IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 貴州振華新材料股▲ふん▼有限公司の特許一覧

特開2024-12264単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料及びその製造方法並びに電池
<>
  • 特開-単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料及びその製造方法並びに電池 図1
  • 特開-単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料及びその製造方法並びに電池 図2
  • 特開-単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料及びその製造方法並びに電池 図3
  • 特開-単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料及びその製造方法並びに電池 図4
  • 特開-単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料及びその製造方法並びに電池 図5
  • 特開-単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料及びその製造方法並びに電池 図6
  • 特開-単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料及びその製造方法並びに電池 図7
  • 特開-単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料及びその製造方法並びに電池 図8
  • 特開-単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料及びその製造方法並びに電池 図9
  • 特開-単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料及びその製造方法並びに電池 図10
  • 特開-単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料及びその製造方法並びに電池 図11
  • 特開-単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料及びその製造方法並びに電池 図12
  • 特開-単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料及びその製造方法並びに電池 図13
  • 特開-単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料及びその製造方法並びに電池 図14
  • 特開-単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料及びその製造方法並びに電池 図15
  • 特開-単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料及びその製造方法並びに電池 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012264
(43)【公開日】2024-01-30
(54)【発明の名称】単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料及びその製造方法並びに電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20240123BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240123BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20240123BHJP
   H01M 10/054 20100101ALI20240123BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/131
H01M10/054
C01G53/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023114222
(22)【出願日】2023-07-12
(31)【優先権主張番号】202210841494.0
(32)【優先日】2022-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】518246268
【氏名又は名称】貴州振華新材料股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】周 朝毅
(72)【発明者】
【氏名】向 黔新
(72)【発明者】
【氏名】李 金凱
(72)【発明者】
【氏名】武 陽
(72)【発明者】
【氏名】呉 興平
【テーマコード(参考)】
4G048
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AA05
4G048AB01
4G048AC06
4G048AD03
4G048AD07
4G048AE05
4G048AE08
5H029AJ05
5H029AK03
5H029AL13
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029CJ02
5H029CJ08
5H029CJ28
5H029DJ16
5H029DJ17
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ05
5H029HJ07
5H029HJ08
5H029HJ10
5H029HJ13
5H029HJ14
5H029HJ15
5H050AA07
5H050BA15
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB12
5H050EA02
5H050EA06
5H050EA15
5H050FA17
5H050FA19
5H050GA02
5H050GA05
5H050GA10
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA08
5H050HA10
5H050HA13
5H050HA14
5H050HA15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ナトリウムイオン電池のサイクル性能を向上させる、単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料を提供する。
【解決手段】単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料の化学組成式は、Na1+aNi1-x-y-zMnFeであり、ここで、-0.40≦a≦0.25、0.08≦x≦0.5、0.05≦y≦0.5、0≦z<0.26であり、前記Mは、Ti、Zn、Co、Mn、Al、Zr、Y、Ca、Li、Rb、Cs、W、Ce、Mo、Ba、Mg、Ta、Nb、V、Sc、Sr、B、F、P又はCu元素から選ばれる1種又は2種以上である。
【効果】単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料は、特定の化学組成を有すると同時に単結晶トポグラフィーを有し、良好な構造安定性及び完全性を有し、サイクル中に粒子が割れることがなく、ナトリウムイオン電池のサイクル安定性を向上させる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料であって、
当該単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料の化学組成式は、Na1+aNi1-x-y-zMnFeであり、ここで、-0.40≦a≦0.25、0.08≦x≦0.5、0.05≦y≦0.5、0≦z<0.26であり、
前記Mは、Ti、Zn、Co、Mn、Al、Zr、Y、Ca、Li、Rb、Cs、W、Ce、Mo、Ba、Mg、Ta、Nb、V、Sc、Sr、B、F、P又はCu元素から選ばれる1種又は2種以上である、
ことを特徴とする単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料。
【請求項2】
-0.33≦a≦0、0.10≦x≦0.5、0.15≦y≦0.5である、
ことを特徴とする請求項1に記載の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料。
【請求項3】
前記Mは、Zn、Ti、Co、Al、Zr、Y、Ca、Li、Rb、Cs、W、Ce、Mo、Ba、Mg、Ta、Nb、V、Sc、Sr、B、F、P又はCuから選ばれる1種又は2種以上であり、
ことを特徴とする請求項1に記載の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料。
【請求項4】
前記Mは、Zn、Al、B、Ti、Ca、Y、Mg、Nb、Zr又はCuのうちの1種又は2種以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料。
【請求項5】
-0.40≦a≦0.25,0.08≦x≦0.5,0.05≦y≦0.5,0≦z≦0.16である、
ことを特徴とする請求項1に記載の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料。
【請求項6】
当該ナトリウムイオン電池用正極材料は、走査電子顕微鏡下で、その微視的トポグラフィーが単結晶トポグラフィーであり、ここで、前記単結晶トポグラフィー粒子の形状は、球形、疑似球形、多角形又は層状シートのうちの1種又は2種以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料。
【請求項7】
当該単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料の粉末X-線回折スペクトル(XRD)において、回折角2θが64.9°付近の(110)回折ピークの半値幅FWHM(110)は、0.06~0.35である、
ことを特徴とする請求項1に記載の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料。
【請求項8】
当該単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料の7000~9000kg圧力下での圧粉密度は、2.8~4.2g/cmである、
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料。
【請求項9】
当該単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料の水分質量含有量は、3000ppm未満である、
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料。
【請求項10】
当該単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料のpH値は、13.1以内である、
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料。
【請求項11】
当該単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料の比表面積は、0.35~1.2m/gであり、当該単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料の粒径D50は、2.0~16.0μmである、
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料。
【請求項12】
ナトリウム源化合物、鉄源化合物及びマンガン源化合物を含む原料を混合し、及び必要に応じてニッケル源化合物及び/又はM源化合物を加え、焼結し、粉砕して単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料を得るステップを含む、
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法。
【請求項13】
前記焼結温度は、860~990℃である、
ことを特徴とする請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記粉砕圧力は、0.1~1MPaである、
ことを特徴とする請求項12に記載の製造方法。
【請求項15】
前記ナトリウム源化合物は、ナトリウム元素を含む塩及び/又は水酸化物を含み、
及び/又は、前記マンガン源化合物は、マンガン元素を含む酸化物、水酸化物又は塩のうちの1種又は2種以上を含み、
及び/又は、前記ニッケル源化合物は、ニッケル元素を含む酸化物、水酸化物又は塩のうちの1種又は2種以上を含み、
及び/又は、前記鉄源化合物は、鉄元素を含む酸化物、水酸化物又は塩のうちの1種又は2種以上を含み、
及び/又は、前記M源化合物は、M元素を含む酸化物及び/又は塩類を含む、
ことを特徴とする請求項12に記載の製造方法。
【請求項16】
請求項12に記載の製造方法により製造される、
ことを特徴とする単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料。
【請求項17】
活物質が請求項1~7のいずれか一項又は請求項16に記載の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料である、
ナトリウムイオン電池用正極。
【請求項18】
請求項17に記載のナトリウムイオン電池用正極を含む、
ことを特徴とするナトリウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナトリウムイオン電池の技術分野に属し、具体的には単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料及びその製造方法並びに電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池の競合の白熱化に伴い、需給関係、資源的な規制に加え、リチウム塩の価格が高騰し、コスト優位性を持つナトリウムイオン電池が徐々に各大手企業及び大学の研究の焦点となってきている。ナトリウムイオン電池は、リチウムイオン電池と同じ原理で動作するが、比較すると、ナトリウムイオンのイオン半径がより大きく、拡散速度がより遅いため、ナトリウムイオンはエネルギー密度及びサイクル特性において若干の欠点を有する。
【0003】
ナトリウムイオン電池、ここ10年間の各界での大量の研究を経て、主に遷移金属酸化物、プルシアンブルー、ポリアニオンリン酸塩などの体系の製品を形成し、そのうち遷移金属酸化物は比較的高い比容量を有するため、皆の人気を得るが、サイクル性能が悪く、エネルギー密度が低いのはナトリウムイオン電池用正極材料の応用に影響を与える重要な要因となっている。
【0004】
現在市場に出回っている遷移金属酸化物は、主に、銅元素を含むニッケルマンガン鉄銅系酸化物と、ニッケル鉄マンガン系酸化物の2種類に分けられ、いずれの種類であっても、ニッケル、鉄、マンガン、銅元素の異なる配合比率を変えることで性能の異なるナトリウムイオン電池用正極材料を得ることができる。また、元素の配合比率が異なるため、電解液と接触したときの材料の安定性も変化する。一方、ナトリウムイオン電池用正極材料のサイクル寿命に影響を与える要因は、1.サイクル中の表面結晶構造の再構築、2.サイクル中の異方性の体積膨張による凝集粒子の破壊である。研究によると、凝集粒子の内部の粒子と粒子の接続構造は局所的な電流密度の上昇をもたらし、それによって非常に大きな応力を生じ、それによって材料のサイクル特性に影響を与えることが見出され、また、粒子内部の各部間では、充電状態の不一致現象も存在し、これが電極の電気化学的性能に影響を与える。
【0005】
また、ナトリウムイオン電池用正極材料の脱ナトリウム量が比較的大きい場合、構造が非常に脆弱になり、格子内の活性金属と酸素が変位し、一定の高温高圧に達し、原子の再配列及び再構成が徐々に激化し、結晶粒の体積及び物質相が大きく変化し、一方、正極材料が脱ナトリウムされると、酸化力が強くなり、電解液と化学的及び電気化学的作用が極めて生じやすく、材料の脱酸素が容易になり、遷移金属が溶解し、特に高電圧下で電解液が酸化され、Hが生成され、電解液の酸性度が向上し、それによって電極材料の表面膜がHFの破壊を受け、界面の成分や構造がさらに変化し、材料の電気化学的性能及びサイクル性能に深刻な影響を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする技術的課題は、ナトリウムイオン電池のサイクル性能を向上させる、単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料を提供することである。
【0007】
上記技術的課題に鑑み、本出願の発明者らは鋭意研究した結果、単結晶トポグラフィーを有する単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料を得、当該材料は構造が完全であり、加工性能が良好であり、サイクル中に粒子が割れることがなく、粒子の割れによる新たな界面の発生を効果的に減少させる。材料の結晶構造を安定化し、ナトリウムイオン電池、特に動力型ナトリウムイオン電池に適用することにより、電池の高温高電圧サイクル性能、特に高温安定性を効果的に改善することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の技術的解決手段は、以下のとおりである。
本発明は、単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料を提供し、当該単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料の化学組成式は、Na1+aNi1-x-y-zMnFeであり、ここで、-0.40≦a≦0.25、0.08≦x≦0.5、0.05≦y≦0.5、0≦z<0.26であり、
前記Mは、Ti、Zn、Co、Mn、Al、Zr、Y、Ca、Li、Rb、Cs、W、Ce、Mo、Ba、Mg、Ta、Nb、V、Sc、Sr、B、F、P又はCu元素から選ばれる1種又は2種以上である。
【0009】
好ましくは、-0.33≦a≦0、0.10≦x≦0.5、0.15≦y≦0.5である。
【0010】
好ましくは、前記Mは、Zn、Ti、Co、Al、Zr、Y、Ca、Li、Rb、Cs、W、Ce、Mo、Ba、Mg、Ta、Nb、V、Sc、Sr、B、F、P又はCuから選ばれる1種又は2種以上であり、好ましくはZn、Al、B、Ti、Ca、Y、Mg、Nb、Zr又はCuのうちの1種又は2種以上であり、好ましくは、-0.40≦a≦0.25、0.08≦x≦0.5、0.05≦y≦0.5、0≦z≦0.16である。
【0011】
好ましくは、当該単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料は、走査電子顕微鏡下で、その微視的トポグラフィーが単結晶トポグラフィーであり、好ましくは、前記単結晶トポグラフィー粒子の形状は、球形、疑似球形、多角形又は層状シートのうちの1種又は2種以上である。
【0012】
好ましくは、当該単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料の粉末X-線回折スペクトル(XRD)において、回折角2θが64.9°付近の(110)回折ピークの半値幅FWHM(110)は、0.06~0.35である。
【0013】
好ましくは、当該単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料の7000~9000kg圧力下での圧粉密度は、2.8~4.2g/cmである。
【0014】
好ましくは、当該単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料の水分質量含有量は、3000ppm未満であり、好ましくは2800ppm未満であり、より好ましくは2500ppm未満である。
【0015】
好ましくは、当該単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料のpH値は、13.1以内であり、好ましくは13.0以内である。
【0016】
好ましくは、当該単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料の比表面積は、0.35~1.2m/gである。
【0017】
好ましくは、当該単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料の粒径D50は、2.0~16.0μmであり、好ましくは4.0~13.0μmである。
【0018】
本発明は、上記単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法をさらに提供し、ナトリウム源化合物、鉄源化合物及びマンガン源化合物を含む原料を混合し、及び必要に応じてニッケル源化合物及び/又はM源化合物を加え、焼結し、粉砕して単結晶トポグラフィーナトリウムイオン電池用正極材料を得るステップを含む。
【0019】
好ましくは、前記焼結温度は、860~990℃であり、好ましくは880~980℃であり、好ましくは、恒温時間は、6~40時間である。
【0020】
好ましくは、前記粉砕圧力は、0.1~1MPaである。
【0021】
好ましくは、前記ナトリウム源化合物は、炭酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム及びフッ化ナトリウムからなる群より選ばれる1種又は2種以上である。
【0022】
好ましくは、前記マンガン源化合物は、三酸化二マンガン、四酸化三マンガン、酸化マンガン、炭酸マンガン、シュウ酸マンガン、硫酸マンガン、酢酸マンガン、塩化マンガン及び硝酸マンガンからなる群より選ばれる1種又は2種以上である。
【0023】
好ましくは、前記ニッケル源化合物は、炭酸ニッケル、シュウ酸ニッケル、硫酸ニッケル、酢酸ニッケル、塩化ニッケル及び硝酸ニッケルからなる群より選ばれる1種又は2種以上である。
【0024】
好ましくは、前記鉄源化合物は、三酸化二鉄、シュウ酸第一鉄、硫酸第二鉄、酢酸第二鉄、硫酸第一鉄、酢酸第一鉄、硝酸第一鉄及び硝酸第二鉄からなる群より選ばれる1種又は2種以上である。
【0025】
好ましくは、前記M源化合物は、M元素を含む酸化物又は塩類を含み、好ましくは、前記M源化合物は、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、三酸化二ホウ素、ホウ酸、五酸化二ニオブ、酸化アルミニウム、硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、酸化チタン、メタチタン酸、酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、酸化銅、三酸化二イットリウム、酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、フッ化ナトリウム、フッ化リチウム、酸化亜鉛及び硫酸銅のうちの1種又は2種以上を含む。
【0026】
本発明は、上記製造方法により製造される単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料をさらに提供する。
【0027】
本発明は、活物質が上記単結晶ナトリウムイオン正極材料である、ナトリウムイオン電池用正極をさらに提供する。
【0028】
本発明は、上記ナトリウムイオン電池用正極を含む、ナトリウムイオン電池をさらに提供する。
本発明は、上記単結晶ナトリウムイオン電池正極材料、又は上記ナトリウムイオン電池正極、又は上記ナトリウムイオン電池の、太陽光発電、風力発電、スマートグリッド、分散型発電所、家庭用エネルギー貯蔵電池、ローエンド二輪車電池又は低エネルギー密度動力電池における応用をさらに提供する。
【発明の効果】
【0029】
本発明の有益な効果は、以下のとおりである。
本発明の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料は、特定の化学組成及び単結晶トポグラフィーを有するので、ナトリウムイオン電池用正極材料は、良好な構造安定性を有し、ナトリウムイオン電池の充放電中にナトリウムイオンの頻繁な脱離による顕著な構造変化を生じることがない。また、当該材料は、構造が完全であり、加工性能が良好であり、サイクル中に粒子が割れることがなく、材料表面と電解液との直接接触、特に電解液中のHFとの接触を効果的に阻止し、副反応の発生を阻止し、ナトリウムイオン電池のサイクル安定性を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は実施例1で製造された単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料のSEM図(倍率:5000倍)である。
図2図2は実施例2で製造された単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料のSEM図(倍率:5000倍)である。
図3図3は実施例3で製造された単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料のSEM図(倍率:5000倍)である。
図4図4は実施例4で製造された単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料のSEM図(倍率:5000倍)である。
図5図5は実施例5で製造された単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料のSEM図(倍率:5000倍)である。
図6図6は実施例6で製造された単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料のSEM図(倍率:5000倍)である。
図7図7は実施例1で製造された単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料を含むタブのSEM図(倍率:5000倍)である。
図8図8は実施例2で製造された単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料を含むタブのSEM図(倍率:5000倍)である。
図9図9は実施例3で製造された単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料を含むタブのSEM図(倍率:5000倍)である。
図10図10は実施例4で製造された単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料を含むタブのSEM図(倍率:5000倍)である。
図11図11は実施例5で製造された単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料を含むタブのSEM図(倍率:5000倍)である。
図12図12は実施例6で製造された単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料を含むタブのSEM図(倍率:5000倍)である。
図13図13は比較例1で製造された単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料のSEM図(倍率:5000倍)である。
図14図14は比較例1で製造された単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料を含むタブのSEM図(倍率:5000倍)である。
図15図15は実施例1~6及び比較例1のボタン型電池のサイクルグラフである。
図16図16はBA-C1電池の50サイクル後の正極タブのSEM図(倍率:5000倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施例の目的、技術的解決手段及び技術的効果をより明確にするために、本発明の実施例における技術的解決手段を明確且つ完全に説明する。以下に説明する実施例は、本発明の一部の実施例であり、全ての実施例ではない。本発明における実施例と併せて、当業者が創造的な労働を行わないことを前提として取得した他の全ての実施例は、本発明の保護の範囲に属する。
【0032】
本発明のD50とは、試料中の体積累積粒度分布数の百分率が50%に達したときに対応する粒径である。
【0033】
ナトリウムイオン電池のサイクル性能を向上させるために、本発明は、ナトリウムイオン電池用正極材料を単結晶粒子として製造し、材料の構造安定性を向上させ、構造の変化を効果的に抑制し、材料の可逆性を強化し、材料と電解液、特に電解液中のHFとの直接接触を効果的に回避し、それによって副反応の発生を阻止し、材料の結晶相転移を抑制し、それによって材料のサイクル安定性を向上させる。
【0034】
本発明の1つの具体的な実施形態において、本発明は、単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料を提供し、当該単結晶トポグラフィーナトリウムイオン電池用正極材料の化学組成式は、Na1+aNi1-x-y-zMnFeであり、ここで、-0.40≦a≦0.25、0.08≦x≦0.5、0.05≦y≦0.5、0≦z<0.26であり、
前記Mは、Ti、Zn、Co、Mn、Al、Zr、Y、Ca、Li、Rb、Cs、W、Ce、Mo、Ba、Mg、Ta、Nb、V、Sc、Sr、B、F、P又はCu元素から選ばれる1種又は2種以上である。
【0035】
本発明の好ましい一実施形態において、上記化学式1において、-0.33≦a≦0、0.1≦x≦0.5、0.15≦y≦0.5である。
【0036】
本発明の好ましい一実施形態において、上記Mは、Zn、Ti、Co、Al、Zr、Y、Ca、Li、Rb、Cs、W、Ce、Mo、Ba、Mg、Ta、Nb、V、Sc、Sr、B、F、P又はCuから選ばれる1種又は2種以上であり、好ましくはZn、Al、B、Ti、Ca、Y、Mg、Nb、Zr又はCuのうちの1種又は2種以上であり、好ましくは、0≦z≦0.16である。
【0037】
本発明において、上記単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料は、走査電子顕微鏡下で、微視的トポグラフィーが単結晶トポグラフィーであり、前記単結晶トポグラフィー粒子の形状は、球形、疑似球形、多角形又は層状シートのうちの1種又は2種以上である。
【0038】
本発明において、上記単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料の粉末X-線回折スペクトル(XRD)において、回折角2θが64.9°付近(本発明において出現する回折角X°付近は回折角がX°±1°であることを示し、例えば64.9°付近は64.9°±1°であることを示し、すなわち63.9°~65.9°である)の(110)回折ピークの半値幅FWHM(110)は、0.06~0.35である。
【0039】
本発明において、上記単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料の7000~9000kg圧力下での圧粉密度は、2.8~4.2g/cmの間である。
【0040】
本発明において、上記当該単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料の比表面積は、0.35~1.2m/gである。
【0041】
本発明において、上記単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料の粒径D50は、2.00~16.0μmであり、好ましくは4.0~13.0μmである。
【0042】
本発明の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料の比表面積(BET)は、合理的な範囲内であり、材料表面の分子間力が比較的平衡な位置にあり、比較的湿度の高い環境下でも自己凝集しにくい。
【0043】
本発明は、上記単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法をさらに提供し、ナトリウム源化合物、鉄源化合物及びマンガン源化合物を含む原料を混合し、及び必要に応じてニッケル源化合物及び/又はM源化合物を加え、焼結し、粉砕して単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料を得るステップを含む。
【0044】
上記製造方法において、前記焼結は、860~990℃の温度で6~40時間焼結し、好ましくは、前記焼結温度は、880~980℃であり、焼結に用いられる雰囲気は、空気、酸素又は空気と酸素の混合ガスであり、
上記製造方法において、前記粉砕圧力は、0.1~1MPaである。
【0045】
上記製造方法において、前記ナトリウム源化合物は、ナトリウム元素を含む塩及び/又は水酸化物を含み、例えば炭酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム及びフッ化ナトリウムのうちの1種又は2種以上を含む。
【0046】
上記製造方法において、前記マンガン源化合物は、マンガン元素を含む酸化物、水酸化物又はマンガンを含む塩を含み、例えば三酸化二マンガン、四酸化三マンガン、酸化マンガン、炭酸マンガン、シュウ酸マンガン、硫酸マンガン、酢酸マンガン、塩化マンガン及び硝酸マンガンのうちの1種又は2種以上を含む。
【0047】
上記製造方法において、前記ニッケル源化合物は、ニッケル元素を含む酸化物、水酸化物又はニッケルを含む塩を含み、例えば炭酸ニッケル、シュウ酸ニッケル、硫酸ニッケル、酢酸ニッケル、塩化ニッケル及び硝酸ニッケルのうちの1種又は2種以上を含む。
【0048】
上記製造方法において、前記鉄源化合物は、鉄元素を含む酸化物、水酸化物又は鉄を含む塩を含み、例えば三酸化二鉄、シュウ酸第一鉄、硫酸第二鉄、酢酸第二鉄、硫酸第一鉄、酢酸第一鉄、硝酸第一鉄及び硝酸第二鉄のうちの1種又は2種以上を含む。
【0049】
上記製造方法において、前記M源化合物は、M元素を含む酸化物及び/又は塩類を含み、例えば酸化カルシウム、水酸化カルシウム、三酸化二ホウ素、ホウ酸、五酸化二ニオブ、酸化アルミニウム、硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、酸化チタン、メタチタン酸、酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、酸化銅、三酸化二イットリウム、酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、フッ化ナトリウム、フッ化リチウム、酸化亜鉛及び硫酸銅のうちの1種又は2種以上を含む。
【0050】
本発明は、活物質が上記単結晶ナトリウムイオン電池正極材料である、ナトリウムイオン電池用正極をさらに提供する。
【0051】
本発明は、上記ナトリウムイオン電池用正極を含む、ナトリウムイオン電池をさらに提供する。
【0052】
本発明のナトリウムイオン電池は、負極と、ナトリウム塩を含む電解質と、セパレータと、アルミニウムプラスチックフィルムと、をさらに含む。具体的には、正極は、正極集電体、正極集電体に塗布された正極活物質及び結着剤、導電助剤などを含む材料からなり、正極活物質は、本発明の正極材料である。負極は、金属ナトリウムシート又は集電体、集電体に塗布された負極活物質及び結着剤、導電助剤などを含む材料からなり、セパレータは、当業界で一般的に用いられるPP/PEフィルムであり、正極と負極とを互いに隔てるために用いられ、アルミニウムプラスチックフィルムは、正極、負極、セパレータ、電解質の内包体である。
【0053】
本発明における結着剤は、主として正極活物質粒子同士及び正極活物質粒子と集電体との間の結着特性を改善するために用いられる。本発明における結着剤は、市販されている当業界で用いられる通常の結着剤を選択することができる。具体的には、結着剤は、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、エチレンオキシド含有ポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデン1,1-ジフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、アクリル酸(エステル)化スチレンブタジエンゴム、エポキシ樹脂、ナイロン又はこれらの組成物から選ばれてもよい。
【0054】
本発明における導電助剤は、市販されている当業界で用いられる通常の導電助剤を選択することができる。具体的には、導電助剤は、炭素系材料(例えば天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック又は炭素繊維)、金属系材料(例えば銅、ニッケル、アルミニウム、銀などを含む金属粉又は金属繊維)、導電性ポリマー(例えばポリフェニレン誘導体)又はこれらの組成物から選ばれてもよい。
【0055】
本発明は、上記単結晶ナトリウムイオン電池正極材料、又は上記ナトリウムイオン電極、又は上記ナトリウムイオン電池の、太陽光発電、風力発電、スマートグリッド、分散型発電所、家庭用エネルギー貯蔵電池、ローエンド二輪車電池又は低エネルギー密度動力電池における応用をさらに提供する。
【0056】
以下、具体的な実施例によって本発明の有益な効果をさらに説明する。
【0057】
本発明において用いられる原料又は試薬は、いずれも市場の主要メーカーから購入したものであり、メーカーが明記されていない場合又は濃度が明記されていない場合は、いずれも通常入手可能な分析用原料又は試薬であり、所期の作用を奏するものであれば特に限定されるものではない。本実施例において用いられる計器・設備は、いずれも市場の主要メーカーから購入したものであり、所期の作用を奏するものであれば特に限定されるものではない。本実施例において具体的な技術又は条件が明記されていない場合は、当該技術分野の文献に記載された技術又は条件に従って、又は製品の説明書に従って行われる。
【0058】
以下の実施例、比較例において用いられる原料及び計器は、表1に示すとおりである。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
(実施例1)
Na:Mn:Ni:Fe:B=0.92:0.34:0.30:0.35:0.01の元素モル比及び1.63kgの総重量で、対応する重量の炭酸ナトリウム、炭酸マンガン、炭酸ニッケル、三酸化二鉄及びホウ酸をそれぞれ秤量し、そして超高速多機能混合機に加えて回転数3300r/minで、20min混合した。均一に混合した材料をマッフル炉に入れて空気雰囲気下、885℃で18時間恒温し、そして自然冷却し、気流粉砕機を用いて粉砕圧力0.60MPaで粉砕し、単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料C1を得た。
【0062】
下記方法に従って上記正極材料を特徴付け、分析した。
1)成分分析
ICPを採用して上記正極材料の成分分析を行った。
(1)試料前処理
0.2000~0.2100(正確さは0.001gから)の試料を100mLの石英ビーカーに秤量し、ビーカー壁に沿って石英ビーカーに10mLの王水(1:1)を加え、表面皿に蓋をし、180℃で30min加熱し、溶液を全部50mLのメスフラスコに移し、脱イオン水で定容してよく振り混ぜ、よく振り混ぜた50mLのメスフラスコから1mLの溶液を100mLのメスフラスコ内に吸引し、メスフラスコに5mL(25%)の硝酸を添加し、脱イオン水で定容し、
(2)検量線法を用いて成分分析試験を行った。
上記方法に従って単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料C1の化学式がNa0.92Ni0.30Mn0.34Fe0.350.01であると測定した。
【0063】
2)比表面積
国家標準GB/T19587-2006ガス吸着BET法による固形物比表面積測定法に従って測定した。
分析計器:TristarII3020全自動比表面積及び細孔分布測定装置、
試験パラメータ:吸着質N、99.999%、冷却剤液体窒素、P0実測、体積測定モード、吸着圧力偏差0.05mmHg、平衡時間5s、相対圧力点の選択P/P0:0.05、0.1、0.15、0.2、0.25、0.30、
試料前処理:空試料管+プラグ質量記録M1を秤量し、試料量3.8~4.2gを秤量し、3/8inchボールバルブ付き9.5mm比表面積試料管に加え、FlowPrep 060脱気ステーションを用いて200℃を設定し、不活性ガスでパージして0.5h加熱脱気し、取り出して室温まで冷却して試料管+プラグ+試料の質量記録M2を秤量し、試料質量M=M2-M1であり、オンマシン試験してBET値を記録した。結果を表3に示す。
【0064】
3)粒径
国家標準GB/T19077-2016粒度分布レーザー回折法に従って測定し、結果を表3に示す。
試験計器:Malvern、Master Size 2000レーザー粒度分析器。
試験ステップ:1gの粉末を秤量し、60mlの純水に加え、5min外部超音波処理し、試料を試料注入装置に注入し、試験を行い、試験データを記録した。試験の条件:試験原理がミー(光散乱)理論Mie theoryであり、検出角が0~135°であり、外部超音波強度が40KHz、180wであり、粒子屈折率が1.692であり、粒子吸収率が1であり、試料試験時間が6sであり、バックグランド試験snap数が6,000timesであり、遮光度が8~12%であった。
【0065】
4)pH値
PHSJ-3F雷磁pH計を採用して測定し、具体的な方法は以下のとおりであり、5g±0.05gの試料を正確に秤量し、ビーカーに入れる。材料と水の質量比1:9の割合で脱イオン水を加え、10%の懸濁液を配合し、磁性体をビーカーに入れ、ビーカーを磁気撹拌機のトレイに置き、磁気撹拌機の回転数が880r/minであり、5min撹拌し、定性濾紙、漏斗を用いて混合溶液を濾過し、25℃に設定した恒温水浴鍋に入れ、20±5min恒温濾過し、試料溶液で電極をリンスし、リンスが完了した後、電極及び温度センサを試料溶液に挿入し、読み取りが安定し且つ温度が25℃を示すと、pH値を記録した。結果を表3に示す。
【0066】
5)XRD試験
本発明の実施例におけるナトリウムイオン正極材料のXRD試験は、X’Pert PRO MPDアナライザーを採用した。
試験原理:ブラッグ方程式は、回折線の方向と結晶構造との間の関係を反映する。回折が起こるにはブラッグ式:2dsinθ=nλ(d:結晶面間隔、θ:ブラッグ角度、λ:X線の波長、n:反射級数)を満たさなければならない。試料にX線が照射されると、結晶中の各原子の散乱X線が干渉し、特定の方向に強いX線回折線が発生する。X線が異なる角度から試料に照射されると、異なる結晶面で回折が起こり、検出器が当該結晶面から反射された回折光子の数を受け取り、それによって角度と強度の関係のスペクトルを得た。
試験条件:ライトパイプはCuターゲット材、波長は1.54060、Be窓、入射光路:ソーラースリット0.04rad、発散スリット1/2°、遮光板10mm、散乱防止スリット1°、回折光路:散乱防止スリット8.0mm、ソーラースリット0.04rad、大Niフィルター、走査範囲10~90°、走査ステップ0.013°、各ステップ滞留時間30.6s、電圧40kV、電流40mA。
粉末試料調製:清浄なサンプリングスプーンを用いて粉末をスライドガラスの溝に入れ(大粒子試料の場合は粉末<50μmに研磨する必要がある)、ブレードの一辺(>20mm)をスライドガラスの表面に当て、もう一方を少し持ち上げ(夾角<10°)、ブレードのエッジで粉末試料の表面を平らに削り、スライドガラスを90°回転させ、再び平らに削り、両方向に数回繰り返し削り、試料の表面にテクスチャーがなければよく、スライドガラスの周囲の余分な粉末を除去し、粉末線回折アナライザーに入れた。
試料分析:分析ソフトウェアHigh-Score Plusを用いて試験した試料ファイルを開き、まずバックグラウンドを決定し、ピーク検出を選択してピーク確認を行い、繰り返しフィッティングし、Williamson-Hall plotを記録して結晶粒サイズを計算し、対応する物相を選択して物相整合及び単位胞の精密化を行い、回折角2θが64.9°付近の(110)回折ピークの半値幅を記録した。結果を表3に示す。
【0067】
6)水分
GB/T 11133-2015カールフィッシャー電量滴定法を参照して測定し、899 Coulometer+885Compact Oven SC電量計を採用して試験し、水分ボトルを用いて試料0.5~0.8gを秤量し、正確さが0.0001gからであり、ガス流量50~60ml/min、加熱温度170℃、初期ドリフト≦10μg/min、終了ドリフト20μg/min、抽出時間400sであり、試験結果が小数点以下1桁を保持し、結果を表3に示す。
【0068】
7)圧粉密度
[1] 円形金型を電子圧力試験機のステージに置き、1000kgまでゆっくりと手動で昇圧した後に変位及び変形をゼロにした。
[2] (5.0000±0.1000)で粉末を秤量し、円形金型に入れ、軽く平らに振った後、さらに金型の上パッドを試料に置き、試料のこぼれを防ぐために、2つのパッドがいずれも非切断面で試料に面する必要があるように注意されたい。
[3]試料を充填した後に金型を電子圧力試験機のステージに置き、プログラムを編集して5mm/minの速度で8000kgまで昇圧し、30s定電圧し、さらにゼロまで減圧した。
[4]試料が8000±10kg(8000kgに達するまでの昇圧後約15~25s)まで定電圧されると試料の圧力を記録し、且つ試料高さを読み取り、正確さが0.001cmからであった。
[5]読み取り完了後に電子圧力試験機のステージを手動で下降させ、且つ取り出し器で試料を取り出した。
[6]試料を取り出した後、アルコールに浸したクリーンペーパーで試料金型内部を洗浄し、金型内部が清潔であることを確保し、実験が完了した。
[7]下記式の結果により計算し、結果を表3に示す。
【数1】
式中、
m…試料質量(g)
1.0…円形金型の半径(cm)
h…試料高さ(cm)。
【0069】
図1は、実施例1の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料のSEM図であり、図1から材料は単結晶粒子であり、且つ多角形、層状シートであることが分かる。
【0070】
実施例1の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料と結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)、導電性カーボンブラック(S.P)を重量比90:5:5の割合で十分に混合し、撹拌して均一なスラリーを形成し、アルミニウム箔集電体に塗布し、乾燥して冷間プレスしてタブを作製し、タブにSEM試験を行い、図7に示すように、図7から材料が依然として単結晶粒子であり、且つ材料粒子の表面に亀裂が生じないことが分かる。
【0071】
(実施例2)
Na:Mn:Ni:Fe:Cu:Zn=0.81:0.31:0.25:0.28:0.12:0.04の元素モル比及び1.49kgの総重量で、炭酸ナトリウム、炭酸マンガン、炭酸ニッケル、三酸化二鉄、酸化銅及び酸化亜鉛をそれぞれ秤量し、そして超高速多機能混合機に加えて回転数3500r/minで、15min混合した。均一に混合した材料をマッフル炉に入れて空気雰囲気下、890℃で16時間恒温し、そして自然冷却し、気流粉砕機を用いて粉砕圧力0.59MPaで粉砕し、単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料C2を得た。
【0072】
実施例1における成分分析法に従って単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料C2の化学式がNa0.81Ni0.25Mn0.31Fe0.28Cu0.12Zn0.04であると測定した。
【0073】
実施例1における方法を採用して上記正極材料を試験し、試験結果を表3に示す。
【0074】
図2は、実施例2の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料のSEM図であり、図2から材料は単結晶粒子であり、且つ多角形、層状シートであることが分かる。
【0075】
実施例2の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料と結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)、導電性カーボンブラック(S.P)を重量比90:5:5の割合で十分に混合し、撹拌して均一なスラリーを形成し、アルミニウム箔集電体に塗布し、乾燥して冷間プレスしてタブを作製し、タブにSEM試験を行い、図8に示すように、図8から材料が依然として単結晶粒子であり、且つ材料粒子の表面に亀裂が生じないことが分かる。
【0076】
(実施例3)
Na:Mn:Ni:Fe:Zn:Al=0.81:0.32:0.20:0.33:0.145:0.005の元素モル比及び1.75kgの総重量で、炭酸ナトリウム、三酸化二マンガン、シュウ酸ニッケル、シュウ酸第一鉄、酸化亜鉛、酸化アルミニウムをそれぞれ秤量し、そして超高速多機能混合機に加えて回転数4000r/minで、15min混合した。均一に混合した材料をマッフル炉に入れて空気雰囲気下、960℃で10時間恒温し、そして自然冷却し、気流粉砕機を用いて粉砕圧力0.62MPaで粉砕し、単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料C3を得た。
【0077】
実施例1における成分分析法に従って単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料C3の化学式がNa0.81Ni0.2Mn0.32Fe0.33Zn0.145Al0.005であると測定した。
【0078】
実施例1における方法を採用して上記正極材料を試験し、試験結果を表3に示す。
【0079】
図3は、実施例3の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料のSEM図であり、図3から材料は単結晶粒子であり、且つ多角形、層状シートであることが分かる。
【0080】
実施例3の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料と結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)、導電性カーボンブラック(S.P)を重量比90:5:5の割合で十分に混合し、撹拌して均一なスラリーを形成し、アルミニウム箔集電体に塗布し、乾燥してプレスしてタブを作製し、タブにSEM試験を行い、図9に示すように、図9から材料が依然として単結晶粒子であり、且つ材料粒子の表面に亀裂が生じないことが分かる。
【0081】
(実施例4)
Na:Mn:Ni:Fe:Ti:Y=0.77:0.22:0.47:0.09:0.215:0.005の元素モル比及び2.21kgの総重量で、炭酸ナトリウム、炭酸マンガン、炭酸ニッケル、三酸化二鉄、酸化チタン及び酸化イットリウムをそれぞれ秤量し、そして超高速多機能混合機に加えて回転数2800r/minで、40min混合した。均一に混合した材料をマッフル炉入れて空気雰囲気下、940℃で11時間恒温し、そして自然冷却し、気流粉砕機を用いて粉砕圧力0.65MPaで粉砕し、単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料C4を得た。
【0082】
実施例1における成分分析法に従って単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料C4の化学式がNa0.77Ni0.47Mn0.22Fe0.09Ti0.2150.005であると測定した。
【0083】
実施例1における方法を採用して上記正極材料を試験し、試験結果を表3に示す。
【0084】
図4は、実施例4の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料のSEM図であり、図4から材料は単結晶粒子であり、且つ多角形、層状シートであることが分かる。
【0085】
実施例4の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料と結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)、導電性カーボンブラック(S.P)を重量比90:5:5の割合で十分に混合し、撹拌して均一なスラリーを形成し、アルミニウム箔集電体に塗布し、乾燥してプレスしてタブを作製し、タブにSEM試験を行い、図10に示すように、図10から材料が依然として単結晶粒子であり、且つ材料粒子の表面に亀裂が生じないことが分かる。
【0086】
(実施例5)
Na:Mn:Cu:Fe:Zr=0.85:0.43:0.2285:0.34:0.0015の元素モル比及び1.46kgの総重量で、対応する重量の炭酸ナトリウム、炭酸マンガン、酸化銅、三酸化二鉄及び酸化ジルコニウムをそれぞれ秤量し、そして超高速多機能混合機に加えて回転数2500r/minで、50min混合した。均一に混合した材料をマッフル炉に入れて空気雰囲気下、890℃で14時間恒温し、そして自然冷却し、気流粉砕機を用いて粉砕圧力0.69MPaで粉砕し、単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料C5を得た。
【0087】
実施例1における成分分析法に従って単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料C5の化学式がNa0.85Mn0.43Cu0.2285Fe0.34Zr0.0015であると測定した。
【0088】
実施例1における方法を採用して上記正極材料を試験し、試験結果を表3に示す。
【0089】
図5は、実施例5の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料のSEM図であり、図5から材料は単結晶粒子であり、且つ多角形、層状シートであることが分かる。
【0090】
実施例5の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料と結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)、導電性カーボンブラック(S.P)を重量比90:5:5の割合で十分に混合し、撹拌して均一なスラリーを形成し、アルミニウム箔集電体に塗布し、乾燥してプレスしてタブを作製し、タブにSEM試験を行い、図11に示すように、図11から材料が依然として単結晶粒子であり、且つ材料粒子の表面に亀裂が生じないことが分かる。
【0091】
(実施例6)
Na:Mn:Ni:Fe:Zn:Ca=0.86:0.38:0.20:0.32:0.08:0.02の元素モル比及び1.76kgの総重量で、炭酸ナトリウム、炭酸マンガン、炭酸ニッケル、シュウ酸第一鉄、酸化亜鉛、酸化カルシウムをそれぞれ秤量し、そして超高速多機能混合機に加えて回転数3600r/minで、35min混合した。均一に混合した材料をマッフル炉に入れて空気雰囲気下、935℃で20時間恒温し、そして自然冷却し、気流粉砕機を用いて粉砕圧力0.66MPaで粉砕し、単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料C6を得た。
【0092】
実施例1における成分分析法に従って単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料C6の化学式がNa0.86Ni0.29Mn0.38Fe0.32Zn0.08Ca0.02であると測定した。
【0093】
実施例1における方法を採用して上記正極材料を試験し、試験結果を表3に示す。
【0094】
図6は、実施例6の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料のSEM図であり、図6から材料は単結晶粒子であり、且つ多角形、層状シートであることが分かる。
【0095】
実施例6の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料と結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)、導電性カーボンブラック(S.P)を重量比90:5:5の割合で十分に混合し、撹拌して均一なスラリーを形成し、アルミニウム箔集電体に塗布し、乾燥してプレスしてタブを作製し、タブにSEM試験を行い、図12に示すように、図12から材料が依然として単結晶粒子であり、且つ材料粒子の表面に亀裂が生じないことが分かる。
【0096】
(比較例1)
ナトリウムとニッケルマンガン鉄前駆体とのモル比0.83:1、総重量1.40kgで炭酸ナトリウム及びニッケルマンガン鉄前駆体(Ni0.27Mn0.38Fe0.35(OH))をそれぞれ秤量し、そして超高速多機能混合機に加えて回転数3600r/minで、35min混合した。均一に混合した材料をマッフル炉に入れて空気雰囲気下、890℃で16時間恒温し、そして自然冷却し、ボールミルして篩分して完成品D1を得た。
【0097】
実施例1における成分分析法に従ってナトリウムイオン電池用正極材料D1の化学式がNa0.83Ni0.27Mn0.38Fe0.35であると測定した。
【0098】
実施例1における方法を採用して上記正極材料を試験し、試験結果を表3に示す。
【0099】
比較例1のナトリウムイオン電池用正極材料にSEM試験を行い、図13に示すように、図13から材料が複数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子凝集体であることが分かる。
【0100】
比較例1のナトリウムイオン電池用正極材料と結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)、導電性カーボンブラック(S.P)を重量比90:5:5の割合で十分に混合し、撹拌して均一なスラリーを形成し、アルミニウム箔集電体に塗布し、乾燥してプレスしてタブを作製し、タブにSEM試験を行い、図14に示すように、図14から材料の二次粒子凝集体のほとんどが潰れており、新鮮な界面が露出することが分かる。
【0101】
【表3】
【0102】
表3から分かるように、実施例1~6で製造された単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料の粉末X-線回折スペクトル(XRD)において、回折角2θが64.9°付近の(110)回折ピークの半値幅FWHM(110)は0.152~0.274であり、水分質量含有量は2400ppm以下であり、pHはいずれも13.1未満であり、比表面積は0.45~0.93m/gであり、粒径D50は4.1~12.6μmであり、圧粉密度は2.95~3.92g/cmである。比較例1の化学組成でナトリウムイオン正極材料を製造すると、水分質量含有量は4320ppmであり、3000ppmよりも遥かに大きく、pHは13.46であり、13.1よりも大きく、比表面積も本発明の実施例よりも遥かに小さい。
【0103】
(実験例1)
ナトリウムイオン電池の製造及び性能評価。
【0104】
下記方法に従ってCR2430ボタン型電池を製造する。
正極製造:それぞれ本発明の実施例1~6及び比較例1で製造されたナトリウムイオン電池用正極材料と結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)、導電性カーボンブラック(S.P)を重量比7:2:1の割合で十分に混合し、撹拌して均一なスラリーを形成し、アルミニウム箔集電体に塗布し、乾燥してプレスしてタブを作製し、それぞれPE-C1、PE-C2、PE-C3、PE-C4、PE-C5、PE-C6及びPE-D1と記す。
プレス後の正極タブを打ち抜き、秤量し、焼成し、そして真空グローブボックス内で電池組み立てを行い、まずボタン型電池のケース底を載置し、ケース底の上に発泡ニッケル(2.5mm)、負極金属ナトリウムシート(メーカー:深セン友研科技有限公司)を載置し、相対湿度が1.5%未満の環境下で0.5gの電解液を注入し、電解液はエチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)及びジメチルカーボネート(DMC)の質量比が1:1:1の混合溶媒を採用し、電解質が1mol/Lの六フッ化リン酸ナトリウム溶液であり、セパレータ、正極タブを載置し、そしてボタン型電池のケースに蓋をし、封口し、型番がCR2430のボタン型電池を得、それぞれBA-C1、BA-C2、BA-C3、BA-C4、BA-C5、BA-C6及びBA-D1と記す。
【0105】
下記方法に従って電池試験システム上で電池に性能試験を行い、結果を表4に示す。
1)容量試験
製造されたボタン型電池を試験台に取り付け、試験プログラムを起動した。設定ステップ:試験温度を25℃に設定し、4時間静置し、0.1Cで4.0Vまで定電流充電し、一時停止し、5min静置し、そして0.1Cで2.0Vまで定電流放電し、当該電流及び電圧での容量を得た。
2)サイクル試験
上記容量試験を経た電池を、試験台に取り付け、試験プログラムを起動し、設定ステップ:試験温度を45℃に設定し、4時間静置し、0.1Cで4.0Vまで定電流充電し、4.0Vで2h定電圧充電し、5分間静置し、そして0.1Cでカットオフ電圧2.0Vまで定電流放電し、5分間静置し、前の定電流充電開始のステップを繰り返し、サイクル試験を行い、サイクル回数に応じる容量維持率を得ることができる。
【0106】
【表4】
【0107】
表4から分かるように、実施例1~6で製造された単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料を採用して製造されたナトリウムイオン電池は、0.1C電流及び4.2V電圧下(カットオフ電圧は2.0V)での容量が133.0~140mAh/gであり、4.0V~2.0V、0.1C/0.1C条件下で50サイクル後に容量維持率が90.05~94.24%である。比較例1で製造されたナトリウムイオン電池正極材料を採用して製造されたナトリウムイオン電池は、4.0V~2.0V、0.1C/0.1C条件下で50サイクル後に容量維持率がわずか77.64%である。図15からも、実施例1~6で製造された単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料を採用して製造されたナトリウムイオン電池のサイクル試験時の容量維持率は比較例1よりも明らかに優れることが分かる。
【0108】
電池BA-C1の50サイクル後、電池を分解して正極タブを取り出してSEM試験を行い、図16に示すように、図16からサイクル後も単結晶粒子は粒子の割れがなく、完全な粒子のままであることが分かる。
【0109】
以上の説明は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を何ら限定するものではなく、本発明の精神と原則内で行われた修正、均等な置換、改良などは、本発明の保護範囲に含まれることが必要である。
【0110】
(付記)
(付記1)
単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料であって、
当該単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料の化学組成式は、Na1+aNi1-x-y-zMnFeであり、ここで、-0.40≦a≦0.25、0.08≦x≦0.5、0.05≦y≦0.5、0≦z<0.26であり、
前記Mは、Ti、Zn、Co、Mn、Al、Zr、Y、Ca、Li、Rb、Cs、W、Ce、Mo、Ba、Mg、Ta、Nb、V、Sc、Sr、B、F、P又はCu元素から選ばれる1種又は2種以上である、
ことを特徴とする単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料。
【0111】
(付記2)
-0.33≦a≦0、0.10≦x≦0.5、0.15≦y≦0.5である、
ことを特徴とする付記1に記載の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料。
【0112】
(付記3)
前記Mは、Zn、Ti、Co、Al、Zr、Y、Ca、Li、Rb、Cs、W、Ce、Mo、Ba、Mg、Ta、Nb、V、Sc、Sr、B、F、P又はCuから選ばれる1種又は2種以上であり、
ことを特徴とする付記1に記載の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料。
【0113】
(付記4)
前記Mは、Zn、Al、B、Ti、Ca、Y、Mg、Nb、Zr又はCuのうちの1種又は2種以上である、
ことを特徴とする付記1に記載の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料。
【0114】
(付記5)
-0.40≦a≦0.25,0.08≦x≦0.5,0.05≦y≦0.5,0≦z≦0.16である、
ことを特徴とする付記1に記載の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料。
【0115】
(付記6)
当該ナトリウムイオン電池用正極材料は、走査電子顕微鏡下で、その微視的トポグラフィーが単結晶トポグラフィーであり、ここで、前記単結晶トポグラフィー粒子の形状は、球形、疑似球形、多角形又は層状シートのうちの1種又は2種以上である、
ことを特徴とする付記1に記載の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料。
【0116】
(付記7)
当該単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料の粉末X-線回折スペクトル(XRD)において、回折角2θが64.9°付近の(110)回折ピークの半値幅FWHM(110)は、0.06~0.35である、
ことを特徴とする付記1に記載の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料。
【0117】
(付記8)
当該単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料の7000~9000kg圧力下での圧粉密度は、2.8~4.2g/cmである、
ことを特徴とする付記1~7のいずれか一つに記載の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料。
【0118】
(付記9)
当該単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料の水分質量含有量は、3000ppm未満である、
ことを特徴とする付記1~7のいずれか一つに記載の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料。
【0119】
(付記10)
当該単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料のpH値は、13.1以内である、
ことを特徴とする付記1~7のいずれか一つに記載の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料。
【0120】
(付記11)
当該単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料の比表面積は、0.35~1.2m/gであり、当該単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料の粒径D50は、2.0~16.0μmである、
ことを特徴とする付記1~7のいずれか一つに記載の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料。
【0121】
(付記12)
ナトリウム源化合物、鉄源化合物及びマンガン源化合物を含む原料を混合し、及び必要に応じてニッケル源化合物及び/又はM源化合物を加え、焼結し、粉砕して単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料を得るステップを含む、
ことを特徴とする付記1~7のいずれか一つに記載の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法。
【0122】
(付記13)
前記焼結温度は、860~990℃である、
ことを特徴とする付記12に記載の製造方法。
【0123】
(付記14)
前記粉砕圧力は、0.1~1MPaである、
ことを特徴とする付記12に記載の製造方法。
【0124】
(付記15)
前記ナトリウム源化合物は、ナトリウム元素を含む塩及び/又は水酸化物を含み、
及び/又は、前記マンガン源化合物は、マンガン元素を含む酸化物、水酸化物又は塩のうちの1種又は2種以上を含み、
及び/又は、前記ニッケル源化合物は、ニッケル元素を含む酸化物、水酸化物又は塩のうちの1種又は2種以上を含み、
及び/又は、前記鉄源化合物は、鉄元素を含む酸化物、水酸化物又は塩のうちの1種又は2種以上を含み、
及び/又は、前記M源化合物は、M元素を含む酸化物及び/又は塩類を含む、
ことを特徴とする付記12に記載の製造方法。
【0125】
(付記16)
付記12に記載の製造方法により製造される、
ことを特徴とする単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料。
【0126】
(付記17)
活物質が付記1~7のいずれか一つ又は付記16に記載の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料である、
ナトリウムイオン電池用正極。
【0127】
(付記18)
付記17に記載のナトリウムイオン電池用正極を含む、
ことを特徴とするナトリウムイオン電池。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2023-10-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料であって、
当該単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料の化学組成式は、Na1+aNi1-x-y-zMnFeであり、ここで、-0.40≦a≦0.25、0.08≦x≦0.5、0.05≦y≦0.5、0≦z<0.26であり、
前記Mは、Ti、Zn、Co、Mn、Al、Zr、Y、Ca、Li、Rb、Cs、W、Ce、Mo、Ba、Mg、Ta、Nb、V、Sc、Sr、B、F、P又はCu元素から選ばれる1種又は2種以上である、
ことを特徴とする単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料。
【請求項2】
-0.33≦a≦0、0.10≦x≦0.5、0.15≦y≦0.5である、
ことを特徴とする請求項1に記載の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料。
【請求項3】
前記Mは、Zn、Ti、Co、Al、Zr、Y、Ca、Li、Rb、Cs、W、Ce、Mo、Ba、Mg、Ta、Nb、V、Sc、Sr、B、F、P又はCuから選ばれる1種又は2種以上であり、
ことを特徴とする請求項1に記載の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料。
【請求項4】
前記Mは、Zn、Al、B、Ti、Ca、Y、Mg、Nb、Zr又はCuのうちの1種又は2種以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料。
【請求項5】
-0.40≦a≦0.25,0.08≦x≦0.5,0.05≦y≦0.5,0≦z≦0.16である、
ことを特徴とする請求項1に記載の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料。
【請求項6】
当該ナトリウムイオン電池用正極材料は、走査電子顕微鏡下で、その微視的トポグラフィーが単結晶トポグラフィーであり、ここで、前記単結晶トポグラフィー粒子の形状は、球形、疑似球形、多角形又は層状シートのうちの1種又は2種以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料。
【請求項7】
当該単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料の粉末X-線回折スペクトル(XRD)において、回折角2θが64.9°付近の(110)回折ピークの半値幅FWHM(110)は、0.06~0.35である、
ことを特徴とする請求項1に記載の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料。
【請求項8】
当該単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料の7000~9000kg圧力下での圧粉密度は、2.8~4.2g/cmである、
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料。
【請求項9】
当該単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料の水分質量含有量は、3000ppm未満である、
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料。
【請求項10】
当該単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料のpH値は、13.1以内である、
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料。
【請求項11】
当該単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料の比表面積は、0.35~1.2m/gであり、当該単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料の粒径D50は、2.0~16.0μmである、
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料。
【請求項12】
ナトリウム源化合物、鉄源化合物及びマンガン源化合物を含む原料を混合し、及び必要に応じてニッケル源化合物及び/又はM源化合物を加え、焼結し、粉砕して単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料を得るステップを含む、
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法。
【請求項13】
前記焼結温度は、860~990℃である、
ことを特徴とする請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記粉砕圧力は、0.1~1MPaである、
ことを特徴とする請求項12に記載の製造方法。
【請求項15】
前記ナトリウム源化合物は、ナトリウム元素を含む塩及び/又は水酸化物を含み、
及び/又は、前記マンガン源化合物は、マンガン元素を含む酸化物、水酸化物又は塩のうちの1種又は2種以上を含み、
及び/又は、前記ニッケル源化合物は、ニッケル元素を含む酸化物、水酸化物又は塩のうちの1種又は2種以上を含み、
及び/又は、前記鉄源化合物は、鉄元素を含む酸化物、水酸化物又は塩のうちの1種又は2種以上を含み、
及び/又は、前記M源化合物は、M元素を含む酸化物及び/又は塩類を含む、
ことを特徴とする請求項12に記載の製造方法。
【請求項16】
請求項12に記載の製造方法により製造される、
ことを特徴とする単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料。
【請求項17】
活物質が請求項1~7のいずれか一項に記載の単結晶ナトリウムイオン電池用正極材料である、
ナトリウムイオン電池用正極。
【請求項18】
請求項17に記載のナトリウムイオン電池用正極を含む、
ことを特徴とするナトリウムイオン電池。
【外国語明細書】