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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122739
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】植物(大豆を除く)賦活剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 37/36 20060101AFI20240902BHJP
   A01N 37/42 20060101ALI20240902BHJP
   A01P 21/00 20060101ALI20240902BHJP
   A01G 7/06 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
A01N37/36
A01N37/42
A01P21/00
A01G7/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030452
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】苅谷 悟
(72)【発明者】
【氏名】石野 暢好
【テーマコード(参考)】
2B022
4H011
【Fターム(参考)】
2B022EA01
2B022EA10
2B022EB06
4H011AB03
4H011BA01
4H011BB06
4H011BC06
4H011BC18
4H011DA13
(57)【要約】
【課題】生長促進および収量の増加を図ることのできる植物(大豆を除く)賦活剤を提供することを目的とする。
【解決手段】不飽和オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物、および核酸を含むことを特徴とする植物(大豆を除く)賦活剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物、および核酸を含むことを特徴とする植物(大豆を除く)賦活剤。
【請求項2】
前記不飽和オキソ脂肪酸が、下記式(I):
HOOC-(R1)-CH=CH-C(=O)-R2 (I)
[式(I)中、R1は、6個~12個の炭素原子を含む、直鎖または分岐の、飽和または不飽和の炭化水素基を示す。R2は、1つまたはそれ以上の分岐および/または二重結合を含んでいてもよい、炭素数2~8のアルキル基を示す。]、
または、下記式(II):
HOOC-(R3)-C(=O)-CH=CH-R4 (II)
[式(II)中、R3は、3個~10個の炭素原子を含む、直鎖または分岐の、飽和または不飽和の炭化水素基を示す。R4は、1つまたはそれ以上の分岐および/または二重結合を含んでいてもよい、炭素数4~11の炭化水素基を示す。]
で表される請求項1記載の植物(大豆を除く)賦活剤。
【請求項3】
前記式(I)において、R1が、前記式(I)におけるカルボニル基のαおよびβ炭素の間の二重結合と共役二重結合を形成する二重結合を含み、および
前記式(II)において、R4が、前記式(II)におけるカルボニル基のαおよびβ炭素の間の二重結合と共役二重結合を形成する二重結合を含む請求項2記載の植物(大豆を除く)賦活剤。
【請求項4】
前記式(I)で表される不飽和オキソ脂肪酸および前記式(II)で表される不飽和オキソ脂肪酸が、ケトオクタデカジエン酸である請求項3記載の植物(大豆を除く)賦活剤。
【請求項5】
前記式(I)において、R1が、炭素数9の直鎖または分岐の炭化水素基であり、および、R2が、炭素数5のアルキル基であり、ならびに
前記式(II)において、R3が、炭素数7の直鎖または分岐の炭化水素基であり、および、R4が、炭素数7でCH3-CH2-CH2-CH2-CH2-CH=CH-の構造を有している請求項3記載の植物(大豆を除く)賦活剤。
【請求項6】
前記不飽和オキソ脂肪酸が、9-オキソ-10,12-オクタデカジエン酸、13-オキソ-9,11-オクタデカジエン酸、5-オキソ-6,8-オクタデカジエン酸、6-オキソ-9,12-オクタデカジエン酸、8-オキソ-9,12-オクタデカジエン酸、10-オキソ-8,12-オクタデカジエン酸、11-オキソ-9,12-オクタデカジエン酸、12-オキソ-9,13-オクタデカジエン酸および14-オキソ-9,12-オクタデカジエン酸からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1記載の植物(大豆を除く)賦活剤。
【請求項7】
前記式(I)で表される不飽和オキソ脂肪酸が、13-オキソ-9,11-オクタデカジエン酸であり、および、前記式(II)で表される不飽和オキソ脂肪酸が、9-オキソ-10,12-オクタデカジエン酸である請求項5記載の植物(大豆を除く)賦活剤。
【請求項8】
請求項1記載の植物(大豆を除く)賦活剤であって、前記水酸化脂肪酸が不飽和脂肪酸である。
【請求項9】
前記水酸化脂肪酸が、以下の式(III)および/または(IV):
HOOC-(R5)-CH(OH)-CH(OH)-CH=CH-CH(OH)-R6 (III)
HOOC-(R5)-CH(OH)-CH=CH-CH(OH)-CH(OH)-R6 (IV)
[式中、
5は、4個~12個の炭素原子を有する直鎖または分岐の炭化水素基であって、1つまたはそれ以上の二重結合および/またはOH基を含んでいてもよく、二重結合を含んでいる場合、二重結合の位置は限定されない、
6は、2個~8個の炭素原子を有する直鎖または分岐の炭化水素基であって、1つまたはそれ以上の二重結合および/またはOH基を含んでいてもよく、二重結合を含んでいる場合、二重結合の位置は限定されない。]で表される請求項1記載の植物(大豆を除く)賦活剤。
【請求項10】
前記水酸化脂肪酸が、
5の炭化水素基が6個~8個の炭素原子を有し、
6の炭化水素基が4個~6個の炭素原子を有する請求項9記載の植物(大豆を除く)賦活剤。
【請求項11】
前記水酸化脂肪酸が、
5が、-(CH2n-(nは4~12である整数)の構造であり、
6が、Cn2n+1-(nは2~8である整数)の構造である請求項10記載の植物(大豆を除く)賦活剤。
【請求項12】
前記水酸化脂肪酸が、
5が、炭素数7のアルキレン基(-(CH27-)であり、
6が、炭素数5のアルキル基(CH3CH2CH2CH2CH2-)である請求項11記載の植物(大豆を除く)賦活剤。
【請求項13】
前記水酸化脂肪酸が、ヒドロキシオクタデセン酸である請求項1記載の植物(大豆を除く)賦活剤。
【請求項14】
前記水酸化脂肪酸が、9,10,13-トリヒドロキシ-11-オクタデセン酸または9,12,13-トリヒドロキシ-10-オクタデセン酸である請求項12記載の植物(大豆を除く)賦活剤。
【請求項15】
不飽和オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩から選ばれる少なくとも1種の化合物と、水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩から選ばれる少なくとも1種の化合物とを含む請求項1記載の植物(大豆を除く)賦活剤。
【請求項16】
前記不飽和オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩からなる化合物と前記水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩からなる化合物の重量比は、前記不飽和オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩からなる化合物が100に対して、前記水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩からなる化合物が5~100である請求項15記載の植物(大豆を除く)賦活剤。
【請求項17】
前記植物(大豆を除く)賦活剤が、収量向上用である請求項1記載の植物(大豆を除く)賦活剤。
【請求項18】
茎葉もしくは根に接触させる噴霧剤もしくは浸漬用薬剤、または、土壌灌注用薬剤である請求項1記載の植物(大豆を除く)賦活剤。
【請求項19】
前記植物(大豆を除く)賦活剤は、アブラナ科、イネ科、マメ科(大豆を除く)、ナス科、キク科、バラ科、ヒユ科、またはアオイ科植物から選択される植物に対して使用される請求項1記載の植物(大豆を除く)賦活剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物(大豆を除く)賦活剤に関する。
【背景技術】
【0002】
穀物植物や園芸植物の供給効率を向上させること等を目的として、植物の生長を調整する技術が開発されてきた。温度条件や日照条件の最適化や施肥などの対策に加え、生長促進、休眠抑制、ストレス抑制等の植物生長調節作用を有する植物賦活剤を用いて植物を賦活させる方法が報告されている。
【0003】
特許文献1には、植物緑色細胞を含む植物中のタンパク質含量を向上させるための植物活力剤であって、タンパク質含有量向上度が3%以上である物質を植物活力剤として用いることが記載されている。植物活力剤として用いられる物質の一つとして、オキシアルキレン基を含む1価脂肪酸またはその誘導体が開示されている。
【0004】
特許文献2には、脂肪酸又はその誘導体等を用いて、植物用肥料の主成分である硝酸イオン、リン酸イオン及びカリウムイオンの各吸収向上度の少なくとも1つを10%以上に改善する植物活力剤が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の植物活力剤のタンパク質含有量向上度は十分ではなく、また、特許文献2に記載の植物活力剤は、なお肥料成分の吸収効率を十分に改善できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-58342号公報
【特許文献2】特開2001-288011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
土壌汚染や人への健康被害、薬剤耐性菌の発生等の問題を引き起こすことなく、病害抵抗性を誘導する抵抗性誘導効果や生長促進効果などの植物を賦活させる効果に優れ、栽培植物の多収化を図ることのできる効率的な植物賦活剤が求められている。
【0008】
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたもので、植物に適宜散布または灌注することで、安全に、かつ、安定的および効果的に、生長促進効果および病害抵抗性誘導効果を示すことができる植物(大豆を除く)賦活剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、不飽和オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物、および核酸を含むことを特徴とする植物(大豆を除く)賦活剤に関する。
【0010】
前記不飽和オキソ脂肪酸は、炭素数は4つ以上であることが望ましい。カルボニル基とオキソ脂肪酸中の二重結合が共役している方が安定して存在できるためである。
【0011】
前記不飽和オキソ脂肪酸が、下記式(I):
HOOC-(R1)-CH=CH-C(=O)-R2 (I)
[式(I)中、R1は、6個~12個の炭素原子を含む、直鎖または分岐の、飽和または不飽和の炭化水素基を示す。R2は、1つまたはそれ以上の分岐および/または二重結合を含んでいてもよい、炭素数2~8のアルキル基を示す。]、
または、下記式(II):
HOOC-(R3)-C(=O)-CH=CH-R4 (II)
[式(II)中、R3は、3個~10個の炭素原子を含む、直鎖または分岐の、飽和または不飽和の炭化水素基を示す。R4は、1つまたはそれ以上の分岐および/または二重結合を含んでいてもよい、炭素数4~11の炭化水素基を示す。]
で表される不飽和オキソ脂肪酸であることが好ましい。
【0012】
前記式(I)において、R1が、前記式(I)におけるカルボニル基のαおよびβ炭素の間の二重結合と共役二重結合を形成する二重結合を含み、および前記式(II)において、R4が、前記式(II)におけるカルボニル基のαおよびβ炭素の間の二重結合と共役二重結合を形成する二重結合を含むことが好ましい。
【0013】
前記式(I)で表される不飽和オキソ脂肪酸および前記式(II)で表される不飽和オキソ脂肪酸が、ケトオクタデカジエン酸であることが好ましい。
【0014】
前記式(I)において、R1が、炭素数9の直鎖または分岐の炭化水素基であり、および、R2が、炭素数5のアルキル基であり、ならびに前記式(II)において、R3が、炭素数7の直鎖または分岐の炭化水素基であり、および、R4が、炭素数7でCH3-CH2-CH2-CH2-CH2-CH=CH-の構造を有していることが好ましい。
【0015】
前記不飽和オキソ脂肪酸が、9-オキソ-10,12-オクタデカジエン酸、13-オキソ-9,11-オクタデカジエン酸、5-オキソ-6,8-オクタデカジエン酸、6-オキソ-9,12-オクタデカジエン酸、8-オキソ-9,12-オクタデカジエン酸、10-オキソ-8,12-オクタデカジエン酸、11-オキソ-9,12-オクタデカジエン酸、12-オキソ-9,13-オクタデカジエン酸および14-オキソ-9,12-オクタデカジエン酸からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0016】
前記植物(大豆を除く)賦活剤において、前記式(I)で表される不飽和オキソ脂肪酸が、13-オキソ-9,11-オクタデカジエン酸であり、および、前記式(II)で表される不飽和オキソ脂肪酸が、9-オキソ-10,12-オクタデカジエン酸であることが好ましい。
【0017】
前記水酸化脂肪酸が、不飽和脂肪酸であることが望ましい。また、不飽和の水酸化脂肪酸の場合、二重結合により互いに結合している炭素原子には水酸化基が結合していない方が安定であるため、炭素数は4つ以上であることが望ましい。
【0018】
前記水酸化脂肪酸が、以下の式(III)および/または(IV):
HOOC-(R5)-CH(OH)-CH(OH)-CH=CH-CH(OH)-R6 (III)
HOOC-(R5)-CH(OH)-CH=CH-CH(OH)-CH(OH)-R6 (IV)
[式中、
5は、4個~12個の炭素原子を有する直鎖または分岐の炭化水素基であって、1つまたはそれ以上の二重結合および/またはOH基を含んでいてもよく、二重結合を含んでいる場合、二重結合の位置は限定されない、
6は、2個~8個の炭素原子を有する直鎖または分岐の炭化水素基であって、1つまたはそれ以上の二重結合および/またはOH基を含んでいてもよく、二重結合を含んでいる場合、二重結合の位置は限定されない。]で表される水酸化脂肪酸であることが好ましい。
【0019】
前記水酸化脂肪酸が、R5の炭化水素基が6個~8個の炭素原子を有し、R6の炭化水素基が4個~6個の炭素原子を有していることが好ましい。
【0020】
前記水酸化脂肪酸が、R5が、-(CH2n-(nは4~12である整数)の構造であり、R6が、Cn2n+1-(nは2~8である整数)の構造であることが好ましい。
【0021】
前記水酸化脂肪酸が、R5が、炭素数7のアルキレン基(-(CH27-)であり、R6が、炭素数5のアルキル基(CH3CH2CH2CH2CH2-)であることが好ましい。
【0022】
前記水酸化脂肪酸が、ヒドロキシオクタデセン酸であることが好ましい。
【0023】
前記水酸化脂肪酸が、9,10,13-トリヒドロキシ-11-オクタデセン酸または9,12,13-トリヒドロキシ-10-オクタデセン酸であることが好ましい。
【0024】
本発明の植物(大豆を除く)賦活剤は、不飽和オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩から選ばれる少なくとも1種の化合物と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩から選ばれる少なくとも1種の化合物と核酸とを含み得る。不飽和オキソ脂肪酸と水酸化脂肪酸の両種の化合物を含むことにより、植物賦活剤としての、植物の免疫、健康、生長および/または栽培作物の収量を増進する効果がさらに向上される場合がある。
【0025】
本発明の植物(大豆を除く)賦活剤が不飽和オキソ脂肪酸と水酸化脂肪酸の両種の化合物を含む場合、不飽和オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩からなる化合物と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩からなる化合物の重量比は、不飽和オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩からなる化合物が100に対して、水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩からなる化合物が、5~100であることが望ましい。水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩からなる化合物の含有量が、重量比で100を超えると、植物賦活効果が低下する恐れがあるからである。
【0026】
前記植物(大豆を除く)賦活剤であって、収量向上用のものであることが好ましい。
【0027】
前記植物(大豆を除く)賦活剤が、茎葉もしくは根に接触させる噴霧剤もしくは浸漬用薬剤、または、土壌灌注用薬剤として用いられる植物(大豆を除く)賦活剤であることが好ましい。
【0028】
前記植物(大豆を除く)賦活剤が、アブラナ科、イネ科、マメ科(大豆を除く)、ナス科、キク科、バラ科、ヒユ科、またはアオイ科植物から選択される植物に対して使用されることが好ましい。
【0029】
なお、「9,10,13-トリヒドロキシ-11-オクタデセン酸」は、「9,10,13-トリヒドロキシオクタデカ-11-エン酸」または慣用的に「9,10,13-トリヒドロキシ-11-オクタデカエン酸」とも表記される。「9,10,13-トリヒドロキシ-11-オクタデセン酸」の構造式は、下記構造式(1)で示されるものである。
【0030】
【化1】
【0031】
同様に、上述の「9,12,13-トリヒドロキシ-10-オクタデセン酸」は、「9,12,13-トリヒドロキシオクタデカ-10-エン酸」または「9,12,13-トリヒドロキシ-10-オクタデカエン酸」とも表記される。「9,12,13-トリヒドロキシ-10-オクタデセン酸」の構造式は、下記構造式(2)で示されるものである。
【0032】
【化2】
【発明の効果】
【0033】
本発明の植物(大豆を除く)賦活剤は、土壌汚染や毒性が低く、かつ優れた植物生長効果および収量増加効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】レタスにおける地上部長さの分析結果を示す図である。
図2】レタスにおける地上部湿重量の分析結果を示す図である。
図3】レタスにおける地下部湿重量の分析結果を示す図である。
図4】カイワレ大根における地上部長さの分析結果を示す図である。
図5】カイワレ大根における地上部湿重量の分析結果を示す図である。
図6】カイワレ大根における地下部湿重量の分析結果を示す図である。
図7】豆苗における地上部長さの分析結果を示す図である。
図8】豆苗における地上部湿重量の分析結果を示す図である。
図9】豆苗における地下部湿重量の分析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
植物(大豆を除く)賦活剤
本発明の植物(大豆を除く)賦活剤は、不飽和オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物、および核酸を含むことを特徴とする。
【0036】
本発明において「植物」とは、植物全体、植物器官(例えば葉、枝、幹、根、細根、シュート、果実など)または植物細胞を意味し得、特には、葉などの植物器官を意味するが、大豆は含まない。本明細書において、大豆とは、マメ科の一年草である大豆(学名 Glycine max)を意味する。また、本明細書で用いられる場合、「植物」は、大豆を除く、畑作物、野菜作物および果実を含む。ここで、作物や果実が遺伝子組み替えであるか、非遺伝子組み替えであるかは問わない。
【0037】
本発明における「植物賦活」とは、何らかの形で植物の生長活動を活性化または維持するように調整することを意味するものであり、生長促進(茎葉の拡大、塊茎塊根の生長促進等を包含する概念である)、休眠抑制、植物のストレス(例えば病害など)に対する抵抗性を誘導、付与し、抗老化等の植物生長調節作用を包含する概念である。
【0038】
本発明の植物(大豆を除く)賦活剤は、不飽和オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物、および核酸を植物賦活効果のための有効成分として含む。本発明の不飽和オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物および核酸は、植物の茎葉または根の一部に施用されることによって、植物に生長促進効果を付与することができる。例えば、未処理植物と比較して、植物の生長指標である葉の長さおよび葉の重さの増加や塊茎または塊根の重さの増加などが確認され得る。本発明の植物(大豆を除く)賦活剤を接種することによって、植物体(大豆を除く)の生育を促進し、栽培作物の収量増加をもたらすことができる。よって、本発明では、「植物賦活」効果とは、とりわけ、植物(大豆を除く)の生長を促進し、個体あたりの可食部を増加させることにより植物体の収量を高める効果を意味し得る。本発明の植物(大豆を除く)賦活剤の植物生長促進効果は非常に高く、この結果、商品作物の優れた収量増加効果や向上された収穫効率をもたらすことができる。さらに、本発明の植物(大豆を除く)賦活剤は、植物の茎葉または根の一部に施用することにより、植物体において抵抗性誘導に関係するサリチル酸経路を活性化することができ、この結果、植物に病害などへの抵抗性を誘導することができる。
【0039】
本発明の植物(大豆を除く)賦活剤は、植物を賦活させるための有効成分として、不飽和オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物、および核酸を含む。
【0040】
本発明のオキソ脂肪酸は、不飽和脂肪酸である不飽和オキソ脂肪酸である。不飽和のオキソ脂肪酸の場合、カルボニル基とオキソ脂肪酸中の二重結合が共役している方が化合物として安定して存在できるため、本発明の不飽和オキソ脂肪酸の炭素数は4以上であることが望ましい。
【0041】
本発明において使用される不飽和オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩としては、
下記式(I):
HOOC-(R1)-CH=CH-C(=O)-R2 (I)
[式(I)中、R1は、6個~12個の炭素原子を含む、直鎖または分岐の、飽和または不飽和の炭化水素基を示す。R2は、1つまたはそれ以上の分岐および/または二重結合を含んでいてもよい、炭素数2~8のアルキル基を示す。]、
または、下記式(II):
HOOC-(R3)-C(=O)-CH=CH-R4 (II)
[式(II)中、R3は、3個~10個の炭素原子を含む、直鎖または分岐の、飽和または不飽和の炭化水素基を示す。R4は、1つまたはそれ以上の分岐および/または二重結合を含んでいてもよい、炭素数4~11の炭化水素基を示す。]
で表される不飽和オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩から選ばれる少なくとも1種が好適に使用され得る。
【0042】
なお、不飽和オキソ脂肪酸や上記式(I)または(II)で表される化合物としては、同一の構造式を有するそのすべての幾何異性体および立体異性体を含む。本明細書において使用される場合、用語「立体異性体」は、本開示の化合物に存在し得る様々な立体異性体配置のいずれかを指し得る。例えば本開示の式(I)または(II)で表される化合物は、二重結合を含み、ここで置換基はEまたはZ配置であり得る。
【0043】
本発明の一実施形態において、上記式(I)のR1は式(I)におけるカルボニル基のαおよびβ炭素の間の二重結合と共役二重結合を形成する二重結合を含み得る。また、上記式(II)のR4は式(II)におけるカルボニル基のαおよびβ炭素の間の二重結合と共役二重結合を形成する二重結合を含み得る。
【0044】
例えば、本発明で使用される不飽和オキソ脂肪酸としてはケトオクタデカジエン酸などが好適に挙げられる。好ましくは、上記式(I)において、R1は、炭素数9の直鎖または分岐の炭化水素基であり得、および、R2は、炭素数5のアルキル基であり得る。また、上記式(II)において、R3は、炭素数7の直鎖または分岐の炭化水素基であり得、および、R4は、炭素数7の場合、CH3-CH2-CH2-CH2-CH2-CH=CH-の構造を有していることが好ましい。
【0045】
例えば、ケトオクタデカジエン酸としては、具体例として、9-オキソ-10,12-オクタデカジエン酸(9-oxoODA)、13-オキソ-9,11-オクタデカジエン酸(13-oxoODA)、5-オキソ-6,8-オクタデカジエン酸、6-オキソ-9,12-オクタデカジエン酸、8-オキソ-9,12-オクタデカジエン酸、10-オキソ-8,12-オクタデカジエン酸、11-オキソ-9,12-オクタデカジエン酸、12-オキソ-9,13-オクタデカジエン酸および14-オキソ-9,12-オクタデカジエン酸等が挙げられる。例えば、本発明の不飽和オキソ脂肪酸は、13-オキソ-9,11-オクタデカジエン酸または9-オキソ-10,12-オクタデカジエン酸であってよい。
【0046】
本発明の不飽和オキソ脂肪酸の誘導体としてはエステルが望ましい。本発明の不飽和オキソ脂肪酸のエステルとしては、これらに限定されるものではないが、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、オクチルエステル等を挙げることができる。
【0047】
不飽和オキソ脂肪酸の塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、例えばアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩等のアルキルアンモニウム塩などのアンモニウム塩等、農業上容認可能な1種以上の塩であれば特に限定されない。
【0048】
本発明の不飽和オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩は、2種以上の不飽和オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩を含んでいてもよい。2種以上の不飽和オキソ脂肪酸を組み合わせることにより、本発明の植物(大豆を除く)賦活剤がさらに高い植物賦活効果を示すことがある。例えば、2種の不飽和オキソ脂肪酸は、上記式(I)で表される少なくとも1種の不飽和オキソ脂肪酸と、上記式(II)で表される少なくとも1種の不飽和オキソ脂肪酸との組み合わせであり得る。例えば好ましくは、2種の不飽和オキソ脂肪酸は、9-オキソ-10,12-オクタデカジエン酸(9-oxoODA)と13-オキソ-9,11-オクタデカジエン酸(13-oxoODA)との組み合わせであってもよい。
【0049】
本発明の一実施形態において、本発明の植物(大豆を除く)賦活剤は、不飽和オキソ脂肪酸として13-オキソ-9,11-オクタデカジエン酸またはその塩もしくは誘導体および9-オキソ-10,12-オクタデカジエン酸またはその塩もしくは誘導体を含む。例えば、13-オキソ-9,11-オクタデカジエン酸またはその塩もしくは誘導体の含有量に対する、9-オキソ-10,12-オクタデカジエン酸またはその塩もしくは誘導体の含有量の比は、重量比で0.1~10程度であり、好ましくは0.3~2.0程度である。
【0050】
本発明で使用される不飽和オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩としては、それらの由来などは特に限定されるものではない。本発明のケトオクタデカジエン酸などの不飽和オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩は例えば化学合成によって得られるものでもよく、また、例えば微生物を用いて製造されるものや微生物由来の酵素を脂肪酸などの基質に作用させて得られるものなどであってもよい。本発明の植物(大豆を除く)賦活剤には所望の濃度の不飽和オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物および核酸が含まれていればよく、例えば不飽和オキソ脂肪酸として、微生物を用いて製造される不飽和オキソ脂肪酸が使用される場合、不飽和オキソ脂肪酸を含有する混合物が使用されてもよい。
【0051】
本発明の水酸化脂肪酸は、不飽和脂肪酸であることが望ましい。不飽和の水酸化脂肪酸の場合、二重結合により互いに結合している炭素原子には水酸化基が結合していない方が化合物として安定して存在できるため、本発明の不飽和の水酸化脂肪酸の炭素数は4以上であることが望ましい。
【0052】
本発明において使用される水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩としては、以下の式(III)および/または(IV)
HOOC-(R5)-CH(OH)-CH(OH)-CH=CH-CH(OH)-R6 (III)
HOOC-(R5)-CH(OH)-CH=CH-CH(OH)-CH(OH)-R6 (IV)
[式中、
5は、4個~12個の炭素原子を有する直鎖または分岐の炭化水素基であって、1つまたはそれ以上の二重結合および/またはOH基を含んでいてもよく、二重結合を含んでいる場合、二重結合の位置は限定されない、
6は、2個~8個の炭素原子を有する直鎖または分岐の炭化水素基であって、1つまたはそれ以上の二重結合および/またはOH基を含んでいてもよく、二重結合を含んでいる場合、二重結合の位置は限定されない。]
の構造式を有する水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩が好適に使用され得る。
【0053】
本発明の一実施形態において、上記水酸化脂肪酸におけるR5の炭化水素基は6個~8個の炭素原子を有し、R6の炭化水素基は4個~6個の炭素原子を有する。また、別の一実施形態において、上記水酸化脂肪酸におけるR5は、-(CH2n-(nは4~12である整数)の構造であり、R6は、Cn2n+1-(nは2~8である整数)の構造である。さらに、別の一実施形態において、上記水酸化脂肪酸におけるR5は、炭素数7のアルキレン基(-(CH27-)であり、R6は、炭素数5のアルキル基(CH3CH2CH2CH2CH2-)であることが好ましい。
【0054】
本発明の水酸化脂肪酸としては、具体的には、ヒドロキシオクタデセン酸が挙げられる。例えば、ヒドロキシオクタデセン酸としては、これらに限定される訳ではないが、9,10,13-トリヒドロキシ-11-オクタデセン酸および/または9,12,13-トリヒドロキシ-10-オクタデセン酸およびそれらの異性体が挙げられる。
【0055】
なお、水酸化脂肪酸の誘導体としては、エステルが望ましい。本発明の水酸化脂肪酸のエステルとしては、これらに限定されるものではないが、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、オクチルエステル等を挙げることができる。また、水酸化脂肪酸の塩としては、例えばアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩等のアルキルアンモニウム塩などのアンモニウム塩、例えばカルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩や例えばナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、コバルト塩、マンガン塩などの金属塩等が挙げられるが、肥料などに含まれる塩などの農業上容認可能な1種以上の塩であれば特に限定されない。
【0056】
なお、本明細書において例示されている水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物に異性体が存在する場合、特に記載のない限り、存在し得る全ての異性体が本発明において使用可能である。
【0057】
上述のように、本発明の植物(大豆を除く)賦活剤は、不飽和オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物および核酸を含むものである。これらの不飽和オキソ脂肪酸および水酸化脂肪酸は、天然にも存在し得るものであるから、本発明の植物(大豆を除く)賦活剤は、環境負荷が小さいという点においても非常に優れている。
【0058】
本明細書において使用される場合、用語「核酸」は、核酸塩基、ヌクレオシド、リボヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチドから選ばれる少なくとも1種を意味する。すなわち、本発明の植物(大豆を除く)賦活剤は、有効成分として、不飽和オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物に加えて、核酸塩基、リボヌクレオシド、リボヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチドから選ばれる少なくとも1種とを含む。
【0059】
本発明の植物(大豆を除く)賦活剤に含有される核酸は、様々な生体反応を制御して植物体の伸長生長や細胞分裂、花芽形成、発芽・発根、子房生長などを促す植物ホルモンの生合成における前駆物質である。したがって、本発明の植物(大豆を除く)賦活剤は、核酸を含有することにより、不飽和オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物による植物生長効果に加えて、施用された植物体におけるこのような植物ホルモンの生合成をさらに増加させることができる。
【0060】
本発明の核酸としては、特に限定されず、一般的な核酸塩基5種すなわちアデニン、グアニン、チミン、シトシン、ウラシル、ヌクレオシド5種すなわちアデノシン、グアノシン、チミジン、シチジン、ウリジン、これら5種のリボヌクレオシド、これら5種に1~3個のリン酸がエステル結合したリボヌクレオチド15種(AMP(アデノシンモノリン酸)、ADP(アデノシン二リン酸)、ATP(アデノシン三リン酸)、GMP(グアノシンモノリン酸)、GDP(グアノシン二リン酸)、GTP(グアノシン三リン酸)、TMP(チミジル酸/チミジン-リン酸)、TDP(チミジン二リン酸)、TTP(チミジン三リン酸)、CMP(シチジンモノリン酸)、CDP(シチジン二リン酸)、CTP(シチジン三リン酸)、UMP(ウリジンモノリン酸)、UDP(ウリジン二リン酸)、UTP(ウリジン三リン酸)、またはこれらリボヌクレオチドのリボースの2位のヒドロキシル基が水素に置換されたデオキシリボヌクレオチド15種(dAMP、dADP、dATP、dGMP、dGDP、dGTP、dTMP、dTDP、dTTP、dCMP、dCDP、dCTP、dUMP、dUDP、dUTP)、5-メチルウリジン(m5U)などの修飾塩基等から適宜選択されてよく、また、これらのうちの2種以上の混合物であってもよい。
【0061】
本発明の植物(大豆を除く)賦活剤が、不飽和オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物に加えて、核酸を含むことにより、本発明の植物(大豆を除く)賦活剤においては、不飽和オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物の植物体に対する賦活効果および収量増加効果がさらに増強されている。核酸は天然に存在する化合物であるため、環境に対する負荷は低く、植物(大豆を除く)賦活剤に核酸を含有させることは、施用される植物体に対して悪影響を及ぼさない。
【0062】
本発明において、核酸は、植物(大豆を除く)賦活剤中、不飽和オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物の含有量に対して重量比で500倍量以下程度の割合で、含まれ得る。本発明の植物(大豆を除く)賦活剤中に含まれ得る核酸の好ましい濃度は、施用する植物体(大豆を除く)の状態に依存し得、また、核酸の濃度の下限は特に限定されないが、不飽和オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物の含有量に対して重量比で1倍量以上程度含まれていることが好ましい。本発明の好ましい一実施形態において、核酸の割合は、不飽和オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物の含有量に対して重量比で5~300倍量程度とされ得る。
【0063】
本発明による植物(大豆を除く)賦活剤の施用量は、施用される植物体の栽培状態および生育段階、植物(大豆を除く)賦活剤の施用時期や施用方法等に依存して広い範囲内で変えることができる。また、植物(大豆を除く)賦活剤中の有効成分の含有量が、植物への適切な施用量にあわせて適宜設定されてもよい。例えば、本発明の植物(大豆を除く)賦活剤の一実施形態において、不飽和オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物は、10mg/L以下の濃度で用いられ得る。本発明の不飽和オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物の適用濃度が10mg/Lを超えると、植物にとっての薬害を生じる虞が考えられる。不飽和オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物の濃度の下限は特に限定されないが、0.01mg/L以上が好ましい。本発明の植物(大豆を除く)賦活剤は、例えば、本発明の不飽和オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物の濃度が、0.02~10mg/L程度の濃度となるような条件下で適用され得る。
【0064】
本発明の植物(大豆を除く)賦活剤には、必要に応じて、植物賦活剤として使用するのに適した相溶性の界面活性剤および/または希釈剤もしくは担体などが含有されていてもよい。例えば、希釈剤により、不飽和オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物の溶媒への分散性が向上する場合がある。また、本発明で使用される不飽和オキソ脂肪酸誘導体の希釈剤への溶解性や分散性を向上させるために、例えば分散助剤や湿潤剤などの界面活性剤などが含有されていてもよい。これらの添加成分としては、農薬製剤などに通常用いられる、農業的に許容され得る薬剤であれば特に限定されない。また、本発明の植物(大豆を除く)賦活剤には、界面活性剤や希釈剤、担体以外の、農薬製剤などに通常用いられる成分、例えば凍結融解安定剤、殺生物剤、防腐剤、顔料、染料、着色剤、緩衝剤またはpH調整剤または中和剤、泡抑制剤または消泡剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、植物体または土壌への展着力を高めるための展着剤、バインダー、抗酸化剤および安定剤などがさらに含有されていてもよい。このような薬剤は、商業的に製造され、様々な会社を通して利用可能である。なお、本明細書における「農業的に許容され得る薬剤」とは、農業的または園芸的使用のための組成物の調製のための技術分野において既知であり且つ許容される薬剤を意味する。また、本発明の植物(大豆を除く)賦活剤には、例えば1種以上の肥料成分などの植物に有益な成分が、不飽和オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物および核酸に加えて、さらに含有されていてもよい。
【0065】
本発明の植物(大豆を除く)賦活剤には、核酸に加えて、不飽和オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物が含まれていればよく、それらの由来などは特に限定されるものではない。本発明のケトオクタデカジエン酸などの不飽和オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩やヒドロキシオクタデセン酸などの水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩は、例えば、化学合成によって得られるものでもよく、また、例えば微生物を用いて製造されるものや微生物由来の酵素を脂肪酸などの基質に作用させて得られるものなどであってもよい。本発明の植物(大豆を除く)賦活剤には所望の濃度の不飽和オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物が含まれていればよく、例えば不飽和オキソ脂肪酸誘導体または水酸化脂肪酸誘導体として、それぞれ、微生物を用いて製造される不飽和オキソ脂肪酸または水酸化脂肪酸誘導体が使用される場合、不飽和オキソ脂肪酸および/または水酸化脂肪酸誘導体を含有する混合物が植物(大豆を除く)賦活剤に使用されてもよい。微生物によって分泌されたバイオサーファクタントなどが混合物中に含まれている場合、前述したような添加成分を含有させなくても、本発明の植物(大豆を除く)賦活剤の分散性を向上させる可能性がある。不飽和オキソ脂肪酸やその誘導体または水酸化脂肪酸やその誘導体自体が不溶性または難溶性である場合に、バイオサーファクタントにより乳化して水に分散させることができる場合がある。
【0066】
上述されるように、本発明の不飽和オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物および核酸を含む植物(大豆を除く)賦活剤は、植物体に施用されることにより、植物体の生長を促進し、植物体の地上部および地下部の重量や長さを増大させる顕著に優れた植物賦活効果を示すことを特徴とする。
【0067】
すなわち、本発明の植物(大豆を除く)賦活剤は、施用される植物体において、生長を促進し、植物個体あたりの葉茎、塊根または子実の重量および/または数などを増加させることができる。したがって、本発明の植物(大豆を除く)賦活剤は植物体における収量増加剤であり得る。
【0068】
本発明の植物(大豆を除く)賦活剤は、任意の方法で植物体に施用することができる。植物体の根、茎、葉等に接触する方法であれば施用方法は特に限定されず、賦活剤として好適に作用する。本発明の植物(大豆を除く)賦活剤は、植物体に直接接するように施用されてもよく、また、植物体が定着した土壌、培地等の栽培担体に施用してもよい。例えば、本発明の植物(大豆を除く)賦活剤は、植物の茎葉もしくは根に接触させる噴霧剤もしくは浸漬用薬剤、例えば水に懸濁させて用いる水和剤、または、土壌灌注用薬剤として使用され得る。具体的な施用方法は、施用される栽培植物の栽培形態等によって適宜選択され得るが、例えば、地上液剤散布、地上固形散布、空中液剤散布、空中固形散布、液面散布、施設内施用、土壌混和施用、土壌灌注施用、塗布処理等の表面処理、育苗箱施用、単花処理、株元処理等が例示され得る。また、本発明の植物(大豆を除く)賦活剤は、植物の肥料成分と混合して、植物用肥料として使用してもよい。また、本発明の植物(大豆を除く)賦活剤は、多孔質構造体やカプセル内に包含されたり、シート等に含侵されたりして、徐放性の薬剤として使用されてもよい。
【0069】
本発明の植物(大豆を除く)賦活剤としての形態は特に限定されない。例えば、本発明の植物(大豆を除く)賦活剤は、固体として提供され得る。固体の剤型としては、例えば、粉末、水和性粉末、水溶性粉末、散粉性粉末、フローダスト、結晶、顆粒、粒剤、カプセル化粒剤、細粒剤、微粒剤、マイクロカプセル、ペレット、錠剤、フレーク等が挙げられる。代替的には、本発明の植物(大豆を除く)賦活剤は、液体として提供され得る。例えば、液体の剤型としては、溶液、濃縮溶液、水溶液、懸濁液、マイクロカプセル懸濁液、ペースト、スラリー、ゲル、液体可溶性ゲルなどが挙げられる。好ましくは、本発明の植物(大豆を除く)賦活剤は、溶媒をさらに含み、液体として製剤化される。使用される溶媒は水であることが望ましい。植物に対する毒性がなく、土壌を汚染しないからである。本発明の植物(大豆を除く)賦活剤は、液体剤型の濃縮形態および/または希釈形態で提供され得る。濃縮形態の植物(大豆を除く)賦活剤は、使用される前に希釈剤を用いて適宜希釈され得る。好ましくは、希釈剤は水である。本発明の植物(大豆を除く)賦活剤は、植物体の栽培において植物に植物生長促進効果を付与し、施用された植物において、作物重量の増加などの植物体の増加による収量増大による多収化および収穫効率の向上をもたらす。
【0070】
本発明の植物(大豆を除く)賦活剤は、散布等の簡便な処理によって収量の向上をもたらすことができるため、特殊な設備等を用意する必要がなく、この点においても本発明は非常に有利である。さらに、ケトオクタデカジエン酸やヒドロキシオクタデセン酸などは、天然に存在する脂肪酸の酸化物であるため、本発明の植物(大豆を除く)賦活剤の環境負荷は低く、かつ、施用される植物への薬害もほとんどないという点においても、本発明の植物(大豆を除く)賦活剤は優れている。
【0071】
本発明の植物(大豆を除く)賦活剤の植物体および/または栽培担体への施用は、例えば、ケトオクタデカジエン酸および/またはヒドロキシオクタデセン酸、またはそれらの誘導体、構造異性体もしくはそれらの塩、ならびに核酸が、水および/または水溶性溶媒に溶解または分散した液体の状態で植物体および/または栽培担体に施用される方法によって行うことができる。例えば、ケトオクタデカジエン酸および/またはヒドロキシオクタデセン酸、またはそれらの誘導体、構造異性体もしくそれらの塩、ならびに核酸が溶解または分散された液体が、対象の植物体の地上部(茎、葉等)に噴霧または塗布され得る。本発明の植物(大豆を除く)賦活剤の対象植物への施用は例えば、開花前までに少なくとも一回行われればよく、複数回に分けて施用されてもよい。
【0072】
本発明の植物(大豆を除く)賦活剤を施用することのできる植物は、特に限定されるものではなく、植物一般に対して良好に用いることができる。例えば、アブラナ科、イネ科、マメ科(大豆を除く)、ナス科、キク科、バラ科、ヒユ科、またはアオイ科の植物に対して、好適に施用され得る。特には、アブラナ科、マメ科(大豆を除く)、キク科の栽培植物が好ましい。また、施用の対象となる植物は野生型の植物に限定されず、例えば変異体や形質転換体等であってもよい。また、それぞれの植物の品種も特に限定されない。
【実施例0073】
本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
【0074】
・植物(大豆を除く)賦活剤の調製
[製造例1]
脂肪酸を含む原料として、純度90%のリノール酸(日油(株)製)580gを用い、これに炭酸カリウム(富士フイルム和光純薬(株)製)216g、リン酸水素二カリウム(富士フイルム和光純薬(株)製)280g、および、蒸留水13000mLを加えて試験溶液を調製した。この時の試験溶液のpHは9.0であった。
【0075】
試験溶液にリポキシゲナーゼ(ナカライテスク(株)製、大豆由来)を40mg添加し、酸素を曝気し攪拌しながら15℃で3時間反応させたのち、反応混合物を90℃の湯浴中に90分間置いた。得られた反応液をA液とした。
【0076】
A液6500mLにリン酸(富士フイルム和光純薬(株)製)35mLを加えてpH7.0に調整した。この液に酸素を曝気し攪拌しながら50℃で22時間反応させたのち、反応混合物を90℃の湯浴中に2時間置いた。得られた反応液をB液とした。
【0077】
上記で得られたA液全量とB液全量を混合し、得られた混合液を、標準物質としてケイマンケミカル社製の13-oxoODA(13-オキソ-9,11-オクタデカジエン酸、13-oxo-9,11-octadecadienoic acid)、9-oxoODA(9-オキソ-10,12-オクタデカジエン酸、9-oxo-10,12-octadecadienoic acid)、およびラローダンファインケミカルズ社製の9,10,13-トリヒドロキシ-11-オクタデカエン酸(9,10,13-トリヒドロキシ-11-オクタデセン酸、9,10,13-trihydroxy-11-octadecenoic acid)、9,12,13-トリヒドロキシ-10-オクタデカエン酸(9,12,13-トリヒドロキシ-10-オクタデセン酸、9,12,13-trihydroxy-10-octadecenoic acid)をそれぞれ使用し、MS2スペクトル解析を用いてLC-MS(検出波長 不飽和オキソ脂肪酸:UV 272nm、水酸化脂肪酸:210nm)にて絶対検量線法により定量した。
【0078】
(E,E体)、(E,Z体)などの異性体の合算収率として、収率3.7%の13-oxoODAを得た。このとき9-oxoODAの収率は1.7%であった。また、9,10,13-トリヒドロキシ-11-オクタデカエン酸および9,12,13-トリヒドロキシ-10-オクタデカエン酸を併せた収率は、1.2%(LC-MSによるピークの分離不能)であり、リノール酸の回収率は84.1%であった。
【0079】
なお、収率(%)は以下の式に基づいて求めた。
収率(%)=(生成した13-oxoODA、9-oxoODA、9,10,13-トリヒドロキシ-11-オクタデカエン酸または9,12,13-トリヒドロキシ-10-オクタデカエン酸のwt%)/(使用した原料リノール酸の初期wt%)
【0080】
上記で得られたA液およびB液の混合液の0.1mLをイオン交換水で2000mLに希釈したものを植物賦活剤溶液1とした。植物賦活剤溶液1中の13-oxoODAの濃度は0.0925ppm、9-oxoODAの濃度は0.0425ppm、ならびに、9,10,13-トリヒドロキシ-11-オクタデカエン酸および9,12,13-トリヒドロキシ-10-オクタデカエン酸を併せた濃度は、0.03ppmであった。
【0081】
[実施例1]
製造例1と同様の方法で準備した植物賦活剤溶液1 2000mLに、核酸粒(サケ白子から抽出した核酸(アデニン、アデノシン、アデノシンモノリン酸(AMP)、グアニン、グアノシン、グアノシンモノリン酸(GMP)、チミン、チミジン、チミジンモノリン酸(TMP)、5-メチルウリジン、シトシン、シチジン、シチジンモノリン酸(CMP)、ウラシル、ウリジン、ウリジンモノリン酸(UMP)):(株)健康応援団製)をすり潰したもの16.8mgを溶解した溶液を植物賦活剤溶液2として調製した。
【0082】
[比較例1]
イオン交換水2000mLを比較溶液1とした。
【0083】
[比較例2]
イオン交換水2000mLに、核酸粒((株)健康応援団製)をすり潰したもの16.8mgを溶解した溶液を比較溶液2として調製した。
【0084】
[比較例3]
ステアリン酸(富士フイルム和光純薬(株)製)50mg、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレイン酸エステル(富士フイルム和光純薬(株)製)150mgをイオン交換水に分散させて1Lの水溶液(水分散液)を調製し、この水溶液に、核酸粒(サケ白子から抽出した核酸(アデニン、アデノシン、アデノシンモノリン酸(AMP)、グアニン、グアノシン、グアノシンモノリン酸(GMP)、チミン、チミジン、チミジンモノリン酸(TMP)、5-メチルウリジン、シトシン、シチジン、シチジンモノリン酸(CMP)、ウラシル、ウリジン、ウリジンモノリン酸(UMP)):(株)健康応援団製)をすり潰したもの8.4mgを添加して溶解させた溶液を比較溶液3として調製した。
【0085】
・植物賦活剤溶液を用いた植物生長試験
A)レタスにおける植物生長試験
リーフレタス(品種:グランドラピット)の種を、野菜と花の種まき培土(タキイ種苗(株)製)を入れた200穴の育苗ピットトレイに播種した。人工気象機(LH-60FL3-DT:(株)日本医化器械製作所製)内で温度23℃、蛍光灯下14時間と温度20℃、消灯下10時間を1日のサイクルとして発芽させた。同条件にて育苗を進め、本葉2~3枚の時期に、植物賦活剤溶液1および2ならびに比較溶液1~3をそれぞれ、株当たり1mLずつ(各溶液による処理区毎10株ずつ)に葉面散布した。
【0086】
散布1日後に6cmポットに移植し、本葉4~5枚期まで20日間育成させた後、各処理区における供試作物の生育調査を行った。なお、追肥および農薬の散布は実施しなかった。供試作物の生育調査は、各処理区10株の全てを用いて、地上部長さ(cm)、地上部湿重量(g)および地下部湿重量(g)を測定することにより行われた。地上部長さは、各供試作物において一番大きな葉の根元から先端までの長さ(cm)を測定したものである。地上部湿重量および地下部湿重量は、1株毎それぞれの重量を測定し、同処理区内の10株の平均をとったものである。
【0087】
B)カイワレ大根における植物生長試験
カイワレ大根(品種:カイワレダイコン)の種を5cm×10cmの脱脂綿に80粒ずつ並べて種の3分の1程度が水に浸るようにしたものを6つ用意した。温度20℃の室内で、全体をアルミホイルで覆って4日間栽培した。
【0088】
栽培4日後にアルミホイルを取り除き、各処理区において40株程度が、茎長5cm程度まで育っているのを確認した。植物賦活剤溶液1および2ならびに比較溶液1~3をそれぞれ10mLずつ各処理区毎に葉面散布した。
【0089】
散布後5日間育成させた後に、各処理区における供試作物の生育調査を行った。なお、追肥および農薬の散布は実施しなかった。供試作物の生育調査は、地上部長さ(cm)、地上部湿重量(g)および地下部湿重量(g)測定することにより行われた。サンプル数については次の通りである。地上部長さは各処理区毎5株ずつを用いて、地上部湿重量および地下部湿重量は各処理区毎10株ずつの5組を用いて測定に供した。地上部長さは、各処理区5株の供試作物において一番長い茎の根元から先端までの枝葉までの長さ(cm)を測定したものである。地上部湿重量は、1株毎の地上部湿重量を測定し、同処理区内の10株の平均をとったものである。地下部湿重量は、地上部湿重量を測定するために地上部を切り取ったもの(すなわち各処理区につき10株ずつ)の地下部をまとめて測定した後、1株当たりを算出したものである。
【0090】
C)豆苗における植物生長試験
50gずつの可食部2個入りの市販の豆苗(販売元:(株)サラダコスモ)を茎の根元から2cmの高さのところで水平に切りとり、その根部全体を水に浸した。これを可食部50gにつき5つ分用意し、温度20℃の室内の窓際にて栽培を開始した。
【0091】
栽培1日目に、植物賦活剤溶液1および2ならびに比較溶液1~3をそれぞれ10mLずつ、各処理区毎に、地上部に葉面散布した。
【0092】
散布後6日間育成させた後に、各処理区における供試作物の生育調査を行った。なお、追肥および農薬の散布は実施しなかった。供試作物の生育調査は、地上部長さ(cm)、地上部湿重量(g)および地下部湿重量(g)を測定することにより行われた。サンプル数については次の通りである。地上部長さは各処理区毎5株ずつを用いて、地上部湿重量および地下部湿重量は各処理区毎10株ずつの5組を用いて測定に供した。地上部長さは、各処理区5株の供試作物において一番長い茎の根元から先端までの枝葉までの長さ(cm)を測定したものである。地上部湿重量は、1株毎の地上部湿重量を測定し、同処理区内の10株の平均をとったものである。地下部湿重量は、地上部湿重量を測定するために地上部を切り取ったもの(すなわち各処理区につき10株ずつ)の地下部をまとめて測定した後、1株当たりを算出したものである。
【0093】
測定した地上部長さ(cm)、地上部湿重量(g)および地下部湿重量(g)について、レタスにおける結果をそれぞれ図1~3に、カイワレ大根における結果をそれぞれ図4~6に、および、豆苗における結果をそれぞれ図7~9に示す。
【0094】
図1~3に示されるように、核酸を含む植物賦活剤溶液2(実施例1)を付与したレタスにおいては、水のみの比較溶液1(比較例1)または水に核酸を添加した比較溶液2(比較例2)と比較して、地上部長さ(cm)、地上部湿重量(g)および地下部湿重量(g)のいずれもが増大していた。飽和の脂肪酸に核酸が添加されている比較溶液3の増大効果は、比較溶液2と殆ど変わらなかった。一方、核酸が添加されていない植物賦活剤溶液1(製造例1)は、比較溶液1~3よりは高い増大効果を示したものの、地上部長さ(cm)、地上部湿重量(g)および地下部湿重量(g)の全てにおいて、植物賦活剤溶液2(実施例1)ほどの顕著な増大効果は示さなかった。
【0095】
カイワレ大根および豆苗においても、地上部長さ(cm)、地上部湿重量(g)および地下部湿重量(g)について、ほぼ同様の結果が得られた。図4、5、7および8に示されているように、核酸を含む実施例1の植物賦活剤溶液2は、カイワレ大根および豆苗の地上部長さ(cm)および地上部湿重量(g)を顕著に増大させた。核酸が添加されていない植物賦活剤溶液1(製造例1)は、増大効果を示したものの、植物賦活剤溶液2(実施例1)ほどの顕著な増大効果は示さなかった。以上の結果より、本発明の植物(大豆を除く)賦活剤は、高い植物生長効果および収量増加効果を有していることがわかる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9