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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122620
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】産業車両
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
B66F9/24 L
B66F9/24 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030276
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 圭亮
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA02
3F333AB13
3F333FA09
3F333FA11
3F333FA29
3F333FD15
3F333FE05
3F333FE09
(57)【要約】
【課題】第1減速度制限と第2減速度制限とが干渉し合うことを抑制すること。
【解決手段】制御装置は、高揚高・重量物搬送・離席判定条件が成立した場合に第1減速度上限値を設定する第1減速度制限を実行する。制御装置は、距離条件が成立した場合に第2減速度上限値を設定する第2減速度上限値を設定する。制御装置は、高揚高・重量物搬送・離席判定条件が成立している場合、減速度上限値として第1減速度上限値を第2減速度上限値よりも優先して設定する優先制御を実行する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業車両であって、
設定された減速度上限値以下の減速度で前記産業車両を減速させる制御装置と、
前記産業車両と障害物との相対距離を検知する障害物検知部と、を備え、
前記制御装置は、
前記産業車両が高揚高の状態、荷の重量が閾値以上の状態、離席の検知、のうち少なくともいずれかの場合に成立する高揚高・重量物搬送・離席判定条件が成立した場合に第1減速度上限値を設定する第1減速度制限と、
前記産業車両と前記障害物との相対距離が予め定められた距離閾値未満である場合に成立する距離条件が成立した場合に第2減速度上限値を設定する第2減速度制限と、
前記高揚高・重量物搬送・離席判定条件が成立している場合、前記減速度上限値として前記第1減速度上限値を前記第2減速度上限値よりも優先して設定する優先制御と、を実行する、産業車両。
【請求項2】
前記産業車両は、荷役装置を備え、
前記高揚高・重量物搬送・離席判定条件は、前記荷役装置の揚高が予め定められた揚高閾値以上であることを含む、請求項1に記載の産業車両。
【請求項3】
前記産業車両は、
表示器と、
ユーザに操作されることによってアクセルオフ時の減速度上限値、及び前記第2減速度上限値の少なくとも1つを変更可能に構成された操作部と、を備え、
前記第2減速度上限値が前記アクセルオフ時の減速度上限値より高い場合、前記制御装置は、前記表示器に注意喚起表示を行う、請求項1又は請求項2に記載の産業車両。
【請求項4】
前記制御装置は、テレマティクス端末に予め定められた衝撃閾値以上の衝撃が加わった場合に第3減速度上限値を設定する第3減速度制限を実行し、
前記優先制御は、前記距離条件が成立している場合、前記減速度上限値として前記第2減速度上限値を前記第3減速度上限値よりも優先して設定することを含む、請求項1又は請求項2に記載の産業車両。
【請求項5】
前記制御装置は、バッテリが故障した場合に第4減速度上限値を設定する第4減速度制限を実行し、
前記優先制御は、前記距離条件が成立している場合、前記減速度上限値として前記第2減速度上限値を前記第4減速度上限値よりも優先して設定することを含む、請求項1又は請求項2に記載の産業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、産業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の産業車両は、障害物検知部と、制御装置と、を備える。障害物検知部は、産業車両と障害物との相対位置を検知する。制御装置は、障害物検知部の検知結果に応じて車速制限を行う。制御装置は、車速制限に合わせて減速度制限を行う。制御装置は、産業車両の減速度が減速度上限値以下になるように制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-93124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
産業車両では、産業車両の状況に応じて種々の減速度制限が行われる場合がある。この場合、各減速度制限では、異なる減速度上限値が設定され得る。減速度制限が行われる条件が複数成立した場合、減速度制限が干渉し合うおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する産業車両は、産業車両であって、設定された減速度上限値以下の減速度で前記産業車両を減速させる制御装置と、前記産業車両と障害物との相対距離を検知する障害物検知部と、を備え、前記制御装置は、前記産業車両が高揚高の状態、荷の重量が閾値以上の状態、離席の検知、のうち少なくともいずれかの場合に成立する高揚高・重量物搬送・離席判定条件が成立した場合に第1減速度上限値を設定する第1減速度制限と、前記産業車両と前記障害物との相対距離が予め定められた距離閾値未満である場合に成立する距離条件が成立した場合に第2減速度上限値を設定する第2減速度制限と、前記高揚高・重量物搬送・離席判定条件が成立している場合、前記減速度上限値として前記第1減速度上限値を前記第2減速度上限値よりも優先して設定する優先制御と、を実行する。
【0006】
制御装置は、高揚高・重量物搬送・離席判定条件が成立している場合、減速度上限値として第1減速度上限値を優先して設定する。このため、第1減速度制限と第2減速度制限とが干渉し合うことを抑制できる。
【0007】
上記産業車両について、前記産業車両は、荷役装置を備え、前記高揚高・重量物搬送・離席判定条件は、前記荷役装置の揚高が予め定められた揚高閾値以上であることを含んでいてもよい。
【0008】
上記産業車両について、前記産業車両は、表示器と、ユーザに操作されることによってアクセルオフ時の減速度上限値、及び前記第2減速度上限値の少なくとも1つを変更可能に構成された操作部と、を備え、前記第2減速度上限値が前記アクセルオフ時の減速度上限値より高い場合、前記制御装置は、前記表示器に注意喚起表示を行ってもよい。
【0009】
上記産業車両について、前記制御装置は、テレマティクス端末に予め定められた衝撃閾値以上の衝撃が加わった場合に前記減速度上限値として第3減速度上限値を設定する第3減速度制限を実行し、前記優先制御は、前記距離条件が成立している場合、前記減速度上限値として前記第2減速度上限値を前記第3減速度上限値よりも優先して設定することを含んでもよい。
【0010】
上記産業車両について、前記制御装置は、バッテリが故障した場合に前記減速度上限値として第4減速度上限値を設定する第4減速度制限を実行し、前記優先制御は、前記距離条件が成立している場合、前記減速度上限値として前記第2減速度上限値を前記第4減速度上限値よりも優先して設定することを含んでもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1減速度制限と第2減速度制限とが干渉し合うことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】フォークリフトの斜視図である。
図2図1のフォークリフトの概略構成図である。
図3図2の検知装置が行う障害物検知制御を示すフローチャートである。
図4図2の表示器に表示される変更用の画面の一例を示す図である。
図5図2の制御装置が行う優先制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、産業車両の一実施形態について説明する。
<フォークリフト>
図1に示すように、フォークリフト10は、車体11と、2つの駆動輪12,13と、2つの操舵輪14と、荷役装置20と、を備える。2つの駆動輪12,13は、車幅方向に離間して配置されている。2つの操舵輪14は、車幅方向に隣接して配置されている。2つの操舵輪14は、車幅方向において、駆動輪12,13同士の間の中央位置に配置されている。隣接して配置された2つの操舵輪14を1つの操舵輪14とみなすと、フォークリフト10は三輪式のフォークリフトとみなすことができる。フォークリフト10は、運転席15を備える。フォークリフト10は、運転席15に着座した運転者の操作によって動作する。以下の説明において、前後左右は、フォークリフト10の前後左右を示す。フォークリフト10は、産業車両の一例である。
【0014】
荷役装置20は、マスト21を備える。マスト21は、車体11の前部に設けられている。荷役装置20は、2つのフォーク22を備える。フォーク22には、荷Lが積載される。フォーク22は、マスト21に沿って昇降可能に設けられている。荷役装置20は、リフトシリンダ23を備える。リフトシリンダ23は油圧シリンダである。リフトシリンダ23の伸縮によってフォーク22は昇降する。
【0015】
図2に示すように、フォークリフト10は、制御装置31を備える。制御装置31は、プロセッサ32と、記憶部33と、を備える。プロセッサ32は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、又はDSP(Digital Signal Processor)である。記憶部33は、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)を含む。記憶部33には、フォークリフト10を動作させるためのプログラムが記憶されている。記憶部33は、処理をプロセッサ32に実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部33、すなわち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。制御装置31は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である制御装置31は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
【0016】
フォークリフト10は、アクセルペダル16を備える。アクセルペダル16は、フォークリフト10に搭乗した運転者によって操作される。
フォークリフト10は、アクセルセンサ34を備える。アクセルセンサ34は、アクセルペダル16の操作量を検知する。アクセルセンサ34は、アクセルペダル16の操作量に応じた電気信号を制御装置31に出力する。制御装置31は、アクセルセンサ34からの電気信号によりアクセルペダル16の操作量を認識可能である。
【0017】
フォークリフト10は、ディレクション操作部17を備える。ディレクション操作部17は、例えば、レバーである。ディレクション操作部17は、中立位置から前傾又は後傾する。
【0018】
フォークリフト10は、ディレクションセンサ35を備える。ディレクションセンサ35は、ディレクション操作部17の操作方向を検知する。ディレクションセンサ35は、ディレクション操作部17の操作方向に応じた電気信号を制御装置31に出力する。制御装置31は、ディレクションセンサ35からの電気信号によりディレクション操作部17の操作方向を認識可能である。
【0019】
フォークリフト10は、タイヤ角センサ36を備える。タイヤ角センサ36は、操舵輪14の操舵角を検知する。タイヤ角センサ36は、操舵角に応じた電気信号を制御装置31に出力する。制御装置31は、タイヤ角センサ36からの電気信号により操舵角を認識可能である。
【0020】
フォークリフト10は、揚高センサ37を備える。揚高センサ37は、荷役装置20の揚高が低揚高か高揚高かを制御装置31に判定させるためのセンサである。荷役装置20の揚高は、路面からフォーク22までの高さである。荷役装置20の揚高が予め定められた揚高閾値未満の場合、荷役装置20の揚高は低揚高である。荷役装置20の揚高が揚高閾値以上の場合、荷役装置20の揚高は高揚高である。揚高閾値は、任意に設定することができる。揚高センサ37は、例えば、荷役装置20の揚高が揚高閾値に達することでオンとオフとが切り替わるスイッチである。揚高センサ37は、荷役装置20の揚高を数値として検知できるものであってもよい。制御装置31は、揚高センサ37の電気信号から荷役装置20の揚高が低揚高か高揚高かを認識可能である。
【0021】
フォークリフト10は、荷重センサ38を備える。荷重センサ38は、フォーク22に積載された荷Lの重量に応じた電気信号を制御装置31に出力する。荷重センサ38は、例えば、リフトシリンダ23の内圧を検知する圧力センサである。制御装置31は、荷重センサ38の電気信号により荷Lの重量を認識可能である。
【0022】
フォークリフト10は、シートスイッチ39を備える。シートスイッチ39は、例えば、運転者が運転席15に着座しているか否かによってオンとオフとが切り替わるスイッチである。運転者が運転席15に着座している場合、シートスイッチ39はオンになる。運転者が運転席15から離席している場合、シートスイッチ39はオフになる。シートスイッチ39は、運転者が運転席15に着座しているか否かを制御装置31に判定されることができるものであればよく、例えば、感圧センサであってもよい。制御装置31は、シートスイッチ39からの電気信号により運転者が運転席15に着座しているか否かを認識できる。
【0023】
フォークリフト10は、テレマティクス端末40を備える。テレマティクス端末40は、通信網を介して外部機器と通信を行うための端末である。
テレマティクス端末40は、TCU(Telematics Control Unit)41を備える。TCU41は、テレマティクス端末40の制御を行う。TCU41のハードウェア構成は、例えば、制御装置31と同様であってもよい。
【0024】
テレマティクス端末40は、衝撃センサ42を備える。衝撃センサ42は、テレマティクス端末40に加わる衝撃の大きさを検知する。衝撃センサ42は、テレマティクス端末40に加わる衝撃の大きさに応じた電気信号をTCU41に出力する。衝撃センサ42は、例えば、加速度センサである。TCU41は、衝撃センサ42からの電気信号によりテレマティクス端末40に加わる衝撃の大きさを認識可能である。
【0025】
フォークリフト10は、走行用モータ51を備える。走行用モータ51の駆動により、駆動輪12,13が回転することでフォークリフト10は走行する。走行用モータ51は、駆動輪12,13毎に設けられている。
【0026】
フォークリフト10は、走行制御装置52を備える。走行制御装置52は、走行用モータ51の回転数を制御するモータドライバである。
フォークリフト10は、回転数センサ53を備える。回転数センサ53は、走行用モータ51の回転数を検知する。回転数センサ53は、例えば、ロータリエンコーダである。回転数センサ53は、走行用モータ51の回転数に応じた電気信号を走行制御装置52に出力する。走行制御装置52は、回転数センサ53の電気信号から走行用モータ51の回転数を認識可能である。
【0027】
フォークリフト10は、バッテリ61を備える。バッテリ61は、走行用モータ51、及び電装品の少なくとも1つの電力源である。バッテリ61は、充放電可能な二次電池である。バッテリ61は、例えば、リチウムイオン二次電池である。本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」または「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」または「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【0028】
フォークリフト10は、監視装置62を備える。監視装置62は、バッテリ61の監視を行う。監視装置62は、例えば、バッテリマネジメントシステムである。バッテリ61の監視は、例えば、バッテリ61の充電率、及びバッテリ61の故障の少なくとも1つの監視を含む。バッテリ61の故障は、バッテリ61の過放電、及びバッテリ61の過充電を含む。
【0029】
フォークリフト10は、障害物検知部71を備える。障害物検知部71は、障害物の位置を検知する。障害物検知部71は、ステレオカメラ72を備える。ステレオカメラ72は、2つのカメラを備える。ステレオカメラ72は、2つのカメラのそれぞれで撮像を行う。ステレオカメラ72は、フォークリフト10の上方からフォークリフト10の走行する路面を鳥瞰できるように配置されている。本実施形態のステレオカメラ72は、フォークリフト10の後方を撮像する。従って、障害物検知部71で検知される障害物は、フォークリフト10の後方の障害物である。フォークリフト10の前方を撮像するようにステレオカメラ72を設けてもよい。この場合、障害物検知部71は、フォークリフト10の前方の障害物を検知する。
【0030】
障害物検知部71は、検知装置73を備える。検知装置73のハードウェア構成は、例えば、制御装置31と同様である。
検知装置73は、以下の障害物検知制御を所定の制御周期で繰り返し行うことで、フォークリフト10の後方に存在する障害物とフォークリフト10との相対距離を検知する。
【0031】
<障害物検知制御>
図3に示すように、ステップS10において、検知装置73は、ステレオカメラ72から画像を取得する。
【0032】
次に、ステップS11において、検知装置73は、ステレオ処理を行うことで、視差画像を取得する。視差画像は、画素に対して視差[px]を対応付けたものである。
次に、ステップS12において、検知装置73は、実空間上の座標系であるワールド座標系における特徴点の座標を導出する。ワールド座標系は、フォークリフト10が水平面に位置している状態で水平方向のうちフォークリフト10の車幅方向に延びる軸をX軸、水平方向のうちX軸に直交する軸をY軸、鉛直方向に延びる軸をZ軸とする座標系である。検知装置73は、ステレオカメラ72の基線長、ステレオカメラ72の焦点距離、及びステップS11で得られた視差画像からカメラ座標系における特徴点の座標を導出する。カメラ座標系は、ステレオカメラ72を原点とする座標系である。検知装置73は、カメラ座標系における特徴点の座標をワールド座標系における座標に変換する。
【0033】
次に、ステップS13において、検知装置73は、特徴点をクラスタ化することで障害物の抽出を行う。検知装置73は、障害物の一部を表す点である特徴点のうち同一障害物を表していると想定される特徴点の集合を1つの点群とし、当該点群を障害物として抽出する。ステップS13で行われる特徴点のクラスタ化は種々の手法で行うことができる。障害物は、人、及び物体を含む。物体は、人以外の障害物である。
【0034】
次に、ステップS14において、検知装置73は、ワールド座標系における障害物の座標を導出する。障害物の座標は、点群を構成する特徴点の座標から導出可能である。ワールド座標系における障害物の座標は、フォークリフト10と障害物との相対位置を表している。詳細にいえば、ワールド座標系における障害物の座標のうちX座標は原点から障害物までの左右方向の距離を表す。ワールド座標系における障害物の座標のうちY座標は原点から障害物までの前後方向の距離を表す。ワールド座標系の原点は、例えば、X座標及びY座標をステレオカメラ72の配置位置とし、Z座標を路面とする座標である。X座標及びY座標から、ステレオカメラ72の配置位置から障害物までのユークリッド距離を導出することも可能である。ワールド座標系における障害物の座標のうちZ座標は、路面からの障害物の高さを表す。
【0035】
次に、ステップS15において、検知装置73は、人検知処理を行う。人検知処理は、障害物が人か否かを判定する処理である。本実施形態において、検知装置73は、ステレオカメラ72が備える2つのカメラのうちいずれかで撮像された画像に対して、人検知処理を行う。検知装置73は、ステップS14で得られたワールド座標系における障害物の座標をカメラ座標に変換し、当該カメラ座標をカメラによって撮像された画像の座標に変換する。検知装置73は、画像における障害物の座標に対して、人検知処理を行う。人検知処理は、例えば、特徴量を用いて行われる。検知装置73は、画像における障害物の座標の特徴量を抽出する。特徴量は、例えば、HOG(Histogram of Oriented Gradients)特徴量、又はHaar-Like特徴量である。検知装置73は、画像から抽出した特徴量を辞書データと比較することで障害物が人か否かを判定する。辞書データは、例えば、人が写る複数の画像のそれぞれから抽出された特徴量のデータである。ステップS15で人と判定されなかった障害物は、物体である。
【0036】
図2に示すように、障害物検知部71は、警報部74を備える。警報部74は、フォークリフト10の運転者に対して警報を行う装置である。警報部74は、音による警報を行うブザー75と、光による警報を行うランプ76と、を備える。
【0037】
フォークリフト10は、表示ユニット81を備える。表示ユニット81は、表示器82を備える。表示器82は、運転者の視認可能な位置に配置されている。表示ユニット81は、操作部83を備える。操作部83は、例えば、フォークリフト10の運転者が操作可能な位置に配置されている。操作部83は、物理ボタンであってもよいし、タッチパネルであってもよい。操作部83は、例えば、表示器82の表示内容を変更したり、フォークリフト10の各種設定値を変更したりする際に操作される。
【0038】
<制御装置が行う制御>
制御装置31、TCU41、走行制御装置52、監視装置62、及び検知装置73は、互いに情報を取得可能に構成されている。制御装置31、TCU41、走行制御装置52、監視装置62、及び検知装置73は、例えば、CAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)などの車両用の通信プロトコルに従った通信を行うことで、互いに情報を取得する。
【0039】
制御装置31は、フォークリフト10の車速[km/h]を導出する。フォークリフト10の車速は、駆動輪12,13毎に設けられた走行用モータ51それぞれの回転数及び回転方向、ギヤ比、駆動輪12,13の外径、タイヤ角センサ36により検知された操舵角などを用いることで導出可能である。走行用モータ51の回転数及び回転方向は、走行制御装置52から取得可能である。ギヤ比、及び駆動輪12,13の外径は、予め記憶部33に記憶しておけばよい。制御装置31は、フォークリフト10の進行方向を導出してもよい。フォークリフト10の進行方向は、前進方向及び後進方向のいずれかである。
【0040】
制御装置31は、警報指令を障害物検知部71に送信することで、警報部74を作動させる。詳細にいえば、障害物検知部71は、警報部74を作動させる作動部を備え、警報指令を受信すると作動部は警報部74を作動させる。
【0041】
<制御装置が行う車速制御>
制御装置31は、アクセルセンサ34の検知結果から目標車速を演算する。制御装置31は、目標車速から目標回転数を演算する。目標回転数は、フォークリフト10を目標車速に到達させるための回転数である。制御装置31は、目標回転数を示す情報を含む指令を生成する。制御装置31は、この指令を走行制御装置52に出力する。走行制御装置52は、指令による目標回転数に追従するように走行用モータ51を制御する。これにより、フォークリフト10は、目標車速に追従するように走行する。
【0042】
制御装置31は、車速制限を行う。例えば、制御装置31は、車速上限値[km/h]を設定することによって車速制限を行う。車速上限値は、フォークリフト10の到達し得る最高速度よりも低い値である。制御装置31は、アクセルセンサ34の検知結果から演算される目標車速が車速上限値未満の場合には、アクセルセンサ34の検知結果から演算される目標車速から目標回転数を演算する。制御装置31は、アクセルセンサ34の検知結果から演算される目標車速が車速上限値以上の場合には、目標車速に代えて車速上限値を用いて目標回転数を演算する。これにより、フォークリフト10の速度が車速上限値を上回ることを抑制できる。
【0043】
制御装置31は、車速制限に伴う減速の際に減速度制限を行う。制御装置31は、減速度上限値[m/s^2]を設定することによって減速度制限を行う。減速度上限値は、フォークリフト10の到達し得る最高減速度よりも低い値である。制御装置31は、フォークリフト10の減速度が減速度上限値を上回らないように制御を行う。例えば、制御装置31は、目標減速度を指示する指令を走行制御装置52に出力する。走行制御装置52は、フォークリフト10の減速度が目標減速度となるように走行用モータ51の回転数を制御する。制御装置31は、減速度上限値が設定されると、減速度上限値以下の値を目標減速度として走行制御装置52に出力する。これにより、フォークリフト10の減速度が減速度上限値を上回ることを抑制できる。
【0044】
制御装置31は、フォークリフト10の状況に応じて車速制限及び減速度制限を行う。車速制限で設定される車速上限値、及び減速度制限で設定される減速度上限値は、フォークリフト10の状況に応じて異なり得る。以下、フォークリフト10の状況に応じて行われる車速制限、及び減速度制限について説明する。
【0045】
<荷役装置の状況に応じた車速制限及び減速度制限>
荷役装置20の状況に応じた車速制限及び減速度制限について説明する。制御装置31は、荷役装置20の揚高及び荷Lの重量の少なくとも1つに基づいて車速制限及び減速度制限を行う。本実施形態において、制御装置31は、荷役装置20の揚高及び荷Lの重量に基づいて車速制限及び減速度制限を行う。制御装置31は、荷役装置20の揚高が高揚高の場合に荷Lの重量に応じて車速制限を行う。制御装置31は、荷役装置20の揚高が高揚高の場合に荷Lの重量が重くなるほど車速上限値を低くする。制御装置31は、荷Lの重量が重くなるにつれて連続的に車速上限値を低くしてもよいし、荷Lの重量が重くなるにつれて段階的に車速上限値を低くしてもよい。
【0046】
制御装置31は、荷役装置20の揚高が高揚高の場合に荷Lの重量が重いほど減速度上限値を低くする。制御装置31は、荷Lの重量に比例して連続的に減速度上限値を低くしてもよいし、荷Lの重量が重くなるにつれて段階的に減速度上限値を低くしてもよい。高揚高・重量物搬送・離席判定条件は、フォークリフト10が高揚高の状態、荷Lが閾値以上の状態、離席を検知する場合の少なくともいずれかが成立する条件である。
【0047】
荷役装置20の状況に応じた減速度制限で用いられる高揚高・重量物搬送・離席判定条件を第1高揚高・重量物搬送・離席判定条件とする。荷役装置20の状況に応じた減速度制限は、第1減速度制限の一例である。荷役装置20の状況に応じた減速度制限で設定される減速度上限値を荷役減速度上限値とする。荷役減速度上限値は、第1減速度上限値の一例である。
【0048】
荷役減速度上限値は、フォークリフト10が直進している場合と、フォークリフト10が旋回している場合とで異なる値が設定されてもよい。フォークリフト10が直進しているか旋回しているかは、操舵角から判定することができる。制御装置31は、フォークリフト10が旋回している場合、フォークリフト10が直進している場合よりも荷役減速度上限値を低くしてもよい。制御装置31は、旋回半径が小さいほど荷役減速度上限値を低くしてもよい。
【0049】
荷Lの重量に重量閾値が設定されていてもよい。そして、制御装置31は、荷役装置20の揚高が高揚高、かつ、荷Lの重量が重量閾値以上の場合に車速制限及び減速度制限を行ってもよい。この場合、荷役装置20の揚高が高揚高、かつ、荷Lの重量が重量閾値以上であることが第1高揚高・重量物搬送・離席判定条件である。
【0050】
<運転者の離席による車速制限及び減速度制限>
運転者の離席による車速制限及び減速度制限について説明する。制御装置31は、シートスイッチ39により運転者が運転席15に着座していないと認識すると、車速制限及び減速度制限を行う。運転者が離席している場合、高揚高・重量物搬送・離席判定条件が成立している。運転者の離席による減速度制限に用いられる高揚高・重量物搬送・離席判定条件を第2高揚高・重量物搬送・離席判定条件とする。運転者の離席による減速度制限は、第1減速度制限の一例である。運転者の離席による減速度制限で設定される減速度上限値を離席減速度上限値とする。離席減速度上限値は、第1減速度上限値の一例である。
【0051】
<障害物による車速制限及び減速度制限>
障害物による車速制限及び減速度制限について説明する。制御装置31は、検知装置73から障害物の位置を認識することができる。制御装置31は、フォークリフト10と障害物との相対距離が予め定められた距離閾値未満である場合に成立する距離条件が成立した場合に車速制限及び減速度制限を行う。例えば、フォークリフト10からフォークリフト10の後方に向けて拡がるエリアを設定することによって、当該エリア内を距離閾値未満とみなすことができる。そして、制御装置31は、エリア内に障害物が存在している場合に車速制限及び減速度制限を行う。制御装置31は、フォークリフト10から障害物までの距離が短くなるほど車速上限値及び減速度上限値を低くしてもよい。例えば、上記したエリアを第1減速エリアと、第1減速エリアよりもフォークリフト10から離れた第2減速エリアとに区切ってもよい。そして、障害物が第1減速エリアに位置している場合、障害物が第2減速エリアのみに位置している場合に比べて車速上限値及び減速度上限値を低くしてもよい。距離閾値は、任意に設定することができる。距離閾値は、例えば、フォークリフト10と障害物との相対距離が距離閾値の時点でフォークリフト10の減速を開始した場合に、フォークリフト10が障害物に到達する前に停止できる距離に設定されている。
【0052】
障害物による車速制限及び減速度制限は、障害物検知部71が障害物を検知する方向にフォークリフト10が進行している場合に行われてもよい。本実施形態であれば、障害物検知部71は、フォークリフト10の後方の障害物を検知する。このため、フォークリフト10が後進している場合にのみ障害物の位置に応じた車速制限及び減速度制限が行われてもよい。制御装置31は、走行用モータ51の回転方向から進行方向を判定してもよいし、ディレクション操作部17の操作方向から進行方向を判定してもよい。
【0053】
障害物による車速制限及び減速度制限は、フォークリフト10の予想軌跡上に障害物が位置している場合に行われてもよい。フォークリフト10の予想軌跡は、その時点での車速及び操舵角で進行を継続した場合にフォークリフト10が通過すると予想される場所である。制御装置31は、車速及び操舵角からワールド座標系での予想軌跡を導出する。これにより、制御装置31は、予想軌跡上に障害物が位置しているか否かを判定できる。
【0054】
制御装置31は、障害物が物体か人かによって車速上限値及び減速度上限値を異なる値にしてもよい。例えば、障害物が人の場合の車速上限値は、障害物が物体の場合の車速上限値より高くてもよい。例えば、障害物が物体の場合の減速度上限値は、障害物が人の場合の減速度上限値より高くてもよい。本実施形態において、減速度上限値はフォークリフト10の製造者、販売者、又は運転者が任意に変更可能である。例えば、製造者、販売者、又は運転者は、操作部83を操作することによって減速度上限値を変更可能である。製造者、販売者、又は運転者は、ユーザの一例である。減速度上限値は、フォークリフト10に接続可能な外部端末によって変更可能であってもよい。
【0055】
図4に示すように、フォークリフト10の製造者、販売者、又は運転者が減速度上限値を変更する場合、表示器82には変更用の画面が表示される。図4に示す例では、表示器82に項目表示A1と、減速度表示A2とが表示される。表示器82の表示内容は、制御装置31によって更新される。制御装置31は、表示器82を直接制御してもよい。表示ユニット81が表示器82を制御する表示コントローラを備える場合、制御装置31は、表示コントローラを介して表示器82を制御してもよい。
【0056】
項目表示A1には、操作部83の操作により変更可能な減速度上限値が表示される。図4に示す例では、アクセルオフ減速度上限値、人検知時の減速度上限値、及び物体検知時の減速度上限値が項目表示A1に表示されている。アクセルオフ減速度上限値は、アクセルオフ時、即ち、アクセルペダル16が操作されていない状態での減速度上限値である。人検知時の減速度上限値は、障害物による減速度制限が行われる場合に、当該障害物が人である場合の減速度上限値である。物体検知時の減速度上限値は、障害物による減速度制限が行われる場合に、当該障害物が物体である場合の減速度上限値である。
【0057】
減速度表示A2には、項目表示A1に表示された項目に対応した減速度上限値が表示される。本実施形態では、減速度上限値の大小に対応したレベルが減速度表示A2に表示される。レベルが高いほど減速度上限値が高い。レベルに対応した減速度上限値は予め定められている。操作部83を操作してレベルを変更することで、減速度上限値が変更される。即ち、本実施形態のフォークリフト10は、レベルを変更することによって段階的に減速度上限値を変更可能である。減速度上限値の変更は、減速度上限値の値自体を入力することによって行われてもよい。人検知時の減速度上限値は、アクセルオフ減速度上限値以下にする必要がある。物体検知時の減速度上限値は、アクセルオフ減速度上限値以下にする必要がある。人検知時の減速度上限値がアクセルオフ減速度上限値よりも高く変更された場合、人検知時の減速度上限値は、アクセルオフ減速度上限値と同一の値になる。物体検知時の減速度上限値がアクセルオフ減速度上限値よりも高く変更された場合、物体検知時の減速度上限値は、アクセルオフ減速度上限値と同一の値になる。アクセルオフ減速度上限値、又は人検知時の減速度上限値の変更により、人検知時の減速度上限値がアクセルオフ減速度上限値より高くなった場合、制御装置31は、注意喚起表示をしてもよい。注意喚起表示は、例えば、人検知時の減速度上限値に対応するレベルを点滅表示することで行われてもよいし、エラー表示を表示器82に表示することで行われてもよい。アクセルオフ減速度上限値、又は物体検知時の減速度上限値の変更により、物体検知時の減速度上限値がアクセルオフ減速度上限値より高くなった場合であっても、制御装置31は、注意喚起表示をしてもよい。アクセルオフ減速度上限値、人検知時の減速度上限値、及び物体検知時の減速度上限値のうち少なくとも1つが操作部83の操作によって変更可能であってもよい。
【0058】
障害物による減速度制限は、第2減速度制限である。障害物による減速度制限で設定される減速度上限値は、第2減速度上限値である。
障害物による車速制限及び減速度制限が行われる際には、警報部74による警報が行われてもよい。制御装置31は、障害物が人か物体かによって警報の態様を変更してもよい。警報の態様は、例えば、ランプ76及びブザー75の両方による警報、ランプ76及びブザー75の一方による警報、ランプ76の点滅間隔、又はブザー75が発する音の大きさである。制御装置31は、フォークリフト10と障害物との相対距離に応じて警報の態様を変更してもよい。
【0059】
<テレマティクス端末に衝撃が加わったことによる車速制限及び減速度制限>
テレマティクス端末40に衝撃が加わったことによる車速制限及び減速度制限について説明する。テレマティクス端末40に衝撃が加わると、制御装置31は、テレマティクス端末40から衝撃の大きさを示すデータを取得する。制御装置31は、テレマティクス端末40に加わった衝撃の大きさが予め定められた衝撃閾値以上の場合に成立する衝撃条件が成立した場合、車速制限及び減速度制限を行う。衝撃閾値は、任意に設定することができる。例えば、テレマティクス端末40の動作に影響を与え得る大きさの衝撃を衝撃閾値として設定すればよい。衝撃条件が成立するか否かの判定は、TCU41によって行われてもよい。この場合、TCU41は、衝撃条件が成立した場合に、その旨の通知を制御装置31に行えばよい。テレマティクス端末40に衝撃が加わったことによる減速度制限は、第3減速度制限である。テレマティクス端末40に衝撃が加わったことによる減速度制限により設定される減速度上限値は、第3減速度上限値である。
【0060】
<バッテリの故障に伴う車速制限及び減速度制限>
バッテリ61の故障に伴う車速制限及び減速度制限について説明する。監視装置62によりバッテリ61が故障したと判断されると、制御装置31は、監視装置62からバッテリ61が故障したことを示すデータを取得する。制御装置31は、バッテリ61が故障した場合に成立する故障条件が成立した場合、フォークリフト10の車速制限及び減速度制限を行う。バッテリ61の故障に伴う減速度制限は、第4減速度制限である。バッテリ61の故障に伴う減速度制限により設定される減速度上限値は、第4減速度上限値である。
【0061】
<優先制御>
上記したように、制御装置31は、フォークリフト10の状況に応じて種々の減速度制限を行う。フォークリフト10の状況によっては、減速度制限が行われる条件が複数成立する場合がある。例えば、距離条件及び高揚高・重量物搬送・離席判定条件の両方が成立する場合がある。各減速度制限では、異なる減速度上限値が設定され得るため、減速度上限値としていずれを優先して設定するかを定める必要がある。制御装置31は、以下の優先制御によっていずれの減速度上限値を優先して設定するかを定める。
【0062】
図5に示すように、ステップS21において、制御装置31は、高揚高・重量物搬送・離席判定条件が成立しているか否かを判定する。ステップS21の判定結果が肯定の場合、制御装置31は、ステップS22の処理を行う。ステップS21の判定結果が否定の場合、制御装置31は、ステップS23の処理を行う。本実施形態において、第1高揚高・重量物搬送・離席判定条件、及び第2高揚高・重量物搬送・離席判定条件の少なくとも1つが成立している場合に、ステップS21は肯定になる。
【0063】
ステップS22において、制御装置31は、減速度上限値として第1減速度上限値を設定する。制御装置31は、第1高揚高・重量物搬送・離席判定条件が成立しており、かつ、第2高揚高・重量物搬送・離席判定条件が不成立の場合、荷役減速度上限値を減速度上限値として設定する。制御装置31は、第2高揚高・重量物搬送・離席判定条件が成立しており、かつ、第1高揚高・重量物搬送・離席判定条件が不成立の場合、離席減速度上限値を減速度上限値として設定する。第1高揚高・重量物搬送・離席判定条件、及び第2高揚高・重量物搬送・離席判定条件のいずれも成立している場合に設定される減速度上限値は、荷役減速度上限値及び離席減速度上限値のいずれかを予め定めておけばよい。ステップS21及びステップS22によって、高揚高・重量物搬送・離席判定条件が成立している場合、減速度上限値として第2減速度上限値よりも第1減速度上限値が優先して設定される。
【0064】
ステップS23において、制御装置31は、距離条件が成立しているか否かを判定する。ステップS23の判定結果が肯定の場合、制御装置31は、ステップS24の処理を行う。ステップS23の判定結果が否定の場合、制御装置31は、ステップS25の処理を行う。
【0065】
ステップS24において、制御装置31は、減速度上限値として第2減速度上限値を設定する。ステップS23及びステップS24によって距離条件が成立している場合、減速度上限値として第3減速度上限値及び第4減速度上限値よりも第2減速度上限値が優先して設定される。
【0066】
ステップS25において、制御装置31は、衝撃条件及び故障条件の少なくとも1つが成立しているか否かを判定する。ステップS25の判定結果が肯定の場合、制御装置31は、ステップS26の処理を行う。ステップS25の判定結果が否定の場合、制御装置31は、優先制御を終了する。
【0067】
ステップS26において、制御装置31は、減速度上限値として第3減速度上限値、又は第4減速度上限値を設定する。衝撃条件が成立しており、かつ、故障条件が不成立の場合、制御装置31は、第3減速度上限値を減速度上限値として設定する。故障条件が成立しており、かつ、衝撃条件が不成立の場合、制御装置31は、第4減速度上限値を減速度上限値として設定する。衝撃条件及び故障条件のいずれも成立している場合に設定される減速度上限値は、第3減速度上限値及び第4減速度上限値のいずれかを予め定めておけばよい。
【0068】
上記した例では、高揚高・重量物搬送・離席判定条件が成立している場合、減速度上限値として第1減速度上限値が設定される。制御装置31は、高揚高・重量物搬送・離席判定条件及び距離条件の両方が成立する場合、第1減速度上限値及び第2減速度上限値のうち低い方の値を減速度上限値として設定してもよい。第2減速度上限値を変更可能な場合、第2減速度上限値が第1減速度上限値よりも低い値になる場合がある。このような場合、高揚高・重量物搬送・離席判定条件及び距離条件の両方が成立する場合、第2減速度上限値が減速度上限値として設定されてもよい。即ち、「減速度上限値として第1減速度上限値が優先して設定される」は、高揚高・重量物搬送・離席判定条件が成立している場合であって第1減速度上限値の方が第2減速度上限値よりも低い場合に、減速度上限値として第1減速度上限値が設定されることを意味する。また、距離条件が不成立の場合であって高揚高・重量物搬送・離席判定条件、衝撃条件及び故障条件が成立する場合、第1減速度上限、第3減速度上限値、第4減速度上限値のうち最も低い値が減速度上限値として設定されてもよい。「減速度上限値として第2減速度上限値が優先して設定される」は、距離条件が成立している場合に、減速度上限値として第2減速度上限値が設定されることを意味する。即ち、距離条件が成立している場合、衝撃条件及び故障条件の成立に関わらず減速度上限値として第2減速度上限値が設定される。
【0069】
[本実施形態の作用]
距離条件が成立した場合に、フォークリフト10を迅速に停止させるため、第2減速度上限値を大きくしたい場合がある。第2減速度上限値を大きくした場合、大きい減速度での減速が許容されるため、フォークリフト10の迅速な停止が可能になる。一方で、高揚高・重量物搬送・離席判定条件が成立する場合、フォークリフト10の急減速を抑制するために第1減速度上限値を大きい値にすることができない。仮に、高揚高・重量物搬送・離席判定条件及び距離条件の両方が成立した場合に、第2減速度上限値が減速度上限値として設定された場合、大きい減速度での減速が好ましくない場合がある。
【0070】
制御装置31は、高揚高・重量物搬送・離席判定条件が成立している場合、減速度上限値として第1減速度上限値を第2減速度上限値よりも優先して設定する。これにより、高揚高・重量物搬送・離席判定条件が不成立であって距離条件が成立する場合には、第2減速度上限値による大きい減速度での減速を許容しつつ、高揚高・重量物搬送・離席判定条件が成立する場合には第1減速度上限値による緩やかな減速が可能になる。
【0071】
[本実施形態の効果]
(1)制御装置31は、高揚高・重量物搬送・離席判定条件が成立している場合、減速度上限値として第1減速度上限値を第2減速度上限値よりも優先して設定する。第1減速度制限と第2減速度制限とが干渉し合うことを抑制できる。
【0072】
(2)高揚高・重量物搬送・離席判定条件は、荷役装置20の揚高が予め定められた揚高閾値以上であることを含む。荷役装置20の揚高が高いほど、フォークリフト10の高揚高・重量物搬送・離席は低くなりやすい。この場合に高揚高・重量物搬送・離席判定条件が成立するようにすることで、緩やかな減速が求められる場合に第1減速度上限値を優先して設定することができる。
【0073】
(3)制御装置31は、第2減速度上限値がアクセルオフ減速度上限値より高い場合、表示器82に注意喚起表示を行う。距離条件が成立した場合、制御装置31は、車速制限及び減速度制限を行う。また、制御装置31は、警報を行う場合がある。これにより、フォークリフト10の運転者は、アクセルペダル16の操作を解除する。この際、第2減速度上限値がアクセルオフ減速度上限値よりも高いと、アクセルペダル16の操作を解除したことによって減速度上限値が低くなる。アクセルペダル16の操作を解除したにも関わらず減速が緩やかになることによって、運転者の操作感に違和感を与えるおそれがある。第2減速度上限値がアクセルオフ減速度上限値より高い場合に、表示器82に注意喚起表示を行うことで、第2減速度上限値の設定が有効でないことを通知することができる。
【0074】
(4)制御装置31は、距離条件が成立している場合、減速度上限値として第2減速度上限値を第3減速度上限値よりも優先して設定する。第2減速度制限と第3減速度制限とが干渉し合うことを抑制できる。
【0075】
(5)制御装置31は、距離条件が成立している場合、減速度上限値として第2減速度上限値を第4減速度上限値よりも優先して設定する。第2減速度制限と第4減速度制限とが干渉し合うことを抑制できる。
【0076】
[変更例]
実施形態は、以下のように変更して実施することができる。実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0077】
○制御装置31は、バッテリ61の故障に伴う車速制限及び減速度制限を行わなくてもよい。
○制御装置31は、テレマティクス端末40に衝撃が加わったことによる車速制限及び減速度制限を行わなくてもよい。
【0078】
○制御装置31は、第2減速度上限値をアクセルオフ減速度上限値より高く変更した場合であっても、注意喚起表示を行わないようにしてもよい。制御装置31は、注意喚起表示に代えて音声による注意喚起を行ってもよい。
【0079】
○第2減速度上限値は、変更不能であってもよい。
○制御装置31は、荷役装置20の状況に応じた減速度制限、及び運転者の離席による減速度制限の一方のみを行ってもよい。
【0080】
○制御装置31が荷役装置20の揚高に基づいて車速制限及び減速度制限を行う場合、制御装置31は、揚高が高くなるにつれて連続的に車速上限値を低くしてもよいし、揚高の高くなるにつれて段階的に車速上限値を低くしてもよい。制御装置31は、揚高が高くなるにつれて連続的に減速度上限値を低くしてもよいし、揚高が高くなるにつれて段階的に減速度上限値を低くしてもよい。
【0081】
○第1高揚高・重量物搬送・離席判定条件は、荷Lの重量が重量閾値以上であることでもよい。
○障害物検知部71は、ステレオカメラ72に代えて、単眼カメラ、ToF(Time of Flight)カメラ、LIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)、又はミリ波レーダーを備えていてもよい。障害物検知部71は、ステレオカメラ72とLIDAR等、複数のセンサを組み合わせたものを備えていてもよい。
【0082】
○警報部74は、障害物検知部71以外が備えていてもよい。
○警報部74は、制御装置31が直接作動させるようにしてもよい。
○フォークリフト10は、ディレクション操作部17の操作量に応じて車速が変化するものであってもよい。この場合、アクセルオフ減速度上限値は、ディレクション操作部17が操作されていない状態での減速度上限値である。
【0083】
○産業車両は、トーイングトラクタであってもよい。その場合、高揚高・重量物搬送・離席判定条件は、運転者が離席をしているか否かを判定する。
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
【0084】
[態様1]産業車両であって、設定された減速度上限値以下の減速度で前記産業車両を減速させる制御装置と、前記産業車両と障害物との相対距離を検知する障害物検知部と、を備え、前記制御装置は、前記産業車両が高揚高の状態、荷の重量が閾値以上の状態、離席の検知、のうち少なくともいずれかの場合に成立する高揚高・重量物搬送・離席判定条件が成立した場合に第1減速度上限値を設定する第1減速度制限と、前記産業車両と前記障害物との相対距離が予め定められた距離閾値未満である場合に成立する距離条件が成立した場合に第2減速度上限値を設定する第2減速度制限と、前記高揚高・重量物搬送・離席判定条件が成立している場合、前記減速度上限値として前記第1減速度上限値を前記第2減速度上限値よりも優先して設定する優先制御と、を実行する。
【0085】
[態様2]前記産業車両は、荷役装置を備え、前記高揚高・重量物搬送・離席判定条件は、前記荷役装置の揚高が予め定められた揚高閾値以上であることを含む、[態様1]に記載の産業車両。
【0086】
[態様3]前記産業車両は、表示器と、ユーザに操作されることによってアクセルオフ時の減速度上限値、及び前記第2減速度上限値の少なくとも1つを変更可能に構成された操作部と、を備え、前記第2減速度上限値が前記アクセルオフ時の減速度上限値より高い場合、前記制御装置は、前記表示器に注意喚起表示を行う、[態様1]又は[態様2]に記載の産業車両。
【0087】
[態様4]前記制御装置は、テレマティクス端末に予め定められた衝撃閾値以上の衝撃が加わった場合に前記減速度上限値として第3減速度上限値を設定する第3減速度制限を実行し、前記優先制御は、前記距離条件が成立している場合、前記減速度上限値として前記第2減速度上限値を前記第3減速度上限値よりも優先して設定することを含む、[態様1]~[態様3]のうちいずれか1つに記載の産業車両。
【0088】
[態様5]前記制御装置は、バッテリが故障した場合に前記減速度上限値として第4減速度上限値を設定する第4減速度制限を実行し、前記優先制御は、前記距離条件が成立している場合、前記減速度上限値として前記第2減速度上限値を前記第4減速度上限値よりも優先して設定することを含む、[態様1]~[態様4]のうちいずれか1つに記載の産業車両。
【符号の説明】
【0089】
10…産業車両であるフォークリフト、20…荷役装置、31…制御装置、40…テレマティクス端末、61…バッテリ、71…障害物検知部、82…表示器、83…操作部。
図1
図2
図3
図4
図5