IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社小糸製作所の特許一覧

<>
  • 特開-筐体部品及び筐体部品の破壊方法 図1
  • 特開-筐体部品及び筐体部品の破壊方法 図2
  • 特開-筐体部品及び筐体部品の破壊方法 図3
  • 特開-筐体部品及び筐体部品の破壊方法 図4
  • 特開-筐体部品及び筐体部品の破壊方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122638
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】筐体部品及び筐体部品の破壊方法
(51)【国際特許分類】
   F21V 15/01 20060101AFI20240902BHJP
   F21S 45/00 20180101ALI20240902BHJP
【FI】
F21V15/01 300
F21S45/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030298
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100122183
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 貴丈
(72)【発明者】
【氏名】大塚 靖史
(57)【要約】
【課題】車両用灯具の内部の部品を取り出しやすくする新たな技術を提供する。
【解決手段】筐体部品42は、車両用灯具の機能を実現するための機能部品を収容する筐体の一部を構成する。筐体部品42は、所定の工具の所定の動作によって破壊しやすい構造となっている被破壊部44を有する。被破壊部44は、破壊されることで、筐体を分解せずに筐体内部の機能部品を取り出せる開口部46が形成されるように構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用灯具の機能を実現するための機能部品を収容する筐体の一部を構成する筐体部品であって、
前記筐体部品は、所定の工具の所定の動作によって破壊しやすい構造となっている被破壊部を有し、
前記被破壊部は、破壊されることで、筐体を分解せずに筐体内部の機能部品を取り出せる開口部が形成されるように構成されていることを特徴とする筐体部品。
【請求項2】
前記被破壊部は、開口部となる領域の外縁部に間隔をおいて複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載の筐体部品。
【請求項3】
前記開口部となる領域は矩形であり、
前記被破壊部は、
前記領域の一辺に沿って配置されている第1の被破壊部と、
前記領域の他辺に沿って配置されている第2の被破壊部と、
を有することを特徴とする請求項2に記載の筐体部品。
【請求項4】
前記被破壊部は、
筐体部品の外側から内側に凹んだ、所定の工具の先端が入り込む凹部と、
前記凹部が筐体部品の内側に突き出た凸部の基部に形成された薄肉部と、
前記凹部の底部に工具の先端が引っかかった状態で工具を傾けた際に工具から力を受ける力受け部と、を有し、
前記薄肉部は、前記力受け部が受けた力で破断するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の筐体部品。
【請求項5】
前記凹部は、底部に向かって幅が狭まる横長の溝であり、
前記力受け部は、前記溝の一方の斜面から突き出し、溝の長手方向に延びるライン状の部分であることを特徴とする請求項4に記載の筐体部品。
【請求項6】
車両用灯具の機能を実現するための機能部品を収容する筐体の一部を構成する筐体部品の破壊方法であって、
所定の工具の所定の動作によって破壊しやすい構造となっている被破壊部を有する筐体部品を準備する工程と、
前記被破壊部に工具を突き立てて傾けることで該被破壊部を破壊し、筐体を分解せずに筐体内部の機能部品を取り出せる開口部を形成する工程と、
を含むことを特徴とする筐体部品の破壊方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具を構成する部品の一部を破壊しやすくする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野でカーボンニュートラルを目標とした開発が進められている。そのため、車両に用いられている各部品についても、リサイクルやリユースが可能な部品は分解して選別することが望ましい。例えば、特許文献1には、光源にLEDを用いたプロジェクタ型のヘッドランプが開示されているが、このヘッドランプのランプハウジング内に内装されているランプユニットや点灯回路装置は比較的汎用性があり、可能な範囲でリユースすることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-212485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、多くの部品は、組立ての容易さや組み立てた部品同士が外れないことを優先して設計されており、必ずしも分解されることを前提に設計されていない。そのため、部品同士の分解に多くの時間や労力が必要となり、部品のリサイクルコストの上昇やリサイクル率の低下を招くことになる。
【0005】
例えば、前述のランプハウジングは、容器状をしたランプボディと透光性の前面カバーを接着や溶着で一体化したものであり、分解して内部のランプユニットや点灯制御回路を取り出すことには多くの工数が必要となる。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的の一つは、車両用灯具の内部の部品を取り出しやすくする新たな技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の筐体部品は、車両用灯具の機能を実現するための機能部品を収容する筐体の一部を構成する筐体部品であって、筐体部品は、所定の工具の所定の動作によって破壊しやすい構造となっている被破壊部を有する。被破壊部は、破壊されることで、筐体を分解せずに筐体内部の機能部品を取り出せる開口部が形成されるように構成されている。
【0008】
この態様によると、所定の工具の所定の動作によって筐体を分解せずに筐体内部の機能部品を取り出せる。
【0009】
被破壊部は、開口部となる領域の外縁部に間隔をおいて複数設けられていてもよい。これにより、所定の工具の所定の動作を複数回行うことで筐体に大きな開口部を形成できる。
【0010】
開口部となる領域は矩形である。被破壊部は、領域の一辺に沿って配置されている第1の被破壊部と、領域の他辺に沿って配置されている第2の被破壊部と、を有してもよい。これにより、矩形の開口部を筐体に簡易に形成できる。
【0011】
被破壊部は、筐体部品の外側から内側に凹んだ、所定の工具の先端が入り込む凹部と、凹部が筐体部品の内側に突き出た凸部の基部に形成された薄肉部と、凹部の底部に工具の先端が引っかかった状態で工具を傾けた際に工具から力を受ける力受け部と、を有してもよい。薄肉部は、力受け部が受けた力で破断するように構成されていてもよい。これにより、開口部としたい領域を囲むように薄肉部を配置することで破壊される箇所を制御できる。
【0012】
凹部は、底部に向かって幅が狭まる横長の溝であり、力受け部は、溝の一方の斜面から突き出し、溝の長手方向に延びるライン状の部分であってもよい。
【0013】
本発明の別の態様は、筐体部品の破壊方法である。この方法は、車両用灯具の機能を実現するための機能部品を収容する筐体の一部を構成する筐体部品の破壊方法であって、所定の工具の所定の動作によって破壊しやすい構造となっている被破壊部を有する筐体部品を準備する工程と、被破壊部に工具を突き立てて傾けることで該被破壊部を破壊し、筐体を分解せずに筐体内部の機能部品を取り出せる開口部を形成する工程と、を含む。
【0014】
この態様によると、所定の工具の所定の動作によって筐体を分解せずに筐体内部の機能部品を取り出せる。
【0015】
以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を製造方法、灯具や照明などの装置、発光モジュール、光源などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、車両用灯具の内部の部品を取り出しやすくできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施の形態に係る車両用灯具の概略構成を示す縦断面図である。
図2図2(a)は、本実施の形態に係る筐体部品の正面図、図2(b)は、図2(a)に示す筐体部品を反対側から見た背面図である。
図3図3(a)は、図2(a)に示す筐体部品のA-A断面図、図3(b)は、図3(a)に示す領域R3の拡大図である。
図4】本実施の形態に係る筐体部品に対する所定の工具の所定の動作を説明するための斜視図である。
図5】本実施の形態に係る筐体部品の被破壊部における破壊の様子を説明するための要部断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0019】
本実施の形態に係る筐体部品は、車両用灯具を構成する部品の一つである。以下では、車両用灯具としてヘッドランプを例に説明するが、リヤランプに本実施の形態に係る筐体部品を用いてもよい。
【0020】
図1は、本実施の形態に係る車両用灯具の概略構成を示す縦断面図である。図1に示す車両用灯具10は、車両フード12とバンパ14との間の空間に配置されている。車両用灯具10は、光源にLEDを用いたプロジェクタ型の灯具ユニット16を備える。灯具ユニット16は、LEDが搭載された基板18と、LEDから上方に出射した光を灯具前方に向けて反射するリフレクタ20と、リフレクタ20で反射された光を灯具前方に投影して所望の配光パターンを形成する投影レンズ22と、を有する。
【0021】
灯具ユニット16は、アウタレンズ26とランプボディ28とで囲まれた灯室30内に配置されている。また、灯具ユニット16とアウタレンズ26との間には、投影レンズ22の部分が開口となっているエクステンション24が設けられている。
【0022】
基板18は、ヒートシンク等が一体となったベース部材32に搭載されている。ベース部材32は、レベリングブラケット34に支持されている。レベリングブラケット34の上部には、レベリングアクチュエータ36の出力軸36aが接続されており、レベリングブラケット34の下部には、エイミングスクリュー38が接続されている。レベリングアクチュエータ36及びエイミングスクリュー38は、直接的又は間接的にランプボディ28に支持されている。
【0023】
前述のように、車両用灯具10の廃棄や交換に伴い、灯室30内に設けられている灯具ユニット16やLEDドライバーモジュール、レベリングアクチュエータ36といった機能部品を再利用しようとする場合、アウタレンズ26とランプボディ28とを分解することが一案である。しかしながら、本実施の形態に係るアウタレンズ26とランプボディ28とはゲル接着剤40を介して強固に接合されている。そのため、ゲル接着剤40を加熱したり溶かしたりして分解するためには多くの工数(時間)が必要である。そこで、本願発明者らが鋭意検討した結果、車両用灯具の内部の部品を取り出すことが容易な新たな構造に想到した。
【0024】
以下では、筐体部品であるランプボディ28に設けた新たな構造について説明する。この構造は、例えば、図1に示すランプボディ28の底部の領域R1や背面部の領域R2に設けられている。図2(a)は、本実施の形態に係る筐体部品の正面図、図2(b)は、図2(a)に示す筐体部品を反対側から見た背面図である。なお、以下の各図における筐体部品は、後述する被破壊部を説明するために必要な要部を示しており、必ずしも車両用灯具に用いられる実際の筐体部品の形状や大きさと同じとは限らない。
【0025】
図2(a)、図2(b)に示す筐体部品42は、車両用灯具10の機能を実現するための機能部品(灯具ユニット16、ベース部材32、レベリングアクチュエータ36等)を収容する筐体の一部を構成する。筐体部品42は、所定の工具の所定の動作によって破壊しやすい構造となっている被破壊部44を有する。被破壊部44は、破壊されることで、筐体を分解せずに筐体内部の機能部品を取り出せる開口部46が形成されるように構成されている。
【0026】
また、本実施の形態に係る筐体部品42において、被破壊部44は、開口部46となる領域の外縁部に間隔をおいて複数設けられている。これにより、所定の工具の所定の動作を複数回行うことで筐体に大きな開口部を形成できる。また、筐体部品42においては、開口部46となる領域は矩形である。被破壊部44は、開口部46となる領域の一辺に沿って配置されている第1の被破壊部45aと、開口部46となる領域の他辺に沿って配置されている第2の被破壊部45bと、を有している。これにより、矩形の開口部46を筐体に簡易に形成できる。
【0027】
図3(a)は、図2(a)に示す筐体部品のA-A断面図、図3(b)は、図3(a)に示す領域R3の拡大図である。図4は、本実施の形態に係る筐体部品に対する所定の工具の所定の動作を説明するための斜視図である。図5は、本実施の形態に係る筐体部品の被破壊部における破壊の様子を説明するための要部断面斜視図である。
【0028】
図3乃至図5に示すように、本実施の形態に係る所定の工具としては、例えば、先端が楔形のマイナスドライバ48である。そして、図3図4に示す方向にマイナスドライバ48を動かすことで、被破壊部44が破壊される。つまり、所定の工具の所定の動作は、車両用灯具の機能を実現するための機能部品を収容する筐体の一部を構成する筐体部品42の破壊方法でもある。この方法は、マイナスドライバ48の所定の動作によって破壊しやすい構造となっている被破壊部44を有する筐体部品42を準備し、被破壊部44にマイナスドライバ48を突き立てて傾けることで被破壊部44の一部を破壊し、筐体を分解せずに筐体内部の機能部品を取り出せる開口部46を形成する。
【0029】
次に、被破壊部44の構造について図2乃至図5を用いて詳述する。被破壊部44は、筐体部品42の外側EXから内側INに凹んだ、マイナスドライバ48の先端48aが入り込む凹部44aと、凹部44aが筐体部品42の内側INに突き出た凸部44bの基部44cに形成された薄肉部44dと、凹部44aの底部44eにマイナスドライバ48の先端48aが引っかかった状態でマイナスドライバ48を傾けた際にマイナスドライバ48から力を受ける力受け部44fと、を有する。マイナスドライバ48は、先端が鋭角を成す2つの平面を有している。
【0030】
そこで、図5に示すように、マイナスドライバ48の先端48aを凹部44aの底部44eに突き当て、先端48aを支点としてマイナスドライバ48全体を傾けることで、2つの平面の一方の平面48bが力受け部44fを押圧する。その結果、被破壊部44の薄肉部44dは、矢印に示す反対方向の2つの力によって裂ける力が発生し、最終的に破断する。
【0031】
このように、薄肉部44dは、力受け部44fが受けた力で破断するような厚みや形状で構成されている。本実施の形態では、筐体部品42の内側INに形成されたライン状のノッチ44gによって薄肉部44dが実現されている。ノッチ44gは断面が楔形である。これにより、図2に示すように、開口部46としたい領域を囲むように薄肉部44dを配置することで破壊される箇所を制御できる。なお、被破壊部44を1箇所破壊した際に破壊(破断)される薄肉部44dの長さLは、被破壊部44自体の長手方向の長さL1よりも長い。したがって、点在する複数の被破壊部44を破壊することで開口部46を形成できる。これにより、ランプボディ28の底部の領域R1や背面部の領域R2から、リユースが可能な灯具ユニット16やLEDドライバーモジュール、レベリングアクチュエータ36といった機能部品を、灯室30外へ取り出しやすくできる。
【0032】
凹部44aは、底部44eに向かって幅が狭まる横長の溝であり、力受け部44fは、溝の一方の斜面44hから突き出し、溝の長手方向に延びるライン状の部分である。本実施の形態に係る筐体部品42の厚みd1は1.2~1.8mmの範囲に含まれており、薄肉部44dの厚みd2は0.5~1.2mmの範囲に含まれている。楔形のノッチ44gの2つの面が成す角度αは45~75°の範囲に含まれている。凹部44aの深さd3は3~5mmの範囲に含まれており、凹部44aの底部44eの平坦部の幅Wは1.0~1.5mmである。筐体部品42の材質は、例えば、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)樹脂やASA(アクリロニトリルスチレンアクリレート)樹脂である。
【0033】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0034】
10 車両用灯具、 16 灯具ユニット、 28 ランプボディ、 30 灯室、 32 ベース部材、 34 レベリングブラケット、 36 レベリングアクチュエータ、 42 筐体部品、 44 被破壊部、 44a 凹部、 44b 凸部、 44c 基部、 44d 薄肉部、 44e 底部、 44f 力受け部、 44g ノッチ、 44h 斜面、 45a 第1の被破壊部、 45b 第2の被破壊部、 46 開口部、 48 マイナスドライバ、 48a 先端。
図1
図2
図3
図4
図5