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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122721
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】ポリアミドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/06 20060101AFI20240902BHJP
   D01F 6/60 20060101ALI20240902BHJP
   C08G 69/46 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
C08J11/06 ZAB
D01F6/60
D01F6/60 351B
C08G69/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030417
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(74)【代理人】
【識別番号】100196298
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 高雄
(72)【発明者】
【氏名】八木ケ谷 謙一
(72)【発明者】
【氏名】大谷 尚史
(72)【発明者】
【氏名】本田 暢子
【テーマコード(参考)】
4F401
4J001
4L035
【Fターム(参考)】
4F401AA24
4F401CA52
4F401CA56
4F401EA11
4F401EA20
4F401EA59
4F401FA01Z
4F401FA07Z
4J001DA01
4J001EB08
4J001EC08
4J001GD00
4L035AA05
4L035AA06
4L035BB31
4L035BB55
4L035BB61
4L035BB71
4L035CC01
4L035JJ01
4L035JJ06
4L035JJ15
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、ポリアミド樹脂組成物から効率よくポリアミドを製造する方法を提供することにある。
【解決手段】本発明のポリアミドの製造方法は、ポリアミド樹脂組成物を金属塩化物および第1のアルコール類を含む金属塩化物アルコール溶液で加熱溶解してポリアミド加熱溶解液を得る工程、ならびに前記ポリアミド加熱溶解液を加熱したまま貧溶媒を添加する工程、
を含み、前記工程2で析出するポリアミドの質量が、前記ポリアミド加熱溶解液中のポリアミドの総質量に対して80質量%以上である、ことを特徴としている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程1:ポリアミド樹脂組成物を金属塩化物および第1のアルコール類を含む金属塩化物アルコール溶液で加熱溶解してポリアミド加熱溶解液を得る工程、ならびに
工程2:前記ポリアミド加熱溶解液を加熱したまま貧溶媒を添加する工程、
を含み、
前記工程2で析出するポリアミドの質量が、前記ポリアミド加熱溶解液中のポリアミドの総質量に対して80質量%以上である、
ことを特徴とするポリアミドの製造方法。
【請求項2】
前記貧溶媒が水または第2のアルコール類及びその混合物である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記工程2において、前記ポリアミド加熱溶解液の質量で、前記ポリアミド加熱溶解液を加熱したまま貧溶媒を添加した後の溶液の合計質量で割った希釈率が、1~20倍である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記工程2において、1時間あたりに前記ポリアミド加熱溶解液の0.1~10倍容量の貧溶媒を添加する、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記金属塩化物が塩化亜鉛または塩化カルシウムである、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項6】
前記第1のアルコール類と前記第2のアルコール類とが同じ化合物である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項7】
前記第1のアルコール類がメタノールである、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項8】
前記第2のアルコール類がメタノールである、請求項2に記載の製造方法。
【請求項9】
前記工程1で加熱溶解する温度が30~90℃である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項10】
前記ポリアミド加熱溶解液中のポリアミド濃度が5~15質量%である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項11】
ポリアミドがポリヘキサメチレンアジパミドである、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項12】
さらに、
工程3:工程2で得られた貧溶媒を添加した溶液を冷却する工程、
を含む、請求項1または2に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
代表的なエンジニアリングプラスチックである、ナイロン6、ナイロン66をはじめとしたポリアミドは、耐熱性や良好な力学的特性を持ち、繊維や自動車部品、電気製品部品などに幅広く用いられており、現代社会において代替の効かない材料の一つである。
【0003】
近年では、省資源、カーボンニュートラルを目的としてプラスチックのリサイクルに関する技術開発がなされているが、ポリアミドも例外ではない。
【0004】
リサイクルとしては、マテリアルリサイクルと呼ばれる、一度成形したものを再度ペレット化するものと、ケミカルリサイクルと呼ばれる解重合によりモノマーを再利用するものに大別される。マテリアルリサイクルは成形品に含まれるポリマーの劣化や添加成分がそのままリサイクルポリマーに残るため、品質が安定化しないことが懸念されるものの、化学反応を伴わず、また必要とする副原料も少ないため、投入する資源、エネルギーは少なくて済むことから、用途を固定して循環する場合などはマテリアルリサイクルが選択される。また、ケミカルリサイクルを実施する前にも、工場や市場から回収した加工済み、使用済みポリアミドから添加物、コーティングなどを取り除く場合には、マテリアルリサイクルと同様に清浄なポリアミドを回収する工程を経るため、マテリアルリサイクル技術は、ケミカルリサイクルを行うためにも有用な技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5841598号公報
【特許文献2】特開2018-172618号公報
【特許文献3】特開昭62-218421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
使用済みポリアミドを、その夾雑物を取り除いて清浄な状態にする物理的な方法としては、回収物を破砕後に比重分離する方法などが挙げられる(特許文献1)。この方法は少ないエネルギーで分離はできるものの、ポリアミドと夾雑物が混合、接合、接着などにより、強く結びついている場合には分離することは難しい。
【0007】
別の方法としては、ポリアミドを溶媒で一度溶解し、夾雑物を不溶物として除去したのちに何らかの方法でポリアミドを析出させ、回収するという方法も考えられる。しかし、ポリアミドを溶解する溶媒は、ギ酸、硫酸などの強酸やHFIPのような高価な溶媒など、工業的に用いる溶媒としては適していないものが多い。工業的に使用しやすい溶媒の使用例としては、エチレングリコールによる溶解回収方法がある(特許文献2)。しかし、この方法では、非常に高温の反応が必要であるため、ポリアミドのグリコリシスの懸念があるとともに、使用した溶媒をシャーベット状の固体からすべて留去・乾燥する必要があるため、反応時の加熱と合わせて多くのエネルギーを必要とすると考えられる。
【0008】
特許文献3には、加圧状態でポリアミドを130℃以上の高温で溶解し、3~20℃/Hrで徐冷することで粉末を得る方法が記載されている。しかし、当該温度でもわずかながらポリアミドのアルコールによる分解や、夾雑物からの添加剤の溶出も懸念されるため高温での処理は好ましくない。また、徐冷に長時間かかるため、工業的なプロセスとしては不適である。
【0009】
従って、本発明は、ポリアミド樹脂組成物から効率よくポリアミドを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]
工程1:ポリアミド樹脂組成物を金属塩化物および第1のアルコール類を含む金属塩化物アルコール溶液で加熱溶解してポリアミド加熱溶解液を得る工程、ならびに
工程2:前記ポリアミド加熱溶解液を加熱したまま貧溶媒を添加する工程、
を含み、
前記工程2で析出するポリアミドの質量が、前記ポリアミド加熱溶解液中のポリアミドの総質量に対して80質量%以上である、
ことを特徴とするポリアミドの製造方法。
[2]
前記貧溶媒が水または第2のアルコール類及びその混合物である、[1]に記載の製造方法。
[3]
前記工程2において、前記ポリアミド加熱溶解液の質量で、前記ポリアミド加熱溶解液を加熱したまま貧溶媒を添加した後の溶液の合計質量で割った希釈率が、1~20倍である、[1]または[2]に記載の製造方法。
[4]
前記工程2において、1時間あたりに前記ポリアミド加熱溶解液の0.1~10倍容量の貧溶媒を添加する、[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]
前記金属塩化物が塩化亜鉛または塩化カルシウムである、[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]
前記第1のアルコール類と前記第2のアルコール類とが同じ化合物である、[2]または[2]を引用する[3]~[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7]
前記第1のアルコール類がメタノールである、[1]~[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8]
前記第2のアルコール類がメタノールである、[2]または[2]を引用する[3]~[7]のいずれかに記載の製造方法。
[9]
前記工程1で加熱溶解する温度が30~90℃である、[1]~[8]のいずれかに記載の製造方法。
[10]
前記ポリアミド加熱溶解液中のポリアミド濃度が5~15質量%である、[1]~[9]のいずれかに記載の製造方法。
[11]
ポリアミドがポリヘキサメチレンアジパミドである、[1]~[10]のいずれかに記載の製造方法。
[12]
さらに、
工程3:工程2で得られた貧溶媒を添加した溶液を冷却する工程、
を含む、[1]~[11]のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ポリアミド樹脂組成物から効率よくポリアミドを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。
【0013】
本実施形態のポリアミドの製造方法は、ポリアミド樹脂組成物を金属塩化物および第1のアルコール類を含む金属塩化物アルコール溶液で加熱溶解してポリアミド加熱溶解液を得る工程(本明細書において「工程1」と称する場合がある)、ならびに上記ポリアミド加熱溶解液を加熱したまま貧溶媒を添加する工程(本明細書において「工程2」と称する場合がある)を含み、上記工程2で析出するポリアミドの質量が、上記ポリアミド加熱溶解液中のポリアミドの総質量に対して80質量%以上である。
本実施形態の製造方法は、工程1、2のみの方法であってもよいし、さらに後述の工程3等の他の工程を含んでいてもよい。
【0014】
本実施形態の製造方法で使用する化合物などを説明する。
【0015】
<ポリアミド>
上記ポリアミドには、ジアミン化合物とジカルボン酸化合物を重縮合したものや、環状ラクタムを開環重合したもののような、アミド結合により重合したポリマーを用いることができる。
上記ジアミン化合物としては、特に限定されないが、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナンジアミン、メチルペンタンジアミン、p-フェニレンジアミンなどが挙げられる。
上記ジカルボン酸化合物としては、特に限定されないが、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などが挙げられる。
上記環状ラクタムとしては、特に限定されないが、ε-カプロラクタム、ウンデカンラクタム、ラウリルラクタムなどが挙げられる。
上記ジアミン化合物、上記ジカルボン酸化合物および上記環状ラクタム化合物の組み合わせについては、特に限定されず、それぞれの種類についても複数の種類の化合物を併用しても構わない。ポリヘキサメチレンアジパミド(例えば、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸からなるポリヘキサメチレンアジパミド)は溶解性が高く、本実施形態のポリアミドの製造方法に適している。
【0016】
上記ポリアミドの形状や粒径は特に限定されない。ポリアミドの粒径、粒度分布の測定方法については特に限定されないが、レーザー回折法、レーザー散乱法、遠心沈降法、パーティクルトラッキング法、動的散乱光法などが挙げられる。
【0017】
<ポリアミド樹脂組成物>
上記ポリアミド樹脂組成物は、上記ポリアミドのみからなっていてもよいし、上記ポリアミドと他の成分とを含んでいてもよい。例えば、ポリアミドに、他の樹脂、金属などが他の成分として混合、付着、塗布していてもよい。なお、本実施形態のポリアミドの製造方法において、ポリアミド以外の他の成分は除かれることが好ましい成分である。
上記ポリアミド樹脂組成物は、シリコン樹脂および/またはウレタン樹脂(好ましくはシリコン樹脂)により被覆されたポリアミドを含んでいてよく、シリコン樹脂および/またはウレタン樹脂(好ましくはシリコン樹脂)により被覆されたポリアミドのみからなっていてもよい。
上記ポリアミド樹脂組成物100質量%に対する上記ポリアミドの質量割合は、短時間で、効率よくポリアミドが得られる観点から、30~100質量%であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上、特に好ましくは100質量%である。
ポリアミド以外の他の成分が含まれる場合、ポリアミドとそれらの他の成分を分離する工程を含んでいてよい。分離の方法については特に限定されないが、ポリアミド樹脂組成物を溶解した状態で、他の成分が不溶であればろ過、遠心分離、沈降分離などの方法で分離できる。ポリアミドと共に溶媒に溶解してしまう場合には、溶解状態での抽出分離、膜分離、電気透析などによる分離、または後述の析出工程でポリアミドを析出させた後に洗浄するなどの方法が考えられる。
【0018】
<金属塩化物アルコール溶液>
上記金属塩化物アルコール溶液は、金属塩化物および第1のアルコール類を含み、さらに他の成分を含んでいてもよい。
中でも、ポリアミドの溶解度の観点から、金属塩化物アルコール溶液100質量%に対する上記金属塩化物と上記第1のアルコール類との合計質量の割合が、80質量%以上であることが好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
【0019】
上記第1のアルコール類としては、メタノール、エタノール、直鎖状または分岐鎖状のプロパノール、直鎖状または分岐鎖状のブタノール、エチレングリコール、プロピレンジオール、ブタンジオールなどのジオールこれらの組み合わせなどが挙げられる。中でも、ポリアミドの溶解度の観点からメタノール、エタノール、またはこれらの組み合わせが好ましく、メタノールがより好ましい。
【0020】
上記金属塩化物アルコール溶液100質量%に対する金属塩化物の質量割合は、10~50質量%であることが好ましく、より好ましくは15~25質量%である。上記質量割合が10質量%未満だとポリアミドの溶解量が少なく、多量の溶媒が必要になる。また、50質量%を超えると金属塩化物が溶け残りやすく、不純物として混入しやすくなる。15~25質量%であるとポリアミドを一層効率よく製造することができる。
【0021】
上記金属塩化物は、塩化亜鉛、塩化マグネシウム、塩化カルシウムなどが挙げられ、塩化亜鉛、塩化カルシウムが好ましく、塩化カルシウムが最も好ましい。
上記金属塩化物は、無水物が好ましい。水が混入するとポリアミドの溶解度が低下する。ただし、溶解度が許容できる範囲で水和物(例えば塩化カルシウムであれば二水和物)を混ぜても構わない。
上記金属塩化物中の水の質量割合は、30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下であり、水を含まないことが特に好ましい。
上記金属塩化物アルコール溶液は、上記金属塩化物が塩化カルシウムであり、上記第1のアルコール類がメタノールである溶液であることが好ましい。
【0022】
本実施形態の製造方法における各工程について説明する。
【0023】
<工程1 ポリアミド加熱溶解液を得る工程>
ポリアミド樹脂組成物は金属塩化物アルコール溶液により加熱溶解処理を行う。
上記工程1では、上記ポリアミド樹脂組成物と上記金属塩化物アルコール溶液とを混合し、加熱溶解する。
【0024】
加熱溶解する温度は、特に限定されないが、30~90℃であることが好ましく、40~60℃であることがより好ましい。温度が低いと溶解が遅くなり、90℃を超えると、沸点より高い温度などとなり、腐食性や分解性の観点から好ましくない。
上記工程1中、温度は一定であってもよいし、上記範囲内で変化させてもよい。
【0025】
溶解はバッチ式、連続式のいずれでも構わない。
バッチ式の場合、攪拌については特に限定されないが、攪拌することが好ましい。攪拌することでポリアミドの溶解速度が向上する。
連続式の場合、固体に対して連続的に溶媒を流通させても構わないし、溶液を循環させても構わない。使用する溶媒を低減できるため、循環させた方が好ましい。
【0026】
上記ポリアミド樹脂組成物と金属塩化物アルコール溶液とを加熱溶解する際に用いる容器の形状は、特に限定されず、槽型や循環型などいずれの形状を用いても構わない。
【0027】
加熱溶解時間は、特に限定されないが、5分~100時間であることが好ましい。
【0028】
工程1に用いる上記金属塩化物アルコール溶液100質量%に対する上記ポリアミド樹脂組成物の質量割合については特に限定されないが、5~15質量%であることが好ましく、より好ましくは7~13質量%である。5質量%未満では必要な溶媒が多くなりすぎてしまい、15質量%を超えると粘度が高くなって溶解時間の長時間化、操作性の悪化が起こる。
また、上記ポリアミド加熱溶解液100質量%中のポリアミドの質量割合は、上記と同様の理由から、5~15質量%であることが好ましく、より好ましくは7~13質量%である。
【0029】
工程1で得られた上記ポリアミド加熱溶解液は、連続して工程2で使用されることが好ましい。工程1で得られた上記ポリアミド加熱溶解液は、含まれるポリアミドが全て溶解していることが好ましい。
上記ポリアミド加熱溶解液は、温度を上記加熱温度±15℃以内(好ましくは上記加熱温度±10℃以内、より好ましくは上記加熱温度±5℃以内)に保持するなどして、後述の工程2で使用するまでポリアミドが溶解した状態を維持することが好ましい。
【0030】
<工程2 貧溶媒を添加する工程>
工程2は、工程1で得たポリアミド加熱溶解液を加熱したまま、さらに貧溶媒を添加する工程である。貧溶媒を添加した後に、貧溶媒希釈液内にポリアミドの析出物を得ることができる。
【0031】
工程2で用いる上記貧溶媒としては、水;クロロホルム;メタノール、エタノール、直鎖状または分岐鎖状のプロパノール、直鎖状または分岐鎖状のブタノールなどのアルコール、エチレングリコール、プロピレンジオール、ブタンジオールなどのジオールなどの第2のアルコール類;及びこれらの組み合わせ;などが挙げられる。上記貧溶媒は、金属塩化物が析出しないように、水、第2のアルコール類及びこれらの組み合わせが好ましく、より好ましくはアルコール、さらに好ましくはメタノールである。また、上記貧溶媒は、溶媒を再利用する際の回収の容易さの観点で、上記金属塩化物アルコール溶液に含まれる第1のアルコール類と同じであってもよい。
上記貧溶媒とは、例えば、ポリアミド(例えば、ナイロン66)1gに対して溶媒100gを添加し、20度で1時間攪拌した後に溶液中に溶出したポリアミドの量が0.05g以下である溶媒としてよい。
【0032】
ポリアミド加熱溶解液を加熱したまま貧溶媒を添加する方法について詳細に記述する。
貧溶媒による希釈率は1~20倍が好ましく、より好ましくは3~10倍である。本明細書における希釈率とは、貧溶媒添加前のポリアミド加熱溶解液の質量で、ポリアミド加熱溶解液を加熱したまま貧溶媒を添加した後の溶液(本明細書において、「貧溶媒希釈液」と称する場合がある)の合計質量を割った数値である。この時、希釈後の貧溶媒希釈液中に析出があったとしても析出物を含んだ質量を希釈後の貧溶媒希釈液質量とする。希釈率が1倍以上であると、粒子が成長してより大きい粒径のポリアミドを得ることができる。また、希釈率が20倍以下であると、粒度分布の狭いポリアミドを得ることができる。
【0033】
貧溶媒を添加する際の温度(すなわち、「加熱したまま」の温度)は、工程1の上記加熱溶解するときの温度±20℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは工程1の上記加熱溶解するときの温度±10℃の範囲内、さらに好ましくは工程1の上記加熱溶解するときの温度±5℃の範囲内、特に好ましくは工程1の上記加熱溶解するときの温度±3℃の範囲内である。上記範囲の温度で貧溶媒を希釈することにより、冷却晶析より粒径が大きいポリアミドを得ることができる。
上記工程2中、温度は一定であってもよいし、上記範囲内で変化させてもよい。
ここで、工程1の加熱溶解する温度が変化する場合、縦軸を温度、横軸を時間とする工程1の温度変化曲線から求まる積分値を工程1の時間で割った温度としてよい。また、工程2の温度が変化する場合も同様である。
【0034】
1時間当たりの添加する貧溶媒の容量(本明細書において、「添加速度」と称する場合がある)は、ポリアミドの回収効率が向上する観点から、1時間あたりに貧溶媒添加前のポリアミド加熱溶解液の0.1~10倍容量の貧溶媒を添加することが好ましく、より好ましくは0.5~5倍容量である。添加速度が上記範囲であると、ポリアミドの製造効率が一層向上する。
なお、添加時間が1時間に満たない場合は、1時間当たりの容量に換算して計算して求めてよい。
【0035】
工程2において貧溶媒は連続的に添加してもよいし、断続的に添加してもよい。なお上記添加時間とは、ポリアミド加熱溶解液に貧溶媒を添加している時間をいい、添加していない時間は含まないものとする。
【0036】
工程2で析出するポリアミドの質量は、工程1で得られた上記ポリアミド加熱溶解液中に含まれるポリアミドの全質量に対して80質量%以上であり、好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。本実施形態の製造方法では、工程2で多くのポリアミドを析出させることができるため、製造効率がよい。上記割合を80質量%以上とする方法としては、工程2で貧溶媒を添加する際の温度を上述の範囲とする、貧溶媒の希釈率を上述の範囲とする、貧溶媒に上述の溶媒を用いる、などの方法が挙げられる。
本実施形態のポリアミドの製造方法によれば、加熱したまま貧溶媒を添加して製造されるポリアミドの質量割合が高いため、温度を変える作業が必要なくなり、より効率的にポリアミドを得ることができる。また、加熱したまま貧溶媒を添加することで、ゆっくりとポリアミドが析出するため、冷却して析出させるよりも粒径が大きいポリアミドが得られやすい。
【0037】
上記貧溶媒は、上記貧溶媒を添加する際の温度まで加熱してから添加することが好ましい。なお、沸点より高い温度で添加する場合は、加圧状態で添加してもよい。
【0038】
希釈に用いる貧溶媒は水を含んでいてもよい。貧溶媒100質量%中の含水量は特に限定されないが、50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.005~10質量%である。
【0039】
貧溶媒を添加する方法については特に限定されず。バッチ式、連続式のいずれでも構わない。
バッチ式の場合、攪拌については特に限定されないが、攪拌することが好ましい。攪拌することで温度、濃度が均一となる。
【0040】
上記ポリアミド加熱溶解液を上記貧溶媒で希釈する容器の形状は、特に限定されず、槽型や循環型などいずれの形状を用いても構わない。工程1と同じ容器を用いてよい。
【0041】
<工程3 ポリアミドを析出する工程>
本実施形態のポリアミドの製造方法は、上記工程2の後に、工程2で得られた貧溶媒希釈液を冷却して、ポリアミドを析出する工程(本明細書において「工程3」と称する場合がある)を含んでいてよい。
上記工程2で得られた貧溶媒希釈液を連続して工程3で使用してもよいし、間隔をあけて貧溶媒希釈液を工程3に使用してもよい。
【0042】
上記貧溶媒希釈液を冷却する際、攪拌することが好ましい。攪拌することで温度、濃度が均一となり、粒径制御がしやすくなる。攪拌に用いる機器、方法によって、攪拌による粒子の破壊、せん断が起こりにくい条件で攪拌することが好ましい。
【0043】
冷却速度は、特に限定されないが、10~100℃/Hrが好ましく、より好ましくは20~70℃/Hr、さらに好ましくは40~68℃/Hrである。10℃/Hr未満では時間が長くかかり、100℃/Hrを超える冷却速度では、急激な析出により粒径が小さくなる。冷却速度を変えることで粒径を制御することができる。
【0044】
冷却後の温度は、特に限定されないが、希釈時の温度よりも10℃以上低いことが好ましい。温度差が10℃よりも小さいと、析出が少なく、粒子が成長しにくい。
【0045】
工程2又は工程3等で析出した固体は、以下の方法で回収してよい。
析出した固体は、固液分離により回収することが好ましい。
固液分離の方法については特に限定されないが、ろ過、遠心分離、沈降分離などが挙げられる。いずれの方法についても、バッチ式、連続式でも構わない。
【0046】
固液分離で得られた固体については、洗浄溶媒で洗浄を行うことが好ましい。洗浄溶媒については特に限定されないが、析出時の液体部分の組成の溶液や良溶媒、金属塩化物などを溶解することができる溶媒を用いることが好ましい。メタノール、エタノールなどのアルコールおよび水が好ましく、それらを組み合わせてもよい。
【0047】
洗浄方法は、特に限定されず、バッチ洗浄する方法、ろ過器または遠心分離装置などの固液分離装置の中に固体を入れた状態で洗浄溶媒を流して連続洗浄する方法およびそれらを組み合わせた方法などが挙げられる。
【0048】
洗浄後のポリアミドは、加熱および/または減圧により洗浄溶媒を留去して乾燥固体とすることでポリアミドを得ることができる。
【0049】
以上のように、本実施形態の製造方法によれば、エンジニアリングプラスチックとして有用なポリアミドを溶解、析出させてポリアミドを製造するにあたって、ポリアミド加熱溶解液を加熱したまま貧溶媒を添加し、析出ポリアミドの質量を上記範囲にすることで、効率よくポリアミドを製造することができる。また、粒径が大きいポリアミドを得ることができる。
【0050】
<本実施形態の製造方法により得られるポリアミド>
本実施形態の製造方法により得られるポリアミド(本明細書において、「製造ポリアミド」と称する場合がある)は、粒径が大きい。
上記製造ポリアミドのメジアン径は、20μm以上であることが好ましく、より好ましくは30~70μm、さらに好ましくは45~65μm、特に好ましくは50~60μmである。
上記製造ポリアミドの粒度分布は、下記式(1)で表されるSを用いて10をS乗した値10であるスパンが、5以下であることが好ましく、より好ましくは4以下、さらに好ましくは3以下である。
S=log(d90/d10)/log(d50) ・・・(1)
(ここで、上記式(1)において、dn(nは10、50または90を表す)は、上記製造ポリアミドをレーザー回折・散乱法で粒度分布を測定し、粒径がdnよりも小さい粒子の数が全体の粒子数に対してn%となるときの粒径を指す。)
上記メジアン径および上記粒度分布は、以下の方法により測定することができる。
粒子径分布測定装置
測定装置:MT3300EX(Microtrac MRB)
透過性:透過
溶媒:水
分布:体積
メジアン径とは、ある粉体に対して、その粒径よりも大きい粒子と小さい粒子の数が等しくなる粒径のことを指す。また、下記一般式(1)により導出される数値をSとした場合に、「10」により表される数値をスパンとし、粒度分布の指標とする。この値が1に近いほど粒度分布が狭いことを示す。
S=log(d90/d10)/log(d50) ・・・(1)
(ここで、上記式(1)において、dn(nは10、50または90を表す)とは、得られた製造ポリアミドをレーザー回折・散乱法の方法で粒度分布を測定し、粒径がdnよりも小さい粒子の数が全体の粒子数に対してn%となるときの粒径を指す。)
なお、d50はメジアン径である。
【0051】
(ポリアミド繊維の紡糸)
上記製造ポリアミドの繊維を紡糸してポリアミド基布とすることができる。
溶融紡糸における紡糸温度は290℃以上310℃以下であることが好ましい。紡糸温度を310℃以下に設定することで、ポリアミドの熱分解が抑えられるため好ましく、より好ましくは300℃以下であり、さらに好ましくは295℃以下である。一方で、紡糸温度が290℃以上であることでポリアミドが十分な溶融流動性を示し、吐出孔間の吐出量が均一化され、高倍率延伸が可能となるため好ましい。
【0052】
溶融紡糸工程における滞留時間(ポリアミド樹脂が溶融され、紡糸口金から吐出されるまでの時間)は短いほど好ましい。滞留時間は30分以下であることが好ましく、15分以下であることがより好ましく、0.5分以上7分以下であることがさらに好ましい。溶融温度においてポリマー中のシクロペンタノン類が増加するため、短時間であることが好ましい。
【0053】
高温、高湿の環境下での熱安定性のためには、ポリアミドに対して銅濃度が1~500質量ppmとなるように銅化合物を添加するのが好ましく、より好ましくは30~500質量ppmである。そうすることで、高温、高湿の環境下に長時間置かれたり、オゾンが多く含まれる環境下に長期間暴露されたりしても、機械的性能の低下が極めて有効に抑制される。上記銅含有率が30質量ppm未満では耐熱強度保持率が低下し、500質量ppmを超える添加量では強度が低下する。
【0054】
銅化合物としては、その種類を特に制限するものではなく、例えば、酢酸銅などの有機銅塩、あるいは塩化第一銅、塩化第二銅などのハロゲン化銅などを好ましく用いることができる。銅化合物は、金属ハロゲン化合物と併用することがより好ましい。金属ハロゲン化合物としては、例えば、沃化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウムなどが挙げられる。本実施形態における好ましい組み合わせは、沃化第一銅と沃化カリウム、および酢酸銅と沃化カリウムである。尚、ポリアミド中の銅含有量は、原子吸光法や比色法などにより測定することができる。
【0055】
以下に制限されないが、安定剤として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などの有機系酸化防止剤や熱安定剤、ヒンダードアミン系、ベンゾフェノン系、イミダゾール系などの光安定剤や紫外線吸収剤などを添加してもよい。添加量は適切な量を選択すればよいが、ポリアミドに対して1~1000質量ppm添加することができる。これら添加剤は、1種のみの単独使用だけではなく、数種を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
また、溶融紡糸工程において、溶融部には1軸または2軸のエクストルーダーが用いられることが好ましい。このエクストルーダーによってポリアミド樹脂に適度な圧力を加えながらポリマー配管、ギヤポンプ、紡糸パックへ導くことができる。
【0057】
また、紡糸口金から吐出される前の段階で、金属繊維不織布フィルターや、サンドなどによってポリアミド樹脂を濾過することで、紡糸操業が安定化するため好ましい。
紡糸口金における口金孔の形状は製造するフィラメントを構成する単繊維の断面形状に応じて選択すればよい。紡糸口金からの紡出糸を冷却風にて固化し、工程油剤を付与し、引取った後、延伸し、熱処理することでポリアミド繊維を得る。
【0058】
ポリアミド繊維の油剤付着率は0.5~1.5wt%であることが好ましい。油剤付着率が1.5wt%以下であれば、べたつき(タック性)によって緯糸が飛走し難いということがほとんどなく、また、交絡による単糸集束以上に単糸集束が良すぎて見掛け断面積が減ることにより緯糸搬送媒体である空気や水が緯糸搬送力を失ってゆくことがなく、製織安定性が良好である。一方、油剤付着率が0.5wt%以上であれば、適切な摩擦低減効果によりスムーズに緯糸供給されるため、製織停台なく生産性に優れる。
【0059】
(ポリアミド基布)
製織において、織機は、ウォータージェット織機、エアジェット織機、レピア織機などを用いることができる。エアバッグ用基布は、高密度織物であり、整経工程および製織工程においては、経糸張力を高めて、工程通過性よく製造することが好ましい。製織で経糸張力を高めに設定し、効果的な筬打ち条件を作ることで高密度織物が形成される。
【0060】
製織された織物は、精練工程でポリアミド繊維の工程油剤を洗い落とすことができる。
精練工程は、温水や加圧熱水などを選択でき、処理工程は1段階でも、2段階以上の多段階処理でもよい。また従来公知の精練剤を付与して精練を施すことも好ましい。
【0061】
織物は熱セット工程で熱固定することが好ましい。熱セット温度は110℃以上200℃以下が好ましく、熱セット時間は0.1分以上30分以下の範囲で適宜選択すればよい。そして熱セット工程で織物収縮力が所定の力に保持される様に緊張させながら乾燥することが好ましい。織物を熱固定すれば、引き続く樹脂塗布工程の工程性の安定化が図れる。
【0062】
精練工程後の織物は熱セット工程の前に、必要に応じて乾燥処理を施してもよい。乾燥温度は80℃以上130℃以下の範囲であることが好ましく、100℃以上120℃以下であることがより好ましい。また、処理時間は0.1分以上30分以下で適宜選択することが好ましい。乾燥は織物を弛緩状態で行ってもよいし、緊張状態で行ってもよい。
【0063】
ポリアミド基布は、熱セット工程を経て、ノンコート基布に用いることもできるが、シリコンやウレタンなどのコート剤を塗工したり、薄膜のフィルムなどを熱ラミネートしても良い。
【0064】
織物表面にコーティングする方法としては、織物を樹脂溶液槽に浸漬させた後、余分な樹脂をマングル、バキューム、さらにはコーティングナイフなどを用いて形成・均一化する方法、コンマコーターなどのバーコーティング法、スプレー装置やフォーミング装置を用いて樹脂を吹き付ける方法などが採用できる。これらの内、樹脂を均一に、かつ、少なく塗布するという観点からは、ナイフコーティングする方法が好ましい。
【0065】
塗工量は、5g/m以上100g/m以下であり、より好ましくは10g/m以上70g/m以下であり、一層好ましくは15g/m以上30g/m以下である、5g/m以上の塗布量で、必要とする気密性が得られる。一方で、100g/m以下の塗布量で、コート織物が柔軟性を有し、収納性が良く、バッグ全体の重量が抑えられる。
【0066】
<エアバッグ>
エアバッグは、運転席、助手席、サイド(インフレータブルカーテンを含む)、後部席など通常使用されているエアバッグの中から適宜選定すればよく、エアバッグの袋体の裁断形状も、円形、長円形、楕円形、矩形、多角形、あるいはこれらの組み合わせなど、いずれでもよく、要望される展開形状を満足するものであればよい。
縫目形状としては、単一直線または複数の並列直線、ジグザグ状、直線とジクザグの併用、直線と斜線、などがある。縫い方も、本縫い、二重環縫い、など通常使用されているもので良く、縫いピッチも20~60回/10cmの範囲から選定すれば良い。また、縫糸太さも、420d~3000dの中から選定すれば良く、糸の材質も、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ビニロン系繊維、アラミド系繊維、ガラス繊維などの市販の縫糸を用いることができる。
【実施例0067】
以下、本発明の実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0068】
実施例および比較例において使用された分析方法は、以下の通りである。
【0069】
<粒度分布>
粒子径分布測定装置
測定装置:MT3300EX(Microtrac MRB)
透過性:透過
溶媒:水
分布:体積
分析結果をもとに、メジアン径を粒径として示した。メジアン径とは、ある粉体に対して、その粒径よりも大きい粒子と小さい粒子の数が等しくなる粒径のことを指す。また、下記一般式(1)により導出される数値をSとした場合に、「10」により表される数値をスパンとし、粒度分布の指標として示した。この値が1に近いほど粒度分布が狭いことを示す。
S=log(d90/d10)/log(d50) ・・・(1)
(ここで、上記式(1)において、dn(nは10、50または90を表す)とは、得られた粉末ポリアミドをレーザー回折・散乱法の方法で粒度分布を測定し、粒径がdnよりも小さい粒子の数が全体の粒子数に対してn%となるときの粒径を指す。)
なお、d50はメジアン径である。
【0070】
[実施例1]
撹拌子を入れた2000mLガラス瓶に、ポリアミド66 10g、20wt%塩化カルシウムメタノール溶液100gを添加し、60℃の水浴につけてマグネチックスターラーで12時間攪拌しながらポリアミドを溶解させた。ガラス瓶を水浴につけたまま、攪拌しながらメタノール1100gを滴下していった。滴下終了後、上澄みの溶液を分析した結果、析出したポリアミド量は9.5gであった。ガラス瓶を氷浴につけて攪拌しながら冷却を行った。冷却後、吸引ろ過により析出固体を回収した。水で十分に洗浄を行い、40℃で真空乾燥を行って、粉末ポリアミド9.8gを得た。
得られたポリアミドについて、分析を行った結果、メジアン径55.4μm、スパン2.52であることが分かった。
【0071】
[比較例1]
撹拌子を入れた1000mLガラス瓶に、ポリアミド66 10g、20wt%塩化カルシウムメタノール溶液100gを添加し、60℃の水浴につけてマグネチックスターラーで12時間攪拌しながらポリアミドを溶解させた。ガラス瓶を水浴につけたまま、攪拌しながらメタノール444gを滴下していった。滴下終了後、上澄みの溶液を分析した結果、析出したポリアミド量は6.0gであった。ガラス瓶を氷浴につけて攪拌しながら冷却を行った。冷却後、吸引ろ過により析出固体を回収した。水で十分に洗浄を行い、40℃で真空乾燥を行って、粉末ポリアミド9.8gを得た。
得られたポリアミドについて、分析を行った結果、メジアン径44.2μm、スパン13.2であることが分かった。
【0072】
[比較例2]
撹拌子を入れた1000mLガラス瓶に、ポリアミド66 10g、20wt%塩化カルシウムメタノール溶液100gを添加し、60℃の水浴につけてマグネチックスターラーで12時間攪拌しながらポリアミドを溶解させた。ガラス瓶を氷欲につけて5℃まで冷却した。この時点で上澄みの溶液を分析した結果、析出したポリアミド量は3.0gであった。その後、攪拌しながらメタノール1110gを滴下していった。その後、吸引ろ過により析出固体を回収した。水で十分に洗浄を行い、40℃で真空乾燥を行って、粉末ポリアミド9.8gを得た。
得られたポリアミドについて、分析を行った結果、メジアン径44.2μm、スパン16.0であることが分かった。