(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122631
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】カルテ作成システム及びカルテ作成方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20240902BHJP
A01K 11/00 20060101ALI20240902BHJP
A01K 29/00 20060101ALI20240902BHJP
G16H 10/60 20180101ALI20240902BHJP
G06F 16/903 20190101ALI20240902BHJP
【FI】
G06Q50/10
A01K11/00 D
A01K29/00 B
G16H10/60
G06F16/903
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030289
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】514235307
【氏名又は名称】アニコム ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100169236
【弁理士】
【氏名又は名称】藤村 貴史
(72)【発明者】
【氏名】阿部 隆樹
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 大雅
(72)【発明者】
【氏名】高野 宏行
【テーマコード(参考)】
5B175
5L049
5L050
5L099
【Fターム(参考)】
5B175HA05
5L049CC11
5L050CC11
5L099AA23
(57)【要約】
【課題】簡易な方法で、動物の個体識別を行いつつ、簡易にカルテを作成するシステムや方法を提供することを課題とする。
【解決手段】愛玩動物の識別情報を取得する取得部と、前記識別情報に基づいて患者データベースから登録情報を検索する検索部と、前記識別情報に基づいて登録データベースから登録情報を検索する再検索部と、前記登録情報に基づいてカルテを作成する作成部と、を備える、カルテ作成システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
愛玩動物の識別情報を取得する取得部と、
前記識別情報に基づいて患者データベースから登録情報を検索する検索部と、
前記識別情報に基づいて登録データベースから登録情報を検索する再検索部と、
前記登録情報に基づいてカルテを作成する作成部と、
を備える、カルテ作成システム。
【請求項2】
前記再検索部が、患者データベースに登録情報が存在しない場合又は登録情報が不足している場合に前記識別情報に基づいて登録データベースから登録情報を検索するものである請求項1記載のカルテ作成システム。
【請求項3】
前記識別情報が、マイクロチップの識別情報、愛玩動物の光彩画像又は愛玩動物の顔画像である請求項1記載のカルテ作成システム。
【請求項4】
前記登録データベースが、マイクロチップが埋め込まれた愛玩動物とその飼い主に関するデータを格納しているデータベースである請求項3記載のカルテ作成システム。
【請求項5】
前記取得部が、マイクロチップリーダーとネットワークを介して接続され、マイクロチップリーダーを介してマイクロチップの識別情報を取得する請求項3記載のカルテ作成システム。
【請求項6】
前記登録データベースが、アクセス権限を必要とするものであり、前記アクセス権限がマイクロチップを読み取るマイクロチップリーダーに紐付けられている請求項5記載のカルテ作成システム。
【請求項7】
患者データベースに格納された登録情報と、登録データベースに格納された登録情報とに相違がある場合に、ユーザの意思に基づいて又は自動的に、患者データベースに格納された登録情報を更新する更新部をさらに備える請求項1記載のカルテ作成システム。
【請求項8】
前記再検索部がユーザの意思に基づいて又は自動的に検索を行う請求項1記載のカルテ作成システム。
【請求項9】
愛玩動物の識別情報を取得する取得部と、
登録データベースから登録情報を検索する再検索部と、
前記登録情報に基づいて、カルテを作成する作成部と、
を備える、カルテ作成システム。
【請求項10】
愛玩動物の識別情報を取得する取得ステップと、
コンピュータを用いて前記識別情報に基づいて患者データベースから登録情報を検索する検索ステップと、
コンピュータを用いて前記識別情報に基づいて登録データベースから登録情報を検索する再検索ステップと、
コンピュータを用いて前記登録情報に基づいてカルテを作成する作成ステップと、
を備える、カルテ作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は動物患者用のカルテ作成システム及びカルテ作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
犬や猫等の愛玩動物が動物病院に連れて来られると、獣医師は、飼い主の申告に基づいてカルテを作成又は参照するが、当該飼い主の申告が正しいのかを判別することは困難である。そのため、保険に加入していない愛玩動物を、保険に加入している愛玩動物として保険金を請求するといった、愛玩動物の入れ替えによる保険金の不正請求が飼い主によって行われることがある。
【0003】
現在、愛玩動物として飼育される動物にはマイクロチップの装着が義務付けられており(一部、努力義務)、当該愛玩動物と、その飼い主とを照合できるようになっている。マイクロチップは各愛玩動物に付されたユニークな情報であり、飼い主の情報と関係づいて環境省や民間登録団体等のデータベースに登録されている。そのため、診療対象となる愛玩動物の客観的な個体識別が可能になっていくものと思われる。
【0004】
しかしながら、獣医師はマイクロチップから愛玩動物の飼い主を照合するためには、多くの処理を行わなければならない。具体的には、まず獣医師が愛玩動物のマイクロチップから識別番号を、マイクロチップリーダー等を用いて読み取る。次に環境省や民間登録団体等の外部データベースにアクセスする。そして外部データベースから識別番号を検索し、当該データベースに登録されている情報を取得する。この一連の処理を行うことで、愛玩動物とその飼い主を照合でき、正確な情報を得ることができる。
【0005】
さらにカルテを作成する際には、上述で得た情報の他、愛玩動物の名前、品種、生年月日を記録していく作業を行わなければならない。また、愛玩動物の飼い主が変わる場合や、飼い主の住所が変わる場合など、マイクロチップの識別番号に関係付いて登録されている情報が変更される場合がある。その場合、獣医師は都度、カルテの情報を更新しなければならない。
【0006】
そのため、愛玩動物のマイクロチップの装着が義務付けられ、個体の識別が可能になっても、カルテの作成の負担は依然として大きいままである。
【0007】
特許文献1には、動物の体内に埋め込まれた電子回路に記憶された当該電子回路を識別するための第1の識別情報と、前記動物の所有者を特定するための所有者個人情報と共に登録要求を受け、当該登録要求に応じて前記動物の所有者に第2の識別情報を割り当て、前記第1の識別情報と前記所有者個人情報と前記第2の識別情報とを対応付けて記憶装置に記憶し、前記第2の識別情報を記憶したカードを前記所有者に発行する動物管理方法が開示されている。
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されているのは、愛玩動物の情報を管理する方法にすぎず、愛玩動物を診療する上での獣医師の負担を軽減する方法や、カルテを作成するシステムや方法については、開示されていない。また動物病院に迷子が連れてこられた際の管理方法が記載されているが、当該迷子の所有者を引き当てるために、多くの処理が行われており、簡易に迷子の所有者を引き当てることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、愛玩動物の個体識別性を担保しつつ、簡易にカルテを作成することを可能とするシステムや方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、愛玩動物の識別情報を取得すると、データベースにアクセスし、当該識別情報に関係づいた登録情報を検索する再検索部と、前記登録情報に基づいてカルテを作成する作成部と、を備えるシステムや方法であれば、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は以下の[1]~[10]である。
[1]愛玩動物の識別情報を取得する取得部と、前記識別情報に基づいて患者データベースから登録情報を検索する検索部と、前記識別情報に基づいて登録データベースから登録情報を検索する再検索部と、前記登録情報に基づいてカルテを作成する作成部と、を備える、カルテ作成システム。
[2]前記再検索部が、患者データベースに登録情報が存在しない場合又は登録情報が不足している場合に前記識別情報に基づいて登録データベースから登録情報を検索するものである[1]のカルテ作成システム。
[3]前記識別情報が、マイクロチップの識別情報、愛玩動物の光彩画像又は愛玩動物の顔画像である[1]のカルテ作成システム。
[4]前記登録データベースが、マイクロチップが埋め込まれた愛玩動物とその飼い主に関するデータを格納しているデータベースである[3]のカルテ作成システム。
[5]前記取得部が、マイクロチップリーダーとネットワークを介して接続され、マイクロチップリーダーを介してマイクロチップの識別情報を取得する[3]のカルテ作成システム。
[6]前記登録データベースが、アクセス権限を必要とするものであり、前記アクセス権限がマイクロチップを読み取るマイクロチップリーダーに紐付けられている[5]のカルテ作成システム。
[7]患者データベースに格納された登録情報と、登録データベースに格納された登録情報とに相違がある場合に、ユーザの意思に基づいて又は自動的に、患者データベースに格納された登録情報を更新する更新部をさらに備える[1]のカルテ作成システム。
[8]前記再検索部がユーザの意思に基づいて又は自動的に検索を行う[1]のカルテ作成システム。
[9]愛玩動物の識別情報を取得する取得部と、登録データベースから登録情報を検索する再検索部と、前記登録情報に基づいて、カルテを作成する作成部と、を備える、カルテ作成システム。
[10]愛玩動物の識別情報を取得する取得ステップと、コンピュータを用いて前記識別情報に基づいて患者データベースから登録情報を検索する検索ステップと、コンピュータを用いて前記識別情報に基づいて登録データベースから登録情報を検索する再検索ステップと、コンピュータを用いて前記登録情報に基づいてカルテを作成する作成ステップと、を備える、カルテ作成方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、獣医師がカルテを作成する際の負担を軽減するようなカルテ作成システムやカルテ作成方法を提供することができる。また、上述のような愛玩動物の入れ替えによる保険金の不正請求を抑制可能なカルテ作成システム及びカルテ作成方法が提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明のカルテ作成システムの一実施形態を例示するブロック図である。
【
図2】本発明のカルテ作成システムの機能構成を例示するブロック図である。
【
図3】本発明のカルテ作成システムの流れの一例を示すフローチャート図である。
【
図4】本発明のカルテ作成システムの流れの一例を示すフローチャート図である。
【
図5】本発明のカルテ作成システムの流れの一例を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<カルテ作成システム>
本発明のカルテ作成システムは、愛玩動物の識別情報を取得する取得部と、前記識別情報に基づいて患者データベースから登録情報を検索する検索部と、患者データベースに登録情報が存在しない場合又は登録情報が不足している場合に、前記識別情報に基づいて登録データベースから登録情報を検索する再検索部と、前記登録情報に基づいてカルテを作成する作成部と、を備えることを特徴とする。これらの包括的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム、または記憶媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム、または記憶媒体の任意の組み合わせで実現されてもよい。
【0016】
[システムの概要]
図1は本発明のカルテ作成システムの実施形態の一例を示す図である。
図1で示される実施形態では、本発明のカルテ作成システム1は、一つの装置又はサーバにおいて構成され、ネットワークを介して、ユーザ端末2、患者データベース3、登録データベース4と接続されている。ネットワークとは、例えば、公衆電話回線網、携帯電話回線網、無線通信網、イーサネット(登録商標)、インターネット、イントラネットなどにより構築される。本構成は一例であり、ある構成が他の構成を兼ね備えていたり、他の構成が含まれていたりしてもよい。患者データベース3は、ネットワークを介さず、カルテ作成システム1に設置されているような形態でもよい。サーバは、例えば、ワークステーションまたはパーソナルコンピュータのような汎用コンピュータとしてもよく、クラウドコンピューティングによって構成されていてもよい。また、サーバ、ユーザ端末2及び患者データベース3を、場合によっては登録データベース4をも、含むネットワークシステム全体で、カルテ作成システム1と称してもよい。獣医師が使用する電子カルテと本発明のカルテ作成システムとが一つの装置である必要はなく、別の端末に作成したカルテを送信するような形態であってもよい。
【0017】
ユーザ端末2は、ユーザが愛玩動物の識別情報を読み取るための装置、当該装置と接続されたコンピュータ、タブレット、スマートフォンなどの端末又は当該装置と端末とが一体となった装置である。識別情報とは、愛玩動物を識別するための情報である。各愛玩動物にユニークな情報であることが好ましく、愛玩動物に付された情報がさらに好ましい。具体的には、愛玩動物の個体に固有な情報又は後天的に付与された情報、例えば、愛玩動物に装着されたマイクロチップの識別番号、虹彩、顔画像、鼻紋等が挙げられる。ユーザ端末2は識別情報を読み取ることができる機能を有している又はそのような機能を有する装置と接続されているもの或いは一体となっているものであれば特に限定されず、カメラ、カメラ付き端末、マイクロチップリーダー、マイクロチップリーダーと接続された端末などが挙げられる。また適宜本発明の取得部に識別情報を送信する機能を有していてもよい。ユーザとしては、例えば、獣医師、愛玩動物看護士等の獣医療従事者、事務員等の動物病院に務める作業者が挙げられる。
【0018】
愛玩動物としては、犬、猫、ウサギ、フェレット等の哺乳類、鳥類、爬虫類が挙げられるが、犬及び猫が好ましい。
【0019】
患者データベース3は、少なくとも登録情報が格納されたデータベースであり、データベースサーバの形で管理してよく、クラウドサーバ上で管理してもよく、分散データベースとしてもよい。また、データベースに情報を書き込む方法には特に限定はなく、取得部を介して情報を書き込む方法、記憶媒体を用いてデータベースに情報を書き込む方法等を適宜選択することができる。患者データベースの詳細は後述する。
【0020】
登録データベース4は、動物の識別情報と、当該動物の飼い主の情報とが関係付けられている登録情報が格納されているデータベースである。飼い主には、愛玩動物を所有、管理もしくは飼育する者だけでなく、愛玩動物の所有者等から代理を委託された者、愛玩動物の繁殖業者及び動物販売者であるブリーダー、ペットショップ等も含まれる。登録データベースの詳細は後述する。
【0021】
サーバは、コンピュータ等により実現され、ハードウェア構成例としては、一般的なものでよく、例えば、制御部(演算装置)、メモリ、ストレージ、通信部、入出力部を備え、これらは、バスを通じて相互に接続される。
【0022】
図2は、本発明のカルテ作成システムが、一つの装置又はサーバにおいて構成される実施形態の一例の構成図であり、
図1のカルテ作成システム10の機能構成図である。この例に係るカルテ作成システム10は、記憶部と処理演算部とインターフェース部を備える。
【0023】
記憶部は、カルテ作成システムの各部を動作させるための情報処理プログラムなどが記憶され、この実施形態の例では、検索部11、再検索部12のほか、作成部13、照会部14及び更新部15の機能を実行するためのソフトウェア等が記憶される。記憶部は例えば、ROM、RAMあるいはハードディスク等から構成される。
【0024】
処理演算部20は、記憶部に格納された検索部11、再検索部12、作成部13、照会部14及び更新部15を実行する。
【0025】
インターフェース部は、取得部31と出力部32を備える。取得部は、ユーザ端末又はユーザからの入力によって、愛玩動物の識別情報を取得し、出力部は、ユーザに対して照会部、更新部、検索部、再検索部による結果、動物患者の症状や、その診療方法等を入力する画面を出力又は獣医師が別途所有する電子カルテシステム等に送信する。
【0026】
本発明のカルテ作成システムの一実施形態に基づくカルテ作成システムのフローチャートを
図3に示す。まず、カルテ作成システムの取得部が、ユーザ端末が読み取った識別情報を取得する(ステップS1)。次に処理演算部が検索部を実行し、当該識別番号に基づいて患者データベースから登録情報を検索する(ステップS2)。患者データベースに当該登録情報が格納されている場合には、登録情報に基づいて作成部がカルテを作成する(ステップS4)。患者データベースに当該愛玩動物の登録情報が存在しない場合には、再検索部が登録データベースから登録情報を検索し(ステップS3)、カルテ作成部が当該登録情報に基づいてカルテを作成する(ステップS4)。
【0027】
本発明のカルテ作成システムの他の実施形態に基づくカルテ作成システムのフローチャートを
図4に示す。まず、ユーザ端末が愛玩動物の識別情報を読み取り、カルテ作成システムに送信し、カルテ作成システムの取得部が当該識別情報を取得する(ステップS1)。次に処理演算部が再検索部を実行し、登録データベースにアクセスし、当該愛玩動物の登録情報を検索する(ステップS2)。そして、作成部が登録情報に基づいてカルテを作成する(ステップS3)。
【0028】
患者データベースと登録データベースに記憶された登録情報が合致していない場合の、本発明のカルテ作成システムの一例実施形態に基づくカルテ作成システムのフローチャートを
図5に示す。まずユーザ端末が愛玩動物の識別情報を読み取り、カルテ作成システムに送信し、カルテ作成システムが当該識別情報を取得する(ステップS1)。次に処理演算部が検索部を実行し、患者データベースから当該識別情報に基づいて登録情報を検索する(ステップS2)。次に、再検索部が登録データベースから当該識別情報に基づいて登録情報を検索する(ステップS3)そして、更新部が患者データベースに格納された登録情報を登録データベースに格納された登録情報に基づいて更新する(ステップS4)。
【0029】
[識別情報]
識別情報とは、愛玩動物を識別するための情報である。各愛玩動物にユニークな情報であることが好ましく、愛玩動物に付された情報がさらに好ましい。具体的には、愛玩動物の個体に固有な情報又は後天的に付与された情報、例えば、愛玩動物に装着されたマイクロチップの識別番号、虹彩、顔画像、鼻紋等が挙げられる。従って、ユーザ端末はこれらの識別情報を読み取れる機能を有している又はそのような機能を有する装置と接続されているもの或いは一体となっているものであれば特に限定されず、例えば、カメラ、カメラ付き端末、マイクロチップリーダー、マイクロチップリーダーと接続された端末などが挙げられる。マイクロチップについては、マイクロチップリーダーが挙げられる。マイクロチップリーダーは本発明専用の装置でもよく、市販の装置でもよい。虹彩、顔画像、鼻紋についてはそれらの画像を撮影し、予め登録されている画像と比較できるような装置が挙げられる。また、マイクロチップリーダーなどのユーザ端末は、獣医師などのユーザに固有の識別符号や登録データベースのアクセス権限が付与されていることが好ましい。ユーザ端末に固有の識別符号やアクセス権限が付与されていることで、登録データベースにアクセス権限が必要な場合に、当該ユーザ端末の識別符号やアクセス権限と、登録データベースのアクセス権限が紐付けられることで、当該ユーザ端末を使用して愛玩動物の識別情報を得た場合には、逐次パスワードなどの入力などをせずとも登録データベースへのアクセスが可能となる。具体例として、登録データベースが、法令などの規定によりアクセス権限を有する獣医師しかアクセスできない構成となっており、マイクロチップリーダーが、各獣医師に固有の識別符号が割り振られており、獣医師は自らが使用するものとして登録され、識別符号が割り振られたマイクロチップリーダーを使用して愛玩動物の識別情報を読み取ることで、本発明のカルテ作成システムに識別情報が、マイクロチップリーダーの識別符号とともにアップロードされ、本発明のカルテ作成システムは、当該識別符号の情報を用いることで、別途ユーザがパスワードなどの入力をせずに、登録データベースにアクセスすることができる。
【0030】
[登録情報]
登録情報とは、愛玩動物の識別情報と飼い主の情報とが関係付けられた情報である。具体例としては、飼い主ハナコ氏(住所、氏名、生年月日、電話番号などで特定)が保有している犬コタロー(マイクロチップの識別番号などで特定)といった情報である。飼い主の情報とは、例えば、飼い主の名前、生年月日、住所、電話番号、マイナンバーのうち1又は2以上を含む情報である。登録情報は愛玩動物の識別情報から、その飼い主を特定するために必要である。また、愛玩動物の識別情報と飼い主の情報と愛玩動物の基本情報とが関係付けられた情報を登録情報と称してもよい。
【0031】
愛玩動物の基本情報とは、識別情報以外の愛玩動物の生体に関する基本的な情報であり、特に、愛玩動物の診察や治療に有用な情報やカルテ作成に有用な情報が好ましい。例えば、当該愛玩動物の名前、生年月日、性別、種類(犬、猫等)、品種、毛色、予防接種の有無のうち1又は2以上を含む情報である。
【0032】
[患者データベース]
本発明の患者データベースは、少なくとも登録情報が格納されたデータベースである。また既往歴、動物の保険加入状況(加入の有無、保険商品のプラン、保険金請求歴、有効期限)等のデータや、作成済みのカルテ等が格納されてよく、愛玩動物を診療した際に得られた愛玩動物の問診情報、身体所見情報、検査履歴情報、診断履歴情報、処置履歴情報、投薬歴情報又は処方履歴情報等のデータが格納されてもよい。
【0033】
また患者データベースは、グループ動物病院間で共有できる形態であってもよく、動物病院と保険会社とで共有できる形態であってもよい。例えば、患者データベースは、動物病院が保有するカルテ格納システムなどと接続され、動物病院での診察を受けた愛玩動物の登録情報が適宜アップロードされ、愛玩動物の登録情報を蓄積していく構成が好ましい。このような構成とすることで、例えば、愛玩動物が、後日別の動物病院での診察を受けた場合に、その動物病院において識別情報を取得し、本発明のカルテ作成システムにアクセスすることで、本発明のカルテ作成システムから患者データベースの検索が行われ、当該愛玩動物の登録情報が検索され、当該動物病院のためのカルテが作成される。
【0034】
[登録データベース]
本発明の登録データベースは、少なくとも登録情報が格納されたデータベースである。登録データベースは環境省のような公的なデータベースであってよく、保険会社や、その他民間登録団体が保有しているデータベースであってもよい。登録データベースは、法律や行政の定めやガイドラインにより、愛玩動物の登録情報の登録が認められたデータベースであることが好ましい。例えば、マイクロチップについては、動物の愛護及び管理に関する法律などの法律や省令等によって愛玩動物への装着及び情報登録が義務化されており、ブリーダーやペットショップなどは、指定登録機関が保有ないし管理する所有者情報の登録データベースに愛玩動物の登録情報を登録する必要がある。このような法的な裏付けのあるデータベースを登録データベースとすることで、愛玩動物の登録情報が網羅的に記憶されている登録データベースとすることができる。そして、本発明のカルテ作成システムは、そのような網羅的な登録データベースを再検索することで、患者データベースには登録されていない、或いは、患者データベースには不十分な情報しかない愛玩動物の登録情報を得ることができる。
【0035】
[検索部]
本発明の検索部は、愛玩動物の識別情報に基づいて患者データベースから登録情報を検索するものである。好ましくは、識別情報を取得すると、ユーザの意思に基づいて又は自動的に患者データベースにアクセスし、当該識別情報に基づいて検索を行うプログラム等である。また、患者データベースに登録情報が存在すれば、本発明の更新部がカルテの更新を行う。
【0036】
[再検索部]
本発明の再検索部は、登録データベースにアクセスする。アクセスした後、登録情報の検索を行う。好ましくは、再検索部は、取得した愛玩動物の識別情報が、患者データベースに登録情報が存在しない場合又は患者データベースに存在する登録情報が不十分である場合に登録データベースにアクセスし、登録情報の検索を行うプログラム等である。
【0037】
また、好ましくは、患者データベースの登録情報に不足がある場合にも、本発明の再検索部は識別番号に基づいて登録データベースから登録情報を検索する。例えば、患者データベース内の登録情報に飼い主の電話番号が格納されていない場合に、登録データベースから登録情報を検索する。当該飼い主の電話番号が登録データベースに格納されていれば、ユーザの意思に基づいて又は自動的に患者データベースに、登録データベースに格納された電話番号を入力する。なお、どのような場合に登録情報に不足があるとするかは、ユーザが適宜設定することができる構成としてもよい。例えば、ユーザが、登録情報として飼い主の電話番号を必須として設定をする。そして、患者データベースに存在する登録情報に飼い主の電話番号が含まれていない場合に、再検索部が登録データベースにアクセスするという構成である。
【0038】
再検索部は、検索部と独立して、識別情報を取得すると直接登録データベースにアクセスするような機能であってもよい。
【0039】
また、本発明のカルテ作成システムは、再検索部が、登録データベースに、ユーザの意思に基づいてアクセスするか、自動的にアクセスするかを適宜設定できるような機能を有してもよい。
【0040】
[作成部]
本発明の作成部は、登録情報に基づいて、カルテを作成する。カルテを作成するとは、例えば、カルテの作成に必要なマスタを生成し、当該登録情報を入力するものである。具体的には、例えば、登録情報を取得すると、患者データベース内に当該登録情報を格納し、患者データベース内のマスタに当該登録情報をもつ愛玩動物用の枠を設け、そこに当該登録情報を入力する。作成部は、患者データベース以外のデータベースや外部の既存のカルテデータベース内にカルテを作成する構成であってもよい。
【0041】
[照会部]
登録データベース、特に、登録データベースが、法令の定めに従って設置されたデータベースである場合、登録データベースに情報セキュリティの観点でアクセス制限が設けられていることがあり、その際には、アクセスを許可されたパスワード認証や生体認証が求められることがある。これらの認証は、情報セキュリティ上必要な認証ではあるが、スムーズな診療の妨げになることがある。したがって、本発明のカルテ作成システムは、さらに、自動でアクセス権限を有するユーザであることを登録データベースに認証させる照会部を備えていてもよい。なお、アクセス権限は全ての情報にアクセスできる権限である必要はなく、愛玩動物のカルテを作成するのに必要な情報にアクセスできれば十分である。そのため、ユーザが有するアクセス権限による閲覧可能な情報としては、登録情報が好ましく、飼い主の名前及び電話番号がさらに好ましい。
【0042】
アクセス権限を有するユーザであることを登録データベースに認証させる方法としては、例えば、識別情報の項で説明したように、ユーザ端末のユニークな情報と、登録データベースにアクセスが可能なユーザIDとを関係付けておいた状態で、当該ユーザ端末を用いて識別情報を読み取ると、自動的にユーザIDとパスワードを入力するというような態様が挙げられる。
【0043】
[更新部]
本発明のカルテ作成システムは、患者データベース内のデータを更新する更新部をさらに備えていてもよい。愛玩動物は、通常、ブリーダー等の繁殖業者のもとで繁殖され、ペットショップ等の生体販売業者のもとで販売されることで、家庭で飼育されることになる。また愛玩動物は、高頻度で獣医師にかかり、感染症による殺処分をされることもないため、産業動物等と比較して長寿であることが多く、登録情報における飼い主の情報は変更されることがあり得る。そのため、獣医師は既存患者を診療する際に、登録情報が変更されるたび、都度カルテを更新しなければならない。
【0044】
従って、本発明のカルテ作成システムは、患者データベースに格納された登録情報と、登録データベースに格納された登録情報とに相違がある場合に、ユーザの意思に基づいて又は自動的に、患者データベースに格納された登録情報を更新する更新部をさらに備えていてもよい。
【0045】
登録情報の更新は、患者データベースに格納された登録情報を、登録データベースに格納された登録情報に上書きしてもよく、患者データベースに格納された登録情報に、登録データベースに格納された登録情報を追加してもよい。
【0046】
例えば、患者データベースにも登録データベースにも飼い主の電話番号が格納されているが、それぞれのデータベースに格納されている電話番号が相違する場合、ユーザの意思に基づいて又は自動的に患者データベースに格納された電話番号に、登録データベースに格納された電話番号を上書き又は追加する。
【0047】
上書きをするか追加をするかは、適宜ユーザが設定できるような態様であってよい。
【0048】
また、識別情報を読み取った時点の日付のカルテを作成し、既存患者の新しい症状、診療方法、処方、投薬などを記入できる画面を出力部に出力させることができる。
【0049】
また、必要に応じて患者データベースに直接入力して更新できるような形態であってもよい。
【0050】
[取得部]
本発明のカルテ作成システムは、さらに動物の識別情報を取得する取得部を備えていてもよい。識別情報を取得する方法は特に限定されない。ユーザが本発明の取得部に直接入力してもよく、ユーザ端末から送信された識別情報を自動的に取得(受信)してもよい。
【0051】
虹彩、鼻紋を含む顔画像を取得する場合は、人工知能を用いて個体を判定できるような機能を有していてもよい。
【0052】
[出力部]
本発明のカルテ作成システムは、出力部を備えていてもよい。出力部は作成部によって作成されたカルテに、動物患者の症状や、その診療方法を入力できる画面を出力する。または、獣医師が別途所有する電子カルテシステムに、本発明のカルテ作成システムが作成したカルテを送信する。
【0053】
[カルテ作成方法]
本発明のカルテ作成方法は、愛玩動物の識別情報を取得する取得ステップと、コンピュータを用いて前記識別情報に基づいて患者データベースから登録情報を検索する検索ステップと、コンピュータを用いて前記識別情報に基づいて登録データベースから登録情報を検索する再検索ステップと、コンピュータを用いて前記登録情報に基づいてカルテを作成する作成ステップと、を備えるものである。取得ステップ、検索ステップ、再検索ステップ、作成ステップについては、それぞれ、本発明のカルテ作成システムの取得部、検索部、再検索部、作成部の説明と同様である。
【0054】
(カルテ作成システムの実施形態例)
(1)新規の動物患者が来院した場合
動物病院に新規の動物患者である犬Aが来院した場合の本発明のカルテ作成システムの実施形態の一例を示す。
【0055】
まず、獣医師がマイクロチップリーダーを用いて動物のマイクロチップの識別番号を読み取ると、マイクロチップリーダーがカルテ作成システムに識別番号を送信する。次に、本発明のカルテ作成システムの検索部が、当該マイクロチップの識別番号に基づいて患者データベースから登録情報が存在するか検索する。
【0056】
患者データベースに犬Aの識別番号が存在しない場合、再検索部が、登録データベースにアクセスし、犬Aのマイクロチップの識別番号に基づいて登録情報を検索し、患者データベースに登録情報を格納する。
【0057】
作成部が患者データベースに格納された登録情報に基づいて、カルテを生成する。具体的には、各動物患者の一覧が表示されるマスタ管理画面に犬Aの情報を登録するための枠を作成し、犬Aの登録情報を入力する。そして、本発明の出力部が犬Aの症状や診療方法を入力できる画面を出力する。
【0058】
(2)既存患者が来院した場合
既存動物患者である犬Bが来院した場合の本発明のカルテ作成システムの実施形態の一例を示す。
【0059】
まず、獣医師がマイクロチップリーダーを用いて動物のマイクロチップの識別番号を読み取ると、マイクロチップリーダーがカルテ作成システムに識別番号を送信する。次に、本発明のカルテ作成システムの検索部が、当該マイクロチップの識別番号に基づいて患者データベースから登録情報を検索する。
【0060】
次に再検索部が、マイクロチップの識別番号に基づいて登録データベースから登録情報を検索する。そして患者データベースに格納された登録情報と、登録データベースに格納された登録情報に相違がある場合に、更新部が、患者データベースに登録データベースに格納された登録情報を上書き又は追加する。
【0061】
そして、更新部がマイクロチップを読み取った時点の日付のカルテを作成し、本発明の出力部が犬Bの症状や診療方法を入力できる画面を出力する。さらに飼い主の情報に変更があれば更新する。
【0062】
以上の実施形態からわかるように、飼い主による愛玩動物を他の愛玩動物とすり替える等の不正な保険金請求を簡易に防止することができ、かつカルテを自動で更新できる。