(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122690
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】工具管理装置、工具管理方法及びプログラム、並びに生産システム
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/155 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
B23Q3/155 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030365
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000114787
【氏名又は名称】ヤマザキマザック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】佐野 悟志
(72)【発明者】
【氏名】宇佐見 裕隆
(72)【発明者】
【氏名】山田 皐平
【テーマコード(参考)】
3C002
【Fターム(参考)】
3C002EE01
3C002EE03
3C002EE04
3C002HH01
(57)【要約】
【課題】工具収納装置に対し必要な常備工具を適切に供給する。
【解決手段】工具管理装置(3)は、工作機械(1)の工具収納装置(12)に常備する工具である常備工具を、工具収納装置(12)の各ポケットのうち常備工具の指定取付先である常用ポケットと関連付けて設定する常備工具設定部(1)と、工作機械(1)の加工スケジュールと工具データとに基づいて、工具収納装置(12)に補充すべき工具である補充工具を抽出し、抽出した当該補充工具に、工具収納装置(12)のポケットをそれぞれ割り当てる演算部(33)と、演算部(33)が割り当てたポケットに補充工具を取り付ける指示を出す指示部(33)とを備える。演算部(33)は、常備工具と同種の補充工具が存在する場合に、当該補充工具に対し常用ポケットを優先的に割り当てる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械で使用される工具を管理する工具管理装置であって、
前記工作機械が行う加工の予定を定めた加工スケジュールを記憶するスケジュール記憶部と、
前記工作機械に備わる工具収納装置の各ポケットに取り付けられている工具の情報と、前記工具収納装置以外の場所に保管されている工具の情報と、を含む工具データを記憶する工具データ記憶部と、
前記工具収納装置に常備する工具である常備工具を、当該常備工具の指定取付先の前記ポケットである常用ポケットと関連付けて設定する常備工具設定部と、
前記スケジュール記憶部に記憶されている前記加工スケジュールと、前記工具データ記憶部に記憶されている前記工具データとに基づいて、前記工具収納装置に補充すべき工具である補充工具を抽出し、抽出した当該補充工具に、前記工具収納装置の前記ポケットをそれぞれ割り当てる演算部と、
前記演算部が割り当てた前記ポケットに前記補充工具を取り付ける指示を出す指示部とを備え、
前記演算部は、前記常備工具と同種の前記補充工具が存在する場合に、当該補充工具に対し前記常用ポケットを優先的に割り当てる、工具管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の工具管理装置において、
前記演算部は、前記工具データに基づいて、前記工具収納装置に取り付いている工具から状態異常のものを除いた工具を既設工具として抽出するとともに、次ワークの加工に必要な工具である必要工具を前記加工スケジュールに基づき抽出し、前記既設工具を前記必要工具から除いた工具を前記補充工具として抽出する、工具管理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の工具管理装置において、
前記演算部は、前記常備工具と同種の前記補充工具が存在し、かつ前記常用ポケットが所定のNG状態にある場合に、前記補充工具に対し前記常用ポケットを優先的に割り当てる、工具管理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の工具管理装置において、
前記演算部は、前記常用ポケットに状態異常の前記常備工具が取り付いているという条件、及び前記常用ポケットが空きであるという条件、の少なくともいずれかが成立する場合に、前記常用ポケットが前記NG状態にあると判定する、工具管理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の工具管理装置において、
状態異常の前記常備工具が取り付いた前記常用ポケット、及び空きの前記常用ポケットの双方が存在する場合、前記演算部は、状態異常の前記常備工具が取り付いた前記常用ポケットの割り当てと、空きの前記常用ポケットの割り当てとをそれぞれ行い、その後、常用ポケット以外のポケットの割り当てを行う、工具管理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の工具管理装置において、
状態異常の常備工具が取り付いた前記常用ポケットの割り当てと、空きの前記常用ポケットの割り当てと、のいずれを先に行うかを指定する優先設定部をさらに備えた、工具管理装置。
【請求項7】
ワークを加工する複数の工作機械と、請求項1~6のいずれか1項に記載の工具管理装置とを備えた、生産システム。
【請求項8】
工作機械で使用される工具を管理する工具管理方法であって、
前記工作機械が行う加工の予定を定めた加工スケジュールを取得する第1取得ステップと、
前記工作機械に備わる工具収納装置の各ポケットに取り付けられている工具の情報と、前記工具収納装置以外の場所に保管されている工具の情報と、を含む工具データを取得する第2取得ステップと、
前記工具収納装置に常備する工具である常備工具の情報と、当該常備工具の取付先として指定された前記ポケットである常用ポケットの情報と、を含む常備工具設定情報を取得する第3取得ステップと、
取得した前記加工スケジュール及び前記工具データに基づいて、前記工具収納装置に補充すべき工具である補充工具を抽出し、抽出した当該補充工具に、前記工具収納装置の前記ポケットをそれぞれ割り当てる演算ステップと、
割り当てた前記ポケットに前記補充工具を取り付ける指示を出す指示ステップとを含み、
前記演算ステップでは、前記常備工具と同種の前記補充工具が存在する場合に、当該補充工具に対し前記常用ポケットを優先的に割り当てる、工具管理方法。
【請求項9】
メモリ及びプロセッサを備えたコンピュータを、工作機械で使用される工具を管理する工具管理装置として機能させるプログラムであって、
前記プロセッサに、
前記工作機械が行う加工の予定を定めた加工スケジュールを前記メモリから取得する第1取得処理と、
前記工作機械に備わる工具収納装置の各ポケットに取り付けられている工具の情報と、前記工具収納装置以外の場所に保管されている工具の情報と、を含む工具データを前記メモリから取得する第2取得処理と、
前記工具収納装置に常備する工具である常備工具の情報と、当該常備工具の取付先として指定された前記ポケットである常用ポケットの情報と、を含む常備工具設定情報を前記メモリから取得する第3取得処理と、
取得した前記加工スケジュール及び前記工具データに基づいて、前記工具収納装置に補充すべき工具である補充工具を抽出し、抽出した当該補充工具に、前記工具収納装置の前記ポケットをそれぞれ割り当てる演算処理と、
割り当てた前記ポケットに前記補充工具を取り付ける指示を出す指示処理と、を実行させ、
前記演算処理では、前記常備工具と同種の前記補充工具が存在する場合に、当該補充工具に対し前記常用ポケットを優先的に割り当てる、工具管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械で使用される工具を管理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークを加工する工作機械の一種として、例えばマシニングセンタ等の、使用する工具を取り替えながらワークに対し種々の加工を行う機械が知られている。この種の工作機械は、複数の工具を収納する工具収納装置を備えている。ワークの加工は、工作機械の加工部(工具を保持しつつ加工を行う機構部)と工具収納装置との間で適宜工具を交換しながら行われる。
【0003】
下記特許文献1には、上記工具収納装置(工具マガジン)への工具の取付けおよび取外しを制御する装置が開示されている。具体的に、下記特許文献1では、次ワークを加工する前に、工具収納装置に取付け済みの工具と次ワークで使用する工具とが比較され、不足の工具があれば、その不足工具が、工具を保管する工具ストッカ又は他の工作機械の工具収納装置から供給される。このとき、既に工具収納装置にある工具の一部は必要に応じ取り外される。例えば、次ワークで使用する工具である必要工具の全てが工具収納装置に入り切らない場合は、工具収納装置に取付け済みの工具のうち次ワークで使用しない工具である不要工具が抽出され、抽出された不要工具と上記必要工具とが交換される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記不要工具の中には、工具収納装置から取り外さない方が望ましい工具も存在し得る。例えば、ほとんどの種類のワークの加工に使用される多用工具は、たとえ次ワークで使用しないとしても工具収納装置から取り外さない方が望ましい場合がある。そこで、上記特許文献1の装置には、工作機械に固定される常備工具を指定する機能が備わっている。指摘された常備工具は、工具収納装置から取り外す対象から除外される。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1では、一旦常備工具として設定された工具が工具収納装置にそのまま残り続ける可能性がある。例えば、常備工具に何らかの不具合が生じた場合であっても、作業者が自身の判断で常備工具を新たな常備工具と交換する作業をしない限り、不具合の常備工具が工具収納装置に残り続けることになる。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、工具収納装置に対し必要な常備工具を適切に供給し得る工具管理装置、工具管理方法及びプログラム、並びに生産システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためのものとして、本発明の一局面に係る装置は、工作機械で使用される工具を管理する工具管理装置であって、前記工作機械が行う加工の予定を定めた加工スケジュールを記憶するスケジュール記憶部と、前記工作機械に備わる工具収納装置の各ポケットに取り付けられている工具の情報と、前記工具収納装置以外の場所に保管されている工具の情報と、を含む工具データを記憶する工具データ記憶部と、前記工具収納装置に常備する工具である常備工具を、当該常備工具の指定取付先の前記ポケットである常用ポケットと関連付けて設定する常備工具設定部と、前記スケジュール記憶部に記憶されている前記加工スケジュールと、前記工具データ記憶部に記憶されている前記工具データとに基づいて、前記工具収納装置に補充すべき工具である補充工具を抽出し、抽出した当該補充工具に、前記工具収納装置の前記ポケットをそれぞれ割り当てる演算部と、前記演算部が割り当てた前記ポケットに前記補充工具を取り付ける指示を出す指示部とを備え、前記演算部は、前記常備工具と同種の前記補充工具が存在する場合に、当該補充工具に対し前記常用ポケットを優先的に割り当てるものである。
【0009】
本発明によれば、予め記憶された加工スケジュール及び工具データに基づき補充工具が抽出されるとともに、抽出された当該補充工具を工具収納装置の割り当てられたポケットに取り付ける指示が出されるので、その指示に従って工具を取り付けるだけで次ワークの加工に必要な工具を簡単に揃えることができる。しかも、工具収納装置に常備される常備工具が設定されている場合には、工具取付け指示の際に、常備工具の指定取付先である常用ポケットが優先的に割り当てられるので、常備工具の更新や新規取付けをいち早く行うことができ、常備工具を正常な状態で常備することができる。
【0010】
好ましくは、前記演算部は、前記工具データに基づいて、前記工具収納装置に取り付いている工具から状態異常のものを除いた工具を既設工具として抽出するとともに、次ワークの加工に必要な工具である必要工具を前記加工スケジュールに基づき抽出し、前記既設工具を前記必要工具から除いた工具を前記補充工具として抽出する。
【0011】
この態様では、状態異常のために更新が必要な工具を含めて、実際に補充が必要な工具を適切に抽出することができる。
【0012】
好ましくは、前記演算部は、前記常備工具と同種の前記補充工具が存在し、かつ前記常用ポケットが所定のNG状態にある場合に、前記補充工具に対し前記常用ポケットを優先的に割り当てる。
【0013】
この態様では、常備工具の更新や新規取付けを、その取付先である常用ポケットの状態も考慮しつつ適切に行うことができる。
【0014】
具体的に、前記演算部は、前記常用ポケットに状態異常の前記常備工具が取り付いているという条件、及び前記常用ポケットが空きであるという条件、の少なくともいずれかが成立する場合に、前記常用ポケットが前記NG状態にあると判定することが好ましい。
【0015】
この態様では、状態異常の常備工具がある場合に、これを正常な常備工具にいち早く交換することができる。あるいは、常備工具が未だ取り付いていない空きの常用ポケットがある場合に、当該常用ポケットに、本来あるべき常備工具をいち早く取り付けることができる。
【0016】
好ましくは、状態異常の前記常備工具が取り付いた前記常用ポケット、及び空きの前記常用ポケットの双方が存在する場合、前記演算部は、状態異常の前記常備工具が取り付いた前記常用ポケットの割り当てと、空きの前記常用ポケットの割り当てとをそれぞれ行い、その後、常用ポケット以外のポケットの割り当てを行う。
【0017】
この態様では、常備工具の更新又は新規取付けを、常備工具以外の他の工具よりも優先的に行うことができる。
【0018】
好ましくは、前記工具管理装置は、状態異常の常備工具が取り付いた前記常用ポケットの割り当てと、空きの前記常用ポケットの割り当てと、のいずれを先に行うかを指定する優先設定部をさらに備える。
【0019】
この態様では、状態異常の常備工具の更新を優先するか、未取付けの常備工具の新規取付けを優先するかを好み等に応じて選択することができる。
【0020】
上述した発明と同様の効果は、次の各発明によっても得ることができる。
【0021】
すなわち、本発明の他の局面に係る生産システムは、ワークを加工する複数の工作機械と、上述した工具管理装置と、を備えたものである。
【0022】
本発明によれば、複数の工作機械で使用する工具を、工具管理装置によって一括して管理することができる。また、各工作機械の工具収納装置に対し常備工具を正常な状態で常備することができる。
【0023】
本発明のさらに他の局面に係る方法は、工作機械で使用される工具を管理する工具管理方法であって、前記工作機械が行う加工の予定を定めた加工スケジュールを取得する第1取得ステップと、前記工作機械に備わる工具収納装置の各ポケットに取り付けられている工具の情報と、前記工具収納装置以外の場所に保管されている工具の情報と、を含む工具データを取得する第2取得ステップと、前記工具収納装置に常備する工具である常備工具の情報と、当該常備工具の取付先として指定された前記ポケットである常用ポケットの情報と、を含む常備工具設定情報を取得する第3取得ステップと、取得した前記加工スケジュール及び前記工具データに基づいて、前記工具収納装置に補充すべき工具である補充工具を抽出し、抽出した当該補充工具に、前記工具収納装置の前記ポケットをそれぞれ割り当てる演算ステップと、割り当てた前記ポケットに前記補充工具を取り付ける指示を出す指示ステップとを含み、前記演算ステップでは、前記常備工具と同種の前記補充工具が存在する場合に、当該補充工具に対し前記常用ポケットを優先的に割り当てるものである。
【0024】
本発明のさらに他の局面に係るプログラムは、メモリ及びプロセッサを備えたコンピュータを、工作機械で使用される工具を管理する工具管理装置として機能させるプログラムであって、前記プロセッサに、前記工作機械が行う加工の予定を定めた加工スケジュールを前記メモリから取得する第1取得処理と、前記工作機械に備わる工具収納装置の各ポケットに取り付けられている工具の情報と、前記工具収納装置以外の場所に保管されている工具の情報と、を含む工具データを前記メモリから取得する第2取得処理と、前記工具収納装置に常備する工具である常備工具の情報と、当該常備工具の取付先として指定された前記ポケットである常用ポケットの情報と、を含む常備工具設定情報を前記メモリから取得する第3取得処理と、取得した前記加工スケジュール及び前記工具データに基づいて、前記工具収納装置に補充すべき工具である補充工具を抽出し、抽出した当該補充工具に、前記工具収納装置の前記ポケットをそれぞれ割り当てる演算処理と、割り当てた前記ポケットに前記補充工具を取り付ける指示を出す指示処理と、を実行させ、前記演算処理では、前記常備工具と同種の前記補充工具が存在する場合に、当該補充工具に対し前記常用ポケットを優先的に割り当てるものである。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明によれば、工具収納装置に対し必要な常備工具を適切に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に係る生産システムの機能的構成を示すブロック図である。
【
図2】入力装置とサーバとの間のデータの流れを示す模式図である。
【
図4】常備工具の設定の際に表示される画面である常備工具設定画面の一例を示す図である。
【
図5】常備工具の設定等に伴うデータの流れを示す模式図である。
【
図6】前記サーバが行う工具管理の詳細手順を示すフローチャートである。
【
図7】
図6のステップS11の処理の詳細を示すサブルーチンである。
【
図8】
図7の後続の処理(その1)を示すサブルーチンである。
【
図9】
図7の後続の処理(その2)を示すサブルーチンである。
【
図10】
図9の後続の処理を示すサブルーチンである。
【
図11】次ワークの加工に必要な工具のリストである必要工具リストの一例を示す図である。
【
図12】次ワークの加工までに実際に補充することが必要な工具のリストである補充工具リストの一例を示す図である。
【
図13】補充工具の取付けを指示する指示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[生産システムの全体構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る生産システムの機能的構成を示すブロック図である。本図に示される生産システムは、複数の工作機械1と、複数の工具室2と、工具管理装置3とを備える。各工作機械1は、使用する工具を取り替えながらワークに対し種々の加工を行うことが可能なマシンであり、例えばマシニングセンタ、複合加工機、ターニングセンタ、NC旋盤などである。複数の工作機械1は、同種のマシンを含んでいてもよいし、異種のマシンを含んでいてもよい。各工具室2は、工具を保管するストッカである。工具管理装置3は、工作機械1で使用される工具を管理する装置である。なお、工具室2は1つ以上あればよく、本実施形態のように複数の工具室2を用意することは必須ではない。
【0028】
工作機械1は、工具を保持するとともに保持した工具でワークを加工する加工部11と、加工部11に取り付け得る種々の工具を収納する工具収納装置12と、工具収納装置12と加工部11との間で自動的に工具を交換するATC(自動工具交換装置)13と、各種情報を表示するモニタ14と、キーボードやマウス等を有する入力部15と、加工部11、ATC13、及びモニタ14を制御するコントローラ16とを含む。モニタ14及び入力部15は、例えばタッチパネル式のディスプレイに集約されていてもよい。
【0029】
工作機械1が例えばマシニングセンタ又はターニングセンタである場合、加工部11は、工具を保持して回転させる主軸である。工作機械1が例えばNC旋盤である場合、加工部11、工具収納装置12、及びATC13として機能する刃物台が工作機械1に備わっていてもよい。また、工作機械1は、当該刃物台とともに、工具収納装置12及びATC13を備えていてもよい。
【0030】
工具収納装置12は、工具を収納可能な複数のポケットを含み、ATC13との間で工具を受け渡し可能な位置に配置されている。工具収納装置12の複数のポケットは、例えば無端状に並べられており、所定の駆動機構によって一括して回転駆動される。あるいは、工具収納装置12は、並列に配置された複数のポケットを含むものであってもよい。この場合、各ポケットに収納された工具は、例えば所定の搬送機構によってATC13への受け渡し位置まで搬送される。
【0031】
ATC13は、加工に必要な工具が随時加工部11に取り付けられるように、コントローラ16の指令に基づいて加工部11と工具収納装置12との間で工具の交換を行う。
【0032】
モニタ14は、工作機械1によるワークの加工状況を示す情報や、工作機械1に対しオペレータが行うべき作業を示す情報など、工作機械1の運用に関する種々の情報をオペレータに表示する。例えば、モニタ14は、工具収納装置12の工具の交換が必要な場合に、次に工具収納装置12に取り付けるべき工具の情報等を示す指示画面をオペレータに表示する(詳細は後述する)。
【0033】
コントローラ16は、工作機械1を統括的に制御する制御器であり、プロセッサやメモリ等を含む。例えば、コントローラ16は、入力部15から入力された各種情報や予め定められた加工プログラムに基づいて、工作機械1の加工部11及びATC13を制御する。
【0034】
工具室2には、工具の準備を担当する作業者が新たに作製した工具や、工作機械1での使用後に回収された工具などが保管される。工具室2には、PC21(パーソナルコンピュータ)が備えられている。詳細な図示は省略するが、PC21は、プロセッサやメモリ等を含む本体部と、作業者による入力操作を受け付ける入力操作部と、各種情報を表示する表示部と、を含む端末である。表示部は、例えば、作業者に工具の準備等を指示する指示画面を表示可能なモニタである。なお、工具室2には少なくとも当該指示画面を表示できるモニタがあればよく、PC21に代えてモニタが備えられていてもよい。
【0035】
工具管理装置3は、各工作機械1で使用されている工具や各工具室2にある工具の情報を随時取得するとともに、取得した当該情報に基づいて、次に各工作機械1の工具収納装置12に取り付けるべき工具を、ワークと工作機械1との組合せごとに指定する機能を有する。工具管理装置3は、このような機能が実現されるように構築されたサーバ32を含む。サーバ32には、入力装置31から種々の情報が入力又は送信される。サーバ32は、有線又は無線の電気通信回路を介して、入力装置31、各工作機械1のコントローラ16、及び各工具室2のPC21と情報通信可能に接続されている。
【0036】
入力装置31は、プロセッサやメモリ等を含む本体部と、作業者による入力操作を受け付ける入力操作部と、各種情報を表示する表示部と、を含む端末である。入力装置31は、オペレータの操作に応じて、サーバ32に情報を入力又は送信する。
【0037】
具体的に、入力装置31は、例えば、他の機器と無線で情報通信可能に接続された持ち運び可能な携帯端末とすることができる。この場合、入力装置31は、タブレットPCやスマートフォンのような、入力操作部と表示部とが一体に構成されたタッチパネル式のディスプレイを含むものであってもよい。入力装置31には、例えば3DのCAD/CAMソフトが導入されていてもよい。また、入力装置31は1台でもよいが、本実施形態では複数台の入力装置31が備わっている(
図1参照)。
【0038】
サーバ32は、複数の工作機械1との間で情報を入出力する機器である。例えば、サーバ32は、入力装置31から入力された各種情報等に基づいて、各工作機械1のコントローラ16にワークの加工に関する情報を出力するとともに、当該コントローラ16から必要な情報を取得する。また、サーバ32は、各工具室2のPC21に工具準備のための情報を出力するとともに、PC21から必要な情報を取得する。サーバ32は、工作機械1が設置される工場内に存在していてもよいし、クラウド上に存在していてもよい。なお、サーバ32は、本発明における「常備工具設定部」及び「優先設定部」に相当する。
【0039】
サーバ32は、プロセッサ33及びメモリ34を含む。プロセッサ33は、各種の演算処理を行うCPUを含む演算装置である。メモリ34は、各種情報を記憶する記憶装置であり、例えばRAM、ROM、HDD等を含み得る。なお、プロセッサ33は、本発明における「演算部」及び「指示部」に相当し、メモリ34は、本発明における「スケジュール記憶部」及び「工具データ記憶部」に相当する。
【0040】
[データ構成]
図2は、入力装置31とサーバ32との間のデータの流れを示す模式図である。本図に示すように、オペレータは、工作機械1を用いた生産を開始する前に、入力装置31に対し、ワーク形状データA1、生産計画A2、及び新規工具データA3を含む基本データA0を入力する。ワーク形状データは、工作機械1で加工されるワークの加工後の形状を表すデータである。ワーク形状データは、例えばワークを作図したCADソフトから抽出することができる。生産計画は、どの工作機械1で何のワークを加工するか等の計画を定めた情報であり、例えば各工作機械1で加工されるワークの種類、個数、加工開始時間等の情報を含み得る。新規工具データA3は、後述する工具データC1(
図3)に登録されていない新規な工具が作製された場合に用意されるデータであり、例えば当該新規工具の名称や形状等の情報を含み得る。
【0041】
上記基本データA0の入力を受けた入力装置31は、当該基本データA0に基づき加工スケジュールB0を作成する。加工スケジュールB0は、各工作機械1での具体的な加工内容、加工順序、使用工具等を定めた情報であり、加工プログラムB1及び使用工具情報B2を含む。加工プログラムB1は、所望形状のワークを加工するのに必要な工作機械1の動作を実現するためのプログラムである。加工プログラムB1は、ワーク形状データA1等に基づいて、ワークと工作機械1の組合せごとに作成される。使用工具情報B2は、加工プログラムB1等から特定される使用工具の情報であって、ワークを加工する各工程において用いられる工具の種類等をまとめた情報である。
【0042】
言い換えると、加工スケジュールB0は、各工作機械1に適用される加工プログラムB1及びその派生情報を統合したものであって、どの工作機械1で何の工具をどんな順序で使用するかを特定するためのデータベースである。加工スケジュールB0(加工プログラムB1及び使用工具情報B2)は、サーバ32に送信され、メモリ34に記憶される。なお、加工プログラムB1及び使用工具情報B2は、例えば、入力装置31に対する入力操作により作成される。あるいは、工作機械1のオペレータが入力部15の操作を通じて加工プログラムB1及び使用工具情報B2を作成することも可能である。入力装置31にCAMソフトが導入されている場合は、当該CAMソフトを用いた加工シミュレーションによって自動的又は半自動的に加工プログラムB1及び使用工具情報B2を作成することも可能である。また、本実施形態のように入力装置31が複数台備わる場合は、加工プログラムB1及び使用工具情報B2がそれぞれ異なる入力装置31によって作成されてもよい。
【0043】
また、メモリ34には、工作機械1及び工具室2を含む工場内に存在する工具の情報を集約した工具データC1が記憶される。工具データC1は、各工作機械1の工具収納装置12に取り付けられている工具の情報と、工具収納装置12以外の場所(工具室2等)に保管されている工具の情報とを含む。
【0044】
図3は、工具データC1の一例を示す図である。本図に示すように、工具データC1は、工場内に存在する複数の工具の工具名、形状、呼び/呼び径、サフィックス、状態、工具グループ、ポケット番号、及び保管場所の各パラメータを含む。
【0045】
工具名は、例えば「旋削」、「スポット」、「ドリル」‥‥といった、工具の用途もしくは型式を特定するためのパラメータである。
【0046】
工具の形状は、名称が同じでも用途が異なる工具を区別するためのパラメータである。例えば、同じ旋削工具であっても、内径旋削用の工具と外径旋削用の工具とでは形状が異なるため、これを区別するための「内径」、「外径」等のワードが形状パラメータとして登録される。
【0047】
工具の呼び/呼び径は、工具のサイズを特定するためのパラメータである。
【0048】
工具のサフィックスは、同じ呼び/呼び径の工具を識別する必要がある場合に付されるパラメータであり、「N」や「P」等のアルファベットがサフィックスとして登録される。
【0049】
工具の状態は、工具の状態が異常であるときに登録されるパラメータであり、例えば「寿命」、「折損」等の異常を表すワードが状態パラメータとして登録される。
【0050】
工具グループは、工具の適用先が限定される場合に登録されるパラメータである。例えば、工作機械1の一つである機械Aに工具の適用先が限定される場合は、「機械A」というワードが工具グループとして登録され、複数の工作機械1を含むラインAに工具の適用先が限定される場合は、「ラインA」というワードが工具グループとして登録される。なお、工具の適用先が限定される要因としては、工作機械1の加工用途や工具ホルダのテーパ形状の相違等がある。
【0051】
保管場所は、工具の保管先を特定するためのパラメータである。例えば、工作機械1の1つである機械Aに工具が保管されている(つまり機械Aの工具収納装置12に工具が取り付けられている)場合は、「機械A」というワードが保管場所として登録され、工具室2の一つである工具室Aに工具が保管されている場合は、「工具室A」というワードが保管場所として登録される。また、工具が工場内のどこかにあるがその保管場所まで特定できない場合には、「未割り付け」として登録される。
【0052】
ポケット番号は、工作機械1の工具収納装置12に工具が取り付けられている場合にその具体的な取付場所を特定するためのパラメータである。例えば、保管場所が「機械A」である工具が、当該機械Aの工具収納装置12における8番のポケットに取り付けられている場合は、「8」という番号がポケット番号として登録される。
【0053】
上述した工具データC1中の工具名、形状、呼び/呼び径、サフィックス、及び工具グループの各パラメータは、オペレータにより登録された固定のパラメータであり、これまでに作製された工具の登録データ(新規工具データA3)から抽出されたものである。
【0054】
工具の状態、ポケット番号、及び保管場所の各パラメータは、工具の使用状況に応じて変動するパラメータであり、プロセッサ33により適宜更新される。具体的に、これらのパラメータは、工作機械1から送信される情報と、作業者等が登録する情報とに基づき更新される。
【0055】
例えば、工作機械1は、その工具収納装置12の各ポケットに取り付けられた工具のIDを読み取る読取り機を備えており、当該読取り機で読み取られた情報がサーバ32に送信されるようになっている。プロセッサ33は、工作機械1から送信された当該情報に基づいて、各工作機械1で使用されている工具及びその工具の取付先のポケット番号の情報を取得し、取得した当該情報を用いて、工具の保管場所及びポケット番号を随時更新する。例えば、ある工具が機械Aに移載されたときの取付先が工具収納装置12の16番のポケットであった場合、プロセッサ33は、機械Aからの送信情報に基づいて、当該工具の保管場所及びポケット番号を、それぞれ「機械A」、「16」に変更する。
【0056】
また、工具室2で工具の準備を担当する作業者は、準備が完了した工具の情報をPC21を用いて登録する。なお、工具室2にてPC21に代えてモニタが備えられている場合、作業者は、入力装置31を用いて工具の情報を登録する。プロセッサ33は、当該情報を用いて工具の保管場所を随時更新する。例えば、工作機械1から回収された工具を工具室Bにセットした作業者がそのことを登録した場合、プロセッサ33は、工具室Bからの送信情報に基づいて、当該工具の保管場所を「工具室B」に変更する。
【0057】
さらに、プロセッサ33は、工作機械1から送信される情報等に基づき工具の状態(使用期間等)を判定し、その判定結果に応じて工具の状態を随時更新する。例えば、プロセッサ33は、各工作機械1から送信される情報に基づいて工具ごとのトータルの使用期間を算出し、算出した使用期間が予め定められた上限時間に達した工具があった場合に、その工具が寿命に達したと判定する。新たに寿命に達した工具については、その状態が「寿命」に変更される。
【0058】
ここで、工具を管理する工具管理装置3は、既述のとおり各工作機械1の工具収納装置12に取付ける工具を指定する機能を有するが、場合によっては、当該指定にかかわらず工具収納装置12に常備しておいた方がよい工具も存在し得る。例えば、工具の交換頻度を減らす観点から、ほとんどの種類のワークの加工に使用される多用工具は、たとえ次ワークで使用しないとしても工具収納装置から取り外さない方が望ましい。このような多用工具を取り外してしまうと、すぐに再取付けが必要になる可能性が高く、交換頻度がかえって増えるからである。この場合、工作機械1のオペレータは、上記多用工具を、工具収納装置12に常備される常備工具として設定したいと考える。サーバ32は、このようなニーズに応えるための機能として、常備工具の設定機能を有する。
【0059】
上記常備工具は、例えば入力装置31を通じてサーバ32に登録される。
図4は、当該常備工具の設定の際に入力装置31の表示部に表示される画面である常備工具設定画面の一例を示す図である。本図において、表示領域R1に表示された複数の円形のアイコンXは、工具収納装置12の各ポケットを表している。また、当該アイコンXの内部の番号(1~20)は、ポケット番号を表している。常備工具設定画面を用いた常備工具の設定は、工作機械1ごとに行われる。このため、常備工具設定画面には、対象の工作機械1を指定するプルダウンメニューM1が表示される。オペレータは、入力装置31の入力操作部を用いて、当該プルダウンメニューM1から所望の工作機械1の型式等を選択することにより、常備工具の設定対象を指定する。なお、
図4では合計20個のポケットが表示されているが、ポケットの数は20より多くても少なくてもよい。
【0060】
常備工具を設定するとき、オペレータは、表示領域R1内で所望のポケットを選択するとともに、選択したポケットに常備すべき工具を右側の入力メニュー群M2を用いて指定する。例えば、1番のポケットに呼び径12のエンドミルを常備したい場合、オペレータは、表示領域R1内で1番ポケットを選択するとともに、入力メニュー群M2中の工具のプルダウンメニューから「エンドミル」を選択し、さらに呼び/呼び径のテキストボックスに「12」を入力する。入力メニュー群M2には、他に、形状及びサフィックスを選択するプルダウンメニューも含まれ得る。このように、オペレータは、常備工具を、その指定取付先のポケットと関連付けて設定することが可能である。
【0061】
なお、上記のような常備工具の設定操作は、入力装置31に限らず、各工作機械1の入力部15を通じて行うことも可能である。また、同様の操作が実行可能であれば、操作方法はプルダウンメニューによる選択やテキストボックスへの入力に限らない。
【0062】
以上のようにして常備工具の設定操作が行われると、その操作情報はサーバ32に送信されて登録される。すなわち、
図5に示すように、サーバ32のメモリ34には、常備工具として設定された工具の情報(種類)と、当該常備工具の取付先として指定されたポケットの情報(ポケット番号)と、を含む常備工具設定情報D1が登録される。これにより、常備工具の設定が完了する。なお、以下では適宜、常備工具の取付先として指定されたポケットのことを常用ポケットと称する。
【0063】
図4の例では、ポケットのアイコンXに隣接して、ギヤ形状を呈する第1アイコンY1と、チェックマーク様の第2アイコンY2とがそれぞれ表示されている。ポケットのアイコンXに第1アイコンY1が付記されたことは、当該ポケットが常用ポケットとして設定されたことを表す。また、ポケットのアイコンXに第2アイコンY2が付記されたことは、設定された情報がサーバ32に登録済みであることを表す。なお、
図4では、1番、2番、20番の3つのポケットが常用ポケットして設定された例が表示されている。
【0064】
また、上述した常備工具に関する機能とは別に、サーバ32には、ポケットの割り当ての優先順位を設定する機能が備わっている。すなわち、本実施形態では、寿命や折損等の状態異常の工具が取り付いているポケットと、工具が未だ取り付いていない空きのポケットとが存在する場合に、いずれのポケットに優先して工具を取り付けるかを定める情報として、ポケット割り当ての優先順位がサーバ32に登録することが可能となっている。この優先順位の登録は、例えば入力装置31を通じて行うことができる。すなわち、入力装置31は、状態異常の工具が取り付いているポケットと空きのポケットとのいずれを工具取付先として優先するかを決定する操作を受け付けるとともに、受け付けた情報をサーバ32に送信する。
図5に示すように、サーバ32は、受け付けた情報を優先情報D2としてメモリ34に記憶させる。これにより、ポケット割り当ての優先順位の設定が完了する。
【0065】
[工具管理の詳細]
次に、サーバ32が行う工具管理の詳細手順を、
図6に示すフローチャートを用いて説明する。本図に示す工具管理の制御は、工作機械1ごとに行われる。すなわち、サーバ32は、
図6のフローに従った処理を、工作機械1の数に対応する数だけ並列して行う。
【0066】
図6のフローがスタートすると、サーバ32のプロセッサ33は、メモリ34に記憶されている加工スケジュールB0を取得する(ステップS1)。
【0067】
次いで、プロセッサ33は、工作機械1の工具収納装置12に対する工具の入れ替えが将来必要であるか否かを判定する(ステップS2)。例えば、プロセッサ33は、対象の工作機械1が現在加工しているワークとは異なる種類(形状)のワークを同じ工作機械1で加工する予定があるか否かを加工スケジュールB0に基づき判定し、異種のワークの加工予定がある場合に、工具の入れ替えが必要であると判定する。以下では、加工が予定されている異種のワークのことを次ワークと称する。
【0068】
上記ステップS2でYESと判定されて工具の入れ替えが必要なことが確認された場合、プロセッサ33は、次ワークの加工の各工程で使用される使用工具の情報(種類)を、メモリ34に記憶されている使用工具情報B2から取得する(ステップS3)。
【0069】
次いで、プロセッサ33は、メモリ34に記憶されている工具データC1を取得する(ステップS4)。
【0070】
次いで、プロセッサ33は、上記ステップS3,S4で取得した使用工具情報B2及び工具データC1に基づいて、次ワークの加工に必要な工具(必要工具)のリストである必要工具リストL1(
図11)を生成する(ステップS5)。
図11に示すように、必要工具リストL1は、次ワークの加工に必要な必要工具の種類を特定する情報をリストアップしたデータであって、工具名、形状、呼び/呼び径、及びサフィックス、の各パラメータを含む。
【0071】
次いで、プロセッサ33は、工具データC1に基づいて、対象の工作機械1に既にある既設工具を抽出する(ステップS6)。既設工具は、工作機械1の工具収納装置12に既に取り付いている正常な状態の工具のことである。言い換えると、工具収納装置12に既に取り付いている工具から、寿命や折損等の状態異常の工具を除いた工具が、既設工具に該当する。
【0072】
次いで、プロセッサ33は、上記ステップS5で生成した必要工具リストL1と上記ステップS6で抽出した既設工具とに基づいて、次ワークの加工までに工具収納装置12に実際に補充することが必要な工具のリストである補充工具リストL2(
図12)を生成する(ステップS7)。具体的に、プロセッサ33は、必要工具リストL1から、上記既設工具と同種の工具に相当する行を削除することにより、補充工具リストL2を生成する。なお、工具が同種であるとは、工具名、形状、呼び/呼び径、及びサフィックス、の各パラメータがいずれも一致することをいう。
【0073】
例えば、工具データC1(
図3)によると、対象の工作機械1が機械Aである場合、この機械Aの工具収納装置12には、呼び径35(サフィックスN)の外径用の旋削工具と、呼び径16(サフィックスG)の面取り工具と、を含む工具が既に取り付いている。そこで、プロセッサ33は、これらの各工具に相当する行(
図11の2行目及び5行目)を必要工具リストL1から削除し、当該削除後のリストを補充工具リストL2として生成する。言い換えると、上記ステップS7において、プロセッサ33は、必要工具リストL1に含まれる工具(必要工具)から、工具収納装置12に既に取り付いている工具(既設工具)を除くことにより、工具収納装置12への補充が必要な工具(補充工具)を抽出する。
【0074】
なお、工具データC1(
図3)によると、機械Aの工具収納装置12には呼び径12(サフィックスA)のエンドミルも取り付いているが、当該エンドミルはその状態が「寿命」であるため、既設工具には該当しない。このため、必要工具リストL1に当該エンドミルが含まれる場合、当該エンドミルはそのまま補充工具リストL2にもリストアップされる。
【0075】
次いで、プロセッサ33は、補充工具リストL2に工具を割り当てる(ステップS8)。具体的に、プロセッサ33は、補充工具リストL2に含まれる工具(補充工具)と同種の工具、つまり工具名、形状、呼び/呼び径、及びサフィックスがいずれも一致する工具が工場内に存在するか否かを工具データC1に基づき確認する。そして、そのような工具の存在が確認された場合に、当該工具を補充工具リストL2中の対応する工具に割り当てる。例えば、補充工具リストL2(
図12)の1行目の補充工具と同種の工具、つまり呼び径32(サフィックスN)の内径用の旋削工具が、工具室Aにあることが工具データC1によって判明した場合、プロセッサ33は、この工具室Aにある旋削工具を選択して上記1行目の補充工具に割り当てる。
【0076】
ただし、上記割り当てに際しては、工具データC1(
図3)の中でも工具グループのパラメータを用いた絞り込みが行われる。すなわち、既述のとおり、工具ホルダのテーパ形状の相違等の理由から工具の適用先が限定される場合があるため、プロセッサ33は、選択した工具が対象の工作機械1に適用可能であるか否かを工具グループのパラメータから判定し、仮に適用不可であることが判明した場合には、選択した当該工具を補充工具に割り当てる対象から除外する。
【0077】
また、補充工具に割り当て可能な工具が工場内に存在しないこと、つまり対象の工作機械1に適用可能でかつ補充工具と同種の工具が工場内に存在しないことが判明した場合、プロセッサ33は、これから作製される新規工具を補充工具に割り当てる。すなわち、プロセッサ33は、後述するステップS9の指示を受けた作業者が新たに作製する予定の工具である新規工具を補充工具に割り当てる。
【0078】
上記ステップS8を経て補充工具の割り当てが終了すると、プロセッサ33は、割り当てられた工具の準備を指示する指示画面を工具室2のPC21に表示させる(ステップS9)。例えば、PC21には、何の工具をどの工作機械1にいつまでに準備すべきかを示す指示画面が表示される。作業者は、この指示画面による指示に従って工具を準備する。
【0079】
例えば、工具室Aにある特定の種類のドリルが補充工具として割り当てられた場合、上記指示画面には、このドリルを機械Aに準備する指示が出される。これを受けた作業者は、工具室Aから機械Aまで上記ドリルを運搬する。一方、上記ドリルが工場内に存在しない(新規工具が割り当てられた)場合は、機械A用に上記ドリルを新たに作製する旨の指示が出される。これを受けて、作業者は、上記ドリルを作製して機械Aまで運搬する。なお、工具の運搬は、自動搬送機等を用いた自動搬送でもよいし、手作業による搬送でもよい。
【0080】
次いで、プロセッサ33は、常備工具設定情報D1(
図5)を取得する(ステップS10)。すなわち、プロセッサ33は、常備工具として設定された工具の情報(種類)と、当該常備工具の取付先として指定された常用ポケットの情報(ポケット番号)と、を含む常備工具設定情報D1を、当該情報が記憶されたメモリ34から取得する。
【0081】
次いで、プロセッサ33は、補充工具にポケットを割り当てる処理を実行する(ステップS11)。すなわち、プロセッサ33は、
図12の補充工具リストL2に含まれる各補充工具に対し、その取付先となるポケットをそれぞれ指定する処理を実行する。この処理の詳細は
図7~
図10を用いて後述する。
【0082】
次いで、プロセッサ33は、補充工具の取付けを指示する指示画面を対象の工作機械1のモニタ14に表示させる(ステップS12)。すなわち、プロセッサ33は、当該指示画面を介して、
図12に示した各補充工具を上記ステップS11で指定されたポケットに取り付けるようオペレータに指示する。
【0083】
図13は、モニタ14に表示される上記指示画面の一例を示す図である。本図に示すように、モニタ14には、上記指示画面として、対象の工作機械1を表す文字列P1と、当該工作機械1による次ワークの加工が開始される時期を表す文字列P2と、補充工具の種類及びその取付先のポケット番号を表す複数のアイコンQと、を含む情報が表示される。例えば、最も左上のアイコンQは、補充工具が呼び径12(サフィックスA)のエンドミルであり、その取付先が1番のポケットであることを表している。これにより、オペレータは、どの工作機械1の何番のポケットに何の工具をいつまでに取り付ければよいかを理解でき、その理解に従って各工具を取り付けることができる。なお、アイコンQの中に「取付要」又は「作製中」という文字が表示されているが、前者は工作機械1に既に工具が届いていることを意味し、後者は工具が現在作製中である(工作機械1まで届いていない)ことを意味する。
【0084】
次いで、プロセッサ33は、補充工具の取付けが終了したか否かを判定する(ステップS13)。すなわち、プロセッサ33は、上記ステップS12で指示された全ての補充工具が指定のポケットに実際に取り付けられたか否かを判定する。この判定は、各ポケットに取り付いた工具のIDを読み取る既述の読取り機を用いて行うことができる。
【0085】
上記ステップS13でNOと判定されて補充工具の取付けが未完であることが確認された場合、プロセッサ33は、上記ステップS12による指示画面の表示を継続する。一方、上記ステップS13でYESと判定されて補充工具の取付けが完了したことが確認された場合、フローはリターンされ、上記ステップS1以降の処理が繰り返される。
【0086】
図7~
図10は、上述したステップS11の処理の詳細を示すサブルーチンである。
図7のフローがスタートすると、プロセッサ33は、対象の工作機械1の工具収納装置12における各ポケットの情報を工具データC1等から取得する(ステップS21)。具体的に、プロセッサ33は、工具データC1及び常備工具設定情報D1に基づいて、工具収納装置12の各ポケットを次のステータスI~VIに分類する。
・ステータスI:常備工具の指定取付先である常用ポケットとして設定され、かつ状態異常(寿命又は折損等)の常備工具が取り付いているポケット。
・ステータスII:常用ポケットとして設定されているものの、現状では常備工具が取り付いていない空きのポケット。
・ステータスIII:常用ポケットとして設定され、かつ状態異常でない正常の常備工具が取り付いているポケット。
・ステータスIV:常用ポケットとして設定されておらず、かつ状態異常の工具が取り付いているポケット。
・ステータスV:常用ポケットとして設定されておらず、かつ空きのポケット。
・ステータスVI:常用ポケットとして設定されておらず、かつ状態異常でない正常な工具が取り付いているポケット。
【0087】
なお、ポケットがステータスI又はステータスIIにあることは、本発明における「常用ポケットが所定のNG状態に」あることに対応している。
【0088】
次いで、プロセッサ33は、優先情報D2(
図5)を取得する(ステップS22)。すなわち、プロセッサ33は、ポケットの優先順位に関する情報、つまり状態異常の工具が取り付いているポケットと空きのポケットとのいずれを工具取付先として優先するのかを示す優先情報D2を、当該情報が記憶されたメモリ34から取得する。
【0089】
次いで、プロセッサ33は、上記ステップS22で取得した優先情報D2に基づいて、ポケットの優先順位の設定が、状態異常の工具が取り付いているポケットを優先する設定になっているか否かを判定する(ステップS23)。なお、以下では適宜、状態異常の工具が取り付いているポケットのことを異常工具取付ポケットと称する。
【0090】
上記ステップS23でYESと判定されて異常工具取付ポケットを優先する設定になっていることが確認された場合、プロセッサ33は、上述したステータスIのポケットが存在するか否かを判定する(ステップS24)。すなわち、プロセッサ33は、対象の工作機械1の工具収納装置12の中に、状態異常の常備工具が取り付いている常用ポケットが存在するか否かを判定する。
【0091】
上記ステップS24でYESと判定されてステータスIの常用ポケットの存在が確認された場合、プロセッサ33は、当該常用ポケットに対応する常備工具と同種の工具が
図12の補充工具リストL2内に存在するか否かを判定する(ステップS25)。言い換えると、プロセッサ33は、ステータスIの常用ポケットに現在取り付いている状態異常の常備工具と同種の正常な工具が補充されるか否かを判定する。
【0092】
上記ステップS25でYESと判定されて上記常備工具と同種の工具の補充があることが確認された場合、プロセッサ33は、その補充工具に上記ステータスIの常用ポケットを割り当てる(ステップS26)。すなわち、プロセッサ33は、上記常備工具と同種の工具の取付先として、上記ステータスIの常用ポケットを指定する。
【0093】
例えば、1番のポケットが常用ポケットとして設定され、かつ当該1番ポケットに状態異常の常備工具が取り付いている場合、1番ポケットはステータスIに該当する。この場合、1番ポケットは、対応する常備工具と同種の工具が補充されることを条件に、当該補充工具の取付先として指定される。その結果、
図6のステップS12では、オペレータに対し1番ポケットへの工具の取り付け指示が出される。
図13の指示画面には、1番ポケットに対応する常備工具が呼び12(サフィックスA)のエンドミルであった場合に出される指示の一例が示される(最も左上のアイコンQ参照)。この指示を受けて、オペレータは、当該エンドミルを1番ポケットに取り付ける。つまり、1番ポケットの工具を、既に取り付いている状態異常のエンドミルから、正常のエンドミルに取り替える。
【0094】
一方、上記ステップS24,S25のいずれかでNOと判定された場合、つまり、ステータスIの常用ポケットが存在しないか、又は存在しても対応する常備工具と同種の工具の補充がない場合、プロセッサ33は、上述したステータスIIのポケットが存在するか否かを判定する(ステップS27)。すなわち、プロセッサ33は、対象の工作機械1の工具収納装置12の中に、指定された常備工具が取り付いていない空きの常用ポケットが存在するか否かを判定する。
【0095】
上記ステップS27でYESと判定されてステータスIIの常用ポケットの存在が確認された場合、プロセッサ33は、当該常用ポケットに対応する常備工具と同種の工具が
図12の補充工具リストL2内に存在するか否かを判定する(ステップS28)。言い換えると、プロセッサ33は、常備工具用のポケットであるにもかかわらず空きになっている常用ポケットに本来取り付けるべき常備工具と同種の工具が補充されるか否かを判定する。
【0096】
上記ステップS28でYESと判定されて上記常備工具と同種の工具の補充があることが確認された場合、プロセッサ33は、その補充工具に上記ステータスIIの常用ポケットを割り当てる(ステップS29)。すなわち、プロセッサ33は、上記常備工具と同種の工具の取付先として、上記ステータスIIの常用ポケットを指定する。
【0097】
例えば、1番ポケットが常用ポケットとして設定されたものの、その1番ポケットに対応する常備工具が未だ取り付いていない場合、1番ポケットはステータスIIに該当する。この場合、1番ポケットは、対応する常備工具と同種の工具が補充されることを条件に、当該補充工具の取付先として指定される。
【0098】
一方、上記ステップS27,S28のいずれかでNOと判定された場合、つまり、ステータスIIの常用ポケットが存在しないか、又は存在しても対応する常備工具と同種の工具の補充がない場合、プロセッサ33は、上述したステータスIVのポケットが存在するか否かを判定する(ステップS30)。すなわち、プロセッサ33は、対象の工作機械1の工具収納装置12の中に、常備工具用のポケット(常用ポケット)として設定されておらずかつ状態異常の工具が取り付いているポケットが存在するか否かを判定する。
【0099】
上記ステップS30でYESと判定されてステータスIVのポケットの存在が確認された場合、プロセッサ33は、補充工具リストL2内の工具に当該ステータスIVのポケットを割り当てる(ステップS31)。すなわち、プロセッサ33は、補充工具リストL2に含まれる補充工具の取付先として、上記ステータスIVのポケットを指定する。なお、ステータスIVのポケットと補充工具とがそれぞれ複数ある場合、両者の組合せは適宜設定し得る。例えば、番号の小さいポケットから順に割り当ててもよいし、ポケットをランダムに割り当ててもよい。このことは、後述するステップS33,S35,S48,S50,S52でも同様である。
【0100】
一方、上記ステップS30でNOと判定されてステータスIVのポケットが無いことが確認された場合、プロセッサ33は、上述したステータスVのポケットが存在するか否かを判定する(ステップS32)。すなわち、プロセッサ33は、対象の工作機械1の工具収納装置12の中に、常備工具用のポケット(常用ポケット)として設定されておらずかつ空きのポケットが存在するか否かを判定する。
【0101】
上記ステップS32でYESと判定されてステータスVのポケットの存在が確認された場合、プロセッサ33は、補充工具リストL2内の工具に当該ステータスVのポケットを割り当てる(ステップS33)。すなわち、プロセッサ33は、補充工具リストL2に含まれる補充工具の取付先として、上記ステータスVのポケットを指定する。
【0102】
一方、上記ステップS32でNOと判定されてステータスVのポケットが無いことが確認された場合、プロセッサ33は、上述したステータスVIのポケットであって使用予定のない工具(不要工具)が取り付いているポケットが存在するか否かを判定する(ステップS34)。すなわち、プロセッサ33は、対象の工作機械1の工具収納装置12の中に、常備工具用のポケット(常用ポケット)として設定されておらずかつ使用予定のない正常な工具が取り付いているポケットが存在するか否かを判定する。ここで、使用予定のない工具(不要工具)とは、次ワークの加工に使用しない工具であって、上述した必要工具リストL1(
図11)に含まれない工具のことである。
【0103】
上記ステップS34でYESと判定されて不要工具が取り付いたステータスVIのポケットの存在が確認された場合、プロセッサ33は、補充工具リストL2内の工具に当該ステータスVIのポケットを割り当てる(ステップS35)。すなわち、プロセッサ33は、補充工具リストL2に含まれる補充工具の取付先として、不要工具が取り付いたステータスVIのポケットを指定する。
【0104】
次に、上記ステップS23の判定がNOであった場合、つまり異常工具取付ポケットではなく空きのポケットに優先して工具を取り付ける設定になっている場合の制御について、
図9及び
図10を用いて説明する。この場合、プロセッサ33は、上述したステータスIIのポケットが存在するか否かを判定する(ステップS41)。すなわち、プロセッサ33は、対象の工作機械1の工具収納装置12の中に、指定された常備工具が取り付いていない空きの常用ポケットが存在するか否かを判定する。このように、空きのポケットが優先される本ケースでは、異常工具取付ポケットが優先される上述したケース(
図7)とは異なり、ステータスIIのポケットの有無がステータスIのポケットよりも先に確認される。
【0105】
上記ステップS41でYESと判定されてステータスIIの常用ポケットの存在が確認された場合、プロセッサ33は、当該常用ポケットに対応する常備工具と同種の工具が補充工具リストL2内に存在するか否かを判定する(ステップS42)。
【0106】
上記ステップS42でYESと判定されて上記常備工具と同種の工具の補充があることが確認された場合、プロセッサ33は、その補充工具に上記ステータスIIの常用ポケットを割り当てる(ステップS43)。
【0107】
一方、上記ステップS41,S42のいずれかでNOと判定された場合、つまり、ステータスIIの常用ポケットが存在しないか、又は存在しても対応する常備工具と同種の工具の補充がない場合、プロセッサ33は、上述したステータスIのポケットが存在するか否かを判定する(ステップS44)。すなわち、プロセッサ33は、対象の工作機械1の工具収納装置12の中に、状態異常の常備工具が取り付いている常用ポケットが存在するか否かを判定する。
【0108】
上記ステップS44でYESと判定されてステータスIの常用ポケットの存在が確認された場合、プロセッサ33は、当該常用ポケットに対応する常備工具と同種の工具が補充工具リストL2内に存在するか否かを判定する(ステップS45)。
【0109】
上記ステップS45でYESと判定されて上記常備工具と同種の工具の補充があることが確認された場合、プロセッサ33は、その補充工具に上記ステータスIの常用ポケットを割り当てる(ステップS46)。
【0110】
一方、上記ステップS44,S45のいずれかでNOと判定された場合、つまり、ステータスIの常用ポケットが存在しないか、又は存在しても対応する常備工具と同種の工具の補充がない場合、プロセッサ33は、上述したステータスVのポケットが存在するか否かを判定する(ステップS47)。すなわち、プロセッサ33は、対象の工作機械1の工具収納装置12の中に、常備工具用のポケット(常用ポケット)として設定されておらずかつ空きのポケットが存在するか否かを判定する。このように、空きのポケットが優先される本ケースでは、異常工具取付ポケットが優先される上述したケース(
図8)とは異なり、ステータスVのポケットの有無がステータスIVのポケットよりも先に確認される。
【0111】
上記ステップS47でYESと判定されてステータスVのポケットの存在が確認された場合、プロセッサ33は、補充工具リストL2内の工具に当該ステータスVのポケットを割り当てる(ステップS48)。
【0112】
一方、上記ステップS47でNOと判定されてステータスVのポケットが無いことが確認された場合、プロセッサ33は、上述したステータスIVのポケットが存在するか否かを判定する(ステップS49)。すなわち、プロセッサ33は、対象の工作機械1の工具収納装置12の中に、常備工具用のポケット(常用ポケット)として設定されておらずかつ状態異常の工具が取り付いているポケットが存在するか否かを判定する。
【0113】
上記ステップS49でYESと判定されてステータスIVのポケットの存在が確認された場合、プロセッサ33は、補充工具リストL2内の工具に当該ステータスIVのポケットを割り当てる(ステップS50)。
【0114】
一方、上記ステップ49でNOと判定されてステータスIVのポケットが無いことが確認された場合、プロセッサ33は、上述したステータスVIのポケットであって使用予定のない工具(不要工具)が取り付いているポケットが存在するか否かを判定する(ステップS51)。すなわち、プロセッサ33は、対象の工作機械1の工具収納装置12の中に、常備工具用のポケット(常用ポケット)として設定されておらずかつ使用予定のない正常な工具が取り付いているポケットが存在するか否かを判定する。
【0115】
上記ステップS51でYESと判定されて不要工具が取り付いたステータスVIのポケットの存在が確認された場合、プロセッサ33は、補充工具リストL2内の工具に当該ステータスVIのポケットを割り当てる(ステップS52)。
【0116】
以上のような
図7~
図10の処理を経てなされたポケットの割り当ては、上記ステップS12(
図6)の工具の補充指示に利用される。すなわち、プロセッサ33は、割り当てられたポケットに
図12の補充工具をそれぞれ取り付けるように、
図13の指示画面を通じてオペレータに指示を出す。
【0117】
なお、上述した
図6~
図10の処理において、ステップS1は本発明における「第1取得ステップ」又は「第1取得処理」に対応し、ステップS4は本発明における「第2取得ステップ」又は「第2取得処理」に対応し、ステップS10は本発明における「第3取得ステップ」又は「第3取得処理」に対応し、ステップS5~S7,S11は本発明における「演算ステップ」又は「演算処理」に対応し、ステップS12は本発明における「指示ステップ」又は「指示処理」に対応している。
【0118】
[作用効果]
以上説明したとおり、本実施形態では、工作機械1の工具収納装置12に補充すべき工具である補充工具が加工スケジュールB0及び工具データC1に基づき抽出され、抽出された当該補充工具に工具収納装置12のポケットがそれぞれ割り当てられ、割り当てられたポケットに補充工具を取り付ける指示がモニタ14を介して出力される。特に、工具収納装置12に常備する常備工具の設定がされている場合は、条件により、当該常備工具の指定の取付先である常用ポケットの割り当てが優先して行われる。具体的には、状態異常(寿命や折損等)の常備工具が取り付いている常用ポケット、又は空きの常用ポケットがある場合には、これらの常用ポケットの割り当てが先に行われ、その後、常用ポケット以外のポケットの割り当てが行われる。このような構成によれば、常備工具の供給(更新又は新規取付け)が必要な状況で当該常備工具を適切に供給できるという利点がある。
【0119】
すなわち、本実施形態では、加工スケジュールB0等から補充工具が抽出されるとともに、抽出された当該補充工具を工具収納装置12の割り当てられたポケットに取り付ける指示が出されるので、オペレータは、出された当該指示に従って工具を取り付けるだけで、次ワークの加工に必要な工具を簡単に揃えることができる。しかも、工具収納装置12に対し常備工具が設定されている場合でも、常備工具の取付先である常用ポケットの状態によっては、工具取付け指示の際に当該常用ポケットが優先的に割り当てられるので、常備工具の更新や新規取付けを必要に応じいち早く行うことができ、常備工具を正常な状態で常備することができる。
【0120】
例えば、状態異常の常備工具が取り付いている常用ポケットがある場合には、当該常用ポケットの割り当てが、常備工具用でない他のポケットよりも優先的に割り当てられるので、状態異常の常備工具を正常な常備工具にいち早く交換することができる。
【0121】
また、空きの常用ポケットがある場合にも、当該常用ポケットの割り当てが優先的に行われるので、常備工具が未だ取り付いていない空きの常用ポケットに本来あるべき常備工具をいち早く取り付けることができる。
【0122】
また、本実施形態では、状態異常の常備工具が取り付いた常用ポケットの割り当てと、空きの常用ポケットの割り当てと、のいずれを先に行うかを入力装置31を通じてサーバ32に登録可能であるため、状態異常の常備工具の更新を優先するか、未取付けの常備工具の新規取付けを優先するかを好み等に応じて選択することができる。
【0123】
[変形例]
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0124】
例えば、上記実施形態では、工作機械1の工具収納装置12に常備する常備工具を、オペレータが入力装置31を通じてサーバ32に登録するものとしたが、この常備工具の設定を自動化又は半自動化してもよい。例えば、工具収納装置に常備すれば生産効率が上がると予想される工具を過去の生産データ等に基づき抽出する処理、及び、抽出した工具を常備工具として設定するようオペレータに推奨する処理、を共にサーバ(プロセッサ)が行うように構成してもよい。あるいは、常備工具の設定処理までをサーバが行う構成とすることもできる。
【0125】
上記実施形態では、補充工具の工具収納装置12への取付けをオペレータが行うことを前提に、工具収納装置12のどのポケットに工具を取り付けるべきかをモニタ14を介してオペレータに指示するようにしたが、工具の取付けを自動で行う取付装置を別途用意して、当該取付装置に工具取付けの指示を出力してもよい。
【符号の説明】
【0126】
1 工作機械
3 工具管理装置
12 工具収納装置
32 サーバ(常備工具設定部、優先設定部)
33 プロセッサ(演算部、指示部)
34 メモリ(スケジュール記憶部、工具データ記憶部)
B0 加工スケジュール
C1 工具データ
D1 常備工具設定情報