(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122614
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】転写シート、転写シートの製造方法、外装部材の製造方法および離型フィルム付外装部材
(51)【国際特許分類】
B32B 7/023 20190101AFI20240902BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20240902BHJP
B44C 1/17 20060101ALN20240902BHJP
【FI】
B32B7/023
B32B7/022
B44C1/17 B
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030268
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 沙織
(72)【発明者】
【氏名】秋田 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】川崎 啓史
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝二
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 治
【テーマコード(参考)】
3B005
4F100
【Fターム(参考)】
3B005FA04
3B005FB03
3B005FB04
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3B005FC08X
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3B005GA04
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4F100AK25B
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4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】 (修正有)
【課題】離型フィルムを剥離しなくても意匠の視認性に優れ、低艶感を有する転写層を転写可能な、外装部材の製造に用いられる転写シートを提供する。
【解決手段】転写シートは、離型フィルム1と、前記離型フィルムの一方の面に配置された転写層と、を有し、前記転写層は、前記離型フィルム側から、第1保護層2および第2保護層3を、厚さ方向において、この順に有し、前記第1保護層は、第1硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、前記第2保護層は、第2硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、前記離型フィルムは、前記転写層側とは反対側に位置する第1面S1と、前記転写層側に位置する第2面S2と、を有し、前記第1面の60°グロス値は、90以上であり、前記第2面の60°グロス値は、40以下であり、前記第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、150MPa以上、300MPa以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装部材の製造に用いられる転写シートであって、
前記転写シートは、離型フィルムと、前記離型フィルムの一方の面に配置された転写層と、を有し、
前記転写層は、前記離型フィルム側から、第1保護層および第2保護層を、厚さ方向において、この順に有し、
前記第1保護層は、第1硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、
前記第2保護層は、第2硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、
前記離型フィルムは、前記転写層側とは反対側に位置する第1面と、前記転写層側に位置する第2面と、を有し、
前記第1面の60°グロス値は、90以上であり、
前記第2面の60°グロス値は、40以下であり、
前記第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、150MPa以上、300MPa以下である、転写シート。
【請求項2】
外装部材の製造に用いられる転写シートであって、
前記転写シートは、離型フィルムと、前記離型フィルムの一方の面に配置された転写層と、を有し、
前記転写層は、前記離型フィルム側から、第1保護層および第2保護層を、厚さ方向において、この順に有し、
前記第1保護層は、第1硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、
前記第2保護層は、第2硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、
前記離型フィルムは、前記転写層側とは反対側に位置する第1面と、前記転写層側に位置する第2面と、を有し、
前記第1面の最大高さRzは、0.8μm以下であり、
前記第2面の最大高さRzは、2.0μm以上であり、
前記第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、150MPa以上、300MPa以下である、転写シート。
【請求項3】
前記第1面の60°グロス値は、90以上であり、
前記第2面の60°グロス値は、40以下である、請求項2に記載の転写シート。
【請求項4】
前記離型フィルムは、前記第1面を含むフィルム層と、前記フィルム層の前記転写層側の面に配置され、かつ、前記第2面を含むマット層と、を有する、請求項1または請求項2に記載の転写シート。
【請求項5】
前記第1面の60°グロス値は、200以下であり、
前記第2面の60°グロス値は、3.0以上である、請求項1または請求項3に記載の転写シート。
【請求項6】
前記第1面の最大高さRzは、0.1μm以上であり、
前記第2面の最大高さRzは、6.0μm以下である、請求項2に記載の転写シート。
【請求項7】
前記離型フィルムは、前記第2面にテープを貼付するテープ貼付試験を行った場合に、前記テープ貼付試験の前後におけるヘーズ値の差(ΔH)が、20%以上である、請求項1または請求項2に記載の転写シート。
【請求項8】
前記第2保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、2MPa以上、50MPa以下である、請求項1または請求項2に記載の転写シート。
【請求項9】
前記第1硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性樹脂組成物である、請求項1または請求項2に記載の転写シート。
【請求項10】
前記第1硬化性樹脂組成物は、電子線硬化性樹脂組成物である、請求項1または請求項2に記載の転写シート。
【請求項11】
前記第2硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂組成物である、請求項1または請求項2に記載の転写シート。
【請求項12】
前記第1保護層および前記第2保護層は、前記耐候剤として、それぞれ、紫外線吸収剤および光安定剤の少なくとも一方を含有する、請求項1または請求項2に記載の転写シート。
【請求項13】
請求項1または請求項2に記載の転写シートの製造方法であって、
前記離型フィルムの前記第2面に、前記第1硬化性樹脂組成物および前記耐候剤を含有する第1組成物を塗工し、硬化させ、前記第1保護層を形成する第1保護層形成工程と、
前記第1保護層の前記離型フィルムとは反対側の面に、前記第2硬化性樹脂組成物および前記耐候剤を含有する第2組成物を塗工し、硬化させ、前記第2保護層を形成する第2保護層形成工程と、
を有する、転写シートの製造方法。
【請求項14】
請求項1または請求項2に記載の転写シートを準備する準備工程と、
前記転写シートの前記第2保護層側の面と、基体と、を対向させ、両者を密着させる密着工程と、
を有する、外装部材の製造方法。
【請求項15】
離型フィルム、第1保護層、第2保護層および基体を、厚さ方向において、この順に有し、
前記第1保護層は、第1硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、
前記第2保護層は、第2硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、
前記離型フィルムは、前記第1保護層側とは反対側に位置する第1面と、前記第1保護層側に位置する第2面と、を有し、
前記第1面の60°グロス値は、90以上であり、
前記第2面の60°グロス値は、40以下であり、
前記第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、150MPa以上、300MPa以下である、離型フィルム付外装部材。
【請求項16】
離型フィルム、第1保護層、第2保護層および基体を、厚さ方向において、この順に有し、
前記第1保護層は、第1硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、
前記第2保護層は、第2硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、
前記離型フィルムは、前記第1保護層側とは反対側に位置する第1面と、前記第1保護層側に位置する第2面と、を有し、
前記第1面の最大高さRzは、0.8μm以下であり、
前記第2面の最大高さRzは、2.0μm以上であり、
前記第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、150MPa以上、300MPa以下である、離型フィルム付外装部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、転写シート、転写シートの製造方法、外装部材の製造方法および離型フィルム付外装部材に関する。
【背景技術】
【0002】
金属部材および樹脂部材等の基体に、転写シートにおける転写層(転写シートから転写される層)を転写することで、基体を加飾することが知られている。例えば、特許文献1には、剥離層と、剥離層に剥離可能に取り付けられた意匠転写層とを含み、意匠転写層は、剥離層側から、加熱接着可能な第1表面層と、加熱接着可能な第2表面層とをこの順で含む、意匠転写シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
転写シートは、例えば、離型フィルムおよび転写層を有する。近年の顧客の高級品志向の高まりに伴い、基体に転写される転写層は、低艶感を有することが求められている。また、転写シートには、離型フィルムを剥離しなくても意匠の視認性に優れることが求められる。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、外装部材の製造に用いられる転写シートであって、離型フィルムを剥離しなくても意匠の視認性に優れ、低艶感を有する転写層を転写可能な転写シートを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示においては、外装部材の製造に用いられる転写シートであって、上記転写シートは、離型フィルムと、上記離型フィルムの一方の面に配置された転写層と、を有し、上記転写層は、上記離型フィルム側から、第1保護層および第2保護層を、厚さ方向において、この順に有し、上記第1保護層は、第1硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、上記第2保護層は、第2硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、上記離型フィルムは、上記転写層側とは反対側に位置する第1面と、上記転写層側に位置する第2面と、を有し、上記第1面の60°グロス値は、90以上であり、上記第2面の60°グロス値は、40以下であり、上記第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、150MPa以上、300MPa以下である、転写シートを提供する。
【0007】
また、本開示においては、外装部材の製造に用いられる転写シートであって、上記転写シートは、離型フィルムと、上記離型フィルムの一方の面に配置された転写層と、を有し、上記転写層は、上記離型フィルム側から、第1保護層および第2保護層を、厚さ方向において、この順に有し、上記第1保護層は、第1硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、上記第2保護層は、第2硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、上記離型フィルムは、上記転写層側とは反対側に位置する第1面と、上記転写層側に位置する第2面と、を有し、上記第1面の最大高さRzは、0.8μm以下であり、上記第2面の最大高さRzは、2.0μm以上であり、上記第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、150MPa以上、300MPa以下である、転写シートを提供する。
【0008】
本開示においては、上述の転写シートの製造方法であって、上記離型フィルムの上記第2面に、上記第1硬化性樹脂組成物および上記耐候剤を含有する第1組成物を塗工し、硬化させ、上記第1保護層を形成する第1保護層形成工程と、上記第1保護層の上記離型フィルムとは反対側の面に、上記第2硬化性樹脂組成物および上記耐候剤を含有する第2組成物を塗工し、硬化させ、上記第2保護層を形成する第2保護層形成工程と、を有する、転写シートの製造方法を提供する。
【0009】
本開示においては、上述の転写シートを準備する準備工程と、上記転写シートの上記第2保護層側の面と、基体と、を対向させ、両者を密着させる密着工程と、を有する、外装部材の製造方法を提供する。
【0010】
本開示においては、離型フィルム、第1保護層、第2保護層および基体を、厚さ方向において、この順に有し、上記第1保護層は、第1硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、上記第2保護層は、第2硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、上記離型フィルムは、上記第1保護層側とは反対側に位置する第1面と、上記第1保護層側に位置する第2面と、を有し、上記第1面の60°グロス値は、90以上であり、上記第2面の60°グロス値は、40以下であり、上記第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、150MPa以上、300MPa以下である、離型フィルム付外装部材を提供する。
【0011】
また、本開示においては、離型フィルム、第1保護層、第2保護層および基体を、厚さ方向において、この順に有し、上記第1保護層は、第1硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、上記第2保護層は、第2硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、上記離型フィルムは、上記第1保護層側とは反対側に位置する第1面と、上記第1保護層側に位置する第2面と、を有し、上記第1面の最大高さRzは、0.8μm以下であり、上記第2面の最大高さRzは、2.0μm以上であり、上記第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、150MPa以上、300MPa以下である、離型フィルム付外装部材を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本開示においては、外装部材の製造に用いられる転写シートであって、離型フィルムを剥離しなくても意匠の視認性に優れ、低艶感を有する転写層を転写可能な転写シートを提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示における転写シートを例示する概略断面図である。
【
図2】本開示における離型フィルムを例示する概略断面図である。
【
図3】本開示における転写シートの製造方法を例示する概略断面図である。
【
図4】本開示における外装部材の製造方法を例示する概略断面図である。
【
図5】本開示における離型フィルム付外装部材を例示する概略断面図である。
【
図6】本開示における外装部材の一例を示す概略断面図である。
【
図7】従来の転写シートの一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
下記に、図面等を参照しながら、実施の形態を説明する。ただし、本開示は、多くの異なる態様で実施することが可能であり、下記に例示する実施の形態の記載内容に限定されるべきではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状について模式的に表す場合があるが、これはあくまで一例であり、限定して解釈されるべきではない。
【0015】
本明細書において、ある部材に、他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」あるいは「下に」と表記する場合、特に断りの無い限り、ある部材に接するように、直上あるいは直下に、他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合と、の両方を含む。また、本明細書において、ある部材の面に、他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「面に」と表記する場合、特に断りの無い限り、ある部材に接するように、直上あるいは直下に、他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合と、の両方を含む。
【0016】
以下、本開示における、転写シート、転写シートの製造方法、外装部材の製造方法および離型フィルム付外装部材について、詳細に説明する。
【0017】
A.転写シート
本開示における転写シートは、2つの実施形態を有する。以下、各実施形態に分けて説明する。
【0018】
I.第1実施形態の転写シート
図1(a)は、本実施形態における転写シートを例示する概略断面図である。
図1(a)に示すように、転写シート10は、離型フィルム1と、離型フィルム1の一方の面に配置された転写層Xとを有する。転写層Xは、離型フィルム1側から、第1保護層2および第2保護層3を、厚さ方向D
Tにおいて、この順に有する。また、
図1(b)に示すように、転写シート10は、第2保護層3の第1保護層2とは反対側の面に、接着層4を有していてもよい。また、
図1(c)に示すように、転写シート10は、第2保護層3の第1保護層2とは反対側の面に、意匠層5を有していてもよい。
図1(c)において、意匠層5は、接着層4と第2保護層3との間に配置されている。
【0019】
本実施形態においては、第1保護層2は、第1硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、第2保護層3は、第2硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有する。
【0020】
また、本実施形態においては、離型フィルム1は、転写層X側とは反対側に位置する第1面S1と、転写層X側に位置する第2面S2と、を有し、第1面S1の60°グロス値は、所定の範囲であり、第2面S2の60°グロス値は、所定の範囲であり、第1保護層2の断面におけるインデンテーション硬さは、所定の範囲内である。
【0021】
上述したように、基体に転写される転写層には、低艶感を有することが求められている。そのため、転写シートの離型フィルムとして、例えば、樹脂と、シリカ粒子等のマット剤とを含有するマットフィルムが使用される場合がある。
図7は、離型フィルムとしてマットフィルムを使用した転写シートの一例を示す概略断面図である。
図7に示す転写シート200は、離型フィルムとしてのマットフィルム21と、マットフィルム21の一方の面に配置された転写層Xとを有する。転写層Xは、マットフィルム21側から、第1保護層22、第2保護層23、意匠層25、および接着層24を、厚さ方向D
Tにおいて、この順に有する。
【0022】
上記の転写シート200は、離型フィルムとしてマットフィルム21を使用することで、離型フィルム21を剥がした後の転写層Xの表面に凹凸が付与され、低艶感が得られると考えられる。しかしながら、上記の転写シート200は、マットフィルム21側から観察する場合、マットフィルム21の転写層Xとは反対側の面で、光の乱反射が生じ、意匠の視認性が低下する。そのため、意匠を視認するためには、マットフィルムを剥がす必要がある。また、転写層Xが低艶感を有する場合、外装部材(屋外用の部材)は過酷な環境に曝されるため、樹脂の劣化による艶変化が大きくなる傾向にある。
【0023】
本明細書において、意匠の視認性とは、例えば、転写層内部における層(例えば意匠層)が発現する意匠の視認性をいう。
【0024】
一方、本実施形態における転写シートは、離型フィルムの第1面の60°グロス値が所定の範囲と高いことにより、離型フィルムを剥離しなくても、意匠の視認性に優れる転写シートとなる。そのため、離型フィルムを剥離しない状態で欠点検査が可能となり、作業性が向上する。また、離型フィルムをそのままマスキングとして使用することができるため、プラスチック利用量の削減を図ることができる。さらに、第2面の60°グロス値が所定の範囲と低いことにより、離型フィルムを剥離した後の転写層が低艶感を有する。また、本発明者等は、第2面の60°グロス値が所定の範囲と低いことにより、第1保護層と離型フィルムとの密着性が上がるために、離型フィルムが剥離しにくくなる傾向があることを知見した。そして、第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さが、所定の範囲内であることにより、離型フィルムを容易に剥がすことが可能となることを見出した。
【0025】
また、外装部材(屋外用の部材)には、内装部材(屋内用の部材)に比べて、高い耐候性が求められる。例えば、化粧シートを用いて外装部材を製造する場合、強度向上を目的として、化粧シートに透明樹脂層を設ける場合がある。この場合、透明樹脂層は比較的厚い層であるため、例えば透明樹脂層に十分な量の耐候剤を添加することで、高い耐候性が付与される。これに対して、透明樹脂層に該当する層を有しない転写シートに、高い耐候性を付与することは、技術的な困難性が高い。本実施形態においては、通常、第1保護層および第2保護層の両方が耐候剤を含有する。これにより、第1保護層に求められる特性(例えば、耐傷性、耐摩耗性等の表面特性)、および、第2保護層に求められる特性(例えば密着性)を維持しつつ、高い耐候性を付与することができる。
【0026】
また、第1保護層が耐候剤を有することにより、本実施形態のように転写層Xの表面が低艶感を有する場合であっても、樹脂の劣化による艶変化が抑制される。
【0027】
1.離型フィルム
本実施形態における転写シートは、離型フィルムを有する。
図1に示すように、本実施形態における離型フィルム1は、転写層X側とは反対側に位置する第1面S1と、転写層X側に位置する第2面S2と、を有する。離型フィルム1における第1面S1と第2面S2とは、対向している。
図1に示すように、離型フィルム1および第1保護層2は、直接接触するように配置されていることが好ましい。
【0028】
(1)60°グロス値
本実施形態において、離型フィルムの第1面の60°グロス値は、通常、90以上であり、100以上であってもよく、110以上であってもよい。第1面S1の60°グロス値が低いと、表面凹凸による乱反射が大きくなる傾向にあり、意匠の視認性が低下する可能性がある。一方、離型フィルムの第1面の60°グロス値は、例えば、200以下であり、160以下であってもよく、140以下であってもよい。
【0029】
本実施形態において、離型フィルムの第1面の60°グロス値は、以下の方法により測定された値である。
転写シートから剥がした離型フィルムを、光沢のない黒台紙の上に第1面が上になるように置き、グロスメータ(「マイクロトリグロス(機種名)」、BYKガードナー社製)を用いて、JIS Z 8741:1997の方法3に準拠して60°鏡面光沢度を測定する。
【0030】
本実施形態において、離型フィルムの第2面S2の60°グロス値は、通常、40以下であり、35以下であってもよく、30以下であってもよい。離型フィルムの第2面の60°グロス値が高いと、離型フィルムを剥離した後の転写層が低艶感を発現しにくい。一方、第2面S2の60°グロス値は、例えば、3.0以上であり、5.0以上であってもよく、10以上であってもよい。第2面の60°グロス値が低いと、第1保護層の樹脂が細かいマット形状に入り込み、剥離が困難になる可能性がある。また、狙った形状を賦形できなくなる可能性がある。
【0031】
本実施形態において、離型フィルムの第2面の60°グロス値は、以下の方法により測定された値である。
転写シートから剥がした離型フィルムを、光沢のない黒台紙の上に第2面が上になるように置き、グロスメータ(「マイクロトリグロス(機種名)」、BYKガードナー社製)を用いて、JIS Z 8741:1997の方法3に準拠して60°鏡面光沢度を測定する。
【0032】
上述のような第1面および第2面を有する離型フィルムとしては、例えば、後述するように、第1面を含むフィルム層、第2面を含むマット層と、を有する離型フィルムが挙げられる。この場合、フィルム層の種類を選択することによって、第1面の60°グロス値を調整することができる。また、マット層が後述の第1のマット層の場合、マット層に含まれる粒子の種類を選択したり、粒子の平均粒子径および含有量等を調整することによって、第2面の60°グロス値を調整することができる。具体的には、粒子の含有量を多くすると、第2面の60°グロス値を低くすることができる。また、粒子の平均粒子径を大きくすると、第2面の60°グロス値を低くすることができる。マット層が後述の第2のマット層の場合、上述の60°グロス値および最大高さRzは、シワ形成安定剤の含有量、シワ形成安定剤の平均粒子径、重合性モノマー、重合性オリゴマーの種類、官能基数、紫外線の積算光量、出力密度等を調整することによって、第2面の60°グロス値を調整することができる。
【0033】
(2)最大高さRz
本実施形態における離型フィルムは、第1面の最大高さRzが、例えば、0.8μm以下であり、0.6μm以下であってもよく、0.4μm以下であってもよい。一方、第1面の最大高さRzは、例えば、0.1μm以上であり、0.2μm以上であってもよい。
【0034】
本実施形態において、第1面の最大高さRzとは、後述の第2実施形態の転写シートにおける離型フィルムの第1面の最大高さRzの測定方法と同様の方法により測定された値である。
【0035】
実施形態における離型フィルムは、第2面の最大高さRzが、例えば、2.0μm以上であり、3.0μm以上であってもよく、4.0μm以上であってもよい。一方、第2面の最大高さRzは、例えば、6.0μm以下であり、5.0μm以下であってもよい。
【0036】
本実施形態において、第2面の最大高さRzとは、後述の第2実施形態の転写シートにおける離型フィルムの第2面の最大高さRzの測定方法と同様の方法により測定された値である。
【0037】
(3)ヘーズ値
本実施形態における離型フィルムは、上述したように、第2面の60°グロス値が所定の範囲と低い。そのため、離型フィルムの外部ヘーズ(表面形状に起因するヘーズ)が、高くなる傾向がある。離型フィルムのヘーズ値H1は、例えば、40%以上であり、60%以上であってもよく、80%以上であってもよい。
【0038】
離型フィルムの上記ヘーズ値H1は、光入射面を第2面側とし、測定装置はヘーズメーター(HM-150L2N、村上色彩技術研究所製)を用い、JIS K7136:2000に準拠して3回測定した平均値である。
【0039】
一方で、第2面にテープを貼付するテープ貼付試験を行った場合、第2面の表面凹凸形状が埋まるため、外部ヘーズは低下する。本実施形態における離型フィルムは、第2面に粘着テープ(「セロテープ(登録商標)」、ニチバン株式会社製)を貼付した後のヘーズ値H2と、テープを貼付する前の上記ヘーズ値H1との差ΔH(=H1-H2)が、20%以上であることが好ましい。ヘーズ値の差(ΔH)は、30%以上であることがより好ましく、40%以上であることが更に好ましい。
【0040】
離型フィルムの上記ヘーズ値H2は、光入射面をテープ側とし、測定装置はヘーズメーター(HM-150L2N、村上色彩技術研究所製)を用い、JIS K7136:2000に準拠して3回測定した平均値である。
【0041】
(4)構成
本実施形態における離型フィルムは、上記の特性を有する第1面および第2面を有していれば特に限定されず、単一の層であってもよいし、多層構造を有していてもよい。
図2は、実施形態における離型フィルムの一例を示す概略断面図である。
図2に示すように、離型フィルム1は、例えば、上述の第1面S1を含むフィルム層1aと、フィルム層1aの転写層側の面に配置され、かつ、上述の第2面S2を含むマット層1bと、を有する。
【0042】
(i)フィルム層
フィルム層は、上述した第1面を有するものであれば、特に限定されないが、樹脂フィルムであることが好ましい。樹脂フィルムに含まれる樹脂としては、例えば、エステル系樹脂、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、アミド系樹脂、イミド系樹脂、カーボネート系樹脂が挙げられる。
【0043】
フィルム層は、エステル系樹脂またはオレフィン系樹脂を含有することが好ましい。エステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート-イソフタレート共重合体が挙げられる。これらの中でも、転写シートを製造する際の熱収縮、および、電離放射線の照射による収縮が生じにくいという観点から、PETまたはPBTが好ましく、PETがより好ましい。
【0044】
オレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体が挙げられる。これらの中でも、転写シートを製造する際の熱収縮、および、電離放射線の照射による収縮が生じにくいという観点から、ポリプロピレンが好ましい。
【0045】
フィルム層は、延伸フィルムであってもよく、未延伸フィルムであってもよい。延伸フィルムにおける機械方向(MD)における延伸倍率は、例えば5倍以上30倍以下である。延伸フィルムにおける幅方向(TD)における延伸倍率は、例えば5倍以上30倍以下である。また、フィルム層の厚さは、例えば、10μm以上200μm以下であり、15μm以上150μm以下であってもよく、20μm以上100μm以下であってもよい。
【0046】
(ii)マット層
マット層は、上述した第2面を有するものであれば、特に限定されないが、例えば、樹脂成分、およびマット剤としての粒子を含有する。以下、樹脂成分、およびマット剤としての粒子を含有するマット層を、第1のマット層と称する。第1のマット層における樹脂成分は、典型的には、硬化性樹脂の硬化物(架橋構造体)である。一方、樹脂成分は、熱可塑性樹脂であってもよい。中でも、第1のマット層は、硬化性樹脂の硬化物を含有することが好ましい。第1のマット層が、硬化性樹脂の硬化物を含有することで、第1保護層に対する離型性が良好になる。
【0047】
離型フィルムの第2面が第1のマット層の表面である場合、上述の60°グロス値および最大高さRzは、粒子の種類の選択、平均粒子径および含有量の調整等によって、調整できる。
【0048】
硬化性樹脂としては、例えば、電離放射線硬化性樹脂および熱硬化性樹脂が挙げられる。電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、電子線硬化性樹脂および紫外線硬化性樹脂が挙げられる。
【0049】
電離放射線硬化性樹脂(電離放射線硬化性化合物)は、電離放射線の照射により架橋重合反応を生じ、3次元の高分子構造に変化する材料であれば限定されない。電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、電離放射線の照射により架橋可能な重合性不飽和結合またはエポキシ基を分子中に有する、プレポリマー、オリゴマーおよびモノマーが挙げられる。本実施形態においては、電離放射線硬化性樹脂を1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。中でも、電離放射線硬化性樹脂をとして、多官能モノマーおよびオリゴマーの少なくとも一方を用いることが好ましい。
【0050】
電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系樹脂;シロキサン等のケイ素系樹脂;エステル系樹脂;エポキシ系樹脂が挙げられる。(メタ)アクリレート系樹脂とは、アクリレート系樹脂またはメタクリレート系樹脂をいう。
【0051】
電離放射線硬化性樹脂の重量平均分子量は、例えば、500以上、80,000以下であり、1,000以上、50,000以下であってもよい。重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレンを標準物質に用いて測定される値である。
【0052】
電離放射線硬化性樹脂として、重量平均分子量が500以上である、多官能モノマーまたはオリゴマーを少なくとも含有することが好ましい。このような多官能モノマーまたはオリゴマーとしては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系樹脂が挙げられる。
【0053】
一方、熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和エステル系樹脂、ウレタン系樹脂(2液硬化型ポリウレタンも含む)、エポキシ系樹脂、アミノアルキッド系樹脂、フェノール系樹脂、尿素系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、メラミン系樹脂、グアナミン系樹脂、メラミン尿素共縮合系樹脂、珪素系樹脂、シロキサン系樹脂が挙げられる。
【0054】
粒子としては、例えば、無機粒子、合成樹脂粒子が挙げられる。無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリンが挙げられる。合成樹脂粒子としては、例えば、アクリルビーズ、ウレタンビーズ、ナイロンビーズ、シリコーンビーズ、シリコーンゴムビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリオレフィンワックス(例えば、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス)が挙げられる。
【0055】
粒子の平均粒子径は、1.0μm以上、10μm以下であることが好ましく、2.0μm以上、8.0μm以下であることがより好ましい。
【0056】
また、第1のマット層における粒子の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、80質量部以下であり、より好ましくは5質量部以上、60質量部以下である。
【0057】
第1のマット層は、必要に応じて、離型剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、酸化防止剤、レベリング剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、熱ラジカル発生剤、アルミキレート剤等の添加剤を含有していてもよい。第1のマット層の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.1μm以上、10μm以下である。
【0058】
第1のマット層は、例えば、硬化性樹脂を含有するマット層形成用インキを、フィルム層の一方の面に塗工し、硬化させることにより、得られる。
【0059】
マット層としては、例えば、一方の面が不規則なシワにより構成される凹凸形状を有する。以下、一方の面が不規則なシワにより構成される凹凸形状を有する層を、第2のマット層と称する。このような第2のマット層の材料および形成方法としては、特開2022-149930号公報に記載の離型層の材料および形成方法を採用することができる。
【0060】
第2のマット層は、シワ形成安定剤を含有することが好ましい。シワ形成安定剤としては、例えば有機粒子、無機粒子を用いることができる。有機粒子を構成する有機物としては、ポリメチルメタクリレート、アクリル-スチレン共重合体樹脂、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル樹脂、ベンゾグアナミン- メラミン- ホルムアルデヒド縮合物、シリコーン、フッ素系樹脂及びポリエステル系樹脂等が挙げられる。無機粒子を構成する無機物としては、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、アルミノシリケート及び硫酸バリウム等が挙げられ、これらの中でも透明性に優れるシリカが好ましい。シワ形成安定剤の形状としては、特に制限はないが、例えば球形、多面体、鱗片状、不定形等が挙げられる。
【0061】
シワ形成安定剤の平均粒子径は、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下である。一方、好ましくは1nm以上、より好ましくは3nm以上である。シワ形成安定剤の平均粒子径は、レーザ光回折法による粒度分布測定における質量平均値d50として測定したものである。
【0062】
シワ形成安定剤の含有量は、例えば、第2のマット層を形成する樹脂100質量部に対して0.5質量部以上、6.0質量部以下である。
【0063】
不規則なシワは、複数の突起部により形成する複数の凸部と、複数の突起部により囲まれて形成する凹部と、により構成されていることが好ましく、当該突起部は線条の突起部を有していることが好ましい。より好ましい不規則なシワは、複数の線条突起部により形成する複数の凸部と、当該複数の線条突起部により囲まれて形成する凹部により構成されるもの、である。
【0064】
第2のマット層を形成する樹脂としては、例えば、電離放射線硬化性樹脂が挙げられる。電離放射線硬化性樹脂としては、電子線硬化性樹脂及び紫外線硬化性樹脂が挙げられ、中でも、紫外線硬化性樹脂が好ましい。電離放射線硬化性樹脂は、具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性モノマー、重合性オリゴマーの中から適宜選択して用いることができる。重合性モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好ましく、中でも多官能性(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。多官能性(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子中に2つ以上の電離放射線硬化性官能基を有し、かつ該官能基として少なくとも(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。多官能性(メタ)アクリレートモノマーの官能基数は2以上8以下が好ましく、2以上6以下がより好ましく、2以上4以下がさらに好ましく、2以上3以下がよりさらに好ましい。これらの多官能性(メタ)アクリレートは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
第2のマット層を形成する樹脂としては、上記重合性オリゴマーと重合性モノマーとを組み合わせて用いることが好ましい。この場合、重合性オリゴマーと重合性モノマーとの合計100質量部に対する重合性オリゴマーの含有量は、好ましくは40質量部以上、より好ましくは50質量部以上である。一方、好ましくは90質量部以下、より好ましくは80質量部以下である。
【0066】
第2のマット層の形成方法としては、フィルム層の一方の主面側に、第2のマット層形成用の樹脂組成物を塗布して塗布層を形成する工程、少なくとも100nm以上200nm未満の波長光で照射して前記塗布層を硬化させて第2のマット層を形成する、第2のマット層形成工程を有することが好ましい。また、樹脂組成物が溶剤を含有する場合、塗布層を形成する工程の後、溶剤乾燥工程を有していてもよい。このような低波長の紫外線を、第2のマット層形成用の樹脂組成物に照射することにより、第2のマット層の表面(第2面)におけるシワの形成が安定する。この照射により、当該紫外線のエネルギーが表面部分のみに浸透し、それより下層にはエネルギーが到達しないことにより、当該樹脂組成物の表面部分だけが硬化をはじめることから、表面だけが硬化収縮を生じることでシワの形成が安定し、当該樹脂組成物の表層はシワを有する硬化物となる。そして、かかる後、硬化の進行が遅い当該表面近傍部分から深さ方向に離れた深奥部分への硬化が進み、当該樹脂組成物の全厚さにわたり硬化し、かつ表面に光拡散効果を発現するシワを有する第2のマット層を構成するものとなる。当該深奥部分への硬化の進行を促進する観点からは、後述するように、100nm以上200nm未満の波長光で照射した後、さらに他の照射処理を行うことが好ましい。
【0067】
少なくとも100nm以上200nm未満の波長光としては、例えば、Ar、Kr、Xe、Ne等の希ガス、F、Cl、I、Br等のハロゲンによる希ガスのハロゲン化物等ガス、又はこれらの混合ガスの放電によって形成される励起状態の2量体、すなわちエキシマからの紫外線波長域の光を含む「エキシマ光」が好ましい。エキシマ光の波長及び光源となるエキシマとしては、例えばAr2のエキシマから輻射される波長126nmの光(以下、「126nm(Ar2)」のように略称する。)、146nm(Kr2)、157nm(F2)、172nm(Xe2)、193nm(ArF)等の波長光を好ましく採用することができる。エキシマ光としては、自然放出光、誘導放出によるコヒーレンス(可干渉性)の高いレーザ光のいずれも用いることができるが、通常自然放出光を用いれば十分である。なお、当該光(紫外線)を放射する放電ランプは、「エキシマランプ」とも称されている。エキシマ光は波長ピークが単一であり、また通常の紫外線(例えば、メタルハライドランプ、水銀ランプ等から放射される紫外線)と比べて波長の半値幅が狭いことが特徴として挙げられる。このようなエキシマ光を用いることで、シワの形成が安定し、安定的に艶消効果の視認性及び質感が向上する。
【0068】
シワの形成を安定させて、安定的に転写層に低艶感を付与する観点から、波長としては好ましくは120nm以上、より好ましくは140nm以上、更に好ましくは150nm以上であり、上限として200nm 未満であり、特に好ましくは、172nm(Xe2)である。
【0069】
波長光の積算光量は、シワの形成を安定させて、安定的に転写層に低艶感を付与する観点から、好ましくは1mJ/cm2以上、より好ましくは10mJ/cm2以上である。また上限としては、例えば、1,000mJ/cm2以下、より好ましくは500mJ/cm2以下である。また、これと同様の観点から、紫外線出力密度は、好ましくは0.01W/cm以上、より好ましくは0.1W/cm以上であり、上限としては、例えば、10W/cm以下、より好ましくは5W/cm以下である。
【0070】
また、上記波長光を照射する際の酸素濃度は、より低いことが好ましく、好ましくは1,000ppm以下、より好ましくは750ppm以下である。
【0071】
第2のマット層形成工程では、上記100nm以上200nm未満の波長光での照射の他、第2のマット層形成用の樹脂組成物の硬化に寄与する他の処理を行ってもよい。例えば、既述の表面部分と表面から深さ方向に離れた深奥部分の硬化の進行度合いの違いによるシワの形成を安定させ、かつ深奥部分への硬化の進行を促進する観点から、例えば200nm以上の波長光、例えば、380nm以上、好ましくは385nm以上400nm以下程度の波長光で予め照射して第2のマット層形成用の樹脂組成物を全体的に予備硬化させた後に、100nm以上200nm未満の波長光で照射してもよいし、また100nm以上200nm未満の波長光での照射後に、樹脂組成物を更に硬化させるために後硬化を行ってもよい。上記波長光は紫外線に属するものであるが、紫外線に限らず他の電離放射線、例えば電子線等を用いることも可能である。例えば、後硬化においては、第2のマット層の耐久性向上のため、電子線が好ましく用いられ得る。
【0072】
第1のマット層および第2のマット層は、フィルム層の一方の面の全面に形成されていてもよいし、フィルム層の一方の面の一部領域に形成されていてもよい。フィルム層の一方の面の全面とは、フィルム層の一方の面の90%以上の領域をいう。マット層は、フィルム層の一方の面の95%以上を覆うように配置されていてもよく、100%を覆うように配置されていてもよい。一方、マット層は、フィルム層の一方の面の50%以下を覆うように配置されていてもよく、40%以下を覆うように配置されていてもよく、30%以下を覆うように配置されていてもよい。
【0073】
2.第1保護層
本実施形態における転写シートは、第1保護層を有する。第1保護層は、外装部材の表面特性(例えば耐傷性、耐摩耗性等)の向上に寄与する。
【0074】
(1)インデンテーション硬さ
本実施形態において、第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、通常、150MPa以上であり、180MPa以上であってもよく、190MPa以上であってもよい。第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さが低いと、離型フィルムを容易に剥離することができない可能性がある。また、第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さが低いと、良好な耐傷性、耐摩耗性が得られない可能性がある。一方、第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、通常、300MPa以下であり、280MPa以下であってもよく、250MPa以下であってもよい。第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さが高いと、第1保護層が硬く、脆くなりやすく、耐候性が低下する可能性がある。また、温度変化が繰り返されるような環境下において、1保護層と第2保護層との間の耐候密着性が低下する可能性がある。
【0075】
外装部材は、通常、過酷な環境に曝される。そのため、外装部材の製造に用いられる転写シートにおける転写層を構成する、第1保護層および第2保護層には、良好な耐候密着性が求められている。本実施形態によれば、第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さを上述の範囲とし、第2保護層の断面におけるインデンテーション硬さを後述の範囲とすることにより、耐候密着性および耐候性が向上する。
【0076】
第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、例えば、第1保護層を作製するための第1硬化性樹脂組成物における硬化性樹脂の官能基数により、調整できる。例えば、電離放射線硬化性化合物の官能基数を少なくすることで、第1硬化性樹脂組成物の硬化物において、架橋点を少なくできるため、より柔軟な構造とすることができ、インデンテーション硬さを低くすることができる。
【0077】
第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、以下の方法で測定された値である。
(測定用サンプル作製)
転写シートを任意の大きさに切断することにより、カットサンプルを作製する。カットサンプルを樹脂(常温硬化タイプのエポキシ2液硬化樹脂)で包埋し、室温で24時間以上放置して硬化させることにより、カットサンプルを樹脂で包埋してなる包埋サンプルを作製する。ミクロトームを用い、包埋サンプルを垂直に切断し、測定対象である層の断面を露出させた、インデンテーション硬さ測定用のサンプルを作製する。具体的には、凍結切削システム(Leica EM FC6、ライカマイクロシステムズ社製)を取り付けたウルトラミクロトーム(Leica EM UC6、ライカマイクロシステムズ社製)およびダイヤモンドナイフを用いて、-120℃の環境下で、測定対象である層の断面を露出させた断面を作製する。常温環境下で切削加工した断面に比べ、断面荒れを抑制することができ、押し込み試験に適した断面が得られる。特に、柔らかい材料の場合に、断面荒れを抑制することができる。
【0078】
(インデンテーション硬さの測定方法)
本明細書における「インデンテーション硬さ」とは、ナノインデンテーション法によって測定される。ナノインデンテーション法は、試料表面に圧子を押し込み除荷する過程において、荷重と変位を連続的に測定し得られた荷重-変位曲線から力学量を算出する手法である。
【0079】
具体的に、第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、上述した測定用サンプルの切断面に対して、下記ナノインデンターを用いて、バーコビッチ圧子(材質:ダイヤモンド三角錐)を垂直に押し込んで測定する。測定装置及び測定条件は以下の通りである。ここで、バーコビッチ圧子を押し込む位置は、第1保護層の厚み方向の略中心とすることが好ましい。略中心とは、第1保護層の厚みをT[μm]と定義した際に、第1保護層の厚み方向の中心からのズレが±0.1T以内であることを意味する。また、充填剤(例えば、シリカ)などの微粒子が層中に含まれる場合には、微粒子を避けた位置に上記バーコビッチ圧子を押し込む。
【0080】
・使用装置:ナノインデンター(TI 950 TriboIndenter、BRUKER社製)
・使用圧子:バーコビッチ圧子(型番:TI-0039、BRUKER社製)
・押し込み制御方式:変位制御方式(リフト動作不使用)
・最大押し込み深さ:100nm
・押込みレート:10nm/秒
・負荷時間:10秒(0→100nmまで押込む)
・保持時間:5秒(100nm一定)
・除荷時間:10秒(100nm→0へ戻す)
・測定回数:5回
【0081】
第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、下記のようにして算出することができる。まず、圧入荷重P(N)に対応する圧入深さh(nm)を連続的に測定し、荷重-変位曲線を作成する。作成した荷重-変位曲線を解析し、最大圧入荷重Pmax(N)を、そのときの圧子と第1保護層の断面が接している投影面積A(mm2)で除した値として、インデンテーション硬さHITを算出することができる(下記式(1))。
HIT=Pmax/A …(1)
ここで、Aは標準試料の溶融石英を用いて装置標準の方法で圧子先端形状を補正した接触投影面積である。
【0082】
本明細書において、第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、同じサンプルに対して、位置をずらして5回測定し、これらの算術平均値とする。なお、測定ごとに、5μm以上ずらして測定した。測定の際には、圧子形状の補正が正しくできていること、装置の動作および計測に問題がないことを確認するために、装置メーカーの標準試料である溶融石英を用いて、基準値の±5%以内の計測ができていることを確認することが好ましい。また、インデンテーション硬さの測定の雰囲気は、温度23℃±5℃、湿度40%~65%とする。
【0083】
なお、第1保護層は、第2保護層より柔軟性が低い層であることが好ましい。すなわち、第1保護層のインデンテーション硬さは、第2保護層のインデンテーション硬さよりも高いことが好ましい。耐傷性、耐摩耗性等の表面特性を外装部材に効果的に付与することができるからである。
【0084】
(2)樹脂成分
第1保護層は、樹脂成分として、第1硬化性樹脂組成物の硬化物(架橋構造体)を含む。第1硬化性樹脂組成物の硬化物の割合は、第1保護層を構成する全樹脂成分に対して、例えば、70質量%以上であり、90質量%以上であってもよく、95質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
【0085】
第1硬化性樹脂組成物の硬化物としては、例えば、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物が挙げられる。電離放射線硬化性樹脂組成物としては、例えば、電子線硬化性樹脂組成物、紫外線硬化性樹脂組成物が挙げられる。これらの中でも、重合開始剤が不要のため臭気が少なく、着色が生じにくいことから、電子線硬化性樹脂組成物が好ましい。
【0086】
電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性官能基を有する化合物(以下、「電離放射線硬化性化合物」ともいう)を含む組成物である。電離放射線硬化性官能基としては、電離放射線の照射によって架橋硬化する基であり、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性二重結合を有する官能基が挙げられる。なお、本開示において、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基またはメタクリロイル基をいう。また、本開示において、(メタ)アクリレートとは、アクリレートまたはメタクリレートをいう。
【0087】
電離放射線とは、電磁波または荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものをいう。電離放射線としては、例えば、電子線(EB)および紫外線(UV)が挙げられる。また、電離放射線の他の例としては、X線、γ線等の電磁波、α線、イオン線等の荷電粒子線が挙げられる。
【0088】
電離放射線硬化性化合物は、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上を含むことが好ましい。中でも、電離放射線硬化性化合物は、ウレタン(メタ)アクリレートを少なくとも含むことが好ましい。ウレタン(メタ)アクリレートは、カプロラクトン系ウレタンアクリレートであることが好ましい。
【0089】
電離放射線硬化性化合物がカプロラクトン系ウレタンアクリレートを含有する場合、カプロラクトン系ウレタンアクリレートの官能基数は、2以上4以下が好ましく、2以上3以下がより好ましい。
【0090】
また、電離放射線硬化性化合物は、カプロラクトン系ウレタンアクリレートと、カプロラクトン変性されていないウレタン(メタ)アクリレートと含んでいてもよい。この場合、第1保護層に含まれるカプロラクトン系ウレタンアクリレートの含有量をMCLUAとし、カプロラクトン変性されていないウレタン(メタ)アクリレートの含有量をMUAとする。MUAおよびMCLUAの合計に対するMCLUAの質量比(MCLUA/(MUA+MCLUA))は、例えば、40質量%以上90質量%以下であり、45質量%以上80質量%以下であってもよく、50質量%以上70質量%以下であってもよい。
【0091】
カプロラクトン系ウレタンアクリレートは、通常、カプロラクトン系ポリオールと、有機イソシアネートと、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応により得ることができる。合成法としては、例えば、ポリカプロラクトン系ポリオールと有機ポリイソシアネートとを反応させて、両末端に-NCO基(イソシアナート基)を含有するポリウレタンプレポリマーを生成させた後に、ヒドロキシ(メタ)アクリレートと反応させる方法が挙げられる。
【0092】
カプロラクトン系ポリオールとして、市販されるものを使用することができ、好ましくは2個の水酸基を有し、数平均分子量が好ましくは500~3000、より好ましくは750~2000のものが挙げられる。また、カプロラクトン系以外のポリオール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等のポリオールを1種または複数種を任意の割合で混合して使用することもできる。有機ポリイソシアネートとしては、2個のイソシアネート基を有するジイソシアネートが好ましく、黄変を抑制する観点から、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4′-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が好ましく挙げられる。ヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、カプロラクトン変性-2-ヒドロキシエチルアクリレート等が好ましく挙げられる。
【0093】
電離放射線硬化性樹脂組成物が、カプロラクトン系ポリオールを含む場合、カプロラクトン系ウレタンアクリレートは、カプロラクトンジオール系ウレタンアクリレートであることが好ましい。カプロラクトンジオール系ウレタンアクリレートとは、カプロラクトン系ウレタンアクリレートのうち、末端がジエチレングリコールであるウレタンアクリレートをいう。カプロラクトンジオール系ウレタンアクリレートを用いることで、第1保護層に、割れおよび白化が生じることを抑制できる。
【0094】
電離放射線硬化性化合物の数平均分子量は、例えば、300以上10000以下であり、1000以上10000以下であってもよく、2000以上10000以下であってもよい。数平均分子量は、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された平均分子量である。
【0095】
例えば、電離放射線硬化性化合物が、紫外線硬化性化合物である場合、電離放射線硬化性化合物は、光重合開始剤および光重合促進剤の少なくとも一方を含むことが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α-アシルオキシムエステル、アシルフォスフィンオキサイド、チオキサントン類が挙げられる。光重合促進剤としては、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルが挙げられる。
【0096】
また、第1硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂組成物であってもよい。熱硬化性樹脂組成物の詳細については、後述する「3.第2保護層」に記載する内容と同様である。
【0097】
(3)耐候剤
第1保護層は、通常、耐候剤を含有する。第1保護層が耐候剤を有することにより、本実施形態のように転写層の表面が低艶感を有する場合であっても、樹脂の劣化による艶変化が抑制される。耐候剤としては、例えば、紫外線吸収剤および光安定剤が挙げられる。第1保護層は、紫外線吸収剤および光安定剤の少なくとも一つを含むことが好ましい。第1保護層は、1種または2種以上の紫外線吸収剤を含んでいてもよい。同様に、第1保護層は、1種または2種以上の光安定剤を含んでいてもよい。
【0098】
第1保護層に含まれる紫外線吸収剤としては、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、オキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、シアノ(メタ)アクリレート系紫外線吸収剤等の有機系紫外線吸収剤、二酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛等の無機系紫外線吸収剤が挙げられる。これらの中でも、トリアジン系紫外線吸収剤がより好ましい。
【0099】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が挙げられる。ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス[2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2'-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノールが挙げられる。
【0100】
第1保護層に含まれる紫外線吸収剤の含有量は、電離放射線硬化性化合物100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上10質量部以下であり、0.8質量部以上8質量部以下であってもよく、1質量部以上5質量部以下であってもよい。紫外線吸収剤の含有量が多いと、紫外線吸収剤のブリードアウトが発生する可能性があり、紫外線吸収剤の含有量が少ないと、十分な紫外線吸収性能が得られない可能性がある。
【0101】
第1保護層に含まれる光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニルメタクリレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、2,4-ビス[N-ブチル-N-(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ]-6-(2-ヒドロキシエチルアミン)-1,3,5-トリアジン)が挙げられる。
【0102】
第1保護層に含まれる光安定剤の含有量は、電離放射線硬化性化合物100質量部に対して、例えば、1質量部以上10質量部以下であり、1.5質量部以上8質量部以下であってもよく、2質量部以上5質量部以下であってもよい。光安定剤の含有量が多いと、光安定剤のブリードアウトが発生する可能性があり、光安定剤の含有量が少ないと、十分な光安定性が得られない可能性がある。
【0103】
(4)添加剤
第1保護層は、粒子を含んでもよい。第1保護層が粒子を含むことにより、転写層の低艶感が更に向上する。第1保護層に含まれる粒子の種類としては、例えば、第1のマット層で例示した粒子と同様の種類が挙げられる。
【0104】
第1保護層に含まれる粒子の平均粒子径は、2.0μm以上、10μm以下であることが好ましく、3.0μm以上、7.0μm以下であることがより好ましい。平均粒粒子径は、レーザ回折散乱法により測定される、体積基準粒度分布によるD50をいう。
【0105】
第1保護層は、シリコーン化合物、重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、接着性向上剤、酸化防止剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、防汚剤、消泡剤、充填剤、耐摩耗剤、抗菌剤、抗ウィルス剤、防カビ剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0106】
(5)第1保護層
第1保護層の厚さは、例えば、2μm以上20μm以下であり、3μm以上15μm以下であってもよく、4μm以上10μm以下であってもよい。第1保護層が薄いと、十分な耐候性が得られない可能性があり、第1保護層が厚いと、第1保護層にクラックが生じやすくなり、良好な密着性が得られない可能性がある。
【0107】
3.第2保護層
本実施形態における転写シートは、第2保護層を有する。第2保護層および第1保護層は、直接接触するように配置されていてもよく、他の層を介して配置されていてもよい。
【0108】
(1)樹脂成分
第2保護層は、樹脂成分として、第2硬化性樹脂組成物の硬化物(特に、熱硬化性樹脂組成物の硬化物)を含む。また、第2硬化性樹脂組成物の硬化物の割合は、第2保護層を構成する全樹脂成分に対して、例えば70質量%以上であり、90質量%以上であってもよく、95質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
【0109】
熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも熱硬化性樹脂を含む組成物であり、加熱により、硬化する組成物である。熱硬化性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレタンアクリル系樹脂、フェノール系樹脂、尿素メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂が挙げられる。また、熱硬化性樹脂組成物は、これら樹脂に、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤等の硬化剤を添加したものであってもよい。
【0110】
熱硬化性樹脂組成物の硬化物は、(メタ)アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂またはウレタンアクリル系樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物の硬化物が好ましく、ウレタンアクリル系樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物の硬化物がより好ましい。また、熱硬化性樹脂組成物は、硬化物の構造をよりリジットにするために、イソシアネート系硬化剤またはエポキシ系硬化剤を含むことが好ましく、イソシアネート系硬化剤を含むことがより好ましい。
【0111】
また、第2保護層がウレタンアクリル系樹脂を含む場合、ウレタンアクリル系樹脂は、ウレタンアクリル共重合体であることが好ましく、ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体であることがより好ましい。ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体は、ポリカーボネートジオールと(ジ)イソシアネートとを反応させて得られるポリカーボネート系ポリウレタン高分子に、アクリルモノマーをラジカル重合させて得られる樹脂である。
【0112】
(ジ)イソシアネートとしては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、n-イソシアネートフェニルスルホニルイソシアネート、o-イソシアネートフェニルスルホニルイソシアネート、p-イソシアネートフェニルスルホニルイソシアネート等の芳香族イソシアネート;1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式イソシアネートが挙げられる。
【0113】
アクリルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0114】
ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体における、アクリル成分およびウレタン成分の合計に対するウレタン成分の質量比([ウレタン成分]/([アクリル成分]+[ウレタン成分])は、例えば、70質量%以上95質量%以下であり、75質量%以上95質量%以下であってもよく、80質量%以上90質量%以下であってもよい。上記質量比を70質量%以上にすることで、ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体におけるポリカーボネート構造の割合を多くすることができるため、ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体の構造がよりリジットになる。そのため、温度変化に対する変形を小さくできる。また、上記質量比を95質量%以下にすることで、第2保護層の柔軟性を確保しやすくなり、意匠層との密着性が向上する。
【0115】
(2)インデンテーション硬さ
本実施形態において、第2保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、例えば、2MPa以上であり、5MPa以上であってもよく、10MPa以上であってもよい。第2保護層の断面におけるインデンテーション硬さが低いと、温度変化が繰り返されるような環境下において、第2保護層の動きが大きくなり、第1保護層との間に隙間が生じ、良好な耐候密着性が得られない可能性がある。一方、第2保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、例えば、50MPa以下であり、40MPa以下であってもよく、30MPa以下であってもよい。第2保護層の断面におけるインデンテーション硬さが高いと、第1保護層との密着性(特に初期密着性)が低くなる可能性がある。なお、第2保護層の断面におけるインデンテーション硬さの測定方法は、上述した第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さの測定方法と同様である。
【0116】
(3)耐候剤
第2保護層は、通常、耐候剤を含有する。耐候剤としては、例えば、紫外線吸収剤および光安定剤が挙げられる。第2保護層は、紫外線吸収剤および光安定剤の少なくとも一つを含むことが好ましい。耐候剤の好ましい種類および態様については、上記「2.第1保護層」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。特に、第2保護層は、トリアジン系紫外線吸収剤を含むことが好ましい。また、第2保護層は、ヒンダードアミン系光安定剤を含むことが好ましい。
【0117】
第2保護層に含まれる紫外線吸収剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上50質量部以下であり、3質量部以上40質量部以下であってもよく、10質量部以上35質量部以下であってもよい。また、第2保護層に含まれる紫外線吸収剤の含有量(樹脂成分100質量部に対する含有量)は、第1保護層に含まれる紫外線吸収剤の含有量(樹脂成分100質量部に対する含有量)より多くてもよい。
【0118】
第2保護層に含まれる光安定剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上15質量部以下であり、1質量部以上15質量部以下であってもよく、3質量部以上10質量部以下であってもよい。また、第2保護層に含まれる光安定剤の含有量(樹脂成分100質量部に対する含有量)は、第1保護層に含まれる光安定剤の含有量(樹脂成分100質量部に対する含有量)より多くてもよい。
【0119】
(4)添加剤
第2保護層は、シリコーン化合物、重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、接着性向上剤、酸化防止剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、防汚剤、消泡剤、充填剤、ブロッキング防止剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0120】
(5)第2保護層
また、第2保護層の厚さは、例えば、2μm以上10μm以下であり、3μm以上8μm以下であってもよく、3μm以上5μm以下であってもよい。第2保護層が薄いと、第1保護層との密着性(特に初期密着性)が低くなる場合がある。一方、第2保護層が厚いと、温度変化が繰り返されるような環境下において、第2保護層の動きが大きくなり、良好な耐候密着性が得られない可能性がある。
【0121】
4.転写層
本実施形態における転写シートは、離型フィルムと、その離型フィルムの一方の面に配置された転写層と、を有する。転写層は、離型フィルム側から順に、第1保護層および第2保護層を少なくとも有する。転写層は、第1保護層および第2保護層を有していてもよく、他の層をさらに有していてもよい。他の層としては、例えば、意匠層および接着層が挙げられる。転写層は、第2保護層の第1保護層とは反対側の面に、接着層を有していてもよい。また、転写層は、第2保護層の第1保護層とは反対側の面に、意匠層を有していてもよい。
【0122】
転写層の厚さは、例えば8μm以上であり、10μm以上であってもよく、12μm以上であってもよく、14μm以上であってよい。転写層が薄いと、十分な耐候性が得られない可能性がある。一方、転写層の厚さは、例えば50μm以下であり、40μm以下であってもよく、30μm以下であってもよい。
【0123】
(1)接着層
本実施形態における転写シートは、第2保護層の第1保護層とは反対側の面に、接着層を有していてもよく、有していなくてもよい。接着層は、転写シートにおける転写層を構成する層において、基体と接する層であることが好ましい。この場合、接着層は、転写層と基体との密着性を向上させるために配置される。接着層は、接着性を有する成分を含有してもよい。接着性を有する成分としては、(メタ)アクリル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル系樹脂、エステル系樹脂、エポキシ系樹脂、イミド系樹脂、ゴム系樹脂が挙げられる。
【0124】
接着層は、いわゆる粘着層であってもよい。粘着層は、常温で粘着性を有している。粘着層に含まれる樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ビニル系樹脂、エステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ゴム系樹脂、アイオノマー系樹脂が挙げられる。
【0125】
また、接着層は、いわゆるヒートシール層であってもよい。ヒートシール層は、熱により粘着性を発現する。ヒートシール層に含まれる樹脂としては、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、ポリアクリルポリオール、ウレタン樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、スチレン-アクリル共重合、アクリル-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アミド樹脂、シアノアクリレート樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられ、これらを単独で、または、複数種を組み合わせて使用できる。この中でも、外装部材製造時の加工性および転写層と基体との密着性を向上させるために、アクリル樹脂、ポリアクリルポリオールおよびウレタン樹脂の少なくとも一種を用いることが好ましい。特に、アクリル樹脂が好ましい。
【0126】
接着層の断面におけるインデンテーション硬さは、特に限定されないが、例えば、100MPa以上、300MPa以下であり、120MPa以上、270MPa以下であってもよく、140MPa以上、250MPa以下であってもよい。接着層の断面におけるインデンテーション硬さが上記範囲であれば、例えば、意匠層との間において、良好な耐候密着性が得られる。
【0127】
接着層の厚さは、例えば、1μm以上、30μm以下であり、2μm以上、15μm以下であってもよく、3μm以上、10μm以下であってもよく、3μm以上、8μm以下であってもよい。接着層の厚みが上記範囲内であると、外装部材を製造時、接着層と基体との密着性を良好にしやすくできる。
【0128】
本実施形態において、接着層は、着色剤を含んでいてもよい。接着層が着色剤を含むことにより、転写層に意匠性を付与することができる。すなわち、接着層は、後述する意匠層の機能を共有していてもよい。
【0129】
(2)意匠層
本実施形態における転写シートは、第2保護層の第1保護層とは反対側の面に、意匠層を有していてもよく、有していなくてもよい。意匠層を設けることで、外装部材の意匠性が向上する。意匠層および第2保護層は、直接接触するように配置されていてもよく、他の層を介して配置されていてもよい。
【0130】
意匠層としては、例えば、ベタ層(インキをベタ塗りした層)、絵柄層(インキを印刷した層)が挙げられる。転写シートは、意匠層として、離型フィルム側から順に、絵柄層およびベタ層を有していてもよい。絵柄層における絵柄(模様)としては、例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様、草花模様が挙げられる。
【0131】
意匠層は、通常、着色剤およびバインダー樹脂を含有する。着色剤としては、例えば、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、ニッケルアゾ錯体、フタロシアニンブルー、アゾメチンアゾブラック等の有機顔料(染料を含む)、アルミニウム、真鍮等の金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等のパール顔料が挙げられる。
【0132】
バインダー樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリルポリオール系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、エステル系樹脂、アミド系樹脂、ブチラール系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタンアクリル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル共重合体、塩素化プロピレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、酢酸セルロース系樹脂が挙げられる。中でも、アクリルポリオール系樹脂とウレタン系樹脂とを組み合わせて用いることがより好ましい。
【0133】
意匠層の断面におけるインデンテーション硬さは、特に限定されないが、例えば、100MPa以上、300MPa以下であり、120MPa以上、270MPa以下であってもよく、140MPa以上、250MPa以下であってもよい。意匠層の断面におけるインデンテーション硬さが上記範囲であれば、例えば、接着層または第2保護層との間において、良好な耐候密着性が得られる。
【0134】
意匠層は、必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤、硬化剤、可塑剤、触媒等の添加剤を含有していてもよい。意匠層の厚さは、例えば、0.5μm以上20μm以下であり、1μm以上10μm以下であってもよく、2μm以上5μm以下であってもよい。
【0135】
(3)第2離型フィルム
本実施形態における転写シートは、第2保護層の第1保護層とは反対側の面に、第2離型フィルムを有していてもよい。例えば、転写シートをロール状に巻き取って製造した場合に、ブロッキングの発生を抑制できる。第2離型フィルムは、通常、後述する密着工程の前に、転写シートから剥離される。第2離型フィルムの詳細については、上述した第1離型フィルムに記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0136】
II.第2実施形態の転写シート
図1(a)は、本実施形態における転写シートを例示する概略断面図である。
図1(a)に示すように、転写シート10は、離型フィルム1と、離型フィルム1の一方の面に配置された転写層Xとを有する。転写層Xは、離型フィルム1側から、第1保護層2および第2保護層3を、厚さ方向D
Tにおいて、この順に有する。また、
図1(b)に示すように、転写シート10は、第2保護層3の第1保護層2とは反対側の面に、接着層4を有していてもよい。また、
図1(c)に示すように、転写シート10は、第2保護層3の第1保護層2とは反対側の面に、意匠層5を有していてもよい。
図1(c)において、意匠層5は、接着層4と第2保護層3との間に配置されている。
【0137】
本実施形態においては、第1保護層2は、第1硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、第2保護層3は、第2硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有する。
【0138】
また、本実施形態においては、離型フィルム1は、転写層X側とは反対側に位置する第1面S1と、転写層X側に位置する第2面S2と、を有し、第1面S1の最大高さRzは、所定の範囲であり、第2面S2の最大高さRzは、所定の範囲であり、第1保護層2の断面におけるインデンテーション硬さは、所定の範囲内である、
【0139】
本実施形態における転写シートは、離型フィルムの第1面の最大高さRzが所定の範囲と低いことにより、離型フィルムを剥離しなくても、意匠の視認性に優れる転写シートとなる。そのため、離型フィルムを剥離しない状態で欠点検査が可能となり、作業性が向上する。また、離型フィルムをそのままマスキングとして使用することができるため、プラスチック利用量の削減を図ることができる。さらに、第2面の最大高さRzが所定の範囲と高いことにより、剥離後の転写層が低艶感を有する。また、本発明者等は、第2面の最大高さRzが所定の範囲と高いことにより、第1保護層と離型フィルムとの密着性が上がるために、離型フィルムが剥離しにくくなる傾向があることを知見した。そして、第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さが、所定の範囲内であることにより、離型フィルムを容易に剥がすことが可能となることを見出した。
【0140】
また、外装部材(屋外用の部材)には、内装部材(屋内用の部材)に比べて、高い耐候性が求められる。例えば、化粧シートを用いて外装部材を製造する場合、強度向上を目的として、化粧シートに透明樹脂層を設ける場合がある。この場合、透明樹脂層は比較的厚い層であるため、例えば透明樹脂層に十分な量の耐候剤を添加することで、高い耐候性が付与される。これに対して、透明樹脂層に該当する層を有しない転写シートに、高い耐候性を付与することは、技術的な困難性が高い。本実施形態においては、通常、第1保護層および第2保護層の両方が耐候剤を含有する。これにより、第1保護層に求められる特性(例えば、耐傷性、耐摩耗性等の表面特性)、および、第2保護層に求められる特性(例えば密着性)を維持しつつ、高い耐候性を付与することができる。
【0141】
また、第1保護層が耐候剤を有することにより、本実施形態のように転写層の表面が低艶感を有する場合であっても、樹脂の劣化による艶変化が抑制される。
【0142】
1.離型フィルム
本実施形態における転写シートは、離型フィルムを有する。本実施形態における離型フィルムは、
図1に示すように、転写層X側とは反対側に位置する第1面S1と、転写層X側に位置する第2面S2と、を有する。
図1に示すように、離型フィルム1および第1保護層2は、直接接触するように配置されていることが好ましい。
【0143】
(1)最大高さRz
本実施形態における離型フィルムは、第1面の最大高さRzが、通常、0.8μm以下であり、0.6μm以下であってもよく、0.4μm以下であってもよい。Rz(最大高さ)は、JIS B0601:2013に規定される輪郭曲線の山及び高さパラメータの一つであり、基準長さにおける輪郭曲線の中で、最も高い山の高さと最も深い谷の深さとの和である。よって、Rz(最大高さ)が上記範囲であると、光の乱反射が抑制され、意匠の視認性が向上する。一方、第1面の最大高さRzは、例えば、0.1μm以上であり、0.2μm以上であってもよい。
【0144】
本実施形態において、第1面の最大高さRzは、離型フィルムの第1面の任意の箇所の長方形(1024μm×768μm)を測定領域として、下記測定装置および下記条件で測定された値である。
・測定装置:形状解析レーザ顕微鏡(VK-X1000、株式会社キーエンス製)
・対物レンズ:50倍
・測定モード:形状測定モード
・測定ピッチ:12μm
・測定品質:高速モード
・スキャンモード:レーザーコンフォーカル
【0145】
また、本明細書において、Rz(最大高さ)は、任意の10箇所における測定値の平均値である。
【0146】
本実施形態における離型フィルムは、第2面の最大高さRzが、通常、2.0μm以上であり、3.0μm以上であってもよく、4.0μm以上であってもよい。第2面の最大高さRzが低いと、離型フィルムを剥離した後の転写層が低艶感を発現しにくい。一方、第2面の最大高さRzは、例えば、6.0μm以下であり、5.0μm以下であってもよい。
【0147】
本実施形態において、第2面の最大高さRzとは、離型フィルムの第2面に対して、上記第1面の最大高さRzの測定方法と同様の方法で測定した値である。
【0148】
上述のような第1面および第2面を有する離型フィルムとしては、例えば、上述したように、第1面を含むフィルム層、第2面を含むマット層と、を有する離型フィルムが挙げられる。この場合、フィルム層の種類を選択することによって、第1面の最大高さRzを調整することができる。また、マット層が後述の第1のマット層の場合、マット層に含まれる粒子の種類を選択したり、粒子の平均粒子径および含有量等を調整することによって、第2面の最大高さRzを調整することができる。具体的には、粒子の含有量を多くすると、第2面の最大高さRzを大きくすることができる。また、粒子の平均粒子径を大きくすると、第2面の最大高さRzを大きくすることができる。マット層が後述の第2のマット層の場合、シワ形成安定剤の含有量、シワ形成安定剤の平均粒子径、重合性モノマー、重合性オリゴマーの種類、官能基数、紫外線の積算光量、出力密度等を調整することによって、上述の最大高さRzを調整することができる。
【0149】
(2)その他
離型フィルムのヘーズおよび構成については、上述した第1実施形態における離型フィルムと同様の内容とすることができる。
【0150】
2.第1保護層
第1保護層については、上述した第1実施形態における第1保護層と同様の内容とすることができる。
【0151】
3.第2保護層
第2保護層については、上述した第1実施形態における第2保護層と同様の内容とすることができる。
【0152】
4.転写層
転写層については、上述した第1実施形態における転写層と同様の内容とすることができる。
【0153】
B.転写シートの製造方法
図3は、本開示における転写シートの製造方法を例示する概略断面図である。まず、
図3(a)に示すように、離型フィルム1を準備する。次に、
図3(b)に示すように、離型フィルム1の第2面S2に、第1硬化性樹脂組成物および耐候剤を含有する第1組成物を塗工し、硬化させ、第1保護層2を形成する。次に、
図3(c)に示すように、第1保護層2の離型フィルム1とは反対側の面に、第2硬化性樹脂組成物および耐候剤を含有する第2組成物を塗工し、硬化させ、第2保護層3を形成する。これにより、離型フィルム1と、第1保護層2および第2保護層3を、厚さ方向D
Tにおいて、この順に有する転写シート10が得られる。
図3において、転写層Xは、第1保護層2および第2保護層3に該当する。
【0154】
図3に示す離型フィルム1は、上述した第1実施形態における離型フィルムであってもよいし、上述した第2実施形態における離型フィルムであってもよい。また、第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、所定の範囲内である。
【0155】
本開示によれば、上述した理由により、外装部材の製造に用いられる転写シートであって、離型フィルムを剥離しなくても意匠の視認性に優れ、低艶感を有する転写層を転写可能な転写シートが得られる。以下、各工程について詳細に説明する。
【0156】
1.第1保護層形成工程
本開示における第1保護層形成工程は、上記離型フィルムの第2面に、上記第1硬化性樹脂組成物および耐候剤を含有する第1組成物を塗工し、硬化させ、上記第1保護層を形成する工程である。第1組成物は、第1保護層形成用の組成物である。第1硬化性樹脂組成物および耐候剤については、上記「A.転写シート」に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0157】
第1組成物を塗工する方法としては、例えば、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法が挙げられる。第1組成物を塗工することで、第1塗工層が得られる。第1塗工層を硬化する方法としては、例えば、電子線、紫外線等の電離放射線を照射する方法、熱を加える方法が挙げられる。
【0158】
2.第2保護層形成工程
本開示における第2保護層形成工程は、上記第1保護層の上記離型フィルムとは反対側の面に、上記第2硬化性樹脂組成物および耐候剤を含有する第2組成物を塗工し、硬化させ、上記第2保護層を形成する工程である。第2組成物は、第2保護層形成用の組成物である。第2硬化性樹脂組成物および耐候剤については、上記「A.転写シート」に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0159】
第2組成物を塗工する方法としては、例えば、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法が挙げられる。第2組成物を塗工することで、第2塗工層が得られる。第2塗工層を硬化する方法としては、例えば、熱を加える方法が挙げられる。
【0160】
3.その他の工程
本開示における転写シートの製造方法は、第1保護層形成工程および第2保護層形成工程に加えて、上述した転写層に属する層を形成する工程を有していてもよい。例えば、本開示における転写シートの製造方法は、第2保護層の第1保護層とは反対側の面に接着層を形成する接着層形成工程を有していてもよい。接着層の形成方法としては、接着層を形成する組成物を、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法等の公知の方式で塗工し、必要に応じて、乾燥、硬化することによって形成できる。
【0161】
例えば、本開示における転写シートの製造方法は、第2保護層の第1保護層とは反対側の面に意匠層を形成する意匠層形成工程を有していてもよい。意匠層の形成方法としては、例えば、第2保護層の第1保護層とは反対側の面に、着色剤、バインダー樹脂および溶剤を含有するインキを塗工する方法が挙げられる。また、上述した各工程により得られる転写シートについては、上記「A.転写シート」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0162】
C.外装部材の製造方法
図4は、本開示における外装部材の製造方法を例示する概略断面図である。まず、
図4(a)に示すように、転写シート10を準備する。
図4(a)に示す転写シート10は、離型フィルム1、第1保護層2、第2保護層3、意匠層5、および接着層4を、厚さ方向D
Tにおいて、この順に有する。次に、
図4(b)に示すように、転写シート10の第2保護層3側の面と、基体20と、を対向させ、両者を密着させる。「転写シート10の第2保護層3側の面」とは、離型フィルム1を基準とした場合に第2保護層3側に位置する、転写シート10の面をいう。
図4(a)に示す転写シート10は意匠層5および接着層4を有するため、「転写シート10の第2保護層3側の面」は、接着層4の面に該当する。
【0163】
本開示における外装部材の製造方法は、上記密着工程後に、
図4(c)に示すように、転写シート10から離型フィルム1を剥離してもよい。これにより、第1保護層2、第2保護層3、意匠層5、接着層4および基体20を、厚さ方向D
Tにおいて、この順に有する、外装部材100が得られる。
【0164】
本開示によれば、上述した転写シートを用いることで、良好な耐候密着性を有する外装部材が得られる。
【0165】
1.準備工程
本開示における準備工程は、上述した第1実施形態の転写シート、または上述した第2実施形態の転写シートを準備する工程である。第1実施形態の転写シートまたは第2実施形態の転写シートについては、上記「A.転写シート」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0166】
2.密着工程
本開示における密着工程は、上記転写シートの上記第2保護層側の面と、基体とを対向させ、両者を密着させる工程である。転写シートおよび基体を対向させる際に、両者を直接接触するように配置してもよく、両者の間に他の層を介して配置してもよい。例えば、転写シートが接着層を有さない場合には、接着剤層が配置される。
【0167】
本開示における基体の材料としては、特に限定されることなく、樹脂、木材、金属、非金属無機材料、紙、不織布又は織布等を、用途に応じて適宜選択できる。
【0168】
本開示における基体の一例としては、樹脂部材が挙げられる。樹脂部材に用いられる樹脂としては、例えば、塩化ビニル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、エステル系樹脂、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系共重合体(ABS系樹脂)、フェノール系樹脂、セルロース系樹脂、ゴム、ポリカーボネート樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。樹脂部材は、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ザイロン繊維、ボロン繊維、ポリエチレン繊維等の繊維を含有してもよい。繊維を含有することにより、樹脂部材の強度を向上させることができる。また、基体の他の例としては、木質部材が挙げられる。木質部材としては、例えば、木材単板、木材合板、パーティクルボード、木質繊維板が挙げられる。木質部材に用いられる木材としては、例えば、杉、檜、松、ラワンが挙げられる。
【0169】
また、基体の他の例としては、金属部材が挙げられる。金属部材に用いられる金属としては、例えば、鉄、アルミニウムが挙げられる。また、基体の他の例としては、窯業部材が挙げられる。窯業部材の材料は、ガラス、陶磁器等のセラミックスであってもよく、石膏等の非セメント窯業系材料であってもよく、ALC(軽量気泡コンクリート)等の非陶磁器窯業系材料であってもよい。また、窯業部材として、ケイ酸カルシウム板を使用することもできる。
【0170】
基体は、転写シートとの密着性向上を目的として、表面処理が施されていてもよい。基体がアルミニウム部材である場合、表面処理としては、例えば、アルマイト処理、化成処理、メッキ処理、塗装処理、ブラスト処理、研磨処理等があげられる。基体が窯業部材である場合、表面処理としては、例えば、UVコート処理、塗装処理等があげられる。
【0171】
基体の形状は、特に限定されず、例えば、板状、シート状、立体形状が挙げられる。また、基体は、平面部を有していてもよく、曲面部を有していてもよく、平面部および曲面部の両方を有していてもよい。また、基体は、凸部、凹部、凸条部、凹条部、貫通部の少なくとも一つを有していてもよい。
【0172】
本開示における基体としては、中でも、アクリル板、ポリカーボネート板、不燃板、金属板、塩化ビニル板、メラミン板または炭素繊維強化プラスチック板が好ましい。不燃板としては、例えば、繊維強化セメント板が挙げられ、中でも、ケイ酸カルシウム板が好ましい。
【0173】
密着工程においては、転写シートの第2保護層側の面と、基体とを対向させ、両者を密着させる。両者を密着させる方法としては、例えば、ラミネート法が挙げられる。ラミネート法では、例えば、転写シートおよび基体の積層体を、転写シート側から加熱および加圧する。加熱および加圧の方法としては、例えば、ロール転写装置を用いる方法が挙げられる。ロール転写装置のロール温度は、例えば200℃以下であり、180℃以下であってもよい。ロール温度が高いと、転写シートが必要以上に軟化する可能性がある。一方、ロール転写装置のロール温度は、例えば100℃以上であり、110℃以上であってもよく、120℃以上であってもよい。
【0174】
また、本開示における外装部材の製造方法は、密着工程の後に、第1保護層から離型フィルムを剥離する剥離工程を有していてもよい。
【0175】
3.外装部材
本開示における外装部材は、第1保護層、第2保護層、および基体を、厚さ方向において、この順に有する。また、外装部材は、第1保護層の第2保護層とは反対側の面に、離型フィルムを有している離型フィルム付外装部材であってもよく、離型フィルムが剥離された後の、離型フィルムを有さない外装部材であってもよい。
【0176】
離型フィルムを剥離した後の外装部材は、第1保護層の第2保護層とは反対側の面の60°グロス値が、例えば、30以下であり、20以下であってもよい。一方、例えば、0.1以上であり、1.0以上であってもよい。
また、離型フィルムを剥離した後の外装部材は、第1保護層の第2保護層とは反対側の面の最大高さRzは、例えば、1.5μm以上であり、2.0μm以上であってもよい。一方、例えば、6.0μm以下であり、5.0μm以下であってもよい。
【0177】
本開示における外装部材は、例えば建材(建築構造物の外装部材)である。建材は、例えば、住宅、事務所、店舗、病院、診療所、一般道路及び高速道路、農業ハウス等に用いられる。外装部材の用途としては、例えば、外壁、屋根、軒天井、戸袋、窓枠、扉、扉枠、手すり、塀、物干台、仕切り板等が挙げられる。また、外装部材の具体的な用途としては、一般道路及び高速道路等における防音壁又は風防壁、バルコニーの仕切り板、フェンス、テラス又はカーポートにおける屋根部材、農業用ハウスを構成する透明部材等が挙げられる。
【0178】
また、本開示における外装部材は、建材(建築構造物の外装部材)以外には、例えば、車両、船舶及び航空機の外装部材、産業用機械の外装部材、並びに各種レンズの外装部材等として用いられる。車両の外装部材としては、例えば、サイドウインドウ、リアウインドウ、ルーフウインドウ、フロントウインドウ及びクォーターウインドウなどの窓材;ヘッドライトカバー、ウインカーランプレンズ、リフレクター;並びにピラーが挙げられる。車両としては、例えば、自動車、鉄道車両、建設機械、及びゴルフカートなどの軽車両が挙げられる。産業用機械の外装材としては、例えば、工作機械における視認用窓材が挙げられる。レンズとしては、例えば、信号機のレンズが挙げられる。
【0179】
D.離型フィルム付外装部材
本開示における離型フィルム付外装部材は、2つの実施形態を有する。以下、各実施形態に分けて説明する。
【0180】
I.第1実施形態の離型フィルム付外装部材
図5(a)は、本実施形態における離型フィルム付外装部材を例示する概略断面図である。本実施形態における離型フィルム付外装部材50は、離型フィルム1、第1保護層2、第2保護層3および基体20を、厚さ方向D
Tにおいて、この順に有する。
【0181】
また、
図5(b)に示すように、離型フィルム付外装部材50は、第2保護層3の第1保護層2とは反対側の面に、接着層4を有していてもよい。また、
図5(c)に示すように、離型フィルム付外装部材50は、第2保護層3の第1保護層2とは反対側の面に、意匠層5を有していてもよい。
【0182】
本実施形態においては、第1保護層2は、第1硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、第2保護層3は、第2硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有する。
【0183】
また、本実施形態においては、離型フィルム1は、第1保護層2とは反対側に位置する第1面S1と、第1保護層2側に位置する第2面S2と、を有し、第1面S1の60°グロス値は、所定の範囲であり、第2面S2の60°グロス値は、所定の範囲であり、第1保護層2の断面におけるインデンテーション硬さは、所定の範囲内である、
【0184】
本実施形態における離型フィルム付外装部材は、離型フィルムをマスキングとして使用することができる。さらに、離型フィルムの第2面の60°グロス値が所定の範囲と低いことにより、離型フィルムを剥離した後の第1保護層の表面が低艶感を有する。そして、第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さが、所定の範囲内であることにより、離型フィルムを容易に剥がすことが可能となる。また、本開示においては、通常、第1保護層および第2保護層の両方が耐候剤を含有する。これにより、第1保護層に求められる特性(例えば、耐傷性、耐摩耗性等の表面特性)、および、第2保護層に求められる特性(例えば密着性)を維持しつつ、高い耐候性を付与することができる。また、第1保護層が耐候剤を有することにより、本開示のように第1保護層の表面が低艶感を有する場合であっても、樹脂の劣化による艶変化が抑制される。
【0185】
本実施形態における離型フィルムは、上記「A.転写シート」に記載した第1実施形態の転写シートにおける離型フィルムの内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。第1保護層、第2保護層、意匠層および接着層としては、上記「A.転写シート」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。基体については、上記「C.外装部材の製造方法」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0186】
II.第2実施形態の離型フィルム付外装部材
図5(a)は、本実施形態における離型フィルム付外装部材を例示する概略断面図である。本実施形態における離型フィルム付外装部材50は、離型フィルム1、第1保護層2、第2保護層3および基体20を、厚さ方向D
Tにおいて、この順に有する。
【0187】
また、
図5(b)に示すように、離型フィルム付外装部材50は、第2保護層3の第1保護層2とは反対側の面に、接着層4を有していてもよい。また、
図5(c)に示すように、離型フィルム付外装部材50は、第2保護層3の第1保護層2とは反対側の面に、意匠層5を有していてもよい。
【0188】
本実施形態においては、第1保護層2は、第1硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、第2保護層3は、第2硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有する。
【0189】
また、本実施形態においては、離型フィルム1は、転写層X側とは反対側に位置する第1面S1と、転写層X側に位置する第2面S2と、を有し、第1面S1の最大高さRzは、所定の範囲であり、第2面S2の最大高さRzは、所定の範囲であり、第1保護層2の断面におけるインデンテーション硬さは、所定の範囲内である、
【0190】
本実施形態における離型フィルム付外装部材は、離型フィルムをマスキングとして使用することができる。さらに、第2面の最大高さRzが所定の範囲と高いことにより、離型フィルムを剥離した後の第1保護層の表面が低艶感を有する。そして、第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さが、所定の範囲内であることにより、離型フィルムを容易に剥がすことが可能となる。また、本実施形態においては、通常、第1保護層および第2保護層の両方が耐候剤を含有する。これにより、第1保護層に求められる特性(例えば、耐傷性、耐摩耗性等の表面特性)、および、第2保護層に求められる特性(例えば密着性)を維持しつつ、高い耐候性を付与することができる。また、第1保護層が耐候剤を有することにより、本実施形態のように第1保護層の表面が低艶感を有する場合であっても、樹脂の劣化による艶変化が抑制される。
【0191】
本実施形態における離型フィルムは、上記「A.転写シート」に記載した第2実施形態の転写シートにおける離型フィルムの内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。第1保護層、第2保護層、意匠層および接着層としては、上記「A.転写シート」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。基体については、上記「C.外装部材の製造方法」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0192】
E.外装部材
本開示においては、離型フィルムを剥離した後の外装部材を提供することができる。
図6は、離型フィルムを剥離した後の外装部材の一例を示す概略断面図である。外装部材100は、第1保護層2、第2保護層3および基体20を、厚さ方向D
Tにおいて、この順に有し、第1保護層2は、第1硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、第2保護層3は、第2硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、第1保護層2の断面におけるインデンテーション硬さは、150MPa以上、300MPa以下である。
図6に示すように、外装部材100は、基体20と転写層Xとが、転写層Xの接着層4を介して接着していてもよい。また、第2保護層3と接着層4との間に、意匠層5を有していてもよい。
【0193】
離型フィルムを剥離した後の外装部材100は、第1保護層2の第2保護層3とは反対側の面S3の60°グロス値が、例えば、30以下であり、20以下であってもよい。一方、例えば、0.1以上であり、1.0以上であってもよい。また、離型フィルムを剥離した後の外装部材は、第1保護層2の第2保護層3とは反対側の面S3の最大高さRzは、例えば、1.5μm以上であり、2.0μm以上であってもよい。一方、例えば、6.0μm以下であり、5.0μm以下であってもよい。
【0194】
本開示は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【実施例0195】
[実施例1]
(離型フィルム1の作製)
厚み50μmPETフィルム(E5101、東洋紡株式会社)のコロナ処理面に、下記のマット層形成用の組成物1(熱硬化性樹脂組成物)を乾燥後の塗布量が3g/m2となるように塗工し、40℃オーブンで5日間養生した。これにより、フィルム層および第1のマット層を有する離型フィルム1を得た。
<マット層形成用の組成物1>
・ポリエステルポリオール樹脂:100質量部
・硬化剤:15質量部(ヘキサメチレンジイソシアネート)
・マット剤:30質量部(シリカ粒子、平均粒径3μm)
・溶剤:適量
【0196】
次に、離型フィルム1の第2面(マット層表面)に、下記の第1保護層形成用の組成物1を、乾燥後の塗工量が5g/m2となるように塗工し、乾燥した。その後、電子線(加圧電圧:90kV、5Mrad(50kGy))を照射し、厚さ5μmの第1保護層を形成した。
<第1保護層形成用の組成物1>
・電離放射線硬化性樹脂組成物:100質量部
(カプロラクトン系ウレタンアクリレート:30質量部)
(ペンタエリスリトールトリアクリレート(水酸基含有アクリレート):70質量部)
・トリアジン系紫外線吸収剤:2質量部
(ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(品名:TINUVIN479、BASF社))
・反応性官能基を有する光安定剤:2質量部
(品名:サノールLS-3410、日本乳化剤株式会社)
・溶剤:適量
【0197】
次に、得られた第1保護層の面にコロナ放電処理を施した後に、下記の第2保護層形成用の組成物1を塗工し、乾燥させ、厚さ5μmの第2保護層を形成した。
<第2保護層形成用の組成物1>
・ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体:100質量部
・ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤:17質量部(商品名:TINUVIN400、BASF社)
・ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤:13質量部(商品名:TINUVIN479、BASF社)
・ヒンダードアミン系光安定剤:8質量部(商品名:TINUVIN123、BASF社)
・ブロッキング防止剤:9質量部(シリカ粒子、平均粒径3μm)
・硬化剤:25質量部(ヘキサメチレンジイソシアネート)
・溶剤:適量
【0198】
次に、得られた第2保護層の面に、樹脂成分および顔料を含むインキ組成物1をグラビアコーティングにより塗工、乾燥し、柄層およびベタ層を含む厚さ3~5μmの意匠層を形成した。
<インキ組成物1>
・インキの樹脂成分
ウレタン樹脂とポリアクリルポリオールの混合樹脂(質量比20:80)
・顔料(有機顔料及び無機顔料を含む)
【0199】
得られた意匠層の面に、アクリル樹脂と塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体とを6:4(質量比)で含む接着剤組成物1をグラビアコーティングにより塗工、乾燥し、厚さ2μmの接着層を形成した。これにより、離型フィルム、第1保護層、第2保護層、意匠層および接着層を、厚さ方向において、この順に有する転写シートを得た。
【0200】
[実施例2]
(離型フィルム2の作製)
厚み100μmのコロナ放電処理を施したPETフィルムの一方の面に、アクリル樹脂及びウレタン樹脂をバインダー樹脂として含む樹脂組成物を塗布、乾燥して、易接着層(厚さ:2μm)を形成した。易接着層上に、下記のマット層形成用の組成物2を、グラビア法により塗布し(塗布量:5g/m2(乾燥時))、次いでLEDから構成されるUV照射装置を用いて紫外線を照射し(波長:395nm、紫外線量:0.6W/cm2)、次いでエキシマ光照射装置を用いて紫外線を照射し(波長:172nm(Xe2)、紫外線出力密度:1W/cm、積算光量:10~100mJ/cm2、窒素雰囲気(酸素濃度200ppm以下))、次いで更に高圧水銀灯を用いて紫外線を照射して(波長:365nm、紫外線出力密度:200W/cm)、第2のマット層を形成した。上記工程により、支持体上に、易接着層及び第2のマット層を有する離型フィルム2を得た。
【0201】
<マット層形成用の組成物2>
・多官能ウレタンアクリレートオリゴマー(4官能):65質量部
・単官能アクリレートモノマー:35質量部
・シワ形成安定剤(シリカ粒子、平均粒子径:3μm):1.0質量部
・光重合開始剤(ベンゾフェノン系):0.8質量部
【0202】
次に、離型フィルム2の第2面(マット層表面)に、上記第1保護層形成用の組成物1を、乾燥後の塗工量が5g/m2となるように塗工し、乾燥した。その後、電子線(加圧電圧:90kV、5Mrad(50kGy))を照射し、厚さ5μmの第1保護層を形成した。
【0203】
次に、得られた第1保護層の面にコロナ放電処理を施した後に、上記の第2保護層形成用の組成物1を塗工し、乾燥させ、厚さ5μmの第2保護層を形成した。
【0204】
次に、得られた第2保護層の面に、樹脂成分および顔料を含む上記インキ組成物1をグラビアコーティングにより塗工、乾燥し、柄層およびベタ層を含む厚さ3~5μmの意匠層を形成した。
【0205】
得られた意匠層の面に、上記接着剤組成物1をグラビアコーティングにより塗工、乾燥し、厚さ2μmの接着層を形成した。これにより、離型フィルム、第1保護層、第2保護層、意匠層および接着層を、厚さ方向において、この順に有する転写シートを得た。
【0206】
[実施例3]
(離型フィルム3の作製)
厚み50μmPETフィルム(E5101、東洋紡株式会社)のコロナ処理面に下記のマット層形成用の組成物3(熱硬化性樹脂組成物)を乾燥後の塗布量が3g/m2となるように塗工し、40℃オーブンで5日間養生した。これにより、フィルム層および第1のマット層を有する離型フィルム3を得た。
<マット層形成用の組成物3>
・ポリエステルポリオール樹脂:100質量部
・硬化剤:15質量部(ヘキサメチレンジイソシアネート)
・マット剤:15質量部(シリカ粒子、平均粒径3μm)
・溶剤:適量
【0207】
次に、離型フィルム3の第2面(マット層表面)に、上記第1保護層形成用の組成物1を、乾燥後の塗工量が5g/m2となるように塗工し、乾燥した。その後、電子線(加圧電圧:90kV、5Mrad(50kGy))を照射し、厚さ5μmの第1保護層を形成した。
【0208】
次に、得られた第1保護層の面にコロナ放電処理を施した後に、上記の第2保護層形成用の組成物1を塗工し、乾燥させ、厚さ5μmの第2保護層を形成した。
【0209】
次に、得られた第2保護層の面に、樹脂成分および顔料を含む下記インキ組成物2をグラビアコーティングにより塗工、乾燥し、柄層およびベタ層を含む厚さ3~5μmの意匠層を形成した。
<インキ組成物2>
・アクリル樹脂と塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体との混合樹脂(質量比8:2)
・顔料(有機顔料及び無機顔料を含む)
【0210】
得られた意匠層の面に、上記接着剤組成物1をグラビアコーティングにより塗工、乾燥し、厚さ2μmの接着層を形成した。これにより、離型フィルム、第1保護層、第2保護層、意匠層および接着層を、厚さ方向において、この順に有する転写シートを得た。
【0211】
[実施例4]
(離型フィルム4の作製)
厚み50μmPETフィルム(E5101、東洋紡株式会社)のコロナ処理面に下記のマット層形成用の組成物4(熱硬化性樹脂組成物)を乾燥後の塗布量が3g/m2となるように塗工し、40℃オーブンで5日間養生した。これにより、フィルム層および第1のマット層を有する離型フィルム4を得た。
<マット層形成用の組成物4>
・ポリエステルポリオール樹脂:100質量部
・硬化剤:15質量部(ヘキサメチレンジイソシアネート)
・マット剤:10質量部(シリカ粒子、平均粒径2.5μm)
・溶剤:適量
【0212】
次に、離型フィルム4の第2面(マット層表面)に、下記の第1保護層形成用の組成物2を、乾燥後の塗工量が5g/m2となるように塗工し、乾燥した。その後、電子線(加圧電圧:90kV、5Mrad(50kGy))を照射し、厚さ5μmの第1保護層を形成した。
【0213】
<第1保護層形成用の組成物2>
・電離放射線硬化性樹脂組成物:100質量部
(カプロラクトン系ウレタンアクリレート:60質量部)
(ウレタンアクリレート:40質量部)
・ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤:2質量部
(品名:TINUVIN479、BASF社)
・反応性官能基を有する光安定剤:2質量部
(品名:サノールLS-3410、日本乳化剤株式会社)
・マット剤:5質量部(シリカ粒子、平均粒径3μm)
・溶剤:適量
【0214】
次に、得られた第1保護層の面にコロナ放電処理を施した後に、下記の第2保護層形成用の組成物2を塗工し、乾燥させ、厚さ5μmの第2保護層を形成した。
【0215】
<第2保護層形成用の組成物2>
・ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体:98質量部
・アクリルポリール:2質量部
・ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤:17質量部(商品名:TINUVIN400、BASF社)
・ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤:13質量部(商品名:TINUVIN479、BASF社)
・ヒンダードアミン系光安定剤:8質量部(商品名:TINUVIN123、BASF社)
・ブロッキング防止剤:9質量部(シリカ粒子、平均粒径3μm)
・硬化剤:25質量部(ヘキサメチレンジイソシアネート)
・溶剤:適量
【0216】
次に、得られた第2保護層の面に、樹脂成分および顔料を含む下記のインキ組成物3をグラビアコーティングにより塗工、乾燥し、柄層およびベタ層を含む厚さ3~5μmの意匠層を形成した。
<インキ組成物3>
・アクリルポリオール樹脂
・顔料(有機顔料及び無機顔料を含む)
【0217】
得られた意匠層の面に、上記接着剤組成物1をグラビアコーティングにより塗工、乾燥し、厚さ2μmの接着層を形成した。これにより、離型フィルム、第1保護層、第2保護層、意匠層および接着層を、厚さ方向において、この順に有する転写シートを得た。
【0218】
[比較例1]
マット剤を含まない離型フィルム5(PETフィルム E5001、東洋紡株式会社製)を用意した。
【0219】
次に、離型フィルム5の一方の面に、上記第1保護層形成用の組成物1を、乾燥後の塗工量が5g/m2となるように塗工し、乾燥した。その後、電子線(加圧電圧:90kV、5Mrad(50kGy))を照射し、厚さ5μmの第1保護層を形成した。
【0220】
次に、得られた第1保護層の面にコロナ放電処理を施した後に、上記の第2保護層形成用の組成物1を塗工し、乾燥させ、厚さ5μmの第2保護層を形成した。
【0221】
次に、得られた第2保護層の面に、樹脂成分および顔料を含む上記インキ組成物1をグラビアコーティングにより塗工、乾燥し、柄層およびベタ層を含む厚さ3~5μmの意匠層を形成した。
【0222】
得られた意匠層の面に、上記接着剤組成物1をグラビアコーティングにより塗工、乾燥し、厚さ2μmの接着層を形成した。これにより、離型フィルム、第1保護層、第2保護層、意匠層および接着層を、厚さ方向において、この順に有する転写シートを得た。
【0223】
[比較例2]
マット剤が練りこまれた離型フィルム6(厚さ50μmのPETフィルム、ヘーズ(Hz):30%、全光線透過率(Tt):85%)を用意した。
【0224】
次に、離型フィルム6の一方の面に、上記第1保護層形成用の組成物1を、乾燥後の塗工量が5g/m2となるように塗工し、乾燥した。その後、電子線(加圧電圧:90kV、5Mrad(50kGy))を照射し、厚さ5μmの第1保護層を形成した。
【0225】
次に、得られた第1保護層の面にコロナ放電処理を施した後に、上記の第2保護層形成用の組成物1を塗工し、乾燥させ、厚さ5μmの第2保護層を形成した。
【0226】
次に、得られた第2保護層の面に、樹脂成分および顔料を含む上記インキ組成物1をグラビアコーティングにより塗工、乾燥し、柄層およびベタ層を含む厚さ3~5μmの意匠層を形成した。
【0227】
得られた意匠層の面に、上記接着剤組成物1をグラビアコーティングにより塗工、乾燥し、厚さ2μmの接着層を形成した。これにより、離型フィルム、第1保護層、第2保護層、意匠層および接着層を、厚さ方向において、この順に有する転写シートを得た。
【0228】
[比較例3]
マット剤が練りこまれた離型フィルム7(厚さ50μmのPETフィルム、ヘーズ(Hz):83%、全光線透過率(Tt):68%)を用意した。
【0229】
次に、離型フィルム7の一方の面に、上記第1保護層形成用の組成物1を、乾燥後の塗工量が5g/m2となるように塗工し、乾燥した。その後、電子線(加圧電圧:90kV、5Mrad(50kGy))を照射し、厚さ5μmの第1保護層を形成した。
【0230】
次に、得られた第1保護層の面にコロナ放電処理を施した後に、上記の第2保護層形成用の組成物1を塗工し、乾燥させ、厚さ5μmの第2保護層を形成した。
【0231】
次に、得られた第2保護層の面に、樹脂成分および顔料を含む上記インキ組成物1をグラビアコーティングにより塗工、乾燥し、柄層およびベタ層を含む厚さ3~5μmの意匠層を形成した。
【0232】
得られた意匠層の面に、上記接着剤組成物1をグラビアコーティングにより塗工、乾燥し、厚さ2μmの接着層を形成した。これにより、離型フィルム、第1保護層、第2保護層、意匠層および接着層を、厚さ方向において、この順に有する転写シートを得た。
【0233】
[比較例4]
離型フィルムとして、上記離型フィルム1を用い、離型フィルム1の第2面に、下記第1保護層形成用の組成物3を、乾燥後の塗工量が5g/m2となるように塗工し、乾燥した。その後、電子線(加圧電圧:90kV、5Mrad(50kGy))を照射し、厚さ5μmの第1保護層を形成した。
【0234】
<第1保護層形成用の組成物3>
・電離放射線硬化性樹脂組成物:100質量部
(カプロラクトン系ウレタンアクリレート:100質量部)
・ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤:2質量部
(品名:TINUVIN479、BASF社)
・反応性官能基を有する光安定剤:2質量部
(品名:サノールLS-3410、日本乳化剤株式会社)
【0235】
次に、得られた第1保護層の面にコロナ放電処理を施した後に、上記の第2保護層形成用の組成物1を塗工し、乾燥させ、厚さ5μmの第2保護層を形成した。
【0236】
次に、得られた第2保護層の面に、樹脂成分および顔料を含む上記インキ組成物1をグラビアコーティングにより塗工、乾燥し、柄層およびベタ層を含む厚さ3~5μmの意匠層を形成した。
【0237】
得られた意匠層の面に、上記接着剤組成物1をグラビアコーティングにより塗工、乾燥し、厚さ2μmの接着層を形成した。これにより、離型フィルム、第1保護層、第2保護層、意匠層および接着層を、厚さ方向において、この順に有する転写シートを得た。
【0238】
[離型フィルムの60°グロス値の測定]
実施例および比較例で使用した離型フィルムを、光沢のない黒台紙の上に第1面が上になるように置き、グロスメータ(「マイクロトリグロス(機種名)」、BYKガードナー社製)を用いて、JIS Z 8741:1997の方法3に準拠して、第1面の60°鏡面光沢度を測定した。同様に、第2面が上になるように置き、第2面の60°鏡面光沢度を測定した。
【0239】
[離型フィルムの最大高さRzの測定]
実施例および比較例で使用した離型フィルムの第1面の任意の箇所の長方形(1024μm×768μm)を測定領域として、下記測定装置および下記条件で、離型フィルムの第1面の最大高さRzを測定した。同様に、第2面の任意の箇所の長方形(1024μm×768μm)を測定領域として、離型フィルムの第2面の最大高さRzを測定した。なお、Rz(最大高さ)は、任意の10箇所における測定値の平均値とした。
・測定装置:形状解析レーザ顕微鏡(VK-X1000、株式会社キーエンス製)
・対物レンズ:50倍
・測定モード:形状測定モード
・測定ピッチ:12μm
・測定品質:高速モード
・スキャンモード:レーザーコンフォーカル
【0240】
[離型フィルムのヘーズ値]
実施例および比較例で使用した離型フィルムのヘーズ値H1を、ヘーズメーター(HM-150L2N、村上色彩技術研究所製)を用い、JIS K7136:2000に準拠して測定した(テープ貼付試験前)。ヘーズ測定時の光入射面は第2面側とした。また、離型フィルムの第2面に粘着テープ(「セロテープ(登録商標)」、ニチバン株式会社製)を貼付し、上記と同様にヘーズ値H2を測定し(テープ貼付試験後)、テープ貼付試験の前後におけるヘーズ値の差ΔH(=H1-H2)を算出した。結果を表1に示す。
【0241】
[インデンテーション硬さの測定]
得られた転写シートの第1保護層について、上述した方法により、インデンテーション硬さを測定した。結果を表1に示す。
【0242】
[柄視認性の評価]
任意の成人20人が、得られた転写シートを離型フィルム側から目視で観察した。確認できる柄の割合を回答し、20人の回答の平均値を求め、以下の評価基準により評価した。
A:離型フィルム側から見たとき、柄が7割以上確認できる
B:離型フィルム側から見たとき、柄が5割確認できる
C:離型フィルム側から見たとき、柄が3割以下しか確認できない
【0243】
[剥離性の評価]
基体として厚さ2mmのポリカーボネート板(「カーボグラス/ポリッシュ」、AGC株式会社製)を用意し、基体の一方の面と、上記で得られた転写シートの転写層とを対向させて積層させた。その後、ラミネーターを用い、ラミロール温度170℃、搬送速度2m/minの条件で、転写シート側から加熱および加圧し、基体と、転写シートの転写層とを密着させた。密着させた転写シートから離型フィルムを剥離した。この際の離型フィルムの剥離性を以下の評価基準により評価した。
(評価基準)
A:離型フィルムを手で剥離した際に、PETフィルムに破断なく、剥離可能。
B:離型フィルムを手で剥離した際に、PETフィルムに一部破断が確認、又は剥離できない。
【0244】
[離型フィルム剥離後の60°グロス値および最大高さRz]
上記剥離性の評価において、離型フィルムを剥離した後の第1保護層表面の60°グロス値および最大高さRzを、上述の方法により測定した。結果を表1に示す。
【0245】
[高級感評価]
上記剥離性の評価において、離型フィルムを剥離した後の部材について、任意の成人20人が表面の意匠を観察し、高級感があると回答した人数に基づいて以下のよう評価した。
A:16人以上
B:11人以上15人以下
C:6人以上10人以下
D:5人以下
【0246】
[耐候密着性の評価]
上記剥離性の評価において、離型フィルムを剥離した後の部材を、評価用部材として用いた。
【0247】
得られた評価用部材に対し、メタルハライドランプ(MWOM)による下記促進耐候試験(下記の照射条件で20時間紫外線を照射した後、下記の結露条件で4時間結露を行う工程を1サイクルとして、前記サイクルを繰り返し行う試験)を700時間実施後、下記の通り耐候密着性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0248】
<促進耐候試験の条件>
(試験装置)
ダイプラ・ウィンテス社製、商品名「ダイプラ・メタルウェザー」
(照射条件)
照度:65mW/cm2、ブラックパネル温度:63℃、槽内湿度:50%RH、時間:20時間
(結露条件)
照度:0mW/cm2、槽内湿度:98%RH、時間:4時間
【0249】
粘着テープ(「セロテープ(登録商標)」、ニチバン株式会社製)を、促進耐候試験を実施した評価用部材の端部から5cm程はみ出るようにし、2.5cm×2.5cmの面積で貼り付けた。その後、貼り付けた粘着テープのはみ出た部分をつまみ、評価用部材の表面に対し45°の方向に粘着テープを剥がすことで、転写層の層間の密着性を確認し、下記の評価基準で密着性を評価した。評価結果を表1に示す。また、促進耐候試験を未実施の評価用部材に対しても、同様の方法および評価基準により、初期の層間密着性を評価した。
【0250】
<評価基準>
A:転写層の層間で剥離は生じなかった。
B:転写層の層間で剥離が生じた。
【0251】
【0252】
表1に示すように、実施例1~実施例4の転写シートは、意匠層における柄の視認性が良好であることが確認された。また、基体に貼り付け、離型フィルムを剥離した後に、転写層の表面が低艶感を有することが確認された。また、離型フィルムの剥離が容易であった。一方、マット層を有さず、かつ、マット剤の練り込みがないPETフィルムを用いた比較例1は、転写層の低艶感が得られないことが確認された。また、マット剤が練り込まれたPETフィルムを用いた比較例2および比較例3は、柄の視認性に劣ることが確認された。また、比較例4は、第1保護層のインデンテーション硬さが低く、離型フィルムの剥離が困難であった。
【0253】
このように、本開示においては、例えば、以下の発明が提供される。
【0254】
[1]
外装部材の製造に用いられる転写シートであって、
前記転写シートは、離型フィルムと、前記離型フィルムの一方の面に配置された転写層と、を有し、
前記転写層は、前記離型フィルム側から、第1保護層および第2保護層を、厚さ方向において、この順に有し、
前記第1保護層は、第1硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、
前記第2保護層は、第2硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、
前記離型フィルムは、前記転写層側とは反対側に位置する第1面と、前記転写層側に位置する第2面と、を有し、
前記第1面の60°グロス値は、90以上であり、
前記第2面の60°グロス値は、40以下であり、
前記第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、150MPa以上、300MPa以下である、転写シート。
【0255】
[2]
外装部材の製造に用いられる転写シートであって、
前記転写シートは、離型フィルムと、前記離型フィルムの一方の面に配置された転写層と、を有し、
前記転写層は、前記離型フィルム側から、第1保護層および第2保護層を、厚さ方向において、この順に有し、
前記第1保護層は、第1硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、
前記第2保護層は、第2硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、
前記離型フィルムは、前記転写層側とは反対側に位置する第1面と、前記転写層側に位置する第2面と、を有し、
前記第1面の最大高さRzは、0.8μm以下であり、
前記第2面の最大高さRzは、2.0μm以上であり、
前記第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、150MPa以上、300MPa以下である、転写シート。
【0256】
[3]
前記第1面の60°グロス値は、90以上であり、
前記第2面の60°グロス値は、40以下である、[2]に記載の転写シート。
【0257】
[4]
前記離型フィルムは、前記第1面を含むフィルム層と、前記フィルム層の前記転写層側の面に配置され、かつ、前記第2面を含むマット層と、を有する、[1]から[3]までのいずれかに記載の転写シート。
【0258】
[5]
前記第1面の60°グロス値は、200以下であり、
前記第2面の60°グロス値は、3.0以上である、[1]から[4]までのいずれかに記載の転写シート。
【0259】
[6]
前記第1面の最大高さRzは、0.1μm以上であり、
前記第2面の最大高さRzは、6.0μm以下である、[1]から[5]までのいずれかに記載の転写シート。
【0260】
[7]
前記離型フィルムは、前記第2面にテープを貼付するテープ貼付試験を行った場合に、前記テープ貼付試験の前後におけるヘーズ値の差(ΔH)が、20%以上である、[1]から[6]までのいずれかに記載の転写シート。
【0261】
[8]
前記第2保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、2MPa以上、50MPa以下である、[1]から[7]までのいずれかに記載の転写シート。
【0262】
[9]
前記第1硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性樹脂組成物である、[1]から[8]までのいずれかに記載の転写シート。
【0263】
[10]
前記第1硬化性樹脂組成物は、電子線硬化性樹脂組成物である、[1]から[9]までのいずれかに記載の転写シート。
【0264】
[11]
前記第2硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂組成物である、[1]から[10]までのいずれかに記載の転写シート。
【0265】
[12]
前記第1保護層および前記第2保護層は、前記耐候剤として、それぞれ、紫外線吸収剤および光安定剤の少なくとも一方を含有する、[1]から[11]までのいずれかに記載の転写シート。
【0266】
[13]
[1]から[12]までのいずれかに記載の転写シートの製造方法であって、
前記離型フィルムの前記第2面に、前記第1硬化性樹脂組成物および前記耐候剤を含有する第1組成物を塗工し、硬化させ、前記第1保護層を形成する第1保護層形成工程と、
前記第1保護層の前記離型フィルムとは反対側の面に、前記第2硬化性樹脂組成物および前記耐候剤を含有する第2組成物を塗工し、硬化させ、前記第2保護層を形成する第2保護層形成工程と、
を有する、転写シートの製造方法。
【0267】
[14]
[1]から[12]までのいずれかに記載の転写シートを準備する準備工程と、
前記転写シートの前記第2保護層側の面と、基体と、を対向させ、両者を密着させる密着工程と、
を有する、外装部材の製造方法。
【0268】
[15]
離型フィルム、第1保護層、第2保護層および基体を、厚さ方向において、この順に有し、
前記第1保護層は、第1硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、
前記第2保護層は、第2硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、
前記離型フィルムは、前記第1保護層側とは反対側に位置する第1面と、前記第1保護層側に位置する第2面と、を有し、
前記第1面の60°グロス値は、90以上であり、
前記第2面の60°グロス値は、40以下であり、
前記第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、150MPa以上、300MPa以下である、離型フィルム付外装部材。
【0269】
[16]
離型フィルム、第1保護層、第2保護層および基体を、厚さ方向において、この順に有し、
前記第1保護層は、第1硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、
前記第2保護層は、第2硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、
前記離型フィルムは、前記第1保護層側とは反対側に位置する第1面と、前記第1保護層側に位置する第2面と、を有し、
前記第1面の最大高さRzは、0.8μm以下であり、
前記第2面の最大高さRzは、2.0μm以上であり、
前記第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、150MPa以上、300MPa以下である、離型フィルム付外装部材。
【0270】
[17]
第1保護層、第2保護層および基体を、厚さ方向において、この順に有し、
前記第1保護層は、第1硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、
前記第2保護層は、第2硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、
前記第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、150MPa以上、300MPa以下であり、
前記第1保護層の前記第2保護層とは反対側の面の60°グロス値が、30以下である、外装部材。
【0271】
[18]
第1保護層、第2保護層および基体を、厚さ方向において、この順に有し、
前記第1保護層は、第1硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、
前記第2保護層は、第2硬化性樹脂組成物の硬化物および耐候剤を含有し、
前記第1保護層の断面におけるインデンテーション硬さは、150MPa以上、300MPa以下であり、
前記第1保護層の前記第2保護層とは反対側の面の最大高さRzが、1.5μm以上である、外装部材。