(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122665
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】表示システム、光学積層体、および表示システムの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20240902BHJP
H10K 50/856 20230101ALI20240902BHJP
H10K 50/858 20230101ALI20240902BHJP
H10K 50/86 20230101ALI20240902BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20240902BHJP
H10K 71/00 20230101ALI20240902BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20240902BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
H10K50/856
H10K50/858
H10K50/86
H10K59/10
H10K71/00
G02B5/30
G09F9/00 313
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030337
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】国友 潤
(72)【発明者】
【氏名】後藤 周作
(72)【発明者】
【氏名】林 大輔
【テーマコード(参考)】
2H149
2H199
3K107
5G435
【Fターム(参考)】
2H149AA13
2H149AA18
2H149AB00
2H149AB01
2H149BA02
2H149BA13
2H149BA24
2H149CA02
2H149DA04
2H149DA12
2H149DA18
2H149EA02
2H149EA06
2H149EA12
2H149EA19
2H149EA22
2H149FA02X
2H149FA03W
2H149FA13Y
2H149FA66
2H149FC00
2H149FD05
2H199CA23
2H199CA25
2H199CA42
2H199CA47
2H199CA64
2H199CA65
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC35
3K107EE26
3K107EE29
3K107EE33
3K107FF06
3K107FF15
5G435GG14
5G435LL07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】VRゴーグルの高精細化を実現し得る表示システムを提供すること。
【解決手段】ユーザに対して画像を表示する表示システムであって、偏光部材を介して画像を表す光を前方に出射する表示面を有する表示素子と、前記表示素子の前方に配置され、前記表示素子から出射された光を反射する反射型偏光部材と、前記表示素子と前記反射型偏光部材との間の光路上に配置される第一レンズ部と、前記表示素子と前記第一レンズ部との間に配置され、前記表示素子から出射された光を透過させ、前記反射型偏光部材で反射された光を前記反射型偏光部材に向けて反射させるハーフミラーと、前記表示素子と前記ハーフミラーとの間の光路上に配置される第1のλ/4部材と、前記ハーフミラーと前記反射型偏光部材との間の光路上に配置される第2のλ/4部材と、を備える表示システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに対して画像を表示する表示システムであって、
偏光部材を介して画像を表す光を前方に出射する表示面を有する表示素子と、
前記表示素子の前方に配置され、前記表示素子から出射された光を反射する反射型偏光部材と、
前記表示素子と前記反射型偏光部材との間の光路上に配置される第一レンズ部と、
前記表示素子と前記第一レンズ部との間に配置され、前記表示素子から出射された光を透過させ、前記反射型偏光部材で反射された光を前記反射型偏光部材に向けて反射させるハーフミラーと、
前記表示素子と前記ハーフミラーとの間の光路上に配置される第1のλ/4部材と、
前記ハーフミラーと前記反射型偏光部材との間の光路上に配置される第2のλ/4部材と、
を備え、
前記第1のλ/4部材は、Re(550)が100nm~190nmであり、かつ、Re(450)/Re(550)が0.75以上1未満であり、
前記第2のλ/4部材は、Re(550)が100nm~190nmであり、かつ、Re(450)/Re(550)が0.75以上1未満であり、
前記偏光部材を介して出射される光は、直線偏光であり、
前記直線偏光の偏光方向と前記反射型偏光部材の反射軸とのなす角度は、87.5°~92.5°または0°~2.5°である、
表示システム。
【請求項2】
前記第2のλ/4部材の遅相軸と前記反射型偏光部材の反射軸とのなす角度は、42.5°~47.5°である、請求項1に記載の表示システム。
【請求項3】
前記表示素子に含まれる前記偏光部材の吸収軸と前記第1のλ/4部材の遅相軸とのなす角度は、40°~50°であり、
前記第1のλ/4部材の遅相軸と前記第2のλ/4部材の遅相軸とのなす角度は、0°~10°であり、
前記直線偏光の偏光方向と前記反射型偏光部材の反射軸とのなす角度は、87.5°~92.5°である、
請求項1に記載の表示システム。
【請求項4】
前記表示素子に含まれる前記偏光部材の吸収軸と前記第1のλ/4部材の遅相軸とのなす角度は、40°~50°であり、
前記第1のλ/4部材の遅相軸と前記第2のλ/4部材の遅相軸とのなす角度は、80°~100°であり、
前記直線偏光の偏光方向と前記反射型偏光部材の反射軸とのなす角度は、0°~2.5°である、
請求項1に記載の表示システム。
【請求項5】
前記第1のλ/4部材は、Re(400)/Re(550)<0.85、Re(650)/Re(550)>1.03、およびRe(750)/Re(550)>1.05を全て満たす、請求項1に記載の表示システム。
【請求項6】
前記第2のλ/4部材は、Re(400)/Re(550)<0.85、Re(650)/Re(550)>1.03、およびRe(750)/Re(550)>1.05を全て満たす、請求項1に記載の表示システム。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の表示システムに用いられる光学積層体であって、
前記第2のλ/4部材と前記反射型偏光部材とを含み、
前記第2のλ/4部材の遅相軸と前記反射型偏光部材の反射軸とのなす角度は、42.5°~47.5°である、光学積層体。
【請求項8】
請求項1から6のいずれかに記載の表示システムを製造する製造方法であって、
前記第2のλ/4部材を含む長尺状の第一フィルム部材を長尺方向に沿ってスリットして、第二フィルム部材を得ることを含み、
前記第二フィルム部材において、幅方向における前記第2のλ/4部材の遅相軸のばらつきが1°以下である、製造方法。
【請求項9】
請求項1から6のいずれかに記載の表示システムを製造する製造方法であって、
前記反射型偏光部材を含む長尺状の第一フィルム部材を長尺方向に沿ってスリットして、第二フィルム部材を得ることを含み、
前記第二フィルム部材において、幅方向における前記反射型偏光部材の反射軸のばらつきが1°以下である、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示システム、光学積層体、および表示システムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置およびエレクトロルミネセンス(EL)表示装置(例えば、有機EL表示装置)に代表される画像表示装置が急速に普及している。画像表示装置においては、画像表示を実現し、画像表示の性能を高めるために、一般的に、偏光部材、位相差部材等の光学部材が用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
近年、画像表示装置の新たな用途が開発されている。例えば、Virtual Reality(VR)を実現するためのディスプレイ付きゴーグル(VRゴーグル)が製品化され始めている。VRゴーグルは様々な場面での利用が検討されていることから、その高精細化等が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記に鑑み、本発明はVRゴーグルの高精細化を実現し得る表示システムの提供を主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明の1つの局面によれば、ユーザに対して画像を表示する表示システムであって、偏光部材を介して画像を表す光を前方に出射する表示面を有する表示素子と、上記表示素子の前方に配置され、上記表示素子から出射された光を反射する反射型偏光部材と、上記表示素子と上記反射型偏光部材との間の光路上に配置される第一レンズ部と、上記表示素子と上記第一レンズ部との間に配置され、上記表示素子から出射された光を透過させ、上記反射型偏光部材で反射された光を上記反射型偏光部材に向けて反射させるハーフミラーと、上記表示素子と上記ハーフミラーとの間の光路上に配置される第1のλ/4部材と、上記ハーフミラーと上記反射型偏光部材との間の光路上に配置される第2のλ/4部材と、を備え、上記第1のλ/4部材は、Re(550)が100nm~190nmであり、かつ、Re(450)/Re(550)が0.75以上1未満であり、上記第2のλ/4部材は、Re(550)が100nm~190nmであり、かつ、Re(450)/Re(550)が0.75以上1未満であり、上記偏光部材を介して出射される光は、直線偏光であり、上記直線偏光の偏光方向と上記反射型偏光部材の反射軸とのなす角度は、87.5°~92.5°または0°~2.5°である、表示システムが提供される。
[2]上記[1]に記載の表示システムにおいて、上記第2のλ/4部材の遅相軸と上記反射型偏光部材の反射軸とのなす角度は、42.5°~47.5°であってよい。
[3]上記[1]または[2]に記載の表示システムにおいて、上記表示素子に含まれる上記偏光部材の吸収軸と上記第1のλ/4部材の遅相軸とのなす角度は、40°~50°であってよく、上記第1のλ/4部材の遅相軸と上記第2のλ/4部材の遅相軸とのなす角度は、0°~10°であってよく、上記直線偏光の偏光方向と上記反射型偏光部材の反射軸とのなす角度は、87.5°~92.5°であってよい。
[4]上記[1]または[2]に記載の表示システムにおいて、上記表示素子に含まれる上記偏光部材の吸収軸と上記第1のλ/4部材の遅相軸とのなす角度は、40°~50°であってよく、上記第1のλ/4部材の遅相軸と上記第2のλ/4部材の遅相軸とのなす角度は、80°~100°であってよく、上記直線偏光の偏光方向と上記反射型偏光部材の反射軸とのなす角度は、0°~2.5°であってよい。
[5]上記[1]から[4]のいずれかに記載の表示システムにおいて、上記第1のλ/4部材は、Re(400)/Re(550)<0.85、Re(650)/Re(550)>1.03、およびRe(750)/Re(550)>1.05を全て満たしてよい。
[6]上記[1]から[5]のいずれかに記載の表示システムにおいて、上記第2のλ/4部材は、Re(400)/Re(550)<0.85、Re(650)/Re(550)>1.03、およびRe(750)/Re(550)>1.05を全て満たしてよい。
[7]本発明の別の局面によれば、上記[1]から[6]のいずれかに記載の表示システムに用いられる光学積層体であって、上記第2のλ/4部材と上記反射型偏光部材とを含み、上記第2のλ/4部材の遅相軸と上記反射型偏光部材の反射軸とのなす角度は、42.5°~47.5°である、光学積層体が提供される。
[8]本発明の別の局面によれば、上記[1]から[6]のいずれかに記載の表示システムを製造する製造方法であって、上記第2のλ/4部材を含む長尺状の第一フィルム部材を長尺方向に沿ってスリットして、第二フィルム部材を得ることを含み、上記第二フィルム部材において、幅方向における上記第2のλ/4部材の遅相軸のばらつきが1°以下である、製造方法が提供される。
[9]本発明の別の局面によれば、上記[1]から[6]のいずれかに記載の表示システムを製造する製造方法であって、上記反射型偏光部材を含む長尺状の第一フィルム部材を長尺方向に沿ってスリットして、第二フィルム部材を得ることを含み、上記第二フィルム部材において、幅方向における上記反射型偏光部材の反射軸のばらつきが1°以下である、製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態による表示システムによれば、VRゴーグルの高精細化を実現し得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の1つの実施形態に係る表示システムの概略の構成を示す模式図である。
【
図2】(a)は
図1に示す表示システムの一例における光の進行を説明する概略図であり、(b)は(a)に示す表示システムにおける光の偏光状態の変化を説明する概略図である。
【
図3】(a)は
図1に示す表示システムの一例における光の進行を説明する概略図であり、(b)は(a)に示す表示システムにおける光の偏光状態の変化を説明する概略図である。
【
図4】
図1に示す表示システムのレンズ部の詳細の一例を示す模式的な断面図である。
【
図5】反射型偏光フィルムに含まれる多層構造の一例を示す模式的な斜視図である。
【
図6A】本発明の1つの実施形態に係る表示システムの製造方法の一例を説明する概略図である。
【
図6B】本発明の1つの実施形態に係る表示システムの製造方法の一例を説明する概略図である。
【
図7】実施例および比較例の測定サンプルについて測定した反射率の平均値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。図面は説明をより明確にするため、実施の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、図面については、同一または同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略することがある。
【0010】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Rth(λ)=(nx-nz)×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
(5)角度
本明細書において角度に言及するときは、特段の言及がない限り、当該角度は基準方向に対して時計回りおよび反時計回りの両方を包含する。したがって、例えば「45°」は±45°を意味する。また、本明細書において、「略平行」は、0°±10°の範囲を包含し、好ましくは0°±5°の範囲内であり、より好ましくは0°±3°の範囲内であり、さらに好ましくは0°±1°の範囲内である。「略直交」は、90°±10°の範囲を包含し、好ましくは90°±5°の範囲内であり、より好ましくは90°±3°の範囲内であり、さらに好ましくは90°±1°の範囲内である。
【0011】
A.表示システム
図1は本発明の1つの実施形態に係る表示システムの概略の構成を示す模式図である。
図1では、表示システム2の各構成要素の配置および形状等を模式的に図示している。表示システム2は、表示素子12と、反射型偏光部材14と、第一レンズ部16と、ハーフミラー18と、第一位相差部材20と、第二位相差部材22と、第二レンズ部24とを備えている。反射型偏光部材14は、表示素子12の表示面12a側である前方に配置され、表示素子12から出射された光を反射し得る。第一レンズ部16は表示素子12と反射型偏光部材14との間の光路上に配置され、ハーフミラー18は表示素子12と第一レンズ部16との間に配置されている。第一位相差部材20は表示素子12とハーフミラー18との間の光路上に配置され、第二位相差部材22はハーフミラー18と反射型偏光部材14との間の光路上に配置されている。
【0012】
ハーフミラー、または、第一レンズ部から前方に配置される構成要素(図示例では、ハーフミラー18、第一レンズ部16、第二位相差部材22、反射型偏光部材14および第二レンズ部24)をまとめてレンズ部(レンズ部4)と称する場合がある。
【0013】
表示素子12は、例えば、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイであり、画像を表示するための表示面12aを有している。表示面12aから出射される光は、例えば、表示素子12に含まれ得る偏光部材(代表的には、偏光フィルム)を通過して出射され、第1の直線偏光とされている。
【0014】
第一位相差部材20は、第一位相差部材20に入射した第1の直線偏光を第1の円偏光に変換し得る第1のλ/4部材を含む。第一位相差部材が第1のλ/4部材以外の部材を含まない場合は、第一位相差部材は第1のλ/4部材に相当し得る。第一位相差部材20は、表示素子12に一体に設けられてもよい。
【0015】
ハーフミラー18は、表示素子12から出射された光を透過させ、反射型偏光部材14で反射された光を反射型偏光部材14に向けて反射させる。ハーフミラー18は、第一レンズ部16に一体に設けられている。
【0016】
第二位相差部材22は、反射型偏光部材14およびハーフミラー18で反射させた光を、反射型偏光部材14を透過させ得る第2のλ/4部材を含む。第二位相差部材が第2のλ/4部材以外の部材を含まない場合は、第二位相差部材は第2のλ/4部材に相当し得る。第二位相差部材22は、第一レンズ部16に一体に設けられてもよい。
【0017】
第一位相差部材20に含まれる第1のλ/4部材から出射された第1の円偏光は、ハーフミラー18および第一レンズ部16を通過し、第二位相差部材22に含まれる第2のλ/4部材により第2の直線偏光に変換される。第2のλ/4部材から出射された第2の直線偏光は、反射型偏光部材14を透過せずにハーフミラー18に向けて反射される。このとき、反射型偏光部材14に入射した第2の直線偏光の偏光方向は、反射型偏光部材14の反射軸と同方向である。そのため、反射型偏光部材14に入射した第2の直線偏光は、反射型偏光部材14で反射される。
【0018】
反射型偏光部材14で反射された第2の直線偏光は第二位相差部材22に含まれる第2のλ/4部材により第2の円偏光に変換され、第2のλ/4部材から出射された第2の円偏光は第一レンズ部16を通過してハーフミラー18で反射される。ハーフミラー18で反射された円偏光は、第一レンズ部16を通過し、第二位相差部材22に含まれる第2のλ/4部材により第3の直線偏光に変換される。第3の直線偏光は、反射型偏光部材14を透過する。このとき、反射型偏光部材14に入射した第3の直線偏光の偏光方向は、反射型偏光部材14の透過軸と同方向である。そのため、反射型偏光部材14に入射した第3の直線偏光は、反射型偏光部材14を透過する。
【0019】
反射型偏光部材14を透過した光は、第二レンズ部24を通過して、ユーザの目26に入射する。
【0020】
第1のλ/4部材の面内位相差Re(550)は、例えば100nm~190nmであり、110nm~180nmであってもよく、130nm~160nmであってもよく、135nm~155nmであってもよい。第1のλ/4部材は、好ましくは、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示す。第1のλ/4部材のRe(450)/Re(550)は、例えば0.75以上1未満であり、0.8以上1未満または0.8以上0.95以下であってもよい。
【0021】
1つの実施形態において、第1のλ/4部材は、Re(400)/Re(550)<0.85、Re(650)/Re(550)>1.03、およびRe(750)/Re(550)>1.05を全て満たす。第1のλ/4部材は、0.65<Re(400)/Re(550)<0.80(好ましくは、0.7<Re(400)/Re(550)<0.75)、1.0<Re(650)/Re(550)<1.25(好ましくは、1.05<Re(650)/Re(550)<1.20)、および1.05<Re(750)/Re(550)<1.40(好ましくは、1.08<Re(750)/Re(550)<1.36)から選択される少なくとも1つを満たすことが好ましく、より好ましくは少なくとも2つを満たし、さらに好ましくは全てを満たす。このような波長分散特性を有する第1のλ/4部材は、可視光全域にわたって透過光の偏光状態をより均一に維持し得る。
【0022】
第2のλ/4部材の面内位相差Re(550)は、例えば100nm~190nmであり、110nm~180nmであってもよく、130nm~160nmであってもよく、135nm~155nmであってもよい。第2のλ/4部材は、好ましくは、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示す。第2のλ/4部材のRe(450)/Re(550)は、例えば0.75以上1未満であり、0.8以上1未満または0.8以上0.95以下であってもよい。
【0023】
1つの実施形態において、第2のλ/4部材は、Re(400)/Re(550)<0.85、Re(650)/Re(550)>1.03、およびRe(750)/Re(550)>1.05を全て満たす。第2のλ/4部材は、0.65<Re(400)/Re(550)<0.80(好ましくは、0.7<Re(400)/Re(550)<0.75)、1.0<Re(650)/Re(550)<1.25(好ましくは、1.05<Re(650)/Re(550)<1.20)、および1.05<Re(750)/Re(550)<1.40(好ましくは、1.08<Re(750)/Re(550)<1.36)から選択される少なくとも1つを満たすことが好ましく、より好ましくは少なくとも2つを満たし、さらに好ましくは全てを満たす。このような波長分散特性を有する第2のλ/4部材は、可視光全域にわたって透過光の偏光状態をより均一に維持し得る。
【0024】
図2は、
図1に示す表示システムの一例における光の進行と偏光状態の変化を説明する概略図である。具体的には、
図2(a)は当該表示システムにおける光の進行の一例を説明する概略図であり、
図2(b)は当該表示システムにおいて各部材を透過することまたは各部材に反射されることによる光の偏光状態の変化の一例を説明する概略図である。
図2中、表示素子12に付された実線の矢印および破線の矢印はそれぞれ、表示素子12に含まれる偏光部材の吸収軸方向および透過軸方向を示し、第一位相差部材20および第二位相差部材22に付された矢印はそれぞれ、第1のλ/4部材および第2のλ/4部材の遅相軸方向を示し、反射型偏光部材14に付された実線の矢印および破線の矢印はそれぞれ、反射軸方向および透過軸方向を示す。
【0025】
図2に示す表示システムにおいて、表示素子12に含まれる偏光部材を介して前方に出射される第1の直線偏光の偏光方向と反射型偏光部材14の反射軸とのなす角度は、略直交、例えば87.5°~92.5°、好ましくは88°~92°、より好ましくは89°~91°、さらに好ましくは約90°である。よって、表示素子12に含まれる偏光部材と反射型偏光部材14とは、偏光部材の吸収軸と反射型偏光部材14の反射軸とのなす角度が、略平行、例えば0°~2.5°、好ましくは0°~2°、より好ましくは0°~1°、さらに好ましくは約0°となるように配置され得る。
第1の直線偏光の偏光方向と第1のλ/4部材の遅相軸とのなす角度は、例えば40°~50°、好ましくは42°~48°、より好ましくは44°~46°、さらに好ましくは約45°である。よって、表示素子12に含まれる偏光部材と第1のλ/4部材とは、偏光部材の吸収軸と第1のλ/4部材の遅相軸とのなす角度が、例えば40°~50°、好ましくは42°~48°、より好ましくは44°~46°、さらに好ましくは約45°となるように配置され得る。
第1のλ/4部材の遅相軸と第2のλ/4部材の遅相軸とのなす角度は、例えば0°~10°、好ましくは0°~5°、より好ましくは0°~3°、さらに好ましくは0°~1°、さらにより好ましくは約0°である。
第2のλ/4板の遅相軸と反射型偏光部材14の反射軸とのなす角度は、例えば42.5°~47.5°、好ましくは43°~47°、より好ましくは44°~46°、さらに好ましくは約45°である。
【0026】
表示素子12から偏光部材を介して第1の直線偏光として出射される光Lは、第一位相差部材20に含まれる第1のλ/4部材によって第1の円偏光に変換される。第1の円偏光は、ハーフミラー18および第一レンズ部16(図示せず)を通過し、第二位相差部材22に含まれる第2のλ/4部材により第1の直線偏光と偏光方向が直交する第2の直線偏光に変換される。第2の直線偏光は、その偏光方向が反射型偏光部材14の反射軸と同方向(略平行)である。よって、反射型偏光部材14に入射した第2の直線偏光は、反射型偏光部材14によってハーフミラー18に向けて反射される。
【0027】
反射型偏光部材14で反射された第2の直線偏光は第2のλ/4部材により第2の円偏光に変換される。第2の円偏光の回転方向は、第1の円偏光の回転方向と同方向である。第2のλ/4部材から出射された第2の円偏光は第一レンズ部16を通過してハーフミラー18で反射されて、第2の円偏光と逆方向に回転する第3の円偏光に変換される。ハーフミラー18で反射された第3の円偏光は、第一レンズ部16を通過し、第2のλ/4部材により第3の直線偏光に変換される。第3の直線偏光の偏光方向は、第2の直線偏光との偏光方向と直交しており、反射型偏光部材14の透過軸と同方向(略平行)である。よって、第3の直線偏光は、反射型偏光部材14を透過することができる。反射型偏光部材14を透過した光は、第二レンズ部24を通過して、ユーザの目26に入射する。
【0028】
図2では、表示素子12側から見た場合に、第1のλ/4部材および第2のλ/4部材の遅相軸がともに表示素子12に含まれる偏光部材の吸収軸に対して反時計回りに約45°の角度をなすように配置されているが、これらが時計回りに約45°の角度をなすように配置されている場合にも、上記と同様の説明が適用できる。
【0029】
図3は、
図1に示す表示システムの別の一例における光の進行と偏光状態の変化を説明する概略図である。具体的には、
図3(a)は当該表示システムにおける光の進行の一例を説明する概略図であり、
図3(b)は当該表示システムにおいて各部材を透過することまたは各部材に反射されることによる光の偏光状態の変化の一例を説明する概略図である。
図3中、表示素子12に付された実線の矢印および破線の矢印はそれぞれ、表示素子12に含まれる偏光部材の吸収軸方向および透過軸方向を示し、第一位相差部材20および第二位相差部材22に付された矢印はそれぞれ、第1のλ/4部材および第2のλ/4部材の遅相軸方向を示し、反射型偏光部材14に付された実線の矢印および破線の矢印はそれぞれ、反射軸方向および透過軸方向を示す。
【0030】
図3に示す表示システムにおいて、表示素子12に含まれる偏光部材を介して前方に出射される第1の直線偏光の偏光方向と反射型偏光部材14の反射軸とのなす角度は、略平行、例えば0°~2.5°、好ましくは0°~2°、より好ましくは0°~1°、さらに好ましくは約0°である。よって、表示素子12に含まれる偏光部材と反射型偏光部材14とは、偏光部材の吸収軸と反射型偏光部材14の反射軸とのなす角度が、略直交、例えば87.5°~92.5°、好ましくは88°~92°、より好ましくは89°~91°、さらに好ましくは約90°となるように配置され得る。
第1の直線偏光の偏光方向と第1のλ/4部材の遅相軸とのなす角度は、例えば40°~50°、好ましくは42°~48°、より好ましくは44°~46°、さらに好ましくは約45°である。よって、表示素子12に含まれる偏光部材と第1のλ/4部材とは、偏光部材の吸収軸と第1のλ/4部材の遅相軸とのなす角度が、例えば40°~50°、好ましくは42°~48°、より好ましくは44°~46°、さらに好ましくは約45°となるように配置され得る。
第1のλ/4部材の遅相軸と第2のλ/4部材の遅相軸とのなす角度は、例えば80°~100°、好ましくは85°~95°、より好ましくは87°~93°、さらに好ましくは89°~91°、さらにより好ましくは約90°である。
第2のλ/4板の遅相軸と反射型偏光部材14の反射軸とのなす角度は、例えば42.5°~47.5°、好ましくは43°~47°、より好ましくは44°~46°、さらに好ましくは約45°である。
【0031】
表示素子12から偏光部材を介して第1の直線偏光として出射される光Lは、第一位相差部材20に含まれる第1のλ/4部材によって第1の円偏光に変換される。第1の円偏光は、ハーフミラー18および第一レンズ部16(図示せず)を通過し、第二位相差部材22に含まれる第2のλ/4部材により第1の直線偏光と偏光方向が平行である第2の直線偏光に変換される。第2の直線偏光は、その偏光方向が反射型偏光部材14の反射軸と同方向(略平行)である。よって、反射型偏光部材14に入射した第2の直線偏光は、反射型偏光部材14によってハーフミラー18に向けて反射される。
【0032】
反射型偏光部材14で反射された第2の直線偏光は第2のλ/4部材により第2の円偏光に変換される。第2の円偏光の回転方向は、第1の円偏光の回転方向と同方向である。第2のλ/4部材から出射された第2の円偏光は第一レンズ部16を通過してハーフミラー18で反射されて、第2の円偏光と逆方向に回転する第3の円偏光に変換される。ハーフミラー18で反射された第3の円偏光は、第一レンズ部16を通過し、第2のλ/4部材により第3の直線偏光に変換される。第3の直線偏光の偏光方向は、第2の直線偏光との偏光方向と直交しており、反射型偏光部材14の透過軸と同方向(略平行)である。よって、第3の直線偏光は、反射型偏光部材14を透過することができる。反射型偏光部材14を透過した光は、第二レンズ部24を通過して、ユーザの目26に入射する。
【0033】
図3では、表示素子12側から見た場合に、第1のλ/4部材および第2のλ/4部材の遅相軸がそれぞれ、表示素子12に含まれる偏光部材の吸収軸に対して反時計回りに約45°および時計回りに約45°の角度をなすように配置されているが、これらが時計回りに約45°および反時計回りに約45°の角度をなすように配置されている場合にも、上記と同様の説明が適用できる。
【0034】
図2および
図3に示す表示システムにおいては、表示素子12から偏光部材を介して出射された第1の直線偏光が第1のλ/4部材と第2のλ/4部材を透過後に反射型偏光板で反射される。このような表示システムにおいては、直線偏光がλ/4部材を2回透過することで部分的な偏光解消が生じ、反射型偏光部材14での反射率が低下し得る。当該反射率が低下すると、反射されるべき光が透過する結果、表示不良、表示ムラ等が生じ得る。これに対し、本発明の実施形態による表示システムによれば、逆波長分散特性を有するλ/4部材を用い、かつ、第1の直線偏光の偏光方向と反射型偏光部材14の反射軸方向とのなす角度を、90°±2.5°の範囲内または0°±2.5°の範囲内となるように厳密に制御することにより、上記反射率の低下を好適に防止することができる。また、第2のλ/4板の遅相軸と反射型偏光部材14の反射軸とのなす角度を45°±2.5°の範囲内に調整することにより、上記第1の直線偏光の偏光方向と反射型偏光部材14の反射軸方向とのなす角度の制御を好適に行うことができる。
【0035】
B.レンズ部および光学積層体
図1に示す表示システムのレンズ部4において、第一レンズ部16と第二レンズ部24との間には空間が形成され得る。この場合、第一レンズ部16と第二レンズ部24との間に配置される部材は、第一レンズ部16と第二レンズ部24のいずれかに一体に設けられることが好ましい。例えば、第一レンズ部16と第二レンズ部24との間に配置される部材は、接着層を介して第一レンズ部16と第二レンズ部24のいずれかに一体化させることが好ましい。このような形態によれば、例えば、各部材の取扱い性に優れ得る。接着層は、接着剤で形成されてもよいし、粘着剤で形成されてもよい。具体的には、接着層は、接着剤層であってもよいし、粘着剤層であってもよい。接着層の厚みは、例えば0.05μm~30μmである。
【0036】
図4は、レンズ部4の詳細の一例を示す模式的な断面図である。具体的には、
図4は、第一レンズ部と第二レンズ部とこれらの間に配置される部材を示している。レンズ部4は、第一レンズ部16と、第一レンズ部16に隣接して設けられる第一積層部100と、第二レンズ部24とを備えている。第一積層部100と第二レンズ部24とは離間して配置されている。
【0037】
第一積層部100は、第2のλ/4部材22aを含む第二位相差部材22と反射型偏光部材14とを含む。第一積層部100は、第一レンズ部16と第二位相差部材22との間に配置される接着層(例えば、粘着剤層)40をさらに含み、接着層40により第一レンズ部16に一体に設けられている。また、第一積層部100は、反射型偏光部材14の前方に吸収型偏光部材28と保護部材30とをこの順にさらに含んでいる。反射型偏光部材14と第二レンズ部24との間に吸収型偏光部材28を配置することにより視認性が向上され得る。反射型偏光部材14の反射軸と吸収型偏光部材28の吸収軸とは互いに略平行に配置され得、反射型偏光部材14の透過軸と吸収型偏光部材28の透過軸とは互いに略平行に配置され得る。第一積層部100において、第2のλ/4部材22aの遅相軸と反射型偏光部材14の反射軸とのなす角度は、例えば45°±2.5°の範囲内であり、好ましくは45°±2°の範囲内、より好ましくは45°±1°の範囲内、さらに好ましくは約45°である。
【0038】
図4に示す例では、第二位相差部材22は、第2のλ/4部材22aに加えて、屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示し得る部材(いわゆる、ポジティブCプレート)22bを含んでいる。第二位相差部材22は、第2のλ/4部材22aとポジティブCプレート22bとの積層構造を有している。ポジティブCプレートを用いることにより、光抜け(例えば、斜め方向の光抜け)を防止し得る。
図4に示すとおり、第二位相差部材22において、ポジティブCプレート22bより第2のλ/4部材22aの方が前方に位置していることが好ましい。
【0039】
図示しないが、吸収型偏光部材28と保護部材30との間に第三位相差部材が配置されてもよい。第三位相差部材は、例えば、第3のλ/4部材を含む。吸収型偏光部材28の吸収軸と第三位相差部材に含まれる第3のλ/4部材の遅相軸とのなす角度は、例えば40°~50°であり、42°~48°であってもよく、約45°であってもよい。このような部材を設けることにより、例えば、第二レンズ部24側からの外光の反射を防止することができる。第三位相差部材が第3のλ/4部材以外の部材を含まない場合は、第三位相差部材は第3のλ/4部材に相当し得る。
【0040】
1つの実施形態において、第一積層部100は、上記構成を有する光学積層体として作製され、接着層40により第一レンズ部16に貼り合わせられる。光学積層体は、例えば、接着層を介して各部材を貼り合わせることによって作製され得る。
【0041】
<第2のλ/4部材>
上記第2のλ/4部材の面内位相差Re(550)および波長分散特性はA項に記載のとおりである。第2のλ/4部材は、好ましくは、屈折率特性がnx>ny≧nzの関係を示す。ここで「ny=nz」はnyとnzが完全に等しい場合だけではなく、実質的に等しい場合を包含する。したがって、本発明の効果を損なわない範囲で、ny<nzとなる場合があり得る。第2のλ/4部材のNz係数は、好ましくは0.9~3であり、より好ましくは0.9~2.5であり、さらに好ましくは0.9~1.5であり、特に好ましくは0.9~1.3である。
【0042】
第2のλ/4部材は、上記特性を満足し得る任意の適切な材料で形成される。第2のλ/4部材は、例えば、樹脂フィルムの延伸フィルムまたは液晶化合物の配向固化層であり得る。
【0043】
上記樹脂フィルムに含まれる樹脂としては、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステルカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。組み合わせる方法としては、例えば、ブレンド、共重合が挙げられる。第2のλ/4部材が逆分散波長特性を示す場合、ポリカーボネート系樹脂またはポリエステルカーボネート系樹脂(以下、単にポリカーボネート系樹脂と称する場合がある)を含む樹脂フィルムが好適に用いられ得る。
【0044】
上記ポリカーボネート系樹脂としては、任意の適切なポリカーボネート系樹脂を用いることができる。例えば、ポリカーボネート系樹脂は、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジオール、脂環式ジメタノール、ジ、トリまたはポリエチレングリコール、ならびに、アルキレングリコールまたはスピログリコールからなる群から選択される少なくとも1つのジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、を含む。好ましくは、ポリカーボネート系樹脂は、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジメタノールに由来する構造単位ならびに/あるいはジ、トリまたはポリエチレングリコールに由来する構造単位と、を含み;さらに好ましくは、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、ジ、トリまたはポリエチレングリコールに由来する構造単位と、を含む。ポリカーボネート系樹脂は、必要に応じてその他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。なお、第2のλ/4部材に好適に用いられ得るポリカーボネート系樹脂および第2のλ/4部材の形成方法の詳細は、例えば、特開2014-10291号公報、特開2014-26266号公報、特開2015-212816号公報、特開2015-212817号公報、特開2015-212818号公報に記載されており、これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0045】
樹脂フィルムの延伸フィルムで構成される第2のλ/4部材の厚みは、例えば10μm~100μmであり、好ましくは10μm~70μmであり、より好ましくは20μm~60μmである。
【0046】
上記液晶化合物の配向固化層は、液晶化合物が層内で所定の方向に配向し、その配向状態が固定されている層である。なお、「配向固化層」は、後述のように液晶モノマーを硬化させて得られる配向硬化層を包含する概念である。第2のλ/4部材においては、代表的には、棒状の液晶化合物が第2のλ/4部材の遅相軸方向に並んだ状態で配向している(ホモジニアス配向)。棒状の液晶化合物として、例えば、液晶ポリマーおよび液晶モノマーが挙げられる。液晶化合物は、好ましくは、重合可能である。液晶化合物が重合可能であると、液晶化合物を配向させた後に重合させることで、液晶化合物の配向状態を固定できる。
【0047】
上記液晶化合物の配向固化層(液晶配向固化層)は、所定の基材の表面に配向処理を施し、当該表面に液晶化合物を含む塗工液を塗工して当該液晶化合物を上記配向処理に対応する方向に配向させ、当該配向状態を固定することにより形成され得る。配向処理としては、任意の適切な配向処理が採用され得る。具体的には、機械的な配向処理、物理的な配向処理、化学的な配向処理が挙げられる。機械的な配向処理の具体例としては、ラビング処理、延伸処理が挙げられる。物理的な配向処理の具体例としては、磁場配向処理、電場配向処理が挙げられる。化学的な配向処理の具体例としては、斜方蒸着法、光配向処理が挙げられる。各種配向処理の処理条件は、目的に応じて任意の適切な条件が採用され得る。
【0048】
液晶化合物の配向は、液晶化合物の種類に応じて液晶相を示す温度で処理することにより行われる。このような温度処理を行うことにより、液晶化合物が液晶状態をとり、基材表面の配向処理方向に応じて当該液晶化合物が配向する。
【0049】
配向状態の固定は、1つの実施形態においては、上記のように配向した液晶化合物を冷却することにより行われる。液晶化合物が重合性または架橋性である場合には、配向状態の固定は、上記のように配向した液晶化合物に重合処理または架橋処理を施すことにより行われる。
【0050】
上記液晶化合物としては、任意の適切な液晶ポリマーおよび/または液晶モノマーが用いられる。液晶ポリマーおよび液晶モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、組み合わせてもよい。液晶化合物の具体例および液晶配向固化層の作製方法は、例えば、特開2006-163343号公報、特開2006-178389号公報、国際公開第2018/123551号公報に記載されている。これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0051】
液晶配向固化層で構成される第2のλ/4部材の厚みは、例えば1μm~10μmであり、好ましくは1μm~8μmであり、より好ましくは1μm~6μmであり、さらに好ましくは1μm~4μmである。
【0052】
<ポジティブCプレート>
上記ポジティブCプレートの厚み方向の位相差Rth(550)は、好ましくは-50nm~-300nmであり、より好ましくは-70nm~-250nmであり、さらに好ましくは-90nm~-200nmであり、特に好ましくは-100nm~-180nmである。ここで、「nx=ny」は、nxとnyが厳密に等しい場合のみならず、nxとnyが実質的に等しい場合も包含する。ポジティブCプレートの面内位相差Re(550)は、例えば10nm未満である。
【0053】
ポジティブCプレートは、任意の適切な材料で形成され得るが、ポジティブCプレートは、好ましくは、ホメオトロピック配向に固定された液晶材料を含むフィルムから構成される。ホメオトロピック配向させることができる液晶材料(液晶化合物)は、液晶モノマーであってもよいし、液晶ポリマーであってもよい。このような液晶化合物およびポジティブCプレートの形成方法の具体例としては、特開2002-333642号公報の[0020]~[0028]に記載の液晶化合物および当該位相差層の形成方法が挙げられる。この場合、ポジティブCプレートの厚みは、好ましくは0.5μm~5μmである。
【0054】
<反射型偏光部材>
上記反射型偏光部材は、その透過軸に平行な偏光(代表的には、直線偏光)をその偏光状態を維持したまま透過させ、それ以外の偏光状態の光を反射し得る。反射型偏光部材としては、代表的には、多層構造を有するフィルム(反射型偏光フィルムと称する場合がある)で構成される。この場合、反射型偏光部材の厚みは、例えば10μm~150μmであり、好ましくは20μm~100μmであり、さらに好ましくは30μm~60μmである。
【0055】
図5は、反射型偏光フィルムに含まれる多層構造の一例を示す模式的な斜視図である。多層構造14aは、複屈折性を有する層Aと複屈折性を実質的に有さない層Bとを交互に有する。多層構造を構成する層の総数は、50~1000であってもよい。例えば、A層のx軸方向の屈折率nxはy軸方向の屈折率nyより大きく、B層のx軸方向の屈折率nxとy軸方向の屈折率nyとは実質的に同一であり、A層とB層との屈折率差は、x軸方向において大きく、y軸方向においては実質的にゼロである。その結果、x軸方向が反射軸となり、y軸方向が透過軸となり得る。A層とB層とのx軸方向における屈折率差は、好ましくは0.2~0.3である。
【0056】
上記A層は、代表的には、延伸により複屈折性を発現する材料で構成される。このような材料としては、例えば、ナフタレンジカルボン酸ポリエステル(例えば、ポリエチレンナフタレート)、ポリカーボネートおよびアクリル系樹脂(例えば、ポリメチルメタクリレート)が挙げられる。上記B層は、代表的には、延伸しても複屈折性を実質的に発現しない材料で構成される。このような材料としては、例えば、ナフタレンジカルボン酸とテレフタル酸とのコポリエステルが挙げられる。上記多層構造は、共押出と延伸とを組み合わせて形成され得る。例えば、A層を構成する材料とB層を構成する材料とを押し出した後、多層化する(例えば、マルチプライヤーを用いて)。次いで、得られた多層積層体を延伸する。図示例のx軸方向は、延伸方向に対応し得る。
【0057】
反射型偏光フィルムの市販品として、例えば、3M社製の商品名「DBEF」、「APF」、日東電工社製の商品名「APCF」が挙げられる。
【0058】
反射型偏光部材(反射型偏光フィルム)の直交透過率(Tc)は、例えば0.01%~3%であり得る。反射型偏光部材(反射型偏光フィルム)の単体透過率(Ts)は、例えば43%~49%であり、好ましくは45%~47%である。反射型偏光部材(反射型偏光フィルム)の偏光度(P)は、例えば92%~99.99%であり得る。
【0059】
上記直交透過率、単体透過率および偏光度は、例えば、紫外可視分光光度計を用いて測定することができる。偏光度Pは、紫外可視分光光度計を用いて、単体透過率Ts、平行透過率Tpおよび直交透過率Tcを測定し、得られたTpおよびTcから、下記式により求めることができる。なお、Ts、TpおよびTcは、JIS Z 8701の2度視野(C光源)により測定して視感度補正を行なったY値である。
偏光度P(%)={(Tp-Tc)/(Tp+Tc)}1/2×100
【0060】
<吸収型偏光部材>
上記吸収型偏光部材は、代表的には、二色性物質を含む樹脂フィルム(吸収型偏光膜と称する場合がある)を含み得る。吸収型偏光膜の厚みは、例えば1μm以上20μm以下であり、2μm以上15μm以下であってもよく、12μm以下であってもよく、10μm以下であってもよく、8μm以下であってもよく、5μm以下であってもよい。
【0061】
上記吸収型偏光膜は、単層の樹脂フィルムから作製してもよく、二層以上の積層体を用いて作製してもよい。
【0062】
単層の樹脂フィルムから作製する場合、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理、延伸処理等を施すことにより吸収型偏光膜を得ることができる。中でも、PVA系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られる吸収型偏光膜が好ましい。
【0063】
上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3~7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。
【0064】
上記二層以上の積層体を用いて作製する場合の積層体としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる吸収型偏光膜は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を吸収型偏光膜とすること;により作製され得る。本実施形態においては、好ましくは、樹脂基材の片側に、ハロゲン化物とポリビニルアルコール系樹脂とを含むポリビニルアルコール系樹脂層を形成する。延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。加えて、本実施形態においては、好ましくは、積層体は、長手方向に搬送しながら加熱することにより幅方向に2%以上収縮させる乾燥収縮処理に供される。代表的には、本実施形態の製造方法は、積層体に、空中補助延伸処理と染色処理と水中延伸処理と乾燥収縮処理とをこの順に施すことを含む。補助延伸を導入することにより、熱可塑性樹脂上にPVAを塗布する場合でも、PVAの結晶性を高めることが可能となり、高い光学特性を達成することが可能となる。また、同時にPVAの配向性を事前に高めることで、後の染色工程や延伸工程で水に浸漬された時に、PVAの配向性の低下や溶解などの問題を防止することができ、高い光学特性を達成することが可能になる。さらに、PVA系樹脂層を液体に浸漬した場合において、PVA系樹脂層がハロゲン化物を含まない場合に比べて、ポリビニルアルコール分子の配向の乱れ、および配向性の低下が抑制され得る。これにより、染色処理および水中延伸処理など、積層体を液体に浸漬して行う処理工程を経て得られる吸収型偏光膜の光学特性は向上し得る。さらに、乾燥収縮処理により積層体を幅方向に収縮させることにより、光学特性を向上させることができる。得られた樹脂基材/吸収型偏光膜の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を吸収型偏光膜の保護層としてもよく)、樹脂基材/吸収型偏光膜の積層体から樹脂基材を剥離した剥離面に、もしくは、剥離面とは反対側の面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような吸収型偏光膜の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報、特許第6470455号に記載されている。これらの公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0065】
吸収型偏光部材(吸収型偏光膜)の直交透過率(Tc)は、0.5%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましくは0.05%以下である。吸収型偏光部材(吸収型偏光膜)の単体透過率(Ts)は、例えば41.0%~45.0%であり、好ましくは42.0%以上である。吸収型偏光部材(吸収型偏光膜)の偏光度(P)は、例えば99.0%~99.997%であり、好ましくは99.9%以上である。
【0066】
<第3のλ/4部材>
上記第3のλ/4部材の面内位相差Re(550)は、例えば100nm~190nmであり、110nm~180nmであってもよく、130nm~160nmであってもよく、135nm~155nmであってもよい。第3のλ/4部材は、好ましくは、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示す。第3のλ/4部材のRe(450)/Re(550)は、例えば0.75以上1未満であり、0.8以上0.95以下であってもよい。第3のλ/4部材は、好ましくは、屈折率特性がnx>ny≧nzの関係を示す。第3のλ/4部材のNz係数は、好ましくは0.9~3であり、より好ましくは0.9~2.5であり、さらに好ましくは0.9~1.5であり、特に好ましくは0.9~1.3である。
【0067】
第3のλ/4部材は、上記特性を満足し得る任意の適切な材料で形成される。第3のλ/4部材は、例えば、樹脂フィルムの延伸フィルムまたは液晶化合物の配向固化層であり得る。樹脂フィルムの延伸フィルムまたは液晶化合物の配向固化層で構成される第3のλ/4部材については、上記第2のλ/4部材と同様の説明を適用することができる。第2のλ/4部材と第3のλ/4部材とは、構成(例えば、形成材料、厚み、光学特性等)が同じ部材であってもよく、異なる構成の部材であってもよい。
【0068】
<保護部材>
上記保護部材は、代表的には、基材を含む。基材の厚みは、好ましくは5μm~80μmであり、より好ましくは10μm~50μmであり、さらに好ましくは15μm~40μmである。基材は、任意の適切なフィルムで構成され得る。基材を構成するフィルムの主成分となる材料としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン等のシクロオレフィン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の樹脂が挙げられる。ここで、(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルをいう。
【0069】
保護部材は、好ましくは、基材と基材上に形成される表面処理層とを有する。表面処理層を有する保護部材は、表面処理層が前方側に位置するように配置され得る。具体的には、表面処理層が第一積層部の最表面に位置し得る。表面処理層は、任意の適切な機能を有し得る。表面処理層は、例えば、視認性を向上させる観点から、反射防止機能を有することが好ましい。表面処理層の厚みは、好ましくは0.5μm~10μmであり、より好ましくは1μm~7μmであり、さらに好ましくは2μm~5μmである。
【0070】
<変形例>
レンズ部4の別の一例においては、第二位相差部材と反射型偏光部材との間に空間が形成され得る。この場合、第二位相差部材は、接着層を介して第一レンズ部16に一体化していてよく、その空間側の最表面には接着層を介して保護部材が一体に設けられていてよい。第二位相差部材よりも前方に配置される部材(反射型偏光部材、吸収型偏光部材、第三位相差部材等)は、接着層を介して第二レンズ部24に一体化していてよく、その空間側の最表面には接着層を介して保護部材が一体に設けられていてよい。上記構成を有するレンズ部において、第2のλ/4部材の遅相軸と反射型偏光部材の反射軸とのなす角度は、例えば45°±2.5°の範囲内であり、好ましくは45°±2°の範囲内、より好ましくは45°±1°の範囲内、さらに好ましくは約45°である。
【0071】
C.表示システムの製造方法
A項に記載の表示システムは、任意の適切な方法によって製造される。例えば、上記表示システムは、隣接する構成部材を、接着層を介して一体化する、空間を隔てて配置する等によって所定の位置関係となるように配置することによって製造され得る。
【0072】
C-1.実施形態I
実施形態Iにおいて、上記表示システムの製造方法は、
図6Aに示すように、第2のλ/4部材を含む長尺状の第一フィルム部材A1を長尺方向に沿ってスリットして、第二フィルム部材A2を得ることを含む。
図6Bに示すように、必要に応じて、長尺方向に沿ったスリットに加えて、幅方向に沿ったスリットを行って第二フィルム部材A2を得てもよい。1つの実施形態において、第二フィルム部材A2は長尺状である。広幅で作製された第2のλ/4部材は幅方向において遅相軸角度にばらつきを有する場合があるが、広幅の第一フィルム部材A1を長尺方向に沿ってスリットすることにより、当該遅相軸角度のばらつきが抑制された狭幅の第二フィルム部材A2を効率よく得ることができる。
【0073】
なお、本明細書において「長尺状」とは、幅に対して長さが十分に長い細長形状を意味し、例えば、幅に対して長さが10倍以上、好ましくは20倍以上の細長形状を含む。長尺状のフィルム部材の長さは、例えば50m以上であり、また例えば100m~2000mであってよい。長尺状のフィルム部材は、ロール状に巻回されていてもよい。
【0074】
上記表示システムの製造方法は、第二フィルム部材A2を所定の形状に切断して、枚葉の第三フィルム部材A3を得ることをさらに含むことができる。第2のλ/4部材の幅方向における遅相軸角度のばらつきが小さい第二フィルム部材A2を所定の形状に切断することにより、遅相軸角度のばらつきが小さい枚葉の第三フィルム部材A3を効率よく得ることができる。切断は、打ち抜きによって行われ得る。
【0075】
上記第二フィルム部材A2および第三フィルム部材A3においては、第2のλ/4部材の遅相軸角度のばらつきが小さい。よって、第二フィルム部材A2または第三フィルム部材A3を用いて表示システムを製造することにより、表示システムにおける第2のλ/4部材の遅相軸角度を容易に制御することができる。
【0076】
第一フィルム部材A1の幅は、例えば500mm~2000mmであり、900mm~1500mmであってよい。
【0077】
第一フィルム部材A1における第2のλ/4部材の幅方向における遅相軸角度のばらつきは、例えば0.5°以上であり、1.0°~5.0°であってよい。フィルム部材の幅方向における軸角度(遅相軸、反射軸等)のばらつきは、当該フィルム部材の幅方向において30mm~150mm間隔で複数箇所(例えば、10箇所以上)の軸角度を測定し、その最大値と最小値との差として求めることができる。
【0078】
第二フィルム部材A2の幅(換言すると、スリット幅)は、例えば40mm~1500mmであり、45mm~1300mmであってよく、50mm~1250mmであってよい。
【0079】
第二フィルム部材A2における第2のλ/4部材の幅方向における遅相軸角度のばらつきは、例えば5°以下であり、好ましくは4°以下、より好ましくは3°以下であり、さらに好ましくは2°以下、さらにより好ましくは1°以下であり、例えば0.8°以下、また例えば0.5°以下であってよい。
【0080】
第一フィルム部材A1は、第2のλ/4部材を含み、必要に応じて、他の部材をさらに含んでいてもよい。他の部材としては、接着層(粘着剤層、接着剤層)、ポジティブCプレート、保護部材等が挙げられる。
【0081】
1つの実施形態において、第一フィルム部材A1は、粘着剤層と第2のλ/4部材と保護部材とをこの順に含む。第一フィルム部材A1は、目的に応じて、粘着剤層と第2のλ/4部材との間または第2のλ/4部材と保護部材との間にポジティブCプレートをさらに含み得る。このような構成を有する第一フィルム部材A1を長尺方向に沿ってスリットして長尺状の第二フィルム部材A2を得ること;第二フィルム部材A2を長尺方向に連続して打ち抜いて第一レンズ部に対応する形状を有する第三フィルム部材A3を得ること:第三フィルム部材A3を粘着剤層により第一レンズ部に貼り合わせること;により、第2のλ/4部材の遅相軸角度の精度に優れた表示システムを効率よく得ることができる。
【0082】
C-2.実施形態II
実施形態IIにおいて、上記表示システムの製造方法は、反射型偏光部材を含む長尺状の第一フィルム部材B1を長尺方向に沿ってスリットして、第二フィルム部材B2を得ることを含む。必要に応じて、長尺方向に沿ったスリットに加えて、幅方向に沿ったスリットを行って第二フィルム部材B2を得てもよい。1つの実施形態において、第二フィルム部材B2は長尺状である。広幅で作製された反射型偏光部材は幅方向において反射軸角度にばらつきを有する場合があるが、広幅の第一フィルム部材B1を長尺方向に沿ってスリットすることにより、当該反射軸角度のばらつきが抑制された狭幅の第二フィルム部材B2を効率よく得ることができる。
【0083】
上記表示システムの製造方法は、第二フィルム部材B2を所定の形状に切断して、枚葉の第三フィルム部材B3を得ることをさらに含むことができる。反射型偏光部材の幅方向における反射軸角度のばらつきが小さい第二フィルム部材B2を所定の形状に切断することにより、反射軸角度のばらつきが小さい枚葉の第三フィルム部材B3を効率よく得ることができる。切断は、打ち抜きによって行われ得る。
【0084】
上記第二フィルム部材B2および第三フィルム部材B3においては、反射型偏光部材の反射軸角度のばらつきが小さい。よって、第二フィルム部材B2または第三フィルム部材B3を用いて表示システムを製造することにより、表示システムにおける反射型偏光部材の反射軸角度を容易に制御することができる。
【0085】
第一フィルム部材B1の幅は、例えば300mm~1500mmであり、400mm~1200mmであってよい。
【0086】
第一フィルム部材B1における反射型偏光部材の幅方向における反射軸角度のばらつきは、例えば1.0°以上であり、1.5°~5.0°であってよい。
【0087】
第二フィルム部材B2の幅(換言すると、スリット幅)は、例えば40mm~1500mmであり、45mm~1300mmであってよく、50mm~1250mmであってよい。
【0088】
第二フィルム部材B2における反射型偏光部材の幅方向における反射軸角度のばらつきは、例えば1°以下であり、好ましくは0.8°以下、より好ましくは0.5°以下である。
【0089】
第一フィルム部材B1は、反射型偏光部材を含み、必要に応じて、他の部材をさらに含んでいてもよい。
【0090】
1つの実施形態において、長尺状であり、長尺方向に平行な反射軸を有する反射型偏光部材を含む第二フィルム部材B2と、長尺状であり、長尺方向に平行な吸収軸を有する吸収型偏光部材を含むフィルム部材とを、長尺方向を揃えて貼り合わせることで、反射型偏光部材の反射軸と吸収型偏光部材の吸収軸とが平行になるように積層された長尺状の積層フィルム部材が簡便に得られ得る。また、長尺状の第二フィルム部材B2を切断して矩形状の第三フィルム部材B3を作製し、略同形の吸収型偏光部材と辺を揃えて貼り合わせることで、反射型偏光部材の反射軸と吸収型偏光部材の吸収軸とが所望の角度をなすように(具体的には、略平行となるように)積層された枚葉の積層フィルム部材が簡便に得られ得る。このような積層フィルム部材を第二レンズ部の後方に配置することにより、反射型偏光部材の反射軸角度の精度、さらには吸収型偏光部材の吸収軸角度の精度に優れた表示システムを効率よく得ることができる。
【0091】
上記実施形態Iおよび実施形態IIは、必要に応じて、組み合わせることができる。例えば、長尺状であり、幅方向に平行な遅相軸を有する第2のλ/4部材を含む第二フィルム部材A2から、辺方向が幅方向に対して45°の角度となるように矩形状の第三フィルム部材A3を打ち抜くこと;長尺状であり、長尺方向に平行な反射軸を有する反射型偏光部材を含む第二フィルム部材B2から、辺方向が長尺方向に対して平行となるように矩形状の第三フィルム部材B3を打ち抜くこと;および、第三フィルム部材A3と第三フィルム部材B3とを対応する辺を揃えて貼り合わせること;により、第2のλ/4部材の遅相軸と反射型偏光部材の反射軸とが所望の角度(例えば、45°±2.5°)をなすように積層された枚葉の積層フィルム部材が簡便に得られ得る。このような積層フィルム部材は、例えばB項に記載の光学積層体の作製に有用である。
【実施例0092】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。なお、実施例等における、試験および評価方法は以下のとおりである。なお、「部」と記載されている場合は、特記事項がない限り「重量部」を意味し、「%」と記載されている場合は、特記事項がない限り「重量%」を意味する。
【0093】
(1)厚み
10μm以下の厚みは、走査型電子顕微鏡(日本電子社製、製品名「JSM-7100F」)を用いて測定した。10μmを超える厚みは、デジタルマイクロメーター(アンリツ社製、製品名「KC-351C」)を用いて測定した。
(2)面内位相差Re(λ)
位相差測定装置(王子計測機器株式会社製のKOBRA)を用いて、23℃における各波長での位相差値を測定した。
【0094】
[製造例1:λ/4部材Aの作製]
撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した縦型反応器2器からなるバッチ重合装置に、ビス[9-(2-フェノキシカルボニルエチル)フルオレン-9-イル]メタン29.60重量部(0.046mol)、イソソルビド(ISB)29.21重量部(0.200mol)、スピログリコール(SPG)42.28重量部(0.139mol)、ジフェニルカーボネート(DPC)63.77重量部(0.298mol)、および、触媒として酢酸カルシウム1水和物1.19×10-2重量部(6.78×10-5mol)を仕込んだ。反応器内を減圧窒素置換した後、熱媒で加温を行い、内温が100℃になった時点で撹拌を開始した。昇温開始40分後に内温を220℃に到達させ、この温度を保持するように制御すると同時に減圧を開始し、220℃に到達してから90分で13.3kPaにした。重合反応とともに副生するフェノール蒸気を100℃の還流冷却器に導き、フェノール蒸気中に若干量含まれるモノマー成分を反応器に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は45℃の凝縮器に導いて回収した。第1反応器に窒素を導入して一旦大気圧まで復圧させた後、第1反応器内のオリゴマー化された反応液を第2反応器に移した。次いで、第2反応器内の昇温および減圧を開始して、50分で内温240℃、圧力0.2kPaにした。その後、所定の攪拌動力となるまで重合を進行させた。所定動力に到達した時点で反応器に窒素を導入して復圧し、生成したポリエステルカーボネート系樹脂を水中に押し出し、ストランドをカッティングしてペレットを得た。
得られたポリエステルカーボネート系樹脂(ペレット)を80℃で5時間真空乾燥をした後、単軸押出機(東芝機械社製、シリンダー設定温度:250℃)、Tダイ(幅200mm、設定温度:250℃)、チルロール(設定温度:120~130℃)および巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、厚み130μmの長尺状の樹脂フィルムを作製した。得られた長尺状の樹脂フィルムを、幅方向に、延伸温度140℃、延伸倍率2.7倍で延伸した。
こうして、厚みが47μmで、Re(590)が143nmであり、Nz係数が1.2であるλ/4部材Aを得た。得られたλ/4部材AのRe(450)/Re(550)は0.856であった。また、λ/4部材AのRe(400)/Re(550)は0.734であり、Re(650)/Re(550)は1.058であり、Re(750)/Re(550)は1.088であった。
【0095】
[製造例2:粘着剤層Aの作製]
撹拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、および冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート91.5部、アクリル酸3部、4-ヒドロキシブチルアクリレート0.5部およびアクリロイルモルホリン5部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。さらに、このモノマー混合物100部に対して、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチル100部と共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入してフラスコ内を窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って8時間重合反応を行った。次いで、得られた反応液に酢酸エチルを加えて固形分濃度12重量%に調整し、重量平均分子量(Mw)250万のアクリル系ポリマーの溶液を調製した。
得られたアクリル系ポリマー溶液の固形分100部に対して、過酸化物系架橋剤のベンゾイルパーオキサイド(商品名:ナイパーBMT、日本油脂社製)0.3部と、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物(商品名:コロネートL、東ソー社製)0.2部と、シランカップリング剤(商品名:KBM403、信越化学工業社製)0.2部を配合して、粘着剤組成物を調製した。
得られた粘着剤組成物を、剥離面に離型剤処理が施されたPETフィルムであるはく離ライナーの剥離面に塗布し乾燥させて、厚み5μmの粘着剤層Aを形成した。
【0096】
[実施例1]
上記λ/4部材A(以下、第1のλ/4部材A)の一方の側に粘着剤層Aを介してアクリルフィルム(Re(550)≒0nm、厚み40μm)を貼り合わせ、他方の側に粘着剤層Aを介して別のλ/4部材A(以下、第2のλ/4部材A)を貼り合わせた。次いで、第2のλ/4部材Aの上に粘着剤層Aを介して反射型偏光部材(日東電工社製、「APCF」)を貼り合わせた。これにより、[アクリルフィルム/第1のλ/4部材A/第2のλ/4部材A/反射型偏光部材]の構成を有する積層体を得た。なお、得られた積層体において、第1のλ/4部材Aの遅相軸と第2のλ/4部材Aの遅相軸とのなす角度は0°であり、第2のλ/4部材Aの遅相軸と反射型偏光部材の反射軸とのなす角度は45°であった。
【0097】
[実施例2]
第2のλ/4部材Aの遅相軸と反射型偏光部材の反射軸とのなす角度を46°にしたこと以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
【0098】
[実施例3]
第2のλ/4部材Aの遅相軸と反射型偏光部材の反射軸とのなす角度を47°にしたこと以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
【0099】
[比較例1-1]
第2のλ/4部材Aの遅相軸と反射型偏光部材の反射軸とのなす角度を48°にしたこと以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
【0100】
[比較例1-2]
第2のλ/4部材Aの遅相軸と反射型偏光部材の反射軸とのなす角度を49°にしたこと以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
【0101】
[比較例2]
反射型偏光部材(日東電工社製、「APCF」)の一方の側に粘着剤層Aを介してアクリルフィルム(Re(550)≒0nm、厚み40μm)を貼り合わせた。これにより、[アクリルフィルム/反射型偏光部材]の構成を有する積層体を得た。
【0102】
<反射率測定>
上記実施例および比較例で得られた積層体の反射型偏光部材側に透明な粘着剤層を介して黒板を貼り合わせて、測定サンプルを得た。測定サンプルのアクリルフィルム側表面に直線偏光を入射させた際の当該表面の反射率を以下の条件で求めた。
・測定装置:分光光度計(日立製作所社製、製品名「U-4100」)
・測定条件:全反射測定、入射角度10°、測定角度10°
・光源:D65光源
・反射率の算出方法:反射光強度/入射光強度×100(%)
【0103】
3つの測定サンプルについて測定した反射率の平均値を表1および
図7に示す。また、測定サンプルをアクリルフィルム側から見たときの、入射光の偏光方向を基準(0°)とする反射型偏光部材の反射軸並びに第1のλ/4部材Aおよび第2のλ/4部材Aの遅相軸の角度を表1に併せて示す(「+」は時計回り、「-」は反時計回りの角度を意味する)。なお、比較例2-1~2-5は、比較例2で得た積層体を用い、当該積層体を設置する方向を1°ずつずらすことで測定を行った。
【表1】
【0104】
実施例で作製した積層体は、本発明の実施形態による表示システムの簡易評価モデルである。具体的には、上記積層体について測定される反射率は、本発明の実施形態による表示システムにおいて、偏光部材を介して表示素子から出射された直線偏光が第1のλ/4部材を含む第一位相差部材および第2のλ/4部材を含む第二位相差部材を透過して反射型偏光部材によって反射される際の反射率に対応し得る。
【0105】
比較例2の積層体の構成によれば、入射した直線偏光がλ/4部材を透過することなく反射型偏光部材によって反射される。表1および
図7に示されるとおり、当該構成においては、入射光の偏光方向に対して4°程度の軸ずれがあっても反射特性の低下はほとんど生じないことがわかる。
一方、実施例1~3および比較例1-1~1-2の積層体の構成によれば、入射した直線偏光が第1のλ/4部材Aおよび第2のλ/4部材Aを透過した後に反射型偏光部材によって反射される。当該構成においては、反射型偏光部材の軸ずれが大きくなるにつれて反射率も低下していく。このような反射率の低下は、直線偏光がλ/4部材を2回透過することで部分的に偏光解消が生じ、当該偏光解消が反射型偏光部材の軸ずれによる反射特性の低下に影響するためと推測されるが、積層体への入射光の偏光方向と反射型偏光部材の反射軸とのなす角度を87.5°~92.5°にすることにより、対応する比較例2-1~2-5と比較した際の反射率の低下を2%未満に抑制することができる。
【0106】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。