(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012272
(43)【公開日】2024-01-30
(54)【発明の名称】放射線入射監視方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20240123BHJP
【FI】
A61N5/10 M
A61N5/10 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023116131
(22)【出願日】2023-07-14
(31)【優先権主張番号】22185429.2
(32)【優先日】2022-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】511180259
【氏名又は名称】ビジョン アールティ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】エイドリアン ロジャー ウィリアム バレット
(72)【発明者】
【氏名】ギディオン マシュー ヘイル
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン ジェームズ ワグホーン
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082AJ01
4C082AJ13
4C082AN03
(57)【要約】
【課題】本発明は、放射線送達のために準備されている及び/又は放射線送達を受けている物体への放射線入射を監視するための方法に関する。放射線処置のために準備されている及び/又は放射線処置を受けている患者への放射線入射を監視することを可能にし、かつ放射線ビームが処置計画中に計画されたように正しい場所に送達されることを確実にし、他のエリアへの不注意な送達を回避する、費用対効果の高い監視方法を提供する。
【解決手段】この方法が、放射線送達のために準備されている及び/又は放射線送達を受けている物体の表面に光フィールドを放射することであって、光フィールドは、放射線送達の放射線入射に少なくとも実質的に対応する、ことと、物体の表面から反射された光フィールドを監視することと、監視された光フィールドを処理することと、監視された光フィールドに少なくとも部分的に基づいて物体に対する放射線送達の放射線入射を決定することと、を含む点で解決される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線送達のために準備されている及び/又は放射線送達を受けている物体への放射線入射を監視するための方法であって、
放射線送達のために準備されている及び/又は放射線送達を受けている物体の表面に光フィールドを放射することであって、前記光フィールドは、前記放射線送達の放射線入射に少なくとも実質的に対応する、ことと、
前記物体の前記表面から反射された前記光フィールドを監視することと、
前記監視された光フィールドを処理して、前記監視された光フィールドに少なくとも部分的に基づいて、前記物体に対する前記放射線送達の前記放射線入射を決定することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記物体に対する前記放射線送達の前記放射線入射を決定することは、定義された放射線送達計画に従って、所定の放射線入射に対する前記放射線送達の前記放射線入射を決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記放射線送達の前記決定された放射線入射が、前記放射線送達計画から決定された前記所定の放射線入射と閾値量よりも大きく異なる場合、アラームをトリガすることをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記放射線送達の前記決定された放射線入射が、前記放射線送達計画から決定された前記所定の放射線入射と閾値量よりも大きく異なる場合、前記物体の照射を禁止することか、又は禁止をトリガすることをさらに含む、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記物体に対する前記放射線送達の前記決定された放射線入射に基づいて、放射線送達のために準備されている及び/又は放射線送達を受けている前記物体、特に前記物体を保持する寝台を位置決めすることか、又は位置決めをトリガすることをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記物体に対する前記放射線送達の前記決定された放射線入射に基づいて、前記物体を照射のための放射線治療装置、特に前記放射線治療装置のガントリを位置決めすることか、又は位置決めをトリガすることをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
放射線送達のために準備されている及び/又は放射線送達を受けている前記物体、及び/又は前記物体の照射のための前記放射線治療装置を位置決めすることか、又は位置決めをトリガすることは、反復的に実行される、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記物体に対する前記放射線送達の前記放射線入射を決定することは、前記物体に対する少なくとも1つの放射線ビームの位置、向き及び/又は形状を決定することを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記物体に対する前記放射線送達の前記決定された放射線入射に基づいて、前記少なくとも1つの放射線ビームの位置、向き、サイズ及び/又は形状を調整することか、又は調整をトリガすることをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
放射線送達のために準備されている及び/又は放射線送達を受けている物体への放射線入射を監視するために放射線治療装置と共に使用するため、特に前記請求項の1~9のいずれか一項に記載の方法を実行するための監視システムであって、
放射線送達のために準備されている及び/又は放射線送達を受けている物体の表面に光フィールドを放射するように構成されている少なくとも1つの光フィールド放射デバイスであって、前記光フィールドは、前記放射線送達の放射線入射に少なくとも実質的に対応する、少なくとも1つの光フィールド放射デバイスと、
前記物体の前記表面から反射された前記光フィールドを監視するように構成されている少なくとも1つの監視デバイスと、
前記監視された光フィールドを処理して、前記監視された光フィールドに少なくとも部分的に基づいて、前記物体に対する前記放射線送達の前記放射線入射を決定するように構成されている少なくとも1つの処理ユニットと、を含む、監視システム。
【請求項11】
前記少なくとも1つの監視デバイスは、
光を選択的に透過するように構成されている少なくとも1つのフィルタを含む、請求項10に記載の監視システム。
【請求項12】
放射線治療処置システムであって、
物体に放射線を照射するように動作可能な少なくとも1つの放射線治療装置と、
少なくとも1つの請求項10又は11に記載の放射線入射監視システムと、を含む、放射線治療処置システム。
【請求項13】
放射線治療装置は、前記放射線送達の前記決定された放射線入射が、放射線送達計画から決定された所定の放射線入射と閾値量よりも大きく異なる場合にアラームをトリガすること、及び/又は前記物体の照射を禁止することか、又は禁止をトリガすることを行うように動作可能である、請求項12に記載の放射線治療処置システム。
【請求項14】
放射線治療処置システムはさらに、放射線治療装置、特に前記放射線治療装置のガントリに対して、放射線送達のために準備されている及び/又は放射線送達を受けている前記物体を位置決めするための寝台を含み、
前記寝台及び/又は前記放射線治療装置、特に前記放射線治療装置の前記ガントリは、前記物体に対する前記放射線送達の前記決定された放射線入射に応じて、位置及び/又は向きを変化させるように構成されている、請求項12又は13に記載の放射線治療処置システム。
【請求項15】
放射線治療装置は、前記物体に対する前記放射線送達の前記決定された放射線入射に基づいて、少なくとも1つの放射線ビームの位置、向き及び/又は形状を調整するように構成されている、請求項12~14のいずれか一項に記載の放射線治療処置システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放射線送達のために準備されている及び/又は放射線送達を受けている物体への放射線入射を監視するための方法に関する。追加的に、本発明は、放射線処置装置及び放射線治療システムと共に使用するための監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
放射線治療では、その患者の身体に存在する腫瘍を破壊又は除去するとともに、非がん性疾患を処置するために、放射線治療装置の放射線源から放射された放射線ビームを患者の身体の所定領域に投射する。このような処置は通常、定期的かつ反復的に実施される。各医療介入において、放射線源は、選択された領域を可能な限り高い精度で照射して、放射線ビームが有害となる隣接組織を照射することを回避するために、患者に対して位置決めされなければならない。
【0003】
この目的のために、放射線治療は、通常2段階で行われる。最初の計画段階では、標的部位と障害物を視覚化するために、二次元X線又はコンピュータ断層撮影(CT)スキャナを使用してか、又は磁気共鳴画像法(MRT)によって患者の身体をスキャンする。次いで、X線又はCTスキャナから得られた画像を使用してか、又はMRI画像を使用して、治療コースを計画する。その後、処置段階では、患者は、計画段階で計画された処置コースに従って照射される。
【0004】
放射線治療を伴う基本的な問題は、診断画像を得るとき、及び放射線が患者の身体に適用されるその後の各回において、患者を同じ位置に位置決めする必要があることである。既知の放射線治療装置は、生成された放射線ビームが処置アイソセンタと呼ばれるものに集束されるように較正されている。装置は、処置者がビーム送達の前にアイソセンタ位置を含むフィールドのサイズ及び形状を視覚化することを可能にする明フィールドを含んでもよい。処置計画中に計画された正しい位置への正確な送達を確実にするために、患者は、機械ドライバによって空間の全3方向に位置決めされ得る処置寝台上に横たわる。次いで、処置者の仕事は、放射線治療装置のアイソセンタが処置対象の患者の身体領域と一致するように、処置寝台の位置を調整することである。患者の身体又はその一部を処置寝台に固定して、患者による動きが処置セッション中に位置ずれを引き起こすことを回避することができる。さらに、患者を位置決めするための本システムは、治療の異なる適用に対して患者を再位置合わせすることを可能にするために患者にマーカーを配置するための様々な形態のシステムを含んでもよい。
【0005】
それにもかかわらず、患者の運動又はセットアップの不一致が生じ、隣接する健康な組織に有害な放射線をもたらす可能性がある。可能性が高いエラーには、例えば、マルチリーフコリメータ(MLC)リーフが不注意で誤った位置にあるか、又はフィールドマッチラインにおける配置間違いなどの計画又は機械のエラー、例えば、ボーラスによる部分的な表面被覆のみが計画されている場合、ビームがボーラスを通してではなく患者の皮膚に直接送達されることによって、又は逆によってボーラスの溢出をもたらすような不正確なボーラス配置、又は、例えば、患者の移動又は身体の他のエリアが一次ビーム内にあるような患者の位置の変化を含み得る。
【0006】
このため、欧州特許出願公開第3294137号で知られているような、放射線治療中に患者の動きを検出し、患者の位置決めを支援する監視システムが提供されている。そのような監視システムは、多くの場合、コスト集約的な立体視カメラと、患者の位置を追跡するための3D患者モデルを生成することができる処理モジュールとを含む。
【0007】
また、欧州特許出願公開第3294414号から知られている監視システムは、立体視カメラ及び3D患者追跡のための処理モジュールを利用する。さらに、監視はチェレンコフ放射線に基づいているため、監視は送達異常を検出する前に患者への線量送達を必要とする。
【0008】
この背景に対して、本発明は、放射線処置のために準備されている及び/又は放射線処置を受けている患者への放射線入射を監視することを可能にし、かつ放射線ビームが処置計画中に計画されたように正しい場所に送達されることを確実にし、他のエリアへの不注意な送達を回避する、費用対効果の高い監視方法を提供することを目的としている。追加的に、この発明の目的は、それに応じて改良された放射線治療システムを特定することである。
【発明の概要】
【0009】
本開示の1つの態様によれば、放射線送達のために準備されている及び/又は放射線送達を受けている物体への放射線入射を監視するための方法が提供され、この方法は、放射線送達のために準備されている及び/又は放射線送達を受けている物体の表面に光フィールドを放射することであって、光フィールドは、放射線送達の放射線入射に少なくとも実質的に対応する、ことと、物体の表面から反射された光フィールドを監視することと、監視された光フィールドを処理して、監視された光フィールドに少なくとも部分的に基づいて、物体に対する放射線送達の放射線入射を決定することと、を含む。
【0010】
物体は、例えば、患者又は放射線治療ファントムとすることができる。物体が患者であるときに、放射線送達は、放射線処置とすることができる。
【0011】
したがって、第1の態様による方法は、放射線処置のために準備されている及び/又は放射線処置を受けている患者への、特に放射線線量が入射する放射線入射を監視することを可能にする。放射線処置は、例えば、放射線手術及び/又は放射線治療を指してもよい。放射線手術又は放射線治療では、病変を処置又は破壊するために、強力かつ正確にコリメートされた線量の放射線が、患者の体内の標的領域、例えば腫瘍組織に送達される。
【0012】
特に、放射線治療は、一般に悪性細胞を制御又は死滅させるためのがん処置の一部として提供される電離放射線を使用する治療である。通常、放射線治療は、直線加速器などの放射線処置装置によって送達される。放射線治療は、がんが、例えば、身体の1つのエリアに局所化している場合、多くの種類のがんにおいて治癒的であってもよい。また、アジュバント治療の一部として使用して、例えば、初期段階の乳がんである原発性悪性腫瘍を除去する手術後の腫瘍再発を予防してもよい。
【0013】
放射線手術は、放射線を使用する手術である。標的領域は、ブレードによる切除よりもむしろ電離放射線を使用して正確に破壊される。他の形態の放射線治療と同様に、通常はがんを処置するために使用されてもよい。定位的放射線手術(SRS)において、3次元座標系は、患者の診断画像中に見られる仮想標的と患者中の実際の標的位置との正確な相関を可能にする。
【0014】
放射線処置前に、患者に個別に調整された放射線処置計画を準備するために、関心領域のコンピュータ断層撮影(CT)及び/又は磁気共鳴(MR)スキャンを得てもよい。計画用CT及び/又はMRTは、少なくとも1つの標的体積、いわゆる標的関心領域を定義し、危険臓器をマークするために使用されてもよい。これらの仕様に基づいて、個々の放射線処置計画を策定することができ、その中でどのエリアをどの線量で照射すべきか、またどの領域を最適に温存すべきかを正確に特定する。ビームズアイビュー(BEV)ベースの計画は、正常組織への照射を減少させることにより、腫瘍の三次元カバレッジ、照射技術,及び処置率を改善してもよい。
【0015】
放射線処置計画に従った患者の正確な位置決め、特に放射線ビーム源、特に放射線治療装置に対する患者の位置及び/又は向きは、放射線処置を実際に実行するための前提条件である。したがって、放射線処置前に、患者及び/又は放射線ビーム源、特に放射線治療装置は、関心のある標的領域を正確に照射するためにセットアップされなければならない。正常組織への放射線照射は回避されるべきである。これに関連して、第1の態様による方法は、正確な患者セットアップ及び/又は処置のために放射線入射を監視することを可能にする。
【0016】
もちろん、放射線処置の間、正確な放射線入射を確実にすることは、実際の電離放射線のためにさらに重要である。放射線処置中、少なくとも1つの放射線ビームが、腫瘍又はがん性増殖部位を含む患部組織などの患者の関心のある領域を照射してもよい。特に、複数の放射線ビームを患者の身体の外側のいくつかの位置から関心のある標的関心領域に向けてもよい。放射線装置は、異なる位置から放射線ビームを提供するために回転されてもよい放射線源を含むガントリを含んでもよい。各医療介入において、放射線治療装置、特に放射線源は、選択された領域を可能な限り高い精度で照射するために患者に対して位置決めされてもよい。
【0017】
放射線入射監視は、放射線が実際に患者の身体に当たっている場所を見ることを可能にするため、身体の体格又は姿勢の変化のようなエラー、例えば、患者の腕が放射線フィールドに入ること、放射線が意図せずにあご又は対側の胸部に当たること、ボーラス材料の位置ずれ、又は間違ったMLC開口部、位置などの送達システム又は処置計画のエラーを強調することができる。
【0018】
第1の態様による方法は、放射線送達のために準備されている及び/又は放射線送達を受けている物体の表面に光フィールドを放射することを含む。光フィールドは、放射線送達の放射線入射、特に少なくとも1つの放射線ビームに少なくとも実質的に対応する。放射線入射は、物体の表面への少なくとも1つの放射線ビームの入射を指してもよい。特に、放射線入射を監視することは、少なくとも1つの放射線ビームの位置、向き、サイズ及び/又は形状を監視することを含んでもよい。少なくとも1つの放射線ビームは、例えば、光フィールドの少なくとも一部を生じさせる可視光の少なくとも1つのビームによって模倣されてもよい。可視光の少なくとも1つのビームは、物体の表面に当たって、衝突する領域に光フィールドを生じさせてもよい。
【0019】
光フィールドを放射するために、放射線治療装置及び/又は監視システムは、放射線送達のために準備されている及び/又は放射線送達を受けている物体の表面に光フィールドを放射するように構成されている少なくとも1つの光フィールド放射デバイスを含んでもよい。光フィールド放射デバイスは、例えば、放射線治療装置、特に放射線治療装置のガントリの一部であってもよい。好ましくは、光フィールド放射デバイスは、放射線治療装置のビーム源に近接して位置決めされ得る。少なくとも1つの光フィールド放射デバイスは、例えば、放射線治療装置、特に線形加速器ヘッドの少なくとも1つのビーム制限デバイス、例えばフィールドジョー及び/又はマルチリーフコリメータの前に位置して、少なくとも1つのビーム制限デバイスの現在の形状を処置寝台又は寝台上の任意の物体上で見ることができるようにする。潜在的には、放射線治療装置に既に存在する光フィールド放射デバイス、例えば、線形加速器は、放射線入射、特に、好ましくはアイソセンタ位置を含むフィールドサイズ及び形状を、ビーム送達前及び/又はビーム送達中に視覚化することを可能にしてもよい。これは、追加のハードウェアを必要としないので、特にコスト効率が良いだろう。
【0020】
物体の表面に放射される光フィールドは、可視光、すなわち、人間の目によって知覚される電磁スペクトルの部分内の電磁放射に基づいてもよい。特に、光は、400~700nmの範囲にある波長を有する。これにより、可視光を監視するように構成されている任意の監視デバイス、特に、例えば従来のカメラによって光フィールドを知覚することが可能である。
【0021】
特に、実際の放射線送達(例えば、放射線処置、例えば、患者のセットアップ中)の前に、光フィールドは、実際のビーム送達中であるように放射線入射を表してもよい。したがって、光フィールドは、実際のビーム送達前及び/又はビーム送達中の放射線入射を表してもよい。このようにして、特に少なくとも1つの放射線ビームを可視光で模倣することができるように、放射線ビームについて結論を導き出してもよい。
【0022】
この方法は、物体の表面から反射された光フィールドを監視することをさらに含む。特に、光フィールドは、放射線送達前及び/又は放射線送達中に監視される。光フィールドを監視することによって、放射線入射は、放射線送達の実際のビーム送達の前及び/又はビーム送達中に監視されてもよい。例えば、監視された光フィールドは、放射線送達全体にわたって放射線入射のリアルタイムの結論を可能にし、好ましくは、送達プロセス全体にわたって精度を確実にする。
【0023】
光フィールドを監視するために、光フィールドを監視するように構成されている少なくとも1つの監視デバイスを提供してもよい。好ましくは、少なくとも1つの監視デバイスは、少なくとも1つの遠隔監視デバイスである。一般に、光フィールドを監視するように構成されている、特に従来のカメラなどを含む表面に放射された可視光を監視するように構成されている任意の監視デバイスが考えられる。例えば、少なくとも1つの立体視カメラを提供してもよい。少なくとも1つの立体カメラによって、立体視の原理を使用して、例えば光フィールド及び/又は物体の3次元表現を可能にする視覚データが提供されることが達成されてもよい。少なくとも1つの監視デバイスは、好ましくは、物体の表面に放射された光フィールドを監視するために処置室に配置されてもよい。少なくとも1つの監視デバイスは、処置装置のアイソセンタ、例えば放射線治療装置のアイソセンタに対して較正されてもよい。
【0024】
少なくとも1つの監視デバイスは、好ましくは、少なくとも1つの特定の波長の光、特に、可視光のスペクトル、すなわち400~700nmの波長の定義された範囲の光を選択的に透過するように構成されている少なくとも1つのフィルタを含んでもよい。
これは、第1の態様による方法及び/又は第2の態様による監視システムが、国際特許出願公開第2004/004828号に開示されているようなVision RTのAlignRT(登録商標)システムのような別の非接触運動検出システムと組み合わせて使用される場合に特に有利であってもよい。例えば、Vision RTのAlignRT(登録商標)システムにおいて、スペックル投影は、AlignRTカメラポッドによって与えられてもよい。光フィールドを監視する際の課題は、好ましくは可視光に基づく光フィールドをシーン内の他の照明源から区別することであってもよい。したがって、物体の表面から反射された光フィールドを監視することは、少なくとも1つの特定の波長の光を選択的に透過させるために光をフィルタリングすることを含んでもよい。これは、特に、本開示の第1及び/又は第2の態様に従って光フィールドを監視するためとは異なる監視デバイスが、特に、スペックル投影を監視するために、Vision RTのAlignRT(登録商標)システムに使用される場合に特に有利である。光フィールド及びスペックルを監視するために同じ監視デバイスが使用される場合、光フィールドを区別することは、例えば標準的なAlignRT 3D表面取得のためのスペックルを用いて、及び特に本開示の第1及び/又は第2の態様による光フィールド監視のためのスペックルを用いずに、スペックルをストロービングし、画像を監視、特に取得することによって達成され得ることが考えられる。室内照明などの外部光源は、好ましくは、光フィールドを監視するときに、少なくとも競合する光源を減少させるように低くされる。
【0025】
監視デバイスは、典型的には、監視デバイスの位置から見た物体の表面への光フィールド入射を示す2D又は3D画像を提供する。
【0026】
監視システムは、定義された放射線送達計画(物体が患者であるときに、放射線処置計画など)、例えば処置計画又は処置システムから得られたパラメータを使用して、物体の表面への参照光フィールド入射を示す参照画像を取得又は生成することができる。参照画像は、典型的には2D又は3Dの仮想画像である。
【0027】
例えば、CTスキャナから得られた物体のDICOM参照面、ガントリの所定位置及び/又はコリメータの所定回転、及び/又はMLCリーフの所定位置を使用して、2D又は3Dの仮想画像を生成することができる。
【0028】
物体のDICOM参照面の代わりに、立体視カメラ又は非接触運動検出システムによって捕捉された参照面、又は更新された参照面を使用することができ、更新された参照面は、非接触運動検出システムのROI(関心のある領域、Region Of Interest)監視によって測定された物体の現在の測定位置で更新される。
【0029】
代替的には、参照画像は、線量分布又は線量アウトラインとして放射線処置計画を準備するために使用される処置計画システムによって直接生成されてもよい。
【0030】
放射線送達のためにセットアップされている及び/又は放射線送達を受けている物体は、典型的には、放射線治療処置システムの機械式処置寝台に置かれる。好ましくは、放射線入射の監視は、物体に対する放射線治療装置、特に物体を保持する処置寝台の位置及び/又は向きの監視を含んでもよい。これは、少なくとも1つの放射線ビームの放射線入射についてさらに正確な結論を導き出すことを可能にする。
【0031】
第1の態様による方法は、監視された光フィールドを処理して、監視された光フィールドに少なくとも部分的に基づいて、物体に対する放射線送達の放射線入射を決定することをさらに含む。監視された光フィールドを処理する場合、監視された光フィールドを処理して、監視された光フィールドに少なくとも部分的に基づいて、物体に対する放射線送達の放射線入射を決定するように構成されている少なくとも1つの処理ユニットが提供されてもよい。少なくとも1つの処理ユニットは、監視システムの内部処理ユニットであってもよいし、例えば、少なくとも1つの監視デバイスに有線又は無線で接続され、かつそれぞれのコンピュータプログラムを実行する汎用パーソナルコンピュータであるか、又はその両方である外部処理ユニットであってもよい。
【0032】
少なくとも1つの処理ユニットは、監視システムの内部処理ユニットであってもよいし、例えば、少なくとも1つの監視デバイスに有線又は無線で接続され、かつそれぞれのコンピュータプログラムを実行する汎用パーソナルコンピュータであるか、又はその両方である外部処理ユニットであってもよい。例えば、処理ユニットは、遠隔処理ユニットである。遠隔処理ユニットは、処置室とは異なる部屋に位置してもよい。
【0033】
例えば、監視デバイスが光フィールド入射の画像を提供し、監視システムが参照光フィールド入射を含む参照画像を取得又は生成するときに、測定基準を使用して、光フィールド入射の画像を参照画像と比較し、光フィールド入射が参照光フィールド入射とどのように異なるか、したがって、放射線送達の決定された放射線入射が所定の放射線入射からどのように異なるか、又は逸脱するかについての定量的測定を提供することができる。
【0034】
処置者に重要な情報を示すために定性的手段が使用され得る。例えば、検出された患者への光フィールド入射を強調するために色が使用され得る。例えば、光フィールドが落ちている場所を示すために、物体のグレースケールビデオ画像に青色がオーバーレイされ得る。第1の輪郭は、検出された光フィールドがどこにあるかを示すために使用することができ、第2の輪郭は、参照光フィールド入射に基づいて、放射線ビームが正しい場所に送達されたかどうかを処置者が評価するのを助けるために、その光フィールドがどこにあるべきかを示すために使用することができる。
【0035】
放射線送達中に、ガントリ及び/又はMLCは移動することができ、したがって光フィールドの形状は時々刻々と変動することができる。したがって、放射線入射の大域的監視を行うために、監視デバイスは、光フィールド入射の画像のセットを提供することができ、各画像は、放射線送達のいくつかの事前定義された回数における光フィールド入射を示し、監視システムは、放射線送達の同じいくつかの事前定義された回数における参照光フィールド入射を含む参照画像のセットを取得又は生成することができる。
【0036】
次いで、光フィールド入射の画像のセットは、光フィールド入射の累積画像を生成するために使用され、典型的には、送達中に光フィールドどこで検出されたかを示す。例えば、光フィールド入射の各画像はバイナリ画像とすることができる(光フィールドがピクセル内に存在するか又は存在しないかのいずれか)。このような場合、光フィールド入射の画像セットの画像を加算することにより、送達途中のどこで光フィールドが検出されたかを示す累積画像を得ることができる。代替的には、光フィールド入射の各画像はグレースケール画像とすることができる。
【0037】
さらに、参照光フィールド入射を含む参照画像のセットを使用して、累積参照画像を生成することができる。次いで、光フィールド入射の累積画像を累積参照画像と比較して、例えば、放射線入射を計画された送達と遡及的に比較することができる。
【0038】
好ましくは、第1の態様による方法は、決定された放射線入射に基づいて、アクションを実行すること、例えばパラメータを調整すること又は放射線を禁止することをさらに含む。例えば、所定の放射線入射からの逸脱がある場合、送達パラメータを調整してもよい。これは、例えば、物体、物体を保持する処置寝台、放射線治療装置のの(再)位置決め及び/又は送達計画の修正を含んでもよい。標的領域に正確に放射線量を送達することができるかどうかは、照射中に使用される正確な物体形状の知識だけでなく、放射線スポット場所を含むいくつかの要因に依存することがある。放射線ビーム照射の精度に影響する要因は、装置自体、並びにボーラス、ウェッジ、ブロックなどの装置及び/又は処置附属品の機械的精度及び動きにも依存し得る。放射線入射の精度に影響し得る放射線治療システムに関連付けられた多数のパラメータ、例えば、ビーム位置合わせ、ビーム対称性、ビーム形状、及びビーム平坦度、並びにフィールド形状及び幅がある。
【0039】
第1の態様による方法は、放射線処置のために準備されている及び/又は放射線処置を受けている患者への放射線入射の安全で非侵襲的な監視を可能にする。第1の態様による方法の文脈において、患者の表面から反射された光フィールドを監視し、監視された光フィールドを処理して、監視された光フィールドに少なくとも部分的に基づいて、患者に対する放射線処置の放射線入射を決定することによって、放射線処置前及び/又は放射線処置中の放射線ビームの放射線入射を監視し、最終的に補正することができることが認識されている。したがって、放射線治療前及び放射線治療中に、特に患者の位置及び/又は放射線治療装置に対する放射線入射を追跡する安全で非侵襲的な方法が提供されて、正確な処置送達のための合理的なワークフローを確実にするのに役立つ。
【0040】
第1の態様による方法は、乳房、脳、肺、肝臓、肉腫、頭頸部及び他のがんを含む全ての形態のがんについて、迅速かつ正確な患者セットアップ及び監視を可能にする。特に、この開示の第1の態様による方法では、放射線ビームが処置計画中に計画された正しい位置に送達され、他のエリアへの不注意な送達を回避するように放射線ビームを確実にしてもよい。それに加えて、例えば、投与量を減少又は変更するためのボーラス配置も単純化されてもよい。
【0041】
さらに、第1の態様による方法は、より少ない反復撮像及びより正確な初期セットアップにより、患者の処置時間を短縮してもよい。光フィールドは、患者セットアップ中、すなわち、ビーム送達の前に、又は計画若しくはシステム品質保証プログラムの一部として評価されてもよい。それに加えて、第1の態様による方法は、刺青又は他の永久的なマークの必要性を排除し、及び/又は従来のクローズドマスク又はフレームベースのSRSの使用を回避し、さらには小児麻酔の必要性を低減することができるため、患者の快適性にも利益をもたらすことができる。
【0042】
本開示の第2の態様は、放射線送達のために準備されている及び/又は放射線送達を受けている物体への放射線入射を監視するために放射線治療装置と共に使用するため、特に前述の請求項のうちの1つに記載の方法を実行するための監視システムに関する。監視システムは、放射線送達のために準備されている及び/又は放射線送達を受けている物体の表面に光フィールドを放射するように構成されている少なくとも1つの光フィールド放射デバイスであって、光フィールドは、放射線送達の放射線入射に少なくとも実質的に対応する、少なくとも1つの光フィールド放射デバイスと、物体の表面から反射された光フィールドを監視するように構成されている少なくとも1つの監視デバイスと、監視された光フィールドを処理して、監視された光フィールドに少なくとも部分的に基づいて、物体に対する放射線送達の放射線入射を決定するように構成されている少なくとも1つの処理ユニットと、を含む、監視システム。
【0043】
本開示の第3の態様は、放射線治療処置システムに関する。放射線治療処置システムは、物体に放射線を照射するように動作可能な放射線治療装置と、第2の態様による放射線入射監視システムと、を含む。
【0044】
物体は、例えば、患者又は較正ファントムとすることができる。物体が患者であるときに、放射線送達は、放射線処置とすることができる。
【0045】
この開示の第1、第2、及び第3の態様の例示的な実施形態は、後述される特性のうちの1つ以上を有してもよい。
【0046】
患者に対する放射線処置の放射線入射を決定することは、定義された放射線処置計画に従って、所定の放射線入射に対する放射線処置の放射線入射を決定することを含んでもよい。
【0047】
放射線処置計画は、患者に合わせて個別に調整されてもよい。放射線処置計画では、計画用CTは、関心のある標的領域を定義し、リスクのある臓器をマークするために使用されてもよい。これらの仕様に基づいて、個々の放射線処置計画を策定することができ、その中でどのエリアをどの線量で照射すべきか、またどの領域を最適に温存すべきかを正確に特定する。好ましくは、放射線処置計画は、所定の放射線入射を示してもよい。定義された放射線処置計画に従って所定の放射線入射に対する放射線処置の放射線入射を決定することは、放射線ビームが処置計画中に計画されたように正しい場所に送達されることを確実にし、したがって他のエリアへの不注意な送達を回避することを可能にする。
【0048】
この方法はさらに、放射線送達の決定された放射線入射が、放射線治療送達計画(物体が患者であるときに、放射線治療処置計画とすることができる)から決定された所定の放射線入射と閾値量よりも異なる場合、アラーム(又は警告)をトリガすることを含んでもよい。アラームは、例えば処置者に放射線入射における逸脱をアラートするための可聴信号、可視信号及び/又は他の種類の信号を含んでもよい。閾値量は、例えば、送達計画又は処置計画において特定されてもよいし、処置のタイプ及び/又は関心のある領域に依存してもよい。例えば、閾値量が、例えばミリメートルで表現される絶対値、又は例えばパーセンテージで表現される相対量であってもよいと考えられる。
【0049】
したがって、放射線治療装置は、放射線送達の決定された放射線入射が、放射線治療送達計画から決定された所定の放射線入射と閾値量よりも大きく異なる場合にアラームをトリガすること、及び/又は記物体の照射を禁止することか、又は禁止をトリガすることを行うように動作可能であってもよい。
【0050】
この方法は、放射線送達の決定された放射線入射が、放射線治療送達計画から決定された所定の放射線入射と閾値量よりも大きく異なる場合、物体の照射を禁止することか、又は禁止をトリガすることをさらに含んでもよい。正確な放射線入射を確実にすることは、放射線処置中に特に重要である。放射線処置中に、所定の放射線入射から事前定義された閾値量よりも大きい逸脱により、例えば、照射を一時停止するために信号が放射線治療装置に提供されるようにしてもよい。これは、物体(例えば患者)が所望のように放射線ビームに対して位置決めされたときにのみ放射線が送達されることを確実にすることを可能にする。
【0051】
所定の放射線入射からの逸脱は、例えば、乳房処置中の患者の動きによって引き起こされることがあり、患者の腕又はあごがビーム内にあることがあり、したがって、間違ったエリアへの線量送達のリスクがあることがある。また、例えば、患者の呼吸の変動は、所定の放射線入射からの逸脱を引き起こすこともある。このような場合、照射を一時停止するために信号が放射線治療装置に提供されてもよい。
【0052】
放射線送達の決定された放射線入射が、放射線治療送達計画から決定された所定の放射線入射と閾値量よりも大きく異なる限り、照射を禁止することのみが可能であり、逸脱が閾値未満のままである場合、照射が継続されることが可能であると考えられる。
【0053】
さらに、少なくとも第1及び第2の閾値量が提供されてもよい。特に、この方法は、放射線送達の決定された放射線入射が、放射線治療送達計画から決定された所定の放射線入射と特に低い第1の閾値量よりも大きく異なる場合、アラームをトリガすることと、放射線送達の決定された放射線入射が、放射線治療送達計画から決定された所定の放射線入射と特に高い第2の閾値量よりも異なる場合、物体の照射を禁止することか、又は禁止をトリガすることと、を含んでもよい。いずれかのアクション、すなわち、アラームをトリガすること、及び/又は照射を禁止することか、又は禁止をトリガすることは、それぞれの閾値を超えている限りのみ実行される。
【0054】
この方法は、物体に対する放射線送達の決定された放射線入射に基づいて、放射線送達のために準備されている及び/又は放射線送達を受けている物体、特に物体を保持する寝台を位置決めすることか、又は位置決めをトリガすることをさらに含んでもよい。特に、物体、特に物体を保持する処置寝台は、決定された放射線入射に応じて位置決めされてもよい。放射線入射が、放射線照射計画に従って、所定の放射線入射に従った放射線入射から逸脱する場合、物体が再配置されることが考えられる。特に、逸脱が一定の閾値量を超えた場合、物体が再配置されてもよい。
【0055】
好ましくは、第3の態様による放射線治療システムは、放射線治療装置、特に放射線治療装置のガントリに対して、放射線送達のために準備されている及び/又は放射線送達を受けている物体を位置決めするための寝台をさらに含んでもよい。寝台及び/又は放射線治療装置、特に放射線治療装置のガントリは、物体に対する放射線送達の決定された放射線入射に応じて、位置及び/又は向きを変化させるように構成されてもよい。
【0056】
この方法は、物体に対する放射線送達の決定された放射線入射に基づいて、物体を照射のための放射線治療装置、特に放射線治療装置のガントリを位置決めすることか、又は位置決めをトリガすることをさらに含んでもよい。放射線入射が、放射線照射計画に従って、所定の放射線入射に従った放射線入射から逸脱する場合、放射線処置装置が再配置されることが考えられる。特に、逸脱が一定の閾値量を超えた場合、放射線治療装置が再配置されてもよい。
【0057】
例えば、処置寝台及び放射線治療装置は、相対位置が例えば横方向、垂直方向、長手方向及び/又は回転方向に変動し得るように配置されてもよい。少なくとも1つの処置寝台及び/又は少なくとも1つの放射線治療装置の位置決めは、例えば、少なくとも1つの処理ユニットによって引き起こされてもよい。
【0058】
放射線送達のために準備されている及び/又は放射線送達を受けている物体、及び/又は物体の照射のための放射線治療装置を位置決めすることか、又は位置決めをトリガすることは、反復的に実行されてもよい。例えば、第1の態様による方法は、例えば、放射線処置前及び/又は放射線処置中に患者による呼吸運動を監視することを含んでもよい。患者の位置決めすること、又は位置決めをトリガすることは、放射線処置前及び/又は放射線処置中に、監視された光フィールド及び患者による呼吸運動に基づいて反復的に実行されてもよい。
【0059】
物体に対する放射線送達の放射線入射を決定することは、物体に対する少なくとも1つの放射線ビームの位置、向き及び/又は形状を決定することを含んでもよい。少なくとも1つの放射線ビームについての結論は、例えば、監視された光フィールドを処理することによって導き出されてもよい。代替的又は追加的に、この方法は、物体を保持する処置寝台及び/又は照射される物体に対する少なくとも1つの放射線治療装置、特に少なくとも1つの放射線治療装置のガントリの位置及び/又は向きを監視することを含んでもよい。物体に対する少なくとも1つの放射線ビームの位置、方向及び/又は形状を決定することは、物体を保持する処置寝台及び/又は照射される物体に対する少なくとも1つの放射線治療装置の監視された位置及び/又は方向に基づいて実行されてもよい。
【0060】
さらに、本方法は、代替的に又は追加的に、少なくとも1つの放射線治療装置の少なくとも1つの放射線ビーム源及び/又はビーム制限デバイス、特にフィールドジョー及び/又はMLCのようなコリメータの位置、向き、サイズ及び/又は形状の監視を含んでもよい。MLCは、高原子番号物質、通常はタングステンの個々のリーフから作製されたビーム制限デバイスであり、これは、放射線ビームを成形しその強度を変化させるために放射線ビームの経路の内外に独立して移動させてもよい。これは、迅速かつ容易なビーム成形を可能にし、特に費用対効果が高く、時間を節約する。
【0061】
少なくとも1つの放射線ビーム源及び/又はビーム制限デバイスの監視された位置、方向、サイズ及び/又は形状は、例えば、物体に対する少なくとも1つの放射線ビームの位置、方向及び/又は形状を決定するときに考慮に入れられてもよい。これらの実施形態は、少なくとも1つの放射線ビームの放射線入射についてさらに正確な結論を導き出すことを可能にする。
【0062】
光フィールドを監視するように構成された少なくとも1つの監視デバイスはまた、物体を保持する処置寝台及び/又は物体に対する少なくとも1つの放射線治療装置、特に少なくとも1つの放射線治療装置のガントリの位置及び/又は向き、及び/又は少なくとも1つの放射線治療装置の少なくとも1つの放射線ビーム源及び/又はビーム制限デバイス、特にフィールドジョー及び/又はMLCの位置、向き、サイズ及び/又は形状を監視するように構成されてもよい。代替的又は追加的に、物体を保持する処置寝台及び/又は物体に対する少なくとも1つの放射線治療装置、特に少なくとも1つの放射線治療装置のガントリの位置及び/又は向き、及び/又は少なくとも1つの放射線治療装置の少なくとも1つの放射線ビーム源及び/又はビーム制限デバイス、特にフィールドジョー及び/又はMLCの位置、向き、サイズ及び/又は形状を監視するように構成されている少なくとも1つの追加監視デバイスが提供されてもよい。
【0063】
少なくとも1つの処理ユニットは、物体を保持する処置寝台及び/又は照射される物体に対する少なくとも1つの処置装置の位置及び/又は向き、及び/又は少なくとも1つの放射線治療装置の少なくとも1つの放射線ビーム源及び/又はビーム制限デバイス、特にフィールドジョー及び/又はMLCの位置、向き、サイズ及び/又は形状から、少なくとも1つの放射線ビームの形状、サイズ及び/又は向きを決定するように構成されてもよい。
【0064】
この方法は、物体に対する放射線送達の決定された放射線入射に基づいて、少なくとも1つの放射線ビームの位置、配向、サイズ及び/又は形状を調整することか、又は調整をトリガすることをさらに含んでもよい。この方法は、例えば、物体を保持する少なくとも1つの処置寝台及び/又は物体を照射するための少なくとも1つの放射線治療装置、特に少なくとも1つの放射線装置のガントリの位置及び/又は向きを変動させることによって、少なくとも1つの放射線ビームの位置及び/又は向きを調整することか、又は調整をトリガすることを含んでもよい。追加的又は代替的に、この方法は、例えば、フィールドジョー及び/又はMLCなどの少なくとも1つのビーム制限デバイスを変動させることによって、少なくとも1つの放射線ビームのサイズ及び/又は形状を調整することか、又は調整をトリガすることを含んでもよい。
【0065】
第3の態様による放射線治療処置システムの放射線治療装置は、例えば、物体に対する放射線送達の決定された放射線入射に基づいて、少なくとも1つの放射線ビームの位置、向き及び/又は形状を調整するように構成されてもよい。この目的のために、放射線治療装置は、例えば、フィールドジョー及び/又はMLCなどの少なくとも1つの少なくとも1つのビーム制限デバイスを含んでもよい。
【0066】
方法ステップの開示は、方法ステップを実行するためのそれぞれの手段も開示すると理解されるべきである。同様に、方法ステップを実行するための手段の開示は、それぞれの方法ステップをも開示すると理解されるべきである。
【0067】
この発明のさらなる構成及び利点は、本発明のいくつかの例示的な実施形態の以下の詳細な説明において、図面と併せて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0068】
この開示の態様は、添付図面と併せて解釈される以下の詳細な説明から最もよく理解されてもよい。図面は、明確にするために概略的かつ単純化されており、それらは、請求項の理解を向上させるための詳細を示すだけであり、他の詳細は省略されている。全体を通して、同じ参照番号は、同一又は対応する部分に使用される。各態様の個々の特徴は、各々、他の態様の任意又は全ての特徴と組み合わされてもよい。これら及び他の態様、特徴及び/又は技術的効果は、以下で説明される図面から明らかであり、図面を参照して明瞭にされる。
【0069】
【
図1】本開示の第2の態様による監視システムを含む第3の態様による放射線治療システムの概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
添付図面に関連して以下に述べる詳細な説明は、様々な構成の説明として意図されている。詳細な説明は、様々な概念を完全に理解を提供することを目的とした特定の詳細を含む。しかしながら、当業者には明らかなように、これらの概念は、これらの特定の詳細なしで実施され得ることが明らかであろう。装置及び方法のいくつかの態様は、様々なブロック、機能ユニット、モジュール、コンポーネント、回路、ステップ、プロセス、アルゴリズムなど(まとめて「要素」と呼ぶ)によって説明される。特定の用途、設計制約又は他の理由に応じて、これらの要素は、電子ハードウェア、コンピュータプログラム、又はそれらの任意の組み合わせを使用して実装されてもよい。コンピュータプログラムは、広義には、命令、命令セット、コード、コード・セグメント、プログラム・コード、プログラム、サブプログラム、ソフトウェア・モジュール、アプリケーション、ソフトウェア・アプリケーション、ソフトウェア・パッケージ、ルーチン、サブルーチン、オブジェクト、実行可能ファイル、実行スレッド、手順、機能などを意味すると解釈されるものとし、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語、又は他のものとして呼ばれるかどうかを問わない。
【0071】
図1では、第2の態様による監視システム10が、例えば、線形加速器である放射線治療装置101と共に示されおり、両者は共に第3の態様による放射線治療システム100を形成している。放射線治療装置101は、
図1において参照番号110によって例示的に示されている放射線ビーム源を含み、この放射線ビームは放射線治療処置セッションのために患者1に向けられている。患者1は、空間の全ての3方向に移動可能な機械処置寝台103上に横たわっており、そのうちの2方向は
図1に矢印で示されている。追加的に、寝台103は、空間(図示せず)の全ての3方向に回転させてもよい。機械処置寝台103は、処置中に患者1が横たわる放射線治療処置システム100の一部として提供される。放射線治療装置101及び機械処置寝台103は、コンピュータ15の制御下で、処置寝台103及び放射線治療装置101の相対位置が、寝台103に隣接する矢印によって図に示されるように、横方向、縦方向、長手方向及び回転方向に変化され得るように配置される。
【0072】
放射線治療装置101は、ガントリ101aが延在する本体101bを含む。フィールドジョー及び/又はマルチリーフコリメータ(MLC)などのビーム制限デバイス(図示せず)が、放射線治療装置101の本体101bから離れたガントリ101aの端部に提供される。放射線が患者1に照射される角度を変動させるために、ガントリ101aは、処理ユニット12の制御下で、放射線治療装置101の本体101bの中心を通過する軸回りに回転するように配置されている。追加的に、放射線治療装置101による照射位置は、ガントリ101aの端部でビーム制限デバイスを回転させることによっても変動してもよい。
【0073】
放射線治療処置システム100は、この例では放射線治療装置101、特にガントリ101aに取り付けられているが、監視システム10と一緒にも配置され得る光フィールド放射デバイス11をさらに含む。光放射デバイス11は、放射線処置のために準備されている及び/又は放射線処置を受けている患者1の表面に光フィールドを放射し、光フィールド2は放射線処置の放射線入射に少なくとも実質的に対応する。
【0074】
監視システム10はさらに、従来のカメラ及び/又は定位固定カメラなどの監視デバイス12と、処理ユニット13とを含む。監視デバイス12は、配線(図示せず)によって、少なくとも1つの処理ユニット13を含むコンピュータ15に接続されている。監視デバイス12は、患者1の表面から反射された光フィールド2を監視する。光フィールド2をシーン内の他の照明源から区別するために、監視デバイス12は、少なくとも1つの特定波長の光を選択的に透過するように構成されている少なくとも1つのフィルタ14を含む。監視デバイス12で監視された光フィールド2は、処理ユニット13によって処理されて、監視された光フィールド2に少なくとも部分的に基づいて、患者1に対する放射線処置の放射線入射を決定する。
【0075】
使用の際に、カメラは、処置寝台103上に横たわっている患者1に放射された光フィールド2のビデオ画像を取得する。これらのビデオ画像は、配線を介してコンピュータ15に渡される。次いで、処理ユニット13は、患者1のビデオ画像を処理して、患者1への放射線入射を決定する。
【0076】
患者1の表面に放射された光フィールド2を監視することに加えて、監視デバイス12は、放射線治療装置101及び/又は処置寝台103の位置及び向きを監視して、放射線治療装置101によって放射された放射放射線ビーム110の患者1に対する向きを決定するように配置されている。これは、例えば、放射線治療装置101の表面上の多数のマーカー(図示せず)の位置を監視することによって達成されてもよい。
【0077】
患者1の表面への監視されたライトフィールド2の投影は、放射線処置計画に基づく所定の放射線入射と比較されてもよい。監視された光フィールド2と期待される放射線入射が一致しない場合、これは、セットアップにおけるエラーを示してもよく、処置は禁止、例えば一時停止され得る。代替的又は付加的に、アラームがトリガされてもよい。
【0078】
例えば、放射線処置前の患者の初期セットアップ中に、監視された光フィールド2と、それによって決定された患者1に対する放射線処置の放射線入射に基づいて、放射線処置のために準備されている及び/又は放射線処置を受けている患者1、特に患者を保持している処置寝台103の位置決め又は位置決めをトリガすることが実行される。実際のものを所定の放射線入射に位置合わせするために必要な位置決め命令が決定され、処置寝台103に送信される。その後、処置中に、初期セットアップからの任意の逸脱が識別されてもよく、逸脱が閾値よりも大きい場合、コンピュータ15は、放射線ビーム110に対して患者1を再位置決めするために、又は例えば患者1が再位置決めされ得るまで処置を停止するために、処置寝台103及び/又は放射線治療装置101に命令を送信する。
【0079】
詳細な説明及び/又は特許請求の範囲のいずれかにおいて上述したデバイスの構造的特徴は、対応するプロセスによって適切に代替されるときに、方法のステップと組み合わされてもよいことが意図されている。
【0080】
使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、別で明示的に記載されない限り、同様に複数の形も含む(すなわち、「少なくとも1つ」の意味を有する)ことが意図されている。本明細書において使用されるときに、用語「含む」、「備える」、「含んでいる」及び/又は「備えている」は、記載された特徴、整数、ステップ、動作、要素、及び/又はコンポーネントの存在を特定するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、コンポーネント、及び/又はそれらのグループの存在又は追加を排除しないことがさらに理解されるであろう。要素が別の要素に「接続された」又は「結合された」と呼ばれるときに、それは、別の要素に直接接続され得るか又は結合され得るが、別で明示的に記載されない限り、介在要素も存在してもよいことも理解されるだろう。さらに、本明細書で使用される場合、「接続された」又は「結合された」は、無線で接続された又は結合されたことを含んでもよい。本明細書で使用される場合、用語「及び/又は」は、関連付けられて列挙された項目のうちの1つ以上の任意及び全ての組み合わせを含む。任意の開示された方法のステップは、別で明示的に記載されない限り、本明細書で記載された正確な順序に制限されない。
【0081】
本明細書全体を通して、「一実施形態」若しくは「実施形態」又は「一態様」又は「あり得る」として含まれる特徴への言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造又は特質が、この開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味すると理解されたい。さらに、特定の特徴、構造又は特質は、この開示の1つ以上の実施形態において好適に組み合わされてもよい。前述の説明は、当業者が本明細書で説明された様々な態様を実施することを可能にするように提供される。これらの態様に対する様々な修正は当業者には容易に明らかであり、本明細書で定義された一般的原理は他の態様に適用されてもよい。単数形の要素への言及は、特にそのように記載されない限り、「1つ及び1つのみ」を意味することが意図されておらず、むしろ「1つ以上」を意味することが意図されている。別で特に記載されない限り、用語「いくつか」は、1つ以上を指す。
【0082】
したがって、範囲は、以下の特許請求の範囲の観点から判断されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線送達のために準備されている及び/又は放射線送達を受けている物体への放射線入射を監視するための方法であって、
放射線送達のために準備されている及び/又は放射線送達を受けている物体の表面に光フィールドを放射することであって、前記光フィールドは、前記放射線送達の放射線入射に少なくとも実質的に対応する、ことと、
前記物体の前記表面から反射された前記光フィールドを監視することと、
前記監視された光フィールドを処理して、前記監視された光フィールドに少なくとも部分的に基づいて、前記物体に対する前記放射線送達の前記放射線入射を決定することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記物体に対する前記放射線送達の前記放射線入射を決定することは、定義された放射線送達計画に従って、所定の放射線入射に対する前記放射線送達の前記放射線入射を決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記放射線送達の前記決定された放射線入射が、前記放射線送達計画から決定された前記所定の放射線入射と閾値量よりも大きく異なる場合、アラームをトリガすることをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記放射線送達の前記決定された放射線入射が、前記放射線送達計画から決定された前記所定の放射線入射と閾値量よりも大きく異なる場合、前記物体の照射を禁止することか、又は禁止をトリガすることをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記物体に対する前記放射線送達の前記決定された放射線入射に基づいて、放射線送達のために準備されている及び/又は放射線送達を受けている前記物体を位置決めすることか、又は位置決めをトリガすることをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記物体に対する前記放射線送達の前記決定された放射線入射に基づいて、前記物体を照射のための放射線治療装置を位置決めすることか、又は位置決めをトリガすることをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
放射線送達のために準備されている及び/又は放射線送達を受けている前記物体、及び/又は前記物体の照射のための放射線治療装置を位置決めすることか、又は位置決めをトリガすることは、反復的に実行される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記物体に対する前記放射線送達の前記放射線入射を決定することは、前記物体に対する少なくとも1つの放射線ビームの位置、向き及び/又は形状を決定することを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記物体に対する前記放射線送達の前記決定された放射線入射に基づいて、前記少なくとも1つの放射線ビームの位置、向き、サイズ及び/又は形状を調整することか、又は調整をトリガすることをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
放射線送達のために準備されている及び/又は放射線送達を受けている物体への放射線入射を監視するために放射線治療装置と共に使用するための監視システムであって、
放射線送達のために準備されている及び/又は放射線送達を受けている物体の表面に光フィールドを放射するように構成されている少なくとも1つの光フィールド放射デバイスであって、前記光フィールドは、前記放射線送達の放射線入射に少なくとも実質的に対応する、少なくとも1つの光フィールド放射デバイスと、
前記物体の前記表面から反射された前記光フィールドを監視するように構成されている少なくとも1つの監視デバイスと、
前記監視された光フィールドを処理して、前記監視された光フィールドに少なくとも部分的に基づいて、前記物体に対する前記放射線送達の前記放射線入射を決定するように構成されている少なくとも1つの処理ユニットと、を含む、監視システム。
【請求項11】
前記少なくとも1つの監視デバイスは、
光を選択的に透過するように構成されている少なくとも1つのフィルタを含む、請求項10に記載の監視システム。
【請求項12】
放射線治療処置システムであって、
物体に放射線を照射するように動作可能な少なくとも1つの放射線治療装置と、
少なくとも1つの請求項10に記載の監視システムと、を含む、放射線治療処置システム。
【請求項13】
放射線治療装置は、前記放射線送達の前記決定された放射線入射が、放射線送達計画から決定された所定の放射線入射と閾値量よりも大きく異なる場合にアラームをトリガすること、及び/又は前記物体の照射を禁止することか、又は禁止をトリガすることを行うように動作可能である、請求項12に記載の放射線治療処置システム。
【請求項14】
放射線治療処置システムはさらに、放射線治療装置に対して、放射線送達のために準備されている及び/又は放射線送達を受けている前記物体を位置決めするための寝台を含み、
前記寝台及び/又は前記放射線治療装置は、前記物体に対する前記放射線送達の前記決定された放射線入射に応じて、前記寝台及び/又は放射線治療装置の位置及び/又は向きを変化させるように構成されている、請求項12又は13に記載の放射線治療処置システム。
【請求項15】
放射線治療装置は、前記物体に対する前記放射線送達の前記決定された放射線入射に基づいて、少なくとも1つの放射線ビームの位置、向き及び/又は形状を調整するように構成されている、請求項12に記載の放射線治療処置システム。
【外国語明細書】