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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122646
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】撥水防虫用エアゾール
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/06 20060101AFI20240902BHJP
   A01N 47/16 20060101ALI20240902BHJP
   A01P 17/00 20060101ALI20240902BHJP
   C09K 3/18 20060101ALI20240902BHJP
   C09D 5/14 20060101ALI20240902BHJP
   C09D 201/04 20060101ALI20240902BHJP
   D06M 15/277 20060101ALI20240902BHJP
   D06M 13/02 20060101ALI20240902BHJP
   D06M 13/352 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
A01N25/06
A01N47/16 A
A01P17/00
C09K3/18 102
C09D5/14
C09D201/04
D06M15/277
D06M13/02
D06M13/352
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030306
(22)【出願日】2023-02-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り イカリ消毒株式会社(令和4年3月)
(71)【出願人】
【識別番号】390000527
【氏名又は名称】住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】杉目 康広
【テーマコード(参考)】
4H011
4H020
4J038
4L033
【Fターム(参考)】
4H011AC06
4H011BA01
4H011BB13
4H011BC01
4H011BC19
4H011DA21
4H011DB05
4H011DE16
4H011DG04
4H011DG16
4H011DH02
4H020AA03
4H020BA13
4J038CG141
4J038CH251
4J038JA02
4J038JB30
4J038KA06
4J038MA11
4J038NA27
4J038PA06
4J038PB02
4J038PC08
4J038PC10
4L033AA07
4L033AB04
4L033AC03
4L033AC10
4L033BA01
4L033BA56
4L033CA25
(57)【要約】
【課題】撥水性能および防虫性能が優れる撥水防虫用エアゾールを提供すること。
【解決手段】
エアゾール原液および噴射剤を含む繊維処理用の撥水防虫用エアゾールであって、該エアゾール原液は(A)防虫成分、(B)フッ素樹脂および(C)炭素数6~7の飽和炭化水素系溶剤を含有し、該エアゾールの噴口から15cmの距離における噴霧粒子のうち10μm以下の噴霧粒子の割合が全体の0.01~2.0%であることを特徴とする撥水防虫用エアゾール。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール原液および噴射剤を含む繊維処理用の撥水防虫用エアゾールであって、該エアゾール原液は(A)防虫成分、(B)フッ素樹脂および(C)炭素数6~7の飽和炭化水素系溶剤を含有し、
該エアゾールの噴口から15cmの距離における噴霧粒子のうち10μm以下の噴霧粒子の割合が全体の0.01~2.0%であることを特徴とする撥水防虫用エアゾール。
【請求項2】
さらに前記エアゾールの噴口から15cmの距離における噴霧粒子の平均粒子径(D50)が40~190μmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の撥水防虫用エアゾール。
【請求項3】
対象とする繊維がポリエステルおよび/またはナイロンである請求項1または2に記載の撥水防虫用エアゾール。
【請求項4】
請求項1または2に記載の撥水防虫用エアゾールを用いて繊維に処理することを特徴とする繊維への撥水防虫性能付与方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥水防虫用エアゾールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、山や森でのキャンプやハイキングといったアウトドアレジャーの流行により、アウトドアウェア、テント、寝袋といったアウトドア製品の需要が高まっている。アウトドアレジャーでは、天気急変による雨や昼夜寒暖差が激しい場所で生じる朝露などに備え、撥水性能を有するアウトドア製品が要求される。
【0003】
このような要求に対し、撥水性能を有するポリエステル繊維やナイロン繊維を素材とするアウトドア製品が主として使用されているが(例えば特許文献1)、使用場面によっては、さらなる撥水性能が必要となる場合があった。そこで、当該製品に撥水スプレーを処理することにより、さらなる撥水性能を得ている(例えば特許文献2)。
【0004】
また山や森でのアウトドアレジャーでは、虫に出くわすことが多い上、例えば、夜中のテント内においてランプを使用すると、当ランプの光源が虫の誘引源となり、テントに虫が誘引されることから、アウトドア製品に防虫性能を付与するため、当該製品に防虫スプレーを処理している(例えば特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3067725号
【特許文献2】特開平5-262948
【特許文献3】特開2014-205648
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようにアウトドアにおいては、撥水性能と防虫性能という相異なる性能を要求される場合があるが、現状、撥水スプレーと防虫スプレーの2種類のスプレーを用いて処理されているのが現状である。しかしながら、現状の処理方法では作業が煩雑となることから、より簡易な方法が求められていた。
【0007】
また、アウトドア製品をはじめとする繊維製品に対する撥水性能と防虫性能の併せて付与することに関し、これまで十分に検討されておらず、撥水スプレーと防虫スプレーを併せて処理することに関しては、撥水スプレーまたは防虫スプレーいずれか一方のみ処理する場合よりもその性能が低下するおそれもあった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、かかる課題を解決すべく鋭意検討した結果、アウトドア製品をはじめとする繊維製品、特に、ポリエステル繊維やナイロン繊維を素材とする繊維製品に対し十分な撥水性能と防虫性能の両性能を付与することができるエアゾールを開発した。すなわち本発明は、
〔1〕 エアゾール原液および噴射剤を含む繊維処理用の撥水防虫用エアゾールであって、該エアゾール原液は(A)防虫成分、(B)フッ素樹脂 および(C)炭素数6~7の飽和炭化水素系溶剤を含有し、該エアゾールの噴口から15cmの距離における噴霧粒子のうち10μm以下の噴霧粒子の割合が全体の0.01~2.0%であることを特徴とする撥水防虫用エアゾール。
〔2〕 さらに前記エアゾールの噴口から15cmの距離における噴霧粒子の平均粒子径(D50)が40~190μmの範囲であることを特徴とする上記の撥水防虫用エアゾール。
〔3〕 対象とする繊維がポリエステルおよび/またはナイロンである上記の撥水防虫用エアゾール。
〔4〕 上記の撥水防虫用エアゾールを用いて繊維に処理すること特徴とする繊維への撥水防虫性能付与方法。
を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、撥水性能および防虫性能の両性能を繊維に付与することができる撥水防虫用エアゾールを提供することができる。特にアウトドア製品に主として使用されるポリエステルおよび/またはナイロンに対し優れた撥水性能と防虫性能とを付与することができる撥水防虫用エアゾールを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】クロバネキノコバエに対する防除試験の方法を説明するための説明図(平面図)である。
図2】クロバネキノコバエに対する防除試験の方法を説明するための説明図(斜視図)である。
図3】イエヒメアリに対する防除試験の方法を説明するための説明図(平面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に用いられる防虫成分としては、虫に対し殺虫効力または忌避効力の少なくともいずれかの効力を示す成分を用いる。殺虫効力を示す成分(以下、殺虫成分と記すこともある)としては、有機リン系殺虫成分、カーバメート系殺虫成分、ピレスロイド系殺虫成分、ネオニコチノイド系殺虫成分などが挙げられる。これら防虫成分は、対象害虫によって適宜選択される。
【0012】
ピレスロイド系殺虫成分としては、エンペントリン、プロフルトリン、メトフルトリン、トランスフルトリン等の常温揮散性ピレスロイド系殺虫成分または天然ピレトリン、フラメトリン、モンフルオロトリン、フェノトリン、シフェノトリン、ペルメトリン、シペルメトリン、シフルトリン、ビフェントリン、フェンプロパトリン、トラロメトリン、エトフェンプロックス、イミプロトリン、アレスリン、フタルスリン、プラレトリン、レスメトリン等の難揮散性ピレスロイド系殺虫成分が挙げられる。ここで常温揮散性ピレスロイド系殺虫成分とは、25℃における蒸気圧が1.33×10-3Pa以上のピレスロイド系殺虫成分であり、難揮散性ピレスロイド系殺虫成分とは該蒸気圧未満のピレスロイド系殺虫成分である。ピレスロイド系殺虫成分を使用する場合、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよいが、殺虫効力のほか忌避効力またはノックダウン効力をも有する常温揮散性ピレスロイド系殺虫成分を含むことが好ましい。
【0013】
忌避効力を示す成分(以下、忌避成分と記すこともある)としては、N,N-ジエチル-m-トルアミド、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシラート、p-メンタン-3,8-ジオール、シトロネラ油、コパイバ油、ラベンダー油、ハッカ油、レモンユーカリ油、ペパーミント油等が挙げられる。
【0014】
防虫成分の配合量は、通常、エアゾール原液の総重量に対して0.1~6.0重量%の範囲であるが、防虫成分の種類や防除対象とする害虫に応じて適宜調整される。
【0015】
本発明の撥水防虫用エアゾールに用いられるフッ素樹脂とは、一般的には繊維に対し撥水機能を付与するフッ素系撥水剤のことをいい、当該フッ素樹脂としては例えばフルオロアルキル基含有(メタ)アクリレート系高分子が挙げられる。
【0016】
前記フルオロアルキル基含有(メタ)アクリレート系高分子とは、(メタ)アクリル酸アルキルの水素原子の少なくとも一部がフッ素原子となっている化合物をいい、例えば、フルオロアルキル(メタ)アクリレート、ペルフルオロアルキル(メタ)アクリレート、N-アルキルペルフルオロアルキルスルホンアミドアルキル(メタ)アクリレート、N-メチルペルフルオロオクチルスルホンアミドエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0017】
本発明の撥水防虫用エアゾールにおけるフッ素樹脂の配合量は、エアゾール原液中0.05~4重量%であることが好ましく、0.5~1.5重量%であることがより好ましい。
【0018】
本発明の撥水防虫用エアゾールにおける防虫成分とフッ素樹脂との重量比は1:0.1~1:35の範囲に調整することが好ましく、1:0.2~1:10の範囲に調整することがより好ましい。
【0019】
本発明の撥水防虫用エアゾールに用いられる炭素数6~7の飽和炭化水素系溶剤としては、例えば、n-ヘキサン、シクロヘキサン、2,3-ジメチルブタン、2,2-ジメチルブタン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、n-ヘプタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、2,2-ジメチルペンタン、2,3-ジメチルペンタン、2,4-ジメチルペンタン、3,3-ジメチルペンタン、3-エチルペンタン、2,2,3-トリメチルブタンが挙げられる。これらは単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。これら飽和炭化水素系溶剤の中ではn-ヘキサン、シクロヘキサンおよびn-ヘプタンが好ましく、n-ヘプタンが特に好ましい。
【0020】
本発明の撥水防虫用エアゾールに用いられる噴射剤は、液化天然ガス、ジメチルエーテル、炭酸ガス、窒素ガスなどが挙げられる。エアゾール原液と噴射剤の配合比は、本発明の噴霧粒子の粒子径が得られるように用いられる噴射剤種に応じて適宜調整される。例えば、液化天然ガスを使用する場合は20℃で圧力0.15~0.50MPa、好ましくは0.15~0.30MPaの範囲にある液化天然ガスを使用し、エアゾール原液と噴射剤の配合比を、体積比で80:20~60:40の範囲に調整することが好ましく、75:25~65:35の範囲に調整することがより好ましい。炭酸ガスを使用する場合はエアゾール容器内の圧力が0.4~0.6MPaとなるようガスを充填することが好ましい。
【0021】
本発明の撥水防虫用エアゾールは、本発明の効果を阻害しない範囲で、さらに添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、香料、風合い調整剤、防黴剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、帯電防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。
【0022】
上記抗菌剤としては、例えば、金属イオン系、光触媒等の無機系、フェノール系、ピリジン系、第四級アンモニウム塩等の有機系、テルペン、トロポロン等の天然有機系の抗菌剤が挙げられる。
【0023】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、ベンゾエート系の紫外線吸収剤が挙げられる。
【0024】
本発明の撥水防虫用エアゾールは、上記のエアゾール原液と噴射剤とを噴射バルブが設けられた耐圧容器に封入し、噴射ボタンを当該噴射バルブに装填することにより構成される。
【0025】
噴射バルブは、噴射ボタンが使用者により操作されることにより耐圧容器内に外部との連通および遮断を切り替えるための開閉部材と、開閉部材が取り付けられるハウジングと、ハウジングを耐圧容器の所定の位置に保持するためのマウンティングカップを備える。また開閉部材は、噴射ボタンと連動して上下に摺動するステムを含む。エアゾール原液および噴射剤は、ステムの摺動により噴射され得る。ハウジングには、耐圧容器からエアゾール原液および噴射剤を取り込むためのハウジング孔が形成されている。ステムには耐圧容器からエアゾール原液および噴射剤を噴射ボタンに送るためのステム孔が形成されている。ハウジング孔からステム孔までの経路は、エアゾール原液および噴射剤が通過する内部通路を構成する。
【0026】
噴射バルブのステムにおけるステム孔の形状としては、円形または多角形などが挙げられる。形状が円形の場合、ステムの孔径は、直径として0.1~1.5mmであることが好ましく、0.3~1.1mmであることがより好ましく、0.3~0.6mmであることがさらに好ましい。ステム孔は、1個備えられていれば十分である。
【0027】
噴射ボタンは、噴射バルブを介して耐圧容器に取り付けられる部材である。噴射ボタンには、噴射バルブのステム孔を介して耐圧容器から取り込まれるエアゾール原液および噴射剤が通過する操作部内通路ならびにエアゾール原液および噴射剤が噴霧される噴口とが形成されている。
【0028】
噴射ボタンの噴口の形状は特に制限されず、円形の噴口を用いる場合、孔径は0.05~2.0mmであることが好ましく、0.3~0.8mmであることがより好ましい。
【0029】
本発明の撥水防虫用エアゾールは、エアゾールの噴口から15cmの距離における噴霧粒子のうち10μm以下の噴霧粒子の割合が全体の0.01~2.0%であり、好ましくは0.1~0.6%である。
【0030】
さらに、噴口から15cmの距離における噴霧粒子の平均粒子径(D50)が40~190μmであることがより好ましく、60~150μmであることがさらに好ましい。
【0031】
10μm以下の噴霧粒子の割合または平均粒子径(D50)については、25℃の恒温槽にて1時間静置した撥水防虫用エアゾールを用い、スプレー粒子径測定装置「エアロトラックLDSA-SPR(型式:7340)」マイクロトラック・ベル株式会社製)のレーザー光とエアゾールの噴口距離が噴射方向(水平方向)で15cmとなるように調整し、レーザー光に対し直交するようにエアゾールを噴霧した後、計算方法ロージン・ラムラー方式を採用して粒子径分布(体積積算分布)を測定することにより10μm以下の噴霧粒子の割合および平均粒子径(D50)を求めることができる。
【0032】
本発明の撥水防虫用エアゾールは、例えば、ポリエステル、綿、レーヨン、ナイロン、ポリウレタン等の繊維に噴射処理することで、当該繊維や当該繊維から製造される繊維製品に対して撥水性能および防虫性能を付与することができる。このうち、ポリエステルおよび/またはナイロンに特に効果を発揮する。前記繊維製品としては、例えば、衣服、帽子、靴、鞄、傘、テント、レジャーシートが挙げられる。
【0033】
本発明の撥水防虫用エアゾールは、通常、処理対象となる繊維から10~20cmの位置から噴霧処理される。繊維に噴霧処理する際、エアゾール原液が繊維1平米あたり30~60gとなるよう噴射量を調節するとよい。
【0034】
本発明の撥水防虫用エアゾールが防除対象としては、例えば、ウンカ類、ヨコバイ類、アブラムシ類、カメムシ類等の半翅目昆虫、メイガ類、ヨトウ類、ドクガ類、コナガ類、ヒトリガ類、イガ類、コイガ類等の鱗翅目昆虫、イエカ類、シマカ類、ユスリカ類、イエバエ類、クロバエ類、ニクバエ類、ハナバエ類、ミバエ類、ショウジョウバエ類、ノミバエ類、チョウバエ類、ブユ類、アブ類、サシバエ類等の双翅目昆虫、ハムシ類等の鞘翅目昆虫、オオゴキブリ類、キゴキブリ類、シロアリ類等のゴキブリ目昆虫、ハチ類、アリ類、アリガタバチ類、ハバチ類等の膜翅目昆虫、ノミ目昆虫、シラミ目昆虫、カゲロウ目昆虫、マダニ、ワクモ、ツツガムシ、タカラダニ等のダニ類、ヒメグモ、ユウレイグモ等のクモ類、ゲジ類、ムカデ類、ヤスデ類、オカダンゴムシ、ヒメワラジムシ等のワラジムシ類、ナメクジ等の有肺類、ヒル類の生物が挙げられる。
【実施例0035】
以下、具体的実施例ならびに試験例に基づいて、本発明の撥水防虫用エアゾールを詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【参考例】
【0036】
ポリエステル製繊維製品(布の但馬屋 品番:KE5030S 30cm×30cm これを無処理繊維と呼ぶこともある)を2枚準備し、それぞれの繊維製品に対し20cm離れた位置から市販の撥水エアゾール(撥水成分:フッ素樹脂)3gを噴射した後、25℃の室温で乾燥した。当該繊維製品のうち1枚については、20cm離れた位置からさらに市販の防虫エアゾールを3g噴射し、25℃の室温で乾燥した。これら2枚の布帛の撥水性能について、JIS-L1092のスプレー試験に従い評価した。市販の撥水エアゾールのみを噴射した繊維製品の撥水性能は4級であった。一方、市販の撥水エアゾールと市販の防虫エアゾールとを噴射した繊維製品の撥水性能は1級となった。
【実施例0037】
防虫成分として1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシラートを5重量%、フッ素樹脂としてソルベン3000(株式会社京絹化成製、フッ素系アクリル共重合樹脂濃度20%)を5重量パーセントおよびn-ヘプタンを90重量パーセントを混合しエアゾール原液を調製した。該エアゾール原液130mlをエアゾール容器に充填し、該容器に噴射バルブ(ステム孔径Φ0.4mm、ハウジング孔経1.0mm)を装填した後、該噴射バルブを通じて液化石油ガス(0.47MPa)を55ml充填した。該バルブ部分に噴射ボタン(株式会社丸一製、189S-204(0.4))を装着し、本発明の撥水防虫用エアゾールを得た。
【実施例0038】
実施例1において液化石油ガスを炭酸ガスに変更し、エアゾール容器の内圧が0.5MPaとなるまで充填した以外は同様の手順で本発明の撥水防虫用エアゾールを得た。
【実施例0039】
実施例1において噴射ボタンを株式会社丸一製、239S-331(0.3)に変更した以外は同様の手順で本発明の撥水防虫用エアゾールを得た。
【実施例0040】
実施例2において噴射ボタンを株式会社丸一製、189S-84(0.5)に変更した以外は同様の手順で本発明の撥水防虫用エアゾールを得た。
【実施例0041】
実施例2においてn-ヘプタンをn-ヘキサンに変更した以外は同様の手順で本発明の撥水防虫用エアゾールを得た。
【実施例0042】
実施例2においてn-ヘプタンをシクロヘキサンに変更した以外は同様の手順で本発明の撥水防虫用エアゾールを得た。
【比較例1】
【0043】
実施例1においてn-ヘプタンをエタノールに変更した以外は同様の手順で撥水防虫用エアゾールを得た。
【比較例2】
【0044】
実施例1においてn-ヘプタンをIPソルベント1620に変更した以外は同様の手順で撥水防虫用エアゾールを得た。
【比較例3】
【0045】
実施例1においてボタンを株式会社丸一製、72-196(0.6)に変更した以外は同様の手順で撥水防虫用エアゾールを得た。
【0046】
[噴霧粒子の粒子径測定]
実施例1の撥水防虫用エアゾールを25℃の恒温槽にて1時間静置した。次いで、スプレー粒子径測定装置「エアロトラックLDSA-SPR(型式:7340)」マイクロトラック・ベル株式会社製)のレーザー光とエアゾールの噴口との距離が噴射方向(水平方向)で15cmとなるように調整し、レーザー光に対し直交するようにエアゾールを噴霧した後、計算方法ロージン・ラムラー方式を採用して粒子径分布(体積積算分布)を測定した。当該粒子径分布から10μm以下の噴霧粒子の割合および平均粒子径(D50)を求めた。測定は3回行い、平均値を算出した。
【0047】
[防虫性能評価試験その1]
《試験検体作成》
ポリエステル製繊維製品(布の但馬屋 品番:KE5030S 30cm×30cm)の略中心域に対し、20cm離れた位置から実施例1のエアゾール3gをそれぞれ正立噴射後、25℃の部屋で12時間静置した(以下、処理繊維と呼ぶこともある)。金属製の枠(20cm×20cm)の半面に前記の処理繊維を張り付け、もう半面に無処理繊維を張り付け、試験検体を作成した。
【0048】
《クロバネキノコバエに対する防除試験》
図1および図2に示すように、正方形の二面が開放された無色透明の直方体形状の筒(材質:アクリル製 20cm×20cm×30cm)の一方の開放面に対し、前記処理繊維におけるエアゾール処理面が当該筒の内部を向くように前記の試験検体を取り付けた。次いで、前記の直方体形状の筒の内部にクロバネキノコバエ20頭を放虫した後、当該筒のもう一方の開放面をナイロンゴースで覆った。LED光源(LUMENA モデル N9-LUMENA LIGHT 色温度4500K、明るさ1300ルーメン)を高さ5cmの台上に載置し、前記試験検体から4cm離れた位置から直方体形状の筒の内部を照らした。
室内温度25℃、暗室下で当該筒内のクロバネキノコバエ7分間順化させた後、処理繊維および無処理繊維のそれぞれにランディングしている供試虫数を10秒毎に120秒後までカウントし、その累積数(以下、ランディング累積数と呼ぶこともある)を求めた。
各試験の忌避率(%)は、次式にて算出した。
忌避率(%)=(1-処理繊維のランディング累積数/無処理繊維のランディング累積数)×100
算出した忌避率については、下記に示す1~5までの5段階で評価した。

忌避スコア:忌避率
1:0~50%
2:50~70%
3:70~80%
4:80~90%
5:90~100%
【0049】
[防虫性能評価試験その2]
《試験検体作成》
ポリエステル製繊維製品(布の但馬屋 品番:KE5030S 30cm×30cm)の略中心域に対し、20cm離れた位置から実施例1のエアゾール3gをそれぞれ正立噴射し、25℃の部屋で24時間静置後、10cm×10cmにカットすることで試験検体を作成した(以下、処理繊維-2と呼ぶこともある)。
【0050】
《イエヒメアリに対する防除試験》
25℃の部屋で、ステンレスバット(24cm×20cm×高さ3cm)の側面に逃亡防止剤(フルオン)を塗布した後、図3に示すように、バット底面にエアゾール処理面を上面にした処理繊維-2および該処理繊維と同じ大きさにカットした無処理繊維を敷いた。さらに水を含んだ綿球を1個載置し、各繊維製品の中央域に餌としてアカイエカ雌成虫の死骸4頭を置き、バット内にイエヒメアリ30頭を放虫した。放虫から1時間後の餌の喫食状態を観察し、下記に示す1~5までの5段階で忌避スコアを評価した。なお、無処理繊維の忌避スコアは1であった。

忌避スコア:喫食状態
1:4頭(全頭)に目立った食痕あり
2:3頭に目立った食痕あり
3:2頭に目立った食痕あり
4:1頭に目立った食痕あり
5:全頭で食痕が認められない
*目立った食痕とは、アカイエカがイエヒメアリに食べられた結果、アカイエカの触角、翅、肢が頭部や胸部から分離した状態をいう。
【0051】
[撥水性能評価試験]
繊維製品(布の但馬屋 品番:KE5030S 30cm×30cm)の略中心域に対し、20cm離れた位置から実施例1のエアゾール3gをそれぞれに正立噴射し、25℃で3時間乾燥した後、当該繊維製品の撥水性能をJIS-L1092のスプレー試験に従い撥水度(級)を評価した。なお、JIS-L1092に基づく撥水度(級)は以下のとおりである。

撥水度(級):状態
1:全体的に湿潤
2:半分程度湿潤
3:小さな水滴状の湿潤
4:湿潤がなく、小さな水滴が付着
5:湿潤、水滴がない
【0052】
実施例2~実施例6および比較例1~3のエアゾールについても噴霧粒子の粒子径測定、防虫性能評価試験その1、その2および撥水性能評価試験を実施した。すべての試験結果を表1に示す。なお、防虫性能評価試験その2において、いずれの試験区も無処理繊維の忌避スコアは、1であった。
【0053】
〔表1〕
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の撥水防虫用エアゾールを用いることで、繊維製品に対し優れた撥水性能および防虫性能を付与することが可能となる。
【符号の説明】
【0055】
a LED光源
b 金属製の枠
c 無処理繊維
d 処理繊維
e 直方体形状の筒
f ナイロンゴース
g 台
h ステンレス製バット
i 無処理繊維
j 処理繊維-2
k アカイエカ雌成虫の死骸
l 綿球
m イエヒメアリ

図1
図2
図3