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特開2024-122649情報処理装置、情報処理方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122649
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/16 20060101AFI20240902BHJP
   A61B 5/02 20060101ALI20240902BHJP
   A61B 5/352 20210101ALI20240902BHJP
   A61B 5/374 20210101ALI20240902BHJP
【FI】
A61B5/16 130
A61B5/16 120
A61B5/02 310B
A61B5/352 100
A61B5/374
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030310
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 亜香
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
4C127
【Fターム(参考)】
4C017AA09
4C017AB03
4C017AC27
4C017BC12
4C017DD14
4C017FF05
4C017FF17
4C038PP03
4C038PP05
4C038PS00
4C038VA15
4C038VB13
4C127AA02
4C127AA03
4C127GG03
4C127GG05
4C127GG15
4C127LL08
(57)【要約】
【課題】睡眠状態にある対象者が想起した事象の保護を可能とする。
【解決手段】対象者の生体情報を取得する生体情報取得部と、生体情報取得部が取得した生体情報に基づいて対象者の活性度を算出する活性度算出部と、生体情報取得部が取得した生体情報に基づいて対象者の感情レベルを算出する感情レベル算出部と、活性度算出部が算出した活性度と感情レベル算出部が算出した感情レベルとに基づいて生体情報を分類する分類部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の生体情報を取得する生体情報取得部と、
前記生体情報取得部が取得した前記生体情報に基づいて前記対象者の活性度を算出する活性度算出部と、
前記生体情報取得部が取得した前記生体情報に基づいて前記対象者の感情レベルを算出する感情レベル算出部と、
前記活性度算出部が算出した前記活性度と前記感情レベル算出部が算出した前記感情レベルとに基づいて前記生体情報を分類する分類部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
予め設定された活性度しきい値と予め設定された感情レベルしきい値を記憶する記憶部を有し、
前記分類部は、前記活性度が前記活性度しきい値以下、または、前記感情レベルが前記感情レベルしきい値以下であるときに前記生体情報を出力可能であると分類する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記分類部により前記活性度が前記活性度しきい値より大きく、且つ、前記感情レベルが前記感情レベルしきい値より大きいと分類されたときに前記生体情報を暗号化または符号化する処理部を有する、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
対象者の生体情報を取得するステップと、
前記生体情報に基づいて前記対象者の活性度を算出するステップと、
前記生体情報に基づいて前記対象者の感情レベルを算出するステップと、
前記活性度と前記感情レベルとに基づいて前記生体情報を分類するステップと、
を含む情報処理方法。
【請求項5】
対象者の生体情報を取得するステップと、
前記生体情報に基づいて前記対象者の活性度を算出するステップと、
前記生体情報に基づいて前記対象者の感情レベルを算出するステップと、
前記活性度と前記感情レベルとに基づいて前記生体情報を分類するステップと、
を情報処理装置として動作するコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、脳内活性化情報を計測する技術が発達し、脳と外部のインターフェースであるブレインマシンインターフェースの技術が現実的となりつつある。下記特許文献1には、心拍データから脈波拍動成分データを抽出し、脈波拍動成分データに基づいて脳の眠り度を測定し、脳の眠り度からレム睡眠とノンレム睡眠に相当する睡眠状態を推定した睡眠の質を表示することについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-104528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記特許文献1には、睡眠状態にある対象者が見ている夢の事象を外部に取り出すことについての示唆がない。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、睡眠状態にある対象者が想起した事象の保護を可能とする情報処理装置、情報処理方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る情報処理装置は、対象者の生体情報を取得する生体情報取得部と、前記生体情報取得部が取得した前記生体情報に基づいて前記対象者の活性度を算出する活性度算出部と、前記生体情報取得部が取得した前記生体情報に基づいて前記対象者の感情レベルを算出する感情レベル算出部と、前記活性度算出部が算出した前記活性度と前記感情レベル算出部が算出した前記感情レベルとに基づいて前記生体情報を分類する分類部と、を備える。
【0007】
本発明に係る情報処理方法は、対象者の生体情報を取得するステップと、前記生体情報に基づいて前記対象者の活性度を算出するステップと、前記生体情報に基づいて前記対象者の感情レベルを算出するステップと、前記活性度と前記感情レベルとに基づいて前記生体情報を分類するステップと、を含む。
【0008】
本発明に係るプログラムは、対象者の生体情報を取得するステップと、前記生体情報に基づいて前記対象者の活性度を算出するステップと、前記生体情報に基づいて前記対象者の感情レベルを算出するステップと、前記活性度と前記感情レベルとに基づいて前記生体情報を分類するステップと、を情報処理装置として動作するコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、睡眠状態にある対象者が想起した事象の保護を可能とすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態に係る情報処理装置を表すブロック構成図である。
図2図2は、生体信号の生理学的な特徴を説明するためのグラフである。
図3図3は、自律神経活性度を説明するための概略図である。
図4図4は、第1実施形態に係る情報処理方法を表すフローチャートである。
図5図5は、第2実施形態に係る情報処理装置を表すブロック構成図である。
図6図6は、第2実施形態に係る情報処理方法を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る情報処理装置、情報処理方法およびプログラムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0012】
[第1実施形態]
<情報処理装置>
図1は、第1実施形態に係る情報処理装置を表すブロック図である。
【0013】
図1に示すように、情報処理装置10は、睡眠状態にあるユーザ(対象者)が想起した夢の事象の保護を可能とするものである。情報処理装置10は、入力部11と、計測部12と、記憶部13と、制御部14と、出力部15とを備える。
【0014】
入力部11は、制御部14に接続される。入力部11は、ユーザが操作可能であり、各種の信号を制御部14入力可能である。入力部11は、例えば、ユーザが見ている夢を外部に出力させるための処理を開始する開始信号やユーザの夢を出力させるための処理を終了するための終了信号を制御部14に入力する。入力部11は、例えば、タッチパネル、ボタン、スイッチ、キーボードなどにより実現することができる。
【0015】
計測部12は、制御部14に接続される。制御部14は、プログラムに基づいて計測部12に計測信号を付与する。計測部12は、制御部14から入力された計測信号に基づいてユーザの生体情報を計測する。
【0016】
計測部12は、ユーザの生体情報を検出する生体センサである。生体センサは、ユーザの生体情報を検出可能であれば、任意の位置に設けられてよい。ここでの生体情報は、指紋など不変のものではなく、例えば、ユーザの状態に応じて値が変化する情報である。すなわち、生体情報は、ユーザの自律神経に関する情報、つまり、ユーザの意思にかかわらず値が変化する情報である。
【0017】
計測部12は、生体情報として、例えば、脳波、脳血流、心拍数、呼吸数、血圧、体温、発汗量、筋電流などを計測する。計測部12は、例えば、fMRI(functional Magnetic Resonance Imaging:機能的磁気共鳴画像法)、fNIRS(functional Near-Infrared Spectroscopy:機能的近赤外分光分析法)等の原理に基づいて計測を行う計測装置、侵襲式の電極を用いた計測装置、脳の血管の中にマイクロマシンを配置してマイクロマシンにより計測を行う計測装置等を用いることができる。
【0018】
また、計測部12は、生体センサとしての脈波センサであってもよい。計測部12は、生体情報としてユーザの脈波を検出する。脈波センサは、例えば、発光部と受光部とを備える透過型光電方式のセンサであってよい。この場合、脈波センサは、例えば、ユーザの指先を挟んで発光部と受光部とが対峙する構成となっており、指先を透過してきた光を受光部が受光し、脈波の圧力が大きいほど血流が大きくなることを利用して、脈の波形を計測するものであってよい。ただし、脈波センサは、この構成に限られず、脈波を検出可能な任意の方式のものであってよい。
【0019】
記憶部13は、制御部14に接続される。記憶部13は、各種の情報を記憶する。記憶部13は、制御部14が出力処理を実行するときに使用する活性度しきい値と感情レベルしきい値を予め記憶する。活性度しきい値は、例えば、予め設定された自律神経活性度のしきい値であり、ユーザが夢を見たときの夢の事象の鮮明度合である。夢のうちストーリ性があり目覚めたときに詳細が語れる夢はレム睡眠時に多い。また夢のうちストーリ性がなく断片的な夢はノンレム睡眠時に多い。レム睡眠時には後述する自律神経活性度が高くなり、ノンレム睡眠時には自律神経活性度が低くなる。そのため、自律神経活性度は、ユーザが夢を見たときの夢の事象の鮮明度合を表す指針となる。感情レベルしきい値は、例えば、予め設定された感情レベルのしきい値であり、ユーザが夢を見たときの夢の事象に対する感情の変化の度合いである。
【0020】
なお、活性度しきい値と感情レベルしきい値は、上述したものに限定されるものではない。睡眠状態にあるユーザが見ている夢の事象を推定する方法としては、以下の技術がある。例えば、視覚野のFMRI活性マップをDNN(ディープニューラルネットワーク)-CNN(畳み込みネットワーク)で可視化した意義表層の一次視覚野で単純局所処理した後、二次視覚野で階層的に認識されていくスパース符号化理論である、一次視覚野からの認識推移の可視化の方法である。この方法にて、ユーザ固有の脳刺激と脳認知(視覚なら夢をみた)において、このトリガーは、こういう映像と音が想起された、というユーザ固有の脳活動部分を含めた刺激による脳内映像(音声等を含む)、つまり、ユーザの生体情報に応じた画像データを有する。
【0021】
ユーザが睡眠状態であるときに見た夢の事象は、上述のユーザの生体情報に応じた画像データに基づいて推定可能である。夢の事象の鮮明度は、例えば、ユーザの生体情報に応じた画像データに対するエッジ、動きベクトル、コントラスト、解像度などに基づいて推定することができる。そのため、活性度しきい値は、ユーザの自律神経活性度のレベルに基づいて設定されるが、ユーザの生体情報に応じた画像データなどのレベルに基づいて設定されてもよい。
【0022】
また、本実施形態では、感情レベルしきい値は、ユーザの感情の変化の度合いに基づいて設定される。但し、人の感情は、喜怒哀楽があり、例えば、驚き、喜び、怒り、恐怖、悲しみ、嫌悪など特定の感情ごとに区分けすることができる。そのため、感情レベルしきい値は、ユーザの驚き度合、喜び度合、怒り度合、悲しみ度合、嫌悪度合などに基づいて設定されてもよい。
【0023】
また、記憶部13は、制御部14が情報処理を行うためのプログラムが格納される。なお、記憶部13は、HDD(Hard Disk Drive)などの外部記憶装置やメモリなどである。
【0024】
制御部14は、生体情報取得部21と、活性度算出部22と、感情レベル算出部23と、分類部24とを有する。なお、制御部14は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などの演算回路によって構成される。
【0025】
生体情報取得部21は、計測部12に接続される。生体情報取得部21は、計測部12を制御し、計測部12にユーザの生体情報を検出させる。生体情報取得部21は、計測部12が計測したユーザの生体情報を取得する。
【0026】
生体情報取得部21は、活性度算出部22に接続される。活性度算出部22は、生体情報取得部21が取得した生体信号に基づいて自律神経活性度を計測する。活性度算出部22により自律神経活性度を算出する算出方法については、後述する。
【0027】
生体情報取得部21は、感情レベル算出部23に接続される。感情レベル算出部23は、生体情報取得部21が取得した生体信号に基づいて感情レベルを計測する。感情レベル算出部23により感情レベルを算出する算出方法については、後述する。
【0028】
活性度算出部22と感情レベル算出部23は、記憶部13と分類部24に接続される。分類部24は、活性度算出部22が算出した自律神経活性度と、記憶部13に記憶された活性度しきい値とを比較して出力処理の実行または実行不可を判定する。また、分類部24は、感情レベル算出部23が算出した感情レベルと、記憶部13に記憶された感情レベルしきい値とを比較して出力処理の実行または実行不可を判定する。
【0029】
具体的に、分類部24は、ユーザが睡眠状態にあって夢を見ており、ユーザが特定の事象(感覚情報)を想起しているときの自律神経活性度と活性度しきい値とを比較することで、外部への事象の出力処理の実行の不可を判定する。同様に、分類部24は、ユーザが睡眠状態にあって夢を見ており、ユーザが特定の事象(感覚情報)を想起しているときの感情レベルと感情レベルしきい値とを比較することで、外部への事象の出力処理の実行の不可を判定する。
【0030】
第1実施形態にて、分類部24は、ユーザの自律神経活性度が活性度しきい値以下であるとき、すなわち、睡眠状態にあるユーザが見ている夢の事象の鮮明度合が低いとき、出力処理を不可とする第1フラグをオフ(OFF)とする。また、分類部24は、ユーザの感情レベルが感情レベルしきい値以下であるとき、すなわち、睡眠状態にあるユーザが見ている夢の事象に対する感情の変化の度合いが低いとき、出力処理を実行不可とする第2フラグをオフ(OFF)とする。分類部24は、第1フラグがオフ(OFF)、または、第2フラグがオフ(OFF)であるとき、外部への事象の出力処理の実行を可能とし、このときのユーザの生体情報を出力可能と分類する。
【0031】
一方、分類部24は、ユーザの自律神経活性度が活性度しきい値より高いとき、すなわち、睡眠状態にあるユーザが見ている夢の事象の鮮明度合が高いとき、出力処理を不可とする第1フラグをオン(ON)とする。また、分類部24は、ユーザの感情レベルが感情レベルしきい値より高いとき、すなわち、睡眠状態にあるユーザが見ている夢の事象に対する感情の変化の度合いが高いとき、出力処理を不可とする第2フラグをオン(ON)とする。分類部24は、第1フラグがオン(ON)で、且つ、第2フラグがオン(ON)であるとき、外部への事象の出力処理の実行を不可とし、このときのユーザの生体反応を出力不可と分類する。
【0032】
この場合、事前に、ユーザが睡眠状態にあるとき、想起される事象の鮮明度と自律神経活性度との関係を複数取得しておく。そして、複数取得した事象の鮮明度と自律神経活性度との関係において、ユーザが外部に出力してもよいと考える事象の鮮明度に応じて活性度しきい値を設定することが好ましい。また、事前に、ユーザが睡眠状態にあるとき、想起される事象の感情レベルを複数取得しておく。そして、複数取得した事象の感情レベルにおいて、ユーザが外部に出力してもよいと考える事象の感情レベルに応じて感情レベルしきい値を設定することが好ましい。
【0033】
制御部14は、出力部15に接続される。出力部15は、制御部14の制御結果、つまり、分類部24により出力可能であると分類されたユーザの事象を外部に伝送して表示する。出力部15は、例えば、映像を表示する表示装置や音声を出力する音声出力装置である。
【0034】
<自律神経活性度>
図2は、生体信号の生理学的な特徴を説明するためのグラフ、図3は、自律神経活性度を説明するための概略図である。なお、図2および図3に示す生体信号は、脈波に関する脈波信号であるものとして説明するが、脈波以外に脳波などの生体信号であってもよい。
【0035】
図2に示すように、脈波信号を示す波形W1は、P波と、QRS波と、T波と、U波とを含む。心拍変動は、QRS波の頂点であるR波の検出を、1回の拍動として測定する。
【0036】
脈波は、所定時間毎にR波WRと呼ばれるピークが現れる波形となる。脈の拍動は、心臓の洞結節にあるペースメーカ細胞の自然発火で生じする。脈拍のリズムは、交感神経と副交感神経の両方の影響を強く受けている。交感神経は、心臓活動を促進させる。副交感神経は、心臓活動を抑制させる。通常、交感神経と、副交感神経とは拮抗して作用する。安静時またはそれに近い状態では、副交感神経が支配的となる。通常、脈拍数は、交感神経の興奮によってアドレナリンが分泌されると増加し、副交感神経の興奮によってアセチルコリンが分泌されると減少する。したがって、自律神経の機能検査は、心電図におけるR-R間隔の変動調べることが有用であるとされている。
【0037】
図3に示すように、脈波信号を示す波形W2において、R-R間隔とは、時系列で連続するR波WR同士の間隔である。心拍変動は、信号波形のQPS波の頂点であるR波を脈の1発として測定される。心電図のR波の間隔の変動、つまり図3のR波間を示すR-R間隔の時間間隔の揺らぎが、自律神経指標として用いられている。自律神経指標としてR-R間隔の時間間隔の揺らぎを用いることの妥当性は、多くの医療機関で報告されている。R-R間隔のゆらぎは、安静時に大きくなり、ストレス時には小さくなる。
【0038】
R-R間隔の変動には、いくつかの特徴的な揺らぎある。1つは0.1Hz付近に出現する低周波成分であり、血管の血圧のフィードバック調節に伴う交感神経系活動の変調に由来する。もう1つは呼吸に同調した変調であり、呼吸性洞性不整脈を反映する高周波成分である。高周波成分は、呼吸中枢による迷走神経前節ニューロンへの直接干渉と肺の伸展受容体および呼吸による血圧変化の反受容体反射を反映し、主に心臓に影響する副交感神経指標とされている。すなわち、脈波のR-R波間の揺らぎを測定した波形成分のうち、低周波成分のパワースペクトルは交感神経の活性度を示し、高周波成分のパワースペクトルは副交感神経の活性度を示しているといえる。
【0039】
入力される脈波の揺らぎは、R-R間隔値の微分値で求められる。この場合、R-R間隔の微分値が時間的に等間隔のデータでない場合、活性度算出部22は、三次元スプライン補間などを用いて等間隔な時系列データに変換する。活性度算出部22は、R-R間隔の微分値を、高速フーリエ変換などで直交変換を行う。これにより、活性度算出部22は、脈波のR-R間隔値の微分値の高周波成分のパワースペクトルと、低周波成分のパワースペクトルを算出する。活性度算出部22は、高周波成分のパワースペクトルの総和をRRHFとして算出する。活性度算出部22は、低周波成分のパワースペクトルの総和のRRLFとして算出する。活性度算出部22は、下記数式を用いて、自律神経活性度を算出する。
【0040】
AN=(C1+RRLF)/(C1+RRHF)+C2
上記数式において、ANは自律神経活性度、RRHFは高周波成分のパワースペクトルの総和、RRLFは低周波成分の低周波成分のパワースペクトルの総和である。C1およびC2は、自律神経活性度ANの解の発散を抑えるために規定した固定値である。
【0041】
活性度算出部22は、算出したユーザの複数種類の自律神経活性度ANに基づいて活性度しきい値を設定し、記憶部13に記憶させる。
【0042】
<感情レベル>
感情レベルも、自律神経活性度と同様に、ユーザから取得した脈波信号や脳波信号などの生体信号に基づいて算出される。感情レベル算出部23は、例えば、ユーザか取得した脳波信号に基づいて感情レベルを算出する。具体的には、感情レベル算出部23は、脳波信号からα波とβ波を抽出する。α波はリラックス時等に増加し、β波は楽しい、怒り、緊張した時に増加するため、感情レベル算出部23は、抽出したβ波/α波により感情レベルを算出する。この感情レベルの算出方法はあくまでも一例であり、感情レベル算出部23は、生体信号のうち脈波信号を用いて感情レベルを算出してもよく、脈波信号と脳波信号の生体情報を用いて感情レベルを算出してもよい。
【0043】
記憶部13は、感情レベルのしきい値を予め記憶する。なお、感情レベルのしきい値は、個人ごとに変わるため、上述した感情レベルの算出方法により感情レベルを計測し、その値を参考に感情レベルのしきい値を設定してもよい。
【0044】
<情報処理方法>
図4は、第1実施形態に係る情報処理方法を表すフローチャートである。
【0045】
図1および図4に示すように、ステップS11にて、活性化しきい値を設定する。活性化しきい値は、情報処理装置10を使用するユーザごとに設定することが好ましい。ステップS12にて、感情レベルしきい値を設定する。感情レベル値は、情報処理装置10を使用するユーザごとに設定することが好ましい。なお、ステップS11~S12の処理は、情報処理装置10を使用する前に実行しておいてもよい。
【0046】
ステップS11~S12の処理が完了すると、情報処理装置10を使用するユーザは、睡眠する。ステップS13にて、計測部12は、ユーザの生体情報を計測し、生体情報取得部21は、計測部12が計測したユーザの生体情報を取得する。ステップS14にて、制御部14は、ユーザの生体情報に基づいてユーザが睡眠状態にあるか否かを判定する。制御部14は、ユーザの生体情報のうち、脈波信号により算出した自律神経活性度がレム睡眠時又はノンレム睡眠時の自律神経活性度と合致すると判定したときに、ユーザが睡眠状態に移行したと判定する。制御部14は、例えば、生体情報としての脳波、脈波、脈拍数、呼吸数、自律神経活性度などに基づいてユーザが睡眠状態に移行したと判定してもよい。
【0047】
ここで、制御部14は、ユーザが睡眠状態にないと判定(No)すると、この状態を維持する。一方、制御部14は、ユーザが睡眠状態になったと判定(Yes)すると、ステップS15にて、活性度算出部22は、生体情報取得部21が取得したユーザの生体情報に基づいて自律神経活性度を計測する。また、ステップS16にて、感情レベル算出部23は、生体情報取得部21が取得したユーザの生体情報に基づいて感情レベルを計測する。なお、活性度算出部22の処理と感情レベル算出部23の処理は、順序が逆でもよいし、同時であってもよい。ステップS17にて、分類部24は、活性度算出部22が算出した自律神経活性度が記憶部13に記憶されたユーザの活性度しきい値より高いか否かを判定する。ここで、分類部24は、ユーザの自律神経活性度が活性度しきい値以下であると判定(No)すると、ステップS20に移行する。
【0048】
一方、分類部24は、ユーザの自律神経活性度が活性度しきい値より高いと判定(Yes)すると、ステップS18に移行する。ステップS18にて、分類部24は、感情レベル算出部23が算出した感情レベルが記憶部13に記憶されたユーザの感情レベルしきい値より高いか否かを判定する。ここで、分類部24は、ユーザの感情レベルが感情レベルしきい値以下であると判定(No)すると、ステップS20に移行する。一方、分類部24は、ユーザの感情レベルが活性度しきい値より高いと判定(Yes)すると、ステップS19に移行する。
【0049】
すなわち、分類部24は、ステップS17でユーザの自律神経活性度が活性度しきい値以下であると判定したり、ステップS18でユーザの感情レベルが感情レベルしきい値以下であると判定したりすると、ユーザが想起した事象の出力処理の実行を可能と分類する。そして、ステップS20に移行し、出力部15は、ユーザの生体情報、つまり、ユーザが想起した事象を外部に出力する。一方、分類部24は、ステップS17でユーザの自律神経活性度が活性度しきい値より高いと判定し、且つ、ステップS18でユーザの感情レベルが感情レベルしきい値より高いと判定すると、ユーザが想起した事象の出力処理の実行を不可と分類する。そして、ステップS19に移行し、出力部15は、ユーザの生体情報、つまり、ユーザが想起した事象の外部への出力を停止する。
【0050】
[第2実施形態]
図5は、第2実施形態に係る情報処理装置を表すブロック構成図である。なお、上述した実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0051】
<情報処理装置>
図5に示すように、情報処理装置10Aは、入力部11と、計測部12と、記憶部13と、制御部14Aと、出力部15とを備える。入力部11と計測部12と記憶部13と出力部15は、第1実施形態と同様である。
【0052】
制御部14Aは、生体情報取得部21と、活性度算出部22と、感情レベル算出部23と、分類部24と、処理部25とを有する。生体情報取得部21と活性度算出部22と感情レベル算出部23と分類部24は、第1実施形態と同様である。
【0053】
処理部25は、生体情報取得部21と分類部24に接続される。処理部25は、生体情報取得部21が取得した生体情報を暗号化または符号化することができる。具体的に、処理部25は、分類部24により活性度が活性度しきい値より大きく、且つ、感情レベルが感情レベルしきい値より大きいと生体情報が分類されたとき、この生体情報を暗号化または符号化する。
【0054】
ここで、暗号化や符号化とは、所定のデータの内容を第3者に見られないようにする処理である。暗号化とは、元のデータに対して特別な処理を行うことで別のデータへ変換する処理である。また、符号化とは、元のデータを一定の規則に従って置き換えることで別のデータへ変換する処理である。
【0055】
制御部14Aは、出力部15に接続される。出力部15は、制御部14の制御結果、つまり、分類部24により分類されたユーザの事象を外部に伝送して表示する。この場合、出力部15は、分類部24により活性度が活性度しきい値以下であると分類された生体情報、感情レベルが感情レベルしきい値以下であると分類された生体情報を暗号化や符号化せずにそのまま出力する。また、出力部15は、分類部24により活性度が活性度しきい値より大きく、且つ、感情レベルが前記感情レベルしきい値より大きいと分類された生体情報を処理部25が暗号化または符号化した後に出力する。
【0056】
<情報処理方法>
図6は、第2実施形態に係る情報処理方法を表すフローチャートである。
【0057】
図5および図6に示すように、ステップS31にて、活性化しきい値を設定する。ステップS32にて、感情レベルしきい値を設定する。ステップS31~S32の処理が完了すると、情報処理装置10を使用するユーザは、睡眠する。
【0058】
ステップS33にて、計測部12は、ユーザの生体情報を計測し、生体情報取得部21は、計測部12が計測したユーザの生体情報を取得する。ステップS34にて、制御部14は、ユーザの生体情報に基づいてユーザが睡眠状態にあるか否かを判定する。ここで、制御部14は、ユーザが睡眠状態にないと判定(No)すると、この状態を維持する。一方、制御部14は、ユーザが睡眠状態になったと判定(Yes)すると、ステップS35にて、活性度算出部22は、生体情報取得部21が取得したユーザの生体情報に基づいて自律神経活性度を計測する。また、ステップS36にて、感情レベル算出部23は、生体情報取得部21が取得したユーザの生体情報に基づいて感情レベルを計測する。ステップS37にて、分類部24は、活性度算出部22が算出した自律神経活性度が記憶部13に記憶されたユーザの活性度しきい値より高いか否かを判定する。ここで、分類部24は、ユーザの自律神経活性度が活性度しきい値以下であると判定(No)すると、ステップS40に移行する。
【0059】
一方、分類部24は、ユーザの自律神経活性度が活性度しきい値より高いと判定(Yes)すると、ステップS38に移行する。ステップS38にて、分類部24は、感情レベル算出部23が算出した感情レベルが記憶部13に記憶されたユーザの感情レベルしきい値より高いか否かを判定する。ここで、分類部24は、ユーザの感情レベルが感情レベルしきい値以下であると判定(No)すると、ステップS40に移行する。一方、分類部24は、ユーザの感情レベルが活性度しきい値より高いと判定(Yes)すると、ステップS39に移行する。
【0060】
すなわち、分類部24は、ステップS37でユーザの自律神経活性度が活性度しきい値以下であると判定したり、ステップS38でユーザの感情レベルが感情レベルしきい値以下であると判定したりすると、ユーザが想起した事象をそのまま出力処理することが可能であると分類する。そして、ステップS40に移行し、出力部15は、ユーザの生体情報、つまり、ユーザが想起した事象をそのまま外部に出力する。一方、分類部24は、ステップS37でユーザの自律神経活性度が活性度しきい値より高いと判定し、且つ、ステップS38でユーザの感情レベルが感情レベルしきい値より高いと判定すると、ユーザが想起した事象を暗号化または符号化した後に出力処理することが可能であると分類する。そして、ステップS39に移行し、出力部15は、ユーザの生体情報、つまり、ユーザが想起した事象を暗号化または符号化した後に外部へ出力する。
【0061】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態の情報処理装置は、ユーザ(対象者)の生体情報を取得する生体情報取得部21と、生体情報取得部21が取得した生体情報に基づいてユーザの活性度を算出する活性度算出部22と、生体情報取得部21が取得した生体情報に基づいてユーザの感情レベルを算出する感情レベル算出部23と、活性度算出部22が算出した活性度と感情レベル算出部23が算出した感情レベルとに基づいて生体情報を分類する分類部24とを備える。
【0062】
そのため、ユーザの生体情報をユーザの活性度と感情レベルに基づいて分類することで、睡眠状態にあるユーザが想起した事象の外部出力に対してセキュリティを掛けることができ、睡眠状態にある対象者が想起した事象の保護を可能とすることができる。
【0063】
本実施形態の情報処理装置は、予め設定された活性度しきい値と予め設定された感情レベルしきい値を記憶する記憶部13を有し、分類部24は、活性度が活性度しきい値以下、または、感情レベルが感情レベルしきい値以下であるときに生体情報を出力可能であると分類する。そのため、分類部24の分類処理を適正に実行することができる。
【0064】
本実施形態の情報処理装置は、分類部24により活性度が活性度しきい値より大きく、且つ、感情レベルが感情レベルしきい値より大きいと分類されたときに生体情報を暗号化または符号化する処理部25を有する。そのため、睡眠状態にあるユーザが想起した事象の外部出力に対してセキュリティを掛けることができる。
【0065】
これまで本発明に係る情報処理装置について説明したが、上述した実施形態以外にも種々の異なる形態にて実施されてよい。
【0066】
図示した情報処理装置の各構成要素は、機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていなくてもよい。すなわち、各装置の具体的形態は、図示のものに限られず、各装置の処理負担や使用状況などに応じて、その全部または一部を任意の単位で機能的または物理的に分散または統合してもよい。
【0067】
情報処理装置の構成は、例えば、ソフトウェアとして、メモリにロードされたプログラムなどによって実現される。上記実施形態では、これらのハードウェアまたはソフトウェアの連携によって実現される機能ブロックとして説明した。すなわち、これらの機能ブロックについては、ハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、または、それらの組み合わせによって種々の形で実現できる。
【0068】
上記した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものを含む。さらに、上記した構成は適宜組み合わせが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において構成の種々の省略、置換または変更が可能である。
【符号の説明】
【0069】
10,10A 情報処理装置
11 入力部
12 計測部
13 記憶部
14,14A 制御部
15 出力部
21 生体情報取得部
22 活性度算出部
23 感情レベル算出部
24 分類部
25 処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6