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特開2024-122648誘導装置、誘導方法およびプログラム
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  • 特開-誘導装置、誘導方法およびプログラム 図1
  • 特開-誘導装置、誘導方法およびプログラム 図2
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  • 特開-誘導装置、誘導方法およびプログラム 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122648
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】誘導装置、誘導方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61M 21/02 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
A61M21/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030309
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 亜香
(57)【要約】
【課題】対象者に対して適切な夢を見させるように誘導することを可能とする。
【解決手段】対象者の生体情報を取得する生体情報取得部と、関連付けられた複数の画像データにより作成されたシナリオを複数記憶する記憶部と、記憶部に記憶された複数のシナリオから生体情報取得部が取得した生体情報に関連するシナリオを選択する選択部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の生体情報を取得する生体情報取得部と、
関連付けられた複数の画像データにより作成されたシナリオを複数記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された複数の前記シナリオから前記生体情報取得部が取得した前記生体情報に関連する前記シナリオを選択する選択部と、
を備える誘導装置。
【請求項2】
前記生体情報取得部が取得した前記生体情報に基づいて対象者の活性度を算出する活性度算出部と、前記活性度算出部が算出した前記活性度と予め設定されたしきい値とを比較する判定部とを有し、
前記選択部は、前記判定部により前記活性度が前記しきい値より高いと判定されたとき、前記生体情報に関連する前記シナリオを選択する、
請求項1に記載の誘導装置。
【請求項3】
前記選択部が選択したシナリオに基づいて前記対象者に対して脳刺激を行う出力部を有する、
請求項1または請求項2に記載の誘導装置。
【請求項4】
前記対象者に対して触覚刺激を付与する刺激部を有し、
前記記憶部は、複数の前記シナリオに関連付けられた触覚刺激を記憶しており、
前記選択部は、前記記憶部から前記生体情報取得部が取得した前記生体情報に関連する前記シナリオと前記触覚刺激を選択する、
請求項1に記載の誘導装置。
【請求項5】
対象者の生体情報を取得するステップと、
関連付けられた複数の画像データにより作成されたシナリオを複数記憶するステップと、
記憶された複数の前記シナリオから取得した前記生体情報に関連する前記シナリオを選択するステップと、
を含む誘導方法。
【請求項6】
対象者の生体情報を取得するステップと、
関連付けられた複数の画像データにより作成されたシナリオを複数記憶するステップと、
記憶された複数の前記シナリオから取得した前記生体情報に関連する前記シナリオを選択するステップと、
を誘導装置として動作するコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導装置、誘導方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、脳内活性化情報を計測する技術が発達し、脳と外部のインターフェースであるブレインマシンインターフェースの技術が現実的となりつつある。下記特許文献1には、睡眠中の対象者の睡眠深度の変化を予測し、対象者の睡眠深度がより深くなるような推移状態であると、覚醒時間よりも前の時間に対象者に刺激を付与することについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5958553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記特許文献1には、睡眠状態にある対象者に対して夢を見させるように誘導ことについての示唆がない。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、対象者に対して適切な夢を見させるように誘導することが可能な誘導装置、誘導方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る誘導装置は、対象者の生体情報を取得する生体情報取得部と、関連付けられた複数の画像データにより作成されたシナリオを複数記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された複数の前記シナリオから前記生体情報取得部が取得した前記生体情報に関連する前記シナリオを選択する選択部と、を備える。
【0007】
本発明に係る誘導方法は、対象者の生体情報を取得するステップと、関連付けられた複数の画像データが時系列的によりシナリオを複数記憶するステップと、記憶された複数の前記シナリオから取得した前記生体情報に関連する前記シナリオを選択するステップと、を含む。
【0008】
本発明に係るプログラムは、対象者の生体情報を取得するステップと、関連付けられた複数の画像データにより作成されたシナリオを複数記憶するステップと、記憶された複数の前記シナリオから取得した前記生体情報に関連する前記シナリオを選択するステップと、を誘導装置として動作するコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、対象者に対して適切な夢を見させるように誘導することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態に係る誘導装置を表すブロック構成図である。
図2図2は、生体信号の生理学的な特徴を説明するためのグラフである。
図3図3は、自律神経活性度を説明するための概略図である。
図4図4は、第1実施形態に係る誘導方法を表すフローチャートである。
図5図5は、第2実施形態に係る誘導装置を表すブロック構成図である。
図6図6は、第2実施形態に係る誘導方法を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る誘導装置、誘導方法およびプログラムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0012】
[第1実施形態]
<誘導装置>
図1は、第1実施形態に係る誘導装置を表すブロック図である。
【0013】
図1に示すように、誘導装置10は、睡眠状態にあるユーザ(対象者)に対して、適切な夢を見させるように誘導するものである。誘導装置10は、入力部11と、計測部12と、記憶部13と、制御部14と、出力部15とを備える。
【0014】
入力部11は、制御部14に接続される。入力部11は、ユーザが操作可能であり、各種の信号を制御部14入力可能である。入力部11は、例えば、ユーザに夢を見させるための誘導を開始する開始信号やユーザの誘導を終了するための終了信号を制御部14に入力する。入力部11は、例えば、タッチパネル、ボタン、スイッチ、キーボードなどにより実現することができる。
【0015】
ユーザは、入力部11を操作することで、シナリオを作成することができる。作成されたシナリオは、記憶部13に記憶される。シナリオの詳細については、後述する。また、ユーザは、入力部11を操作することで、誘導される夢のカテゴリーを入力することができる。ここで、カテゴリーとは、趣味に関する事象、家族に関する事象、仕事に関する事象、世界の出来事に関する事象などである。また、カテゴリーとは、楽しい事象、悲しい事象、嬉しい事象、冒険的な事象などである。すなわち、ユーザは、入力部11を操作することで、誘導される夢の種類を選ぶことができる。
【0016】
計測部12は、制御部14に接続される。制御部14は、プログラムに基づいて計測部12に計測信号を付与する。計測部12は、制御部14から入力された計測信号に基づいてユーザの生体情報を計測する。
【0017】
計測部12は、ユーザの生体情報を検出する生体センサである。生体センサは、ユーザの生体情報を検出可能であれば、任意の位置に設けられてよい。ここでの生体情報は、指紋など不変のものではなく、例えば、ユーザの状態に応じて値が変化する情報である。すなわち、生体情報は、ユーザの自律神経に関する情報、つまり、ユーザの意思にかかわらず値が変化する情報である。
【0018】
計測部12は、生体情報として、例えば、脳波、脳血流、心拍数、呼吸数、血圧、体温、発汗量、筋電流などを計測する。計測部12は、例えば、fMRI(functional Magnetic Resonance Imaging:機能的磁気共鳴画像法)、fNIRS(functional Near-Infrared Spectroscopy:機能的近赤外分光分析法)等の原理に基づいて計測を行う計測装置、侵襲式の電極を用いた計測装置、脳の血管の中にマイクロマシンを配置してマイクロマシンにより計測を行う計測装置等を用いることができる。
【0019】
また、計測部12は、生体センサとしての脈波センサであってもよい。計測部12は、生体情報としてユーザの脈波を検出する。脈波センサは、例えば、発光部と受光部とを備える透過型光電方式のセンサであってよい。この場合、脈波センサは、例えば、ユーザの指先を挟んで発光部と受光部とが対峙する構成となっており、指先を透過してきた光を受光部が受光し、脈波の圧力が大きいほど血流が大きくなることを利用して、脈の波形を計測するものであってよい。ただし、脈波センサは、この構成に限られず、脈波を検出可能な任意の方式のものであってよい。
【0020】
記憶部13は、制御部14に接続される。記憶部13は、各種の情報を記憶する。記憶部13は、制御部14が誘導処理を実行するときに使用する活性度しきい値を予め記憶する。活性度しきい値は、例えば、予め設定された自律神経活性度のしきい値であり、ユーザが夢を見たときの夢の事象の鮮明度合である。夢のうちストーリ性があり目覚めたときに詳細が語れる夢はレム睡眠時に多い。また夢のうちストーリ性がなく断片的な夢はノンレム睡眠時に多い。レム睡眠時には後述する自律神経活性度が高くなり、ノンレム睡眠時には自律神経活性度が低くなる。そのため、自律神経活性度は、ユーザが夢を見たときの夢の事象の鮮明度合を表す指針となる。感情レベルしきい値は、例えば、予め設定された感情レベルのしきい値であり、ユーザが夢を見たときの夢の事象に対する感情の変化の度合いである。
【0021】
また、記憶部13は、上述したシナリオを記憶する。シナリオとは、関連付けられた複数の画像データが時系列的に並んで作成されたものである。具体的には、互いに関連する複数の特定の事象に対応する複数の画像データが時系列的に並んで作成されたものである。例えば、特定の第1事象として飛行機が対応したとき、第1事象の飛行機に関連する第2事象として空が対応し、第2事象の空に関連する第3事象として雲が対応し、第3事象の雲に関連する第4事象として雷雨が対応し、第4事象の雷雨に関連する第5事象として落雷が対応し、第5事象の落雷に関連する第6事象として火事が対応する。飛行機のシナリオは、第1事象(飛行機)-第2事象(空)-第3事象(雲)-第4事象(雷雨)-第5事象(落雷)-第6事象(火事)の各画像データが時系列的に並んで作成されたものである。
【0022】
この場合、飛行機のシナリオは、上述したものだけではない。例えば、第1事象の飛行機に関連する第2事象として旅行が対応し、第2事象の旅行に関連する第3事象として外国が対応し、第3事象の外国に関連する第4事象として欧州が対応し、第4事象の欧州に関連する第5事象としてバリが対応し、第5事象のパリに関連する第6事象として凱旋門が対応する。飛行機のシナリオは、第1事象(飛行機)-第2事象(旅行)-第3事象(外国)-第4事象(欧州)-第5事象(パリ)-第6事象(凱旋門)の各画像データが時系列的に並んで作成されたものである。すなわち、記憶部13は、飛行機のシナリオを複数記憶している。
【0023】
また、シナリオとして、時系列的に並んだ画像データの数は、6個に限定されず、5個以下でも7個以上であってもよい。そして、第1事象の種類は、飛行機だけでなく、その他多数あり、記憶部13は、多数のシナリオを記憶している。
【0024】
なお、シナリオは、ユーザが入力部11を操作して作成するものであるが、特定のユーザの趣味や経験などに応じた複数のシナリオを作成して記憶部13に記憶する。但し、一般的なユーザの趣味などに応じた複数のシナリオを作成して記憶部13に記憶してもよい。
【0025】
また、記憶部13は、制御部14が誘導を行うためのプログラムが格納される。なお、記憶部13は、HDD(Hard Disk Drive)などの外部記憶装置やメモリなどである。
【0026】
制御部14は、生体情報取得部21と、活性度算出部22と、判定部23と、選択部24とを有する。なお、制御部14は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などの演算回路によって構成される。
【0027】
生体情報取得部21は、計測部12に接続される。生体情報取得部21は、計測部12を制御し、計測部12にユーザの生体情報を検出させる。生体情報取得部21は、計測部12が計測したユーザの生体情報を取得する。
【0028】
生体情報取得部21は、活性度算出部22に接続される。活性度算出部22は、生体情報取得部21が取得した生体信号に基づいて自律神経活性度を計測する。活性度算出部22により自律神経活性度を算出する算出方法については、後述する。
【0029】
活性度算出部22は、記憶部13と判定部23に接続される。判定部23は、活性度算出部22が算出した自律神経活性度と、記憶部13に記憶された活性度しきい値とを比較して誘導処理の実行の不可を判定する。具体的に、判定部23は、ユーザが睡眠状態にあって、ユーザが夢を見て特定の事象(感覚情報)を想起しているとき、このときのユーザの自律神経活性度と活性度しきい値とを比較することで、誘導処理を実行するか否かを判定する。ユーザの自律神経活性度が活性度しきい値より高いとき、すなわち、睡眠状態にあるユーザが見ている夢の事象の鮮明度が高いとき、誘導処理を実行すると判定する。一方、ユーザの自律神経活性度が活性度しきい値以下であるとき、すなわち、睡眠状態にあるユーザが見ている夢の事象の鮮明度が低いとき、誘導処理を実行しないと判定する。活性度しきい値は、ユーザごとに設定することが好ましい。この場合、事前に、ユーザが睡眠状態にあるとき、想起される事象の鮮明度と自律神経活性度との関係を複数取得しておく。そして、複数取得した事象の鮮明度と自律神経活性度との関係において、ユーザが夢の導入処理を受けたい事象の鮮明度に応じて活性度しきい値を設定することが好ましい。
【0030】
判定部23は、記憶部13と選択部24に接続される。そして、選択部24は、生体情報取得部21と判定部23と記憶部13に接続される。選択部24は、記憶部13に記憶された複数のシナリオから、生体情報取得部21が取得したユーザの生体情報に関連するシナリオを選択する。すなわち、選択部24は、判定部23によりユーザの生体情報に基づいて算出された自律神経活性度が活性度しきい値より高いと判定されたとき、睡眠状態にあるユーザが見ている夢の事象に関連するシナリオを選択する。
【0031】
なお、睡眠状態にあるユーザが見ている夢の事象を推定する方法としては、以下の技術がある。例えば、視覚野のFMRI活性マップをDNN(ディープニューラルネットワーク)-CNN(畳み込みネットワーク)で可視化した意義表層の一次視覚野で単純局所処理した後、二次視覚野で階層的に認識されていくスパース符号化理論である、一次視覚野からの認識推移の可視化の方法である。この方法にて、ユーザ固有の脳刺激と脳認知(視覚なら夢をみた)において、このトリガーは、こういう映像と音が想起された、というユーザ固有の脳活動部分を含めた刺激による脳内映像(音声等を含む)、つまり、ユーザの生体情報に応じた画像データを有する。
【0032】
その後、取得したユーザの画像データに対してパータンマッチングなどの画像処理によりユーザの夢の事案を推定し、睡眠状態にあるユーザが見ている夢の事象に関連するシナリオを選択する。この場合、例えば、類似画像検索の方法を用いればよい。類似画像検索は、画像データに何があるか(例えば、飛行機が)を分類する分類処理、画像データの中に何があるかを見つけ出す物体検出処理、画像データから顔を認識し、年齢や性別、同一人物かを判定する顔認識処理、指定した画像に似た画像を検索する検索処理などから構成される。本実施形態の場合、分類処理や物体検出処理により、ユーザの生体情報に応じた画像データから関連する物体(例えば、飛行機、電車、自動車など)を検出する。ここで、検索された物体の中から自律神経活性度が活性度しきい値より高いと判定された物体(例えば、飛行機)の事象に関連するシナリオを選択する。
【0033】
制御部14は、出力部15に接続される。出力部15は、制御部14の制御結果、つまり、選択部24により選択されたシナリオに基づいてユーザに対して脳刺激を行う。出力部15は、選択されたシナリオに設定された複数の関連する画像データを所定時間(例えば、1分)ごとに再生するように、ユーザに対して脳刺激を行う。この場合、再生される複数の画像データは、関連付けられたものであることから、ユーザは、特定のシナリオとなって想起することができる。この場合、複数の関連する画像データの再生と共に、画像データの事象に合わせて予め設定された音声データを再生してもよい。
【0034】
なお、ユーザの脳刺激による脳内映像の再生は、例えば、事前に機械学習を行い、教師データセットをユーザの脳内の細胞のどの部分にどれだけの刺激(例えば、電磁波や電極針などによる刺激)を付与すれば、その刺激に基づいてユーザが脳刺激により付与したシナリオがどれだけ正確に想起するかを把握しておく必要がある。
【0035】
<自律神経活性度>
図2は、生体信号の生理学的な特徴を説明するためのグラフ、図3は、自律神経活性度を説明するための概略図である。なお、図2および図3に示す生体信号は、脈波に関する脈波信号であるものとして説明するが、脈波以外に脳波などの生体信号であってもよい。
【0036】
図2に示すように、脈波信号を示す波形W1は、P波と、QRS波と、T波と、U波とを含む。心拍変動は、QRS波の頂点であるR波の検出を、1回の拍動として測定する。
【0037】
脈波は、所定時間毎にR波WRと呼ばれるピークが現れる波形となる。脈の拍動は、心臓の洞結節にあるペースメーカ細胞の自然発火で生じする。脈拍のリズムは、交感神経と副交感神経の両方の影響を強く受けている。交感神経は、心臓活動を促進させる。副交感神経は、心臓活動を抑制させる。通常、交感神経と、副交感神経とは拮抗して作用する。安静時またはそれに近い状態では、副交感神経が支配的となる。通常、脈拍数は、交感神経の興奮によってアドレナリンが分泌されると増加し、副交感神経の興奮によってアセチルコリンが分泌されると減少する。したがって、自律神経の機能検査は、心電図におけるR-R間隔の変動調べることが有用であるとされている。
【0038】
図3に示すように、脈波信号を示す波形W2において、R-R間隔とは、時系列で連続するR波WR同士の間隔である。心拍変動は、信号波形のQPS波の頂点であるR波を脈の1発として測定される。心電図のR波の間隔の変動、つまり図3のR波間を示すR-R間隔の時間間隔の揺らぎが、自律神経指標として用いられている。自律神経指標としてR-R間隔の時間間隔の揺らぎを用いることの妥当性は、多くの医療機関で報告されている。R-R間隔のゆらぎは、安静時に大きくなり、ストレス時には小さくなる。
【0039】
R-R間隔の変動には、いくつかの特徴的な揺らぎある。1つは0.1Hz付近に出現する低周波成分であり、血管の血圧のフィードバック調節に伴う交感神経系活動の変調に由来する。もう1つは呼吸に同調した変調であり、呼吸性洞性不整脈を反映する高周波成分である。高周波成分は、呼吸中枢による迷走神経前節ニューロンへの直接干渉と肺の伸展受容体および呼吸による血圧変化の反受容体反射を反映し、主に心臓に影響する副交感神経指標とされている。すなわち、脈波のR-R波間の揺らぎを測定した波形成分のうち、低周波成分のパワースペクトルは交感神経の活性度を示し、高周波成分のパワースペクトルは副交感神経の活性度を示しているといえる。
【0040】
入力される脈波の揺らぎは、R-R間隔値の微分値で求められる。この場合、R-R間隔の微分値が時間的に等間隔のデータでない場合、活性度算出部22は、三次元スプライン補間などを用いて等間隔な時系列データに変換する。活性度算出部22は、R-R間隔の微分値を、高速フーリエ変換などで直交変換を行う。これにより、活性度算出部22は、脈波のR-R間隔値の微分値の高周波成分のパワースペクトルと、低周波成分のパワースペクトルを算出する。活性度算出部22は、高周波成分のパワースペクトルの総和をRRHFとして算出する。活性度算出部22は、低周波成分のパワースペクトルの総和のRRLFとして算出する。活性度算出部22は、下記数式を用いて、自律神経活性度を算出する。
【0041】
AN=(C1+RRLF)/(C1+RRHF)+C2
上記数式において、ANは自律神経活性度、RRHFは高周波成分のパワースペクトルの総和、RRLFは低周波成分の低周波成分のパワースペクトルの総和である。C1およびC2は、自律神経活性度ANの解の発散を抑えるために規定した固定値である。
【0042】
活性度算出部22は、算出したユーザの複数種類の自律神経活性度ANに基づいて活性度しきい値を設定し、記憶部13に記憶させる。
【0043】
<誘導方法>
図4は、第1実施形態に係る誘導方法を表すフローチャートである。
【0044】
図1および図4に示すように、ステップS11にて、ユーザは、入力部11を操作することでシナリオを作成する。この場合、誘導装置10を使用するユーザ本人が入力部11によりシナリオを作成してもよいし、誘導装置10を適用するユーザ以外のユーザが入力部11によりシナリオを作成してもよい。また、シナリオは、別の装置を用いて事前に作成しておいてもよい。このとき、入力部11を操作して作成されたシナリオは、記憶部13に記憶される。この場合、別の装置を用いてシナリオを作成した場合、別の装置にあるシナリオを記憶部13に記憶させる。ステップS12にて、活性化しきい値を設定する。活性化しきい値は、誘導装置10を使用するユーザごとに設定することが好ましい。なお、ステップS11~S12の処理は、誘導装置10を使用する前に実行しておいてもよい。
【0045】
ステップS11~S12の処理が完了すると、ステップS13にて、ユーザは、入力部11を操作することで誘導する夢のカテゴリーを入力する。ユーザは、入力部11を操作することで、予め設定されたカテゴリーの中から見たい夢のカテゴリーを選択する。そして、誘導装置10を使用するユーザは、ここで、睡眠する。
【0046】
ステップS14にて、計測部12は、ユーザの生体情報を計測し、生体情報取得部21は、計測部12が計測したユーザの生体情報を取得する。ステップS15にて、制御部14は、ユーザの生体情報に基づいてユーザが睡眠状態にあるか否かを判定する。制御部14は、ユーザの生体情報のうち、脈波信号により算出した自律神経活性度がレム睡眠時又はノンレム睡眠時の自律神経活性度と合致すると判定したときに、ユーザが睡眠状態に移行したと判定する。制御部14は、例えば、生体情報としての脳波、脈波、脈拍数、呼吸数、自律神経活性度などに基づいてユーザが睡眠状態に移行したと判定してもよい。
【0047】
ここで、制御部14は、ユーザが睡眠状態にないと判定(No)すると、この状態を維持する。一方、制御部14は、ユーザが睡眠状態になったと判定(Yes)すると、ステップS16にて、活性度算出部22は、生体情報取得部21が取得したユーザの生体情報に基づいて自律神経活性度を計測する。ステップS17にて、判定部23は、活性度算出部22が算出した自律神経活性度が記憶部13に記憶されたユーザの活性度しきい値より高いか否かを判定する。ここで、判定部23は、ユーザの自律神経活性度が活性度しきい値以下であると判定(No)すると、ステップS14に戻り、新たな生体情報を取得した後、ステップS15以降の処理を行う。
【0048】
一方、判定部23は、ユーザの自律神経活性度が活性度しきい値より高いと判定(Yes)すると、ステップS18にて、自律神経活性度が活性度しきい値より高いと判定された生体情報に基づく事象がユーザにより入力されたカテゴリーであるか否かを判定する。ここで、判定部23は、生体情報に基づく事象がユーザにより入力されたカテゴリーではないと判定(No)すると、ステップS14に戻り、新たな生体情報を取得した後、ステップS15以降の処理を行う。一方、判定部23は、生体情報に基づく事象がユーザにより入力されたカテゴリーであると判定(Yes)すると、ステップS19に移行する。
【0049】
ステップS19にて、選択部24は、記憶部13に記憶された複数のシナリオから、生体情報取得部21が取得したユーザの生体情報に関連するシナリオを選択する。すなわち、選択部24は、自律神経活性度が活性度しきい値より高いと判定された生体情報に基づいて、睡眠状態にあるユーザが見ている夢の事象に関連するシナリオを選択する。ステップS30にて、出力部15は、選択部24により選択されたシナリオに基づいてユーザに対して脳刺激を行う。すなわち、出力部15は、選択されたシナリオに設定された複数の関連する画像データを所定時間(例えば、1分)ごとに再生するように、ユーザに対して脳刺激を行う。ユーザは、最初に想起した事象に対して、この事象に関連付けられた事象の画像データが複数時系列的に入力されることで、特定のシナリオに沿った夢を見るための支援がなされる。
【0050】
なお、ステップS30にて、出力部15がユーザに対して、シナリオに基づいた複数の画像データを時系列的に見せる脳刺激を行ったとき、全ての画像データの再生が終了すると、制御部14は、再度同じシナリオに基づいた複数の画像データを時系列的に見せる脳刺激を行ってもよい。この場合、制御部14は、ユーザの生体情報に基づいてユーザがレム睡眠状態かノンレム睡眠状態であるか否かを判定し、ユーザがレム睡眠状態であると判定したとき、再度同じシナリオに基づいた複数の画像データを時系列的に見せる脳刺激を行ってもよい。また、出力部15による全ての画像データの再生が終了すると、ステップS14~S30の処理を繰り返し、ユーザの生体情報に基づいて、新たに想起された事象に関連する別のシナリオに基づいた複数の画像データを時系列的に見せる脳刺激を行ってもよい。
【0051】
[第2実施形態]
図5は、第2実施形態に係る誘導装置を表すブロック構成図である。なお、上述した実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0052】
<誘導装置>
図5に示すように、誘導装置10Aは、入力部11と、計測部12と、記憶部13Aと、制御部14Aと、出力部15と、刺激部17とを備える。
【0053】
入力部11と計測部12と出力部15は、第1実施形態と同様である。記憶部13Aは、制御部14Aに接続される。記憶部13Aは、各種の情報を記憶する。記憶部13Aは、制御部14Aが誘導処理を実行するときに使用する活性度しきい値を予め記憶する。また、記憶部13Aは、第1実施形態と同様に、複数のシナリオを記憶する。記憶部13Aは、複数のシナリオと共に、複数のシナリオに関連する複数の触覚情報(触覚刺激)を記憶する。触覚刺激とは、関連付けられた複数の画像データが時系列的に並んで作成されたシナリオに関連する1つまたは複数の刺激である。
【0054】
触覚刺激は、対象者の皮膚に対して刺激であり、例えば、空気や液体の流体、または、固体などを接触させる接触刺激であって、刺激の強弱や温度変化を有する。例えば、シナリオが飛行機のシナリオであって、第1事象(飛行機)-第2事象(空)-第3事象(雲)-第4事象(雷雨)-第5事象(落雷)-第6事象(火事)の各画像データが時系列的に並んで作成されたものであるとき、触覚刺激は、各事象に関連する風を用いた接触刺激である。
【0055】
制御部14Aは、生体情報取得部21と、活性度算出部22と、判定部23と、選択部24Aとを有する。生体情報取得部21と活性度算出部22と判定部23は、第1実施形態と同様である。
【0056】
選択部24Aは、判定部23と記憶部13に接続される。そして、選択部24Aは、生体情報取得部21と判定部23と記憶部13Aに接続される。選択部24Aは、記憶部13Aに記憶された複数のシナリオから、生体情報取得部21が取得したユーザの生体情報に関連するシナリオを選択する。すなわち、選択部24は、判定部23によりユーザの生体情報に基づいて算出された自律神経活性度が活性度しきい値より高いと判定されたとき、睡眠状態にあるユーザが見ている夢の事象に関連するシナリオを選択する。
【0057】
また、選択部24Aは、記憶部13Aに記憶された複数の触覚刺激から、生体情報取得部21が取得したユーザの生体情報に関連する触覚刺激を選択する。すなわち、選択部24Aは、判定部23によりユーザの生体情報に基づいて算出された自律神経活性度が活性度しきい値より高いと判定されたとき、選択したシナリオに関連する触覚刺激を選択する。
【0058】
刺激部17は、ユーザに対して触覚刺激を付与する。触覚刺激とは、対象者の皮膚に対して、空気や液体の流体、または、固体などを接触させる接触刺激である。刺激部17は、例えば、ユーザの身体の一部に装着される。
【0059】
<誘導方法>
図6は、第2実施形態に係る誘導方法を表すフローチャートである。
【0060】
図5および図6に示すように、ステップS31にて、ユーザは、入力部11を操作することでシナリオを作成する。このとき、入力部11を操作して作成されたシナリオは、記憶部13に記憶される。
【0061】
ステップS33にて、ユーザは、入力部11を操作することで誘導する夢のカテゴリーを入力する。ユーザは、入力部11を操作することで、予め設定されたカテゴリーの中から見たい夢のカテゴリーを選択する。そして、誘導装置10Aを使用するユーザは、ここで、睡眠する。
【0062】
ステップS34にて、計測部12は、ユーザの生体情報を計測し、生体情報取得部21は、計測部12が計測したユーザの生体情報を取得する。ステップS35にて、制御部14Aは、ユーザの生体情報に基づいてユーザが睡眠状態にあるか否かを判定する。ここで、制御部14Aは、ユーザが睡眠状態にないと判定(No)すると、この状態を維持する。一方、制御部14Aは、ユーザが睡眠状態になったと判定(Yes)すると、ステップS36にて、活性度算出部22は、生体情報取得部21が取得したユーザの生体情報に基づいて自律神経活性度を計測する。ステップS37にて、判定部23は、活性度算出部22が算出した自律神経活性度が記憶部13Aに記憶されたユーザの活性度しきい値より高いか否かを判定する。ここで、判定部23は、ユーザの自律神経活性度が活性度しきい値以下であると判定(No)すると、ステップS14に戻り、新たな生体情報を取得した後、ステップS35以降の処理を行う。
【0063】
一方、判定部23は、ユーザの自律神経活性度が活性度しきい値より高いと判定(Yes)すると、ステップS38にて、自律神経活性度が活性度しきい値より高いと判定された生体情報に基づく事象がユーザにより入力されたカテゴリーであるか否かを判定する。ここで、判定部23は、生体情報に基づく事象がユーザにより入力されたカテゴリーではないと判定(No)すると、ステップS34に戻り、新たな生体情報を取得した後、ステップS35以降の処理を行う。一方、判定部23は、生体情報に基づく事象がユーザにより入力されたカテゴリーであると判定(Yes)すると、ステップS39に移行する。
【0064】
ステップS39にて、選択部24Aは、記憶部13に記憶された複数のシナリオから、生体情報取得部21が取得したユーザの生体情報に関連するシナリオを選択する。すなわち、選択部24Aは、自律神経活性度が活性度しきい値より高いと判定された生体情報に基づいて、睡眠状態にあるユーザが見ている夢の事象に関連するシナリオを選択する。ステップS40にて、選択部24Aは、記憶部13に記憶された複数の触覚刺激から、生体情報取得部21が取得したユーザの生体情報に関連する触覚刺激を選択する。すなわち、選択部24Aは、自律神経活性度が活性度しきい値より高いと判定された生体情報に基づいて、睡眠状態にあるユーザが見ている夢の事象に関連する触覚刺激を選択する。具体的に、選択部24Aは、選択したシナリオに関連する触覚刺激を選択する。
【0065】
ステップS41にて、出力部15は、選択部24Aにより選択されたシナリオに基づいてユーザに対して脳刺激を行う。すなわち、出力部15は、選択されたシナリオに設定された複数の関連する画像データを所定時間(例えば、1分)ごとに再生するように、ユーザに対して脳刺激を行う。ステップS42にて、刺激部17は、選択部24Aにより選択された触覚刺激に基づいてユーザに対して触覚刺激を行う。ユーザは、最初に想起した事象に対して、この事象に関連付けられた事象の画像データが複数時系列的に入力されると共に、複数の画像データに応じた触覚刺激が付与されることで、特定のシナリオに沿った夢を見るための支援がなされる。
【0066】
なお、第2実施形態にて、選択部24Aは、生体情報取得部21が取得したユーザの生体情報に関連するシナリオと、選択したシナリオに関連する触覚刺激を選択し、出力部15が選択されたシナリオに基づいてユーザに対して脳刺激を行い、刺激部17がシナリオに関連する触覚刺激を行う。但し、選択部24Aは、生体情報取得部21が取得したユーザの生体情報に関連する触覚刺激だけを行うようにしてもよい。
【0067】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態の誘導装置は、ユーザ(対象者)の生体情報を取得する生体情報取得部21と、関連付けられた複数の画像データにより作成されたシナリオを複数記憶する記憶部13,13Aと、記憶部13,13Aに記憶された複数のシナリオから生体情報取得部21が取得した生体情報に関連するシナリオを選択する選択部24,24Aとを備える。
【0068】
そのため、睡眠状態にあるユーザは、想起した事象に関連付けられた画像データが複数時系列的に入力されることとなり、特定のシナリオに沿った夢を見るための支援がなされることとなり、ユーザに対して適切な夢を見させるように誘導することができる。
【0069】
本実施形態の誘導装置は、生体情報取得部21が取得した生体情報に基づいてユーザの活性度を算出する活性度算出部22と、活性度算出部22が算出した活性度と予め設定されたしきい値とを比較する判定部23とを有し、選択部24,24Aは、判定部23により活性度がしきい値より高いと判定されたとき、生体情報に関連するシナリオを選択する。そのため、誘導される夢の選択を行うことができる。
【0070】
本実施形態の誘導装置は、選択部24,24Aが選択したシナリオに基づいてユーザに対して脳刺激を行う出力部15を有する。そのため、ユーザに対して適切な夢を見させるように誘導することができる。
【0071】
本実施形態の誘導装置は、ユーザに対して触覚刺激を付与する刺激部17を有し、記憶部24aは、複数のシナリオに関連付けられた触覚刺激を記憶しており、選択部24Aは、記憶部13Aから生体情報取得部21が取得した生体情報に関連するシナリオと触覚刺激を選択する。そのため、睡眠状態にあるユーザは、想起した事象に関連付けられた画像データが複数時系列的に入力されると共に、複数の画像データに応じた触覚刺激が付与されることとなり、特定のシナリオに沿った夢を見るための支援がなされることとなり、ユーザに対して適切な夢を見させるように誘導することができる。
【0072】
これまで本発明に係る誘導装置について説明したが、上述した実施形態以外にも種々の異なる形態にて実施されてよい。
【0073】
図示した誘導装置の各構成要素は、機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていなくてもよい。すなわち、各装置の具体的形態は、図示のものに限られず、各装置の処理負担や使用状況などに応じて、その全部または一部を任意の単位で機能的または物理的に分散または統合してもよい。
【0074】
誘導装置の構成は、例えば、ソフトウェアとして、メモリにロードされたプログラムなどによって実現される。上記実施形態では、これらのハードウェアまたはソフトウェアの連携によって実現される機能ブロックとして説明した。すなわち、これらの機能ブロックについては、ハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、または、それらの組み合わせによって種々の形で実現できる。
【0075】
上記した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものを含む。さらに、上記した構成は適宜組み合わせが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において構成の種々の省略、置換または変更が可能である。
【符号の説明】
【0076】
10,10A 誘導装置
11 入力部
12 計測部
13,13A 記憶部
14,14A 制御部
15 出力部
17 刺激部
21 生体情報取得部
22 活性度算出部
23 判定部
24,24A 選択部
図1
図2
図3
図4
図5
図6