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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122655
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】曲げ形材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 7/08 20060101AFI20240902BHJP
   B21D 47/01 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
B21D7/08 E
B21D47/01 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030317
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 昭二郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 勲
(72)【発明者】
【氏名】山崎 隆
【テーマコード(参考)】
4E063
【Fターム(参考)】
4E063AA11
4E063BB02
4E063BB08
4E063CA03
4E063DA05
4E063EA08
4E063FA07
4E063HA05
4E063JA02
4E063KA06
4E063LA02
4E063LA14
4E063MA15
(57)【要約】
【課題】加工不良の発生を抑制することができ、生産効率を向上することができる曲げ形材の製造方法を提供する。
【解決手段】曲げ形材の製造方法は、形材を、ヒレ部が曲げ方向で内側に向かって延在し、且つ中空部が曲げ方向で外側に位置した加工姿勢とする工程と、プッシャを用い、加工姿勢とした形材をその長手方向に沿った押込方向に向かって押し込む工程と、第1ロールを回転駆動しながら少なくともヒレ部に当てることで、プッシャによって押し込まれる形材を押込方向に向かって引き寄せる工程と、第2ロールを回転駆動しながら少なくとも中空部の壁部に当てることで、プッシャによって押し込まれながら第1ロールによって引き寄せられる形材をさらに押込方向に向かって引き寄せ、同時に第1ロールと第2ロールとの間で連続的に曲げ変形させて曲げ形材を製造する工程と、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部と、前記中空部から延在するように設けられたヒレ部とを有する形材を曲げ変形させた曲げ形材の製造方法であって、
前記形材を、前記ヒレ部が曲げ方向で内側に向かって延在し、且つ前記中空部が前記曲げ方向で外側に位置した加工姿勢とする工程と、
プッシャを用い、前記加工姿勢とした形材をその長手方向に沿った押込方向に向かって押し込む工程と、
前記押込方向で前記プッシャよりも下流側に配置された第1ロールを用い、該第1ロールを回転駆動しながら少なくとも前記ヒレ部に当てることで、前記プッシャによって押し込まれる前記形材を前記押込方向に向かって引き寄せる工程と、
前記押込方向で前記第1ロールよりも下流側に配置された第2ロールを用い、該第2ロールを回転駆動しながら少なくとも前記中空部の壁部に当てることで、前記プッシャによって押し込まれながら前記第1ロールによって引き寄せられる前記形材をさらに前記押込方向に向かって引き寄せ、同時に前記第1ロールと前記第2ロールとの間で連続的に曲げ変形させて前記曲げ形材を製造する工程と、
を含む
ことを特徴とする曲げ形材の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の曲げ形材の製造方法であって、
前記プッシャによる前記形材の押込速度は、前記第1ロール及び前記第2ロールによる前記形材の引寄速度と同一以下とする
ことを特徴とする曲げ形材の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の曲げ形材の製造方法であって、
前記曲げ方向を基準とした場合に、前記形材は、前記ヒレ部の長さが前記中空部の長さよりも長い
ことを特徴とする曲げ形材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形材を曲げ変形させた曲げ形材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばカーポート等の屋根には、形材を円弧状に曲げ変形させた曲げ形材が用いられることがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5-077460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような曲げ形材は、一般的には、形材をドローベンドと呼ばれる方法によって曲げて製造される。この方法は、形材をクランプで掴んで引っ張りながら曲げるため、製造後の曲げ形材の両端を切り捨てる必要があり、歩留まり率が低い。また、この方法は、複合被膜処理を行った形材に用いると被膜を破壊するため、曲げ加工後の被膜処理が必要となり、作業効率も低い。
【0005】
曲げ形材は、プッシュベンドと呼ばれる方法によって製造されることもある。この方法は、プッシャで形材を長手方向に押し込みつつ、自由回転するロール間で曲げ変形させる方法である。この方法は、特許文献1の形材のように、大きな中空部を有し、比較的剛性の高い形材であれば有効に用いることができる。ところが、この方法は、例えば中空部が小さく、大きなヒレ部を有するような形材に用いた場合、プッシャによる押込力によって形材が座屈する等の問題を生じることが分かってきた。
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、加工不良の発生を抑制することができ、生産効率を向上することができる曲げ形材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る曲げ形材の製造方法は、中空部と、前記中空部から延在するように設けられたヒレ部とを有する形材を曲げ変形させた曲げ形材の製造方法であって、前記形材を、前記ヒレ部が曲げ方向で内側に向かって延在し、且つ前記中空部が前記曲げ方向で外側に位置した加工姿勢とする工程と、プッシャを用い、前記加工姿勢とした形材をその長手方向に沿った押込方向に向かって押し込む工程と、前記押込方向で前記プッシャよりも下流側に配置された第1ロールを用い、該第1ロールを回転駆動しながら少なくとも前記ヒレ部に当てることで、前記プッシャによって押し込まれる前記形材を前記押込方向に向かって引き寄せる工程と、前記押込方向で前記第1ロールよりも下流側に配置された第2ロールを用い、該第2ロールを回転駆動しながら少なくとも前記中空部の壁部に当てることで、前記プッシャによって押し込まれながら前記第1ロールによって引き寄せられる前記形材をさらに前記押込方向に向かって引き寄せ、同時に前記第1ロールと前記第2ロールとの間で連続的に曲げ変形させて前記曲げ形材を製造する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明の上記態様によれば、加工不良の発生を抑制することができ、生産効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る製造方法によって製造された曲げ形材を用いた屋外構造体の斜視図である。
図2】一実施形態に係る曲げ形材の製造方法に用いる曲げ加工機の構成を模式的に示す平面図である。
図3図2中のIII-III線に沿う曲げ形材の断面図である。
図4】参考例に係る曲げ形材の断面図である。
図5】第1ロール及び形材を搬送路の下流側から見た一部省略正面図である。
図6】第2ロール及び形材を搬送路の下流側から見た一部省略正面図である。
図7】一実施形態に係る曲げ形材の製造方法の一手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る曲げ形材の製造方法についての好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係る製造方法によって製造された曲げ形材10は、例えばカーポートやテラス屋根等として屋外に設置される屋根構造体12の側枠材として利用できる。屋根構造体12は、弓なりに湾曲した水勾配を有する屋根14を、2本の支柱15及び各支柱15の上端部に連結された2本の梁16で支持したものである。屋根14は、例えば、曲げ形材10で構成した左右一対の側枠材と、前後一対の枠材18,19と、枠材18,19と平行する複数本の母屋20と、曲げ形材10と平行する複数本の垂木21とを備える屋根枠を用い、複数枚の屋根パネル22を支持した構成である。
【0012】
屋根構造体12において、曲げ形材10は、枠材18側から枠材19側に向かって円弧状のカーブを描いている。梁16及び垂木21も曲げ形材10と同様な曲率のカーブを描いている。本実施形態の製造方法によって製造される曲げ形材10は、側枠材以外、例えば梁16又は垂木21に用いてもよい。なお、図1に示す屋根構造体12は、曲げ形材10の利用対象物の一例であり、曲げ形材10は屋根構造体12以外の建築物や建具に利用してもよい。
【0013】
次に、本実施形態に係る曲げ形材10の製造方法について説明する。
【0014】
先ず、当該製造方法に用いることができる曲げ加工機24の構成例を説明する。図2に示すように、曲げ加工機24は、プッシャ26と、第1ロール28と、第2ロール30と、マンドレル32と、ガイド34と、コントローラ36とを備える。曲げ加工機24は、これら各構成要素をベースとなる支持台の上面で適宜駆動可能に支持している。
【0015】
曲げ加工機24を用いて製造される曲げ形材10は、曲げ加工が施される前の状態(以下、「形材10A」と呼ぶ。)では直線状を成している。プッシャ26は、曲げ加工機24での形材10Aの搬送方向に対して最も上流側に配置され、形材10Aをその長手方向に沿って押し込むものである。プッシャ26は、曲げ加工機24の支持台上で押込方向Pに沿って直線上を移動可能である。プッシャ26は、形材10Aの基端部を保持し、これを押込方向Pに向かって押し込むことができる。
【0016】
押込方向P1を基準として、第1ロール28はプッシャ26よりも下流側に配置され、第2ロール30は第1ロール28よりも下流側に配置されている。ロール28,30は、形材10Aを幅方向に跨ぐように互い違いに配置されている。本実施形態のロール28,30は、例えばサーボモータ28a,30aが付設され、回転駆動される。これによりロール28,30は、形材10A及び曲げ変形後の曲げ形材10を押込方向P1に向かって引き寄せつつ、曲げ変形させることができる。
【0017】
第1ロール28は、形材10Aの曲げ方向Bに対して内側に配置されている。第2ロール30は、曲げ方向Bに対して外側に配置されている。換言すれば、第1ロール28は曲げ形材10が描く円弧の内周側に配置され、第2ロール30は曲げ形材10が描く円弧の外周側に配置されている。これにより形材10Aは、プッシャ26及びロール28,30によって搬送されつつ、曲げ方向Bの内側の第1ロール28と外側の第2ロール30との間を通過する際に応力を受けて曲げ変形する。ここで、第2ロール30は、形材10Aを所望の曲率半径に曲げ変形させるための外力を付与する必要がある。そこで、第2ロール30は、形材10Aに対してその長手方向に略直交する方向P2に沿って前進可能であり、この方向P2に沿う方向の外力を形材10Aに対して付与することができる。
【0018】
マンドレル32は、形材10Aを曲げ変形させる際の意図しない潰れ変形等を抑制するための補助部品である。マンドレル32は、例えば金属ロッド32aの端部に樹脂製の先端部材32bを連結した構成であり、支持台に対する相対位置が固定されている。マンドレル32は、先端部材32bが形材10Aの内側空間に配置されることで形材10Aの潰れ変形を抑制する(図3参照)。マンドレル32は、形材10,10Aの形状等によっては省略してもよい。
【0019】
ガイド34は、第1ロール28と形材10Aを挟んで反対側に配置される。ガイド34は、第2ロール30によって形材10Aに付与される曲げ応力を受け止める第1ロール28との間で形材10Aを挟み込む。これによりガイド34は、形材10Aが第1ロール28付近で曲げ方向Bの外側に膨らむことを抑制する。ガイド34は、曲げ変形の曲率半径や形材10,10Aの搬送速度(加工速度)等によっては省略してもよい。
【0020】
コントローラ36は、曲げ加工機24を駆動制御するための制御部である。コントローラ36は、例えばプッシャ26の移動用モータや各サーボモータ28a,30aの駆動を制御する。これによりコントローラ36は、プッシャ26による形材10Aの押込速度と、ロール28,30による形材10Aの引寄速度とを同調させる。本実施形態のコントローラ36は、プッシャ26による押込速度をロール28,30による引寄速度と等速又は多少低速に制御する。なお、コントローラ36は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置にプログラムを実行させること、すなわちソフトウェアにより実現してもよいし、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアにより実現してもよいし、ソフトウェア及びハードウェアを併用して実現してもよい。
【0021】
次に、曲げ形材10の構成例について説明する。
【0022】
本実施形態の曲げ形材10は、例えばアルミニウム合金等の押出形材(形材10A)を曲げ変形させたものである。図3に示すように、曲げ形材10は、中空部10aと、中空部10aから延在するヒレ部10bと、中空部10aから延在する突出片10cとを有する。
【0023】
中空部10aは、例えば一部がくびれた矩形状に形成され、曲げ形材10の隅部に設けられている。中空部10aの断面形状は他の形状でもよい。ヒレ部10bは、中空部10aを形成する壁部10a1から突出し、途中で僅かに屈曲しながら延在し、先端に折れ部10b1が設けられている。ヒレ部10bは、形材10Aが曲げ加工機24にセットされた状態で、曲げ方向Bに向かって延在するように配置される。曲げ方向Bに沿う方向を基準とした場合、ヒレ部10bの突出長は中空部10aの長さよりも大きく、例えば3倍~5倍程度であり、本実施形態では約4倍である。つまり本実施形態の曲げ形材10(形材10A)は、剛性が高い中空部10aに対して、曲げ加工時に変形し易い剛性の低いヒレ部10bが大きく延びた断面形状を有する。
【0024】
突出片10cは、中空部10aを形成する壁部10a1からヒレ部10bと略直交する方向に突出し、先端にポケット部10c1が設けられている。なお、突出片10cの根本部分には溝部10dが形成されている。溝部10dは、例えば曲げ形材10を屋根構造体12の側枠材として用いる際、屋根パネル22を保持するための押さえ材等が連結される係合溝である。ポケット部10c1には当該押さえ材に当接する水密材が装着される。なお、マンドレル32は、図3中に2点鎖線で示すように、その先端部材32bがヒレ部10bと壁部10a1の間に形成される内側空間を埋めるように配置され、形材10Aに対して摺動可能とされる。
【0025】
一方、参考例に係る曲げ形材40の断面形状を図4に示す。図4に示す曲げ形材40は、従来の屋根構造体12の側枠材として用いられていたものである。曲げ形材40は、図3に示されるヒレ部10bを持たず、中空部10aの代わりにヒレ部10bの先端と同様な位置まで延在した形状からなる大きな中空部40aを有する。なお、曲げ形材40にも突出片10c及び溝部10dが設けられている。つまり参考例の曲げ形材40は、剛性が高い中空部40aが曲げ方向Bに沿って延在した断面形状を有する。
【0026】
次に、本実施形態に係る曲げ形材10の製造方法の一手順を説明する。
【0027】
先ず、図7中のステップS1において、曲げ加工前の直線状の形材10Aを曲げ加工機24にセットする。このセット工程は、例えば各ロール28,30及びガイド34を搬送路から後退させると共に、形材10Aの基端部をプッシャ26で保持し、さらにマンドレル32を形材10Aの内側空間に配置する。そして、プッシャ26を移動開始位置とし、ロール28,30も搬送路上に前進させる。この際、形材10Aは、ヒレ部10bが曲げ方向Bの内側に位置し、且つ曲げ方向Bに沿って中空部10aから延在する加工姿勢とする(図2及び図3参照)。なお、中空部10aは曲げ方向Bの外側に配置される。
【0028】
次に、ステップS2において、形材10Aをプッシャ26で押込方向Pに向かって押し込みながら、第1ロール28をサーボモータ28aで回転駆動して形材10Aを引き寄せる。このため、プッシャ26で押し込まれる形材10Aは、先端側の第1ロール28がブレーキとなり、第1ロール28の上流側で座屈等の変形を生じることが抑制される。特に、コントローラ36は、上記したように、プッシャ26による押込速度よりも第1ロール28による引寄速度を等速以上に制御する。これによりプッシャ26で基端側から押し込まれる形材10Aは、先端側が第1ロール28による引き込み力を受けて円滑に第1ロール28を通過するため、座屈等の発生が一層確実に抑制される。
【0029】
図5に示すように、第1ロール28は、例えばヒレ部10bの外面形状に応じた接触面28bを有する。これにより第1ロール28は、曲げ方向Bで内側にあるヒレ部10bが曲げ方向B以外に変形することを抑えつつ、形材10Aを円滑に送り出すことができる。第1ロール28は、少なくともヒレ部10bに当てた状態とすればよく、他の部位に当ててもよい。なお、図5中の第1ロール28は、1点鎖線で示される中心線の一方側半分のみを図示し、対称構造である他方側半分の図示は省略しており、図6に示す第2ロール30についても同様に図示している。
【0030】
ステップS3において、設定された曲げ形材10のR形状の曲率に応じた位置まで第2ロール30を方向P2に前進させると共に、サーボモータ30aで回転駆動する。これにより形材10Aは、第2ロール30からの曲げ応力を受け、曲げ方向Bに沿って曲げられる。図6に示すように、第2ロール30は、例えば中空部10aから溝部10dを経て突出片10cに至る外面形状に応じた接触面30bを有する。これにより第2ロール30は、曲げ方向Bで外側にあって、ヒレ部10bよりも強度の高い中空部10aを中心として形材10Aに所望の曲げ応力を付与することができる。第2ロール30は、少なくとも中空部10aの壁部に当てた状態とすればよく、他の部位に当ててもよい。
【0031】
そして、ロール28、30間での曲げ方向Bへの曲げ加工が形材10Aに対して連続的に施され、形材10Aの全長の曲げ加工が終了すると曲げ形材10の製造が完了する(ステップS4)。なお、上記したステップS3に示す第2ロール30の前進・回転は、曲げ形材10の曲率等にもよるが、ステップS1又はS2の段階で完了・開始しておいてもよい。同様に、ステップS2の第1ロール28の回転もステップS1の段階で開始しておいてもよい。
【0032】
このように、当該製造方法は、成形する形材10Aをプッシャ26で押し込みつつ、ロール28,30で搬送方向に引き寄せる。同時に、ロール28,30間で形材10Aに所望の曲げ加工を施すことで、曲げ形材10を製造する。
【0033】
従って、当該製造方法によれば、ロール28,30を自由回転のロールで構成した従来のプッシュベンド方式と比べて、ロール28,30が形材10Aを積極的に引き寄せるため、ロール28,30がブレーキとなって形材10Aが座屈やしわ等の加工不良を生じることが抑制される。しかも、当該製造方法は、剛性の低いヒレ部10bを曲げ方向Bの内側に配置し、剛性の高い中空部10aを曲げ方向Bの外側に配置した加工姿勢で形材10Aに曲げ加工を施す。このため、曲げ加工時に反りや潰れ等の加工不良を生じ易い大きなヒレ部10bを持った形材10Aであっても、円滑に所望の曲率に曲げ変形させた曲げ形材10を製造することができる。特に、曲げ形材10(形材10A)は、曲げ方向Bを基準として、中空部10aよりヒレ部10bが相当に長い。このため、曲げ形材10は、ヒレ部10bが一層加工不良を生じ易い形状であると言えるが、ロール28,30を回転駆動し、さらに形材10Aを上記した加工姿勢とすることで、不良の発生を抑制可能となっている。
【0034】
さらに、当該製造方法によれば、例えば従来のドローベンド方式での曲げ加工と異なり、製造後の曲げ形材10の両端を切り捨てる必要がない。このため、当該製造方法は歩留まり率が向上し、生産効率が向上する。また、当該製造方法は、形材10Aの表面に例えばアルマイト処理のような複合皮膜処理が施された状態での曲げ加工も可能であり、生産効率が一層向上する。
【0035】
本発明の一態様に係る曲げ形材の製造方法は、中空部と、前記中空部から延在するように設けられたヒレ部とを有する形材を曲げ変形させた曲げ形材の製造方法であって、前記形材を、前記ヒレ部が曲げ方向で内側に向かって延在し、且つ前記中空部が前記曲げ方向で外側に位置した加工姿勢とする工程と、プッシャを用い、前記加工姿勢とした形材をその長手方向に沿った押込方向に向かって押し込む工程と、前記押込方向で前記プッシャよりも下流側に配置された第1ロールを用い、該第1ロールを回転駆動しながら少なくとも前記ヒレ部に当てることで、前記プッシャによって押し込まれる前記形材を前記押込方向に向かって引き寄せる工程と、前記押込方向で前記第1ロールよりも下流側に配置された第2ロールを用い、該第2ロールを回転駆動しながら少なくとも前記中空部の壁部に当てることで、前記プッシャによって押し込まれながら前記第1ロールによって引き寄せられる前記形材をさらに前記押込方向に向かって引き寄せ、同時に前記第1ロールと前記第2ロールとの間で連続的に曲げ変形させて前記曲げ形材を製造する工程と、を含む。このような構成によれば、各ロールを回転させながら形材を曲げ加工することで、座屈等の加工不良を生じることを抑制できる。また、製造後の曲げ形材の両端を切り捨てる必要がないため、生産効率が向上する。
【0036】
前記プッシャによる前記形材の押込速度は、前記第1ロール及び前記第2ロールによる前記形材の引寄速度と同一以下とすることが好ましい。そうすると、形材は、プッシャによる押込速度以上の速度でロールによって引き込まれるため、座屈等の発生を一層抑制できる。
【0037】
前記曲げ方向を基準とした場合に、前記形材は、前記ヒレ部の長さが前記中空部の長さよりも長い構成であってもよい。すなわち、当該製造方法は、このような長いヒレ部を有し、加工不良を一層生じ易い形状の形材であっても、各ロールの回転駆動と、形材の最適な加工姿勢とにより、加工不良の発生を抑制できる。
【0038】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0039】
10,40 曲げ形材、10A 形材、10a,40a 中空部、10b ヒレ部、12 屋根構造体、26 プッシャ、28 第1ロール、30 第2ロール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7