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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122610
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/475 20060101AFI20240902BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
A61F13/475 111
A61F13/475 112
A61F13/15 355A
A61F13/15 355B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030252
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金田 悠太郎
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA05
3B200BA12
3B200BA13
3B200BB04
3B200BB11
3B200BB20
3B200CA11
3B200DA03
3B200DA04
3B200EA12
3B200EA23
3B200EA24
(57)【要約】
【課題】低コストで機能性を有する吸収性物品を提供する。
【解決手段】防漏シートの一部を肌面側シートと接合して接合部を形成し、当該接合部の幅方向の内側端部である接合端から肌面側に起立して長手方向に延在し、幅方向の内側端部を自由端とする一対の防漏部と、を、備え、一対の防漏部は、2層のシートから形成され、自由端の近傍に伸長状態で配置されて長手方向に延在し、一対の防漏部が肌面側に起立するように付勢する弾性部材と、接合端と自由端との間に配置されて、長手方向に延在する屈曲部と、屈曲部の近傍に配置されて長手方向に延在し、2層のシートを互いに接合する高剛性部と、高剛性部よりも接合端の側に配置された、2層のシートが互いに接合されていない舌部と、を、有し、一対の防漏部が肌面側に起立する際、舌部が一対の防漏部から離れ、一対の防漏部の近傍にポケット状の空間を形成する、吸収性物品。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿った長さと、前記長手方向に直交する幅方向に沿った長さを有し、着用者の腹部に対向する前身頃領域と、前記着用者の背部に対向する後身頃領域と、前記前身頃領域及び前記後身頃領域の間に位置し、吸収体が配置される股下領域が連接された吸収性物品であって、
複数層を有する前記吸収体と、
前記吸収体の肌面側に設けられた透水性の肌面側シートと、
前記吸収体の前記幅方向の外側において肌面側に配置された防漏シートの一部を前記肌面側シートと接合して接合部を形成し、当該接合部の前記幅方向の内側端部である接合端から肌面側に起立して前記長手方向に延在し、前記幅方向の内側端部を自由端とする一対の防漏部と、
を、備え、
前記一対の防漏部は、
2層のシートから形成され、
前記自由端の近傍に伸長状態で配置されて前記長手方向に延在し、前記一対の防漏部が肌面側に起立するように付勢する弾性部材と、
前記接合端と前記自由端との間に配置されて、前記長手方向に延在する屈曲部と、
前記屈曲部の近傍に配置されて前記長手方向に延在し、前記2層のシートを互いに接合する高剛性部と、
前記高剛性部よりも前記接合端の側に配置された、前記2層のシートが互いに接合されていない舌部と、
を、有し、
前記一対の防漏部が肌面側に起立する際、前記舌部が前記一対の防漏部から離れ、前記一対の防漏部の近傍にポケット状の空間を形成する、
吸収性物品。
【請求項2】
前記高剛性部は、前記屈曲部よりも前記接合端の側に配置され、
前記屈曲部は前記高剛性部の前記自由端の側の端縁に沿って配置されている、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記高剛性部は、その延在範囲に前記屈曲部を含む、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記高剛性部は、前記屈曲部よりも前記自由端の側に配置され、
前記屈曲部は前記高剛性部の前記接合端の側の端縁に沿って配置されている、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記防漏シートは、前記一対の防漏部の前記自由端において前記幅方向の外側から前記幅方向の内側に向けて折り返されて、前記高剛性部において2層となっている、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記高剛性部は、前記2層のシートを溶着することにより形成されている、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記高剛性部は、前記2層のシートを接着することにより形成されている、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記一対の防漏部は、前記長手方向の両端部において、前記屈曲部の前記接合端の側が前記肌面側シートと接合し、前記屈曲部の前記自由端の側が、前記肌面側シートと接合し
ている前記接合端の側と更に接合することにより、固定部を形成している、
請求項1から7のうちいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記高剛性部と、前記屈曲部は、
前記固定部を含む前記長手方向の全域に延在している、
請求項8に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
おむつまたは下着と肌面との間に装着する吸収性物品(吸収性パッド)が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-196151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸収性パッドは、排出液を受け止めて主におむつの交換頻度を下げるために用いられる吸収性物品であり、漏れを抑制可能であることが望ましい。その一方で、吸収性パッドは、おむつよりも高頻度で交換されるため、低コストで実現可能であることも望ましい。本発明は、低コストで機能性を有する吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面に係る吸収性物品は、長手方向に沿った長さと、前記長手方向に直交する幅方向に沿った長さを有し、着用者の腹部に対向する前身頃領域と、前記着用者の背部に対向する後身頃領域と、前記前身頃領域及び前記後身頃領域の間に位置し、吸収体が配置される股下領域が連接された吸収性物品であって、複数層を有する前記吸収体と、前記吸収体の肌面側に設けられた透水性の肌面側シートと、前記吸収体の前記幅方向の外側において肌面側に配置された防漏シートの一部を前記肌面側シートと接合して接合部を形成し、当該接合部の前記幅方向の内側端部である接合端から肌面側に起立して前記長手方向に延在し、前記幅方向の内側端部を自由端とする一対の防漏部と、を、備え、前記一対の防漏部は、2層のシートから形成され、前記自由端の近傍に伸長状態で配置されて前記長手方向に延在し、前記一対の防漏部が肌面側に起立するように付勢する弾性部材と、前記接合端と前記自由端との間に配置されて、前記長手方向に延在する屈曲部と、前記屈曲部の近傍に配置されて前記長手方向に延在し、前記2層のシートを互いに接合する高剛性部と、前記高剛性部よりも前記接合端の側に配置された、前記2層のシートが互いに接合されていない舌部と、を、有し、前記一対の防漏部が肌面側に起立する際、前記舌部が前記一対の防漏部から離れ、前記一対の防漏部の近傍にポケット状の空間を形成する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、低コストで機能性を有する吸収性物品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係る吸収性パッドの外観斜視図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る吸収性パッドの分解斜視図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る吸収性パッドの平面図である。
図4図4は、吸収性パッドの長手方向中央部を幅方向に沿って切断した断面の模式図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る吸収性パッドの長手方向端部の断面の模式図である。
図6図6は、第2の実施形態に係る吸収性パッドの長手方向中央部の断面図である。
図7図7は、第3の実施形態に係る吸収性パッドの長手方向中央部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態に係る吸収性物品について説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本発明はこれらの実施形態の構成に限定されるものではない。
【0009】
<第1の実施形態>
本実施形態では、使い捨ての吸収性パッド(本願でいう「吸収性物品」の一例である)について、着用者の腹部に対向して配置される前身頃と背部に対向して配置される後身頃とを結ぶ方向を長手方向とする。これらの前身頃(長手方向の一側)と後身頃(長手方向の他側)との間(長手方向の中央)には、着用者の股下に配置(股間に対向して配置)される股下部が連接して位置している。また、吸収性パッドが着用者に着用された状態(以下、「着用状態」と略称する)において、着用者の肌に向かう側(着用状態で内側)を肌面側とし、肌面側の反対側(着用状態で外側)を非肌面側とする。さらに、肌面側と非肌面側とを結ぶ方向を厚み方向とし、長手方向と厚み方向の何れにも直交する方向を幅方向とする。そのほか、厚み方向から視ることを平面視とする。吸収性パッドは、長手方向に沿った長さと、長手方向に直交する幅方向に沿った長さとを有し、着用者の股下に装着される。また、本願で用いる方向に関する用語は、吸収性パッドが着用者に着用された状態において該着用者の前後左右に一致する方向を意味するものとする。例えば、本願で左右方向という場合、吸収性パッドが着用者に着用された状態において該着用者の左右に一致する方向を意味する。
【0010】
図1は、第1の実施形態に係る吸収性パッドの外観斜視図である。吸収性パッド1は、尿等の液体を吸収して保持するために用いられ、下衣肌着の肌面側に配置することで単独でも使用することができるし、使い捨ておむつの内側に重ねて使用することもできる。吸収性パッド1は、着用状態において着用者の陰部を覆う股下に対応する股下領域1Bと、股下領域1Bの前側に位置し、着用者の前身頃に対応する部位である前身頃領域1Fと、股下領域1Bの後側に位置し、着用者の後身頃に対応する部位である後身頃領域1Rとを有する。本実施形態に係る吸収性パッド1は、本実施形態に係る吸収性パッド1は、略長方形の外形を有しており、その内側に複数層で構成された吸収体を有している。
【0011】
吸収性パッド1には、吸収性パッド1と着用者の肌との間に液体の流出経路となる隙間が形成されるのを抑制するべく、立体ギャザー3BL,3BRが設けられている。立体ギャザー3BL,3BRは、糸状弾性部材の弾性力で肌面側に起立して着用者の肌に密着する。立体ギャザーの更に幅方向外側には、フィットギャザー3L,3Rが設けられている。フィットギャザー3L,3Rは、長手方向に延在する糸状弾性部材の弾性力により吸収性パッド1を屈曲させ、着用者の肌面に沿わせる機能を有している。
【0012】
図2は、第1の実施形態に係る吸収性パッドの分解斜視図である。吸収性パッド1は、バックシート3を有している。バックシート3は、吸収性パッド1の非肌面側において外表面を形成する、非透水性のフィルムの状シートである。バックシート3は、排出液を吸収した吸収性本体が保持する水分が、吸収性パッド1の非肌面側に滲出するのを防止する。なお、バックシート3は透湿性を有していてもよい。バックシート3が透湿性を有していると、吸収性パッド1の内側に籠る湿気はバックシート3を介して外部に放出されるので、着用時の快適性が向上する。
【0013】
吸収性パッド1は、バックシート3の非肌面側にカバーシートを積層していない。この
ため、バックシート3の非肌面側の全面が、吸収性パッド1の非肌面側表面に露出している。本実施形態に係る吸収性パッド1はカバーシートを有さないため、カバーシートの分だけ資材を減らすことができ、コストを低減可能である。バックシート3の非肌面側の一部には、止着テープが設けられていてよい。止着テープは粘着性を有するテープであり、下衣肌着や併用させるおむつ等に対して吸収性パッド1がずれるのを防ぐ。なお、バックシート3の非肌面側にホットメルト接着剤を塗布する等の滑り止め加工を施してもよい。
【0014】
吸収性パッド1の前身頃領域1F、後身頃領域1R、股下領域1Bには、股下領域1Bを中心に、吸収体4が組み込まれている。本実施形態における吸収体4は略長方形状である。なお、吸収体4は、股下領域1B近傍に括れを有する略瓢箪型または略砂時計型の平面形状であってもよい。吸収体4は、パルプ繊維等の短繊維と、粒状の高分子吸水材とを含むマット状の吸収コアを、透水性のシートであるコアラップシート5で覆った構成を有している。吸収体4の詳しい構造は後述する。
【0015】
吸収体4の幅方向両端部の更に幅方向外側には、長手方向に平行に、糸ゴム等の糸状弾性部材が、伸長状態で配置されて、フィットギャザー3L,3Rを形成している。フィットギャザー3L,3Rは、その付勢力によって吸収性パッド全体を着用者の肌面に沿うように立ち上げて着用感を向上させるとともに、排出液の横漏れを抑制する。フィットギャザー3L,3Rを構成する糸ゴムは、吸収体4の幅方向外側それぞれに複数本配置されていてよく、本実施形態では、吸収体4の幅方向外側に2本ずつ配置されている。
【0016】
吸収体4の肌面側には、透水性の肌面側シートであるトップシート6が設けられている。トップシート6は、吸収体4の吸水面を被覆するように着用者の肌面側に配置される、熱可塑性樹脂の繊維を含んで形成されたスパンボンド不織布や、エアスルー不織布等からなるシートである。トップシート6は、その一部又は全部において液透過性を有する。吸収性パッド1が着用された状態において、着用者から生じた排出液は、着用者の肌に接触し得るトップシート6を通って吸収体4に進入し、そこで吸収される。トップシート6は親水性を有していてもよい。
【0017】
トップシート6の幅方向外側の肌面側には、上述した立体ギャザー3BL,3BRを形成するための細長い帯状のサイドシート7L,7Rが配置されている。サイドシート7L,7Rは、トップシート6の長辺の部分に設けられる。サイドシート7L、7Rは、スパンボンド、メルトブローン等の長繊維不織布から構成される。不織布の素材としては、ポリプロピレン、ポリエステル、またポリプロピレン、ポリエステルの複合素材が用いられてよい。そして、サイドシート7L,7Rの肌面側には、糸ゴム7BL,7BRが長手方向に沿って接着されていることにより、立体ギャザー3BL,3BRが設けられている。立体ギャザー3BL,3BRは、端部を着用者の肌面に当接させ、排出液の横漏れを防止する機能を有している。このため、サイドシート7L,7Rは非透水性であることが望ましい。一方、サイドシート7L,7Rは、着用者の肌面と当接するシートであるため、着用者に不快感を与えないことも求められる。このため、サイドシート7L,7Rには、樹脂製フィルム等の非透水性の部材ではなく、一定の通気性を有し、肌当たりがよい長繊維不織布が用いられる。サイドシート7L,7Rは、本開示における防漏シートの一例である。また、立体ギャザー3BL,3BRは、本開示における一対の防漏部の一例である。
【0018】
サイドシート7L,7Rは、トップシート6の幅方向外側においてトップシート6と接着されており、幅方向外側に延在している。サイドシート7L,7Rは、トップシート6の幅方向端部よりも外側まで延在しており、更に、バックシート3の幅方向端部よりも外側まで延在している。サイドシート7の延在幅がバックシート3よりも広いため、吸収性パッド1の幅方向端部において、樹脂製フィルムであるバックシート3はサイドシート7L,7Rによりその肌面側を被覆されることになる。このため、本実施形態に係る吸収性
パッド1のように非肌面側にフィルムで構成されたバックシート3が露出していても、着用者は違和感を覚えない。
【0019】
バックシート3、吸収体4、トップシート6は、何れも前身頃領域1Fから後身頃領域1Rにまで延在する。よって、バックシート3、吸収体4、トップシート6を積層して着用者の陰部(股下)を覆うと、バックシート3、吸収体4、トップシート6の各長手方向の両端部は、着用者の腹側と背側に位置する状態となる。すなわち、着用者の陰部は、着用者の腹側から背側まで吸収体4に覆われる状態となる。したがって、着用者が腹を下へ向けた姿勢と背を下へ向けた姿勢の何れの姿勢で液体を体外へ排出しても、排出された液体はトップシート6を介して吸収体4に接触することになる。
【0020】
図3は、第1の実施形態に係る吸収性パッドの平面図である。本実施形態に係る吸収性パッド1は、長手方向、幅方向にそれぞれ対称な構成を有している。このため、着用者または介助者は、装着方向を考慮することなく吸収性パッドを装着可能である。どちらの方向で装着した場合でも、バックシート3、吸収体4、トップシート6は、何れも前身頃領域1Fから後身頃領域1Rにまで延在する。このため、吸収性パッド1をおむつや下衣肌着と肌面との間に挿入して着用者の陰部を覆うと、バックシート3と吸収体4とトップシート6の各長手方向の両端部は、着用者の腹側と背側に位置する状態となり、着用者の排泄孔は、吸収体4と対応する。
【0021】
吸収性パッド1の長手方向外側における吸収体4の長手方向端部の更に長手方向外側では、バックシート3とトップシート6が、ヒートシール等の熱融着により強固に接着されている。吸収体4の長手方向端部の長手方向外側で各シートが接着されているため、吸収性パッド1内部の吸収体4の位置は一定に保たれる。当該接着により、吸収体4に流入した排出液は、吸収性パッド1の長手方向端部から更に流出しにくくなる。また、当該接着により、比較的力が加わりやすい長手方向端部において、バックシート3とトップシート6の剥離が抑制される。なお、吸収性パッド1の長手方向端部におけるバックシート3とトップシート6の接着は、面状に塗布されたホットメルト接着剤によってなされてもよい。
【0022】
サイドシート7L,7Rは、長手方向の端部がトップシート8の長手方向の端部と揃うように配置されている。サイドシート7L,7Rの幅方向外側は、トップシート6、バックシート3と、ホットメルト接着剤等の接着剤によって接着されて、接合部を形成している。また、サイドシート7L,7Rは、各々その幅方向内側の一端に配置された自由端7TL,7TRを有している。自由端7TL,7TRの近傍には、糸状の弾性部材である一本の糸ゴム7BL,7BRが吸収性パッド1の長手方向に伸長状態で貼り付けられて配置されている。自由端7TL,7TRに糸ゴム7BL,7BRを複数本配置する形態も考えられるが、製造コストの面から考えると1本であることがより好適である。なお、糸ゴム7BL,7BRは糸ゴムに限られず、例えば伸縮性不織布糸であってもよい。
【0023】
長手方向端部近傍では、サイドシート7L,7Rは、その幅方向内側においてトップシート8と接着されているが、長手方向内側では、サイドシート7L,7Rの自由端7TL,7TR側は、吸収性パッド1のいずれの部位にも接合されておらず、肌面側に起立可能である。そして、サイドシート7L,7Rの幅方向内側部分は、自由端7TL,7TRの近傍に設けられた糸ゴム7BL,7BRが収縮することによって、接合部の幅方向内側端部に形成される接合端7SL,7SRから肌面側に起立して、立体ギャザー3BL,3BRを形成する。起立した立体ギャザー3BL,3BRは、当該立体ギャザー3BL,3BRの幅方向外側への排出液の移動を阻害し、液体の横漏れを抑制する。
【0024】
図4は、吸収性パッドの長手方向中央部を幅方向に沿って切断した断面の模式図である
図4では、吸収性パッド1の内部構造を分かりやすくするため、各構造を大きく強調し、構造の間に隙間を設けているが、実際には吸収性パッド1の断面は薄く、各内部構造は密接している。吸収体4は、吸収コア4cと、当該吸収コア4cを覆うコアラップシート5を有している。吸収コア4cは、パルプ繊維、レーヨン繊維、またはコットン繊維のようなセルロース系繊維の短繊維や、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエチレンテレフタレート等の合成繊維に親水化処理を施した短繊維の隙間に、水を吸収し保持することのできる架橋構造を持つ親水性ポリマーであるSAP(高吸収性重合体:Super
Absorbent Polymer)等の粒状の吸収性樹脂(高分子吸水材)を保持させた構造を有している。
【0025】
本実施形態のSAP粒子とは、SAPを含む樹脂組成物を粒状としたものを指す。ここで言う「SAPを含む樹脂組成物」とは、SAPのみからなる組成物、SAPを主成分とし、これに吸水性に悪影響を及ぼさない程度に他の物質が含まれた組成物、の双方を包含する概念である。「他の物質」としては、添加剤(粒子表面を疎水化する目的で添加される表面改質剤等)、SAPの合成時に残存した未反応のモノマー等を挙げることができる。
【0026】
本実施形態では、吸収コア4cは、上層吸収コア4aと、下層吸収コア4bの2層構造を有している。そして、上層吸収コア4aと下層吸収コア4bの間には、SAP粒子からなるSAP層4sが設けられている。SAP粒子はゲル化して水分を保持できる反面、吸収には一定の時間がかかる。このため、SAP粒子が水分を吸収するまでの間、短繊維が排出液を減速させながら吸収コア4c内部で拡散させ、広範囲のSAP粒子に排出液を吸収させることで逆戻りを抑制する。
【0027】
コアラップシート5は、吸収コア4cとトップシート6との間に配置される上層コアラップシート5aと、吸収コア4cの非肌面側に配置され、吸収コア4cの側面を覆い、更に上層コアラップシート5aの幅方向外側を覆う下層コアラップシート5bとを有している。上層コアラップシート5aと下層コアラップシート5bをこのように配置することで、コアラップシート5は、吸収コア4cの肌面側、非肌面側および側面の全てを覆うことになる。吸収コア4cをコアラップシート5で覆うことで、吸収コア4cは型崩れしにくくなり、その機能低下を抑制される。
【0028】
着用者の身体の正中線に対応する吸収性パッド1の幅方向中央部では、肌面側と吸収コア4cとを隔てるコアラップシート5は、上層コアラップシート5aのみであるため、排出液は比較的容易にコアラップシート5を通過する。一方、幅方向端部側では、コアラップシート5は、上層コアラップシート5aと下層コアラップシート5bの2層となっているため、幅方向外側への排出液の移動は抑制される。また、比較的体重がかかりやすい吸収体4の幅方向外側において、吸収コア4cが圧縮されることにより発生する逆戻りを抑制可能である。
【0029】
コアラップシート5は、一例としては、透水性のパルプ繊維シート、より具体的にはティッシュペーパーによって形成することができる。また、上層コアラップシート5aと下層コアラップシート5bの材質は同じであってよいし、異なっていてもよい。上層コアラップシート5aは、進入した排出液を速やかに吸収コア4cに移動させる必要があり、またトップシート6を介して着用者に違和感を与えにくくするため、剛性が低い素材から形成されていてもよいし、親水性を有していてもよい。一方、下層コアラップシート5bは、吸収コア4cの形状を保持しやすくし、排出液がバックシート3側に移動するのを抑制するため、比較的剛性が高い素材で形成されていてもよい。
【0030】
本実施形態では、トップシート6と吸収体4の肌面側との間には、ホットメルト接着剤
HMが、幅方向に一定の間隔を空けて複数塗布されている。同様に、バックシート3と吸収体4の非肌面側との間にも、ホットメルト接着剤HMが、幅方向に一定の間隔を空けて複数列で塗布されている。当該ホットメルト接着剤HMによっても、吸収性パッド1内部での吸収体4の位置は保持される。
【0031】
トップシート6の幅方向外側には、非透水性のサイドシート7L,7Rが配置されており、サイドシート7L,7Rの幅方向内側には、立体ギャザー3BL,3BRが形成されている。立体ギャザー3BL,3BRの幅方向外側にはホットメルト接着剤等の接着剤によりサイドシート7L,7Rとトップシート6とを接着することにより形成される接合部が存在する。立体ギャザー3BL,3BRは、接合部の幅方向内側端部を接合端7SL,7SRとして肌面側に起立し、その幅方向内側端部は、自由端7TL,7TRとして着用者の肌面に接する。自由端7TL,7TRの近傍には糸ゴム7BL,7BRが伸長状態で配置されている。立体ギャザー3BL,3BRは、当該糸ゴム7BL,7BRの付勢力により接合端7SL,7SRの幅方向内側のサイドシート7L,7Rが肌面側に起立することで形成される。
【0032】
立体ギャザー3BL,3BRには、屈曲部が設けられている。立体ギャザー3BL,3BRは、接合端7SL,7SRから幅方向内側に向けて立ち上がり、屈曲部で幅方向外側に向けて屈曲して更に幅方向外側に向けて立ち上がり、着用者の肌面と当接する。立体ギャザーに3BL,3BRに屈曲部を設けることにより、屈曲部の自由端7TL,7TR側は、着用者の肌面に面として当接する。一般的な立体ギャザーでは、自由端側に設けられた糸ゴム等の弾性部材の付勢力により肌面に当接するため、着用者の肌面と線で当接する。立体ギャザーが着用者の肌面と線で当接している状態で大量の排出液が幅方向に移動した場合、立体ギャザーが持ちこたえられずに横漏れを生じることがある。横漏れを抑制するために弾性部材の付勢力を高めると、弾性部材が着用者の肌面に食い込んで着用感低下の要因となることがある。
【0033】
本実施形態に係る吸収性パッド1は、屈曲部を設けることにより着用者の肌面と面当接するため、排出液の横漏れを効果的に抑制可能である。また、糸ゴム7BL,7BRの付勢力以外の方法で排出液の横漏れを抑制できるため、糸ゴム7BL,7BRの付勢力を高めずに、着用感の低下を抑制可能である。
【0034】
サイドシート7L,7Rは、立体ギャザー3BL,3BRの自由端側で折り返されて2重になっている。本実施形態では、2重になったサイドシート7L,7Rは、屈曲部の接合端7SL,7SR側において、ヒートシール等の熱溶着、超音波溶着等の溶着技術により溶着して強固に接合している。上述の通りサイドシート7L,7Rは不織布により構成されているが、溶着部位では、2重になったサイドシート7L,7Rは溶着により融合し、剛性の高いフィルム状となる。溶着部位は、一定の幅で長手方向に延在し、高剛性の領域である高剛性部7AL,7ARを形成している。なお、本実施形態では採用していないが、2重となったサイドシート7L,7Rの間にホットメルト接着剤等の非透水性の接着剤を厚く塗布して接合したものを一定の幅で長手方向に延在させることにより、高剛性部7AL,7ARを形成する構成も考えられる。
【0035】
屈曲部は、当該高剛性部7AL,7ARの自由端7TL,7TR側の端縁に沿って形成される。より具体的には、立体ギャザー3BL,3BRの屈曲部は、高剛性部7AL,7ARの幅方向内側、すなわち自由端7TL,7TR側の端部において幅方向外側に屈曲して屈曲部を形成する。高剛性部7AL,7ARでは、その剛性により立体ギャザー3BL,3BRは屈曲しないため、屈曲位置は高剛性部7AL,7ARの端縁部に限定されることになる。立体ギャザーを着用者の肌面に面当接させる目的で立体ギャザーの特定の位置に屈曲部を形成する場合、自由端側に配置する糸ゴム等の弾性部材と平行に、屈曲部を規
定する弾性部材を配置することが考えられる。このような構成では片側の立体ギャザーにつき2本以上の糸状弾性部材が配置されることになる。本実施形態に係る吸収性パッド1では、高剛性部7AL,7ARの端縁を屈曲部として規定するため、立体ギャザー3BL,3BRそれぞれについて配置する弾性部材を1本とでき、部品コストを低減可能である。
【0036】
立体ギャザー3BL,3BRが起立する際、高剛性部7AL,7ARの端部に沿って屈曲部が形成される。よって、高剛性部7AL,7ARは、屈曲部の吸収体4側に位置することになる。屈曲部の自由端7TL,7TR側では、立体ギャザー3BL,3BRは着用者の肌面と当接して排出液の横漏れを抑制する。自由端7TL,7TR側では、立体ギャザー3BL,3BRは2層になっている。本実施形態では、サイドシート7L,7Rは、自由端7TL,7TRにおいて、糸ゴム7BL,7BRを覆うように幅方向外側から幅方向内側に向けて屈曲して2層構造を形成しており、屈曲部の吸収体4側で高剛性部7AL,7ARによって接合されている。立体ギャザー3BL,3BRを2層構造とすることにより、非透水性をより高め、横漏れを抑制できる。また、屈曲部と自由端7TL,7TRとの間の着用者の肌面と当接する区間を2層構造とすることにより、肌触りが向上する。なお、この2層構造は、必ずしもサイドシート7L,7Rを折り返すことにより形成されている必要はなく、立体ギャザー3BL,3BRの幅方向内側に短冊状のシートを貼り合わせることで形成してもよい。
【0037】
一方、屈曲部の接合端7SL,7SR側は、幅方向に移動する排出液を吸収体4が吸収するまでの間保持し続ける機能を有する。そして、高剛性部7AL,7ARは溶着によりフィルム化しているため、その非透水性は向上している。また、高剛性部7AL,7ARは固形分を含む排出液と当接しても、その剛性により変形しにくい。このため、屈曲部の接合端7SL,7SR側では、排出液の受け止めと保持をより効果的に実現可能である。
【0038】
また、高剛性部7AL,7ARの自由端7TL,7TR側の端縁に沿って屈曲部を設けることにより、高剛性部7AL,7ARが着用者の肌に直接当接するのを防ぐことができる。高剛性部7AL,7ARは高剛性であるため、着用者の肌面と当接すると着用者に違和感を与えることがあるが、本実施形態では、立体ギャザー3BL,3BRが屈曲部で折り返されていることにより、高剛性部7AL,7ARは、屈曲部と自由端7TL,7TRとの間で2層になっているサイドシート7L,7Rを介して着用者の肌面と間接的に当接するため、着用者は違和感を覚えにくい。
【0039】
本実施形態における立体ギャザー3BL,3BRは、サイドシート7L,7Rが自由端7TL,7TRによって幅方向外側から幅方向内側に向けて折り返されることで2層となっており、各層は屈曲部の吸収体4側に設けられた高剛性部7AL,7ARにおいて相互に接合している。しかし、高剛性部7AL,7ARは、屈曲部の吸収体4側において2層となったサイドシート7L,7Rの全てを接合している訳ではなく、自由端7TL,7TRにおいて折り返されたサイドシート7L,7Rの吸収体4側端部は立体ギャザー3BL,3BRと非接着となっている。当該非接着部分は高剛性部7AL,7ARから吸収体4側に垂れ下がり、舌部7FL,7FRを形成している。屈曲部の吸収体4側において、折り返されたサイドシート7L,7Rが高剛性部7AL,7ARによって完全に接着しておらずその吸収体4側端部が舌部7FL,7FRとなっていることにより、仮に高剛性部7AL,7ARが着用者の肌面と当接した場合にも、舌部7FL,7FRがクッションとして機能することで、着用者に与える違和感を低減できる。
【0040】
屈曲部を有する立体ギャザー3BL,3BRが起立する際、舌部7FL,7FRは立体ギャザー3BL,3BRから離れ、立体ギャザー3BL,3BRと舌部7FL,7FRとの間には、ポケット状の空間であるポケット部7PL,7PRが形成される。
【0041】
幅方向外側に流動して立体ギャザー3BL,3BRによって堰き止められた排出液は、着用者の体位の変化などにより、吸収体4に吸収される前に幅方向中央側に流動しようとすることがある。吸収性パッドの表面を排出液が流動すると、着用者に違和感を与える。本実施形態では、立体ギャザー3BL,3BRと舌部7FL,7FRの間には、ポケット部7PL,7PRが形成されており、立体ギャザー3BL,3BRによって堰き止められた排出液は、当該ポケット部7PL,7PRに収容される。一端立体ギャザー3BL,3BRによって堰き止められた排出液が幅方向中央側に移動しようとすると、舌部7FL,7FRが逆流防止弁としての役割を果たし、排出液はポケット部7PL,7PRの内部に保持される。このように、本実施形態に係る吸収性パッド1は、立体ギャザー3BL,3BRに舌部7FL,7FRを設け、ポケット部7PL,7PRを形成することにより、着用感の低下を抑制できる。
【0042】
図5は、第1の実施形態に係る吸収性パッドの長手方向端部の断面の模式図である。吸収体4は、吸収性パッド1の長手方向端部には到達していない。このため、吸収性パッド1の長手方向端部では、ホットメルト接着剤等の接着剤により、バックシート3とトップシート6が直接接合されており、更にその肌面側の幅方向外側において、サイドシート7L,7Rが接合されている。
【0043】
糸ゴム7BL,7BRは、吸収体4の配置領域に延在しているものの、吸収性パッド1の長手方向端部には延在していない。その一方、高剛性部7AL,7ARは、吸収性パッド1の長手方向全域に渡って延在しているため、長手方向端部にも存在している。長手方向端部では、サイドシート7L,7Rの立体ギャザー3BL,3BR部分は折り畳まれた状態で、トップシート6と接合し、固定部を形成している。
【0044】
長手方向端部では、より具体的には、立体ギャザー3BL,3BRに相当する部分の接合端7SL,7SRと屈曲部に相当する部分までの区間が、ホットメルト接着剤等の接着剤によってトップシート6と接合している。立体ギャザー3BL,3BRに相当する部分は、長手方向中央部と同様に屈曲部に相当する部分おいて肌面側に折り返されて折り目を形成している。折り目において折り返された自由端7TL,7TR側と接合端7SL,7SR側は、ホットメルト接着剤等の接着剤により接着されていてよい。
【0045】
図5で示したように、立体ギャザー3BL,3BRは、長手方向端部では、トップシート6と接合し、固定部を形成している。立体ギャザー3BL,3BRは、長手方向に延在する糸ゴム7BL,7BRの付勢力により、当該固定部を起点として肌面側に立ち上がり、防漏部を形成する。更に、立体ギャザー3BL,3BRには、接合部において折り目が形成され、接合端7SL,7SR側と自由端7TL,7TR側に屈曲している。また、その端縁が屈曲部の位置を規定する高剛性部7AL,7ARはサイドシート7L,7Rの長手方向全域に渡って延在しているため、固定部を起点として立体ギャザー3BL,3BRが展開される際、屈曲部は立体ギャザー3BL,3BRの長手方向全域に渡って維持される。
【0046】
屈曲部が長手方向全域に渡って維持されているため、立体ギャザー3BL,3BRは、屈曲部を幅方向内側端部として幅方向内側に起立し、更に糸ゴム7BL,7BRが設けられた自由端7TL,7TRを端部として幅方向外側に起立する。屈曲部の自由端7TL,7TR側は、着用者の肌面に面として当接し、着用者に対する違和感を軽減しながら排出液の横漏れを防止する。屈曲部の接合端7SL,7SR側には高剛性部7AL,7ARが設けられており、排出液の横漏れを強力に抑制する。また、高剛性部7AL,7ARの接合端7SL,7SR側には、舌部7FL,7FRが配置されている。舌部7FL,7FRは、肌面と高剛性部7AL,7ARとの間のクッションとして機能する。また、立体ギャ
ザー3BL,3BRの接合端側において、起立した立体ギャザー3BL,3BRと舌部7FL,7FRとの間には、立体ギャザー3BL,3BRに達した排出液を収容するポケット部7PL,7PRが形成される。当該ポケット部7PL,7PRに収容された排出液が幅方向中央部に戻ろうとする際、舌部7FL,7FRは逆止弁として機能し、排出液の移動を抑制して着用者の違和感を軽減する。
【0047】
本実施形態に係る吸収性パッド1では、屈曲部の自由端7TL,7TR側の端縁を幅方向内側端部として幅方向内側に起立し、更に自由端7TL,7TRを端部として幅方向外側に起立する立体ギャザー3BL,3BRを、自由端7TL,7TR近傍に設けられて長手方向に延在する1本の糸ゴム7BL,7BRによって形成可能である。本実施形態に係る吸収性パッド1は、自由端7TL,7TR近傍に加えて別途屈曲部に糸ゴム等の弾性部材を設ける必要がないため、製造コストを低減しつつも機能性の高い立体ギャザー3BL,3BRを提供できる。
【0048】
また、本実施形態では、立体ギャザー3BL,3BRは長手方向に延在する高剛性部7AL,7ARを有しており、当該高剛性部7AL,7ARにより排出液の横漏れを強力に抑制可能である。高剛性部7AL,7ARは、屈曲部の接合端7SL,7SR側に配置されており、更に立体ギャザー3BL,3BRが屈曲部において折り返されて幅方向外側を向いて自由端7TL,7TRに達している。立体ギャザーに高剛性部を設け、当該高剛性部が着用者の肌面と接すると、着用者に違和感を与えることがあるが、本実施形態における立体ギャザー3BL,3BRでは、高剛性部7AL,7ARは着用者の肌面と直接接しないため、着用者に与える違和感を軽減可能である。
【0049】
更に、本実施形態では、立体ギャザー3BL,3BR部分において、サイドシート7L,7Rは2重になっている。このため、肌触りの良い立体ギャザー3BL,3BRを提供可能である。加えて、本実施形態では、2重になったサイドシート7L,7Rの端部が高剛性部7AL,7ARから吸収体4側に垂れ下がり、舌部7FL,7FRを形成している。当該舌部7FL,7FRは、着用者の肌面に対するクッションとしての役割を果たす。更に、舌部7FL,7FRを設けることにより、立体ギャザー3BL,3BRとの間にポケット部7PL,7PRを形成し、当該ポケット部7PL,7PRに流入した排出液を収容できる。舌部7FL,7FRは、ポケット部7PL,7PRに排出液が収容されている状態において、立体ギャザー3BL,3BRに達した排出液が幅方向内側に戻るのを抑制する逆止弁として機能する。
【0050】
<第2の実施形態>
図6は、第2の実施形態に係る吸収性パッドの長手方向中央部の断面図である。以下の説明では、各図中、上記第1の実施形態と実質的に同一の機能を有する構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。第2の実施形態では、高剛性部7AL,7ARはより自由端7TL,7TR側に配置されており、高剛性部7AL,7ARが屈曲することで屈曲部が形成されている。換言すれば、高剛性部7AL,7ARは、その延在範囲に屈曲部を含んでいる。高剛性部7AL,7ARは高い剛性を有しているため、屈曲した高剛性部7AL,7ARは屈曲状態を持続する。第2の実施形態では、高剛性部7AL,7AR自体が屈曲部を規定する役割を果たすため、屈曲部の近傍に弾性部材を配置する必要性はより低くなる。第2の実施形態でも、自由端7TL,7TR側に糸ゴム7BL,7BRを各1本のみ配置しつつも、屈曲部と自由端7TL,7TRとの間に着用者の肌面との面当接部分を有する吸収性パッド1を実現可能である。
【0051】
第2の実施形態に係る吸収性パッド1は、高剛性部7AL,7ARを屈曲部とすることにより、屈曲部の自由端7TL,7TR側の端縁を幅方向内側端部として幅方向内側に起立し、更に自由端7TL,7TRを端部として幅方向外側に起立する立体ギャザー3BL
,3BRの形状をより良好に保つことができる。当該形状を有する立体ギャザー3BL,3BRは、幅方向内側に起立している吸収体4側部分とトップシート6との間にポケット状の空間を形成して排出液の流動を強力に抑制する。また、幅方向外側に起立している肌面側部分が着用者の肌面と面当接することにより、自由端7TL,7TR近傍からの排出液の横漏れを強力に制限する。このように、第2の実施形態に係る吸収性パッド1は、非常に良好な効果を奏する立体ギャザーの形状をより保持しやすくする。
【0052】
また、第2の実施形態では、高剛性部7AL,7ARはより自由端7TL,7TR側に配置されているため、第1の実施形態と比較するとより大きな舌部7FL,7FRを形成可能である。舌部7FL,7FRが大きくなることにより、着用者の肌面に対するクッションとしての効果はより大きくなる。また、舌部7FL,7FRが大きくなることにより、起立した立体ギャザー3BL,3BRとの間に形成されるポケット部7PL,7PRもより大きくなるため、立体ギャザー3BL,3BRに達した排出液をより多く収容できる。第2の実施形態に係る吸収性パッド1では、排出液の移動抑制効果はより高くなり、着用者の違和感を更に軽減可能である。
【0053】
<第3の実施形態>
図7は、第3の実施形態に係る吸収性パッドの長手方向中央部の断面図である。第3の実施形態に係る吸収性パッド1では、高剛性部7AL,7ARは第2の実施形態よりも更に自由端7TL,7TR側に配置されている。より具体的には、高剛性部7AL,7ARは、屈曲部よりも自由端7TL,7TR側に位置しており、屈曲部は、高剛性部7AL,7ARの接合端7SL,7SR側の端縁に沿って配置されている。
【0054】
第3の実施形態でも、高剛性部7AL,7ARの端縁に屈曲部が形成される点は第1の実施形態と同様であるが、高剛性部7AL,7ARが屈曲部の肌面側に配置されている点が異なる。高剛性部7AL,7ARが剛性を有していることにより、立体ギャザー3BL,3BRの自由端7TL,7TR側が平坦になり、肌面と密着しやすくなる。立体ギャザー3BL,3BRが着用者の肌面と密着することにより、排出液が自由端7TL,7TRを超えて横漏れを生じにくくなる。第3の実施形態では、屈曲部近傍に糸ゴム等の弾性部材を配置せず、自由端7TL,7TR側に糸ゴム7BL,7BRを各1本配置した状態においても、着用者の肌面に面接触し、効果的に機能を発揮する立体ギャザー3BL,3BRを実現可能である。
【0055】
高剛性部7AL,7ARが第2の実施形態よりも自由端7TL,7TR側に配置されているため、舌部7FL,7FRは第2の実施形態よりも更に幅広となる。このため、舌部7FL,7FRは、着用者に対するクッションとしての役割をより効果的に果たすことが可能である。更に、第3の実施形態では、他の実施形態とは異なり、高剛性部7AL,7ARは、その全体が屈曲部よりも自由端7TL,7TR側に位置している。他の実施形態では、高剛性部7AL,7ARの接合端側が幅方向外側を向いているため、高剛性部7AL,7ARの接合端側延長線を起点として形成される舌部7FL,7FRも、幅方向外側に向かって形成される。
【0056】
一方、本実施形態では、高剛性部7AL,7ARはその全域が屈曲部と自由端7TL,7TRとの間に配置されており、高剛性部7AL,7ARの接合端側は幅方向内側を向いている。このため、本実施形態の舌部7FL,7FRは、立体ギャザー3BL,3BRが起立する際に幅方向内側に向かって形成される。更に、舌部7FL,7FR自体も他の実施形態よりも幅広である。
【0057】
他の実施形態よりも幅広な舌部7FL,7FRが幅方向内側を向いていることにより、起立した立体ギャザー3BL,3BRと舌部7FL,7FRとの間には、他の実施形態と
比較すると非常に大きなポケット部7PL,7PRが形成される。第3の実施形態の吸収性パッド1は、ポケット部7PL,7PRの内側に非常に多くの排出液を収容可能である。幅方向外側のポケット部7PL,7PRに収容された排出液の移動を抑制し、着用者の違和感を更に軽減可能である。
【0058】
また、舌部7FL,7FRが幅方向外側から幅方向内側に向かって形成されていることで、立体ギャザー3BL,3BRは、屈曲部と自由端7TL,7TRの間のみならず、舌部7FL,7FRにおいても着用者の肌面と面当接する。このため、第3の実施形態に係る吸収性パッド1では、立体ギャザー3BL,3BRが着用者の肌面と面当接する範囲が、他の実施形態と比較すると非常に広くなる。立体ギャザー3BL,3BRが着用者の肌面と広範囲で面当接することにより、排出液は自由端7TL,7TRを容易には越えられなくなる。このため、本実施形態に係る吸収性パッド1は、排出液の横漏れをも効果的に抑制可能である。
【0059】
以上、各実施形態について説明したが、本発明の内容は上記の各実施形態に限られるものではない。本開示では、防漏部である立体ギャザーに特徴を有する吸収性パッドについて説明をしたが、本開示の特徴を有する防漏部は、小児用、大人用のパンツ型、テープ型おむつ、生理用品等の種々の吸収性物品にも適用可能である。これらの物品に対して本開示の特徴を有する防漏部を適用した形態も、本開示の範囲に含まれる。
【0060】
以上で開示した各実施形態に含まれる特徴は、それぞれ組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0061】
1・・吸収性パッド
1F・・前身頃領域
1B・・股下領域
1R・・後身頃領域
3L,3R・・フィットギャザー
3BL,3BR・・立体ギャザー
4・・吸収体
4a・・上層吸収コア
4b・・下層吸収コア
4c・・吸収コア
4s・・SAP層
5・・コアラップシート
5a・・上層コアラップシート
5b・・下層コアラップシート
6・・トップシート
7L,7R・・サイドシート
7AL,7AR・・高剛性部
7BL,7BR・・糸ゴム
7FL,7FR・・舌部
7SL,7SR・・接合端
7TL,7TR・・自由端
HS・・ヒートシール部
HM・・ホットメルト接着剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7