(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122612
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】梁の施工方法、梁及びハーフプレキャスト部材
(51)【国際特許分類】
E04C 3/22 20060101AFI20240902BHJP
E04B 1/20 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
E04C3/22
E04B1/20 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030263
(22)【出願日】2023-02-28
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 元嗣
(72)【発明者】
【氏名】長屋 圭一
(72)【発明者】
【氏名】田中 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】乾 智洋
【テーマコード(参考)】
2E163
【Fターム(参考)】
2E163FA12
2E163FD21
2E163FD36
2E163FD44
(57)【要約】
【課題】支保工を用いずに大断面の鉄筋コンクリート造の梁を施工するための梁の施工方法、梁及びハーフプレキャスト部材を提供する。
【解決手段】梁20は、最下部を構成する複数のハーフPCa部材21,22,23を備える。各ハーフPCa部材21~23は、梁20の幅方向D2に分割され、梁20の軸方向D1の長さのコンクリートで構成されたブロック部を有する。梁20は、複数のつなぎ筋25及び複数の梁側面軸方向筋26を備える。つなぎ筋25は、ハーフPCa部材21~23の上面近傍において、梁20を構成する全てのハーフPCa部材21~23に渡る長さで、梁20の幅方向D2に延在するように配置される。梁側面軸方向筋26は、梁20の側面近傍において、垂直方向に離間して配置される。梁20は、上部であって、梁20の高さH1の半分以上の高さH2を有する領域である現場打設コンクリート部29を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のハーフプレキャスト部材を備える梁を施工する方法であって、
前記ハーフプレキャスト部材は、コンクリートで構成されたブロック部と、このブロック部に下部が埋設され上方に延在する鉄筋とを備え、
前記ブロック部は、前記梁の延在方向と直交する幅方向に分割された形状で構成され、
前記複数のハーフプレキャスト部材を、前記梁の下端部において前記幅方向に並ぶように配置し、
前記幅方向に延在するつなぎ筋を、前記幅方向に並べたすべてのハーフプレキャスト部材に渡るように、前記ブロック部の上方に配置し、
前記梁の軸方向に延在する梁側面軸方向筋を、前記梁の両側面に配置し、
前記ハーフプレキャスト部材の上方の側方を型枠で覆った状態で、前記梁の上側の領域をコンクリート打設することにより、前記ブロック部から上方に突出した鉄筋を埋設した前記梁を形成することを特徴とする梁の施工方法。
【請求項2】
複数のハーフプレキャスト部材を備える梁であって、
前記ハーフプレキャスト部材は、コンクリートで構成されたブロック部と、このブロック部に下部が埋設され上方に延在する鉄筋とを備え、
前記ブロック部は、前記梁の延在方向と直交する幅方向に分割された形状で構成され、
最下部において前記幅方向に並べられた前記複数のハーフプレキャスト部材と、
前記ブロック部の上方に配置され、前記幅方向に並べたすべてのハーフプレキャスト部材に渡るように、前記幅方向に延在するつなぎ筋と、
前記梁の軸方向に延在し前記梁の両側面に配置された梁側面軸方向筋と、
前記ブロック部から上方に突出した鉄筋を埋設し、上側の領域を構成する現場打設コンクリート部とを備えることを特徴とする梁。
【請求項3】
梁の一部を構成するハーフプレキャスト部材であって、
前記梁の長さに応じた軸方向の長さと、前記梁の幅方向に複数に分割された幅とを有するコンクリートで構成されたブロック部と、
前記ブロック部に埋設されている前記軸方向に延在する複数の軸方向筋と、
前記ブロック部に下端部が埋設し前記ブロック部から上方に突出した複数のスターラップと、を有し、
前記ブロック部の前記幅方向の側面には、前記梁の幅方向に隣接する他のハーフプレキャスト部材との係合部が形成されていることを特徴とするハーフプレキャスト部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建物の梁の施工方法、梁及びこの梁に用いられるハーフプレキャスト部材に関する。
【背景技術】
【0002】
競技場等の建築物では、大断面の鉄筋コンクリート造の梁(RC梁)を設けることがある。このような梁を形成する場合、大規模な支保工を設けて、コンクリートを現場で打設することが一般的である。この場合、コンクリートの硬化により一定の強度が発現するまでは、支保工を残しておく必要があった。そして、支保工を外せないため、支保工の下となる部分の他の工事の施工開始の遅延に繋がっていた。また、大断面のRC梁に用いる支保工は、物量が多くなるとともに、仮設費用が嵩んでいた。
【0003】
そこで、施工時間短縮のために、工場で予め製作したプレキャスト部材を用いて梁を構築することも考えられる。しかしながら、大断面のRC梁をプレキャスト(以下、PCa)梁として工場で製作した後で、現場に搬送することは不可能である。
【0004】
そこで、梁の一部を、工場で予め製作した後、この工場で予め製作したハーフプレキャスト部材(ハーフPCa部材)を用いて、梁を構築することも考えられる。例えば、梁の断面の一部を構成するハーフPCa部材(ハーフPCa梁)を用いて梁を構築する技術もある(例えば、特許文献1参照。)。この文献に記載の梁の構築方法では、まず、断面U字形をなしたハーフPCa梁を複数の柱間に連続配置する。そして、柱とパネルで囲われたゾーン内でハーフPCa同士を一次コンクリートまたは鋼板の溶接などの接合手段により接合する。その後、PC鋼線をハーフPCa梁の空洞部に配置して緊張した後、空洞部にコンクリートを打設する。
【0005】
また、梁の下部全体を、スラブ材などで用いられているハーフプレキャスト(PCa)床板1枚で構成するとともに、これを用いて梁を構築することも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したハーフPCa梁やハーフPCa床板を用いる場合、大断面のRC梁においては、施工時の荷重、支持スパンから求まる必要な厚みが厚くなる。従って、梁幅まで考慮すると、プレキャスト部分の重量が重くなり過ぎるため、運搬が不可能であった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する梁の施工方法は、複数のハーフプレキャスト部材を備える梁を施工する方法であって、前記ハーフプレキャスト部材は、コンクリートで構成されたブロック部と、このブロック部に下部が埋設され上方に延在する鉄筋とを備え、前記ブロック部は、前記梁の延在方向と直交する幅方向に分割された形状で構成され、前記複数のハーフプレキャスト部材を、前記梁の下端部において前記幅方向に並ぶように配置し、前記幅方向に延在するつなぎ筋を、前記幅方向に並べたすべてのハーフプレキャスト部材に渡るように、前記ブロック部の上方に配置し、前記梁の軸方向に延在する梁側面軸方向筋を、前記梁の両側面に配置し、前記ハーフプレキャスト部材の上方の側方を型枠で覆った状態で、前記梁の上側の領域をコンクリート打設することにより、前記ブロック部から上方に突出した鉄筋を埋設した前記梁を形成する。
【0009】
更に、上記課題を解決する梁は、複数のハーフプレキャスト部材を備える梁であって、前記ハーフプレキャスト部材は、コンクリートで構成されたブロック部と、このブロック部に下部が埋設され上方に延在する鉄筋とを備え、前記ブロック部は、前記梁の延在方向と直交する幅方向に分割された形状で構成され、最下部において前記幅方向に並べられた前記複数のハーフプレキャスト部材と、前記ブロック部の上方に配置され、前記幅方向に並べたすべてのハーフプレキャスト部材に渡るように、前記幅方向に延在するつなぎ筋と、前記梁の軸方向に延在し前記梁の両側面に配置された梁側面軸方向筋と、前記ブロック部から上方に突出した鉄筋を埋設し、上側の領域を構成する現場打設コンクリート部とを備える。
【0010】
また、上記課題を解決するハーフプレキャスト部材は、梁の一部を構成するハーフプレキャスト部材であって、前記梁の長さに応じた軸方向の長さと、前記梁の幅方向に複数に分割された幅とを有するコンクリートで構成されたブロック部と、前記ブロック部に埋設されている前記軸方向に延在する複数の軸方向筋と、前記ブロック部に下端部が埋設し前記ブロック部から上方に突出した複数のスターラップと、を有し、前記ブロック部の前記幅方向の側面には、前記梁の幅方向に隣接する他のハーフプレキャスト部材との係合部が形成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、支保工を用いずに大断面の鉄筋コンクリート造の梁を施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態における梁の構成を概念的に説明する概略構成図である。
【
図2】実施形態における梁が用いられた建築物の正面図である。
【
図3】実施形態における梁が用いられた建築物のガーダー架構の正面図である。
【
図4】実施形態における梁を下斜めから見た要部の斜視図である。
【
図5】
図3の5-5線断面における梁の断面図である。
【
図6】実施形態における梁に用いるハーフプレキャスト部材の斜視図である。
【
図7】実施形態における梁に用いるハーフプレキャスト部材の正面図である。
【
図8】実施形態における梁に用いるハーフプレキャスト部材の斜視図である。
【
図9】実施形態における梁に用いるハーフプレキャスト部材の正面図である。
【
図10】実施形態における梁に用いるハーフプレキャスト部材の斜視図である。
【
図11】実施形態における梁に用いるハーフプレキャスト部材の正面図である。
【
図12】実施形態において2個のハーフプレキャスト部材を並べて配置した状態を示す説明図である。
【
図13】実施形態において3個のハーフプレキャスト部材を並べた上に、転がし筋及びつなぎ筋を配置した状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、
図1~
図13を用いて、梁の施工方法、梁及びハーフプレキャスト部材を具体化した一実施形態を説明する。
(梁の概略構造)
まず、
図1を用いて、本実施形態の梁の構成の概略について説明する。
本実施形態では、梁20は、離間した柱15の上に架け渡される。梁20は、最下部を構成する複数のハーフプレキャスト部材(ハーフPCa部材)21,22,23を備える。各ハーフPCa部材21,22,23は、梁20の幅方向D2に分割され、梁20の軸方向D1の長さを少なくとも有するコンクリートで構成されたブロック部を有する。更に、各ハーフPCa部材21~23のブロック部には、図示しないスターラップの下部が埋設されている。このスターラップの上部は、上記のブロック部から上方に突出して形成されている。
【0014】
梁20は、複数のつなぎ筋25及び複数の梁側面軸方向筋26を備える。複数のつなぎ筋25及び複数の梁側面軸方向筋26は、梁20の現場打設コンクリート部29に埋設される鉄筋である。
【0015】
つなぎ筋25は、ハーフPCa部材21~23の上面近傍において、軸方向D1に離間して配置される。各つなぎ筋25は、梁20を構成する全てのハーフPCa部材21~23に渡る長さで、梁20の幅方向D2に延在するように配置される。
梁側面軸方向筋26は、梁20の両側面近傍において、垂直方向に離間して配置される。各梁側面軸方向筋26は、梁20の軸方向D1に延在するように配置され、梁20より水平方向に突出する。そして、各梁側面軸方向筋26の端部は、柱15の直上方の柱梁仕口部15aの現場打設コンクリートに定着するとともに埋設される。
【0016】
更に、梁20の現場打設コンクリート部29には、各ハーフPCa部材21~23のスターラップ、軸方向に延在する図示しない主筋及びスターラップ等が埋設されている。この現場打設コンクリート部29は、梁20の上部であって、梁20の高さH1の半分以上の高さH2を有する領域である。現場打設コンクリート部29は、ハーフPCa部材21~23の上において現場打ちにより形成される。
【0017】
(梁を建物に用いた具体例)
次に、
図2~
図13を用いて、上記において概略構造を説明した梁20を、実際に建物に用いた具体例について詳述する。
【0018】
図2に示すように、本実施形態においては、建築物としての競技場30の梁として用いられる。この競技場30は、離間して配置される2個(1対)のガーダー架構F1と、これらガーダー架構F1に支持される固定屋根R1及び可動屋根R2を備えている。固定屋根R1は、略切妻屋根形状を有し、その外側端部がそれぞれガーダー架構F1の内側に固定されている。可動屋根R2は、略切妻屋根形状を有し、その外側端部には、紙面の垂直方向に移動可能な台車R2tが設けられている。台車R2tは、ガーダー架構F1の屋上において摺動可能に設けられている。
【0019】
図3に示すように、ガーダー架構F1は、複数の内側の柱31、複数の外側の柱32、複数の梁33,34,35,36,40を備えている。内側の柱31は、垂直に延在している。外側の柱32は、最下層は垂直に延在している。ここで、2層目より上方においては、下方が広くなるように斜めに傾斜した形状を有する。
【0020】
梁33は、紙面に垂直な方向に延在し、内側の柱31同士、外側の柱32同士を連結する。更に、ガーダー架構F1に、梁33a,33b,33cを設けてもよい。各梁33a,33b,33cは、梁33と平行に延在し、内側の柱31同士、外側の柱32同士を連結し、異なる階層に配置される。
また、梁34~36,40は、内側の柱31及び外側の柱32を連結する。本実施形態においては、梁33~36,40は、上述した梁20の構造を有する。
【0021】
<梁40の構成>
図4は、梁40を、斜め下から見上げた斜視図であり、
図5は、
図3における梁40の5-5線方向の断面図である。梁40は、ハーフPCa部材50,60,70を備える。
そして、
図4に示すように、梁40の下面には、ハーフPCa部材50,60,70の間の目地及びハーフPCa部材50,70の後述する化粧目地56s,76sが、線状に並んで見える。また、各ハーフPCa部材50,60,70の下面には、軸方向の中央の位置に、化粧目地56s,76sと直交する方向に延在する化粧目地が設けられている。
【0022】
図5に示すように、梁40は、下端部に配置されたハーフPCa部材50,60,70を備える。
(ハーフPCa部材50の構成)
次に、
図5~
図7を用いて、ハーフPCa部材50の構成について説明する。
図5に示すように、ハーフPCa部材50は、梁40の軸方向(
図5の紙面に直交する方向)に延在する下側軸方向筋51及び軸方向筋52、スターラップ53、垂直方向(高さ方向)に延在するスターラップ54及びブロック部56を備える。
【0023】
図6に示すように、各下側軸方向筋51は、ハーフPCa部材50の下面から所定のかぶり厚さの位置に配置され、ブロック部56から軸方向D1(前後方向)に突出している。下側軸方向筋51の突出した部分は、埋設される柱31,32と十分な定着が行なえる長さを有する。軸方向筋52は、下側軸方向筋51よりも所定距離上方に配置され、下側軸方向筋51より短い長さで、ブロック部56から突出している。
【0024】
図5に示すように、スターラップ53は、幅方向D2に延在して、ブロック部56に埋設されている。
複数のスターラップ54は、梁40の強度や下側軸方向筋51、後述する上側軸方向筋41、軸方向筋42,52の配置に応じて配置される。
【0025】
図6及び
図7に示すように、ハーフPCa部材50における各スターラップ54は、ブロック部56から上方に突出している。スターラップ54の上端部は、U字形状に折り返されている。
【0026】
ブロック部56は、コンクリートで構成されている。このブロック部56には、軸方向D1の側面側に、コッター56c,56dが並んで形成されている。コッター56c,56dは、略直方体形状の凹部で形成されている。
【0027】
また、ブロック部56には、幅方向D2の側面において、幅方向D2の一方側に突出した係合部としての突条部56aが形成されている。本実施形態においては、この突条部56aは、軸方向D1に延在し、ブロック部56の上面と面一となるように形成されている。更に、突条部56aは、幅方向D2において長さL1を有する。この突条部56aの長さL1は、ブロック部56の製造誤差の最大値と、目地として形成するハーフPCa部材50,60の隙間の大きさS1を加えた大きさよりも大きい。
更に、ブロック部56の下面には、化粧目地56sとなる溝が形成されている。この溝は、梁40の軸方向D1に延在して設けられる。
【0028】
(ハーフPCa部材60の構成)
次に、
図5、
図8及び
図9を用いて、ハーフPCa部材60の構成について説明する。ハーフPCa部材60は、上述したハーフPCa部材50とは、コンクリートで構成されるブロック部の大きさ、このブロック部の上端部やコッターの形状及び上方に突出するスターラップ64の数が異なる。
【0029】
図5に示すように、ハーフPCa部材60は、梁40の軸方向に延在する下側軸方向筋61、スターラップ63、垂直方向に延在するスターラップ64及びコンクリートで構成されたブロック部66を備える。
【0030】
各下側軸方向筋61は、ハーフPCa部材60の下面から所定のかぶり厚さの位置に配置されている。そして、複数の下側軸方向筋61は、ハーフPCa部材50の下側軸方向筋51とほぼ一列となるように、離間して設けられる。
【0031】
図8に示すように、下側軸方向筋61は、ブロック部66から軸方向D1に突出している。下側軸方向筋61の突出した部分は、下側軸方向筋51と同様な長さを有する。
図5に示すように、スターラップ63は、幅方向D2に延在して、ブロック部66に埋設されている。
【0032】
図8及び
図9に示すように、ハーフPCa部材60におけるスターラップ64は、ハーフPCa部材50のスターラップ54と同様に、これと同じ長さ分、ブロック部66から上方に突出している。スターラップ64の上端部は、U字形状に折り返されている。
【0033】
ブロック部66は、コンクリートで構成されている。このブロック部66は、ハーフPCa部材50のブロック部56の横幅の半分ぐらいの大きさを有する。このブロック部66には、軸方向D1の側面側に、略直方体形状の凹部であるコッター66cが形成されている。
【0034】
また、ブロック部66には、幅方向D2の側面において、幅方向D2の一方側に突出した係合部としての突条部66aが形成されている。本実施形態においては、この突条部66aは、突条部56aと同様に、軸方向D1に延在し、ブロック部56の上面と面一となるように形成され、幅方向D2において長さL1を有する。
【0035】
更に、ブロック部66には、幅方向D2の突条部66aとは反対側において、係合部としての切欠き部66bが形成されている。この切欠き部66bの幅方向D2の長さは、こちら側に配置されるハーフPCa部材50の突条部56aが載るように、この突条部56aの長さL1よりも大きい。
【0036】
(ハーフPCa部材70の構成)
次に、
図5、
図10、
図11を用いて、ハーフPCa部材70の構成について説明する。ハーフPCa部材70は、上述したハーフPCa部材50とは、左右反転した形状を有し、コンクリートで構成されたブロック部の係合部が異なる。
【0037】
図5に示すように、ハーフPCa部材70は、梁40の軸方向に延在する下側軸方向筋71及び軸方向筋72、スターラップ73、垂直方向に延在するスターラップ74及びブロック部76を備える。
【0038】
各下側軸方向筋71は、ハーフPCa部材70の下面から所定のかぶり厚さの位置に配置されている。そして、複数の下側軸方向筋71は、下側軸方向筋51,61とほぼ一列となるように、離間して設けられる。
【0039】
図10に示すように、各下側軸方向筋71は、ブロック部76から軸方向D1に突出し、その突出した部分は、下側軸方向筋51,61と同じ長さを有する。
図5に示すように、スターラップ73は、幅方向D2に延在して、ブロック部76に埋設されている。
【0040】
図10及び
図11に示すように、ハーフPCa部材70におけるスターラップ74は、ハーフPCa部材50のスターラップ54と同様に、これと同じ長さ分、ブロック部76から上方に突出している。スターラップ74の上端部は、U字形状に折り返されている。
【0041】
ブロック部76は、コンクリートで構成されている。このブロック部76は、ハーフPCa部材50のブロック部56とほぼ同じ横幅を有する。このブロック部76には、軸方向D1の側面側に、コッター76c,76dが並んで形成されている。コッター76c,76dは、略直方体形状の凹部で形成されている。
【0042】
また、ブロック部76には、幅方向D2の一方側の側面において、係合部としての切欠き部76bが形成されている。この切欠き部76bの幅方向D2の長さは、こちら側に配置されるハーフPCa部材60の突条部66aが載るように、この突条部66aの長さL1よりも大きい。
更に、ブロック部76の下面には、化粧目地76sとなる溝が形成されている。この溝は、梁40の軸方向D1に延在して設けられる。
【0043】
(ハーフPCa部材50,60,70以外の梁40の構造)
図5に示すように、梁40は、上述したハーフPCa部材50,60,70を最下部に配置した状態で備える。そして、ハーフPCa部材50,60,70から上方に延在するスターラップ54,64,74は、梁40の現場打設コンクリート部49に埋設されている。
【0044】
本実施形態において、この現場打設コンクリート部49は、梁40の上側の4/5~5/6の領域であって、最下層のハーフPCa部材50,60,70を除いた領域を構成する。
【0045】
現場打設コンクリート部49には、複数の上側軸方向筋41、複数の軸方向筋42、複数のスターラップ43,44、複数の転がし筋40R、複数のつなぎ筋45、複数の梁側面軸方向筋46が埋設されている。
【0046】
複数の上側軸方向筋41は、梁40の上面から所定のかぶり厚さの位置で、離間して、ほぼ一列となるように、配置されている。各上側軸方向筋41は、下側軸方向筋51,61,71と同じ長さで、現場打設コンクリート部49から軸方向に突出している。軸方向筋42は、上側軸方向筋41よりも所定距離下方に配置され、軸方向筋52,72と同じ長さで、現場打設コンクリート部49から軸方向に突出している。すなわち、上側軸方向筋41及び軸方向筋42は、梁40の中央の水平面に対して、下側軸方向筋51,61,71及び軸方向筋52,72と線対称(
図5の上下対称)となるように配置される。
【0047】
複数のスターラップ43は、幅方向D2に延在して配置されている。
複数のスターラップ44は、ハーフPCa部材50,60,70のスターラップ54,64,74に対応して配置されている。各スターラップ44は、対応するスターラップ54,64,74と所定長さで重なるとともに、その下端部はU字形状に折り返されている。
【0048】
複数の転がし筋40Rは、ハーフPCa部材50,60,70のブロック部56,66,76の上面に、離間して載置される。
複数のつなぎ筋45は、転がし筋40Rの上に載置される。このつなぎ筋45は、梁40に用いられるすべてのハーフPCa部材50,60,70に跨る長さを有する。
【0049】
複数の梁側面軸方向筋46は、梁40の側面から所定のかぶり厚さの位置で、ほぼ垂直方向に一列となるように、離間して配置されている。これら梁側面軸方向筋46は、梁40の中央の縦断面に対して、線対称(
図5の左右対称)となるように配置される。
【0050】
(梁40の施工方法)
次に、上述した構成の梁40の施工方法について説明する。
まず、ハーフPCa部材50(
図6),60(
図8),70(
図10)を、工場で製造した後、現場に搬送する。
【0051】
そして、
図12に示すように、まず、ハーフPCa部材70を、柱31,32の間に配置する。具体的には、ハーフPCa部材70のブロック部76の軸方向D1の端部を、それぞれ柱31,32の上に載置する。その際、柱31,32の主筋との干渉を避けて、梁40の主筋となるハーフPCa部材70の軸方向筋(71,72)が配置されるように、ハーフPCa部材70を配置する。
【0052】
次に、ハーフPCa部材60を、柱31,32の間に配置する。具体的には、ハーフPCa部材70と同様に、ハーフPCa部材60のブロック部66の軸方向D1の端部を、それぞれ柱31,32の上に載置する。その際、柱31,32の主筋との干渉を避けて、梁40の主筋となるハーフPCa部材60の下側軸方向筋61が配置されるように、ハーフPCa部材60を配置する。更に、ハーフPCa部材70の切欠き部76bの上に、ハーフPCa部材60の突条部66aを載置させる。このとき、施工上、生じるハーフPCa部材60,70の間には、梁40の下面における意匠目地が形成される。
【0053】
次に、ハーフPCa部材60と同様にして、ハーフPCa部材50を、柱31,32の間に配置する。この場合も、ハーフPCa部材60の切欠き部66bの上に、ハーフPCa部材50の突条部56aを載置させる。このときも、柱31,32の主筋との干渉を避けて、梁40の主筋となるハーフPCa部材50の軸方向筋(51,52)が配置されるように、ハーフPCa部材50を配置する。そして、施工上、生じるハーフPCa部材50,60の間には、梁40の下面における意匠目地が形成される。
【0054】
この場合、
図13に示すように、柱31,32の上に、ハーフPCa部材50,60,70を並べた状態になる。この場合、ハーフPCa部材50,60,70のブロック部56,66,76の上面は、面一になっている。
【0055】
次に、ブロック部56,66,76の上に、複数の転がし筋40Rを離間して載置する。更に、転がし筋40Rの上に、つなぎ筋45を配置する。
次に、複数のスターラップ43,44、複数の梁側面軸方向筋46、複数の上側軸方向筋41及び複数の軸方向筋42を配置する。そして、ハーフPCa部材50,70の外周を、型枠F2で囲む。更に、柱31,32において、ハーフPCa部材50,60,70の端部を載置した柱梁仕口部の周囲も型枠(図示せず)で囲む。
【0056】
次に、型枠F2内にコンクリートを打設する。これにより、柱31,32内には、梁40の下側軸方向筋51,61,71の端部及び上側軸方向筋41の端部が埋設される。更に、この場合、柱31,32を構成するコンクリートが、ハーフPCa部材50,60,70のコッター56c,56d,66c,76c,76dに入り込む。そして、コンクリートの硬化後、型枠F2を取り外す。以上により、
図5に示す梁40が完成する。
【0057】
(作用)
梁40は、幅方向D2に分割したハーフPCa部材50,60,70上にコンクリートを打設するので、梁40の下方にコンクリート打設のための支保工が不要である。
【0058】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態の梁40は、幅方向D2に分割した形状のブロック部56,66,76を有するハーフPCa部材50,60,70を備える。これにより、梁40の下端部が、ハーフPCa部材50,60,70に支持されるので、大断面の鉄筋コンクリートである梁40の下面を支持するための支保工をなくすことができる。更に、仕上げ面となる梁40の下面は、予め工場で製作したハーフPCa部材50,60,70で構成されるため、下から見上げた梁40の意匠性を向上することができる。更に、ハーフPCa部材50,60,70によって、梁40の下面を覆うので、現場打設コンクリート部49を形成するためにコンクリートを打設する際に、梁40の下面を、型枠で覆う必要がない。
【0059】
(2)本実施形態の梁40は、上側過半を現場打設コンクリート部49で構成する。これにより、ハーフPCa部材50,60,70が梁40の幅方向D2に分割した形状にすることで失われる、面外剛性、捻り剛性および耐力を補うことができる。
【0060】
(3)本実施形態の梁40は、梁40を構成するハーフPCa部材50,60,70に渡るつなぎ筋45と、ハーフPCa部材50,60,70のスターラップ54,64,74とを現場打設コンクリート部49で埋設する。これにより、梁40の幅方向D2に分割したハーフPCa部材50,60,70を一体化できる。
【0061】
(4)本実施形態の梁40は、現場打設コンクリート部49に埋設された梁側面軸方向筋46を有する。これにより、捩れおよび軸力に対応することができる。
(5)本実施形態におけるハーフPCa部材50,60,70のスターラップ54,64,74の端部は、U字形状に曲げられた状態で、現場打設コンクリート部49に埋設されている。このため、ハーフPCa部材50,60,70を現場打設コンクリート部49と一体化できる。
【0062】
(6)本実施形態の梁40のつなぎ筋45は、ハーフPCa部材50,60,70のブロック部56,66,76の上面に配置した転がし筋40Rの上に配置される。このため、ハーフPCa部材50,60,70の直上の位置に、周囲をコンクリートで覆われたつなぎ筋45を配置することができる。
【0063】
(7)本実施形態の梁40を構成するハーフPCa部材50,60は、隣接するハーフPCa部材60,70と係合する突条部56a,66aを備える。ハーフPCa部材60,70は、突条部56a,66aにそれぞれ対応する切欠き部66b,76bを備える。これにより、突条部56a,66aに、切欠き部66b,76bを載置することにより、ハーフPCa部材50,60,70によって、現場打設コンクリート部49の下面を覆うことができる。
【0064】
(8)本実施形態のハーフPCa部材50,60の突条部56a,66aは、ブロック部56の製造誤差の最大値と、目地として形成するハーフPCa部材50,60,70の隙間の大きさS1との合計より大きい長さL1で水平方向に突出している。これにより、製造誤差が生じても、間に目地を形成できる。そして、隣接するハーフPCa部材50,60,70を係合することができる。
【0065】
(9)本実施形態において、梁40の最下部の真ん中に配置されるハーフPCa部材60は、両端のハーフPCa部材50,70の約半分の横幅を有する。更に、ハーフPCa部材50,70の下面には、化粧目地56s,76sが形成されている。これにより、ハーフPCa部材50,60,70の隙間で形成される目地と化粧目地56s,76sは、ほぼ等間隔で配置される。
【0066】
(10)本実施形態におけるハーフPCa部材50,60,70の下側軸方向筋51,61,71は、ブロック部56,66,76よりも軸方向D1に突出している。これにより、柱31,32と強固に一体化できる。
【0067】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態においては、梁40は、3個のハーフPCa部材50,60,70を備える。梁を構成するハーフPCa部材は、3個に限定されない。例えば、2個であってもよいし、4個以上のハーフPCa部材を用いてもよい。この場合、梁の強度や大きさ等の条件に応じて、梁の幅方向に分割するハーフPCa部材の大きさを決める。そして、これらハーフPCa部材を幅方向に複数本並べて梁を構成する。
【0068】
・上記実施形態においては、ハーフPCa部材50,60の突条部56a,66aは、その上面がハーフPCa部材50,60の上面と同じ高さとなるように形成した。隣接するハーフPCa部材と係合する係合部としての突条部は、ハーフPCa部材の上面よりも低い位置に設けてもよい。
【0069】
例えば、
図14に示す梁80は、ハーフPCa部材91,92,93を最下部に備える。
ハーフPCa部材91,92,93は、下側軸方向筋91R,92R,93Rと、これらをそれぞれ埋設したコンクリートで構成されたブロック部91C,92C,93Cと、を備える。更に、梁80は、ブロック部91C,92C,93Cに下端部が埋設されブロック部91C,92C,93Cから上方に突出するスターラップ91S,92S,93Sを備える。ハーフPCa部材91,92には、面一であるブロック部91C,92C,93Cの上面91f,92f,93fよりも少し下がった位置に、突条部91a,92aが形成されている。これら突条部91a,92aは、ハーフPCa部材92,93の切欠き部92b,93bの上に載置される。梁80は、ハーフPCa部材91,92,93の上面91f,92f,93fの上に、複数の転がし筋80Rを介してつなぎ筋85を配置している。そして、梁80は、転がし筋80R、つなぎ筋85、上側軸方向筋82R、側面軸方向筋86、ハーフPCa部材91,92,93のスターラップ91S,92S,93S、これに対応するスターラップ80Sを埋設する現場打設コンクリート部80Cを備える。この場合、突条部91a,92aの上面が、ブロック部91C,92C,93Cの上面91f,92f,93fよりも下がった位置にあるため、この部分に、現場打設コンクリート部80Cを形成するコンクリートが入り込む。従って、現場打設コンクリート部80Cの下面が凹凸形状で、ハーフPCa部材91,92,93と係合するので、これらの一体性を増すことができる。
【0070】
・上記実施形態においては、ハーフPCa部材50,60は、隣接するハーフPCa部材60,70の切欠き部66b,76bに載置する突条部56a,66aを有する。隣接するハーフPCa部材と係合部は、上述した切欠き部や突条部に限られない。例えば、ハーフPCa部材のブロック部の上面に載置する係合部を設けてもよい。また、軸方向に連続せずに離間した複数の部材で構成される突起部を用いてもよい。更に、ブロック部に係合部を全く設けなくてもよい。この場合には、梁40の現場打設コンクリート部49がハーフPCa部材の隙間から漏れる可能性があるので、現場打設コンクリート部49を形成する前に、これら隙間を塞げばよい。
【0071】
・上記実施形態においては、梁40を構成するハーフPCa部材50,60,70に渡るつなぎ筋45は、ハーフPCa部材50,60,70の上面に配置した転がし筋40Rの上に配置した。つなぎ筋45の配置は、これに限られない。この場合、ハーフPCa部材の上方で、かつハーフPCa部材の近傍において、梁を構成するハーフPCa部材に渡すように設ければよい。
・上記実施形態の梁40においては、上側軸方向筋41及び軸方向筋42は、梁40の中央の水平面に対して、下側軸方向筋51,61,71及び軸方向筋52,72と線対称に配置した。梁に埋設される鉄筋の配置は、これに限られない。例えば、軸方向鉄筋は、上下方向や左右方向に線対称に配置しなくてもよいし、異なる直径の鉄筋を配置してもよい。
【0072】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、以下に追記する。
(a)前記ブロック部において前記梁の前記軸方向に延在する鉄筋が、前記ブロック部から前記軸方向に突出していることを特徴とする請求項3に記載のハーフプレキャスト部材。
(b)前記係合部は、前記ブロック部の製造誤差の最大値と隣接して配置されるハーフプレキャスト部材の間隔との合計よりも大きい長さで前記幅方向に突出した突条部であることを特徴とする請求項3又は前記(a)に記載ハーフプレキャスト部材。
【符号の説明】
【0073】
D1…軸方向、D2…幅方向、F1…ガーダー架構、F2…型枠、H1,H2…高さ、L1…長さ、R1…固定屋根、R2…可動屋根、S1…大きさ、R2t…台車、15,31,32…柱、15a…柱梁仕口部、20,33,33a,33b,33c,34,35,36,40,80…梁、21,22,23,50,60,70,91,92,93…ハーフプレキャスト部材(ハーフPCa部材)、25,45,85…つなぎ筋、26,46,86…梁側面軸方向筋、29,49,80C…現場打設コンクリート部、30…競技場、40R,80R…転がし筋、41…上側軸方向筋、42,52,72…軸方向筋、43,44,53,54,63,64,73,74,80S,91S,92S,93S…スターラップ、51,61,71,91R,92R,93R…下側軸方向筋、56,66,76,91C,92C,93C…ブロック部、56a,66a,91a,92a…係合部としての突条部、56c,56d,66c,76c,76d…コッター、56s,76s…化粧目地、66b,76b,92b,93b…係合部としての切欠き部、82R…上側軸方向筋、91f,92f,93f…上面。