(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122635
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】フラックス、及び、ソルダペースト
(51)【国際特許分類】
B23K 35/363 20060101AFI20240902BHJP
B23K 35/26 20060101ALI20240902BHJP
B23K 35/22 20060101ALI20240902BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20240902BHJP
B22F 9/00 20060101ALI20240902BHJP
C22C 13/00 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
B23K35/363 C
B23K35/363 E
B23K35/26 310A
B23K35/22 310A
B22F1/00 R
B22F9/00 B
C22C13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030293
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000143215
【氏名又は名称】株式会社弘輝
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】行方 一博
(72)【発明者】
【氏名】神尾 遼
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
【Fターム(参考)】
4K017AA04
4K017AA08
4K017BA01
4K017BB02
4K017BB03
4K017BB05
4K017BB06
4K017BB18
4K018BA20
4K018BD04
4K018BD10
4K018KA32
(57)【要約】
【課題】フラックス残渣の洗浄性を向上させることができるフラックス、及び、ソルダペーストを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に係るフラックスは、エステル化合物と、ロジン系樹脂と、チキソ剤と、溶剤と、を含み、前記エステル化合物が、炭素原子数が9~33の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪酸とオクチルドデカノールとの飽和脂肪酸エステル、及び、炭素原子数が18~22の直鎖状又は分岐鎖状の不飽和脂肪酸とオクチルドデカノールとの不飽和脂肪酸エステルから選択される少なくとも1種を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル化合物と、
ロジン系樹脂と、
チキソ剤と、
溶剤と、
を含み、
前記エステル化合物が、炭素原子数が9~33の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪酸とオクチルドデカノールとの飽和脂肪酸エステル、及び、炭素原子数が18~22の直鎖状又は分岐鎖状の不飽和脂肪酸とオクチルドデカノールとの不飽和脂肪酸エステルから選択される少なくとも1種を含む、フラックス。
【請求項2】
前記エステル化合物の含有量が、フラックス全体に対して、2.0質量%以上15.0質量%以下である、請求項1に記載のフラックス。
【請求項3】
前記エステル化合物が、ミリスチン酸オクチルドデシル、エルカ酸オクチルドデシル、イソステアリン酸オクチルドデシル、及び、ラノリン酸オクチルドデシルから選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載のフラックス。
【請求項4】
前記チキソ剤が、ポリアミド化合物を含む、請求項1に記載のフラックス。
【請求項5】
請求項1に記載のフラックスと、はんだ合金粉末と、を含む、ソルダペースト。
【請求項6】
前記はんだ合金粉末の合金組成が、Sn-Ag-Cu系、又は、前記Sn-Ag-Cu系にIn、Bi、Sb及びNiから選択される少なくとも1種をさらに配合してなる系であり、前記合金組成には、不可避的不純物が含まれる、請求項5に記載のソルダペースト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラックス、及び、ソルダペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板等の電子回路基板と接合部品との接合には、はんだ合金粉末とフラックスとを混合したソルダペーストが用いられる。ソルダペーストは、基板表面の電極部に塗布されると共に、該電極部に接合部品の電極部を接触させた状態で加熱(リフロー)される。これにより、はんだ合金粉末が溶融してはんだ接合部が形成され、該はんだ接合部を介して基板と接合部品とが接合された接合構造体を得ることができる。
【0003】
ソルダペーストに含まれるフラックスは、一般的に、ロジン、活性剤、溶剤、チキソ剤等から構成される。しかし、このようなフラックスを含むソルダペーストを用いてはんだ付けをすると、リフロー後にフラックス残渣がはんだ接合部の周囲に残る。前記フラックス残渣は、様々な問題を引き起こす可能性があることから、従来、洗浄剤を用いた洗浄工程を行うことでフラックス残渣を除去したり(例えば、特許文献1参照)、フラックス残渣の発生を抑制することにより洗浄を不要とした無洗浄タイプのフラックスを用いたりすることにより、フラックス残渣の低減が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、機器の高性能化に伴い、高密度で実装を行う必要性が高まっている。そのため、無洗浄タイプのフラックスを用いた場合であっても、フラックス残渣の密集又は凝集により、予期せぬ電気的信頼性の低下が起こる虞がある。
【0006】
このような問題を解決するためには、フラックス残渣の洗浄を行うことが考えられる。しかし、フラックスに添加されているチキソ剤は、基板に固着し、白く結晶化して残りやすいため、フラックス残渣の洗浄は容易ではない。特に、近年、環境負荷を低減させる観点から、準水系又は水系の洗浄液を用いることが要望されているが、準水系又は水系の洗浄液を用いた場合には、より洗浄の難易度が高くなってしまう。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、フラックス残渣の洗浄性を向上させることができるフラックス、及び、ソルダペーストを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るフラックスは、エステル化合物と、ロジン系樹脂と、チキソ剤と、溶剤と、を含み、前記エステル化合物が、炭素原子数が9~33の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪酸とオクチルドデカノールとの飽和脂肪酸エステル、及び、炭素原子数が18~22の直鎖状又は分岐鎖状の不飽和脂肪酸とオクチルドデカノールとの不飽和脂肪酸エステルから選択される少なくとも1種を含む。
【0009】
本発明に係るソルダペーストは、前記フラックスと、はんだ合金粉末とを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フラックス残渣の洗浄性を向上させることができるフラックス、及び、ソルダペーストを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係るフラックス、及び、ソルダペーストについて説明する。
【0012】
<フラックス>
本実施形態に係るフラックスは、エステル化合物と、ロジン系樹脂と、チキソ剤と、溶剤と、を含む。
【0013】
(エステル化合物)
エステル化合物は、炭素原子数が9~33の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪酸とオクチルドデカノールとの飽和脂肪酸エステル、及び、炭素原子数が18~22の直鎖状又は分岐鎖状の不飽和脂肪酸とオクチルドデカノールとの不飽和脂肪酸エステルから選択される少なくとも1種を含む。炭素原子数が33以下の飽和脂肪酸又は22以下の不飽和脂肪酸を用いることにより、エステル化合物のワックスとしての効果の発現を抑えて、洗浄性を向上させることができる。また、炭素原子数が9以上の飽和脂肪酸又は18以上の不飽和脂肪酸を用いることにより、リフローによってエステル化合物が気化することなく、フラックス残渣にエステル化合物が残存し、フラックス残渣の洗浄性を向上させることができる。炭素原子数が9~33の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪酸としては、例えば、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ベヘン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、ラノリン酸等が挙げられる。また、炭素原子数が18~22の直鎖状又は分岐鎖状の不飽和脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エルカ酸等が挙げられる。なお、ラノリン酸とは、ラノリンをケン化分解して得られる脂肪酸の総称であり、炭素原子数が9から33までの飽和脂肪酸から構成される非常に複雑な組成を有する飽和脂肪酸である。
【0014】
エステル化合物としては、例えば、カプリン酸オクチルドデシル、ウンデカン酸オクチルドデシル、ラウリン酸オクチルドデシル、トリデカン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ペンタデカン酸オクチルドデシル、パルミチン酸オクチルドデシル、マルガリン酸オクチルドデシル、ステアリン酸オクチルドデシル、ノナデカン酸オクチルドデシル、エイコサン酸オクチルドデシル、ベヘン酸オクチルドデシル、イソパルミチン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸オクチルドデシル、ラノリン酸オクチルドデシル、オレイン酸オクチルドデシル、リノール酸オクチルドデシル、リノレン酸オクチルドデシル、アラキドン酸オクチルドデシル、エルカ酸オクチルドデシル等が挙げられる。これらの中でも、エステル化合物は、ミリスチン酸オクチルドデシル、エルカ酸オクチルドデシル、イソステアリン酸オクチルドデシル、及び、ラノリン酸オクチルドデシルから選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、耐熱性とワックスとしての効果の発現を調整すると共に、酸化による影響を低減する観点から、ミリスチン酸オクチルドデシル、及び、イソステアリン酸オクチルドデシルから選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。なお、前記エステル化合物は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0015】
前記エステル化合物の含有量は、洗浄性を向上させる観点から、フラックス全体に対して、2.0質量%以上であることが好ましく、4.0質量%以上であることがより好ましく、6.0質量%以上であることが特に好ましい。また、前記エステル化合物の含有量は、ソルダペーストの粘度安定性及びはんだ濡れ性を向上させる観点から、フラックス全体に対して、15.0質量%以下であることが好ましく、12.0質量%以下であることがより好ましく、10.0質量%以下であることが特に好ましい。なお、前記エステル化合物が2種以上含まれる場合、前記含有量は合計含有量である。
【0016】
(ロジン系樹脂)
ロジン系樹脂としては、ロジン、及び、ロジン誘導体が挙げられる。ロジン誘導体としては、例えば、水素添加ロジン、重合ロジン、不均化ロジン、酸変性ロジン(例えば、マレイン酸変性ロジン、アクリル酸変性ロジン等)、酸変性水添ロジン(例えば、マレイン酸変性水添ロジン、アクリル酸変性水添ロジン等)、ロジンエステル、ペンタエリスリトールエステル等が挙げられる。なお、前記ロジン系樹脂は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0017】
前記ロジン系樹脂の含有量は、はんだ溶融性及びソルダペーストの粘度安定性を向上させる観点から、フラックス全体に対して、25.0質量%以上であることが好ましく、30.0質量%以上であることがより好ましく、35.0質量%以上であることが特に好ましい。また、前記ロジン系樹脂の含有量は、ソルダペーストの粘度安定性を向上させる観点から、フラックス全体に対して、60.0質量%以下であることが好ましく、55.0質量%以下であることがより好ましく、50.0質量%以下であることが特に好ましい。なお、前記ロジン系樹脂が2種以上含まれる場合、前記含有量は合計含有量である。
【0018】
(チキソ剤)
チキソ剤としては、例えば、ヒマシ硬化油、脂肪酸アミド、脂肪酸ビスアマイド、ポリアミド化合物、カオリン、コロイダルシリカ、有機ベントナイト、ガラスフリット等が挙げられる。これらの中でも、チキソ剤は、耐熱性を向上させる観点から、脂肪酸ビスアマイド(脂肪酸ビスアミド)、又は、ポリアミド化合物を含むことが好ましく、ポリアミド化合物を含むことがより好ましい。脂肪酸ビスアマイドとしては、例えば、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’-キシリレンビス-12-ヒドロキシステアリルアミド等が挙げられる。ポリアミド化合物としては、例えば、脂肪族ポリアミド化合物である、EMSOLDER、ターレンVA-79、AMX-6096A、WH-215、WH-255(以上、共栄社化学社製)、SP-10、SP-500(以上、東レ社製)、グリルアミドL20G、グリルアミドTR55(以上、エムスケミ-・ジャパン社製)等、主鎖にベンゼン環、ナフタレン環等の環式化合物含む芳香族ポリアミド化合物(半芳香族ポリアミド化合物又は全芳香族ポリアミド化合物)であるJH-180(伊藤製油社製)等が挙げられる。なお、前記チキソ剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0019】
前記チキソ剤の含有量は、フラックス全体に対して、0.8質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であることがより好ましく、1.3質量%以上であることが特に好ましい。また、前記チキソ剤の含有量は、フラックス全体に対して、5.0質量%以下であることが好ましく、4.5質量%以下であることがより好ましく、4.0質量%以下であることが特に好ましい。なお、前記チキソ剤が2種以上含まれる場合、前記含有量は合計含有量である。
【0020】
(溶剤)
溶剤としては、例えば、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(ヘキシルジグリコール)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(ジブチルジグリコール)、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル(2エチルヘキシルジグリコール)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルジグリコール)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルトリグリコール)、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル等のグリコールエーテル類;n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族系化合物;酢酸イソプロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等のエステル類;メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、ジエチルケトン等のケトン類;エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール等のアルコール類等の公知の溶剤が挙げられる。なお、前記溶剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0021】
前記溶剤の含有量は、ソルダペーストの粘度を調整する観点から、フラックス全体に対して、30.0質量%以上であることが好ましく、40.0質量%以上であることがより好ましく、45.0質量%以上であることが特に好ましい。また、前記溶剤の含有量は、ソルダペーストの粘度を調整し、はんだ溶融性を向上させる観点から、フラックス全体に対して、60.0質量%以下であることが好ましく、55.0質量%以下であることがより好ましく、50.0質量%以下であることが特に好ましい。なお、前記溶剤が2種以上含まれる場合、前記含有量は合計含有量である。
【0022】
(活性剤)
本実施形態に係るフラックスは、活性剤を含んでいてもよい。活性剤としては、例えば、有機酸系活性剤、アミン系化合物、アミノ酸、ハロゲン系活性剤等が挙げられる。なお、前記活性剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0023】
有機酸系活性剤としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリン酸、ラウリル酸、ペンタデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、グリコール酸等のモノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、フェニルコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、ジグリコール酸等のジカルボン酸;ダイマー酸、レブリン酸、乳酸、アクリル酸、安息香酸、サリチル酸、アニス酸、クエン酸、ピコリン酸等のその他の有機酸が挙げられる。
【0024】
アミン系化合物としては、例えば、イミダゾール系化合物、トリアゾール系化合物等が挙げられる。前記イミダゾール系化合物としては、例えば、ベンゾイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール(2E4MZ)、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)エチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-ブチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-メチル-2-フェニルイミダゾール等が挙げられる。前記トリアゾール系化合物としては、例えば、ベンゾトリアゾール、1H-ベンゾトリアゾール-1-メタノール、1-メチル-1H-ベンゾトリアゾール等が挙げられる。その他のアミン系化合物としては、例えば、セチルアミン、エルカ酸アミド、3-(ジメチルアミノ)-1,2-プロパンジオール、3,5-ジメチルピラゾール、ジメチルウレア、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリフェニル-1,3,5-トリアジン、ピラジンアミド、N-フェニルグリシン、3-メチル-5-ピラゾロン、N-ラウロイルサルコシン、1,3-ジフェニルグアニジン等が挙げられる。
【0025】
アミノ酸としては、例えば、N-アセチルフェニルアラニン(N-アセチル-L-フェニルアラニン、N-アセチル-DL-フェニルアラニン、N-アセチル-D-フェニルアラニン)、N-アセチルグルタミン酸(N-アセチル-L-グルタミン酸)、N-アセチルグリシン、N-アセチルロイシン(N-アセチル-L-ロイシン、N-アセチル-DL-ロイシン、N-アセチル-D-ロイシン)、又は、N-アセチルフェニルグリシン(N-アセチル-N-フェニルグリシン、N-アセチル-L-フェニルグリシン、N-アセチル-DL-フェニルグリシン)等が挙げられる。
【0026】
ハロゲン系活性剤としては、例えば、アミンハロゲン塩、ハロゲン化合物等が挙げられる。アミンハロゲン塩のアミンとしては、例えば、ジエチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ジフェニルグアニジン、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。アミンハロゲン塩のハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。ハロゲン化合物としては、イソシアヌル酸トリス(2,3-ジブロモプロピル)、2,3-ジブロモ-2-ブテン-1,4-ジオール、2-ブロモ-3-ヨード-2-ブテン-1,4-ジオール、TBA-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、4,4’-ジヨードビフェニル等が挙げられる。
【0027】
前記活性剤の含有量は、フラックス全体に対して、0.5質量%以上であることが好ましく、3.0質量%以上であることがより好ましい。また、活性剤の含有量は、フラックス全体に対して、20.0質量%以下であることが好ましく、10.0質量%以下であることがより好ましい。なお、活性剤が2種以上含まれる場合、前記含有量は合計含有量である。
【0028】
本実施形態に係るフラックスは、その他の添加剤として、例えば、安定剤、界面活性剤、消泡剤、及び、腐食防止剤から選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。その他の添加剤の合計含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、フラックス全体に対して、5.0質量%以下とすることができる。
【0029】
本実施形態に係るフラックスは、エステル化合物と、ロジン系樹脂と、チキソ剤と、溶剤と、を含み、前記エステル化合物が、炭素原子数が9~33の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪酸とオクチルドデカノールとの飽和脂肪酸エステル、及び、炭素原子数が18~22の直鎖状又は分岐鎖状の不飽和脂肪酸とオクチルドデカノールとの不飽和脂肪酸エステルから選択される少なくとも1種を含むことにより、フラックス残渣の洗浄性を向上させることができる。特に、準水系又は水系のフラックス洗浄剤を用いても、フラックス残渣を洗浄することができる。
【0030】
本実施形態に係るフラックスは、前記エステル化合物の含有量が、フラックス全体に対して、2.0質量%以上15.0質量%以下であってもよい。これにより、フラックス残渣の洗浄性をより向上させることができる。
【0031】
本実施形態に係るフラックスは、前記エステル化合物が、ミリスチン酸オクチルドデシル、エルカ酸オクチルドデシル、イソステアリン酸オクチルドデシル、及び、ラノリン酸オクチルドデシルから選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。これにより、フラックス残渣の洗浄性をより向上させることができる。
【0032】
本実施形態に係るフラックスは、前記チキソ剤が、ポリアミド化合物を含んでいてもよい。本実施形態に係るフラックスは、チキソ剤が基板に固着しやすいポリアミド化合物を含んでいても、準水系又は水系のフラックス洗浄剤を用いて、フラックス残渣を洗浄することができる。
【0033】
<ソルダペースト>
本実施形態に係るソルダペーストは、上述のフラックスと、はんだ合金粉末と、を含有する。前記ソルダペーストは、前記フラックスと前記はんだ合金粉末とを混合することにより得られる。前記フラックスの含有量は、前記ソルダペースト全体に対して、5.0質量%以上20.0質量%以下であることが好ましい。また、前記はんだ合金粉末の含有量は、前記ソルダペースト全体に対して、80.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。
【0034】
前記はんだ合金粉末の合金としては、鉛フリーはんだ合金、鉛を含む共晶はんだ合金が挙げられるが、環境負荷低減の観点から、鉛フリーはんだ合金であることが好ましい。このようなはんだ合金としては、例えば、スズ、銀、銅、インジウム、亜鉛、ビスマス、アンチモン等を含む合金が挙げられる。より具体的には、はんだ合金の合金組成としては、Sn-Ag系、Sn-Ag-Cu系、Sn-Cu系、Sn-Ag-Bi系、Sn-Bi系、Sn-Sb系、Sn-Zn-Bi系、Sn-Zn系、Sn-Zn-Al系、Sn-Ag-Bi-In系、In-Ag系等が挙げられる。また、はんだ合金の合金組成は、Sn-Ag-Cu系にIn、Bi、Sb及びNiから選択される少なくとも1種をさらに配合してなる系であってもよい。このような合金組成としては、例えば、Sn-Ag-Cu-Bi系、Sn-Ag-Cu-Bi-In-Sb系が挙げられる。はんだ合金の合金組成は、好ましくは、Sn-Ag-Cu系、又は、前記Sn-Ag-Cu系にIn、Bi、Sb及びNiから選択される少なくとも1種をさらに配合してなる系である。なお、前記はんだ合金の合金組成には、不可避的不純物が含まれる。不可避的不純物とは、製造過程において不可避的に混入する成分であって、本発明の効果に影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。不可避的不純物としては、例えばJIS Z 3282:2017の表2に記載された金属元素等が挙げられる。
【0035】
前記はんだ合金粉末の粒子径は、5μm以上45μm以下であることが好ましく、15μm以上39μm以下であることがより好ましい。
【0036】
本実施形態に係るソルダペーストは、上述のフラックスと、はんだ合金粉末と、を含有することにより、フラックス残渣の洗浄性を向上させることができる。
【0037】
本実施形態に係るソルダペーストは、前記はんだ合金粉末の合金組成が、Sn-Ag-Cu系、又は、前記Sn-Ag-Cu系にIn、Bi、Sb及びNiから選択される少なくとも1種をさらに配合してなる系であってもよい。前記ソルダペーストは、広く一般的に使用されているSn-Ag-Cu系の合金に対しても、フラックス残渣の洗浄性を向上させることができる。また、前記ソルダペーストは、はんだ合金の冷熱耐久性を向上させる目的で、In、Bi、Sb及びNiから選択される少なくとも1種の金属元素が配合されたものであっても、フラックス残渣の洗浄性を向上させることができる。
【0038】
本発明は、以下の態様を含む。
[1]エステル化合物と、
ロジン系樹脂と、
チキソ剤と、
溶剤と、
を含み、
前記エステル化合物が、炭素原子数が9~33の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪酸とオクチルドデカノールとの飽和脂肪酸エステル、及び、炭素原子数が18~22の直鎖状又は分岐鎖状の不飽和脂肪酸とオクチルドデカノールとの不飽和脂肪酸エステルから選択される少なくとも1種を含む、フラックス。
[2]前記エステル化合物の含有量が、フラックス全体に対して、2.0質量%以上15.0質量%以下である、[1]に記載のフラックス。
[3]前記エステル化合物が、ミリスチン酸オクチルドデシル、エルカ酸オクチルドデシル、イソステアリン酸オクチルドデシル、及び、ラノリン酸オクチルドデシルから選択される少なくとも1種を含む、[1]又は[2]に記載のフラックス。
[4]前記チキソ剤が、ポリアミド化合物を含む、[1]~[3]のいずれか一つに記載のフラックス。
[5][1]~[4]のいずれか一つに記載のフラックスと、はんだ合金粉末と、を含む、ソルダペースト。
[6]前記はんだ合金粉末の合金組成が、Sn-Ag-Cu系、又は、前記Sn-Ag-Cu系にIn、Bi、Sb及びNiから選択される少なくとも1種をさらに配合してなる系である、[5]に記載のソルダペースト。
【実施例0039】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0040】
<フラックスの作製>
表1及び表2に示す配合量の各材料を加熱容器に投入し、180℃まで加熱することにより、全材料を溶解させた。その後、室温まで冷却することにより、均一に分散された各実施例及び各比較例のフラックスを得た。なお、表1及び表2に示す各配合量は、フラックスに含まれる各成分の含有量と等しい。
【0041】
<ソルダペーストの作製>
各実施例及び各比較例のフラックスを11.0質量%、表1及び表2に示すはんだ合金粉末を89.0質量%となるように混合して、各実施例及び各比較例のソルダペーストを得た。
【0042】
【0043】
【0044】
表1及び表2に示すフラックスに含まれる各材料の詳細を表3に示す。また、表1及び表2に示すはんだ合金の詳細を表4に示す。
【0045】
【0046】
【0047】
<試験基板の作製>
各実施例及び各比較例のソルダペーストを弘輝試験用のプリント基板(KOKI VOIDTEST ver.3 OSP)に、印刷機(YVP-Xg、YAMAHA Motor社製)を用いて、下記印刷条件で印刷した。なお、弘輝試験用のプリント基板は、ラインアンドスペース(L/S)が、0.20/0.20、0.225/0.175、及び、0.25/0.15となるように、それぞれ線状のパッド20個が一列(横一列又は縦一列)に配置されたものである。
【0048】
(印刷条件)
印刷環境:温度が25±1℃、湿度が50±10%RH
印圧:50N
印刷速度:40mm/sec
版離れ速度:10mm/s
印刷スキージ:メタルスキージ(スキージ角度55deg)
マスク厚:120μm
パッドの形状及び大きさ:線状、線幅が0.2mm、0.225mm、及び、0.25mm、線の長さが1.50mm
パッドの材質:OSP水溶性プリフラックス処理銅
【0049】
続いて、ソルダペーストを印刷した基板を下記温度条件で加熱することにより、はんだ合金粉末を溶融させてはんだ付け部(すなわち、はんだ合金粉末が溶融して一体化した部分)を形成した。なお、基板は、下記温度条件(i)で予熱した後、下記温度条件(ii)で加熱した。
【0050】
(温度条件)
(i)プリヒート時
昇温速度:1.0~3.0℃/秒
プリヒート温度:150~190℃/60~100秒
加熱環境:大気雰囲気
(ii)はんだ溶融時
昇温速度:1.0~2.0℃/秒
溶融温度:219℃以上30秒以上
ピーク温度:230~250℃
【0051】
最後に、はんだ付け部が形成された基板を、液温が60℃の洗浄液(Vigon A250、ゼストロンジャパン社製)に投入し、撹拌速度が300rpmのスターラーで10分間撹拌することにより洗浄を行った。その後、IPA(イソプロピルアルコール)を用いてリンス処理を行い、各実施例及び各比較例の試験基板を作製した。
【0052】
<洗浄性の評価>
各実施例及び各比較例の試験基板におけるラインアンドスペース(L/S)が、0.20/0.20、0.225/0.175、及び、0.25/0.15のはんだ付け部において、隣り合うはんだ付け部の間(各L/Sごとに19カ所)の状態を目視にて確認し、下記の基準に基づいて、それぞれ点数をつけた。点数の合計が10~12点である場合には「洗浄性良好」と判定し、6~9点である場合には「洗浄可」と判定し、5点以下である場合には「洗浄不可」と判定した。評価結果を表1及び表2に示す。
0点:隣り合うはんだ付け部の間を跨ぐように、白く霞む、又は、結晶が発生する(すなわち、隣り合うはんだ付け部の間を跨ぐようなフラックス残渣が存在する)
1点:隣り合うはんだ付け部の間に、該はんだ付け部を跨がずに、白く霞む、又は、結晶が発生する(すなわち、隣り合うはんだ付け部の間を跨がないフラックス残渣が存在する)
2点:隣り合うはんだ付け部の間に何も存在しない(すなわち、フラックス残渣が存在しない)
【0053】
表1及び表2の結果から分かるように、本発明の要件をすべて満たす各実施例のフラックスは、洗浄性の評価が「洗浄性良好」又は「洗浄可」であることから、フラックス残渣の洗浄性を向上させることができる。