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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122626
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】定量噴射型エアゾール
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/52 20060101AFI20240902BHJP
   B65D 83/14 20060101ALI20240902BHJP
   B65D 83/20 20060101ALI20240902BHJP
   B05B 9/04 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
B65D83/52 100
B65D83/14 100
B65D83/20
B05B9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030282
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000141118
【氏名又は名称】株式会社丸一
(71)【出願人】
【識別番号】391021031
【氏名又は名称】株式会社ダイゾー
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】久田 祐士
(72)【発明者】
【氏名】延原 健二
(72)【発明者】
【氏名】松原 晶
(72)【発明者】
【氏名】中村 泰祐
(72)【発明者】
【氏名】松井 和弘
(72)【発明者】
【氏名】池田 尊胤
【テーマコード(参考)】
3E014
4F033
【Fターム(参考)】
3E014PA01
3E014PB08
3E014PC03
3E014PD02
3E014PE03
3E014PF10
4F033RA02
4F033RB04
4F033RC01
4F033RC04
4F033RC05
4F033RC07
4F033RC08
(57)【要約】
【課題】本発明は、ジメチルエーテルを含む噴射剤を用いた場合に、使用開始から全量使用済みに至るまでの間、1回あたりの噴射薬剤量の変動を抑えることで、定量噴射型エアゾールとしての性能に優れた定量噴射型エアゾールを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、耐圧容器と、前記耐圧容器に充填されたエアゾール組成物と、前記耐圧容器をマウンティングカップガスケットを介して密封するマウンティングカップと、を有し、1回の噴射操作で一定量のエアゾール組成物を噴射する定量噴射型エアゾールであって、前記エアゾール組成物が、低級アルコールを含む原液と、ジメチルエーテルを含む噴射剤とを含み、前記マウンティングカップガスケットがイソブチレン・イソプレンゴムを含む、定量噴射型エアゾールに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐圧容器と、前記耐圧容器に充填されたエアゾール組成物と、前記耐圧容器をマウンティングカップガスケットを介して密封するマウンティングカップと、を有し、1回の噴射操作で一定量のエアゾール組成物を噴射する定量噴射型エアゾールであって、
前記エアゾール組成物が、低級アルコールを含む原液と、ジメチルエーテルを含む噴射剤とを含み、
前記マウンティングカップガスケットがイソブチレン・イソプレンゴムを含む、
定量噴射型エアゾール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定量噴射型エアゾールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有効成分や溶剤等を含む原液と噴射剤とを含むエアゾール組成物を、1回の噴射操作で一定量噴射する定量噴射型エアゾールが知られている。定量噴射型エアゾールは1回の噴射操作で一定量の内容物が吐出されるため、使用者による操作方法の差、すなわち噴射ボタンの押し下げ方法や押し下げ量等の差が生じにくく、効果のバラツキが少ないという利点がある。また、必要以上に内容物を噴射することなく、処理面の濡れや汚染が少ないという利点もある。
【0003】
このような定量噴射型エアゾールとしては、例えば、特許文献1には、1回当たりの噴霧容量が0.1~0.3mLである定量噴霧用エアゾールバルブを備えた害虫防除用エアゾールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-003302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
定量噴射型エアゾールは、一般的なエアゾールや全量噴射型エアゾールとは異なり、毎回一定の噴射薬剤量かつ一定の性能を担保する必要がある。また、製品として定められた噴射回数を実現することが求められる。
【0006】
しかしながら、従来の定量噴射型エアゾールは、使用開始から全量使用済みに至るまでの間、1回あたりの噴射薬剤量が変動してしまい、噴射ごとの効果のバラツキが少ないという定量噴射型エアゾール特有の利点が損なわれることがわかった。また、1回あたりの噴射薬剤量が変動することにより、製品として所定の噴射回数を実現できないという問題もある。かかる問題は、噴射剤としてジメチルエーテルを用いる場合に顕著に生じていた。
【0007】
そこで、本発明は、ジメチルエーテルを含む噴射剤を用いた場合に、使用開始から全量使用済みに至るまでの間、1回あたりの噴射薬剤量の変動を抑えることで、定量噴射型エアゾールとしての性能に優れた定量噴射型エアゾールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、定量噴射型エアゾールにおいて、ジメチルエーテルを含む噴射剤を用いた場合に、エアゾール組成物において所定の原液を使用し、かつ、耐圧容器を密封するマウンティングカップに備えられるマウンティングカップガスケットとして、所定の材料を用いることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)耐圧容器と、前記耐圧容器に充填されたエアゾール組成物と、前記耐圧容器をマウンティングカップガスケットを介して密封するマウンティングカップと、を有し、1回の噴射操作で一定量のエアゾール組成物を噴射する定量噴射型エアゾールであって、
前記エアゾール組成物が、低級アルコールを含む原液と、ジメチルエーテルを含む噴射剤とを含み、
前記マウンティングカップガスケットがイソブチレン・イソプレンゴムを含む、
定量噴射型エアゾール。
【発明の効果】
【0010】
本発明の定量噴射型エアゾールは、ジメチルエーテルを含む噴射剤を用いた場合であっても、使用開始から全量使用済みに至るまでの間、1回あたりの噴射薬剤量の変動を抑えることができるため、噴射ごとの効果のバラツキが少なく、所定の噴射回数を実現でき、定量噴射型エアゾールとしての性能に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の定量噴射型エアゾール(耐圧容器の図示は省略)の一実施形態に係る中央縦断面図である。
図2図2は、各検体の定量噴射型エアゾールにおける、初期噴射薬剤量に対する各終期噴射薬剤量の比率(%)を示すグラフである。
図3図3は、各検体の定量噴射型エアゾールにおける、噴射薬剤量(mg)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態についてさらに詳しく説明する。
【0013】
本発明の定量噴射型エアゾールは、耐圧容器と、前記耐圧容器に充填されたエアゾール組成物と、前記耐圧容器をマウンティングカップガスケットを介して密封するマウンティングカップと、を有し、1回の噴射操作で一定量のエアゾール組成物を噴射する定量噴射型エアゾールであって、前記エアゾール組成物が、低級アルコールを含む原液と、ジメチルエーテルを含む噴射剤とを含み、前記マウンティングカップガスケットがイソブチレン・イソプレンゴムを含むことを特徴とする。
【0014】
〔構造・構成〕
図1は、本発明の定量噴射型エアゾール(耐圧容器の図示は省略)の一実施形態に係る中央縦断面図である。なお、本発明の定量噴射型エアゾールは図1に示す態様に限定されるものではない。
図1では、定量噴射型エアゾールのうち、定量噴射バルブ10と、この定量噴射バルブ10が配設されるマウンティングカップ20の部分を図示したものである。マウンティングカップ20は環状の周縁部を備え、その周辺にマウンティングカップガスケット21を備える。マウンティングカップ20は、マウンティングカップガスケット21を介して、耐圧容器(不図示)を密封している。マウンティングカップ20は、その略中央部に貫通孔を有している。定量噴射バルブ10はマウンティングカップ20の貫通孔からバルブステム12を突出させた状態で、マウンティングカップ20に配設される。
【0015】
より詳細には、エアゾール組成物が充填された耐圧容器(不図示)の開口部にマウンティングカップ20の周縁部が、マウンティングカップガスケット21を介して、加締め止め等により固定される。また、外方に突出したバルブステム12に噴射機構(不図示)を外嵌して定量噴射型エアゾールを得る。噴射機構を外方から押し下げることによりバルブステム12が押し下げられ、バルブステム12のオリフィス12hが開くと共にバルブステムの弁棒部12vによりシールド部材18の環状弁部18vが閉じられ、これによりハウジング11内と定量室15内に貯留されている一定量のエアゾール組成物がガス圧でオリフィス12hからバルブステム12の上端開口、さらには噴射機構に流出し、噴射機構の噴射孔から外部に吐出される。
【0016】
定量噴射バルブ10は、ハウジング11と、ハウジング11の上端部から嵌入するバルブステム12と、バルブステム12を常に上方に付勢する付勢部材としてのコイルスプリング13と、このコイルスプリング13の下方に配置された定量室15と、ハウジング11の下端部16に接続するディップチューブ17と、上記コイルスプリング13の下端に当接したシールド部材18とを備える。
【0017】
ディップチューブ17からハウジング11内、そしてバルブステム12の上端開口部12kまでは耐圧容器内のエアゾール組成物が流通する流通路が形成されており、非作動状態においては、この流通路は、バルブステム12の上方に設けられたオリフィス12hがステムガスケット19の存在により封止された状態となっている。
【0018】
即ち、非作動状態においては、バルブステム12の下端の弁棒部12vが最上位置に位置しており、この弁棒部12vと相互に作用して流通路を封止するシールド部材18の上下方向の貫通孔の内周壁に設けられた環状弁部18vとの間に隙間が形成されて耐圧容器(不図示)内のエアゾール組成物が定量室15内及び流通路内に入り込み、貯留し、充満した状態となっている。
【0019】
さらに詳細には、バルブステム12の構成は、上下に長い棒状のものから成り、その略中央部から上方に向ってその軸芯部に流通路としての孔部12tが形成され、この孔部12tの略中央部やや下方にオリフィス12hが穿孔されており、その下方外周面には環状鍔部12fが設けられている。この環状鍔部12fとシールド部材18の上端面との間に付勢部材としてのコイルスプリング13が介在され装備されている。
【0020】
従って、このバルブステム12は常に上方に付勢されており、非作動状態においては、バルブステム12のオリフィス12hは、ステムガスケット19の存在により、その流通路が遮断され封止された状態となっている。ステムガスケット19は、ジメチルエーテル存在下での膨潤性、作動性の観点からイソブチレン・イソプレンゴムを含むことが好ましい。
【0021】
なお、上記定量噴射バルブ10のハウジング11は、その上端縁部がマウンティングカップ20の略中央部によって加締められ挟持され固定されている。
従って、このハウジング11の上端内周縁部とマウンティングカップ20との間で上記ステムガスケット19が保持され、バルブステム12のオリフィス12hとの封止、開放作用を行い、耐圧容器内のエアゾール組成物の流通を阻止し且つ開放することができる。
【0022】
(マウンティングカップガスケット)
本発明の定量噴射型エアゾールにおいては、マウンティングカップ20の環状の周縁部の周辺に備えられたマウンティングカップガスケット21がイソブチレン・イソプレンゴムを含むことが重要である。マウンティングカップガスケット21がイソブチレン・イソプレンゴムを含むことで、1回あたりの噴射薬剤量の変動を抑えることができる。その作用機序は明らかではないが、マウンティングカップガスケットにイソブチレン・イソプレンゴムを用いることで、マウンティングカップガスケットに対する内容物の吸着を抑制できるため、エアゾール組成物中の原液と噴射剤の含有比率の変化が抑えられ、その結果、1回あたりの噴射薬剤量の変動を抑えることができるものと推察される。なお、本発明は当該作用機序に限定して解釈されるものではない。
【0023】
マウンティングカップガスケット21におけるイソブチレン・イソプレンゴムにおいては、イソブチレンとイソプレンとの配合割合や、分子量、比重、硬度などの物性は特に限定されない。
【0024】
マウンティングカップガスケット21におけるイソブチレン・イソプレンゴムの硬度は、硬度はJIS K 6253準拠のタイプAデュロメータで55°~85°が好ましく、70°~80°がより好ましい。例えば、G-68((株)丸一製、硬度75°)等が挙げられる。
【0025】
(耐圧容器)
本発明の定量噴射型エアゾールにおいては、耐圧容器の内圧が、25℃において0.60MPa以下が好ましく、0.10~0.60MPaがより好ましく、0.20~0.60MPaがさらに好ましく、0.30~0.55MPaが特に好ましい。
耐圧容器は、1.3MPaで変形せず、1.5MPaで破裂しないものが好ましく、その材質は、例えば、アルミニウムやブリキ等の金属、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂、耐圧ガラス等が挙げられる。また、耐圧容器は、材質が合成樹脂である場合、半透明や透明であってもよい。
【0026】
以上、本発明に係る定量噴射型エアゾールの構造・構成について説明したが、以下では内容物であるエアゾール組成物について説明する。
【0027】
〔エアゾール組成物〕
本発明の定量噴射型エアゾールにおいて、エアゾール組成物は耐圧容器に充填される。当該エアゾール組成物は、原液と噴射剤とを含む。
【0028】
(原液)
本発明においては、原液が低級アルコールを含むことが重要である。原液が低級アルコールを含むことで、マウンティングカップガスケットへの吸着、ガスケットの収縮・膨潤等の影響を抑えることが可能である。
【0029】
低級アルコールとしては、例えば、炭素数が2~3の低級アルコールが好ましく、例えば、エタノール、イソプロパノール、プロパノール等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、1回あたりの噴射薬剤量の変動をより抑えることができるという観点から、イソプロパノール、エタノールが好ましい。
【0030】
原液における低級アルコールの含有量は、20w/v%以上が好ましく、40w/v%以上がより好ましく、60w/v%以上がさらに好ましい。また、上限は特に制限はない。
【0031】
原液は、その他の成分として、有効成分、上記低級アルコール以外の溶剤、粉末等を含有してもよい。
【0032】
有効成分は、所望の効果を付与するために含有される成分である。
有効成分としては、例えば、殺虫剤、害虫忌避剤、殺菌剤、芳香剤、及び消臭剤等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
殺虫剤としては、例えば、ピレトリン、アレスリン、フタルスリン、レスメトリン、フラメトリン、フェノトリン、ペルメトリン、ビフェントリン、エムペントリン、プラレトリン、シフェノトリン、イミプロトリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、モンフルオロトリン、ジメフルトリン等のピレスロイド系化合物、フェニトロチオン、ジクロルボス、クロルピリホスメチル、ダイアジノン、フェンチオン等の有機リン系化合物、カルバリル、プロポクスル等のカーバメイト系化合物、ハッカ油、オレンジ油、ウイキョウ油、ケイヒ油、チョウジ油、テレビン油、ユーカリ油、ヒバ油、ジャスミンオイル、ネロリオイル、ペパーミントオイル、ベルガモットオイル、ブチグレンオイル、レモンオイル、レモングラスオイル、シナモンオイル、シトロネラオイル、ゼラニウムオイル、シトラール、l-メントール、酢酸シトロネリル、シンナミックアルデヒド、テルピネオール、ノニルアルコール、cis-ジャスモン、リモネン、リナロール、1,8-シネオール、ゲラニオール、α-ピネン、p-メンタン-3,8-ジオール、オイゲノール、酢酸メンチル、チモール、安息香酸ベンジル、サリチル酸ベンジル等の各種殺虫性の精油成分、その他メトプレン、ピリプロキシフェン、メトキサジアゾン、フィプロニル、アミドフルメト、ブロフラニリド等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
害虫忌避剤としては、例えば、p-メンタン-3,8-ジオール、ディート、ジ-n-ブチルサクシネート、ヒドロキシアニソール、IR3535、イカリジン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
殺菌剤としては、例えば、トリクロサン等のフェノール系殺菌剤、トリクロロカルバニリド等のカーバニリド系殺菌剤、ジンクピリチオン等のピリジン系殺菌剤、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム等のカチオン系殺菌剤、トリアルキルトリアミン等のアミン系殺菌剤等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
芳香剤としては、例えば、ハッカ油、ペパーミント油、スペアミント油、イグサ、ヒノキ、シトロネラ、シトラール、シトロネラール、レモン、レモングラス、オレンジ、ユーカリ、ラベンダー等の精油成分からなる天然香料、ゲラニオール、シトロネラール、オイゲノール、ウンデカラクトン、リモネン、フェネチルアルコール等の人工香料、これら天然香料及び人工香料を調整して得られる調合香料等の芳香剤が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
消臭剤としては、例えば、柿抽出物、緑茶抽出物、グレープフルーツ抽出物、グレープフルーツ種子抽出物、ユズ抽出物、モウソウチク抽出物、モウソウチク乾留物、ユズ種子抽出物、オレンジ抽出物、ルイボス茶抽出物、ユッカ抽出物、オリーブ葉エキス末、キトサン、ウーロン茶抽出物、ブドウ種子エキス、ムルレイヤエキス、シソオイル、チャ乾留物、甘草油性抽出物、シソの実エキス、からし抽出物、ブロッコリーパウダー、ショウガ抽出物、エゴノキ抽出物、カワラヨモギ抽出物、ホオノキ抽出物、レンギョウ抽出物、モミガラ抽出物、ペッパー抽出物、柑橘種子抽出物、生大豆抽出物、ピメンタ抽出物、果実抽出物、果実種子抽出物等の各種植物抽出物等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
なかでも、本発明においては、有効成分として、ピレスロイド系化合物、カーバメイト系化合物、メトキサジアゾン、アミドフルメト、及びブロフラニリドの少なくとも一種を用いるのが好ましい。かかる有効成分はマウンティングカップガスケットへの吸着、ガスケットの収縮・膨潤等の影響が少ないため、エアゾール組成物中の原液と噴射剤の含有比率の変化を抑えることができ、その結果、1回あたりの噴射薬剤量の変動を抑えることができる。
【0039】
有効成分の含有量は所望の効果が得られる限り特に限定されないが、例えば、原液中に0.01~99.9w/v%であることが好ましく、0.1~90w/v%がより好ましく、0.5~70w/v%がさらに好ましい。
【0040】
また、原液には、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を含有させることができる。その他の成分としては、例えば、防腐剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、無機物、界面活性剤、溶解助剤等が挙げられる。
【0041】
原液の20℃における比重は、0.65~1.1が好ましく、0.70~0.95がより好ましく、0.75~0.90がさらに好ましい。
【0042】
原液に用いられる溶剤としては、例えば、有機溶剤、水等が挙げられる。有機溶剤としては、例えば、高級脂肪酸エステル、及び低級アルコール以外のアルコール類、もしくは炭化水素系溶剤、炭素数3~6のグリコールエーテル類、及びケトン系溶剤等を挙げることができる。高級脂肪酸エステルとしては、炭素数の総数が16~20のものが好ましく、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、パルミチン酸イソプロピル等が挙げられる。これらのうち、ミリスチン酸イソプロピルが特に好適である。炭化水素系溶剤としては、n-パラフィン、及びイソパラフィンが好ましい。水としては、例えば、水道水、イオン交換水、純水、精製水等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
粉末としては、従来公知のものが使用でき、その材質、形状、粒子径、粒子構造等は適宜選択できる。例えば、無機粉末、有機粉末、顔料等を挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
(噴射剤)
本発明の定量噴射型エアゾールにおいて、噴射剤はジメチルエーテルを含む。従来の定量噴射型エアゾールの噴射剤としては、相溶性に優れるジメチルエーテルが用いられることがあったが、その場合、上述したとおり、1回あたりの噴射薬剤量の変動が顕著に生じるという問題があった。しかしながら、本発明の構成によれば、ジメチルエーテルを含む噴射剤を用いた場合であっても、使用開始から全量使用済みに至るまでの間、1回あたりの噴射薬剤量の変動を抑えることができるものである。
【0045】
噴射剤におけるジメチルエーテルの含有量は、20w/v%以上が好ましく、40w/v%以上がより好ましく、80w/v%以上がさらに好ましい。また、上限は特に制限はなく、100w/v%であってもよい。
【0046】
噴射剤は、その他の成分として、例えば、液化石油ガス(LPG)、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エン、トランス-2,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エン等のハイドロフルオロオレフィン、窒素ガス、炭酸ガス、亜酸化窒素、圧縮空気等が挙げられる。上記の噴射剤は、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
エアゾール組成物における、原液と噴射剤との含有比率は、所望の噴射形態(噴霧粒子の大きさ、噴射パターン、噴射圧、噴霧量等)に応じて適宜決定すればよい。例えば、エアゾール組成物全体に対する原液の含有比率(原液/(原液+噴射剤))は、体積基準で、0.01~0.7であってよく、0.05~0.6であってよく、0.07~0.5であってよい。
【0048】
本発明の定量噴射型エアゾールにおいて、エアゾール組成物の1回あたりの噴射薬剤量は特に制限されないが、例えば、0.2~3mLであることが好ましく、0.3~2mLであることがより好ましく、0.4~1mLであることがさらに好ましい。
【0049】
本発明において、エアゾール組成物の1回あたりの噴射量を調整する方法は特に制限されないが、例えば、定量噴射バルブのハウジングや定量室の大きさを調節する方法やエアゾール組成物が一定時間噴射できるような仕組みを用いる方法が挙げられる。
【0050】
本発明の定量噴射型エアゾールにおけるエアゾール組成物の含有量は特に制限されないが、例えば、20~200mLであるのが好ましく、30~150mLであることがより好ましく、40~100mLであることがさらに好ましい。
【実施例0051】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明は下記例に限定されるものではない。
【0052】
下記表1に示すように、各有効成分と、低級アルコールであるイソプロパノールとを混合し、各原液を調製した。また、エアゾール全体に対する各原液の含有比率(原液/(原液+噴射剤))は、体積基準で、0.2とした。
【0053】
次に、エアゾール用耐圧容器(アルミニウム製,φ45mm×98mm)に、上記で調製した各原液をそれぞれ充填し、エアゾールバルブでエアゾール用耐圧容器を閉止した。その際、エアゾールバルブが備えるマウンティングカップが、マウンティングカップガスケットを介してエアゾール用耐圧容器を閉止するようにした。
つづいて、噴射剤(ジメチルエーテル)を加圧充填した。そして、エアゾールバルブに噴射ボタン(おすだけクモアーススプレー(アース製薬社製)に使用されるボタン)を取り付け、実施例1、2、参考例1、比較例1の定量噴射型エアゾール(検体)を得た。原液と噴射剤の合計の含有量(エアゾール組成物の含有量)は70mLとした。
ここで、使用したイソブチレン・イソプレンゴムの硬度は以下のとおりである。
・SR-399:硬度75°((株)丸一製)
・G-68:硬度75°((株)丸一製)
なお、実施例1、2、比較例1の検体は45℃にて6ヶ月保管したものを試験に用いた。参考例1の検体は保管期間無しのものを試験に用いた。参考例1の検体は55回の噴射回数について有効量の噴射薬剤量を担保出来るように設計されている。
【0054】
【表1】
【0055】
(試験方法)
各検体を表1に記載の保管条件で保管した後、以下の手順で試験を行った。なお、参考例1は保管期間無しとした。試験は合計2回行った(n=2)。
(1)1-5回目まで噴射した。
(2)100mLのメスフラスコ内に6-10回目の噴射をした後、メスフラスコを回収した(初期噴射品)。
(3)11回目から40回目まで空打ちした。
(4)100mLのメスフラスコ内に41-45回目の噴射をした後、メスフラスコを回収した(終期噴射品1)。
(5)100mLのメスフラスコ内に46-50回目の噴射をした後、メスフラスコを回収した(終期噴射品2)。
(6)100mLのメスフラスコ内に51-55回目の噴射をした後、メスフラスコを回収した(終期噴射品3)。
【0056】
(分析)
回収したメスフラスコに内部標準液を加えガスクロマトグラフィーで薬剤量の定量を行った。内部標準品としてはセバシン酸ジオクチルを用いた。また、カラムとしてはSE-30を用いた。
上記初期噴射品、終期噴射品1~3を分析した結果得られた噴射薬剤量を、以下では、それぞれ初期噴射薬剤量、終期噴射薬剤量1~3と記載する。
【0057】
(分析結果)
初期噴射薬剤量に対する各終期噴射薬剤量の比率を表2、図2に示す。また、同じ処方で、保管条件や仕様の違いによる噴射薬剤量の差を表3、図3に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
表2、図2に示されているとおり、実施例1、2は、初期から終期まで安定な噴射が保たれており、噴射薬剤量の変動が抑えられていることがわかった。一方、比較例1では対初期の噴射薬剤量が大きく減少しており、噴射薬剤量の変動が顕著に生じた。
また、同じ有効成分について、保管条件や仕様による噴射薬剤量の比較を行った結果を示す。表3、図3によれば、実施例1における噴射薬剤量は、参考例1である初期品と比較してやや多いものの、終期まで一定の噴射薬剤量を維持していた。一方で、比較例1では初期の噴射薬剤量が多く、また終期の噴射薬剤量が著しく少なかった。
以上により、実施例1、2では、初期から終期まで一定の噴射薬剤量を維持できたといえる。これは、本発明の構成によれば、噴射ごとの効果のバラツキが少なく、所定の噴射回数を実現でき、定量噴射型エアゾールとしての性能に優れていることを示している。
【符号の説明】
【0061】
10 定量噴射バルブ
11 ハウジング
12 バルブステム
12h オリフィス
12k 上端開口部
12t 孔部
12v 弁棒部
13 コイルスプリング
15 定量室
17 ディップチューブ
18 シールド部材
18v 環状弁部
19 ステムガスケット
20 マウンティングカップ
21 マウンティングカップガスケット
図1
図2
図3