。前記合成は、樹脂(PS-DMAP)上に担持された4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)の存在下で、ボロナート保護形態のビマトプロストをニトラート-アルキル カルボン酸 クロリドと反応させること、ボロナート保護基の除去及びシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を含む。この代替法は、6-ブロモヘキサノイル クロリドの使用及び前記銀塩の除去を回避するが、前記方法の主な欠点は、前記方法を商業的なスケールアップに対して不適且つ高価なものにする樹脂上に担持された4-ジメチルアミノピリジンの使用であり、さらにニトラート-アルキルカルボン酸 クロリドが大過剰に加えられることである。
【0017】
国際公開公報第2009/136281号はまた、15-アシルアルキニトラート ビマトプロスト誘導体の調製のための別の方法(実施例Q1)も開示している。この方法では、前記化合物は、4-ジメチルアミノピリジンの存在下での、過剰のニトラート-アルキル-(p-ニトロフェニル)-カルボキシラートを用いたビマトプロスト ブチル-ボロナートのエステル化により得られた。
【0018】
この合成の主な欠点は、クロマトグラフィー法による未反応のニトラート-アルキル-(p-ニトロフェニル)-カルボキシラートの除去及び副生成物のp-ニトロフェノールの除去である。
【0019】
したがって、眼科用医薬製剤の製造に適している高純度のヘキサン酸、6-(ニトロオキシ)-、(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イル エステルのニーズが存在する。
【0020】
本発明は、上記の問題を解決し、式(I)の高純度のヘキサン酸、6-(ニトロオキシ)-、(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イル エステルの調製のための工業的に実行可能な方法を提供する。
【発明の概要】
【0021】
発明の説明
本発明は、工業規模の生産に適した式(I)のヘキサン酸、6-(ニトロオキシ)-、(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イル エステル(化合物(I))の合成のための方法であって、高収率で高純度の化合物(I)を調製することを可能にする方法を提供する。
【0022】
本発明の方法は、ビマトプロスト及び6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸からの粗化合物(I)の効率的なワンポット反応調製工程、そして、それに続き、最初に、前記調製工程に由来するほとんど全ての不純物を除去するための順相重力シリカゲルカラムクロマトグラフィー、及びそれに続く、より高い沸点の溶媒を除去するための作用域を有するシリカゲル濾過クロマトグラフィーを含む、粗化合物(I)の高効率精製工程を含む。前記方法は、例えば650グラムまでの化合物(I)の大規模な調製に適用可能である。本発明の方法の重要な利点は、この方法が、高純度の式(I)のヘキサン酸、6-(ニトロオキシ)-、(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イル エステルの調製に適していることであり、実際、本発明の方法により得られた化合物は、ビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル) エステル(II)を含有せず、そして総不純物量は、(≦)0.20%(HPLC面積%)以下である。前記方法の約70%という高い全化学収率及び実効性の高い精製工程は、この方法を、医薬品グレードの式(I)のヘキサン酸、6-(ニトロオキシ)-、(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イル エステルの工業規模の調製に容易に適用可能なコスト削減法にする。
【0023】
本発明の別の目的は、不純物である式(II)のビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル) エステルを実質的に含まない、式(I)のヘキサン酸、6-(ニトロオキシ)-、(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イル エステルであり、そしてそれは、(≦)0.20%(HPLC面積%)以下の総不純物量を含有し、好ましくは、総不純物量は、(≦)0.15%(HPLC面積%)以下であり、最も好ましくは、総不純物量は、(≦)0.10%(HPLC面積%)以下である。
【0024】
上記の定義の「ビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル) エステル(II)を含有しない」及び「不純物である式(II)のビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル) エステルを実質的に含まない」は、当該化合物の量が、本明細書に開示されるHPLC法の検出限界(LoD)を下回ることを意味する。
【0025】
発明の詳細な説明
本発明は、式(I):
【化7】
のヘキサン酸、6-(ニトロオキシ)-、(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イル エステルの調製のための方法に関し、
当該方法は、以下の工程:
1)還流温度で、トルエン中、ビマトプロストをフェニルボロン酸と反応させて、そして共沸蒸留により水を除去して、式(V):
【化8】
のビマトプロスト フェニル-ボロナートを得る工程;
2)前記溶液を25℃に冷却し、そしてN,N’-ジイソプロピルカルボジイミド、触媒量のジメチルアミノピリジン及び6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸を加えて、式(VI):
【化9】
の(1E,3S)-1-{(1S,5R,6R,7R)-7-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソヘプタ-2-エン-1-イル]-3-フェニル-2,4-ジオキサ-3-ボラビシクロ[3.2.1]オクタン-6-イル}-5-フェニルペンタ-1-エン-3-イル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアートを得る工程;
3)塩基性条件下でのフェニル-ボロナート保護基を除去する工程;
4)有機相を分離し、有機相を洗浄し、そして溶媒を蒸発させる工程;
5)未処理生成物をジクロロメタン中で撹拌し、混合物を濾過し、そして溶媒を蒸発させて、式(I)の粗化合物を得る工程;
6)ジイソプロピルエーテル、アセトン及び水を40:15:0.5の体積比で含有する溶離液混合物を用いる順相重力シリカゲルカラムクロマトグラフィーを適用することにより、式(I)の粗化合物を精製する工程;
7)適切な純度の画分を収集し、そして溶媒を蒸発させて、式(I)の純粋な化合物を得る工程;
8)工程7)の式(I)の純粋な化合物を、蒸留した塩化メチレンとメタノール中に溶解し、蒸留した塩化メチレンとメタノールを30:1の体積比で含有する溶離液混合物を用いて、重力クロマトグラフィーにより溶液を精製し;適切な純度の画分を収集し、そして溶媒を蒸発させる工程;
9)工程8)の式(I)の純粋な化合物を適切な溶媒に溶解し、得られた溶液を活性炭で処理し、その後、濾過により活性炭を溶液から分離し、真空下での蒸発により溶媒を除去して、純粋なヘキサン酸、6-(ニトロオキシ)-、(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イル エステルを生成する工程
を含み、
ここで、前記方法は、得られた式(I)の化合物が、式(II)のビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル)エステルを含有せず、且つ(≦)0.20%(HPLC面積%)以下の総不純物量を有し、好ましくは、総不純物量が、(≦)0.1%(HPLC面積%)以下であることを特徴とする。
【0026】
反応工程1)において、好ましくは、ビマトプロスト:フェニルボロン酸のモル比は、1:1.1であり;
反応工程2)において、好ましくは、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド 2.0当量、ジメチルアミノピリジン 0.2当量、及び6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸 1.8当量から2.2当量が加えられる。
【0027】
反応工程3)において、好ましくは、前記フェニルボロナート保護基は、NaOH溶液を用いて除去される。具体的には、フェニルボロナート保護基は、工程2)で得られた反応混合物をメタノールでクエンチし、次いで塩化メチレンと0.5M NaOHの溶液としての6.3当量のNaOHの混合物を加えることにより除去される。
【0028】
好ましくは、反応工程4)において、有機相は、最初に硫酸水素ナトリウム水溶液で洗浄され、そして15%w/wのNaCl水溶液で2回洗浄される。
【0029】
好ましくは、本発明の方法は、(≦)0.10%(HPLC面積%)以下の総不純物を含有する式(I)の化合物を与える。
【0030】
本発明の別の実施態様は、下記の工程:
1)トルエン中でビマトプロスト(1当量)をフェニルボロン酸(1.1当量)と反応させて、ビマトプロストの9,11-ヒドロキシ基を保護し、;反応混合物をトルエンの還流温度に加温し、共沸蒸留により水を除去し、そして反応混合物を、還流温度で、式(V)のビマトプロスト フェニル-ボロナートの形成まで撹拌する工程;
2)反応混合物を25℃に冷却し、そしてN,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(2.0当量)、触媒量のジメチルアミノピリジン(0.2当量)及び6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(1.8から2.2当量)を加えて、式(VI)の(1E,3S)-1-{(1S,5R,6R,7R)-7-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソヘプタ-2-エン-1-イル]-3-フェニル-2,4-ジオキサ-3-ボラビシクロ[3.2.1]オクタン-6-イル}-5-フェニルペンタ-1-エン-3-イル-6-(ニトロオキシ)ヘキサノアートを得る工程;
3)エステル化の最後で、反応混合物をメタノールでクエンチし、次いで塩化メチレンと0.5M NaOH溶液を加え、その後、得られた混合物を撹拌して、フェニルボロナート保護基の除去を完成させる工程(ここで、好ましくは、6.3当量のNaOHが使用される);
4)有機相を分離し、そして有機相を最初に硫酸水素ナトリウムの水溶液で洗浄し、そして15%w/wのNaClの水溶液で2回洗浄し、その後45℃未満の温度で溶媒を蒸発させる工程
5)前記未処理混合物にジクロロメタンを加え、そして混合物を10℃で30分間撹拌し、濾過によりN,N’-ジイソプロピル尿素を除去し、濾過した溶液の溶媒を蒸発させて、式(I)の粗化合物を得る工程;
6)ジイソプロピルエーテル/アセトン/水を40:15:0.5の体積比で含有する溶離液混合物を用いて、順相重力シリカゲルカラムクロマトグラフィーを適用することにより式(I)の粗化合物を精製する工程;
7)適切な純度の画分を収集し、そして溶媒を蒸発させて、式(I)の純粋な化合物を得る工程;
8)工程7)で得られた式(I)の純粋な化合物を溶解し、蒸留した塩化メチレン/蒸留したメタノールを30:1の体積比で含有する溶離液混合物を用いて、シリカを充填したカラム上の重力クロマトグラフィーにより前記溶液を精製し;適切な純度の画分を収集し、そして溶媒を蒸発させて、式(I)の純粋な化合物を油状物として得る工程;
9)工程8)で得られた式(I)の純粋な化合物をエタノール中に溶解し、得られた溶液を活性炭で処理し、その後、濾過により活性炭を除去し、そして真空下での蒸発によりエタノールを除去して、式(I)の最終の純粋な化合物をもたらす工程
を含み、
得られた式(I)の化合物が、式(II)のビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル) エステルを含有せず、且つ(≦)0.20%(HPLC面積%)以下の総不純物量を有し、好ましくは、前記総不純物量が、(≦)0.10%(HPLC面積%)以下であることを特徴とする、
式(I)のヘキサン酸、6-(ニトロオキシ)-、(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イル エステルの合成のための方法に関する。
【0031】
上記「当量(equiv.)」(当量(equivalent))は、各試薬のモル当量を意味し、そしてビマトプロストのモルに対して計算される。
【0032】
上記に報告された方法は、以下のスキーム:
【化10】
中に例示される。
【0033】
本発明の方法は、いくつかの利点を有し、式(II)のビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル) エステルの形成を排除し、そして式(III)の6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸 ビマトプロスト エステルの量を、0.05%w/wである定量限界未満に減少させることを可能にする。さらに、HPLCにより行われた化合物(I)の純度の評価はまた、不純物である式(VII)の5,6-trans-化合物(I)及び式(VIII)の15-epi-化合物(I)の各量も(≦)0.05%w/w以下であることを示した。
【0034】
本発明の方法の別の利点は、式(I)の粗化合物の合成を、上記で報告された工程1)から工程3)が、得られた中間体を単離又は精製することなく行なわれるワンポット反応調製で行うことができることである。
【0035】
本発明は、不純物である式(II)のビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル) エステルを含有しない、式(I)のヘキサン酸、6-(ニトロオキシ)-、(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イル エステルを提供し、且つそれは、(≦)0.20%(HPLC面積%)以下の総不純物量を含有し、好ましくは、総不純物量は(≦)0.15%(HPLC面積%)以下であり、最も好ましくは、総不純物量は、(≦)0.10%(HPLC面積%)以下である。
【0036】
本発明の一実施態様は、式(II)のビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル) エステルを含有しない、式(I)のヘキサン酸、6-(ニトロオキシ)-、(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イル エステルを提供し、ここで、式(I)の当該化合物は、以下:
・ (≦)0.05%w/w以下の、式(III)の6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸 ビマトプロスト エステル;
・ (≦)0.05%w/w以下の、式(VII)の(1E,3S)-1-((1R,2R,3S,5R)-2-((2E)-7-(エチルアミノ)-7-オキソヘプタ-2-エン-1-イル)-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル)-5-フェニルペンタ-1-エン-3-イル6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(5,6-trans-化合物(I));及び
・ (≦)0.05%以下の、式(VIII)の(1E,3R)-1-((1R,2R,3S,5R)-2-((2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソヘプタ-2-エン-1-イル)-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル)-5-フェニルペンタ-1-エン-3-イル-6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(15-epi-化合物(I))
を含有し;そして
ここで、総不純物量は、(≦)0.20%(HPLC面積%)以下である。
【0037】
本発明の別の実施態様は、式(II)のビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル)エステルを含有しない、式(I)のヘキサン酸、6-(ニトロオキシ)-、(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イル エステルを提供し、ここで式(I)の当該化合物は、以下:
・ (<)0.05%w/w未満の、式(III)の6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸 ビマトプロスト エステル);
・ (≦)0.05%w/w以下の、式(VII)の(1E,3S)-1-((1R,2R,3S,5R)-2-((2E)-7-(エチルアミノ)-7-オキソヘプタ-2-エン-1-イル)-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル)-5-フェニルペンタ-1-エン-3-イル6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(5,6-trans-化合物(I));及び
・ (<)0.05%w/w未満の、式(VIII)の(1E,3R)-1-((1R,2R,3S,5R)-2-((2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソヘプタ-2-エン-1-イル)-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル)-5-フェニルペンタ-1-エン-3-イル-6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(15-epi-化合物(I)
を含有し;そして
ここで、総不純物量は、(≦)0.20%(HPLC面積%)以下である。
【0038】
本発明の別の実施態様は、式(II)のビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル) エステルを含有しない、式(I)のヘキサン酸、6-(ニトロオキシ)-、(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イル エステルを提供し、ここで、式(I)の当該化合物は、以下:
・ (<)0.05%w/w未満の、式(III)の6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸 ビマトプロスト エステル;
・ (≦)0.05%w/w以下の、式(VII)の(1E,3S)-1-((1R,2R,3S,5R)-2-((2E)-7-(エチルアミノ)-7-オキソヘプタ-2-エン-1-イル)-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル)-5-フェニルペンタ-1-エン-3-イル-6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(5,6-trans-化合物(I));及び
・ (<)0.05%w/w未満の、式(VIII)の(1E,3R)-1-((1R,2R,3S,5R)-2-((2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソヘプタ-2-エン-1-イル)-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル)-5-フェニルペンタ-1-エン-3-イル-6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(15-epi-化合物(I))
を含有し;そして
ここで、総不純物量は、(≦)0.15%(HPLC面積%)以下である。
【0039】
本発明の別の実施態様は、式(II)のビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル)エステルを含有しない、式(I)のヘキサン酸、6-(ニトロオキシ)-、(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イル エステルを提供し、ここで、式(I)の当該化合物は、以下:
・ (<)0.05%w/w未満の、式(III)の6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸 ビマトプロスト エステル);
・ (≦)0.05%w/w以下の、式(VII)の(1E,3S)-1-((1R,2R,3S,5R)-2-((2E)-7-(エチルアミノ)-7-オキソヘプタ-2-エン-1-イル)-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル)-5-フェニルペンタ-1-エン-3-イル-6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(5,6-trans-化合物(I));及び
・ (<)0.05%w/w未満の、式(VIII)の(1E,3R)-1-((1R,2R,3S,5R)-2-((2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソヘプタ-2-エン-1-イル)-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル)-5-フェニルペンタ-1-エン-3-イル-6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(15エピ-化合物(I))
を含有し;そして
ここで、総不純物量は、(≦)0.10%(HPLC面積%)以下である。
【0040】
本発明の別の実施態様は、式(II)のビマトプロストの(15-(6-クロロヘキサノイル) エステルを含有せず、(≦)0.20%(HPLC面積%)以下の総不純物量を含有する、式(I)のヘキサン酸、6-(ニトロオキシ)-、(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イル エステル及び少なくとも1つの薬学的に許容され得る賦形剤を含む眼科用医薬組成物を提供し、好ましくは、総不純物量は、(≦)0.15%(HPLC面積%)以下であり、最も好ましくは、総不純物量は、(≦)0.10%(HPLC面積%)以下である。
【0041】
本発明の別の実施態様は、式(II)のビマトプロストの(15-(6-クロロヘキサノイル) エステルを含有しない、式(I)のヘキサン酸、6-(ニトロオキシ)-、(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イル エステル及び少なくとも1つの薬学的に許容され得る賦形剤を含む眼科用医薬組成物を提供し、(ここで、式(I)の当該化合物は、(≦)0.05%w/w以下の、式(III)の6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸 ビマトプロスト エステル;(≦)0.05%w/w以下の、式(VII)の(1E,3S)-1-((1R,2R,3S,5R)-2-((2E)-7-(エチルアミノ)-7-オキソヘプタ-2-エン-1-イル)-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル)-5-フェニルペンタ-1-エン-3-イル6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(5,6-trans-化合物(I));(≦)0.05%w/w以下の、式(VIII)の(1E,3R)-1-((1R,2R,3S,5R)-2-((2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソヘプタ-2-エン-1-イル)-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル)-5-フェニルペンタ-1-エン-3-イル-6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(15エピ-化合物(I))を含有し)、ここで、総不純物量は、(≦)0.20%(HPLC面積%)以下である。
【0042】
本発明の別の実施態様は、式(II)のビマトプロストの(15-(6-クロロヘキサノイル) エステルを含有しない、式(I)のヘキサン酸、6-(ニトロオキシ)-、(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イル エステル及び少なくとも1つの薬学的に許容され得る賦形剤を含む眼科用医薬組成物を提供し、(ここで、式(I)の当該化合物は、(<)0.05%w/w未満の、式(III)の6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸 ビマトプロスト エステル;(≦)0.05%w/w以下の、式(VII)の(1E,3S)-1-((1R,2R,3S,5R)-2-((2E)-7-(エチルアミノ)-7-オキソヘプタ-2-エン-1-イル)-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル)-5-フェニルペンタ-1-エン-3-イル-6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(5,6-trans-化合物(I));(<)0.05%w/w未満の、式(VIII)の、(1E,3R)-1-((1R,2R,3S,5R)-2-((2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソヘプタ-2-エン-1-イル)-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル)-5-フェニルペンタ-1-エン-3-イル-6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(15-epi-化合物(I)を含有し)、そしてここで、総不純物量は、(最大)0.20%(HPLC面積%)以下である。
【0043】
本発明の別の実施態様は、式(II)のビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル) エステルを含有しない、式(I)のヘキサン酸、6-(ニトロオキシ)-、(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イル エステル及び少なくとも1つの薬学的に許容され得る賦形剤を含む眼科用医薬組成物を提供し、(ここで、式(I)の当該化合物は、(<)0.05%w/w未満の、式(III)の6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸 ビマトプロスト エステル;(≦)0.05%w/w以下の、式(VII)の(1E,3S)-1-((1R,2R,3S,5R)-2-((2E)-7-(エチルアミノ)-7-オキソヘプタ-2-エン-1-イル)-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル)-5-フェニルペンタ-1-エン-3-イル-6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(5,6-trans-化合物(I));(<)0.05%w/w未満の、式(VIII)の(1E,3R)-1-((1R,2R,3S,5R)-2-((2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソヘプタ-2-エン-1-イル)-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル)-5-フェニルペンタ-1-エン-3-イル-6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート((15-epi-化合物(I))を含有し)、そしてここで、総不純物量は、(≦)0.15%(HPLC面積%)以下である。
【0044】
本発明の別の実施態様は、式(II)のビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル) エステルを含有しない、式(I)のヘキサン酸、6-(ニトロオキシ)-、(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イル エステル及び少なくとも1つの薬学的に許容され得る賦形剤を含む眼科用医薬組成物を提供し、(ここで、式(I)の当該化合物は、(<)0.05%w/w未満の、式(III)の6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸 ビマトプロスト エステル;(≦)0.05%w/w以下の、式(VII)の(1E,3S)-1-((1R,2R,3S,5R)-2-((2E)-7-(エチルアミノ)-7-オキソヘプタ-2-エン-1-イル)-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル)-5-フェニルペンタ-1-エン-3-イル-6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(5,6-trans-化合物(I));(<)0.05%w/w未満の、式(VIII)の(1E,3R)-1-((1R,2R,3S,5R)-2-((2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソヘプタ-2-エン-1-イル)-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル)-5-フェニルペンタ-1-エン-3-イル-6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(15-epi-化合物(I))を含有し)、そしてここで、総不純物量は、(≦)0.10%(HPLC面積%)以下である。
【0045】
化合物(I)の純度及び不純物のプロファイルは、本明細書に開示されるHPLC法(方法1及び方法2)により評価された。
【0046】
上記に報告された定義「ビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル) エステルを含有しない」又は「ビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル) エステルを実質的に含まない」は、ビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル) エステルの量が、本明細書に開示されるHPLC法の検出限界(LoD)を下回ることを意味する。
【0047】
上記に報告された定義「6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸 ビマトプロスト エステルの量が、0.05%w/w未満である」は、6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸 ビマトプロスト エステルの量が、本明細書に開示されるHPLC法の定量限界(LoQ)を下回ることを意味する。
【0048】
上記に報告された定義「5,6-trans-化合物(I)の量が、0.05%w/w未満である」は、5,6-trans-化合物(I)の量が、本明細書に開示されるHPLC法の定量限界を下回ることを意味する。
【0049】
上記に報告された定義「0.05%w/w未満の15-epi-化合物(I)の量」は、15-epi-化合物(I)の量が、本明細書に開示されるHPLC法の定量限界を下回ることを意味する。
【実施例0050】
ヘキサン酸、6-(ニトロオキシ)-、(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イル エステル(化合物(I))の合成
【0051】
前記出発物質のビマトプロストは、市販されている。
【0052】
1a)6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸の調製
【0053】
メチル 6-ヒドロキシヘキサノアートの合成
温度計、滴下漏斗、還流冷却器及び磁気撹拌器を備えた1Lの三口フラスコに乾燥メタノール(300mL)を投入し、続いて濃硫酸(2.8mL、0.052モル、0.06当量)を投入した。混合物を還流温度(T=63℃)に加熱した。混合物に、乾燥メタノール(200mL)中のε-カプロラクトン(100g、0.876モル、1当量)の溶液を滴下した。反応物を還流温度で2時間撹拌した。残留ε-カプロラクトンを監視するためにTLCを行った。次いで反応混合物を0~5℃に冷却した。温度を10℃未満に保持して、濃NaHCO3溶液(100mL)をゆっくり加えた。40℃の温度、真空下で、ロータリー蒸発器で揮発性溶媒を除去した。残留物に水とメチル-tert-ブチルエーテル(MTBE)(300mL)を加えた。相を5分間撹拌し、次いで分離した。水相をMTBE(2×200mL)で抽出した。合わせた有機相をブライン(2×100mL)で洗浄した。有機相をNa2SO4で乾燥させ、次いで40℃の温度、真空下で、ロータリー蒸発器で濃縮して、無色の油状物としてメチル-6-ヒドロキシヘキサノアート(103.58g、収率:80.9%)を得た。GC純度:96.2%である。
【0054】
メチル-6-ニトロオキシヘキサノアートの合成
温度計、滴下漏斗及び磁気撹拌器を備えた500mLの三口フラスコに、0~5℃に冷却した濃硫酸(45.6mL、0.85モル、3.1当量)を加えた。次に、温度を0~5℃の間に保持して、発煙硝酸(47.2mL、1.12モル、4.1当量)をそこに滴下した。冷却した混合物に、乾燥ジクロロメタン(100mL、2.5容量)をゆっくり加え、次いで0~5℃の間で30分間撹拌した。この温度で、乾燥(ジクロロメタン)DCM(100mL)中のメチル-6-ヒドロキシヘキサノアート(40g、0.27モル、1当量)を1時間で加えた。0~5℃で30分撹拌した後、反応混合物をTLCで監視し、反応の完了を示した。反応混合物は、冷却した水(200mL)にそれを滴下することによりクエンチした(T<10℃、最大2時間)。次に相を分離した。有機相をNa2SO4で乾燥し、次いで40℃の温度、真空下で、ロータリー蒸発器で濃縮して、黄色の油状物としてメチル-6-ニトロオキシヘキサノアート(49.46g)を94.5%の収率で得た。
【0055】
粗6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸の合成
温度計、滴下漏斗及び磁気撹拌器を備えた1Lの三口フラスコに、1.5M NaOH水溶液(208mL)を投入した。メタノール(248mL、5容量)中に溶解したメチル-6-ニトロオキシヘキサノアート(49.64g、0.26モル、1当量)を室温(T最大=35℃)で滴下した。添加後、混合物を室温で2時間撹拌した。TLCにより検査して、反応混合物は反応が完了したことを示した。反応混合物のpHは、183mLの2M HCl水溶液を用いて2.5に設定した。得られた混合物をMTBE(100mL)で抽出し、次いで水相をMTBE(5×50mL)で抽出した。合わせた有機相をブラインで(2×30mL)で洗浄し、次いで40℃の温度、真空下で、ロータリー蒸発器で濃縮して、黄色の油状物として粗6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(44.2g)を得た。アッセイは、UPLC法により評価される。
【0056】
6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸の精製
粗6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸は、以下の手順に従ってカラムクロマトグラフィにより精製した:
溶離液を、トルエンとメタノールを40:1の体積比で混合することにより調製した。シリカをスラリーディスペンサー中で溶離液と共に撹拌し、カラムに装填して、カラムを調製した。粗物質(1161g、UPLCによる91.8%のアッセイ)を、トルエン中に溶解し、カラムの上部に溶液を装填した。溶離は、1時間あたり15±5Lの流量で行い、10Lの画分を収集し、TLCにより分析した。最も純度の高い画分を合わせ、55℃±5℃未満の温度、真空下で濃縮した。精製した6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(952g、5.37モル)は、UPLCによる98.7%の純度を有し、且つ検出可能な量の6-[6-ニトロオキシヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸を含有しない、油状物として82%の収率で単離した。
【0057】
1b)粗のヘキサン酸、6-(ニトロオキシ)-、(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イル エステル(化合物(I))の合成
反応器にトルエン(28Kg、49容量)を投入し、続いてビマトプロスト(663g、1.595モル、1当量)とフェニルボロン酸(214g、1.755モル、1.1当量)を投入した。反応物を110℃±5℃で加熱し、蒸気温度を90℃で4時間維持し、溶媒の総容量約12Lに対する水で確実に共沸蒸留した。次に、反応混合物を25℃±5℃まで冷却した。
【0058】
ジメチルアミノピリジン(DMAP)(39g、0.319モル、0.2当量)及びN,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)(403g、3,190モル、2.0当量)を冷却した反応混合物に加え、続いてトルエン(0.5L、0.75容量)中の6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(565g、3.190モル、2.0当量)の溶液を加えた。反応物を25℃±5℃で1時間から3時間撹拌した。TLCを行って、残留物のビマトプロスト フェニル-ボロナート(化合物(V))を監視した。
【0059】
反応混合物をメタノール(1.3L、2容量)でクエンチし、5~10分撹拌した。次いで、反応混合物を、真空を介して0.5M 水酸化ナトリウム溶液(20L)及びジクロロメタン(10L、15容量)を含有する抽出器に移した。反応器を塩化メチレンで数回洗浄し、それを反応混合物に加えた。反応混合物を2時間から3時間撹拌し、次いで60分間放置して、有機相を移動タンクに収集した。ジクロロメタン(10L、15容量)を抽出器に投入し、混合物を5分間から10分間撹拌して、15分間放置した。有機層を収集した。有機層を再び抽出器に投入し、1M NaHSO4溶液(20L)を、真空を介して抽出器に移した。混合物を5から10分間撹拌し、15分間放置して、より下部の有機相を移動タンクに収集した。水層を除去した。有機相を再び抽出器に投入し、15% NaCl溶液(20L)を加え、混合物を5から10分間撹拌し、15分間放置した。有機層を収集し、水相を除去した。有機層を再び抽出器に投入し、15%w/w NaCl溶液(20L)を加えた。混合物を5から10分間撹拌し、15分間放置した。有機層を収集し、45℃±5℃の温度、真空下で、蒸発させた。
【0060】
粗生成物をジクロロメタン(7L、10.5容量)に溶解し、混合物を反応器に移した。混合物を5~10℃に冷却し、この温度を30~60分間保持して、N,N’-ジイソプロピル尿素を沈殿させた。混合物を、フィルターを通して移動タンク内に濾過する。反応器はジクロロメタン(2L、3容量)で洗浄し、溶液は濾過し、移動タンクに収集する。次に、移動タンク中の溶液をフラスコに移し、45℃±5℃の温度、真空下で、溶媒を蒸発させて、粗のヘキサン酸、6-(ニトロオキシ)-、(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イル エステル(粗化合物(I))を得る。
【0061】
1c)粗のヘキサン酸、6-(ニトロオキシ)-、(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イル エステル(化合物(I))の精製
【0062】
最初のクロマトグラフィー
溶離液の混合物1を、ジイソプロピルエーテル/アセトン/水を40:15:0.5の体積比で混合することにより調製した。
【0063】
シリカゲル(30Kg、45容量)を溶離液混合物1(66.3Kg、100容量)中に懸濁させ、前記懸濁液を3分間撹拌し、カラムに装填した。
【0064】
粗生成物を溶離液混合物(1L、1.5容量)中に溶解し、カラムの上部に投入した。溶離を行い、15Lの画分を収集して、TLCにより分析した。純度に従って画分を合わせ、HPLC及びUPLCにより分析した。
【0065】
所望の純度を有する選択された画分を収集し、45℃±5℃の温度で乾燥するまでロータリー蒸発器を用いて溶媒を蒸発させた。残留物をジクロロメタン(5L、7.5容量)中に溶解し、溶媒を乾燥するまで再び蒸発させた。
【0066】
化合物(I)は、5℃±3℃で保存した。
【0067】
シリカゲル濾過クロマトグラフィー
溶離液混合物2を、蒸留したジクロロメタンと蒸留したメタノールを30:1の体積比で混合することにより調製した。
【0068】
溶離液混合物2(13Kg、19.6容量)にシリカ75S(6.6Kg、10容量)を加え、懸濁液を撹拌して、カラムを満たすように注いだ。化合物(I)をジクロロメタン(1L、1.5容量)中に溶解し、溶液をカラムの上部に装填した。
【0069】
溶離を行い、画分をTLCにより検査し、所望の純度を有する選択された画分を収集した;合わせた画分を、HPLC及びUPLCにより分析した。
【0070】
画分は、45℃±5℃の温度、真空下で、ロータリー蒸発器で蒸発させた。油状物として単離した純粋な化合物(I)は、5℃±3℃で保存した。
【0071】
活性炭を用いた処理(清澄化)
純粋な化合物(I)をエタノール(6L、9容量)中に溶解し、活性炭(60g、約9%w/w)を加えた。混合物を20℃±5℃で30分間撹拌し、活性炭を濾過により除去する。溶媒を45℃±5℃、真空下で、一定重量になるまで蒸発させた。649.6g(1.13モル)の純粋な化合物(I)を油状物として単離した。前記方法の全収率は70.8%であった。
【0072】
単離した化合物(I)の純度評価は、以下に記載される2つの方法を用いたHPLC分析により行い、化合物(I)のHPLCアッセイは、HPLC/方法1により評価して99.91%(HPLC面積%)であった。
【0073】
式(II)のビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル) エステル、式(III)の6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸 ビマトプロスト エステル、式(VII)の5,6-trans-化合物(I)及び式(VIII)の15-epi-化合物(I)の検出限界(LoD)及び定量限界(LoQ)を表1に報告する。
【0074】
単離した化合物(I)の不純物プロファイルを表2に報告する。
【0075】
表3は、先行技術中に開示された方法に従って調製した化合物(I)中の不純物のビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル)エステル(II)の含有量を報告する。
【0076】
方法1:HPLC分析は、以下の測定条件を用いて行った。
機器:PDA検出器を備えたWaters HPLCシステム
固定相:Zorbax RXSIL、250×4.6mm、5μm
カラム温度:35℃
移動相:ヘキサン:エタノール:アセトニトリル:酢酸=935:60:5:0.5
実行時間:60分
流量:1.5mL/分
注入量:20μL
検出:UV、210nm
サンプル溶媒:エタノール:ヘキサン2:8
【0077】
方法2:HPLC分析は、以下の測定条件を用いて式(VIII)の15-epi-化合物(I)を定量するために行った。
機器:PDA検出器を備えたWaters HPLCシステム
固定相:Chiralpak AD-H、250×4.6mm、5μm
カラム温度:25℃
移動相:ヘキサン:エタノール:TFA=850:150:1
実行時間:30分
流量:1.0mL/分
注入量:10μL
検出:210nm
サンプル溶媒:ヘキサン:エタノール=8:2
【表1】
【表2】
【表3】