(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122723
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】軟質部材の取付構造
(51)【国際特許分類】
B43L 19/00 20060101AFI20240902BHJP
B43K 29/02 20060101ALI20240902BHJP
B43K 3/00 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
B43L19/00 C
B43K29/02 F
B43K3/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030421
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】山口 雅也
(57)【要約】
【課題】軟質部材の取付作業が容易でありながら、軟質部材と筒体とを強固に取り付けることができ、さらに軟質部材と本体との嵌合状態を長期に渡って維持することができる軟質部材の取付構造を提供する。
【解決手段】筒体1の上端に突部2を設ける。突部2の外周面に雄ねじ部21を設ける。軟質部材4の端部に取付孔5を設ける。突部2の雄ねじ部21と取付孔5の内周面とが嵌合する。筒体1の端部に、軟質部材4の外周を包囲する筒状の規制壁部3を設ける。突部2の上端が規制壁部3の上端より上方に突出する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記具の軸筒又はキャップを構成する筒体の上端部に軟質部材を取り付ける軟質部材の取付構造であって、
前記筒体の端部に、軸方向に突出する突部が設けられ、
前記軟質部材は、弾性材料により一体に形成され、熱変色性の筆跡の表面を擦って該筆跡を熱変色させる摩擦変色部材であり、
前記突部の外周面には雄ねじ部が設けられ、
前記軟質部材の端部には取付孔が設けられ、
前記突部の雄ねじ部と前記取付孔の内周面とが嵌合することにより、前記筒体に前記軟質部材が取り付けられることを特徴とする軟質部材の取付構造。
【請求項2】
前記筒体の端部に、前記軟質部材の外周を包囲する筒状の規制壁部が設けられ、前記突部の上端が前記規制壁部の上端より上方に突出していることを特徴とする請求項1に記載の軟質部材の取付構造。
【請求項3】
前記筒体に前記軟質部材が取り付けられた状態で、前記軟質部材の外周面と前記規制壁部の内周面とが接触又は圧接することを特徴とする請求項2に記載の軟質部材の取付構造。
【請求項4】
前記取付孔の内周面に、前記雄ねじ部と螺合可能な雌ねじ部が設けられ、前記筒体に前記軟質部材が取り付けられた状態で、前記取付孔の内周面と前記突部の外周面とが螺合し、前記軟質部材の外周面と前記規制壁部の内周面とが接触又は圧接することを特徴とする請求項3に記載の軟質部材の取付構造。
【請求項5】
前記筒体の端部に開口部が設けられ、前記開口部の内周面に取付可能な尾栓を備え、前記尾栓が前記突部及び前記規制壁部を備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の軟質部材の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質部材の取付構造に関する。詳細には、筆記具の軸筒又はキャップを構成する筒体の上端部に軟質部材を取り付ける軟質部材の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の軟質部材の取付構造に関して、特許文献1の第1実施形態(
図1、
図2)には、筒体の上端部に突部を設け、軟質部材に取付孔を設け、前記突部の外周面と前記取付孔の内周面との嵌合によって、筒体の上端部に軟質部材を取り付けてなり、前記筒体の上端部に、前記突部の外周を包囲する筒状の規制壁部を設け、前記突部の外周面と前記取付孔の内周面とを嵌合させた際、前記軟質部材の外周面が径方向外方に自由に膨出変形可能とすることにより、大きな押し込み力が不要となり、取付作業が容易となる軟質部材の取付構造が開示されている。
【0003】
また、特許文献1の第3実施形態(
図5、
図6)には、筒体の上端部に突部を設け、軟質部材に取付孔を設け、前記突部の外周面と前記取付孔の内周面との嵌合によって、筒体の上端部に軟質部材を取り付けてなり、突部の上端部に膨出部が形成され、軟質部材の取付孔の内周面に段形状の係止壁部が設けられ、突部の外周面と取付孔の内周面とを嵌合させた際、膨出部が取付孔の前記係止壁部に抜け止め係止されることにより、軟質部材の取付作業が容易となる軟質部材の取付構造が開示されている。
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
第1実施形態の構造は、軟質部材の長期の経時変形によって嵌合力が低下し、軟質部材と筒体との嵌合が緩くなるおそれがある。
【0006】
第3実施形態の構造は、軟質部材の挿入組立性を考慮すると、膨出部の外径を十分に大きくすることが困難であるため、軟質部材の抜け止めが不十分となるおそれがある。
【0007】
本発明は、前記従来の問題点を解決するものであって、軟質部材の取付作業が容易でありながら、軟質部材と筒体とを強固に取り付けることができ、さらに軟質部材と筒体との嵌合状態を長期に渡って維持することができる軟質部材の取付構造を提供しようとするものである。本発明では筒体において、「上」とは突部側を指し、「下」とはその反対側を指す。また、本発明で、軟質部材において、「下」とは突部への挿入側を指し、「上」とはその反対側を指す。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の第1の発明は、筆記具の軸筒又はキャップを構成する筒体の上端部に軟質部材を取り付ける軟質部材の取付構造であって、前記筒体の端部に、軸方向に突出する突部が設けられ、
前記軟質部材は、弾性材料により一体に形成され、熱変色性の筆跡の表面を擦って該筆跡を熱変色させる摩擦変色部材であり、前記突部の外周面には雄ねじ部が設けられ、前記軟質部材の端部には取付孔が設けられ、前記突部の外周面と前記取付孔の内周面とが嵌合することにより、前記筒体に前記軟質部材が取り付けられることを特徴とする。
【0009】
前記第1の発明の軟質部材の取付構造は、筒体と軟質部材とが突部の雄ねじ部を介して取り付けられるため、軟質部材の取付作業が容易でありながら、軟質部材と筒体とを強固に取り付けることができる。また、軟質部材を容易に交換することができる。
【0010】
本願の第2の発明は、前記第1の発明において、前記筒体の端部に、前記軟質部材の外周を包囲する筒状の規制壁部が設けられ、前記突部の上端が前記規制壁部の上端より上方に突出していることが好ましい。
【0011】
前記第2の発明の軟質部材の取付構造は、規制壁部が軟質部材を包囲することにより、軟質部材のがたつきを抑えることができる。さらに、前記突部の上端が前記規制壁部の上端より上方に突出していることにより、突部が芯となって軟質部材のがたつきをより一層抑えることができる。また、突部を取付孔に挿入しやすくなる。
【0012】
本願の第3の発明は、前記第2の発明において、前記筒体に前記軟質部材が取り付けられた状態で、前記軟質部材の外周面と前記規制壁部の内周面とが接触又は圧接することが好ましい。
【0013】
前記第3の発明の軟質部材の取付構造は、軟質部材の外周面と規制壁部の内周面とが接触又は圧接することにより、軟質部材の径方向外方への変形が規制されるため、軟質部材と筒体とを強固に取り付けることができ、さらに突部と取付孔との嵌合状態を長期に渡って維持することができる。
【0014】
本願の第4の発明は、前記第3の発明において、前記取付孔の内周面に、前記雄ねじ部と螺合可能な雌ねじ部が設けられ、前記筒体に前記軟質部材が取り付けられた状態で、前記取付孔の内周面と前記突部の外周面と前記取付孔の内周面とが螺合し、前記軟質部材の外周面と前記規制壁部の内周面とが接触又は圧接することが好ましい。
【0015】
前記第4の発明の軟質部材の取付構造は、雄ねじ部と雌ねじ部とが螺合することにより、軟質部材と筒体とを強固に取り付けることができる。また、軟質部材の外周面と規制壁部の内周面とが接触又は圧接することにより、軟質部材の径方向外方への変形が規制されるため、軟質部材と筒体とを強固に取り付けることができ、さらに突部と取付孔との嵌合状態を長期に渡って維持することができる。
【0016】
本願の第5の発明は、前記第1乃至第4の何れかの発明において、前記筒体の端部に開口部が設けられ、前記開口部の内周面に取付可能な尾栓を備え、前記尾栓が前記突部及び前記規制壁部を備えることが好ましい。
【0017】
前記第5の発明の軟質部材の取付構造は、突部及び規制壁部が筒体と別体となっているため、筒体の成形が容易となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の軟質部材の取付構造によれば、軟質部材の取付作業が容易でありながら、軟質部材と筒体とを強固に取り付けることができ、さらに軟質部材と本体との嵌合状態を長期に渡って維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態において、軟質部材の取付孔と筒体の突部とが嵌合した状態を示す要部縦断面図である。
【
図2】第1実施形態において、軟質部材の取付孔と筒体の突部とが嵌合した状態を示す要部縦断面図である。
【
図3】第2実施形態において、軟質部材の取付孔と筒体の突部とが嵌合する前の状態を示す要部縦断面図である。
【
図4】第2実施形態において、軟質部材の取付孔と筒体の突部とが嵌合する途中の状態を示す要部縦断面図である。
【
図5】(a)は第2実施形態において、軟質部材の取付孔と筒体の突部とが嵌合した状態を示す要部縦断面図である。(b)は(a)のA-A線断面図である。
【
図6】(a)は第2実施形態の変形例において、軟質部材の取付孔と筒体の突部とが嵌合した状態を示す要部縦断面図である。(b)は(a)のA-A線断面図である。
【
図7】(a)は第2実施形態の変形例において、軟質部材の取付孔と筒体の突部とが嵌合した状態を示す要部縦断面図である。(b)は(a)のA-A線断面図である。
【
図8】(a)は第2実施形態の変形例において、軟質部材の取付孔と筒体の突部とが嵌合した状態を示す要部縦断面図である。(b)は(a)のA-A線断面図である。
【
図9】(a)は第2実施形態の変形例において、軟質部材の取付孔と筒体の突部とが嵌合した状態を示す要部縦断面図である。(b)は(a)のA-A線断面図である。
【
図10】第2実施形態の変形例において、軟質部材の取付孔と筒体の突部とが嵌合する途中の状態を示す要部縦断面図である。
【
図11】(a)は第2実施形態の変形例において、軟質部材の取付孔と筒体の突部とが嵌合した状態を示す要部縦断面図である。(b)は(a)のA-A線断面図である。
【
図12】(a)は第2実施形態の変形例において、軟質部材の取付孔と筒体の突部とが嵌合した状態を示す要部縦断面図である。(b)は(a)のA-A線断面図である。
【
図13】(a)は第3実施形態において、軟質部材の取付孔と筒体の突部とが嵌合した状態を示す要部縦断面図である。(b)は(a)のA-A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態>
図1及び
図2に本発明の第1実施形態を示す。本実施の形態の軟質部材の取付構造は、上端部に突部2を備えた筒体1と、該筒体1の突部2に取り付けられる軟質部材4とからなる。
【0021】
・筒体
筒体1は、合成樹脂(例えばポリプロピレン、ポリカーボネイト)の射出成形により得られる。筒体1は、例えば、筆記具の軸筒、又は軸筒のペン先側に着脱自在のキャップが挙げられる。筒体1の上端部には、軸方向上方に突出する突部2が一体に形成される。突部2は、筒体1がキャップの場合には、キャップの閉塞端側に形成される。筒体1は、合成樹脂以外にも、金属により構成することもできる。
【0022】
・突部
突部2は軸方向に延びる円柱であり、筒体1の上端に形成される。突部2の外面には雄ねじ部21が形成される。
【0023】
・軟質部材
軟質部材4は、弾性材料により一体に形成される。前記弾性材料は、例えば、合成ゴムや熱可塑性エラストマー等が挙げられる。本実施の形態では、軟質部材4は、熱変色性の筆跡の表面を擦って該筆跡を熱変色させる摩擦変色部材が採用される。軟質部材4は、これ以外にも、消しゴム、又は携帯情報端末に用いる入力ペンの入力部材等が挙げられる。
【0024】
軟質部材4の横断面形状は円形に形成される。軟質部材4の軸心には、取付孔5が形成される。取付孔5は軟質部材4の下端より軸方向に貫設される。軟質部材4の上端部外周面には、凸曲面が形成される。軟質部材4の大径部41の上端部外周面が、紙面等の被接触面に接触可能な接触面となる。
【0025】
取付孔5の内径は、突部2の雄ねじ部21の外径より僅かに小さく設定される。取付孔5の内径は、軸方向に亘って同一である。取付孔5の軸方向の寸法は、突部2の軸方向の寸法より大きく設定される。
【0026】
・軟質部材の取り付け
本実施形態において、筒体1に軟質部材4を取り付ける際は、突部2に対して軟質部材4を軸中心に回転させながら圧入する。この際、軟質部材4を回転させる方向は雄ねじ部21に対して締まる方向に回転させる。例えば本実施形態では、雄ねじ部21は右ねじであり、軟質部材4は上方から見て右回りに回転させる。
【0027】
軟質部材4に対して軸方向下方へ押す力、及び軸中心に回転させる力を加え、突部2に軟質部材4を回転させながら圧入すると、雄ねじ部21のねじ山が取付孔5の内周面に食い込み、突部2と取付孔5とが螺合する。回転動作の軸方向下方の分力も加わるため、筒体1に軟質部材4を取り付ける際に軸方向下方に押す力は小さく済む。また、雄ねじ部のねじ山のみが取付孔5の内周面に圧接され、ねじ山を除く部分が取付孔5の内周面に非接触であるため、突部2の外周面と取付孔5の内周面との接触面積が小さくなり、突部2と軟質部材4との間の摩擦抵抗が小さくなるため、軟質部材4の取付に必要な力を低減することができる。さらに、雄ねじ部21のねじ山とねじ山との間の谷が通気口となり、軟質部材4の取付時に取付孔5内で空気が圧縮せず、軟質部材4を突部2にスムーズに取り付けることができる。筒体1の上端と軟質部材4の下端とが当接することにより、筒体1への軟質部材4の取り付けが完了する。
【0028】
軟質部材4を雄ねじ部21に対して緩む方向(取り付け時とは逆の方向)に回転させることで、軟質部材4を筒体から取り外すことができる。軟質部材4を取り外すことで、他の軟質部材と交換することができる。
【0029】
図2に示すように、取付孔5の内周面には雌ねじ部51が設けられていても良い。雌ねじ部51は突部2の雄ねじ部21と螺合可能である。雌ねじ部51が設けられていることにより、筒体1と軟質部材4とがより確実に螺合する。
【0030】
本実施形態の軟質部材の取付構造は、筆記具の軸筒又はキャップを構成する筒体1の上端部に軟質部材4を取り付ける軟質部材の取付構造であって、前記筒体1の端部に、軸方向に突出する突部2が設けられ、前記軟質部材4は、弾性材料により一体に形成され、熱変色性の筆跡の表面を擦って該筆跡を熱変色させる摩擦変色部材であり、前記突部2の外周面には雄ねじ部が設けられ、前記軟質部材4の端部には取付孔5が設けられ、前記突部2の外周面と前記取付孔5の内周面とが嵌合することにより、前記筒体1に前記軟質部材4が取り付けられることにより、筒体1と軟質部材4とが突部2の雄ねじ部21を介して取り付けられるため、軟質部材4の取付作業が容易でありながら、軟質部材4と筒体1とを強固に取り付けることができる。また、軟質部材4を容易に交換することができる。
【0031】
<第2実施形態>
図3乃至
図12に本発明の第2実施形態を示す。本実施の形態の軟質部材の取付構造は、上端部に突部2及び規制壁部3を備えた筒体1と、該筒体1の突部2に取り付けられる軟質部材4とからなる。第1実施形態とは筒体1及び軟質部材4の形状が異なる。第1実施形態と同様の構成に関しては、説明を省略する。
【0032】
・規制壁部
規制壁部3は円筒状であり、突部2の径方向外方に形成される。規制壁部3の内周面と突部2の外周面との間には、環状の空間が形成される。規制壁部3の内径は、軸方向に亘って同一である。規制壁部3の軸方向の寸法は突部2の軸方向の寸法より短く形成される。
【0033】
・軟質部材
軟質部材4の横断面形状は円形に形成される。軟質部材4の外周面は、大径部41と、該大径部41の下方に一体に連設される小径部42と、該大径部41と小径部42との間(即ち大径部31の下端)に形成される段部43とからなる。軟質部材4の軸心には、取付孔5が形成される。取付孔5は軟質部材4の下端より軸方向に貫設される。
【0034】
大径部41の下端の段部43が規制壁部3の上端に当接され、大径部41が規制壁部3の上端より上方に突出される。大径部41の最大外径は、規制壁部3の内径よりも大きく設定される。大径部41の上端部外周面には、凸曲面が形成される。軟質部材4の大径部41の上端部外周面が、紙面等の被接触面に接触可能な接触面となる。
【0035】
小径部42の外径は、規制壁部3の内周面の内径より僅かに小さく設定される。小径部42の外径は、軸方向に亘って同一である。
【0036】
取付孔5の内径は、突部2の雄ねじ部21の外径より僅かに小さく設定される。取付孔5の内径は、軸方向に亘って同一である。取付孔5の軸方向の寸法は、突部2の軸方向の寸法より大きく設定される。
【0037】
・軟質部材の取り付け
本実施形態において、筒体1に軟質部材4を取り付ける際の手順を説明する。まず、
図3の状態から
図4の状態のように、突部2に対して軟質部材4を軸中心に回転させながら圧入する。この際、軟質部材4を回転させる方向は雄ねじ部21に対して締まる方向に回転させる。例えば本実施形態では、雄ねじ部21は右ねじであり、軟質部材4は上方から見て右回りに回転させる。軟質部材4の取付開始時においては軟質部材4の外径が規制壁部3の内径より小さく、軟質部材4を突部2及び規制壁部3に対して容易に挿入することができる。
【0038】
軟質部材4に対して軸方向下方へ押す力、及び軸中心に回転させる力を加え、突部2に軟質部材4を回転させながら圧入すると、雄ねじ部21のねじ山が取付孔5の内周面に食い込み、突部2と取付孔5とが螺合する。回転動作の軸方向下方の分力も加わるため、筒体1に軟質部材4を取り付ける際に軸方向下方に押す力は小さく済む。また、雄ねじ部のねじ山のみが取付孔5の内周面に圧接され、ねじ山を除く部分が取付孔5の内周面に非接触であるため、突部2の外周面と取付孔5の内周面との接触面積が小さくなり、突部2と軟質部材4との間の摩擦抵抗が小さくなるため、軟質部材4の取付に必要な力を低減することができる。さらに、雄ねじ部21のねじ山とねじ山との間の谷が通気口となり、軟質部材4の取付時に取付孔5内で空気が圧縮せず、軟質部材4を突部2にスムーズに取り付けることができる。
【0039】
図4に示すように、突部2に軟質部材4を圧入する過程で、雄ねじ部21の外周面と取付孔5の内周面とが圧接し、雄ねじ部21の径方向外方に位置する小径部42が径方向外方に膨出変形する。突部2の軸方向の寸法が規制壁部3の軸方向の寸法より大きく設定されていることにより、規制壁部3の径方向内方の小径部42が確実に膨出変形させることができる。小径部42が膨出変形することにより、小径部42の外周面と規制壁部3の内周面とが圧接する。小径部42の外周面と規制壁部3の内周面とが圧接することにより、取付孔5の内径の径方向外方への変形が抑制され、ねじ部21と取付孔との螺合状態を長期に渡って維持することができる。小径部42の外径が径方向外方に広がらないため、突部2と取付孔5との螺合が緩み難く、軟質部材4は筒体1から容易に脱落することがない。また、軟質部材4の径方向の動きが規制壁部3によって規制され、軟質部材4の摩擦使用時におけるがたつきを抑えることができる。
【0040】
図5(a)に示すように、軟質部材4の取り付けが完了した時点で、規制壁部3の上端と段部43とが当接する。この時、小径部42の下端と筒体1の上端面との間には隙間が存在する。前記隙間が存在することにより、軟質部材4の段部43と規制壁部3の上端とを確実に当接させることができる。
【0041】
軟質部材4を雄ねじ部21に対して緩む方向(取り付け時とは逆の方向)に回転させることで、軟質部材4を筒体から取り外すことができる。軟質部材4を取り外すことで、他の軟質部材と交換することができる。
【0042】
図6に示すように、規制壁部3の内周面に複数の縦溝31が設けられていてもよい。例えば、縦溝31は周方向に等間隔に6個設けられている。規制壁部3の内周面に縦溝31が設けられていることにより、小径部42の外周面と規制壁部3の内周面との接触面積が小さくなり、規制壁部3と軟質部材4との間の摩擦抵抗が小さくなるため、軟質部材4の取付に必要な力を低減することができる。さらに、縦溝31が通気口となり、軟質部材4の取付時に筒体1と軟質部材4との間で空気が圧縮することを防ぐことができる。
【0043】
図7に示すように、規制壁部3の内周面の横断面形状は正多角形状(例えば正六角形)であってもよい。
図7(b)に示すように、軟質部材4が筒体1に取り付けられた状態で規制壁部3の内周面が小径部42の外周面に外接する。規制壁部3の内周面の横断面形状が正多角形状であることにより、小径部42の外周面と規制壁部3の内周面との接触面積が小さくなり、規制壁部3と軟質部材4との間の摩擦抵抗が小さくなるため、軟質部材4の取付に必要な力を低減することができる。さらに、小径部42の外周面と規制壁部3の内周面との間の隙間G1が通気口となり、軟質部材4の取付時に筒体1と軟質部材4との間で空気が圧縮することを防ぐことができる。
【0044】
図8に示すように、小径部42の外周面に複数の縦溝422が設けられていてもよい。例えば、縦溝422は周方向に等間隔に6個設けられている。小径部42の外周面に縦溝422が設けられていることにより、小径部42の外周面と規制壁部3の内周面との接触面積が小さくなり、規制壁部3と軟質部材4との間の摩擦抵抗が小さくなるため、軟質部材4の取付に必要な力を低減することができる。さらに、縦溝422が通気口となり、軟質部材4の取付時に筒体1と軟質部材4との間で空気が圧縮することを防ぐことができる。
【0045】
図9に示すように、小径部42の外周面の横断面形状は正多角形状(例えば正六角形)であってもよい。
図9(b)に示すように、軟質部材4が筒体1に取り付けられた状態で小径部42の最外端が規制壁部3の内周面に内接する。小径部42の外周面の横断面形状が正多角形状であることにより、小径部42の外周と規制壁部3の内周面との接触面積が小さくなり、規制壁部3と軟質部材4との間の摩擦抵抗が小さくなるため、軟質部材4の取付に必要な力を低減することができる。さらに、小径部42の外周と規制壁部3の内周面との間の隙間G2が通気口となり、軟質部材4の取付時に筒体1と軟質部材4との間で空気が圧縮することを防ぐことができる。
【0046】
図10に示すように、軟質部材4の小径部42の下端に小径小径部421、取付孔5の内周面の下端に大径部52が設けられていてもよい。小径小径部421の外径は小径部42より小さい。大径部52の内径は突部2の雄ねじ部21の外径より大きい。小径小径部421及び大径部52が設けられていることにより、筒体1に軟質部材4を取り付ける際、
図11に示すように突部2を上向き状態にさせ、軟質部材4を筒体1の突部2の上方から落下させることで取付孔5を突部2に仮挿入することができ、軟質部材4の取付作業がさらに容易となる。
【0047】
図12に示すように、突部2及び規制壁部3は筒体1とは別体の尾栓6側に形成されていてもよい。尾栓6は有底状の筒体である。突部2は尾栓の底壁より上方に突出して設けられる。尾栓6の側壁が規制壁部3を兼ねる。尾栓6には鍔部61及び環状突起62が設けられている。鍔部61は規制壁部3の上端外周面に一体に形成される。環状突起62は規制壁部3の外周面に一体に形成される。環状突起62は径方向外方に環状に突出する。鍔部61の下端と筒体1の上端とが当接し、環状突起62と筒体1の内周面とが嵌合することにより、尾栓6が筒体1に取り付けられる。筆記具の筆跡を形成するインキが筒体1内に設けられている場合、筒体1の内周面と環状突起62とは気密嵌合することが好ましい。尾栓6を筒体1に対して着脱可能に構成すれば、軟質部材4を尾栓6ごと着脱することで、軟質部材4の交換がさらに容易となる。
【0048】
本実施形態の軟質部材の取付構造は、筆記具の軸筒又はキャップを構成する筒体1の上端部に軟質部材4を取り付ける軟質部材の取付構造であって、前記筒体1の端部に、軸方向に突出する突部2が設けられ、前記軟質部材4は、弾性材料により一体に形成され、熱変色性の筆跡の表面を擦って該筆跡を熱変色させる摩擦変色部材であり、前記突部2の外周面には雄ねじ部が設けられ、前記軟質部材4の端部には取付孔5が設けられ、前記突部2の外周面と前記取付孔5の内周面とが嵌合することにより、前記筒体1に前記軟質部材4が取り付けられることにより、筒体1と軟質部材4とが突部2の雄ねじ部21を介して取り付けられるため、軟質部材4の取付作業が容易でありながら、軟質部材4と筒体1とを強固に取り付けることができる。また、軟質部材4を容易に交換することができる。
【0049】
本実施形態の軟質部材の取付構造は、前記筒体1の端部に、前記軟質部材4の外周を包囲する筒状の規制壁部3が設けられ、前記突部2の上端が前記規制壁部3の上端より上方に突出していることにより、軟質部材4のがたつきを抑えることができる。さらに、突部2の上端が前記規制壁部3の上端より上方に突出していることにより、突部2が芯となって軟質部材4のがたつきをより一層抑えることができる。また、突部2を取付孔5に挿入しやすくなる。
【0050】
本実施形態の軟質部材の取付構造は、前記筒体1に前記軟質部材4が取り付けられた状態で、前記軟質部材4の外周面と前記規制壁部3の内周面とが接触又は圧接することにより、軟質部材4の径方向外方への変形が規制されるため、軟質部材4と筒体1とを強固に取り付けることができ、さらに突部2と取付孔5との嵌合状態を長期に渡って維持することができる。
【0051】
本実施形態の軟質部材の取付構造は、前記取付孔5の内周面に、前記雄ねじ部と螺合可能な雌ねじ部が設けられ、前記筒体1に前記軟質部材4が取り付けられた状態で、前記取付孔5の内周面と前記突部2の外周面とが螺合し、前記軟質部材4の外周面と前記規制壁部3の内周面とが接触又は圧接することにより、軟質部材4と筒体1とを強固に取り付けることができる。また、軟質部材4の外周面と規制壁部3の内周面とが接触又は圧接することにより、軟質部材4の径方向外方への変形が規制されるため、軟質部材4と筒体1とを強固に取り付けることができ、さらに突部2と取付孔5との嵌合状態を長期に渡って維持することができる。
【0052】
本実施形態の軟質部材の取付構造は、前記筒体1の端部に開口部が設けられ、前記開口部の内周面に取付可能な尾栓を備え、前記尾栓が前記突部2及び前記規制壁部3を備えることにより、突部2及び規制壁部3が筒体1と別体となっているため、筒体1の成形が容易となる。
【0053】
<第3実施形態>
図13に本発明の第3実施形態を示す。本実施の形態の軟質部材の取付構造は、上端部に突部2及び規制壁部3を備えた筒体1と、該筒体1の突部2に取り付けられる軟質部材4とからなる。第2実施形態とは、軟質部材4の形状が異なる。第2実施形態と同様の構成に関しては、説明を省略する。
【0054】
・軟質部材
軟質部材4の横断面形状は円形に形成される。小径部42の外径は、規制壁部3の内周面の内径と同一、又は僅かに大きく設定される。小径部42の外径は、軸方向に亘って同一である。
【0055】
取付孔5の内周面には、雌ねじ部51が形成される。雌ねじ部51は突部2の雄ねじ部21と螺合可能である。
【0056】
・軟質部材の取り付け
本実施形態において、筒体1に軟質部材4を取り付ける際の手順を説明する。突部2に対して軟質部材4を軸中心に回転させながら圧入する。この際、軟質部材4を回転させる方向はねじ部21に対して締まる方向に回転させる。例えば本実施形態では、雄ねじ部21は右ねじであり、軟質部材4は上方から見て右回りに回転させる。
【0057】
軟質部材4に対して軸方向下方へ押す力、及び軸中心に回転させる力を加え、突部2に軟質部材4を回転させながら圧入すると、雄ねじ部21と雌ねじ部51とが螺合し、突部2と取付孔5とが螺合する。回転動作の軸方向下方の分力も加わるため、筒体1に軟質部材4を取り付ける際に軸方向下方に押す力は小さく済む。
【0058】
突部2に軟質部材4を圧入すると、小径部42の外周面と規制壁部3の内周面とが圧接する。小径部42の外周面と規制壁部3の内周面とが圧接することにより、取付孔5の内径の径方向外方への変形が抑制され、ねじ部21と取付孔との螺合状態が長期に渡って維持することができる。取付孔5の内径が径方向外方に広がらないため、突部2と取付孔5との螺合が緩み難く、軟質部材4は筒体1から容易に脱落することがない。また、軟質部材4の径方向の動きが規制壁部3によって規制され、軟質部材4のがたつきを抑えることができる。
【0059】
軟質部材4の取り付けが完了した時点で、規制壁部3の上端と段部43とが当接する。この時、小径部42の下端面と筒体1の上端面との間には隙間が存在する。前記隙間が存在することにより、軟質部材4の段部43と規制壁部3の上端とを確実に当接させることができる。さらに、軟質部材4を突部2に対して多少回転させ過ぎたとしても、小径部42の下端面と筒体1の上端面とが当接しないため、雌ねじ部51のねじ山が抉れて潰れることを防ぐことができる。
【0060】
軟質部材4を雄ねじ部21に対して緩む方向(取り付け時とは逆の方向)に回転させることで、軟質部材4を筒体から取り外すことができる。軟質部材4を取り外すことで、他の軟質部材と交換することができる。
【0061】
第2実施形態と同様に、取付孔5の径方向外方の軟質部材4の外周面、又は規制壁部3の内周面に縦溝が設けられていてもよい。また、取付孔5の径方向外方の軟質部材4の外周面の横断面形状、又は規制壁部3の内周面の横断面形状が正多角形であってもよい。
【0062】
本実施形態の軟質部材の取付構造は、筆記具の軸筒又はキャップを構成する筒体1の上端部に軟質部材4を取り付ける軟質部材の取付構造であって、前記筒体1の端部に、軸方向に突出する突部2が設けられ、前記軟質部材4は、弾性材料により一体に形成され、熱変色性の筆跡の表面を擦って該筆跡を熱変色させる摩擦変色部材であり、前記突部2の外周面には雄ねじ部が設けられ、前記軟質部材4の端部には取付孔5が設けられ、前記突部2の外周面と前記取付孔5の内周面とが嵌合することにより、前記筒体1に前記軟質部材4が取り付けられることにより、筒体1と軟質部材4とが突部2の雄ねじ部21を介して取り付けられるため、軟質部材4の取付作業が容易でありながら、軟質部材4と筒体1とを強固に取り付けることができる。また、軟質部材4を容易に交換することができる。
【0063】
本実施形態の軟質部材の取付構造は、前記筒体1の端部に、前記軟質部材4の外周を包囲する筒状の規制壁部3が設けられ、前記突部2の上端が前記規制壁部3の上端より上方に突出していることにより、軟質部材4のがたつきを抑えることができる。さらに、突部2の上端が前記規制壁部3の上端より上方に突出していることにより、突部2が芯となって軟質部材4のがたつきをより一層抑えることができる。また、突部2を取付孔5に挿入しやすくなる。
【0064】
本実施形態の軟質部材の取付構造は、前記筒体1に前記軟質部材4が取り付けられた状態で、前記軟質部材4の外周面と前記規制壁部3の内周面とが接触又は圧接することにより、軟質部材4の径方向外方への変形が規制されるため、軟質部材4と筒体1とを強固に取り付けることができ、さらに突部2と取付孔5との嵌合状態を長期に渡って維持することができる。
【0065】
本実施形態の軟質部材の取付構造は、前記取付孔5の内周面に、前記雄ねじ部と螺合可能な雌ねじ部が設けられ、前記筒体1に前記軟質部材4が取り付けられた状態で、前記取付孔5の内周面と前記突部2の外周面とが螺合し、前記軟質部材4の外周面と前記規制壁部3の内周面とが接触又は圧接することにより、軟質部材4と筒体1とを強固に取り付けることができる。また、軟質部材4の外周面と規制壁部3の内周面とが接触又は圧接することにより、軟質部材4の径方向外方への変形が規制されるため、軟質部材4と筒体1とを強固に取り付けることができ、さらに突部2と取付孔5との嵌合状態を長期に渡って維持することができる。
【0066】
貶める
本実施形態の軟質部材の取付構造は、前記筒体1の端部に開口部が設けられ、前記開口部の内周面に取付可能な尾栓を備え、前記尾栓が前記突部2及び前記規制壁部3を備えることにより、突部2及び規制壁部3が筒体1と別体となっているため、筒体1の成形が容易となる。
【0067】
1 筒体
2 突部
21 雄ねじ部
3 規制壁部
31 縦溝
4 軟質部材
41 大径部
42 小径部
421 小径小径部
422 縦溝
43 段部
5 取付孔
51 雌ねじ部
52 大径部
6 尾栓
61 鍔部
62 環状突起