(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012271
(43)【公開日】2024-01-30
(54)【発明の名称】車両内の運動軌道に沿って運動するボディの位置を特定する距離センサ装置
(51)【国際特許分類】
G01B 7/00 20060101AFI20240123BHJP
【FI】
G01B7/00 101M
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023116031
(22)【出願日】2023-07-14
(31)【優先権主張番号】10 2022 207 282.0
(32)【優先日】2022-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン クンツ
(72)【発明者】
【氏名】ヨナタン ハーフ
【テーマコード(参考)】
2F063
【Fターム(参考)】
2F063AA02
2F063BA11
2F063BB03
2F063CA09
2F063DA05
2F063DB01
2F063DB04
2F063DC08
2F063DD03
2F063DD05
2F063GA52
(57)【要約】 (修正有)
【課題】車両内の運動軌道BBに沿って運動するボディ3の位置を特定する距離センサ装置1に関する。
【解決手段】距離センサ装置1は、少なくとも運動するボディ3の距離にわたって、運動軌道BBに対して垂直に延在する少なくとも2つの相互に垂直な成分を有する磁界を形成する形成手段5と、形成された磁界の少なくとも2つの相互に垂直な成分に対して感度を有し、かつ、少なくとも1つの測定平面を展開して、運動軌道BB上の運動するボディ3の位置を相互に垂直な成分のうちの2つの成分の値対を特定する第1の測定手段と、少なくとも2つの相互に垂直な成分のうちの1つの成分の瞬時値を検出して切替点を算定するために閾値と比較する第2の測定手段とを備え、形成手段5又は測定手段は、相互に相対的に運動するために、運動するボディ3に接続されており、切替点は、運動軌道BBを基準とした第1の測定手段及び第2の測定手段を共通にアライメントする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内の運動軌道(BB)に沿って運動するボディ(3)の位置を特定する距離センサ装置(1)であって、
少なくとも前記運動するボディ(3)の距離にわたって、前記運動軌道(BB)に対して垂直に延在する少なくとも2つの相互に垂直な成分(Bx,By,Bz)を有する磁界を形成するように構成された形成手段(5)と、
形成された磁界の少なくとも2つの相互に垂直な成分(By,Bz)に対して感度を有し、かつ、少なくとも1つの測定平面を展開して、前記運動軌道(BB)上の前記運動するボディ(3)の位置を前記相互に垂直な成分のうちの2つの成分(By,Bz)の値対に依存して特定するように構成された第1の測定手段(16)と、
前記少なくとも2つの相互に垂直な成分(Bx,By,Bz)のうちの1つの成分の瞬時値を検出して切替点(SP)を算定するために閾値(SW)と比較するように構成された第2の測定手段(18)と、
を備え、
前記形成手段(5)又は前記測定手段(16,18)は、相互に相対的に運動するために、前記運動するボディ(3)に接続されるように規定されており、
前記切替点は、前記運動軌道(BB)を基準とした前記第1の測定手段(16)及び前記第2の測定手段(18)を共通にアライメントすることによって規定されている、
距離センサ装置(1)。
【請求項2】
前記測定手段(16,18)は、共通の回路支持体(13)上及び/又は共通の部品ケーシング(19A)内に配置されている、請求項1に記載の距離センサ装置(1)。
【請求項3】
前記共通の回路支持体(13)及び/又は前記共通の部品ケーシング(19A)は、前記第1の測定手段(16)の少なくとも1つの測定平面の法線に相当する軸線を中心として回転可能に構成されている、請求項2に記載の距離センサ装置(1)。
【請求項4】
前記運動軌道(BB)を基準とした前記共通の回路支持体(13)及び/又は前記共通の部品ケーシング(19A)の回転位置が、前記切替点を規定するために予め特定されている、請求項3に記載の距離センサ装置(1)。
【請求項5】
個々の前記値対の少なくとも2つの相互に垂直な成分(Bz,By)は、それぞれ差分によって、前記第1の測定手段(16)の、同一の空間方向において相互に空間的に離間された2つの測定エレメントが検出した2つの測定値から特定可能である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の距離センサ装置(1)。
【請求項6】
前記第1の測定手段(16)は、前記磁界の少なくとも2つの相互に垂直に延在する成分(By,Bz)に対して感度を有する磁気角度センサ(16A)と、前記磁気角度センサ(16A)の出力信号を受信して対応する磁気角度値として伝送し、各磁気角度値に対して前記運動するボディ(3)の位置を算定するように構成された第1の評価制御ユニット(14A)とを含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の距離センサ装置(1)。
【請求項7】
前記運動するボディ(3)の現在の位置を算定することは、2つの相互に垂直な成分(Bz,By)の逆正接関数又は近似された逆正接関数に基づいて行われる、請求項6に記載の距離センサ装置(1)。
【請求項8】
前記第2の測定手段(18)は、前記磁界の少なくとも2つの相互に垂直に延在する成分(By,Bz)のうちの1つの成分に対して感度を有し、かつ、有効磁束密度の瞬時値を検出するように構成された磁束密度センサ(18A)と、前記有効磁束密度の瞬時値と前記閾値(SW)とを比較して、設定された切替点(SP)に到達したかどうかを算定するように構成された第2の評価制御ユニット(14B)とを含み、
前記第2の評価制御ユニット(14B)はさらに、前記設定された切替点に到達した場合に少なくとも1つの作動信号を出力するように構成されている、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の距離センサ装置(1)。
【請求項9】
第1の作動信号が、ウェイクアップ信号として少なくとも前記第1の評価制御ユニット(14A)を作動させるように決定される、請求項8に記載の距離センサ装置(1)。
【請求項10】
前記運動軌道(BB)は、前記運動するボディ(3)の直線運動又は円運動を設定している、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の距離センサ装置(1)。
【請求項11】
前記形成手段(5)が少なくとも2つの磁石(5A,5B)を有し、前記磁石(5A,5B)の磁軸は、相互に反対の向きを有する、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の距離センサ装置(1)。
【請求項12】
前記少なくとも2つの磁石(5A,5B)は、直線状の運動軌道(BB)に対して平行に延在するように又は円状の運動軌道に接して延在するように、同一の直線方向に延在しており、
前記磁石(5A,5B)は、前記直線状の運動軌道(BB)に沿って又は前記円状の運動軌道に接する方向に沿って、相互に離間されて配置されている、
請求項11に記載の距離センサ装置(1)。
【請求項13】
前記形成手段(5)は、特別な磁化部を有する少なくとも1つの磁石(5A,5B)を有する、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の距離センサ装置(1)。
【請求項14】
ブレーキペダル(3A)を含むブレーキシステムを備えた車両であって、前記ブレーキペダル(3A)の位置が、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の距離センサ装置(1)によって特定される、車両。
【請求項15】
第2の作動信号が、前記車両のブレーキライト機能を作動させるために決定される、請求項14に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両内の運動軌道に沿って運動するボディの位置を特定する距離センサ装置に関する。また、本発明は、ブレーキペダルの位置を特定するこうした距離センサ装置を備えた車両も対象とする。
【背景技術】
【0002】
従来技術によれば、車両内のペダル、特にブレーキペダルのペダル距離を検出するために、磁気リニア距離センサが2次元平面における磁束密度ベクトルの磁気角度を評価する。適当な変換プロセスによって、磁気角度が、ペダル距離を表す線形の出力信号へと変換される。一般にASIC(特定用途向け集積回路)として構成されている市販入手可能な評価制御回路の高い電力消費のために、システムを静止状態から起動させるウェイクアップ機能が使用されている。
【0003】
独国特許出願公開第102008006238号明細書から、運動しているボディの位置を特定するための、軌道に沿って運動する磁気センサが公知である。当該センサは、相互に垂直であって一方が軌道に対して垂直に延在する2つの成分を有する磁気誘導の形成を保証する形成手段と、磁気誘導の相互に垂直な2つの成分に対して感度を有し、運動しているボディの位置を当該2つの成分の誘導値対に依存して特定する測定手段とを含む。磁気誘導の形成手段は、相互に反対の向きを有する磁軸を有する少なくとも2つの磁石を含み、ここで、少なくとも2つの磁石は、直線状の軌道に対して平行に延在するように又は円状の軌道に接して延在するように、同一の直線方向に延在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102008006238号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の開示
独立請求項1の特徴を有する、車両内の運動軌道に沿って運動するボディの位置を特定する距離センサ装置は、第2の測定手段により、磁束密度に基づいて、運動軌道に依存する切替機能又は作動機能を設定可能な切替点において実現することができるという利点を有する。有利には、距離センサ装置の第1の測定手段及び第2の測定手段を共通にアライメントすることにより、切替点が所望の位置又は設定された位置に位置して運動軌道が長い場合にも切替点に到達しないように、運動軌道にわたって測定された磁界の延在特性を最適化することが可能となる。
【0006】
本発明に係る距離センサ装置の実施形態は、例えば、運動するボディに結合された車両のブレーキペダルであって、そのペダル距離により運動するボディの運動軌道が設定されるブレーキペダルに対して使用可能である。切替機能又は作動機能は、例えば、ブレーキペダルにより設定された切替点において作動可能となるウェイクアップ機能及び/又はブレーキライト機能であり得る。ウェイクアップ機能により、例えば対応する車両の電気システムをブレーキペダルによって簡単に作動させることができる。ブレーキライト機能は、例えば、手動により起動された制動過程を表示するために、ブレーキライトを作動させるためのフォールバック手段として使用可能である。距離センサ装置の第1の測定手段及び第2の測定手段を共通にアライメントすることにより、切替点の位置を様々な要求に合わせて容易に調整することができる。これにより、車両システムを作動させるためのウェイクアップ機能とブレーキライト機能との双方を実現することができる。なぜなら、ブレーキライトは、ブレーキペダルの運動軌道又はペダル距離が長い場合にも作動させられたままであり、再消灯されることはないからである。したがって、ウェイクアップ機能及びブレーキライト機能の実現は、従来の単一の磁気切替エレメントによって行うことができ、このことにより、大幅なコスト削減が可能となる。
【0007】
本発明の実施形態は、車両内の運動軌道に沿って運動するボディの位置を特定する距離センサ装置を提供するものであり、当該距離センサ装置は、少なくとも運動するボディの距離にわたって、運動軌道に対して垂直に延在する少なくとも2つの相互に垂直な成分を有する磁界を形成するように構成された形成手段と、形成された磁界の少なくとも2つの相互に垂直な成分に対して感度を有し、かつ、少なくとも1つの測定平面を展開して、運動軌道上の運動するボディの位置を相互に垂直な成分のうちの2つの成分の値対に依存して特定するように構成された第1の測定手段と、少なくとも2つの相互に垂直な成分のうちの1つの成分の瞬時値を検出して切替点を算定するために閾値と比較するように構成された第2の測定手段とを備える。形成手段又は測定手段は、相互に相対的に運動するために、運動するボディに接続されるように規定されている。ここで、切替点は、運動軌道を基準とした第1の測定手段及び第2の測定手段を共通にアライメントすることによって規定されている。
【0008】
加えて、ブレーキペダルを含むブレーキシステムを備えた車両が提案される。この場合、ブレーキペダルの位置が、当該距離センサ装置によって特定される。
【0009】
以下においては、第1の測定手段とは、相互に垂直な少なくとも2つの測定方向に感度を有するように構成された少なくとも1つの測定エレメントを備えた測定装置であると理解される。好適には、第1の測定手段は、共通の部品内に配置されておりかつそれぞれ好ましい測定方向に感度を有するように構成された少なくとも2つの測定エレメントを含み、ここで、それぞれ異なる測定エレメントの好ましい測定方向は、相互に垂直に延在している。この場合、少なくとも2つの測定エレメントの測定方向は、共通の測定平面を展開することができ、又は、相互に平行に延在する法線を有する相互にシフトされた測定平面内に配置することもできる。さらに、第1の測定手段は、磁界のうち検出すべき相互に垂直な成分のそれぞれに対して2つずつの測定エレメントを有し得るものであり、これら2つずつの測定エレメントは、同一の空間方向において相互に離間して配置されている。
【0010】
以下においては、第2の測定手段とは、好ましい測定方向に感度を有するように構成された少なくとも1つの測定エレメントを備えた測定装置であると理解される。
【0011】
各従属請求項に記載されている措置及び発展形態により、独立請求項1に記載の距離センサ装置及び独立請求項13に記載の車両の有利な改善形態が得られる。
【0012】
特に有利には、測定手段は、共通の回路支持体上及び/又は共通の部品ケーシング内に配置可能である。この場合、共通の回路支持体及び/又は共通の部品ケーシングは、第1の測定手段の少なくとも1つの測定平面の法線に相当する軸線を中心として回転可能に構成することができる。これにより、有利には、共通の回路支持体及び/又は共通の部品ケーシングの機械的傾倒又は機械的回転によって切替点を容易にシフトさせることができる。通常、測定手段は、形成手段の表面に対して平行に配向されて固定されており、従来のシステムの機械的構造のため、こうした設定位置を変更することはできない。共通の回路支持体及び/又は共通の部品ケーシングが運動軌道を基準として機械的に傾倒可能又は回転可能であることにより、顧客の要求に応じて、切替点を傾倒角度又は回転角度に依存して最適に調整することができる。正の角度への傾倒又は回転によっては、可能な切替点は、比較的小さい距離までしか移動しない。
【0013】
距離センサ装置の有利な構成においては、切替点を規定するために、運動軌道を基準とした共通の回路支持体及び/又は共通の部品ケーシングの回転位置を予め特定することができる。このことは、設定されたシステム設計のために、例えば、シミュレーション及び/又は実験的構築を使用して行うことができる。好適には、切替点への組込み誤差の影響を最小化するために、製造ラインの終了部において切替閾値をさらに個別に較正することができる。
【0014】
距離センサ装置の他の有利な構成においては、個々の値対の少なくとも2つの相互に垂直な成分を、それぞれ差分によって、第1の測定手段の、同一の空間方向において相互に空間的に離間された2つの測定エレメントが検出し得る2つの測定値から特定することができる。少なくとも2つの相互に垂直な成分のこのような差分検出によって、磁界成分の検出を干渉磁界に対してロバストに行うことができる。
【0015】
距離センサ装置の他の有利な構成においては、第1の測定手段は、磁界の少なくとも2つの相互に垂直に延在する成分に対して感度を有する磁気角度センサと、磁気角度センサの出力信号を受信して対応する磁気角度値として伝送し、各磁気角度値に対して運動するボディの位置を算定するように構成された第1の評価制御ユニットとを含み得る。この場合、磁界の第1の成分の測定値は磁気角度の正弦値を表現し、磁界の第2の成分の測定値は磁気角度の余弦値を表現することができる。磁気角度センサは、好適には、少なくとも2つの検出方向を有するホールセンサとして構成されている。運動するボディの現在の位置を算定することは、好適には、2つの相互に垂直な成分の逆正接関数又は近似された逆正接関数に基づいて行われ得る。近似された逆正接関数は、好適には線形化された逆正接関数に相当する。
【0016】
距離センサ装置の他の有利な構成においては、第2の測定手段は、磁界の少なくとも2つの相互に垂直に延在する成分のうちの1つの成分に対して感度を有し、かつ、有効磁束密度の瞬時値を検出するように構成された磁束密度センサと、有効磁束密度の瞬時値と閾値とを比較して、設定された切替点に到達したかどうかを算定するように構成された第2の評価制御ユニットと、を含み得る。この場合、第2の評価制御ユニットはさらに、設定された切替点に到達した場合に少なくとも1つの作動信号を出力するように構成可能である。ここで、第1の作動信号は、例えば、ウェイクアップ信号として少なくとも第1の評価制御ユニットを作動させるように決定可能である。もちろん、他の電気システム又は電子システムを、相応の作動信号によって作動させる又は起動させることもできる。ここで、例えば、第2の作動信号は、車両のブレーキライト機能を作動させるように決定可能である。磁束密度センサは、好適には、検出方向を有するホールセンサとして構成される。
【0017】
第1の評価制御ユニット及び第2の評価制御ユニットは、本明細書においては、検出されたセンサ信号を調整又は処理又は評価し得る電気モジュール又は電気回路であると理解することができる。評価制御ユニットは、それぞれ、ハードウェア及び/又はソフトウェアによって構成可能な少なくとも1つのインタフェースを有し得る。ハードウェアによる構成においては、インタフェースは、例えば、個々の評価制御ユニットの様々な機能を含むいわゆるシステムASICの一部であるものとしてよい。また、インタフェースを固有の集積回路とすること又は少なくとも部分的に個別の部品から構成することも可能である。ソフトウェアによる構成においては、インタフェースは、例えば他のソフトウェアモジュールと並んでマイクロコントローラ上に設けられるソフトウェアモジュールであるものとしてよい。また、半導体メモリ、ハードディスクメモリ又は光学メモリなどの機械可読媒体上に記憶されており、プログラムが第1の評価制御ユニット及び/又は第2の評価制御ユニット及び/又は上位の制御装置によって実行される際に評価を実行するために使用されるプログラムコードを含む、コンピュータプログラム製品も有利である。
【0018】
距離センサ装置の他の有利な構成においては、運動軌道は、例えば、運動するボディの直線運動又は円運動を設定可能である。
【0019】
距離センサ装置のさらなる有利な構成においては、形成手段は、少なくとも2つの磁石を有し得るものであり、各磁石の磁軸は、相互に反対の向きを有する。ここで、少なくとも2つの磁石は、直線状の運動軌道に対して平行に延在するように又は円状の運動軌道に接して延在するように、同一の方向に延在するものとしてよい。各磁石は、直線状の運動軌道に沿って又は円状の運動軌道に接する方向に沿って、相互に離間されて配置可能である。形成手段のこうした実施形態は、磁気角度センサと組み合わせられて、運動軌道上でのボディの位置特定に特に良好に適している。代替的に、形成手段は、少なくとも2つの相互に垂直な成分を有する磁界を形成するために、特別な磁化部、例えば表面磁化部又は螺旋状磁化部を有する少なくとも1つの磁石を有し得る。
【0020】
本発明の実施例を図面に示し、以下の説明において詳細に説明する。図面においては、同一又は類似の機能を実行する構成要素又は要素に同一の参照符号を付してある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る、車両内の運動軌道に沿って運動するボディの位置を特定する距離センサ装置の一実施例を示す概略図である。
【
図2】
図1の本発明に係る距離センサ装置のための電子部品の一実施例を示す概略図である。
【
図3】
図1の運動するボディが走破した距離に依存する種々の磁束密度の推移を示す磁束密度-距離特性曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の実施形態
図1乃至
図3から見て取れるように、本発明に係る、車両内の運動軌道BBに沿って運動するボディ3の位置を特定する距離センサ装置1の図示の実施例は、少なくとも運動するボディ3の距離にわたって、運動軌道BBに対して垂直に延在する少なくとも2つの相互に垂直な成分Bx,By,Bzを有する磁界を形成する形成手段5と、形成された磁界の少なくとも2つの相互に垂直な成分By,Bzに対して感度を有し、かつ、少なくとも1つの測定平面を展開して、運動軌道BB上の運動するボディ3の位置を相互に垂直な成分のうちの2つの成分By,Bzの値対に依存して特定する第1の測定手段16と、少なくとも2つの相互に垂直な成分Bx,By,Bzのうちの1つの成分の瞬時値を検出して切替点SPを算定するために閾値SWと比較する第2の測定手段18と、を備える。形成手段5又は測定手段16,18は、相互に相対的に運動するために、運動するボディ3に接続されるように規定されている。ここで、切替点SPは、運動軌道BBを基準とした第1の測定手段16及び第2の測定手段18を共通にアライメントすることによって規定されている。
【0023】
図示の実施例においては、運動するボディ3は、車両のブレーキシステムの詳細には図示されていないブレーキペダルに結合されたピストン3Aに相当する。運動軌道BBは、図示の実施例においては、ブレーキシステムの液圧機構9内において摺動可能に支持されているピストン3Aの直線運動を設定している。ここで、Sは、ピストン3Aが走破した距離に相当し、この距離が、ブレーキペダルのペダル距離に対応する。
【0024】
図1からさらに見て取れるように、形成手段5は、2つの磁石5A,5Bを有し、これらの磁石5A,5Bの磁軸は相互に反対の向きを有する。図示の実施例においては、形成手段5の2つの磁石5A,5Bは、ピストン3A内に配置されており、直線状の運動軌道BBに対して平行に延在する同一の直線方向に延在している。図示されている2つの磁石5A,5Bの有効表面は、x-y平面内にある。磁石5A,5Bは、直線状の運動軌道BBに沿って又は長手方向yにおいて設定された相互間隔を有する。
【0025】
距離センサ装置1の図示されていない代替的な実施例においては、運動軌道BBは、運動するボディ3の円運動を設定する。当該代替的な実施例においては、2つの磁石5A,5Bは、円状の運動軌道に接して延在する同一の直線方向に延在する。磁石5A,5Bは、円状の運動軌道に接する方向に沿って設定された相互間隔を有する。
【0026】
図1及び
図2からさらに見て取れるように、測定手段16,18はセンサユニット10の一部であり、このセンサユニット10の円筒状のケーシング12は、車両ブレーキシステムの液圧機構9の収容孔9.1内に配置されている。特に
図2から見て取れるように、第1の測定手段16及び第2の測定手段18は、電子部品19の共通の部品ケーシング19A内に配置されており、当該電子部品19は、ここでは特定用途向け集積回路(ASIC)として構成されており、回路支持体13上に配置されている。このように、収容孔9.1は、共通の部品ケーシング19Aと形成手段5の磁石5A,5Bとの間に設定された高さで空隙7が生じるように、液圧機構9内に設けられている。
図2からさらに見て取れるように、第1の測定手段16は、図示の実施例においては、磁界の長手方向yに延在する第1の成分Byと磁界の高さ方向zに延在する第2の成分とに対して感度を有する磁気角度センサ16Aを含み、ここで、第1の成分Byと第2の成分Bzとは、相互に垂直に延在している。また、第1の測定手段16は、磁気角度センサ16Aの出力信号を受信して対応する磁気角度値として伝送し、各磁気角度値に対して、距離Sに沿った運動するボディ3の位置を特定する第1の評価制御ユニット14Aを含む。図示の実施例においては、磁界の第1の成分Byの測定値は、磁気角度の正弦値を表現しており、磁界の第2の成分Bzの測定値は、磁気角度の余弦値を表現している。運動するボディ3の現在の位置を算定することは、図示の実施例においては、2つの相互に垂直な成分Bz,Byの線形化された逆正接関数に基づいて行われる。第2の測定手段18は、図示の実施例においては、磁界の少なくとも2つの相互に垂直に延在する成分By,Bzのうちの1つの成分に対して感度を有し、磁界の長手方向yに延在する第1の成分Byに対応する有効磁束密度の瞬時値を検出する磁束密度センサ18Aと、有効磁束密度又は第1の成分Byの瞬時値と閾値SWとを比較し、設定された切替点SPに到達しているかどうかを算定する第2の評価制御ユニット14Bと、を含む。さらに、第2の評価制御ユニット14Bは、設定された切替点SPに到達した際に、少なくとも1つの作動信号を出力する。図示の実施例においては、第2の評価制御ユニット14Bは、少なくとも第1の評価制御ユニット14Aを作動させるために、第1の作動信号をウェイクアップ信号として出力する。もちろん、他の電気システム又は電子システムを、相応の作動信号によって作動させる又は起動させることもできる。さらに、第2の評価制御ユニット14Bは、車両のブレーキライト機能を作動させる第2の作動信号を出力する。
【0027】
図示の実施例においては、磁気角度センサ16A及び第1の評価制御ユニット14A並びに磁束密度センサ18A及び第2の評価制御ユニット14Bは、共通の電子部品19として構成されており、これは、好適には成形体ケーシングとして構成された共通の部品ケーシング19A内に配置されている。代替的に、磁気角度センサ16A及び第1の評価制御ユニット14Aを第1の電子部品として構成して第1の部品ケーシング内に配置し、磁束密度センサ18A及び第2の評価制御ユニット14Bを第2の電子部品として構成して第2の部品ケーシング内に配置するものとしてもよい。また、第1の電子部品及び第2の電子部品が共通の部品ケーシング内に配置されるものとしてもよい。他の代替手段として、2つの評価制御ユニット14A,14Bを共通の部品ケーシング19Aの外部のプリント回路板13上に配置することもできる。
【0028】
図2からさらに見て取れるように、磁気角度センサ16Aと磁束密度センサ18Aとは、長手方向yにおいて所定の間隔をおいて並ぶように配置されている。図示されていない代替的な実施例においては、磁気角度センサ16Aと磁束密度センサ18Aとは、横断方向xにおいて所定の間隔をおいて並ぶように配置される。
【0029】
図示されていない距離センサ装置1の代替的な実施例においては、個々の値対の相互に垂直な2つの成分Bz,Byが2つの測定値からそれぞれ差分によって特定される。このことは、第1の測定手段16の、同一の空間方向において空間的に相互に離間されて配置されたそれぞれ2つの測定エレメントがそれぞれ2つずつの測定値を検出し、これら2つの測定値から対応する測定値が差分形成によって特定されることを意味している。
【0030】
以下においては、
図1及び
図3を参照して、第1の測定手段16及び第2の測定手段18の共通のアライメント過程を説明する。図示の実施例においては、回路支持体13は、センサユニット10のケーシング12に相対回動不能に接続されている。したがって、共通の回路支持体13及び共通の部品ケーシング19Aは、センサユニット10のケーシング12と共に、第1の測定手段16の少なくとも1つの測定平面の法線に相当する回転軸線を中心として回転させることができる。図示の実施例においては、回転軸線は、横断方向xに延在している。この場合、図示の実施例においては、切替点を規定するための運動軌道BBを基準とした、共通の回路支持体13及び共通の部品ケーシング19Aを有するセンサユニット10のケーシング12の回転位置が、予めシミュレーションによって特定される。第1の測定手段16及び第2の測定手段18の共通のアライメント過程を明確にするために、
図1には、正の方向(+)又は負の方向(-)に傾倒又は回転させ得るニードル状の位置表示部11が示されている。
図3には、磁界の第2の成分に対応する高さ方向zの磁束密度が実線の特性曲線Bzとして、情報としてのみ示されている。磁界の第2の成分に対応する長手方向yにおいて又は運動軌道BBに沿って延在する磁束密度Byに対し、センサユニット10又はセンサケーシング12の傾倒角度に依存して、複数の特性曲線By_0,By_5,By_10,By_15,By_-5,By_-10,By_-15が示されている。傾倒角度に応じて、切替点SPを顧客要求に従って調整することができる。ここでは、実線の特性曲線By_0は、0°の傾倒角度での長手方向yにおける又は運動軌道BBに沿った磁束密度の推移を示している。対応する閾値との交点が切替点SPとして示されている。破線で示されている特性曲線By_5は、反時計回り方向の5°の傾倒角度での長手方向yにおける又は運動軌道BBに沿った磁束密度の推移を示している。一点鎖線で示されている特性曲線By_10は、反時計回り方向の10°の傾倒角度での長手方向yにおける又は運動軌道BBに沿った磁束密度の推移を示している。点線で示されている特性曲線By_15は、反時計回り方向の15°の傾倒角度での長手方向y又は運動軌道BBに沿った磁束密度の推移を示している。反時計回りの正の角度の傾倒によって、可能な切替点は、長手方向yにおける又は運動軌道BBに沿った磁束密度の推移のシフトに基づいて、より短い距離Sへと移動する。短い破線で示されている特性曲線By_-5は、時計回り方向の-5°の傾倒角度での長手方向yにおける又は運動軌道BBに沿った磁束密度の推移を示している。長い破線で示されている特性曲線By_-10は、時計回り方向の-10°の傾倒角度での長手方向yにおける又は運動軌道BBに沿った磁束密度の推移を示している。長い一点鎖線で示されている特性曲線By_-15は、時計回り方向の-15°の傾倒角度での長手方向y又は運動軌道BBに沿った磁束密度の推移を示している。時計回り方向の負の角度の傾倒によって、可能な切替点は、長手方向yにおける又は運動軌道BBに沿った磁束密度の推移のシフトに基づいて、より長い距離Sへと移動する。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内の運動軌道(BB)に沿って運動するボディ(3)の位置を特定する距離センサ装置(1)であって、
少なくとも前記運動するボディ(3)の距離にわたって、前記運動軌道(BB)に対して垂直に延在する少なくとも2つの相互に垂直な成分(Bx,By,Bz)を有する磁界を形成するように構成された形成手段(5)と、
形成された磁界の少なくとも2つの相互に垂直な成分(By,Bz)に対して感度を有し、かつ、少なくとも1つの測定平面を展開して、前記運動軌道(BB)上の前記運動するボディ(3)の位置を前記相互に垂直な成分のうちの2つの成分(By,Bz)の値対に依存して特定するように構成された第1の測定手段(16)と、
前記少なくとも2つの相互に垂直な成分(Bx,By,Bz)のうちの1つの成分の瞬時値を検出して切替点(SP)を算定するために閾値(SW)と比較するように構成された第2の測定手段(18)と、
を備え、
前記形成手段(5)又は前記測定手段(16,18)は、相互に相対的に運動するために、前記運動するボディ(3)に接続されるように規定されており、
前記切替点は、前記運動軌道(BB)を基準とした前記第1の測定手段(16)及び前記第2の測定手段(18)を共通にアライメントすることによって規定されている、
距離センサ装置(1)。
【請求項2】
前記測定手段(16,18)は、共通の回路支持体(13)上及び/又は共通の部品ケーシング(19A)内に配置されている、請求項1に記載の距離センサ装置(1)。
【請求項3】
前記共通の回路支持体(13)及び/又は前記共通の部品ケーシング(19A)は、前記第1の測定手段(16)の少なくとも1つの測定平面の法線に相当する軸線を中心として回転可能に構成されている、請求項2に記載の距離センサ装置(1)。
【請求項4】
前記運動軌道(BB)を基準とした前記共通の回路支持体(13)及び/又は前記共通の部品ケーシング(19A)の回転位置が、前記切替点を規定するために予め特定されている、請求項3に記載の距離センサ装置(1)。
【請求項5】
個々の前記値対の少なくとも2つの相互に垂直な成分(Bz,By)は、それぞれ差分によって、前記第1の測定手段(16)の、同一の空間方向において相互に空間的に離間された2つの測定エレメントが検出した2つの測定値から特定可能である、請求項1に記載の距離センサ装置(1)。
【請求項6】
前記第1の測定手段(16)は、前記磁界の少なくとも2つの相互に垂直に延在する成分(By,Bz)に対して感度を有する磁気角度センサ(16A)と、前記磁気角度センサ(16A)の出力信号を受信して対応する磁気角度値として伝送し、各磁気角度値に対して前記運動するボディ(3)の位置を算定するように構成された第1の評価制御ユニット(14A)とを含む、請求項1に記載の距離センサ装置(1)。
【請求項7】
前記運動するボディ(3)の現在の位置を算定することは、2つの相互に垂直な成分(Bz,By)の逆正接関数又は近似された逆正接関数に基づいて行われる、請求項6に記載の距離センサ装置(1)。
【請求項8】
前記第2の測定手段(18)は、前記磁界の少なくとも2つの相互に垂直に延在する成分(By,Bz)のうちの1つの成分に対して感度を有し、かつ、有効磁束密度の瞬時値を検出するように構成された磁束密度センサ(18A)と、前記有効磁束密度の瞬時値と前記閾値(SW)とを比較して、設定された切替点(SP)に到達したかどうかを算定するように構成された第2の評価制御ユニット(14B)とを含み、
前記第2の評価制御ユニット(14B)はさらに、前記設定された切替点に到達した場合に少なくとも1つの作動信号を出力するように構成されている、
請求項1に記載の距離センサ装置(1)。
【請求項9】
第1の作動信号が、ウェイクアップ信号として少なくとも前記第1の評価制御ユニット(14A)を作動させるように決定される、請求項8に記載の距離センサ装置(1)。
【請求項10】
前記運動軌道(BB)は、前記運動するボディ(3)の直線運動又は円運動を設定している、請求項1に記載の距離センサ装置(1)。
【請求項11】
前記形成手段(5)が少なくとも2つの磁石(5A,5B)を有し、前記磁石(5A,5B)の磁軸は、相互に反対の向きを有する、請求項1に記載の距離センサ装置(1)。
【請求項12】
前記少なくとも2つの磁石(5A,5B)は、直線状の運動軌道(BB)に対して平行に延在するように又は円状の運動軌道に接して延在するように、同一の直線方向に延在しており、
前記磁石(5A,5B)は、前記直線状の運動軌道(BB)に沿って又は前記円状の運動軌道に接する方向に沿って、相互に離間されて配置されている、
請求項11に記載の距離センサ装置(1)。
【請求項13】
前記形成手段(5)は、表面磁化部又は螺旋状磁化部を有する少なくとも1つの磁石(5A,5B)を有する、請求項1に記載の距離センサ装置(1)。
【請求項14】
ブレーキペダル(3A)を含むブレーキシステムを備えた車両であって、前記ブレーキペダル(3A)の位置が、請求項1に記載の距離センサ装置(1)によって特定される、車両。
【請求項15】
前記第2の測定手段(18)は、前記磁界の少なくとも2つの相互に垂直に延在する成分(By,Bz)のうちの1つの成分に対して感度を有し、かつ、有効磁束密度の瞬時値を検出するように構成された磁束密度センサ(18A)と、前記有効磁束密度の瞬時値と前記閾値(SW)とを比較して、設定された切替点(SP)に到達したかどうかを算定するように構成された第2の評価制御ユニット(14B)とを含み、
前記第2の評価制御ユニット(14B)はさらに、前記設定された切替点に到達した場合に少なくとも1つの作動信号を出力するように構成されており、
第1の作動信号が、ウェイクアップ信号として少なくとも前記第1の評価制御ユニット(14A)を作動させるように決定され、
第2の作動信号が、前記車両のブレーキライト機能を作動させるために決定される、請求項14に記載の車両。
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【外国語明細書】