(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122712
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/08 20060101AFI20240902BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
B23Q11/08 Z
B23Q11/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030401
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(72)【発明者】
【氏名】天野 真仁
(72)【発明者】
【氏名】山本 将央
【テーマコード(参考)】
3C011
【Fターム(参考)】
3C011DD03
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、切粉がコラムの上面に堆積することを防止できる工作機械を提供する。
【解決手段】工作機械1は、ベース2、コラム5、主軸ヘッド6、コラムカバー50を有する。ベース2は、平面視略矩形状の鉄製土台である。コラム5は、X軸移動機構11、Z軸移動機構12を介してベース2の上面の後部に支持される。コラム5は、上下方向に延びる立柱である。主軸ヘッド6は、Y軸移動機構を介してコラム5の前側に支持される。コラムカバー50は、コラム5の上部に設けられる。コラムカバー50は、コラム5の上側を覆いかつ後下方に傾斜した傾斜面51を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、
主軸を保持する主軸ヘッドと、
前記基台の上部に設けられ、前記主軸ヘッドを支持するコラムと、
前記コラムの上側を覆いかつ水平方向に対して傾斜した傾斜面を有するコラムカバーと
を備えることを特徴とする工作機械。
【請求項2】
前記主軸ヘッドを上下方向に移動させる駆動機構と、
前記コラムカバーに対して一方側に位置しており、前記主軸ヘッドに固定されると共に上方に延び、前記駆動機構の駆動により前記主軸ヘッドと一体で上下方向に移動するスライドカバーとを備え、
前記スライドカバーの上端は、前記主軸ヘッドが上下方向の移動範囲における上端に位置する場合に、前記傾斜面よりも上側に位置すること
を特徴とする請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記スライドカバーの前記一方側に当接する当接部材を備えることを特徴とする請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記当接部材は、前記コラムの上端部であって、左右方向の両側に設けられることを特徴とする請求項3に記載の工作機械。
【請求項5】
前記当接部材は、
本体部と、
前記本体部に設けられ、上下方向に移動する前記スライドカバーの前記一方側に摺動される摺動部と
を有することを特徴とする請求項3又は4に記載の工作機械。
【請求項6】
前記摺動部は、樹脂で形成されることを特徴とする請求項5に記載の工作機械。
【請求項7】
前記駆動機構は、
モータと、
前記コラムの内側に設けられ、前記モータの駆動により軸周りに回転するボールネジと、
前記ボールネジに螺合しかつ前記主軸ヘッドに固定され、前記ボールネジの回転に伴って上下方向に移動するナットと
を有し、
前記スライドカバーは、前記ボールネジの前記一方側を覆うこと
を特徴とする請求項2に記載の工作機械。
【請求項8】
前記傾斜面は、前記主軸ヘッドから離隔する方向に向かって下方に傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の工作機械。
【請求項9】
前記コラムを間にして前記主軸ヘッドと反対側に設けられ、前記工作機械の動作を制御する制御装置を収納する制御箱を備え、
前記コラムカバーは、前記制御箱から離隔していること
を特徴とする請求項8に記載の工作機械。
【請求項10】
前記主軸は、前記水平方向に延びることを特徴とする請求項1に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、主軸ヘッドの移動機構内に切り屑が侵入して付着することを防止できる工作機械が開示されている。工作機械は、主軸ヘッドとコラムとの間に配設された保護カバー体を備える。保護カバー体は、前側から飛散してきた切り屑が移動機構内に侵入して付着することを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記工作機械において、切り屑がコラムの上部に飛散し、保護カバー体に覆われていないコラムの上面に堆積する場合がある。この場合、堆積した切り屑がコラムから移動機構内にまとまって落ちると、移動機構の不具合が生じる可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、切粉がコラムの上面に堆積することを防止できる工作機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の工作機械は、基台と、主軸を保持する主軸ヘッドと、前記基台の上部に設けられ、前記主軸ヘッドを支持するコラムと、前記コラムの上側を覆いかつ水平方向に対して傾斜した傾斜面を有するコラムカバーとを備えることを特徴とする。
【0007】
工作機械において、被削材の加工時に飛散した切粉は、コラムに載ることなくコラムカバーの傾斜面に載る。傾斜面が水平に対して傾斜しているので、傾斜面に載った切粉は傾斜面に沿ってコラムカバーから滑り落ちる。よって、工作機械は、コラムの上面に切粉が堆積することを防止できる。
【0008】
請求項2の工作機械は、前記主軸ヘッドを上下方向に移動させる駆動機構と、前記コラムカバーに対して一方側に位置しており、前記主軸ヘッドに固定されると共に上方に延び、前記駆動機構の駆動により前記主軸ヘッドと一体で上下方向に移動するスライドカバーとを備え、前記スライドカバーの上端は、前記主軸ヘッドが上下方向の移動範囲における上端に位置する場合に、前記傾斜面よりも上側に位置してもよい。スライドカバーにより、飛散した切粉が傾斜面に載ることを抑制できる。よって、工作機械は、切粉がコラムの上面に堆積することを更に防止できる。
【0009】
請求項3の工作機械は、前記スライドカバーの前記一方側に当接する当接部材を備えてもよい。当接部材がスライドカバーに当接するので、工作機械はスライドカバーが一方側に倒れることを防止できる。また、工作機械において、スライドカバーは当接部材に当接されて上下方向に案内されることで、上下方向に移動し易くなる。
【0010】
請求項4の工作機械は、前記当接部材は、前記コラムの上端部であって、左右方向の両側に設けられてもよい。工作機械は、簡単な構成でスライドカバーが一方側に倒れることを防止でき、かつスライドカバーを上下方向に移動しやすくなる。
【0011】
請求項5の工作機械において、前記当接部材は、本体部と、前記本体部に設けられ、上下方向に移動する前記スライドカバーの前記一方側に摺動される摺動部とを有してもよい。工作機械において、当接部材は、スライドカバーに摺動される摺動部を本体部とは別に有する。そのため、例えば本体部を耐久性の高い材質で形成し、摺動部を摩耗に強く、摩擦係数の小さい材質で形成することで、工作機械はスライドカバーが一方に向かって倒れることを長期的に防止できる。
【0012】
請求項6の工作機械において、前記摺動部は、樹脂で形成されてもよい。工作機械において、摺動部が樹脂で形成されるので、摺動部を摩擦係数小さい材質で形成しかつ交換可能な構成とすることを容易に実現できる。よって、工作機械ははスライドカバーが一方に向かって倒れることを長期的に防止できる。
【0013】
請求項7の工作機械において、前記駆動機構は、モータと、前記コラムの内側に設けられ、前記モータの駆動により軸周りに回転するボールネジと、前記ボールネジに螺合しかつ前記主軸ヘッドに固定され、前記ボールネジの回転に伴って上下方向に移動するナットとを有し、前記スライドカバーは、前記ボールネジの前記一方側を覆ってもよい。スライドカバーがボールネジに対して一方側を覆うので、工作機械は一方側から飛散した切粉がボールネジに当たることを抑制できる。
【0014】
請求項8の工作機械において、前記傾斜面は、前記主軸ヘッドから離隔する方向に向かって下方に傾斜してもよい。これにより、傾斜面に載った切粉は傾斜面に沿って主軸ヘッドから離隔する方向に滑り落ちる。よって、工作機械は、切粉が主軸ヘッドの上面に堆積することを防止できる。
【0015】
請求項9の工作機械は、前記コラムを間にして前記主軸ヘッドと反対側に設けられ、前記工作機械の動作を制御する制御装置を収納する制御箱を備え、前記コラムカバーは、前記制御箱から離隔してもよい。傾斜面が制御箱から離隔しているので、工作機械はコラムカバーから滑り落ちる切粉が制御箱にせき止められて堆積することを防止できる。
【0016】
請求項10の工作機械において、前記主軸は、前記水平方向に延びてもよい。工作機械において、主軸が水平方向に延びるので、切粉はコラムの上面に飛散し易い。傾斜面がコラムの上側を覆うので、工作機械は切粉がコラムの上面に堆積することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図5】主軸ヘッド6の一部を断面で示したコラム5周辺の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態を説明する。以下説明は、図中に矢印で示す左右、上下、前後を使用する。工作機械1の左右方向、上下方向、前後方向は、夫々工作機械1のX軸方向、Y軸方向、Z軸方向である。
図1に示す工作機械1は主軸7(
図5参照)が前後方向(Z軸方向)に延びる横形であり、コラム5がX軸方向とZ軸方向に移動する。
【0019】
図1~
図5を参照し、工作機械1の構造を説明する。
図1~
図4に示すように、工作機械1は、ベース2、制御箱8、テーブル9、X軸移動機構11、Z軸移動機構12、コラム5、Y軸移動機構13、主軸ヘッド6、主軸7(
図5参照)、ATC装置10、コラムカバー50等を備える。
【0020】
ベース2は、Z軸方向に長い平面視略矩形状の鉄製土台である。ベース2の後端部には、一対の支持部材17、18(
図2参照)が設けられる。支持部材17、18は、左右方向に互いに離間して設けられる。支持部材17、18は、上方に延び、制御箱8を下方から支持する。制御箱8は、内部に制御装置(図示略)を収納する。制御装置は工作機械1の動作を制御する。テーブル9は、ベース2の上面の前部に設けられる。テーブル9は、後述する主軸ヘッド6の前方に位置する。テーブル9の上面は、被削材(図示略)を固定する。
【0021】
X軸移動機構11は、ベース2の上面の後部に設けられる。X軸移動機構11は、キャリッジ15をX軸方向に移動可能に支持する。X軸移動機構11は、例えば図示しないガイドレール、ボールネジ、モータを備え、モータの動力でキャリッジ15を当該ガイドレールに沿ってX軸方向(左右方向)に移動する。Z軸移動機構12は、キャリッジ15の上面に設けられる。Z軸移動機構12は、コラム5をZ軸方向に移動可能に支持する。Z軸移動機構12は、例えば図示しないガイドレール、ボールネジ、モータを備え、モータの動力でコラム5を当該ガイドレールに沿ってZ軸方向(前後方向)に移動する。
【0022】
コラム5は、上下方向に延びる立柱である。コラム5には、貫通口5A(
図2参照)が形成される。貫通口5Aは、正面視縦長矩形状であり、コラム5の前面5B(
図5参照)と後面5C(
図2参照)を前後方向に貫通する。
【0023】
コラム5は、枠カバー59を備える。枠カバー59は正面視縦長で且つ下方に向けて開口する逆U字状の枠体であり、コラム5と主軸ヘッド6の間の隙間を外側から覆う。枠カバー59は、右板59A、左板59B、及び上板59Cを有する。上板59Cは平面視左右方向に長い矩形状であって、コラム5と主軸ヘッド6の間の隙間を上側から覆う。右板59Aは右側面視上下方向に長い矩形状であって、コラム5と主軸ヘッド6の間の隙間を右側から覆う。左板59Bは左側面視上下方向に長い矩形状であって、コラム5と主軸ヘッド6の間の隙間を左側から覆う。
【0024】
上板59Cは、右板59Aの上端部と左板59Bの上端部との間を接続する。
図4に示すように、上板59Cの右端部の前側には、摺動部43が設けられる。上板59Cの左端部の前側には、44が設けられる。摺動部43は、Z軸方向に延びる軸を有する円柱状である(
図1参照)。図示しないが、摺動部44は、摺動部43と同形のZ軸方向に延びる軸を有する円柱状である。摺動部43、44は、ポリアセタール樹脂(POM樹脂)で形成される。摺動部43、44は後述する上部カバー28に後側から当接する。
【0025】
図4に示すように、右板59Aの上端部には、ガイド41が設けられる。ガイド41は、本体部41Aと摺動部41Bを有する。本体部41Aは、平面視逆L字状の部材であり、右板59Aの上端部の前端から前方に突出し、かつ其の前端部が左方に略90°屈曲する。摺動部41Bは、本体部41Aの左右方向に延びる部分の後面に固定される。摺動部41Bは、Z軸方向に延びる軸を有する円柱状である。摺動部41Bは、後方において後述する上部カバー28を間に挟んで摺動部43と対向する。摺動部41Bは、上部カバー28の前面の右端側に前側から当接する。
【0026】
左板59Bの上端部には、ガイド42が設けられる。ガイド42は、本体部42Aと摺動部42Bを有する。本体部42Aは、平面視L字状の部材であり、左板59Bの上端部の前端から前方に突出し、かつ其の前端部が右方に略90°屈曲する。摺動部42Bは、本体部42Aの左右方向に延びる部分の後面に固定される。図示しないが、摺動部42Bは、摺動部41Bと同形のZ軸方向に延びる軸を有する円柱状である。摺動部42Bは、前後方向において後述する上部カバー28を間に挟んで摺動部44と対向する。摺動部41Bは、上部カバー28の前面の左端側に前側から当接する。本体部41A、42Aは、アルミ合金で形成される。摺動部41B、42Bは、ポリアセタール樹脂(POM樹脂)で形成される。
【0027】
図1、
図5に示すように、Y軸移動機構13は、コラム5の前面部に設けられる。Y軸移動機構13は、後述する主軸ヘッド6を、前面5Bに沿ってY軸方向に移動可能に支持する。Y軸移動機構13は、ガイドレール(図示略)、モータ64、ボールネジ71、ナット72を備える。
【0028】
Y軸移動機構13のガイドレールは、コラム5の前面5Bに設けられ、Y軸方向に延びる。モータ64は、枠カバー59の上板59Cの上面に設けられる。モータ64の出力軸は、枠カバー59の内側に延びる。ボールネジ71は、Y軸方向に延び、其の上端がモータ64の出力軸に連結される。ボールネジ71は、Y軸に平行な回転軸を中心に回転可能である。ボールネジ71には、ナット72が螺合される。ナット72には、主軸ヘッド6が固定される。モータ64が回転すると、ボールネジ71が回転し、其の回転量と回転方向に応じてナット72と主軸ヘッド6とが一体でY軸方向に移動する。
【0029】
図1~
図5に示すように、主軸ヘッド6は、Z軸方向に延び、前部は略円柱状、後部は略直方体状である。主軸ヘッド6は、上部カバー28と鎧カバー85を有する。上部カバー28は、正面視略矩形状の金属板である。上部カバー28の下端部は、主軸ヘッド6の上面の後端部に固定される。上部カバー28は、主軸ヘッド6の上面から上方に延びる。上部カバー28は、後述するコラムカバー50の前側に位置する。
【0030】
上部カバー28の右端部は、前後方向において摺動部41B、43に挟持される。上部カバー28の左端部は、前後方向において摺動部42B、44に挟持される。上部カバー28は、主軸ヘッド6と一体で上下方向に移動することで、ボールネジ71の主軸ヘッド6よりも上側の領域を前側から常時覆う。
【0031】
上部カバー28がY軸移動機構13によりY軸方向(上下方向)に移動する場合に、其の右端部は、摺動部41B、43により常時挟持された状態で摺動する。上部カバー28がY軸方向に移動する場合に、其の左端部は、摺動部42B、44に常時挟持された状態で摺動する。故に、上部カバー28は、Y軸方向に移動する場合に、摺動部41B、42B、43、44によりY軸方向に案内される。上部カバー28の上端は、主軸ヘッド6が上下方向の移動範囲における上端に位置する場合に、後述するコラムカバー50の傾斜面51よりも上側に位置する(
図3参照)。なお図示しないが、上部カバー28の上端は、主軸ヘッド6が上下方向の移動範囲における下端に位置する場合に、コラムカバー50の傾斜面51の上端よりも下側に位置する。
【0032】
鎧カバー85は、主軸ヘッド6の下面の後端部に吊り下げられた状態で固定される。鎧カバー85は、左右方向に延びる複数の金属板を上下方向に並べて備える。鎧カバー85は、主軸ヘッド6の高さに応じて上下方向にテレスコピックに伸縮することで、ボールネジ71の主軸ヘッド6よりも下側の領域を前側から常時覆う。
【0033】
主軸7は、主軸ヘッド6の内側に設けられる。主軸7は、主軸ヘッド6と同軸かつZ軸方向に延びる。主軸7は、Z軸に平行な回転軸を中心に回転可能である。主軸ヘッド6は、モータ61を保持する。モータ61は、貫通口5Aを挿通し、其の一部が後面5Cから突出する。モータ61の出力軸61Aは前方に延び、主軸7の後端部と連結する。主軸7の前端部は、工具90を着脱自在に装着する。
【0034】
図1~
図4に示すように、ベース2の上面は、前部の左右両側に一対の支柱21、22を備える。支柱21は、ベース2の上面の右側から上方に延びかつ其の上部が左方に略90°屈曲する。支柱22は、ベース2の上面の左側から上方に延びかつ其の上部が右方に略90°屈曲する。連結板23は正面視略矩形状であり、支柱21と支柱22の互いに対向する夫々の上部の間に固定する。
【0035】
ATC装置10は、連結板23の前面に設けられる。ATC装置10は、支柱21、22により支持され、主軸ヘッド6の上側に位置する。ATC装置10は、複数の工具90(
図5参照)を把持する工具マガジン(図示略)を備える。工作機械1は、主軸7が装着する工具90と、ATC装置10の工具マガジンが把持する工具90とを交換可能である。
【0036】
図1~
図4に示すように、コラムカバー50は、コラム5の上部に取り付けられる。コラムカバー50は、傾斜面51、右側面52、左側面53、ホース中継部54、ケーブル中継部55、前面56(
図1参照)を有する。
【0037】
傾斜面51は、コラム5の上側に位置する。傾斜面51は、平面視矩形状の平面である。傾斜面51の前端は、Z軸方向におけるコラム5の前面5Bの位置と略同じ位置にある。傾斜面51の後端は、後面5Cから後方に突出するモータ61の後端と略同じ位置にある。又、傾斜面51は、制御箱8とZ軸方向に離隔する。傾斜面51は、後下方に傾斜する。本実施例では、傾斜面51は、約10°の傾斜で形成される。
【0038】
傾斜面51は、コラム5の上面及びモータ61の上面を上側から覆う。傾斜面51が後下方に傾斜するので、被削材の加工の際に飛散した切粉が傾斜面51に載った場合、傾斜面51に堆積することなく、傾斜面51沿って後方に滑り落ちる。又、モータ61、64等が駆動すると、工作機械1全体が振動する。このとき、傾斜面51も振動するので、傾斜面51に載った切粉は、作業者による除去作業を要することなく傾斜面51から滑り落ちる。また、傾斜面51が制御箱8と離隔するので、傾斜面51から滑り落ちた切粉は、制御箱8にせき止められることなく下方に落ちる。更に傾斜面51がモータ61の上面を覆うので、傾斜面51から滑り落ちた切粉は、モータ61の上面に堆積することなく下方に落ちる。
【0039】
右側面52は、傾斜面51の右側から下方に延びる平面である。右側面52は、コラム5の右面の上部を覆う。右側面52の下端部は、コラム5の右面の上部に固定される。ホース中継部54は、傾斜面51の右前部から上方に延びる。ホース中継部54には、バルブ57が設けられる。バルブ57は、例えば、主軸7に装着された工具90を冷却するクーラント液の流路と接続する。
【0040】
左側面53は、傾斜面51の左側から下方に延びる平面である。左側面53は、コラム5の左面の上部を覆う。左側面53の下端部は、コラム5の左面の上部に固定される。コラムカバー50は、右側面52、左側面53がコラム5の右面、左面に夫々固定されることで、コラム5に支持される。ケーブル中継部55は、左側面53の中央部に設けられる。ケーブル中継部55は、複数のリングで構成され、例えばモータ61、64に電力を供給するケーブル、制御箱8の制御装置から延びる制御ケーブル等を中継する。
【0041】
前面56は、傾斜面51の前側から下方に延びる平面である。前面56の下端は、コラム5の上面に位置する。前面56は、傾斜面51とコラム5の上面との隙間を前方から覆い、被削材の加工の際に飛散した切粉が該隙間からコラム5の内側に侵入することを防止する。
【0042】
以上説明したように、コラム5の上部にはコラムカバー50が取り付けられる。コラムカバー50は、コラム5の上側を覆いかつ後下方に傾斜した傾斜面51を有する。工作機械1において、被削材の加工時に飛散した切粉は、コラム5の上面に載ることなく傾斜面51に載る。傾斜面51が後下方に傾斜するので、傾斜面51に載った切粉は、傾斜面51に堆積することなく、傾斜面51沿って後方に滑り落ちる。また、モータ61、64等が駆動すると、工作機械1全体が振動し、このとき傾斜面51も振動する。故に、傾斜面51に載った切粉は、被削材の加工時においてモータ61、64等が駆動する度に振動により傾斜面51から滑り落ちる。よって、工作機械1は、コラム5の上面に切粉が堆積することを防止できる。
【0043】
主軸ヘッド6の上面には、上部カバー28が固定される。上部カバー28は、コラムカバー50の前側に位置する。上部カバー28は、主軸ヘッド6の上面から上方に延びる。上部カバー28は、Y軸移動機構13の駆動により、主軸ヘッド6と一体で上下方向に移動する。上部カバー28の上端は、主軸ヘッド6が上下方向の移動範囲における上端に位置する場合に、コラムカバー50の傾斜面51よりも上側に位置する。上部カバー28は、前後方向において、主軸7に装着された工具90と、傾斜面51との間に位置する。主軸ヘッド6が上下方向の移動範囲における上端に位置する場合、上部カバー28の上端が傾斜面51よりも上側に位置するので、上部カバー28は被削材から飛散した切粉が傾斜面51に載ることを抑制できる。よって、工作機械1は、切粉がコラム5の上面に堆積することを更に防止できる。
【0044】
Y軸移動機構13により上下方向に移動する上部カバー28の前面は、ガイド41、42の摺動部41B、42Bに常時当接される。ガイド41、42の摺動部41B、42Bに当接されるので、上部カバー28は、上下方向に移動する場合に、前後方向のばたつくことが抑制される。よって、工作機械1は、上部カバー28が前方に倒れこむことを防止できる。また、上部カバー28は、Y軸移動機構13により上下方向に移動する場合、摺動部41B、42Bにより上下方向に案内される。このように工作機械1において、上部カバー28は、摺動部41B、42Bにより上下方向に案内されることで、上下方向に移動し易くなる。
【0045】
ガイド41は、コラム5の前側にある右板59Aの上端部に設けられる。ガイド42は、コラム5の前側にある左板59Bの上端部に設けられる。これにより、工作機械1は、簡単な構成で上部カバー28が前方に倒れることを防止でき、かつ上部カバー28を上下方向に移動しやすくなる。
【0046】
ガイド41は、本体部41A、摺動部41Bを有する。本体部41Aは、右板59Aの前端から前方に突出し、かつ其の前部が左方に屈曲する。摺動部41Bは、本体部41Aの左前部の後側に設けられる。同様に、ガイド42は、本体部42A、摺動部42Bを有する。本体部42Aは、左板59Bの前端から前方に突出し、かつ其の前部が右方に屈曲する。摺動部42Bは、本体部42Aの右前部の後側に設けられる。摺動部41B、42Bは、上下方向に移動する上部カバー28に摺動される。工作機械1において、ガイド41(42)は、上部カバー28に摺動される摺動部41B(42B)を本体部41A(42A)とは別に有する。本体部41A(42A)を耐久性の高い材質(アルミ合金)で形成し、摺動部41B(42B)を摩耗に強く、摩擦係数の小さい材質(ポリアセタール樹脂)で形成することで、工作機械1は上部カバー28が前方に倒れることを長期的に防止できる。
【0047】
摺動部41B、42Bは、樹脂(ポリアセタール樹脂)で形成される。工作機械1において、摺動部41B、42Bが樹脂で形成されるので、摺動部41B、42Bを摩擦係数小さい材質で形成しかつ交換可能な構成とすることを容易に実現できる。よって、工作機械1は、上部カバー28が前方に倒れることを長期的に防止できる。
【0048】
上部カバー28の下端部は、主軸ヘッド6の上面に固定される。上部カバー28は、主軸ヘッド6の上面から上方に延びる。上部カバー28は、Y軸移動機構13の駆動により、主軸ヘッド6と一体で上下方向に移動する。上部カバー28は、Y軸移動機構13のボールネジ71における主軸ヘッド6よりも上側の領域を前側から常時覆う。主軸ヘッド6は、モータ64の駆動でボールネジ71が回転することで、上下方向に移動する。工作機械1は、上部カバー28は、ボールネジ71の主軸ヘッド6よりも上側の領域を前側から覆うので、前側から飛散した切粉がボールネジ71に当たることを抑制できる。よって、工作機械1は、主軸ヘッド6を安定して上下方向に移動できる。
【0049】
傾斜面51は後下方に傾斜する。故に、傾斜面51に載った切粉は、主軸ヘッド6から離隔する方向(後方)に滑り落ちる。よって、工作機械1は、切粉が主軸ヘッド6の上面に堆積することを防止できる。
【0050】
コラムカバー50は、前後方向において制御箱8と離隔している。故に工作機械1は、コラムカバー50から滑り落ちる切粉が制御箱8にせき止められて堆積することを防止できる。
【0051】
主軸7は、Z軸方向に延びる。この場合、被削材の加工時において生じた切粉は、コラム5の上面に飛散し易い。工作機械1は、傾斜面51がコラム5の上側を覆いかつ後下方に傾斜しているので、主軸7がZ軸方向に延びる場合であっても、飛散した切粉がコラム5の上面に堆積することを防止できる。
【0052】
本発明は上記実施形態から種々変更できる。以下説明する各種変形例は、矛盾が生じない限り夫々組み合わせ可能である。上記実施形態において、傾斜面51は、後下に傾斜する平面であったが、例えば、右下、左下、前下等に傾斜してもよい。コラムカバー50は、複数の傾斜面を有してもよい。コラムカバー50は、例えば右下に傾斜する傾斜面と、左下に傾斜する傾斜面とを有し、正面視で山形となるように形成されてもよい。傾斜面51は、曲面で形成されてもよい。傾斜面51は、例えば後下に向かって傾斜が大きくなるように湾曲してもよい。傾斜面51は、例えば半球面状に形成されてもよい。
【0053】
傾斜面51は、制御箱8と当接してもよい。傾斜面51は、コラム5の上側を覆っていればよく、モータ61の上側を覆わなくてもよい。
【0054】
コラムカバー50は、右側面52、左側面53、前面56の形状を適宜変更してもよい。右側面52、左側面53、前面56は、例えば曲面で形成されてもよい。右側面52、左側面53、前面56は、例えば網目状に形成されてもよい。コラムカバー50は、右側面52、左側面53の代わりに複数の棒を有してもよい。この場合、コラムカバー50は当該複数の棒がコラム5の左右両側面の上部に固定されることで、コラム5に支持される。コラムカバー50は、前面56がコラム5の上面に固定されることで、コラム5に支持されてもよい。コラムカバー50は、前面56を有さなくてもよい。
【0055】
コラムカバー50は、ホース中継部54、ケーブル中継部55を有さなくてもよい。コラムカバー50において、ホース中継部54、ケーブル中継部55の位置は適宜変更してもよい。
【0056】
主軸ヘッド6は、上部カバー28の代わりに、主軸ヘッド6の高さに応じて上下方向にテレスコピックに伸縮することでボールネジ71を前側から常時覆う鎧カバーを有してもよい。主軸ヘッド6は、上部カバー28の代わりに、可撓性を有しボールネジ71の上部を前側から常時覆うカバーを有してもよい。
【0057】
上部カバー28の上端は、主軸ヘッド6の上下方向の移動範囲における上端に位置する場合に、傾斜面51よりも上側に位置すればよい。上部カバー28の上端は、例えば其の傾斜面51よりも常時上側に位置してもよい。上部カバー28の上端は、主軸ヘッド6の上下方向の移動範囲における上端に位置する場合に、傾斜面51よりも上側に位置しなくてもよい。
【0058】
上部カバー28、鎧カバー85は、ボールネジ71の前側を覆わなくてもよい。上部カバー28は、モータ64の前側を常時覆ってもよい。主軸ヘッド6は、鎧カバー85の代わりに、可撓性を有しボールネジ71の下部を前側から常時覆うカバーを有してもよい。
【0059】
工作機械1は、ガイド41、42を有さなくてもよい。ガイド41、42は、コラム5に設けられなくてもよい。ガイド41、42は、例えばベース2に設けられてもよい。この場合、ガイド41、42は、例えばベース2の上面から上方に延び、上部カバー28に向かって屈曲して、上部カバー28の前側に当接する。ガイド41、42は、例えば機械カバーに設けられてもよい。当該機械カバーはベース2の上面に設けられ、テーブル9、コラム5、コラムカバー50を覆うものであり、ガイド41、42は例えば機械カバーの左右両側面から上部カバー28に向かって延び、上部カバー28の前側に当接する。
【0060】
上記実施形態において、ガイド41が右板59Aの上端部に、ガイド42が左板59Bの上端部に設けられたが、ガイド41、42の取付位置は適宜変更してもよい。例えば、ガイド41(42)が右板59A(左板59B)の中央部に設けられてもよい。ここで、右板59A(左板59B)の中央部は、上下方向における中央部であって、主軸ヘッド6よりも上側の部分である。右板59Aの上端部に複数のガイド41、左板59Bの上端部に複数のガイド42が設けられてもよい。枠カバー59には、ガイド41又はガイド42のうちいずれか一方が設けられてもよい。
【0061】
枠カバー59に摺動部43、44が設けられなくてもよい。この場合も、ガイド41、42が上部カバー28の前側に当接することで、工作機械1は上部カバー28が前方に倒れることを防止できる。摺動部43、44は、ガイド41、42に設けられてもよい。この場合、ガイド41、42は、前後方向において上部カバー28を挟持する。
【0062】
上部カバー28の上下方向の移動範囲において、摺動部41B、43及び摺動部42B、44は、上部カバー28を常時挟持しなくてもよい。例えば、摺動部41B、43及び摺動部42B、44は、上部カバー28の上下方向の移動範囲における下端に位置する場合には、上部カバー28を挟持しなくてもよい。摺動部41B、42B、43、44は、上部カバー28と当接しなくてもよく、上部カバー28から離隔してもよい。
【0063】
ガイド41、42の構成は適宜変更してもよい。ガイド41(42)は、上記実施形態において本体部41A(42A)と摺動部41B(42B)とが別体で構成されていたが、これに対し本体部41A(42A)により一体で構成されてもよい。
【0064】
ガイド41、42は、上部カバー28の前側に当接すればよく、上部カバー28に摺動されなくてもよい。ガイド41、42は、例えば左右方向を軸に回転可能に支持されたローラを有し、当該ローラが上部カバー28の前側に当接してもよい。
【0065】
摺動部41B、42B、43、44の材質は、ポリアセタール樹脂(POM樹脂)に限定せず、適宜変更してもよい。摺動部41B、42B、43、44は、例えばポリエチレン樹脂、ウレタン樹脂等のポリアセタール樹脂以外の樹脂で形成されてもよい。摺動部41B、42B、43、44は、例えばセラミックス(例えばアルミナ)、金属(例えばタングステン合金)等で形成されてもよい。
【0066】
Y軸移動機構13の構成は、適宜変更してもよい。Y軸移動機構13は、例えばモータ64と連結するピニオンと、当該ピニオンに嵌合しかつ主軸ヘッド6に固定されるラックとを有し、モータ64の駆動によりピニオンが回転することで、ラックと主軸ヘッド6が上下方向(Y軸方向)に移動してもよい。
【0067】
上記実施形態において、工作機械1は、主軸7がZ軸方向に延びる横型工作機械である。これに対し、工作機械1は、主軸が上下方向に延びる縦型工作機械でもよい。工作機械1は、テーブル9をX軸方向、Z軸方向に移動可能に支持する移動機構を有してもよい。この場合、工作機械1は、主軸7を移動させるX軸移動機構11、Z軸移動機構12を有さなくてもよい。工作機械1は、ATC装置10を有さなくてもよい。
【0068】
ベース2は、本発明の「基台」の一例である。前方は、本発明の「一方」の一例である。Y軸移動機構13は、本発明の「駆動機構」の一例である。上部カバー28は、本発明の「スライドカバー」の一例である。ガイド41、42は、本発明の「当接部材」の一例である。モータ64は、本発明の「モータ」の一例である。
【符号の説明】
【0069】
1 工作機械
2 ベース
5 コラム
6 主軸ヘッド
7 主軸
8 制御箱
13 Y軸移動機構
28 上部カバー
41、42 ガイド
41A、42A 本体部
41B、42B 摺動部
50 コラムカバー
51 傾斜面