IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ラピステクノロジー株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-PLL回路 図1
  • 特開-PLL回路 図2
  • 特開-PLL回路 図3
  • 特開-PLL回路 図4
  • 特開-PLL回路 図5
  • 特開-PLL回路 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122688
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】PLL回路
(51)【国際特許分類】
   H03L 7/095 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
H03L7/095
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030361
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】320012037
【氏名又は名称】ラピステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永山 淳
【テーマコード(参考)】
5J106
【Fターム(参考)】
5J106AA04
5J106CC01
5J106CC21
5J106CC41
5J106CC52
5J106DD10
5J106DD32
5J106EE03
5J106EE10
5J106GG20
5J106HH01
5J106HH10
5J106JJ09
5J106KK30
(57)【要約】
【課題】意図せず動作可能な周波数を超えた分周比の設定が行われてデッドロック状態となった場合でも、動作可能な周波数の設定になれば、正常な動作状態に自動的に復帰可能とする。
【解決手段】デッドロック検出回路20は、制御電圧104が予め設定された上限値を超えた場合、デッドロック状態であると判定して、切替信号106をHレベルにし、制御電圧104が予め設定された下限値を下回った場合、切替信号106をLレベルとする。マルチプレクサ12、13は、切替信号106がHレベルになると、基準クロック信号101の代わりにLレベルの信号が位相周波数検出器14に入力され、フィードバッククロック信号107の代わりに基準クロック信号101が位相周波数検出器14に入力されるような切り替えを行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された制御電圧に応じた発振周波数の出力信号を生成する電圧制御発振器と、
前記電圧制御発振器により生成された出力信号の周波数を、設定された分周比により分周する分周回路と、
前記分周回路により分周された出力信号と、予め設定された周波数の基準信号との位相差を検出して、検出した位相差に応じて上昇指示信号又は下降指示信号を出力する位相比較器と、
前記上昇指示信号又は前記下降指示信号に基づいて、出力電圧を上昇又は下降させるチャージポンプ回路と、
前記チャージポンプ回路からの出力電圧を平滑化して、前記制御電圧として前記電圧制御発振器に出力するフィルタ回路と、
前記制御電圧が予め設定された上限値を超えた場合、切替信号をアクティブにし、前記制御電圧が予め設定された下限値を下回った場合、前記切替信号をインアクティブとするデッドロック検出回路と、
前記切替信号がインアクティブの場合、前記分周回路により分周された出力信号と、前記基準信号とを、位相差及び周波数差が検出されるように前記位相比較器に入力させ、前記切替信号がアクティブになると、前記基準信号の代わりにロウレベルの信号が入力され、前記分周回路により分周された出力信号の代わりに、前記基準信号が入力されるような切り替えを行う切替回路と、
を備えたPLL回路。
【請求項2】
前記デッドロック検出回路が、
前記制御電圧が予め設定された上限電圧以上になった場合に第1の信号を生成する第1の生成回路と、
前記制御電圧が予め設定された下限電圧以下になった場合に第2の信号を生成する第2の生成回路と、
前記第1の信号をクロック入力とし、前記第2の信号をリセット入力とし、入力にハイレベルの信号が接続され、出力を前記切替信号とするフリップフロップ回路と、
により構成された請求項1記載のPLL回路。
【請求項3】
前記第1の生成回路が、前記制御電圧が予め設定された上限電圧以上になるとオフする第1のトランジスタを有し、前記第1のトランジスタがオフすることにより前記第1の信号をハイレベルとし、
前記第2の生成回路が、前記制御電圧が予め設定された下限電圧以下になるとオフする第2のトランジスタを有し、前記第2のトランジスタがオフすることにより前記第2の信号をハイレベルとする、
請求項2記載のPLL回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PLL回路に関する。
【背景技術】
【0002】
ある基準周波数に基づいて様々な周波数の出力信号を生成するためにPLL(Phase Locked Loop)回路が広く用いられている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このようなPLL回路は、制御電圧に応じて発振周波数を変化させるように構成されたVCO(Voltage Controlled Oscillator:電圧制御発振器)を備えており、この制御電圧を変化させることにより希望する周波数の出力信号を得るように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-7433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そして、近年、このようなPLL回路では、要求される出力周波数が高くなり、広帯域な周波数の出力信号を生成するようになっている。そのため、VCOの周波数特性には、周辺回路が動作しない動作条件及び設定が含まれる場合が出てきている。
【0006】
そのため、PLL回路において、動作範囲を超えるような周波数が設定されてしまうとデッドロック状態となり、外部からPLL回路をリセットしない限り正常動作状態に復帰することができなくなってしまう場合がある。
【0007】
本発明の目的は、意図せず動作可能な周波数を超えた設定が行われてデッドロック状態となった場合でも、動作可能な周波数の設定になれば、正常な動作状態に自動的に復帰することが可能なPLL回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のPLL回路は、入力された制御電圧に応じた発振周波数の出力信号を生成する電圧制御発振器と、
前記電圧制御発振器により生成された出力信号の周波数を、設定された分周比により分周する分周回路と、
前記分周回路により分周された出力信号と、予め設定された周波数の基準信号との位相差を検出して、検出した位相差に応じて上昇指示信号又は下降指示信号を出力する位相比較器と、
前記上昇指示信号又は前記下降指示信号に基づいて、出力電圧を上昇又は下降させるチャージポンプ回路と、
前記チャージポンプ回路からの出力電圧を平滑化して、前記制御電圧として前記電圧制御発振器に出力するフィルタ回路と、
前記制御電圧が予め設定された上限値を超えた場合、切替信号をアクティブにし、前記制御電圧が予め設定された下限値を下回った場合、前記切替信号をインアクティブとするデッドロック検出回路と、
前記切替信号がインアクティブの場合、前記分周回路により分周された出力信号と、前記基準信号とを、位相差及び周波数差が検出されるように前記位相比較器に入力させ、前記切替信号がアクティブになると、前記基準信号の代わりにロウレベルの信号が入力され、前記分周回路により分周された出力信号の代わりに、前記基準信号が入力されるような切り替えを行う切替回路と、を備えている。
【0009】
また、本発明のPLL回路は、前記デッドロック検出回路が、
前記制御電圧が予め設定された上限電圧以上になった場合に第1の信号を生成する第1の生成回路と、
前記制御電圧が予め設定された下限電圧以下になった場合に第2の信号を生成する第2の生成回路と、
前記第1の信号をクロック入力とし、前記第2の信号をリセット入力とし、入力にハイレベルの信号が接続され、出力を前記切替信号とするフリップフロップ回路とにより構成するようにしてもよい。
【0010】
さらに、本発明のPLL回路は、前記第1の生成回路が、前記制御電圧が予め設定された上限電圧以上になるとオフする第1のトランジスタを有し、前記第1のトランジスタがオフすることにより前記第1の信号をハイレベルとし、
前記第2の生成回路が、前記制御電圧が予め設定された下限電圧以下になるとオフする第2のトランジスタを有し、前記第2のトランジスタがオフすることにより前記第2の信号をハイレベルとするようにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、意図せず動作可能な周波数を超えた設定が行われてデッドロック状態となった場合でも、動作可能な周波数の設定になれば、正常な動作状態に自動的に復帰することが可能なPLL回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態のPLL回路10の構成を示すブロック図である。
図2】位相周波数検出器14の動作を説明するための図である。
図3】デッドロック検出回路20の具体的な回路構成を示す回路図である。
図4】位相周波数検出器14の入力切り替え動作を説明するための図である。
図5】本発明の一実施形態のPLL回路10の動作を説明するためのフローチャートである。
図6】本発明の一実施形態のPLL回路10の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施形態のPLL回路10の構成を示すブロック図である。
【0015】
本実施形態のPLL回路10は、図1に示されるように、1/R分周器11と、マルチプレクサ12、13と、位相周波数検出器(PFD(Phase Frequency Detector))14と、チャージポンプ回路15と、ループフィルタ(LPF)16と、VCO(電圧制御発振器)17と、1/N分周器18と、デッドロック検出回路20とから構成されている。
【0016】
1/R分周器11は、入力クロック信号を予め設定された分周比で分周することにより基準クロック信号101を生成して出力する。
【0017】
デッドロック検出回路20はVCO17の発振周波数を制御するための制御電圧(コントロール電圧)104を監視して、制御電圧104が予め設定された電圧範囲を外れた場合にデッドロック状態であることを検出するための回路である。具体的には、デッドロック検出回路20は、制御電圧104が予め設定された上限値を超えた場合、デッドロック状態であると判定して、切替信号106をアクティブであるハイレベル(以降Hと略す。)にし、制御電圧104が予め設定された下限値を下回った場合、切替信号106をインアクティブであるロウレベル(以降Lレベルと略す。)とする。
【0018】
そして、マルチプレクサ12、13は、切替信号106がLレベルの場合、1/N分周器18により分周された出力信号であるフィードバッククロック信号107と、1/R分周器11からの基準クロック信号101とを、位相差及び周波数差が検出されるように位相周波数検出器14に入力させる切替回路として機能する。また、マルチプレクサ12、13は、切替信号106がHレベルになると、基準クロック信号101の代わりにLレベルの信号が位相周波数検出器14に入力され、1/N分周器18により分周されたフィードバッククロック信号107の代わりに、基準クロック信号101が位相周波数検出器14に入力されるような切り替えを行う。
【0019】
具体的には、マルチプレクサ12は、切替信号106がLレベルの場合には、基準クロック信号101を位相周波数検出器14の入力Aに出力し、切替信号106がHレベルの場合には、Lレベルの信号を位相周波数検出器14の入力Aに出力する。また、マルチプレクサ13は、切替信号106がLレベルの場合には、1/N分周器18からのフィードバッククロック信号107を位相周波数検出器14の入力Bに出力し、切替信号106がHレベルの場合には、基準クロック信号101を位相周波数検出器14の入力Bに出力する。
【0020】
次に、位相周波数検出器14の動作について図2を参照して説明する。位相周波数検出器14は、図2に示されるように、入力Aの周波数が入力Bの周波数よりも高い場合、上昇指示信号であるアップパルス信号102をチャージポンプ回路15に出力する。そして、位相周波数検出器14は、図2に示されるように、入力Aの周波数よりも入力Bの周波数の方が高い場合、下降指示信号であるダウンパルス信号103をチャージポンプ回路15に出力する。
【0021】
チャージポンプ回路15は、アップパルス信号102又はダウンパルス信号103に基づいて、出力電圧を上昇又は下降させる。具体的には、チャージポンプ回路15は、アップパルス信号102を入力すると、出力電圧を上昇させる様に電流を印加し、ダウンパルス信号103を入力すると、出力電圧を下降させる様に電流を引く。
【0022】
ループフィルタ(LPF)16は、チャージポンプ回路15からの出力電圧を平滑化して、制御電圧104としてVCO17に出力するフィルタ回路である。
【0023】
上述したような回路構成となっていることにより、位相周波数検出器14からアップパルス信号102が出力されると制御電圧104は上昇し、位相周波数検出器14からダウンパルス信号103が出力されると制御電圧104は下降する。
【0024】
VCO(電圧制御発振器)17は、ループフィルタ16から入力された制御電圧104に応じた発振周波数の出力クロック信号105を生成する。
【0025】
1/N分周器18は、VCO17により生成された出力クロック信号105の周波数を、設定された分周比Nにより分周して、フィードバッククロック信号106として出力する分周回路である。
【0026】
そして、PLL回路10がデッドロック状態となっていない正常動作時には、位相周波数検出器14の入力Aとして基準クロック信号101が入力され、入力Bとして1/N分周器18からのフィードバッククロック信号106が入力される。そのため、位相周波数検出器14は、1/N分周器18により分周されたフィードバッククロック信号107と、予め設定された周波数の基準信号である基準クロック信号101との位相差を検出して、検出した位相差に応じてアップパルス信号102又はダウンパルス信号103のいずれかを出力する位相比較器として機能している。
【0027】
上記のような動作が行われることにより、本実施形態のPLL回路10では、1/N分周器18に対して行う分周設定により、出力クロック信号105の周波数が制御されることになる。例えば、1/N分周器18に対して設定する分周比Nを10とした場合、出力クロック信号105の周波数は基準クロック信号101の周波数の10倍となる。
【0028】
次に、図1に示したデッドロック検出回路20の具体的な回路構成を図3の回路図に示す。
【0029】
デッドロック検出回路20は、図3に示されるように、フリップフロップ回路(FF回路)21と、Pチャネル型FET(Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)22と、Nチャネル型FET23と、インバータ回路24~26と、電流源27、28とから構成されている。
【0030】
Pチャネル型FET22と、電流源27と、インバータ回路24とにより、制御電圧104が予め設定された上限電圧以上になった場合に第1の信号である上限検出信号108を生成する第1の生成回路が構成される。
【0031】
そして、Nチャネル型FET23と、電流源28と、インバータ回路25、26とにより、制御電圧104が予め設定された下限電圧以下になった場合に第2の信号である下限検出信号109を生成する第2の生成回路が構成される。
【0032】
そして、フリップフロップ回路21は、インバータ回路24からの上限検出信号108をクロック入力とし、インバータ回路26からの下限検出信号109をリセット入力(RST)とし、D入力にHレベルの信号であるVDDが接続され、Q出力を切替信号106とするように接続されている。
【0033】
Pチャネル型FET22は、ゲートが制御電圧104に接続され、ソースが電源電圧VDDに接続され、ドレインが電流源27を介してグランドに接続されている。また、Nチャネル型FET23は、ゲートが制御電圧104に接続され、ソースがグランドに接続され、ドレインが電流源28を介して電源電圧VDDに接続されている。そして、インバータ回路24は、Pチャネル型FET22のドレインの電圧の論理を反転してフリップフロップ回路21のクロック入力に上限検出信号108として出力している。また、インバータ回路25は、Nチャネル型FET23のドレインの電圧の論理を反転し、インバータ回路26は、その論理をさらに反転してフリップフロップ回路21のリセット入力に下限検出信号109として出力している。
【0034】
つまり、第1の生成回路は、制御電圧104が予め設定された上限電圧以上になるとオフする第1のトランジスタとしてPチャネル型FET22を有し、Pチャネル型FET22がオフすることにより上限検出信号108をHレベルとする。
【0035】
なお、デッドロック検出回路20が制御電圧104の電圧範囲を監視する際の上限電圧は、電源電圧から、Pチャネル型FET22の閾値電圧を差し引いた電圧に設定されることになる。また、下限電圧は、Nチャネル型FET23の閾値電圧になる。
【0036】
さらに、デッドロック状態となった場合には、制御電圧104はVCO17が高い周波数の出力クロック信号105を生成するような電圧、つまり電源電圧側に張り付くことになる。そのため、上限電圧をできるだけ電源電圧に近づけることにより通常動作において利用可能な制御電圧104の電圧範囲が広がることになる。具体的には、Pチャネル型FET22のゲートと制御電圧104との間にNチャネル型FETを1段追加してレベルシフトすることにより、Nチャネル型FETの閾値電圧分レベルシフトすることが可能である。そして、制御電圧104の電圧範囲が広がることにより、生成されるクロック信号105の周波数範囲も広げることが可能となる。
【0037】
そして、クロック入力の上限検出信号108がHレベルになると、フリップフロップ回路21は、D入力のHレベルの信号をQ出力に出力する。その結果、切替信号106はHレベルとなる。
【0038】
また、第2の生成回路は、制御電圧104が予め設定された下限電圧以下になるとオフする第2のトランジスタとしてNチャネル型FET23を有し、Nチャネル型FET23がオフすることにより下限検出信号109をHレベルとする。
【0039】
そして、リセット入力の下限検出信号109がHレベルになると、フリップフロップ回路21は、HレベルであったQ出力をLレベルとする。その結果、切替信号106はLレベルとなる。
【0040】
デッドロック検出回路20は、上述したような回路構成となっていることにより、制御電圧104が上限電圧以上になると切替信号106をHレベルとし、制御電圧104が下限電圧以下になるとHレベルとなっていた切替信号106をLレベルとするように動作する。
【0041】
そして、デッドロック検出回路20からの切替信号106の論理が変化することにより位相周波数検出器14の入力は図4に示すように切り替わる。
【0042】
具体的には、切替信号106がLレベルの場合には、位相周波数検出器14の入力Aには基準クロック信号101が入力され、位相周波数検出器14の入力Bにはフィードバッククロック信号107が入力される。そのため、PLL回路10では、通常の動作を行って1/N分周器18に設定された分周比に基づく出力クロック信号105が生成されることになる。
【0043】
そして、制御電圧104が上限電圧以上となり、デッドロック検出回路20がデッドロック状態になったことを検出すると、切替信号106はHレベルとなる。すると、位相周波数検出器14の入力AはLレベル固定となり、位相周波数検出器14の入力Bには基準クロック信号101が入力されるような切り替えが行われる。つまり、入力Aの周波数よりも入力Bの周波数が常に高い状態が維持される。その結果、位相周波数検出器14は、ダウンパルス信号103を出力し続け、チャージポンプ回路15は出力電圧を下降させ、制御電圧104も下降を続けることになる。
【0044】
そして、制御電圧104が下限電圧以下になるとデッドロック検出回路20は切替信号106をLレベルに戻すため、位相周波数検出器14の入力Aには基準クロック信号101が入力され、位相周波数検出器14の入力Bにはフィードバッククロック信号107が入力され正常時の動作に自動的に復帰することになる。その後は、出力クロック信号105が、1/N分周器18に設定された分周比Nに基づく周波数となるまで制御電圧104が上昇し、基準クロック信号101の周波数とフィードバッククロック信号107の周波数が一致するとロック状態となる。
【0045】
上述した本実施形態のPLL回路10における動作を図5のフローチャートに示す。
【0046】
PLL回路10では、デッドロック検出回路20においてデッドロック状態であることが検出されるまで(ステップS102においてyesと判定されるまで)、正常時の通常動作を行う(ステップS101)。
【0047】
そして、デッドロック検出回路20においてデッドロック状態であることが検出されると(ステップS102においてyes)、切替信号106がHレベルとなりマルチプレクサ12、13の切り替えが行われる(ステップS103)。
【0048】
その結果、位相周波数検出器14がダウンパルス信号103を出力し続けることにより、制御電圧104は下降し続ける(ステップS104)。そして、制御電圧104が下限電圧に到達すると(ステップS105においてyes)、デッドロック検出回路20は、切替信号106をLレベルとする。
【0049】
そのため、再度マルチプレクサ12、13の切り替えが行われ(ステップS106)、PLL回路10は、正常時の通常動作に復帰する。
【0050】
最後に、上述したような本実施形態のPLL回路10における動作を図6のタイミングチャートに示す。
【0051】
図6では、1/N分周器18に対して動作周波数範囲外の分周比の設定が行われ、制御電圧104が上昇して上限電圧を超えてしまった場合が示されている。
【0052】
デッドロック検出回路20がデッドロック状態を検出するまでは、位相周波数検出器14の入力Aには基準クロック信号101が入力され、入力Bにはフィードバッククロック信号107が入力されている。
【0053】
そして、時刻T1において制御電圧104が上限電圧を超えると、デッドロック検出回路20では、Pチャネル型FET22がオフとなり上限検出信号108がHレベルとなる。その結果、デッドロック検出回路20は、切替信号106をLレベルからHレベルとする。
【0054】
すると、位相周波数検出器14からはダウンパルス信号103が出力され続けるため、制御電圧104は下降する。なお、制御電圧104が下降して上限電圧以下になると、Pチャネル型FET22はオンとなり上限検出信号108はLレベルに戻る。しかし、このような状態となっても、切替信号106はHレベルに維持される。
【0055】
そして、制御電圧104が下降し続けて時刻T2において下限電圧を下回ると、デッドロック検出回路20では、Nチャネル型FET23がオフとなり下限検出信号109がHレベルとなる。その結果、デッドロック検出回路20は、切替信号106をHレベルからLレベルとする。すると、位相周波数検出器14は通常動作に復帰して、出力クロック信号105が設定された分周比に基づく周波数となるように、制御電圧104は上昇する。なお、制御電圧104が上昇して下限電圧以上になると、Nチャネル型FET23はオンとなり下限検出信号109はLレベルに戻る。
【0056】
本実施形態のPLL回路10では、上記のような動作が行われることにより、意図せず動作可能な周波数を超えた分周比の設定が行われてデッドロック状態となった場合でも、動作可能な周波数の設定になれば、外部からリセット動作等を行うことを必要とすることなく、正常な動作状態に自動的に復帰することが可能となる。
【0057】
また、本実施形態のPLL回路10では、図3に示したようなシンプルな回路構成のデッドロック検出回路20とマルチプレクサ12、13とを用いることのみで、デッドロック状態から正常な動作状態に自動的に復帰することができるという特徴を有する。
【符号の説明】
【0058】
10 PLL回路
11 1/R分周器
12、13 マルチプレクサ
14 位相周波数検出器(PFD)
15 チャージポンプ回路
16 ループフィルタ(LPF)
17 VCO(電圧制御発振器)
18 1/N分周器
20 デッドロック検出回路
21 フリップフロップ回路
22 Pチャネル型FET
23 Nチャネル型FET
24~26 インバータ回路
27、28 電流源
101 基準クロック信号
102 アップパルス信号
103 ダウンパルス信号
104 制御電圧
105 出力クロック信号
106 切替信号
107 フィードバッククロック信号
108 上限検出信号
109 下限検出信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6