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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122735
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】ズームレンズおよび撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20240902BHJP
   G02B 7/08 20210101ALI20240902BHJP
【FI】
G02B7/02 E
G02B7/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030445
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】澤木 亮二
【テーマコード(参考)】
2H044
【Fターム(参考)】
2H044AE04
2H044DA02
2H044DB01
2H044DD03
2H044DE04
(57)【要約】
【課題】ズームレンズにおけるズーム操作性の向上、生産性の向上およびコストの削減に有利な構成を実現する。
【解決手段】ズームレンズ(20)のカム環(25)にズーム操作環(23)がコマ部材(50)によって固定されている。コマ部材(50)が内嵌する嵌合孔(236)の周囲には、嵌合孔(236)との間に撓み部(239a~239d)を形成する複数の切り欠き孔(238a~238d)が形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向への回転運動によってレンズ群摺動枠を軸方向に移動させるカム環に、前記カム環の外周側に重なるズーム操作環が、外周側から前記ズーム操作環を貫通して前記カム環に到達するコマ部材によって固定されているズームレンズであって、
前記ズーム操作環は、
前記コマ部材が内嵌する第一の孔と、
前記第一の孔の隣に形成された第二の孔と、を有し、
前記第一の孔と前記第二の孔との間の部分が前記コマ部材から伝わる力によって撓む撓み部として機能する、
ズームレンズ。
【請求項2】
前記ズーム操作環は、一つの前記第一の孔に対して四つの前記第二の孔を有しており、
平面視したときに、前記コマ部材の外形は円形であり、前記第一の孔の形状は前記コマ部材が各辺で接する略正方形であり、前記第二の孔の形状は、前記略正方形の各辺に沿って細長な形状である、
請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項3】
前記ズーム操作環は、一つの前記第一の孔に対して三つの前記第二の孔を有しており、
平面視したときに、前記コマ部材の外形は円形であり、前記第一の孔の形状は前記コマ部材が各辺で接する略三角形であり、前記第二の孔の形状は、前記略三角形の各辺に沿って細長な形状である、
請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項4】
前記コマ部材の形状は略円筒形状であり、前記コマ部材はその周壁部における中空な部分で前記第一の孔に内嵌する、
請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項5】
前記ズーム操作環に外嵌する環状のズームラバーをさらに有し、
前記コマ部材の形状は略円筒形状であり、
前記ズームラバーは、前記第一の孔に嵌合している前記コマ部材に内嵌する凸部を有する、
請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項6】
前記ズーム操作環に外嵌する環状のズームラバーをさらに有し、
前記ズームラバーは、前記第一の孔に内嵌しているとともに前記ズーム操作環の外周面から突出している前記コマ部材の端部に外嵌する凹部を有する、
請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項7】
前記ズームラバーの前記凸部は、その高さ方向において隙間を有して前記コマ部材に内嵌している、
請求項5に記載のズームレンズ。
【請求項8】
前記ズームラバーの前記凹部は、その深さ方向において隙間を有して前記コマ部材に外嵌している、
請求項6に記載のズームレンズ。
【請求項9】
前記コマ部材を貫通して前記カム環に螺合するネジをさらに有する、
請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のズームレンズを有する撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ズームレンズおよび撮像装置に関する。たとえば、本発明は、カメラ等の光学機器に適用されるレンズ鏡筒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ズームレンズにおいて、カム環の周面の溝にレンズ群摺動枠の案内ピンを係合させて、カム環の回転に連動させてレンズ群を軸方向の所望の位置に移動させる機構が知られている。カム環は、二重環構造の外環としてカム環に固定されているズーム操作環を回転させることによって回転する。
【0003】
このようなズームレンズにおいて、ズーム操作環を回転させてカム環が回転したときにカム環に振動が生じることがある。この振動がズーム操作環に伝わることによって、ズーム操作環を操作するユーザに不快感を与えることがあり、このようにしてズーム操作性の品質が損なわれることがある。このような操作時の振動を低減する技術としては、回転時のズーム操作環を押圧する弾性部材をさらに配置してズーム操作環のトルクを一定にする技術が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-327875号公報
【特許文献2】特開2009-169232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような従来技術は、上記の対策のためにズームレンズの構成に弾性部材をさらに追加している。一方、部品点数または製造工数がより少ないことは、生産性をより高める観点および製造コストのさらなる削減の観点から有利である。従来のズームレンズには、カム環からの振動の伝達を防止するにあたり、生産性のさらなる向上およびコストのさらなる削減の観点から検討の余地が残されている。
【0006】
本発明の一態様は、ズームレンズにおけるズーム操作性の向上、生産性の向上およびコストの削減に有利な構成を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るズームレンズは、周方向への回転運動によってレンズ群摺動枠を軸方向に移動させるカム環に、前記カム環の外周側に重なるズーム操作環が、外周側から前記ズーム操作環を貫通して前記カム環に到達するコマ部材によって固定されているズームレンズであって、前記ズーム操作環は、前記コマ部材が内嵌する第一の孔と、前記第一の孔の隣に形成された第二の孔と、を有し、前記第一の孔と前記第二の孔との間の部分が前記コマ部材から伝わる力によって撓む撓み部として機能する。
【0008】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る撮像装置は、上記のズームレンズを有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、ズームレンズにおけるズーム操作性の向上、生産性の向上およびコストの削減に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態1に係る撮像装置の構成を模式的に示す図である。
図2】本発明の実施形態1におけるズーム操作環の構成を模式的に示す図である。
図3】本発明の実施形態1におけるズーム操作環がカム環に固定されている状態を模式的に示す、ズームレンズの要部断面図である。
図4】本発明の実施形態1における防振構造の一例を模式的に示す図である。
図5】本発明の実施形態1における防振構造の孔の配置を示す図である。
図6】本発明の実施形態2における防振構造の孔の配置を示す図である。
図7】本発明の実施形態2における防振構造の一例を模式的に示す図である。
図8】本発明の実施形態3におけるズームラバーの構成を模式的に示す図である。
図9】本発明の実施形態3におけるズーム操作環がカム環に固定されている状態を模式的に示す、ズームレンズの要部断面図である。
図10】本発明の実施形態4における防振構造の一例を模式的に示す図である。
図11】本発明の実施形態4におけるズームラバーの構成を模式的に示す図である。
図12】本発明の実施形態4におけるズーム操作環がカム環に固定されている状態を模式的に示す、ズームレンズの要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。なお、図中の矢印Xは、ズームレンズの軸方向を表す。
【0012】
[撮像装置]
図1は、本発明の実施形態1に係る撮像装置の構成を模式的に示す図である。図1に示されるように、撮像装置1は、本体10とズームレンズ20とを有する。撮像装置1は、例えばミラーレス一眼カメラである。
【0013】
本体10は、撮像素子および必要に応じてそれに伴う光学素子を有している。たとえば、本体10は、撮像素子としてCCDセンサを有し、上記の光学素子として赤外線カットフィルタを有し得る。CCDセンサは、ズームレンズ20と同一の光軸を有している。本体10は、所望の解像性能が得られる範囲において、赤外線カットフィルタの代わりに、カバーガラス等の実質的な屈折力を有さない平行平面板を有していてもよい。
【0014】
撮像装置1は、撮像した画像の処理に好適な機能をさらに有していてもよい。たとえば、撮像装置1は、撮像素子により取得した撮像画像データを電気的に加工して、撮像画像の形状を変化させる画像処理部をさらに有していてもよい。あるいは、撮像装置1は、当該画像処理部において撮像画像データを加工するために用いる画像補正データおよび画像補正プログラムなどを保持する画像補正データ保持部をさらに有していてもよい。
【0015】
[ズームレンズ]
ズームレンズ20は、外筒21、マウント22、ズーム操作環23、ズームラバー24、カム環25、第一レンズ群摺動枠26およびフィルタネジ枠27を有している。
【0016】
外筒21は、略円筒状の部材であり、ズームレンズ20の像面側の外装材である。外筒21は、ズームレンズ20におけるレンズ鏡筒の基本構造に対して固定されている。マウント22は、外筒21の像面側端部に配置されており、外筒21と本体10とを接続する部材である。マウント22のズームレンズ20における位置は、マウント22の端面から撮像素子までの距離がズームレンズ20の光学特性を決定する一因になることから、精密に調整されている。
【0017】
図2は、本実施形態におけるズーム操作環23の構成を模式的に示す図である。ズーム操作環23は、略円筒状の部材であり、その像面側端部で外筒21の内側に重なっている。ズーム操作環23は、周方向に回転可能に配置されており、ズーム操作環23の外周面には凹部が周設されている。ズームラバー24は、ゴム製の筒状の部材である。ズームラバー24は、ズーム操作環23の外周面の凹部に嵌って(外嵌して)いる。
【0018】
より詳しくは、ズーム操作環23は、本体部231と段部232とを有する。本体部231は、軸方向におけるその両端部に凸条部が周設されており、軸方向における中央部に形成されている上記の凹部にズームラバー24が嵌まっている。ズームラバー24は、その外周面に、周方向に山と谷とが繰り返されるコルゲート様の構造を有しており、ズーム操作環23の回転時のユーザの操作性をより向上させる。
【0019】
段部232は、本体部231の像面側に連設する部分であり、本体部231よりも小さい外径を有する。段部232の外周壁面における物体側の部分には、ズームレンズ20の内外を連通する通気孔の一部を構成する貫通孔233が複数形成されている。貫通孔233は、例えば、周方向に全周の約1/3の範囲内に等間隔で形成されている。段部232の外周壁面における像面側の部分には、シーリング材32が周設され、固定されている。
【0020】
カム環25は、略円筒状の部材であり、ズーム操作環23の内側に、軸方向には固定されて、そして周方向には回転可能に配置されている。ズーム操作環23はカム環25に対して固定されており、カム環25はズーム操作環23の周方向への回転に連動して周方向に回転する。
【0021】
第一レンズ群摺動枠26は、略円筒状の部材であり、径方向におけるカム環25とズーム操作環23との間に配置されている。第一レンズ群摺動枠26は、その物体側端部に、一以上のレンズを保持する第一レンズ群保持枠を有している。第一レンズ群摺動枠26は、カム環25の周壁において軸方向と交差する方向に延在するカム溝に噛み合う案内ピンを有しており、カム環25の周方向の回転に連動して軸方向に沿って物体側へ進出し、または像面側に後退する。
【0022】
フィルタネジ枠27は、略円環状の部材であり、第一レンズ群摺動枠26に外陥している。フィルタネジ枠27は、その内周壁面における物体側端部に、第一レンズ群の物体側にフィルタを固定するための構造として周設されているネジ部を有している。フィルタは、フィルタネジ枠27に締着することによってズームレンズ20の光軸上に配置され得る。
【0023】
このほかに、ズームレンズ20は、第一レンズ群以外のレンズ群、例えば第二から第nレンズ群を有している(n≧3)。一部のレンズ群は、第一レンズ群とは独立して軸方向に移動可能に配置されている。たとえば、第三レンズ群がフォーカシングのために軸方向に移動可能に配置されている。
【0024】
図3は、本実施形態におけるズーム操作環23がカム環25に固定されている状態を模式的に示す、ズームレンズの要部断面図である。
【0025】
図3に示されるように、ズーム操作環23は、コマ部材50によってカム環25に固定されている。コマ部材50は、比較的硬質な略円筒状の樹脂製の部材であり、平面視したときにコマ部材50の外形は円形である。コマ部材50は、ズーム操作環23の本体部231を貫通する嵌合孔236に挿通されて嵌合し、さらにその一端部はカム環25の外周面に形成された凹部252に内嵌している。コマ部材50には、ビス51が挿入されている。ビス51は、その頭部511がコマ部材50の底部に当接するまでコマ部材50内を進出し、その先端部で、凹部252の底に開口するネジ孔253に螺合している。このように、コマ部材50は、ビス51によってカム環25に強く固定されている。
【0026】
コマ部材50の一端部は、中空になっており、コマ部材50は、当該一端部で嵌合孔236に当接している。このように、コマ部材50は中空な部分の周壁部で嵌合孔236に内嵌している。また、コマ部材50の他端部は、本体部231の外周壁面よりもわずかに径方向内側に位置しており、ズームラバー24の内周壁面との間にわずかな隙間G1を有している。
【0027】
ズームレンズ20は、上記のようなコマ部材50によるカム環25へのズーム操作環23の固定構造を、周方向における少なくとも一か所に有している。本実施形態では、周方向における固定強度のバランスの観点から、当該固定構造は、周方向における等間隔の三か所(三回対称の位置)に配置されている。
【0028】
このように、ズームレンズ20では、第一レンズ群摺動枠26を軸方向に移動させるカム環25に、ズーム操作環23が、外周側からズーム操作環23を貫通してカム環25に到達するコマ部材50によって固定されている。
【0029】
[防振構造]
図4は、本実施形態における防振構造の一例を模式的に示す図である。図5は、本実施形態における防振構造の孔の配置を示す図である。ズーム操作環23は、コマ部材50が内嵌する嵌合孔236と、嵌合孔236の隣に形成されている切り欠き孔238a~238dと、を有している。前述の固定構造と同じ数の嵌合孔236がズーム操作環23に形成されている。
【0030】
嵌合孔236の平面視したときの形状は略正方形であり、正方形の各頂角が曲線で丸められた形状である。嵌合孔236は、平面視した形状における各辺の中央部に、嵌合孔236の内周壁面からわずかに突出する当接部237をそれぞれ有している。コマ部材50は、嵌合孔236における当接部237に当接して嵌合孔236に内嵌している。このように、嵌合孔236の形状はコマ部材50が各辺の部分で接する略正方形となっている。
【0031】
ズーム操作環23は、一つの嵌合孔236に対して四つの切り欠き孔238a~238dを有している。切り欠き孔238a~238dは、それぞれ、嵌合孔236の形状の各辺に沿って細長な形状を有している。切り欠き孔238a~238dのそれぞれの長さは、嵌合孔236の略正方形の各辺の長さとほぼ等しい。
【0032】
切り欠き孔238aおよび238bは、嵌合孔236を軸方向において挟む位置に形成されている。切り欠き孔238cおよび238dは、嵌合孔236を周方向において挟む位置に形成されている。ズーム操作環23の嵌合孔236の軸方向における両側および周方向における両側には、嵌合孔236の各辺に沿って延在する幅狭な部分である撓み部239a~239dが形成されている。
【0033】
なお、嵌合孔236に対する切り欠き孔238a~238dの位置および形状は、切り欠きによる撓み構造を決定するための通常の方法によって適宜に決めることが可能である。撓み部239a~239dのそれぞれに要求される撓み量(撓み部の変形量)は、コマ部材50の圧入量、ズーム操作環23の材料の機械的特性、および、カム環25で生じる振動の想定される大きさ、などに基づいて算出可能である。コマ部材50の圧入量とは、コマ部材50を嵌合孔236に嵌合させたときの嵌合孔236の内径(撓み部の幅)の変化量である。
【0034】
[防振]
ズーム操作環23を周方向に回転させてカム環25を周方向に回転させると、カム環25の回転方向および回転量に応じて第一レンズ群摺動枠26が軸方向へ移動する。それに伴い、カム環25に振動が発生することがある。
【0035】
カム環25で発生した軸方向の振動は、嵌合孔236に内嵌するコマ部材50に伝達され、コマ部材50は当該振動によって撓み部239a、239bを押圧する。撓み部239a、239bは、幅狭い部分に形成されており、コマ部材50は嵌合孔236における当接部237で嵌合孔236に嵌合している。したがって、撓み部239a、239bでは、嵌合孔236が接する長手方向の中央部に応力が集中し、その結果、撓み部239a、239bが軸方向へ撓み、当該振動が吸収される。
【0036】
同様に、カム環25で発生した周方向の振動は、コマ部材50を介して撓み部239c、239dを押圧し、撓ませる。よって、当該振動が吸収される。このように、ズーム操作環23における嵌合孔236と切り欠き孔238a~238dのそれぞれとの間の部分は、コマ部材50から伝わる力によって撓む撓み部239a~239dとして機能する。
【0037】
また、コマ部材50は、その一端部で嵌合孔236に嵌合しており、当該一端部は、ビス51またはその頭部511が存在しないことから、中空である。よって、カム環25からコマ部材50に伝達された振動は、コマ部材50の中空な部分の周壁部でも吸収される。
【0038】
上記のようにして、ズームレンズ20では、ユーザがズーム操作環23を回転させたときに、カム環25で発生してズーム操作環23に伝達される振動が低減する。よって、ズーム動作におけるガタ感の無い感触が実現される。このような振動の低減は、切り欠き孔238a~238dの形成、コマ部材50を固定する際のビス51の位置、あるいはズームレンズ20の径方向におけるズームラバー24に対するコマ部材50の位置、によって実現される。よって、本実施形態によれば、従来のズームレンズから部品点数を増やすことなく、ガタ感の無いズーム動作における操作感をユーザに提供することができる。
【0039】
さらに、コマ部材50の一端とズームラバー24との間には、隙間G1が設けられている。したがって、コマ部材50がズームラバー24に当接することでズームラバー24が盛り上がることが防止される。そのため、コマ部材50によるズームラバー24の外観の変化がなく、ズームレンズ20の所望の外観が実現される。
【0040】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、以下における他の実施形態の説明において、説明の便宜上、前述した実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。本実施形態は、コマ部材が嵌合する嵌合孔の開口形状と切り欠き孔の配置とが異なる以外は、前述した実施形態1と実質的に同じである。
【0041】
図6は、本実施形態における防振構造の孔の配置を示しており、図7は、本実施形態における防振構造の一例を模式的に示している。
【0042】
本実施形態におけるズーム操作環63は、コマ部材50が嵌合する嵌合孔636と、その周囲に形成される三つの切り欠き孔638a~638cと、を有している。嵌合孔636の平面視したときの形状は、略三角形であり、正三角形の各頂角が曲線で丸められた形状である。嵌合孔636の略三角形の一辺は、ズーム操作環63の周方向に沿っており、当該一辺に対向する頂角が当該一辺よりも物体側に位置している。
【0043】
切り欠き孔638a~638cは、前述した実施形態1のそれと同じ細長な形状を有している。切り欠き孔638a~638cは、それぞれ、その長手方向が嵌合孔636の略三角形状における各辺に沿うように配置されており、嵌合孔636との間に幅が狭い部分である撓み部639a~639cを形成している。すなわち、切り欠き孔638aは、ズームレンズの周方向に沿って延在し、切り欠き孔638b、638cは、それぞれ当該周方向に対して60°、ズームレンズの軸方向に対して30°の角度を成す向きに沿って延在している。撓み部639a~639cも切り欠き孔638a~638cに対応して同様の向きに延在している。
【0044】
コマ部材50は、嵌合孔636における略三角形の各辺の中央部に接する。こうしてコマ部材50は嵌合孔636に内嵌する。
【0045】
カム環25で振動が発生すると、コマ部材50に伝達され、コマ部材50は、振動の方向に応じて撓み部639a~639cの一以上を押圧し、押圧された撓み部639a~639cの一以上が撓む。よって、カム環25で発生した平面視したときの平面方向(軸方向および周方向)の振動は、撓み部639a~639cによって低減する。
【0046】
本実施形態では、嵌合孔の内周壁から突出する当接部が形成されておらず、嵌合孔の周囲の切り欠き孔の数が3であることから、本実施形態は、前述した実施形態1の効果に加えて、より簡易に防振構造を構成する観点から有利である。
【0047】
〔実施形態3〕
本実施形態は、ズームラバーがコマ部材に内嵌するする凸部を有する以外は、前述した実施形態1と実質的に同じである。
【0048】
図8は、本実施形態におけるズームラバーの構成を模式的に示している。ズームラバー84は、その内周壁面から突出する凸部841を有している。凸部841は、略円柱形状を有し、コマ部材50が固定される位置に対応する位置に配置されている。凸部841は、ズームラバー84と同じ材料で一体的に形成されている。
【0049】
図9は、ズームレンズの要部断面図であり、本実施形態におけるズーム操作環23がカム環25に固定されている状態を模式的に示している。ズームラバー84の凸部841は、コマ部材50の一端側の開口部に内嵌している。凸部841は、ズームレンズの径方向において、ビス51の頭部511には当接せず、頭部511との間に隙間G2を有している。隙間G2は、ズームレンズの径方向において凸部841がコマ部材50内の部分(頭部511)に接触しない範囲において適宜に設定可能であり、前述した実施形態1における隙間G1と同じであってもよく、より大きくてもよく、より小さくてもよい。このように、本実施形態では、ズームラバー84は、嵌合孔236に嵌合しているコマ部材50に内嵌する凸部841を有している。そして、凸部841は、その高さ方向において隙間G2を有してコマ部材50に内嵌している。
【0050】
本実施形態では、ズームラバー84の凸部841がコマ部材50に嵌合している。そしてズームラバー84および凸部841は、いずれもゴム製であり、弾性を有している。カム環25で発生した振動はコマ部材50に伝達し、コマ部材50に嵌合する凸部841およびそれと一体的に構成されているズームラバー84によって吸収され、低減する。本実施形態は、前述した実施形態1の効果に加えて、カム環25からズーム操作環23への振動の伝達を抑制する観点からより一層効果的であり、よって、ズーム操作の円滑な操作感をユーザに提供する観点からより一層効果的である。
【0051】
また、凸部841は、その高さ方向において隙間G2を有してコマ部材50に嵌合している。したがって、凸部841が径方向の外側に向けて押圧されることがなく、そのため、ズームラバー84の外周壁面における凸部841に対応する部分の盛り上がりが防止される。よって、本実施形態では、前述した実施形態1と同様に、防振構造に起因するズームラバー84の外観の変化が防止される。
【0052】
〔実施形態4〕
本実施形態は、ズームラバーがコマ部材に外嵌する凹部を有し、コマ部材が当該凹部に外嵌するように配置されている以外は、前述した実施形態1と実質的に同じである。
【0053】
図10は、本実施形態における防振構造の一例を模式的に示している。コマ部材50は、ズームレンズの径方向において、コマ部材50の一端がズーム操作環23(本体部231)の表面よりも外側に位置している。このように本実施形態では、コマ部材50は、嵌合孔236に内嵌しているとともにズーム操作環23の外周面から突出している。
【0054】
図11は、本実施形態におけるズームラバーの構成を模式的に示している。ズームラバー94は、凹部941の内周壁面に凹部941を有している。凹部941の形状は、略円柱形状であり、その内径は、コマ部材50の外径と実質的に同じである。ズームラバー94において、凹部941は、コマ部材50が固定される位置に対応する位置に配置されている。
【0055】
図12は、ズームレンズの要部断面図であり、本実施形態におけるズーム操作環23がカム環25に固定されている状態を模式的に示している。コマ部材50は、ズーム操作環23の本体部231の表面から突出している一端部で、ズームラバー94の凹部941に内嵌している。このように、ズームラバー94は、嵌合孔236に内嵌しているとともにズーム操作環23の外周面から突出しているコマ部材50の端部に外嵌する凹部941を有している。
【0056】
また、凹部941に嵌合しているコマ部材50の一端と凹部941の底との間には、隙間G3が形成されている。このように、本実施形態では、ズームラバー94の凹部941は、その深さ方向において隙間G3を有してコマ部材50に外嵌している。隙間G3は、ズームレンズの径方向においてコマ部材50が凹部941の底に接触しない範囲において適宜に設定可能であり、前述した実施形態1における隙間G1と同じであってもよく、より大きくてもよく、より小さくてもよい。
【0057】
本実施形態では、ズームラバー94の凹部941がコマ部材50に嵌合していることから、前述した実施形態3と同様に、カム環25からコマ部材50に伝達した振動は、ズームラバー94によって吸収され、低減する。
【0058】
また、コマ部材50に外陥する凹部941の底とコマ部材50の先端との間には隙間G3が形成されている。したがって、凹部941の底がコマ部材50によって径方向の外側に向けて押圧されることがなく、そのため、ズームラバー94の外周壁面における凹部941に対応する部分の盛り上がりが防止される。よって、本実施形態では、前述した実施形態3と同様に、防振構造に起因するズームラバー94の外観の変化が防止される。
【0059】
〔変形例〕
本発明において、嵌合孔の周囲に撓み部を形成するための孔は、細長な開口形状を有する切り欠き孔でなくてもよく、当該孔の開口形状、位置および数は、所望の特定の撓み部が形成可能な範囲において適宜に決めてよい。
【0060】
本発明において、一部の嵌合孔の周囲のみに、撓み部を形成するための切り欠き孔を配置してもよい。たとえば、ユーザが特定の部分のみに接触してズーム操作を実施するようにズームレンズが構成されている場合には、当該特定の部分またはその周辺に位置する嵌合孔のみに切り欠き孔および撓み部を形成してもよい。同様に、本発明において、実施形態3または実施形態4におけるコマ部材とズームラバーの部分との嵌合は、一部のコマ部材のみに適用してもよい。
【0061】
前述した実施形態2に、前述した実施形態3または実施形態4におけるのコマ部材とズームラバーの部分との嵌合を適用してもよい。
【0062】
前述した実施形態2の嵌合孔に、実施形態1と同様に当接部をさらに形成してもよい。また、実施形態1の嵌合孔から、実施形態2のように当接部を省略してもよい。
【0063】
本発明において、コマ部材は、嵌合孔に対して中空の部分で嵌合しなくてもよい。たとえば、コマ部材の内周側にビスが存在している部分でコマ部材が嵌合孔に内嵌してもよい。
【0064】
本発明において、ズームラバーにおけるコマ部材と嵌合する部分とコマ部材とは、ズームレンズの径方向において全体的に当接していてもよい。たとえば、前述の凸部841の先端がビス51の頭部511に当接していてもよいし、前述の凹部941の底がコマ部材50の一端に当接していてもよい。
【0065】
なお、カム環からズーム操作環への振動の低減は、実施形態3または実施形態4における特徴部、すなわちズームラバーの部分とコマ部材との嵌合、のみによって実現され得る。このようなズームレンズは、周方向への回転運動によってレンズ群摺動枠を軸方向に移動させるカム環に、当該カム環の外周側に重なるズーム操作環が、外周側から当該ズーム操作環を貫通して上記カム環に到達するコマ部材によって固定されているズームレンズであって、上記ズーム操作環に外嵌する環状のズームラバーをさらに有し、ズームラバーは、上記ズーム操作環をカム環に固定している上記コマ部材に嵌合する凸部または凹部を有する。
【0066】
このような態様は、前述した切り欠き孔による防振構造を有さずにズームレンズの従来の部品を利用してカム環からの振動が低減され得ることから、ズームレンズにおけるズーム操作性の向上、生産性の向上およびコストの削減に有利である。当該態様は、前述した実施形態における該当する構成を適宜採用することで説明され得る。また、当該態様は、前述した実施形態の図面から切り欠き孔のみを除いた図面によって適宜に図示され得る。当該態様では、嵌合孔は当接部を有していなくてもよく、例えば平面視したときの外形が円形のコマ部材が内嵌する円形の孔であってもよい。
【0067】
〔まとめ〕
以上の説明から明らかなように、本発明の第一の態様のズームレンズ(20)は、周方向への回転運動によってレンズ群摺動枠(第一レンズ群摺動枠26)を軸方向に移動させるカム環(25)に、カム環の外周側に重なるズーム操作環(23)が、外周側からズーム操作環を貫通してカム環に到達するコマ部材(50)によって固定されているズームレンズであって、ズーム操作環は、コマ部材が内嵌する第一の孔(嵌合孔236)と、第一の孔の隣に形成された第二の孔(切り欠き孔238a~238d)と、を有し、第一の孔と第二の孔との間の部分がコマ部材から伝わる力によって撓む撓み部(239a~239d)として機能する。第一の態様によれば、ズームレンズの部品を増やすことなくカム環からズーム操作環への振動を低減させることが可能である。よって、第一の態様によれば、ズームレンズにおけるズーム操作性の向上、生産性の向上およびコストの削減に有利である。
【0068】
本発明の第二の態様のズームレンズは、第一の態様において、ズーム操作環が一つの第一の孔に対して四つの第二の孔を有しており、平面視したときに、コマ部材の外形は円形であり、第一の孔の形状はコマ部材が各辺で接する略正方形であり、第二の孔の形状は、略正方形の各辺に沿って細長な形状である。第二の態様は、軸方向および周方向の振動を低減させる観点からより一層効果的である。
【0069】
本発明の第三の態様のズームレンズは、第一の態様において、ズーム操作環が一つの第一の孔に対して三つの第二の孔を有しており、平面視したときに、コマ部材の外形は円形であり、第一の孔の形状はコマ部材が各辺で接する略三角形であり、第二の孔の形状は、略三角形の各辺に沿って細長な形状である。第三の態様は、簡易に撓み部を形成する観点からより一層効果的である。
【0070】
本発明の第四の態様のズームレンズは、第一の態様から第三の態様のいずれかにおいて、コマ部材の形状は略円筒形状であり、コマ部材はその周壁部における中空な部分で第一の孔に内嵌する。第四の態様は、コマ部材の周壁部の撓みによっても振動が吸収され得ることから、振動の低減の観点からより一層効果的である。
【0071】
本発明の第五の態様のズームレンズは、第一の態様から第四の態様のいずれかにおいて、ズーム操作環に外嵌する環状のズームラバー(84)をさらに有し、コマ部材の形状は略円筒形状であり、当該ズームラバーは、第一の孔に嵌合しているコマ部材に内嵌する凸部(841)を有する。第五の態様は、ズームラバーでも振動が吸収され得ることから、振動の低減の観点からより一層効果的である。
【0072】
本発明の第六の態様のズームレンズは、第一の態様から第四の態様のいずれかにおいて、ズーム操作環に外嵌する環状のズームラバーをさらに有し、当該ズームラバーは、第一の孔に内嵌しているとともにズーム操作環の外周面から突出しているコマ部材の端部に外嵌する凹部(941)を有する。第六の態様は、第五の態様と同様に、ズームラバーでも振動が吸収され得ることから、振動の低減の観点からより一層効果的である。
【0073】
本発明の第七の態様のズームレンズは、第五の態様において、ズームラバーの凸部がその高さ方向において隙間(G2)を有してコマ部材に内嵌している。第七の態様は、ズームレンズの径方向におけるコマ部材と凸部との接触が防止されることから、当該接触によるズームラバーの外観の変化を防止する観点からより一層効果的である。
【0074】
本発明の第八の態様のズームレンズは、第六の態様において、ズームラバーの凹部がその深さ方向において隙間を有してコマ部材に外嵌している。第八の態様は、第七の態様と同様に、ズームレンズの径方向におけるコマ部材と凹部との接触が防止されることから、当該接触によるズームラバーの外観の変化を防止する観点からより一層効果的である。
【0075】
本発明の第九の態様のズームレンズは、第一の態様から第八の態様のいずれかにおいて、コマ部材を貫通してカム環に螺合するネジ(ビス51)をさらに有する。第九の態様は、カム環に対するコマ部材の固定強度を高める観点からより一層効果的である。
【0076】
本発明の第十の態様の撮像装置(1)は、第一の態様から第九の態様のいずれかのズームレンズを有する。第十の態様によれば、ズームレンズにおけるズーム操作性の向上、生産性の向上およびコストの削減に有利である。
【0077】
前記構成によれば、従来のズームレンズに対して部品を増やすことなく、カム環から伝わる振動に影響されるズーム操作感を改善することが可能である。このような本発明は、例えば、国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs)における、消費と生産とのパターンに関する目標12「つくる責任、つかう責任」等の達成にも貢献することが期待される。
【0078】
本発明は上述した各実施形態に限定されず、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0079】
1 撮像装置
10 本体
20 ズームレンズ
21 外筒
22 マウント
23、63 ズーム操作環
24、84、94 ズームラバー
25 カム環
26 第一レンズ群摺動枠
27 フィルタネジ枠
32 シーリング材
50 コマ部材
51 ビス
231 本体部
232 段部
233 貫通孔
236、636 嵌合孔(第一の孔)
237 当接部
238a~238d、638a~638d 切り欠き孔(第二の孔)
239a~239d、639a~639d 撓み部
252、941 凹部
253 ネジ孔
511 頭部
841 凸部
G1~G3 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12