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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122621
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 5/02 20060101AFI20240902BHJP
   G01N 27/12 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
G01N5/02 A
G01N27/12 B
G01N27/12 L
G01N27/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030277
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】槇 恒
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和紀
【テーマコード(参考)】
2G046
【Fターム(参考)】
2G046AA04
2G046AA10
2G046AA13
2G046AA23
2G046AA24
2G046AA26
2G046BA01
2G046BB02
2G046BJ01
2G046BJ06
2G046FA01
2G046FB01
2G046FB06
2G046FE03
2G046FE05
2G046FE09
2G046FE11
2G046FE25
2G046FE38
2G046FE48
(57)【要約】
【課題】複数のセンサ間の温度の差を抑制することが可能な検出装置を提供する。
【解決手段】検出装置100は、気体のにおいの原因となる物質を検出する複数のセンサ10と、複数のセンサ10を収納する収納室20と、収納室の下面の少なくとも一部を形成し、上面に複数のセンサ10が設けられたセンサ基板32と、センサ基板32上に設けられ、複数のセンサ10を露出する開口38を有し、センサ基板32の上面に接触するカバー35と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体中のにおいの原因となる物質を検出する複数のセンサと、
前記複数のセンサを収納する収納室と、
前記収納室の下面の少なくとも一部を形成し、上面に前記複数のセンサが設けられたセンサ基板と、
前記センサ基板上に設けられ、前記複数のセンサを露出する開口を有し、前記センサ基板の上面に接触するカバーと、
を備える検出装置。
【請求項2】
前記センサ基板は、互いに隣接し複数設けられており、前記カバーは、前記複数のセンサ基板の各々の上面に接触する請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記カバーは、前記複数のセンサ基板の各々の前記上面の周縁領域に設けられる請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記複数のセンサ基板の下方に、前記複数のセンサ基板と電気的に接続される回路基板を備え、
前記複数のセンサ基板は前記回路基板から着脱可能である請求項2または3に記載の検出装置。
【請求項5】
前記開口は前記複数のセンサごとに設けられている請求項1から3のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項6】
前記複数のセンサの各々と前記開口の側面との最短距離は、前記センサの最大幅より小さい請求項5に記載の検出装置。
【請求項7】
前記センサ基板の上面には導電体パターンが設けられ、
前記カバーの少なくとも下面は絶縁性である、または前記カバーと前記導電体パターンとの間に絶縁層を有する請求項1から3のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項8】
前記導電体パターンは、前記複数のセンサの少なくとも1つ、または前記複数のセンサの少なくとも1つと電気的に接続された回路の一部を構成する素子の、周囲に設けられるパッドである請求項7に記載の検出装置。
【請求項9】
前記カバーの少なくとも一部の層の熱伝導率は、前記センサ基板内の絶縁層の熱伝導率より高い請求項1から3のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項10】
前記収納室の下面の一部を上面とする下壁部を有し、前記下壁部はキャビティを有し、平面視において、前記キャビティの内部に前記センサ基板が設けられ、前記センサ基板と前記カバーとで前記収納室を形成する筐体と、
前記カバーを、前記下壁部に取り付ける取り付け部材と、
を備え、
前記センサ基板の上面と前記下壁部の上面との高さの差は、前記カバーの厚さの1/10以下である請求項1から3のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項11】
前記カバーの厚さは、前記センサの厚さの1/2倍以上かつ2倍以下である請求項1から3のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項12】
温度センサまたは湿度センサである環境センサが上面に設けられた環境センサ基板をさらに備え、
前記カバーは、前記複数のセンサ基板の各々の上面と、前記環境センサ基板の上面と、に接触し、前記開口は前記複数のセンサおよび前記環境センサとを露出する請求項2または3に記載の検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
におい等の気体に関する情報を検出する検出装置が知られている(例えば特許文献1および2)。気体が流れる流路を形成する面の一部を、複数のセンサが搭載された基板により形成することが知られている(例えば特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/172592号
【特許文献2】特開2020-193846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数のセンサが実装される基板は熱伝導率が低い。このため、複数のセンサ間の温度の差が大きくなる。これにより、気体に関する情報等の検出精度が低下してしまう。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、複数のセンサ間の温度の差を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、気体中のにおいの原因となる物質を検出する複数のセンサと、前記複数のセンサを収納する収納室と、前記収納室の下面の少なくとも一部を形成し、上面に前記複数のセンサが設けられたセンサ基板と、前記センサ基板上に設けられ、前記複数のセンサを露出する開口を有し、前記センサ基板の上面に接触するカバーと、を備える検出装置である。
【0007】
上記構成において、前記センサ基板は、互いに隣接し複数設けられており、前記カバーは、前記複数のセンサ基板の各々の上面に接触する構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記カバーは、前記複数のセンサ基板の各々の前記上面の周縁領域に設けられる構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記複数のセンサ基板の下方に、前記複数のセンサ基板と電気的に接続される回路基板を備え、前記複数のセンサ基板は前記回路基板から着脱可能である構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記開口は前記複数のセンサごとに設けられている構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記複数のセンサの各々と前記開口の側面との最短距離は、前記センサの最大幅より小さい構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記センサ基板の上面には導電体パターンが設けられ、前記カバーの少なくとも下面は絶縁性である、または前記カバーと前記導電体パターンとの間に絶縁層を有する構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記導電体パターンは、前記複数のセンサの少なくとも1つ、または前記複数のセンサの少なくとも1つと電気的に接続された回路の一部を構成する素子の、周囲に設けられるパッドである構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記カバーの少なくとも一部の層の熱伝導率は、前記センサ基板内の絶縁層の熱伝導率より高い構成とすることができる。
【0015】
上記構成において、前記収納室の下面の一部を上面とする下壁部を有し、前記下壁部はキャビティを有し、平面視において、前記キャビティの内部に前記センサ基板が設けられ、前記センサ基板と前記カバーとで前記収納室を形成する筐体と、前記カバーを、前記下壁部に取り付ける取り付け部材と、を備え、前記センサ基板の上面と前記下壁部の上面との高さの差は、前記カバーの厚さの1/10以下である構成とすることができる。
【0016】
上記構成において、前記カバーの厚さは、前記センサの厚さの1/2倍以上かつ2倍以下である構成とすることができる。
【0017】
上記構成において、温度センサまたは湿度センサである環境センサが上面に設けられた環境センサ基板をさらに備え、前記カバーは、前記複数のセンサ基板の各々の上面と、前記環境センサ基板の上面と、に接触し、前記開口は前記複数のセンサおよび前記環境センサとを露出する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、温度または湿度に基づく補正を適正に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、実施例1における検出装置の断面図である。
図2】比較例1における検出装置の断面図である。
図3図3は、実施例2に係る検出装置の断面図である。
図4図4は、実施例2に係る検出装置の平面図である。
図5図5は、実施例2に係る検出装置の平面図である。
図6図6は、実施例2に係る検出装置の平面図である。
図7図7は、実施例2におけるセンサの模式図である。
図8図8は、実施例2に係る検出装置のブロック図である。
図9図9(a)および図9(b)は、実験1における時間に対するセンサの温度を示す図である。
図10図10は、実施例2に係る検出装置の別の例の平面図である。
図11図11は、実施例2に係る検出装置の拡大平面図である。
図12図12(a)から図12(c)は、実施例2に係る検出装置の拡大断面図である。
図13図13(a)から図13(c)は、実施例2に係る検出装置の拡大断面図である。
図14図14は、実施例2に係る検出装置の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照し実施例について説明する。
【実施例0021】
図1は、実施例1における検出装置100の断面図である。検出装置100は、筐体40と、複数のセンサ基板32と、複数のセンサ10と、カバー35とを備える。筐体40、センサ基板32およびカバー35の内壁は空間45を形成する。筐体40、センサ基板32およびカバー35により囲まれた空間45は、センサ10を収納する収納室20である。センサ10は、後述するが、気体内のにおいの原因となる物質を検出するにおいセンサである。複数のセンサ10は、複数のセンサ基板32上にそれぞれ実装されている。センサ10を交換するときにセンサ基板32ごと交換することにより、センサ10の交換が容易になるためである。
【0022】
空間45を形成する収納室20は、上面、上面とつながる側面、および側面とつながる下面と、を有する。上面と側面は筐体40の内壁である。下面は筐体40の内壁と、カバー35の上面と、複数のセンサ基板32の上面とを含み、センサ10の一部が露出している。ここで、センサ基板32の上面が空間45に露出せずに、センサ10の一部のみが空間45に露出してもよい。筐体40は、収納室20の下面の一部を上面とし、筐体40の内壁を上面とする下壁部40cを有する。筐体40の下壁部40cは開口42を有する。開口42はキャビティである。センサ基板32は、少なくともセンサ10の一部が収納室20に露出するように、開口42の内部に設けられている。センサ基板32は、後述する、ピン33を介し回路基板31と接続される。開口42は、センサ基板32を交換するために形成しているため、交換の必要がない場合は、開口42を設けずに、下壁部40cの上面または側面に、センサ基板32を設けることもできる。
【0023】
筐体40の下壁部40cおよびセンサ基板32上にカバー35が設けられている。カバー35は開口38を有している。センサ10のうち少なくとも感応膜16は開口38から空間45に露出する。カバー35の下面は、下壁部40cおよびセンサ基板32の上面に接触する。カバー35は、センサ基板32の上面に少なくとも一部が接触すればよい。空間45には、導入路21より検出すべき気体50が導入され、空間45から排出路24より気体52が排出される。
【0024】
(発明の概要)
感応膜16は、においの原因となる物質が吸着および脱離する。その結果、センサ10の発振周波数、抵抗または電気容量などの電気的特性が変化する。電気的特性の変化を測定することで、においの原因となる物質の検出が可能となる。しかし、感応膜16への物質の吸着および脱離の量は、温度により変動する。また、温度によりセンサ10の電気的特性が変化し、測定値が変化する。例えば、センサ10の発振周波数を測定するセンサにおいては、センサ10の発振周波数は、温度に起因して変化する。
【0025】
また、測定空間に流れ込む気体は均一ではなく、気体中の濃度分布および温度分布が生じる。気体の温度が変化すれば、相対湿度の変化するため、気体に温度分布があれば、気体の相対湿度に分布が生じる。
【0026】
センサ10、センサ10を実装するセンサ基板32、および、センサ基板32の下方に位置するマザー基板(図3の回路基板31)も、動作することにより温度が上昇する。センサ基板32または回路基板31には、電源や発振回路を構成する部品が実装されており、センサ基板32または回路基板31の一部では、より顕著に熱が発生する。さらに、センサ基板32のサイズが大きくなり、隣接するセンサ10間の距離が大きくなると、それぞれのセンサ10を同じ温度にすることが難しくなる。
【0027】
また、センサ10の検出精度を高めるために、湿度センサおよび/または温度センサ(以降、センサ18という。図3から図6を参照)をセンサ10の近傍に配置して、センサ10の出力信号を、湿度および/または温度を用い補正する。これにより、センサ10の検出精度を高めている。センサ10同士と同様に、センサ18とセンサ10との温度差が小さいことが好ましい。
【0028】
以上の点を考慮すると、複数のセンサ10の温度を均一にすることが求められる。実施例では、これを解決するため、熱伝導の優れたカバー35を採用した。
【0029】
カバー35の説明:カバー35は、表面(上面)と裏面(下面)を少なくとも有するシート状、または板状のものである。カバー35は、熱伝導の優れた材料であればよく、金属層、セラミック層もしくは樹脂層、またはそれらの複合層である。カバー35は、例えば、センサ基板32に対する絶縁性の確保、または筐体40への固定のため、一部の層の熱伝導が優れてなくてもよい。セラミック層または樹脂層の材料としては、金属の熱伝導率に近い熱伝導率を有するものが採用されることが好ましい。金属のカバー35の場合、センサ基板32の導電体パターンとのショートを考え、下面が絶縁処理されたものか、またはカバー35とセンサ基板32との間に薄い絶縁シートが挿入される。
【0030】
カバー35の態様:カバー35には、センサ10の感応膜16を測定空間45に露出させるため、開口38が設けられている。感応膜16の上面は、カバー35の上面と面一、カバー35の上面から若干凹む、または、カバー35の上面から多少突出する。カバー35は、少なくとも複数のセンサ基板32を覆う。センサ基板32の上面の少なくとも一部とカバー35の下面の少なくとも一部とが、接触している。さらに、カバー35は、センサ10が実装されたセンサ基板32とセンサ18が実装されたセンサ基板32とを覆い、センサ18を実装するセンサ基板32の上面の少なくとも一部とカバー35の下面の少なくとも一部とが、接触している。
【0031】
カバー35を介し、センサ基板32間を熱が伝送しやすくなる。これにより、カバー35が接触しているセンサ基板32近傍の気体の温度およびカバー35の開口38の内部の気体の温度が均一化する。温度が均一化された気体はセンサ10の感応膜16に供給される。特に、センサ10は、カバー35の開口38から露出されている。このため、センサ10に供給される気体の温度はほぼ均一となり、複数のセンサ10間の温度差が減少する。また、センサ10とセンサ18の温度差が減少する。
【0032】
(センサ10を実装するセンサ基板32)
センサ基板32は、一般にはプリント基板であり、例えば、エポキシ系もしくはイミド系などの樹脂基板、アルミナもしくはベリリアなどのセラミック基板、または、上面が絶縁処理された金属基板もしくはシリコンなどの半導体基板である。センサ基板32では、少なくとも1層の導電体パターンが上面に設けられ、導電体パターンの酸化防止のために、センサ基板32の上面に絶縁膜が被覆されている。絶縁膜は、例えば、エポキシ系のソルダーレジストである。センサ基板32が半導体基板の場合には、絶縁膜は、ソルダーレジスト以外に、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜またはガラス膜などである。よって、センサ基板32の最上面は、パシベーション膜となる膜が覆われている。また場合によっては、センサ基板32の最上面は、グランド電位が供給される金属シールド膜であってもよい。
【0033】
(センサの温度差の縮小化)
センサ10およびセンサ基板32などは、電気的に動作するため、熱が発生する。発生する熱の量は、センサ10およびセンサ基板32を含む回路の大きさの違い、その回路に流れる電流の大小により大きく異なる。しかし、カバー35がセンサ基板32の最上面に接触すれば、センサ10およびセンサ基板32において発生した熱はカバー35に伝導する。カバー35は高い熱伝導率を有するため、カバー35内の温度はほぼ均一となる。これにより、センサ10同士の温度差が小さくなるとともに、センサ10近傍の気体の温度の分布も小さくすることができる。
【0034】
なお、カバー35とセンサ基板32との接触は、以下の態様を含む。センサ基板32の最上面が絶縁膜の場合、カバー35の最下面は金属でも絶縁体でもよく、カバー35の下面はセンサ基板32の最上面の絶縁膜に接触する。センサ基板32の最上面の一部が導電体の場合、カバー35の最下面は絶縁体であり、カバー35の下面はセンサ基板32の最上面の導電体に接触する。
【0035】
(比較例1)
図2は、比較例1における検出装置110の断面図である。カバー35が設けられていない以外は、図1の実施例と同じ構成である。
【0036】
以下に、比較例における課題について説明する。
(課題1)
検出装置110では、センサ10同士の熱の伝導は、図2の破線矢印58aのように、センサ基板32を介して行われる。センサ基板32の絶縁層の材料は例えばガラスエポキシ樹脂であり、熱伝導率が低い。また、センサ基板32がセンサ10ごとに設けられていると、センサ基板32の間に隙間34aが生じ、さらに熱伝導しにくくなる。このため、センサ10同士の熱交換が行われず、センサ10の温度差が大きくなってしまう。よって、複数のセンサ10の出力に基づき、においまたは特定の物質の濃度などを算出する場合、気体に関する情報の検出精度が低下してしまう。
【0037】
(課題2)
センサ10と筐体40との間の熱の伝導は、図2の破線矢印58bのように、センサ基板32および筐体40を介して行われる。しかし、センサ基板32と下壁部40cとの間、つまり当接部に隙間34bが存在したり、絶縁材が存在したりする場合がある。この場合、筐体40とセンサ基板32との間の熱伝導が難しくなり、センサ10間の温度差、筐体40とセンサ10との温度差が拡大してしまう。
【0038】
(課題3)
検出装置110では、隙間34aおよび34bが形成される。このため、図2の矢印59のように、隙間34aおよび34bを介し収納室20内の気体と、センサ基板32の下方の気体が、両者の温度関係により、出入りする。例えば、センサ基板32の下方にマザー基板が設けられていると、マザー基板に設けられた電源回路によりマザー基板の近傍の気体の温度が高くなる。この場合、センサ基板32下方の空間の気体が、収納室20内に流入する。このような気体の出入りにより、センサ10近傍の気体の温度およびにおいの原因となる物質の濃度が乱れ、測定感度が低下する。
【0039】
(課題4)
センサ基板32はガラスエポキシ樹脂等の有機絶縁体であり、また最上面には、エポキシ系のソルダーレジスト等の有機被膜が被覆されている。これら有機物は、においの原因となる物質および水分を吸着したり脱離したりする。この吸着および脱離の現象は、温度によっても増減し、収納室20内のセンサ10近傍の気体の温度およびにおいの原因となる物質の濃度に外乱を与えてしまう。
【0040】
(実施例1による対策の説明)
(センサ10、センサ18が実装されるセンサ基板32の配置)
図5に示すように、複数のセンサ10のそれぞれ搭載された複数のセンサ基板32は、センサ10のサイズが同じであることから、センサ基板32のサイズは全てほぼ同じで矩形である。また、センサ18が搭載されたセンサ基板32の大きさも同じことが好ましいが、図5では、センサ18が搭載されたセンサ基板32のサイズはセンサ10が搭載されたセンサ基板32のサイズの約2倍である。なお、センサ18が搭載されたセンサ基板32とセンサ10が搭載されたセンサ基板32とのX方向のサイズは、ほぼ同じである。
【0041】
トランプのように同じサイズのものを縦横に並べるビルディングブロック方式のように、センサ基板32を整然と並べる場合に、センサ基板32の間には隙間34aが生じないように設計する。例えば、センサ基板32を行列状に配列する。しかし、センサ基板32の製造誤差などにより、センサ基板32間に隙間34aが発生することがある。
【0042】
(対策1および2)
実施例1の検出装置100では、カバー35の下面の少なくとも一部が複数のセンサ基板32の各々の上面の一部に接触する。これにより、図1の矢印56aのように、センサ10の間は、センサ基板32とカバー35を介し面方向に熱伝導する。さらに、矢印56bのように、センサ10の間は、センサ基板32を介さずに、カバー35の開口38内の気体を介して熱伝導する。よって、検出感度を向上できる。また、矢印57aのように、センサ10と筐体40とは、センサ基板32とカバー35を介し面方向に熱伝導する。さらに、矢印57bのように、センサ10と筐体40との間は、センサ基板32を介さずに、カバー35の開口38内の気体を介して熱伝導する。よって、検出感度を向上できる。
【0043】
(対策3)
実施例1の検出装置100では、センサ基板32の間の隙間34a上、およびセンサ基板32と下壁部40cとの間の隙間34b上にカバー35が設けられている。これにより、隙間34aおよび34b介して収納室20内に気体が出入りすることを抑制できる。一般には、センサ基板32の下には、マザー基板があり、このマザー基板には電源回路が設けられている。そのため、電源で暖められた気体が収納室20へ入ることが考えられるが、カバー35を設けることで、収納室20内へ暖められた気体が流入することを抑制することが可能である。これにより、外乱の影響による検出感度が低下することを抑制できる。
【0044】
(対策4)
実施例1の検出装置100では、センサ基板32の上面を覆うようにカバー35が設けられている。このカバー35が、例えばステンレスなどであれば、カバー35の空間45に露出する面には、センサ基板32の上面よりも、気体分子が吸着しにくい。これにより、検出精度の低下を抑制できる。
【実施例0045】
実施例2は、実施例1の具体例である。
図3は、検出装置102の断面図、図4から図6は、実施例2に係る検出装置102の平面図である。図3は、図4から図6のA-A断面に相当する。図4は、筐体40aを上から見た平面図である。図5は、下壁部40cの開口42内にセンサ基板32を配置した状態を上から見た平面図である。図6は、センサ基板32上にカバー35を配置した状態を上から見た平面図である。センサ基板32の厚さ方向をZ方向、センサ基板32の配列方向をX方向およびY方向とする。
【0046】
図3から図6に示すように。筐体40は、筐体40aと40bとを有している。筐体40aのうち収納室20の下の部分は下壁部40cである。筐体40aと40bとは例えばネジ等により接合されている。筐体40aと、40bと、複数のセンサ基板32と、複数のセンサ10と、カバー35と、により空間45が形成される、空間45を囲む筐体40の内面は収納室20を形成する。筐体40aの下壁部40cには開口42と開口42の上下(±X方向)に凹部43および44が設けられている。開口42内に複数のセンサ基板32が図3の上下方向(X方向)および左右方向(Y方向)に配列されている。センサ基板32の上面にセンサ10が設けられている。最も上側(+X側)のセンサ基板32の上面にはセンサ18が設けられている。センサ10は、気体内の特定の物質(分子など)を検出するセンサである。センサ18は、気体の温度、湿度および圧力等の環境に関する指標を検出するセンサである。
【0047】
複数のセンサ基板32は、平面視で見ると、開口42内に敷き詰められており、センサ基板32の上面は収納室20の下面の少なくとも一部を形成する。センサ基板32の下には、センサ10と電気的に接続されたピン33が埋設されている。筐体40aの下に回路基板31(マザー基板)が設けられている。筐体40aの下面と回路基板31とは接合部41により接合されている。ピン33は、回路基板31と着脱可能な構造である。ピン33は、回路基板31から引き抜いて、着脱することができる。ピン33自体を、センサ基板32から引き抜く構造としてもよい。センサ基板32の裏面に、コネクタを取り付けて、回路基板31上に形成されたコネクタと着脱可能としてもよい。これにより、センサ基板32を個別に交換することが可能となり、劣化または故障したセンサ10が搭載されたセンサ基板32だけを交換ができ、コストパフォーマンスに優れる。
【0048】
センサ基板32を覆うように、カバー35が設けられている。カバー35は、下のシート状の層35aと、層35a上に設けられ、本来のカバーである層35bとを備える。例えば、カバー35は、ステンレスからなる金属板の裏面に絶縁性の熱伝導性シートが張り合わされたような構造である。この層35aは、層35b(例えば金属板)の下面とセンサ基板32の上面とを接触させ、層35bの下面と下壁部40cの上面とを接触させる。なお、この層35aには、パッキンを採用してもよい。層35bは、熱伝導率の高い材料からなる層が好ましい。下壁部40cの上面には、図4のように、ネジ孔47が設けられている。カバー35の上面からネジをネジ孔47に挿入しネジ接合することで、カバー35を取り付けることができる。
【0049】
筐体40aおよび40bの材料は、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(ペルフルオロアルコキシアルカン)等のフッ素系樹脂または他の樹脂等の絶縁体である。筐体40aおよび40bの材料は金属でもよい。カバー35の層35bは、ステンレス、アルミニウムまたは銅等の金属板である。層35bは、PTFE、PFA等のフッ素系樹脂でもよい。層35bは、熱伝導率が高く、表面に気体分子の吸着しにくい材料が好ましい。層35aを熱伝導性シートとして用いる場合、層35aは、例えばシリコン放熱シートである。層35aをパッキンとして用いる場合、層35aは例えばポリプロピレン発泡体等の樹脂発砲体である。センサ基板32の絶縁層は、例えばガラスエポキシ樹脂である。ピン33は、導電性を有し、センサ10およびセンサ基板32の導電体パターンと電気的に接続されており、センサ基板32のスルーホールに埋設されている。ピン33は、例えば銅である。
【0050】
図7は、実施例2におけるセンサ10の模式図である。センサ10として水晶振動子を用いたQCM(Quartz Crystal Microbalance)を例に説明する。センサ10は、水晶板12と水晶板12を挟む電極14aおよび14bとを備える。電極14a上に感応膜16が設けられている。電極14aおよび14bは発振回路26に電気的に接続されている。発振回路26は、センサ10の共振周波数に関係する発振周波数において発振する。測定器28は、センサ10の共振周波数に関係する検出値として発振周波数を測定する。
【0051】
水晶板12は、単結晶水晶であり、例えばATカットの水晶基板である。電極14aおよび14bは例えば金または銅等の金属を主成分とする金属層である。
【0052】
感応膜16の材料は、例えば高分子材料、多孔質材料または有機金属化合物である。高分子材料としては、例えばセルロース、フッ素系ポリマー、ポリエチレンイミン、エステル系ポリマー、アクリル系ポリマー、ポリスチレン、ポリブタジエン、シクロオレフィンポリマー等であり、高分子材料は特定の物質が結合しやすい官能基を有している。多孔質材料は、例えばゼオライト、UiO-66またはZIF-8等のMOF(Metal Organic Flamework)である。有機金属化合物は、例えば金属フタロシアニンまたは金属ポルフィリンである。有機金属化合物の金属は、例えば銅、ニッケル、コバルトまたは亜鉛である。
【0053】
感応膜16に気体内の特定の物質の分子等が吸着すると、感応膜16の質量が増加する。これにより、センサ10の共振周波数が低くなり発振周波数が低くなる。なお、この水晶振動子は、一方の電極14aが上面を向き、電極14aの上に感応膜16が設けられた面実装タイプの構造が好ましい。この構造であれば、カバー35の開口38に感応膜16を露出させることができる。複数のセンサ10には、互いに異なる材料の感応膜16が設けられている。これにより、ある濃度の単一または複合的な物質を含む気体が供給されてたときに、センサ10ごとに、感応膜16に吸着または脱離する量を異ならせることができる。
【0054】
センサ10としては、水晶振動子以外にも、SAW(Surface Acoustic Wave)共振器またはFBAR(Film Bulk Acoustic Resonator)もしくはSMR(Solidly Mounted Resonator)等のBAW(Bulk Acoustic Wave)共振器等の圧電層を用いた振動子を用いることができる。これらのセンサ10にも面実装タイプを用いることが好ましく、感応膜16がセンサ10の最上面に平坦に設けられていることが好ましい。感応膜16はカバー35の開口38から露出する。検出する気体内の物質としては、例えばエタノール、アセトンもしくはトルエン等の有機化合物、または、アンモニア、窒素酸化物、オゾンもしくは塩素等の無機物質である。
【0055】
図8は、実施例2に係る検出装置102のブロック図である。収納室20内に、においセンサであるセンサ10並びに温度センサおよび/または湿度センサ(環境センサ)であるセンサ18が設けられている。においセンサである複数のセンサ10はそれぞれ複数の発振回路26に接続されている。測定器28は、複数の発振回路26の発振周波数を測定する。
【0056】
収納室20の左側には、導入路21aおよび21bが設けられ、導入路21aおよび21bから収納室20内にそれぞれ気体50aおよび50bが導入される。収納室20の右側には、排出路24が設けられ、排出路24から収納室20内を通過したドライかつクリーンな気体52が排出される。導入路21aおよび21bにポンプ22aおよび22bがそれぞれ設けられている。ポンプ22aを駆動することで、基準となる気体50aが収納室20内に導入される。そのため、ポンプ22aの前または後ろにフィルタ23が取り付けられている。
【0057】
基準の気体50aは、水分(湿気)およびにおい成分(特定の物質の分子)が低減されたドライかつクリーンな空気である。例えば、外部の気体を、フィルタ23に通過させることにより、水分およびにおい成分を除去することができる。ポンプ22bを駆動することで、検出対象となる気体50bが収納室20内に導入される。気体50bは、例えば、におい成分を含む空気である。
【0058】
処理部30は、例えばプロセッサである。処理部30には、ソフトウエアが組み込まれている。処理部30は、測定器28が出力する複数のセンサ10の共振周波数に関する情報、およびセンサ18が出力する温度、および圧力等に基づき、気体50bに関する情報を算出または判定する。気体50bに関する情報は、例えば、気体50b内の特定の物質の濃度の情報、または、気体50bに含まれるにおい成分の情報である。また、処理部30は、ポンプ22aおよび22bを制御する。処理部30の少なくとも一部は専用回路等のハードウエアにより形成されていてもよい。
【0059】
例えば、センサ10における、温度または湿度の変化に起因した共振周波数の変化に相当する情報と、温度センサまたは湿度センサであるセンサ18の出力と、の対応関係をメモリに記憶しておく。処理部30は、センサ18の出力と、上記対応関係に基づき、センサ10の共振周波数に関する情報から温度または湿度の外乱を補正できる。このため、複数のセンサ10とセンサ18の周辺の温度または湿度は、できるだけ均一であることがより好ましい。そこで、カバー35は、複数のセンサ10を実装する複数のセンサ基板32の各々の上面の一部と、センサ18(環境センサ)を実装するセンサ基板32(環境センサ基板)の上面との一部と、に接触し、開口38は複数のセンサ10およびセンサ18とを露出する。これにより、複数のセンサ10とセンサ18の周辺の温度または湿度をより均一にすることができる。
【0060】
[実験1]
カバー35が設けられた実施例2とカバー35を設けていない比較例2とを用い、センサ10および18の温度を、赤外線センサを用い測定した。実験に用いたカバー35の層35bは、厚さが0.5mmのステンレス板であり、層35aはポリプロピレン発泡体である。
【0061】
図9(a)および図9(b)は、実験1における時間に対するセンサの温度を示す図である。図9(a)は、図5の左上(-X+Y側)のセンサ10aの温度を示しており、図9(b)は、右下のセンサ18a(温度センサ)の温度を示している。オンは、センサ10および18の電源をオンした時刻であり、オフは、センサ10および18の電源をオフした時刻である。電源をオンするとは、センサ10およびセンサ10の周辺回路に、電源を供給し、制御信号を送り、測定を開始したという意味である。測定は、一例としては、発振回路26を用いて水晶振動子を発振させ、その発振周波数を、周波数カウンタでカウントすることを、経時的に行うということである。
【0062】
センサ10aおよび18aともに、電源をオンすると温度が上昇し、電源をオフすると温度が下降する。カバー35ありの実施例2では、カバー35なしの比較例2に比べ、センサ10aおよび18aの温度の上昇が小さい。これは、実施例2では、センサ10aおよび18aにおいて発生した熱が、カバー35を介し筐体40aに効率的に伝導し、筐体40aから熱が放出されたためと考えられる。また、カバー35がヒートシンクとして機能したためと考えられる。
【0063】
[実験2]
カバー35が設けられた実施例2とカバー35を設けていない比較例2とを用い、複数のセンサ10における感度のばらつきを測定した。図5におけるセンサ10のうち上(+Y側)の8個のセンサ10の感応膜16を同じにし、各センサ10の感度を測定した。実験に用いたカバー35の層35bは、厚さが0.5mmのアルミニウム板であり、層35aはポリプロピレン発泡体である。温度が24℃において、収納室20内に、クリーンかつドライな基準となる空気を導入し、複数のセンサ10の共振周波数fr0を測定し、その後、収納室20内に濃度が50ppmのトルエンを含む空気を導入し、複数のセンサ10の共振周波数frを測定した。各センサ10における|fr-fr0|を感度とした。同じ動作を3回繰り返し、感度を3回測定した。
【0064】
表1は、カバー35のない比較例2における感度の最大、最小および差を示している。
【表1】
【0065】
表2は、カバー35のある実施例2における感度の最大、最小および差を示している。
【表2】
【0066】
表1および2において、「最大」、「最小」および「差」は、8個のセンサ10の感度のうち最大の感度、最小の感度、最大と最小の感度の差、をそれぞれ示している。表1のように、比較例2では、最大と最小の差は50~54Hzであり、差の平均は53Hzである。表2のように、実施例2では、最大と最小の差は41~44Hzであり、差の平均は42Hzである。
【0067】
このように、実施例2では、比較例2に比べ、複数のセンサ10における感度のばらつきが小さい。これは、実施例2では、カバー35を設けることで、センサ10間の温度のばらつきが比較例2より小さくなるためと考えられる。
【0068】
実験1および2では、実施例2のカバー35の層35aとして、パッキンを想定したポリプロピレン発泡体を用いているが、層35aとして熱伝導率のよいシリコン放熱シート等を用いれば、より効果が得られるものと考えられる。
【0069】
層35bの熱伝導率が低いと、カバー35を介した熱の伝導が小さくなってしまう。この観点から、カバー35のうち少なくとも1層(例えば層35b)の熱伝導率はセンサ基板32内の絶縁層の熱伝導率より高いことが好ましい。例えば、センサ基板32として用いられるFR-4の熱伝導率は約0.3W/(m・K)であり、ステンレスの熱伝導率は約16W/(m・K)であり、アルミニウムの熱伝導率は200W/(m・K)である。カバー35のうち少なくとも1層(例えば層35b)の熱伝導率は、センサ基板32内の絶縁層の熱伝導率の2倍以上が好ましく、10倍以上がより好ましい。
【0070】
図10は、実施例2に係る検出装置の別の例の平面図であり、センサ基板32上にカバー35を配置した状態を上から見た平面図である。図10のように、カバー35の1つの開口38内に複数のセンサ10が設けられていてもよい。カバー35の開口38は複数のセンサ10ごとに設けられていることが好ましい。
【0071】
なお、センサ基板32は1つであり、1つのセンサ基板32に複数のセンサ10が搭載されていてもよい。また、センサ基板32は複数であり、複数のセンサ基板32の各々に1または複数のセンサ10が搭載されていてもよい。
【0072】
図11は、実施例2に係る検出装置の拡大平面図である。領域60のように、カバー35は、センサ10を囲むようにセンサ基板32の各々の上面の周縁領域に接触することが好ましい。これにより、センサ基板32の間の隙間34aを迂回して、センサ基板32から隣接するセンサ基板32にカバー35を介して熱が伝導する。これにより、センサ10間の温度ばらつきを抑制できる。また、隙間34aを介した気体の漏れおよび流入を抑制できる。平面視において、カバー35のほとんどがセンサ基板32および筐体40aに接触することが好ましい。
【0073】
カバーの開口38の側面と複数のセンサ10の各々との間の最短距離D1が大きすぎると、センサ10とカバー35との間の気体を介した熱伝導がしにくくなる。これにより、センサ10間の温度のばらつきが大きくなる。また、開口38から露出するセンサ基板32の表面の面積が大きくなる。これにより、センサ基板32の表面に吸着する特定の気体分子が大きくなる。この観点から、距離D1は、センサ10の最大幅W1以下が好ましく、0.5倍以下がより好ましく、0.2倍以下がさらに好ましい。
【0074】
センサ10が、例えばシリコンなどの絶縁基板上に、圧電体、およびその圧電体を挟む電極を設ける構成であった場合、シリコン基板は絶縁性を有するため、センサ10とカバー35と接触させることができる。このように、センサ10の一部とカバー35が接触する構成であれば、センサ10とカバー35が、直接熱のやり取りをすることができるので、より好ましい。
【0075】
図12(a)から図12(c)は、実施例2に係る検出装置の拡大断面図である。図12(a)では、センサ10の厚さT1とカバー35の厚さT2がほぼ同じである。図12(b)では、カバー35の厚さT2は、センサ10の厚さT1より小さい。図12(c)では、カバー35の厚さT2は、センサ10の厚さT1より大きい。
【0076】
図12(b)のように、カバー35が薄いと、カバー35を介した熱の伝導がしにくくなる。この観点からカバー35の厚さT2は、センサ10の厚さT1の1/2以上が好ましく、2/3以上がより好ましい。
【0077】
図12(c)のように、カバー35が厚いと、センサ10の感応膜16に気体が到達しにくくなる。この観点からカバー35の厚さT2は、センサ10の厚さT1の2倍以下が好ましく、1.5倍以下がより好ましい。
【0078】
図13(a)から図13(c)は、実施例2に係る検出装置の拡大断面図である。図13(a)では、センサ基板32の上面の高さと筐体40の下壁部40cの上面の高さがほぼ同じある。図13(b)では、センサ基板32の上面は、筐体40の下壁部40cの上面より低い。センサ基板32の上面と下壁部40cの上面との高さの差はD2である。図13(c)では、センサ基板32の上面は、筐体40の下壁部40cの上面より高い。センサ基板32の上面と下壁部40cの上面との高さの差はD3である。
【0079】
図13(b)のように、センサ基板32の上面が筐体40の下壁部40cの上面より低い場合、図6のように、ネジ46等の取り付け部材を用いカバー35を下壁部40cに取り付けたときに、カバー35がセンサ基板32に接触しにくくなる。これにより、センサ基板32間の熱伝導がしにくくなる。また、隙間34aを介した気体の漏れおよび侵入が生じる。
【0080】
図13(c)のように、センサ基板32の上面が筐体40の下壁部40cの上面より高い場合、ネジ46を用いカバー35を取り付けたときに、カバー35が下壁部40cに接触しにくくなる。これにより、センサ基板32と下壁部40cとの間の熱伝導がしにくくなる。また、隙間34bを介した気体の漏れおよび侵入が生じる。
【0081】
ネジ46(取り付け部材)およびネジ孔47を用い、カバー35を、下壁部40cに取り付ける場合、センサ基板32の上面と下壁部40cの上面との高さの差D2およびD3が大きいと、図13(b)および図13(c)のように、実施例2の効果が十分に生じない。よって、差D2およびD3は、カバー35の厚さT2の1/10以下が好ましく、1/20以下がより好ましい。
【0082】
図14は、実施例2に係る検出装置の拡大断面図である。センサ基板32の上面にはパッド36が設けられている。パッド36は、複数のセンサ10の少なくとも1つ、または複数のセンサ10の少なくとも1つと電気的に接続された回路(例えば周辺回路)の一部を構成する素子(例えば発振回路26の一部を構成する素子)の、周囲に設けられる。回路は、例えば、センサ10と電気的に接続される発振回路26または発振回路26の電源回路などである。回路の一部を構成する素子は、例えば抵抗、キャパシタ、インダクタまたはトランジスタ等の個別部品、または集積回路である。これらの素子は、例えば、センサ10の水晶振動子の下面に設けられた集積回路であり、センサ10とともにモジュールを構成してもよい。また、これらの素子は、センサ基板32の下面に設けられてよい。さらに、これらの素子は、カバー35の開口38に露出して、センサ基板32の上面に設けられてもよい。さらに、これらの素子は、センサ基板32の上面において、カバー35と接触して設けられてもよい。この場合に、カバー35の層35aが例えば絶縁性の樹脂であるパッキンであれば、層35aが素子を押しつけることで、層35aと素子との間の隙間を減らすことができる。これにより、カバー35は、大きな面積でセンサ基板32と接触することができる。
【0083】
ピン33はセンサ基板32およびパッド36を貫通する。ピン33とパッド36とは半田等の導電性の接合部37により接合されている。ピン33は、センサ基板32の上面のパッド36に電気的に接続されなくてもよく、センサ基板32の下面に形成されたパッドに電気的に接続されてもよい。センサ基板32を貫通するスルーホールが設けられ、パッド36とセンサ基板32の下面のパッドとをスルーホールを介し電気的に接続してもよい。また、センサ基板32の上面には、センサ10、またはセンサ10の周辺回路と電気的に接続される配線が設けられていてもよい。
【0084】
センサ基板32の上面にパッド36、接合部37および配線等の導電体パターンが設けられている場合、カバー35の少なくとも下面は絶縁性であることが好ましい。これにより、カバー35を介し、隣接するセンサ基板32のパッド36同士または配線同士が電気的に短絡することを抑制できる。例えば、層35aを絶縁体とすることで、隣接するセンサ基板32のパッド36同士または配線同士が電気的に短絡を抑制できる。
【0085】
図14は、必ずしも実物の縮尺を正確に反映してはいないものの、平面的にみると、パッド36の面積は、センサ基板32の上面に占める割合が大きい。配線は、図示していないが、パッド36またはピン33と比較すると、十分小さいスケールである。この配線と比較すると、パッド36が、熱伝導に寄与するほど大きなスケールであることが理解できる。このため、パッド36、またはパッド36上に形成された接合部37が、カバー35と接触すると、センサ10またはセンサ10の周辺回路が発する熱を、効率よくカバー35に伝達することができる。
【0086】
さらに、パッド36は、センサ基板32の上面の周縁領域に複数設けられ、カバー35と接触することが好ましい。実施例において、複数のセンサ基板32は、それぞれセンサ基板32の側面同士が当接し、平面的に見て、行列状に設けられている例を説明した。このとき、複数のセンサ基板32のそれぞれの上面の周縁領域に、複数のパッド36があれば、2つの隣り合うセンサ基板32の複数のパッド36は、2列に隣り合って並ぶように、配置される。この複数のパッド36が、それぞれカバー35と接触するため、伝熱性を向上できる。
【0087】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0088】
10、18 センサ
16 感応膜
20 収納室
26 発振回路
28 測定器
30 処理部
31 回路基板
32 センサ基板
33 ピン
34a、34b 隙間
35 カバー
35a、35b 層
36 パッド
37 接合部
38、42 開口
40、40a、40b 筐体
40c 下壁部
46 ネジ
47 ネジ孔
50、50a、50b、52 気体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14