(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122753
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】人工血管接続構造
(51)【国際特許分類】
A61M 60/859 20210101AFI20240902BHJP
A61F 2/06 20130101ALI20240902BHJP
【FI】
A61M60/859
A61F2/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030471
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小嵐 伸作
【テーマコード(参考)】
4C077
4C097
【Fターム(参考)】
4C077AA04
4C077DD21
4C077DD22
4C077EE01
4C077KK01
4C077KK17
4C097AA15
4C097AA16
4C097CC01
4C097CC05
4C097CC13
4C097DD10
4C097DD12
4C097EE08
4C097FF12
(57)【要約】
【課題】本発明は、簡単な構造で耐漏血性の高い人工血管接続構造を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の人工血管接続構造1は、第1筒状部211および第2筒状部212を備えた、コネクタ2と、係合部31を備えたロック部材3と、フェルール4とを備え、第2筒状部212が凹凸部212aを有し、人工血管接続構造1がさらに、凹凸部212aの径方向外側かつフェルール4の径方向内側に配置される弾性部材5を備え、フェルール4は、径方向内側に変位可能な脚部41を備え、ロック部材3は、脚部41を径方向内側に押圧して変位させる押圧部33を備え、弾性部材5は、押圧部33によって脚部41が径方向内側に変位する際に、凹凸部212aに向かって押圧されて弾性変形するように構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工血管を接続対象に接続するための、人工血管接続構造であって、前記人工血管接続構造が、
被係合部を有する第1筒状部と、前記第1筒状部に対して軸方向で一方側に配置され、前記人工血管の内側に嵌入される第2筒状部とを備えた、前記接続対象に接続されるコネクタと、
前記第1筒状部の前記被係合部に係合する係合部と、前記第2筒状部に対して径方向外側に配置されるロック部材筒部とを備え、前記コネクタと接続される、筒状のロック部材と、
前記ロック部材の径方向で、前記コネクタの前記第2筒状部と、前記ロック部材の前記ロック部材筒部との間に設けられるフェルールと
を備え、
前記コネクタの前記第2筒状部が、前記第2筒状部の外周の少なくとも一部に凹凸部を有し、
前記人工血管接続構造がさらに、前記凹凸部の径方向外側かつ前記フェルールの径方向内側に配置される環状の弾性部材を備え、
前記フェルールは、径方向内側に変位可能な、可撓性を有する脚部を備え、
前記ロック部材は、前記ロック部材筒部の内面に、前記脚部を径方向内側に押圧して変位させる押圧部を備え、
前記弾性部材は、
前記押圧部によって前記脚部が径方向内側に変位する際に、前記フェルールの内面によって前記凹凸部に向かって押圧されて弾性変形するように構成されている、
人工血管接続構造。
【請求項2】
前記凹凸部が、前記第2筒状部のうち、前記軸方向で他方側となる基端領域に設けられ、
前記弾性部材が、前記軸方向で前記凹凸部に沿って設けられている、
請求項1に記載の人工血管接続構造。
【請求項3】
前記フェルールは、前記ロック部材が前記コネクタに対して前記軸方向に移動する際に、前記ロック部材によって前記コネクタに対して軸方向に押圧されて、前記軸方向に移動するように構成され、
前記フェルールは、前記フェルールの内面に、前記弾性部材の前記軸方向の一方側の端部に係合可能な係止部を有し、
前記第1筒状部の外径は、前記第2筒状部の外径よりも大きく、前記第1筒状部と前記第2筒状部との間に段差部が設けられ、
前記弾性部材が、前記軸方向で前記係止部と前記段差部との間に配置され、
前記フェルールが、前記ロック部材によって、前記コネクタに対して軸方向に押圧されて、前記軸方向に移動する際に、前記弾性部材が前記軸方向に圧縮される、請求項1に記載の人工血管接続構造。
【請求項4】
前記フェルールは、前記フェルールの外面に前記押圧部に押圧される被押圧部を有し、
前記ロック部材の前記押圧部、および/または、前記フェルールの被押圧部が、前記ロック部材が前記コネクタに対して前記軸方向に移動する際に、前記押圧部から前記被押圧部に加わる力を、前記フェルールの脚部を径方向内側に変位させ、かつ、前記フェルールを軸方向に移動させる力に変換可能な傾斜面を有している、請求項3に記載の人工血管接続構造。
【請求項5】
前記フェルールの前記脚部が、前記脚部の内面に、前記押圧部によって前記脚部が径方向内側に変位した際に、前記人工血管の外面を保持できるように、前記第2筒状部の外周に向かって押圧される保持部を有している、請求項1に記載の人工血管接続構造。
【請求項6】
前記保持部が前記軸方向に凹凸が形成された凹凸構造を有している、請求項5に記載の人工血管接続構造。
【請求項7】
前記凹凸部は、前記第2筒状部の周方向に沿って延びる複数の環状凸部または螺旋状の凸部によって構成されている、請求項1に記載の人工血管接続構造。
【請求項8】
前記人工血管接続構造は、人工血管をさらに備え、
前記人工血管は、前記人工血管の長さ方向全体に亘って山部と谷部とが交互に形成されており、
前記人工血管の端部は、前記径方向で前記フェルールと前記第2筒状部との間において、前記凹凸部と前記弾性部材に挟持されている、
請求項1~7のいずれか1項に記載の人工血管接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人工血管接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
人工血管を補助人工心臓などの接続対象に接続するものとして、例えば、特許文献1のような接続構造が開示されている。この接続構造は、人工血管の端部に接続構造を取り付けることで、人工血管を接続対象に接続する。特許文献1の接続構造は、コネクタ部に対してナットを螺合して、ナットをコネクタ部に対して軸方向に移動させることで、人工血管の端部を径方向に挟み込むように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような接続構造において、例えば、人工血管の全体が軸方向に沿って凹凸が連続的に形成されたプリーツ構造を有する場合、径方向に人工血管の端部が挟み込まれる際に、プリーツ構造を有する人工血管の端部に皺が生じる可能性がある。この皺は、プリーツ構造が接続構造によって挟み込まれた際に不均一に変形することで生じ、これにより、接続構造と人工血管との間に隙間が生じる場合がある。漏血の可能性が高まる皺が生じることを抑制するために、例えば、径方向に挟み込まれる人工血管の端部の部分に、プリーツ構造を有しない平滑な表面を有する人工血管を用いることも考えられる。しかし、その場合、人工血管の製造コストが高くなったり、平滑な表面と接続構造との間に隙間が生じることを防ぐために、人工血管の端部にリング部材などの別部材を取り付けた後、接続構造に取り付ける必要が生じ、構造が複雑となる。
【0005】
そこで、本発明は、簡単な構造で耐漏血性の高い人工血管接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の人工血管接続構造は、人工血管を接続対象に接続するための、人工血管接続構造であって、前記人工血管接続構造が、被係合部を有する第1筒状部と、前記第1筒状部に対して軸方向で一方側に配置され、前記人工血管の内側に嵌入される第2筒状部とを備えた、前記接続対象に接続されるコネクタと、前記第1筒状部の前記被係合部に係合する係合部と、前記第2筒状部に対して径方向外側に配置されるロック部材筒部とを備え、前記コネクタと接続される、筒状のロック部材と、前記ロック部材の径方向で、前記コネクタの前記第2筒状部と、前記ロック部材の前記ロック部材筒部との間に設けられるフェルールとを備え、前記コネクタの前記第2筒状部が、前記第2筒状部の外周の少なくとも一部に凹凸部を有し、前記人工血管接続構造がさらに、前記凹凸部の径方向外側かつ前記フェルールの径方向内側に配置される環状の弾性部材を備え、前記フェルールは、径方向内側に変位可能な、可撓性を有する脚部を備え、前記ロック部材は、前記ロック部材筒部の内面に、前記脚部を径方向内側に押圧して変位させる押圧部を備え、弾性部材は、前記押圧部によって前記脚部が径方向内側に変位する際に、前記フェルールの内面によって前記凹凸部に向かって押圧されて弾性変形するように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡単な構造で耐漏血性の高い人工血管接続構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態の人工血管接続構造が接続対象に接続された状態を示す概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態の人工血管接続構造の分解斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態の人工血管接続構造の分解平面図である。
【
図5】ロック部材とコネクタとが接続された、本発明の一実施形態の人工血管接続構造の斜視図である。
【
図6】ロック部材とコネクタとが接続された、本発明の一実施形態の人工血管接続構造の平面図である。
【
図8】コネクタに人工血管が取り付けられた状態を示す、コネクタおよび人工血管を軸方向に切断した断面図である。
【
図9】コネクタにフェルールが取り付けられ、ロック部材が接続される前の状態を示す、コネクタ、フェルールおよびロック部材を軸方向に切断した断面図である。
【
図11】
図9に示される状態からロック部材が軸方向に移動して、ロック部材の押圧部と、フェルールの被押圧部とが当接した状態を示す、コネクタ、フェルールおよびロック部材を軸方向に切断した断面図である。
【
図13】フェルールの脚部の径方向内側への変位によって弾性変形した状態の弾性部材を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態の人工血管接続構造を説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまで一例であり、本発明の人工血管接続構造は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0010】
なお、本明細書において、「Aに垂直」およびこれに類する表現は、Aに対して完全に垂直な方向のみを指すのではなく、Aに対して略垂直であることを含んで指すものとする。また、本明細書において、「Bに平行」およびこれに類する表現は、Bに対して完全に平行な方向のみを指すのではなく、Bに対して略平行であることを含んで指すものとする。また、本明細書において、「C形状」およびこれに類する表現は、完全なC形状のみを指すのではなく、見た目にC形状を連想させる形状(略C形状)を含んで指すものとする。
【0011】
本実施形態の人工血管接続構造1は、
図1に示されるように、人工血管VEを接続対象Cに接続するために用いられる。人工血管接続構造1によって、人工血管VEを接続対象Cに接続することで、人工血管VEを介して接続対象Cに、または接続対象Cから血液の流通を可能にする。
【0012】
接続対象Cは、人工血管接続構造1(具体的には、後述するコネクタ2(
図2参照))を介して人工血管VEが接続される対象である。本実施形態では、接続対象Cは、補助人工心臓である。しかし、接続対象は、人工血管VEを接続可能な対象であれば、特に限定されず、人工血管VEの接続が必要な他の臓器、血管等であってもよい。本実施形態では、
図1に示されるように、人工血管VEの一端が、人工血管接続構造1によって補助人工心臓である接続対象Cに接続され、人工血管VEの他端は、人体(大動脈等の血管や心臓等の臓器)に縫合されている。
【0013】
接続対象Cは、後述する人工血管接続構造1のコネクタ2が接続される被接続部Caを有している。被接続部Caは、人工血管接続構造1のコネクタ2に対して液密に接続される。本実施形態では、被接続部Caは、コネクタ2に螺合することで液密に接続されている。しかし、被接続部Caとコネクタ2との間の接合構造は、被接続部Caとコネクタ2とを液密に接続可能であれば、特に限定されない。
【0014】
人工血管VEは、例えば、病的な生体血管と取り替えて、生体血管をバイパスするためなど、生体血管の代用となる医療用のチューブ状部材である。人工血管VEは、後述するコネクタ2、ロック部材3およびフェルール4を介して、接続対象Cに接続される。
【0015】
人工血管VEは、公知の人工血管と同様の構造を有するものとすることができる。人工血管VEの構造や材料は、生体血管の代用となる医療用のチューブ状部材であり、接続対象Cと接続できるものであれば、特に限定されない。人工血管VEは、例えば、ポリエステル等の繊維が所定の織構造によって織られた布製人工血管とすることができる。本実施形態では、人工血管VEは、人工血管VEの長さ方向(軸X(
図2参照)方向)全体に亘って山部Mと谷部V(
図8参照)とが交互に形成された、プリーツ構造を有している。本実施形態では、人工血管VEのうち、後述するコネクタ2の第2筒状部212が嵌入される端部においても山部Mと谷部Vとが形成されている(
図8参照)。人工血管VEに山部Mと谷部Vとが交互に形成される場合、柔軟性がある人工血管とすることができ、人工血管VEを曲げたときにキンクしにくい。本実施形態では、人工血管VEは、山部Mおよび谷部Vが螺旋状に形成された円筒状に形成されている。人工血管VEの山部および谷部は、螺旋状ではなく、人工血管VEの軸Xまわりに環状に設けられていてもよい。
【0016】
人工血管VEの直径や長さは、用いられる部位等に応じて変更可能であり、特に限定されない。例えば、人工血管VEは、内径10mm以上の大口径(胸腹部大動脈用)の人工血管であってもよいし、内径6mm、8mmなど、内径6mm以上10mm未満の中口径(下肢、頸部、腋窩領域における動脈用)の人工血管であってもよいし、内径6mm未満の小口径の人工血管であってもよい。人工血管VEの厚さは、用いられる人工血管の内径や長さに応じて適宜変更され、特に限定されない。例えば、人工血管VEの厚さは、0.1~2mmとすることができる。
【0017】
図2に示されるように、本実施形態の人工血管接続構造1は、コネクタ2と、ロック部材3と、フェルール4とを備えている。また、人工血管接続構造1はさらに、環状の弾性部材5を有している。本実施形態では、人工血管接続構造1は、人工血管VE(
図2~
図7、
図9、
図11においては二点鎖線で示している)をさらに備えている。
【0018】
なお、本明細書において、人工血管接続構造1の各部材に関して「軸X方向」という用語を用いる場合、人工血管VEが接続された状態の人工血管接続構造1において、後述する第2筒状部212の外側に配置された人工血管VEの部分の中心軸(軸X)に沿う方向をいう。本実施形態では、コネクタ2、ロック部材3、フェルール4等はいずれも略筒状であり、人工血管VEの軸と、コネクタ2、ロック部材3およびフェルール4の軸とは一致している。また、本明細書において、「軸X方向で一方」は、人工血管接続構造1が接続対象Cに接続された状態で、接続対象Cから離れる方向(
図3において右側)である。言い換えると、「軸X方向で一方」は、コネクタ2に接続された人工血管VEがコネクタ2から離脱する方向である。また、本明細書において、「軸X方向で他方」は、人工血管接続構造1が接続対象Cに接続された状態で、接続対象Cに近付く方向(
図3において左側)である。言い換えると、「軸X方向で一方」は、人工血管VEがコネクタ2に嵌め込まれる際に移動する方向である。また、本明細書において、「径方向」とは、筒状の部材(本実施形態では、人工血管VE、コネクタ2の第1筒状部211、第2筒状部212、フェルール4、ロック部材3等)の径方向である。なお、径方向という表現は、径方向という表現を用いている部材が必ずしも円筒状の外形を有することを意味するものではない。また、周方向とは、人工血管接続構造1の各部材の外面または内面において、軸Xまわりの方向である。
【0019】
コネクタ2は、接続対象Cに接続される部位であり、コネクタ2が接続対象C(被接続部Ca)に接続されることで、人工血管接続構造1が接続対象Cに接続される。また、コネクタ2は、人工血管VEを取り付けることができるように構成されている。コネクタ2は、人工血管VEが取り付けられたときに、人工血管VEの内側の空間と連通する内部空間を有する筒状部材である。コネクタ2を構成する材料は特に限定されないが、生体適合性を有し、所定の剛性を有する材料(例えば、チタン等)によって構成されている。
【0020】
コネクタ2は、
図2~
図4に示されるように、被係合部211aを有する第1筒状部211と、第1筒状部211に対して軸X方向で一方側に配置され、人工血管VEの内側に嵌入される第2筒状部212とを備えている。また、本実施形態では、コネクタ2は、接続対象Cと連結される連結部22を有している。本実施形態では、連結部22は内面に雌ネジ部を有し(
図4参照)、接続対象Cの被接続部Caに設けられた雄ネジ部(図示せず)と螺合することで、接続対象Cに接続される。本実施形態では、コネクタ2は、
図2~
図4に示されるように、第1筒状部211および第2筒状部212を有するコネクタ本体21と、コネクタ本体21とは別体として構成された連結部22とによって構成されている。しかし、連結部22はコネクタ本体21に一体的に設けられていてもよい。なお、連結部22は、コネクタ本体21の軸X方向で他方側の端部に係合する、環状部材によって構成されている。本実施形態では、コネクタ本体21は、
図2~
図4に示されるように、第1筒状部211および第2筒状部212に加えて、第1筒状部211に対して軸X方向で他方側に第3筒状部213を有し、第3筒状部213に連結部22が接続されている。本実施形態では、コネクタ本体21において、第1~第3筒状部211、212、213は、軸X方向で他方側から一方側に向かって、第3筒状部213、第1筒状部211、第2筒状部212の順に設けられている。
【0021】
第1筒状部211は、コネクタ2のうち、ロック部材3に係合する筒状部分である。具体的には、第1筒状部211は、
図2~
図4に示されるように、第1筒状部211の外面に、ロック部材3と係合可能な被係合部211aを備えている。被係合部211aがロック部材3(後述する係合部31(
図4参照))と係合することで、コネクタ2とロック部材3とが接続される。被係合部211aは、ロック部材3がコネクタ2から離脱することを抑制するように、ロック部材3の係合部31と係合する。本実施形態では、被係合部211aは、第1筒状部211の外面に設けられた雄ネジによって構成され、雌ネジによって構成された係合部31と螺合するように構成されている(
図7参照)。しかし、被係合部の形状および構造は、ロック部材3がコネクタ2から離脱することを抑制するように、ロック部材3の係合部31と係合することができれば、特に限定されない。被係合部と係合部とは、例えば、スナップフィット接合や、圧入嵌合構造など、他の係合構造を有していてもよい。
【0022】
本実施形態では、第1筒状部211は、
図2~
図4に示されるように、第1筒状部211の軸X方向で一方側に、被係合部211aが形成されていない円筒面によって構成された円筒部211bを有している。円筒部211bの径方向外側には、後述するフェルール4の軸X方向で他方側の端部(後述するフェルール筒状部42の端部)が配置される。第1筒状部211の被係合部211aは、
図2~
図4に示されるように、円筒部211bに対して径方向外側に突出するように設けられている。
【0023】
また、本実施形態では、
図2および
図3に示されるように、第1筒状部211は、フェルール4の軸X方向で他方側の端部に設けられた挿入部43が挿入される被挿入部211cを有している。被挿入部211cは、挿入部43が被挿入部211cに挿入されたときに、挿入部43と軸Xまわり方向で係合して、フェルール4が第1筒状部211に対して軸Xまわりに回転することを規制するように構成されている。本実施形態では、被挿入部211cは、雄ネジによって構成された被係合部211aの周方向で一部分に設けられている。より具体的には、被挿入部211cは、
図2および
図3に示されるように、被係合部211aの周方向で一部分(本実施形態では周方向で均等に2か所設けられている)において、円筒部211bから軸X方向で他方側に延びる凹部によって構成されている。被挿入部211cは、挿入部43に対応した形状および大きさで構成されている。上述したように、挿入部43が被挿入部211cに係合して、フェルール4が第1筒状部211、すなわちコネクタ2に対して軸Xまわりに回転することが規制されることで、フェルール4とコネクタ2(第2筒状部212)との間に挟み込まれる人工血管VE(
図7および
図12参照)に、フェルール4から軸Xまわりに回転する方向の力が加わることが抑制される。したがって、例えば、ロック部材3を軸Xまわりに回転させてコネクタ2に螺合する際に、フェルール4は軸Xまわりに回転することが抑制されるので、人工血管VEに捩じれが生じることや、フェルール4との相対回転による擦れが抑制される(フェルール4が軸Xまわりに回転すると、人工血管VEにも回転する力が加わり、人工血管VEが捩じれたり、擦れたりして破損してしまう可能性がある)。
【0024】
第2筒状部212は、
図2~
図4および
図8に示されるように、人工血管VE(
図2~
図4においては二点鎖線で示されている)が取り付けられる筒状部分である。
図8に示されるように、第2筒状部212は、人工血管VEの内側に嵌入される。言い換えると、人工血管VEは、第2筒状部212の外側に被さるように、第2筒状部212に嵌め込まれる。第2筒状部212は、
図2~
図4に示されるように、第1筒状部211に対して軸X方向で一方側に配置されている。
【0025】
本実施形態では、
図2~
図4に示されるように、コネクタ2の第2筒状部212は、第2筒状部212の外周の少なくとも一部に凹凸部212aを有している。凹凸部212aは、第2筒状部212の外周において、径方向外側に突出した部分と、突出した部分に対して相対的に凹んだ部分とを有する第2筒状部212の所定の領域である。
図8に示されるように、凹凸部212aのうち、径方向外側に突出した部分が、人工血管VEの内面において径方向外側に張り出した凹部(人工血管VEの山部Mの内面に形成された凹部)に入り込む。また、凹凸部212aのうち、相対的に凹んだ部分が、人工血管VEの内面において径方向内側に張り出した突出部(人工血管VEの谷部Vの内面)を受容する。これにより、人工血管VEが第2筒状部212に取り付けられたとき(被せられたとき)に、人工血管VEが第2筒状部212に対して軸X方向で一方(
図8における右側)に移動することが抑制される。したがって、人工血管VEの組み付け作業において、人工血管VEが第2筒状部212から離脱する方向に移動することが抑制され、作業性が向上する。また、後述するように、人工血管VEの山部Mおよび谷部Vが少なくとも部分的に凹凸部212aの表面に沿って配置された状態で、人工血管VEが弾性部材5から径方向内側に圧縮される(
図12参照)。したがって、一部が厚く、一部が薄くなるような、人工血管VEの不規則な変形が生じにくくなり、人工血管VEと第2筒状部212との間に部分的に隙間が生じることが抑制される。なお、
図8においては、人工血管VEの山部Mおよび谷部Vによる凹凸は、凹凸部212aの凹凸に完全に沿うように図示されているが、必ずしも全ての凹凸が互いに入り込む必要はない。山部Mおよび谷部Vを有する人工血管VEが第2筒状部212の凹凸部212aに取り付けられた場合、人工血管VEの山部Mおよび谷部Vは少なくとも部分的に凹凸部212aに沿って配置され、全ての山部Mおよび谷部Vが凹凸部212aに沿わない場合でも、上述した効果を部分的に得ることができることは当業者に自明である。
【0026】
本実施形態では、
図2および
図3に示されるように、凹凸部212aは、第2筒状部212の周方向に沿って設けられている。凹凸部212aは、第2筒状部212の周方向に沿って延びる複数の環状凸部(軸X方向に互いに離間して設けられた複数の環状の突出部)または螺旋状の凸部(好ましくは人工血管VEの螺旋と同じピッチを有する凸部)によって構成され得る。凹凸部は、径方向外側に突出した部分が周方向に連続して設けられていてもよいし、周方向で分割されていてもよい(周方向に不連続に延びる複数の周方向凸部を有していてもよい)。また、凹凸部は、点状の凸部が周方向および軸X方向に複数設けられたものであってもよい。なお、凹凸部は、人工血管VEの山部Mおよび谷部Vに対応する形状および大きさであることが好ましい。
【0027】
凹凸部212aは、軸X方向で後述する弾性部材5が配置される領域に設けられている(
図7、
図11および
図12参照)。本実施形態では、凹凸部212aは、
図2~
図4に示されるように、第2筒状部212のうち、軸X方向で他方側となる基端領域に設けられている。凹凸部212aは、第2筒状部212のうち、基端領域以外、例えば軸X方向で中央領域に設けられていてもよい。なお、基端領域は、第2筒状部212の軸X方向で他方側の端部(軸X方向で後述する段差部STが設けられた位置)から、例えば、第2筒状部212の全長の30%以下、好ましくは20%以下の長さの領域とすることができる。
【0028】
凹凸部212aの外径(径方向外側に突出した部分の頂部の外径)は、凹凸部212aに人工血管VEを取り付けることができ、取り付けられた人工血管VEの径方向外側に弾性部材5、フェルール4およびロック部材3等を配置することができれば、特に限定されない。本実施形態では、凹凸部212aの外径は、無負荷状態での弾性部材5の内径と同じか弾性部材5の内径よりも小さくなるように構成されている。この場合、弾性部材5を軸X方向に移動させて凹凸部212aの径方向外側に配置する際に、弾性部材5を容易に移動させることができる。なお、凹凸部212aの外径は、弾性部材5を凹凸部212aの径方向外側に設けることができれば、無負荷状態の弾性部材5の内径よりも大きくてもよい。
【0029】
本実施形態では、
図8に示されるように、第1筒状部211の外径は、第2筒状部212の外径よりも大きく、第1筒状部211と第2筒状部212との間に段差部STが設けられている。段差部STは、後述するように、弾性部材5の軸X方向で他方側の端部が係合可能となっている。具体的には、段差部STの外径(段差部STの位置における第1筒状部211(円筒部211b)の外径)は、弾性部材5の軸X方向で他方側の端部が係合できるように、無負荷状態での弾性部材5の内径(軸X方向で他方側の端部における内径)よりも大きい。また、段差部STの内径(段差部STの位置における第2筒状部212の外径)は、無負荷状態での弾性部材5の内径(軸X方向で他方側の端部における内径)よりも小さい。
【0030】
第3筒状部213は、
図2~
図4に示されるように、連結部22が接続される部分である。第3筒状部213の形状および構造は、特に限定されない。本実施形態では、第3筒状部213は、
図4に示されるように、軸X方向で他方側の端部において、径方向外側に張り出したフランジ部を有し、連結部22と軸X方向で係合するように構成されている。
【0031】
フェルール4は、ロック部材3の径方向で、コネクタ2の第2筒状部212と、ロック部材3のロック部材筒部32との間に設けられる。具体的には、フェルール4は、
図9~
図12に示されるように、ロック部材3がコネクタ2に接続された状態となるまでの間に(およびロック部材3がコネクタ2に接続された状態において)、人工血管VEが取り付けられる第2筒状部212と、ロック部材3のロック部材筒部32との間に設けられる。これにより、ロック部材3のコネクタ2への接続動作時(限定されないが、例えば、ロック部材3をコネクタ2に対して軸Xまわり方向に回転させて、ロック部材3をコネクタ2に対して螺合する際など)に、フェルール4は、ロック部材3と人工血管VEとの間に介在する。したがって、人工血管VEに対してロック部材3から軸Xまわり方向や軸X方向に力が加わることが抑制される。これにより、人工血管VEに捩じれや擦れ等が生じて、人工血管VEが損傷することが抑制される。
【0032】
フェルール4は、第2筒状部212の径方向外側かつロック部材筒部32の径方向内側に配置可能な筒状部材である。詳細は後述するが、本実施形態では、フェルール4は、ロック部材3がコネクタ2に対して軸X方向に移動する際に、ロック部材3によってコネクタ2に対して軸X方向に押圧されて、軸X方向に移動するように構成されている(
図7および
図11参照)。具体的には、フェルール4は、フェルール4の後述する被押圧部45がロック部材3の押圧部33によって軸X方向に押圧されることで、第2筒状部212に対して軸X方向に相対移動するように構成されている。(後述する係止部44、保持部46を含め)フェルール4は、第2筒状部212に対して軸X方向に相対移動して第2筒状部212の径方向外側の所定の位置に配置できるように、第2筒状部212の外径よりも大きな内径を有している。また、フェルール4は、ロック部材3をフェルール4の径方向外側でフェルール4に対して軸X方向に相対移動させて、ロック部材3をコネクタ2に接続できるように、(後述するロック部材3の押圧部33の部分を除き)ロック部材3の内径よりも小さい外径を有している。
【0033】
被押圧部45は、
図7および
図11に示されるように、フェルール4の外面に設けられ、押圧部33に押圧される部位である。本実施形態では、被押圧部45がロック部材3の押圧部33に径方向内側に押圧されることで、後述するように、フェルール4の脚部41が径方向内側に変位する(
図7および
図12参照)。また、本実施形態では、被押圧部45はロック部材4の押圧部33に軸X方向に押圧されることで、
図11に示される状態から
図7に示される状態へとフェルール4が軸X方向に移動する。被押圧部45は、少なくとも押圧部33によって径方向内側に押圧されるように構成されていれば、特に限定されない。本実施形態では、被押圧部45は、ロック部材3がコネクタ2との接続の際に軸X方向に移動する際に、押圧部33によって軸X方向に押圧されることで、脚部41を径方向内側に変位させ、かつ、フェルール4を軸X方向に移動させる力が生じるように、押圧部33と接触する。本実施形態では、押圧部33の傾斜面SL(
図11および
図12参照)と接触した際に、被押圧部45が、軸X方向の成分の力と、径方向内側に向かう方向の成分の力とを含む力を押圧部33から受けることができるような湾曲面を有している。なお、本実施形態では、被押圧部45は、フェルール4の外面のうち軸X方向で一方の端部に設けられているが、被押圧部45の位置は特に限定されない。
【0034】
フェルール4は、
図2および
図3に示されるように、コネクタ2の第1筒状部211に設けられた被挿入部211cに挿入される挿入部43を有している。本実施形態では、後述するように、フェルール4が、人工血管VEが取り付けられた第2筒状部212の外側に配置された状態(
図10および
図11参照)で、ロック部材3をコネクタ2に対して軸Xまわり方向に回転させて螺合することによって、ロック部材3とコネクタ2とが接続される(
図7参照)。この際、フェルール4の挿入部43は、
図10および
図11に示されるように、コネクタ2の被挿入部211cに挿入される。挿入部43は被挿入部211cに軸Xまわり方向で係合するように構成されており、挿入部43と被挿入部211cとの間の係合によって、フェルール4が第1筒状部211に対して軸Xまわりに回転することが規制される。したがって、フェルール4によって、フェルール4と第1筒状部211との間に挟み込まれる人工血管VEに対して、ロック部材3の回転力の伝達が抑制される。したがって、例えば、ロック部材3が軸Xまわりに回転することで、コネクタ2と螺合する際に、フェルール4の軸Xまわりの回転が抑制され、人工血管VEに回転力が伝達されることで生じ得る、人工血管VEの捩じれや擦れに起因する破損を抑制することができる。
【0035】
挿入部43の形状および構造は、挿入部43が被挿入部211cに軸Xまわり方向で係合して、フェルール4が第1筒状部211に対して軸Xまわりに回転することを規制することができれば、特に限定されない。本実施形態では、挿入部43は、
図2および
図3に示されるように、フェルール4(後述するフェルール筒状部42)の軸X方向で他方側の端部から突出する舌片状の部位によって構成されている。
【0036】
本実施形態では、フェルール4は、
図2~
図4に示されるように、径方向内側に変位可能な(
図7および
図12参照)、可撓性を有する脚部41を備えている。本実施形態では、フェルール4は、脚部41に対して軸X方向で他方側にフェルール筒状部42を有している。また、フェルール4は、
図2および
図4に示されるように、フェルール4の内面に、弾性部材5が配置される弾性部材配置領域Rと、係止部44と、保持部46とを有している。なお、フェルール4を構成する材料は、脚部41がロック部材3によって押圧されることで径方向内側に変位可能な、可撓性を有する材料であれば、特に限定されない。フェルール4の材料としては、例えば、弾性変形または塑性変形可能な金属材料または樹脂材料が用いられ得るが、生体適合性を有するチタン等の弾性変形可能な金属材料であることが好ましい。
【0037】
脚部41は、
図7および
図12に示されるように、ロック部材3とコネクタ2との接続時に、ロック部材3の押圧部33によって径方向内側に押圧されることで、径方向内側に変位する。詳細は後述するが、脚部41が径方向内側に押圧されることによって、フェルール4の径方向内側に配置された弾性部材5を径方向内側に押圧する。これにより、凹凸部212aの径方向外側に配置された人工血管VEを、弾性部材5によって径方向内側に押圧する。
【0038】
脚部41の形状および構造は、脚部41が径方向内側に変位可能な、可撓性を有していれば、特に限定されない。本実施形態では、フェルール4は、
図2および
図3に示されるように、軸X方向に延びる切欠部CTを有しており、切欠部CTが設けられることで、切欠部CTに周方向で隣接する部分となる脚部41が、脚部41の基端部(脚部41とフェルール筒状部42との境界部分)を軸として径方向に撓むことが可能となっている。本実施形態では、フェルール4は、フェルール4の軸X方向で一方側の端部から軸X方向に所定の長さ(例えば、フェルール4の軸X方向の長さ(挿入部43を除く長さ)の50%~80%の長さ)で延びる複数(本実施形態では3つ)の切欠部CTを有している。これにより、フェルール4に、切欠部CTを介して周方向に分断された部分が複数(本実施形態では3つ)の脚部41が設けられている。
【0039】
フェルール4における脚部41の位置は、脚部41が径方向内側に変位した際に、弾性部材5を押圧することができれば、特に限定されない。本実施形態では、切欠部CTが、軸X方向で弾性部材配置領域Rの近傍または弾性部材配置領域Rまで延びている。この場合、脚部41の基端部が弾性部材配置領域Rの近傍または弾性部材配置領域Rに位置する。この場合、脚部41が径方向内側に撓んだ際に、脚部41の基端部およびその近傍の領域(フェルール筒状部42)も径方向内側に変位しやすくなり、弾性部材5を容易に押圧することが可能となる。なお、「弾性部材配置領域Rの近傍」とは、例えば、弾性部材配置領域Rの軸X方向で一方側の端部(
図4における右側の端部(弾性部材配置領域Rと係止部44との境界部分))から軸X方向で一方側に向かって、フェルール4の軸X方向の全長の20%以内の領域、好ましくは10%以内の領域とすることができる。
【0040】
なお、切欠部CTは、本実施形態では軸X方向に直線状に略同一の幅で延びているが、脚部41が径方向内側に変位可能であれば、切欠部CTの形状は特に限定されない。例えば、切欠部は、軸X方向に対して傾斜して延びていてもよいし、軸X方向の一部で部分的に周方向の幅が広くなる部分を有するように切り欠かれていてもよい。
【0041】
弾性部材配置領域Rは、
図4、
図7、
図10および
図12に示されるように、フェルール4の内面に設けられた、弾性部材5が配置される領域である。弾性部材配置領域Rは、本実施形態では、ロック部材3とコネクタ2とが接続された状態(
図7および
図12参照)において、弾性部材5が配置される、第2筒状部212の凹凸部212aに対向する領域である。本実施形態では、弾性部材配置領域Rは、フェルール4の内面のうち、軸X方向で他方側の端部領域である。なお、本実施形態では、弾性部材配置領域Rの軸X方向で一方の端部は、係止部44によって画定され、係止部44に対して軸X方向で他方側が弾性部材配置領域Rとなっている。弾性部材配置領域Rの位置および大きさは、凹凸部212aおよび/または弾性部材5の位置および大きさに応じて適宜変更可能であり、特に限定されない。例えば、弾性部材配置領域Rは、フェルール4(挿入部43を除く、フェルール筒状部42)の軸X方向で他方側の端部から、例えば、フェルール4の全長の30%以下、好ましくは20%以下の長さの領域とすることができる。本実施形態では、弾性部材配置領域Rは、
図10および
図12に示されるように、軸X方向で他方に向かうにつれて、内径が大きくなるように傾斜している。
【0042】
係止部44は、
図7、
図9~
図12に示されるように、フェルール4の内面に設けられ、弾性部材5の軸X方向の一方側の端部に係合可能に構成されている。係止部44は、弾性部材5の軸X方向の一方の端部に当接し、弾性部材5の軸X方向で一方の端部の位置を画定する。また、本実施形態では、係止部44は、後述するように、ロック部材3とコネクタ2との接続時に、弾性部材5を軸X方向に圧縮する(
図10、
図12および
図13参照)。係止部44の形状および構造は、弾性部材5の軸X方向の一方側の端部に軸X方向に係合可能であれば、特に限定されない。本実施形態では、係止部44は、フェルール4の内面から、径方向内側に突出した突出部によって構成されている。本実施形態では、係止部44は、フェルール4の内面において、周方向に連続した環状に設けられているが、周方向で分断された複数の部分によって構成されていてもよい。係止部44は、
図10に示されるように、係止部44の内径が、弾性部材5の軸X方向で一方の端部における外径よりも小さくなるように構成され、弾性部材5の軸X方向で一方の端面と軸X方向で係合するように構成されている。
【0043】
保持部46は、
図2、
図4、
図7、
図9~
図12に示されるように、脚部41の内面に設けられ、押圧部33によって脚部41が径方向内側に変位した際に、人工血管VEの外面を保持できるように、第2筒状部212の外周に向かって押圧される。フェルール4に保持部46が設けられている場合、人工血管VEは、後述する弾性部材5に加えて、保持部46によっても保持される(
図12参照)。この場合、
図12に示されるように、人工血管VEと第2筒状部212との間の隙間は、弾性部材5と凹凸部212aとに挟まれた領域だけでなく、フェルール4の軸X方向で一方側の端部においても封止される。したがって、人工血管VEの内部から外部へと漏出する血液の量は、保持部46と第2筒状部212とに挟まれた領域により低減し、弾性部材5と凹凸部212aとに挟まれた領域によってさらに低減する。したがって、人工血管接続構造1の耐漏血性がさらに向上する。
【0044】
保持部46は、本実施形態では、径方向内側に人工血管VEを第2筒状部212の外面に向かって押圧して保持できるように構成されている。より具体的には、
図10および
図12に示されるように、保持部46は、軸X方向に凹凸が形成された凹凸構造を有している。この場合、保持部46の凹凸構造が、人工血管VEの山部Mおよび谷部Vにより形成された凹凸構造にフィットして、耐漏血性を効果的に高めることができる。本実施形態では、保持部46は、脚部41の先端部分の内面に設けられている。しかし、保持部は、人工血管VEの外面を保持できるように、第2筒状部212の外面に向かって押圧されるように構成されていれば、脚部41の中央部分に設けられていてもよい。また、保持部46は、本実施形態では、
図2に示されるように、脚部41の内面において、周方向に連続して設けられている。しかし、保持部は、人工血管VEの外面を保持できるように、第2筒状部212の外面に向かって押圧されるように構成されていれば、周方向の一部のみに設けられていてもよい。
【0045】
ロック部材3は、コネクタ2と接続される筒状の部材である(
図5~
図7参照)。
図12に示されるように、ロック部材3がコネクタ2と接続されることによって、コネクタ2に取り付けられた人工血管VEがコネクタ2に対して固定される。より具体的には、ロック部材3は、人工血管VEが取り付けられた第2筒状部212と、ロック部材3の内面との間にフェルール4を介在させた状態で、コネクタ2に接続される。本実施形態では、ロック部材3は、
図9、
図11および
図7に示されるように、コネクタ2およびフェルール4に対して軸X方向に相対移動することで、コネクタ2に接続される。
【0046】
ロック部材3は、
図4および
図9に示されるように、第1筒状部211の被係合部211aに係合する係合部31と、第2筒状部212に対して径方向外側に配置されるロック部材筒部32とを備えている。また、ロック部材3は、ロック部材筒部32の内面に、脚部41を径方向内側に押圧して変位させる押圧部33(
図7および
図12参照)を備えている。
【0047】
ロック部材筒部32は、
図7および
図12に示されるように、第2筒状部212およびフェルール4に対して径方向外側に配置される筒状の部位である。本実施形態では、ロック部材筒部32は略円筒状である(
図2および
図5参照)。ロック部材筒部32は、フェルール4の外側に配置できるように、後述する押圧部33の部分を除き、フェルール4の外径よりもわずかに大きな内径を有している。
【0048】
係合部31は、ロック部材3がコネクタ2から離脱することを抑制するように、コネクタ2の被係合部211aに係合する。係合部31と被係合部211aとの間の係合構造は、ロック部材3がコネクタ2から離脱することを抑制するように、係合部31と被係合部211aとが係合することが可能であれば、特に限定されない。本実施形態では、係合部31と被係合部211aとは螺合によって係合するように構成されている。係合部31と被係合部211aとが螺合することにより、ロック部材3は、コネクタ2に対して軸Xまわりに回転するとともに、軸X方向に移動する。本実施形態では、係合部31は、ロック部材筒部32の内面に設けられた雌ネジであり、被係合部211aは、コネクタ2の第1筒状部211の外面に設けられた雄ネジである。係合部31は、本実施形態では、ロック部材筒部32の内面のうち、軸X方向で他方側の端部に設けられている。なお、係合部31と被係合部211aとの間の係合構造は、例えば、スナップフィット接合や、圧入嵌合構造など、螺合以外の他の係合構造であってもよい。
【0049】
押圧部33は、フェルール4の脚部41(本実施形態では被押圧部45)を径方向内側に押圧して変位させる部位である。押圧部33によって脚部41が径方向内側に押圧されて変位する際に、後述するように、弾性部材5は径方向内側に弾性変形することが可能となる。
【0050】
押圧部33の形状および構造は、押圧部33によって脚部41を径方向内側に押圧して変位させることが可能であれば、特に限定されない。本実施形態では、押圧部33は、ロック部材3の内面のうち、軸X方向で一方の端部に設けられ、ロック部材3の他の部位に対して径方向内側に突出している。なお、押圧部33が設けられる位置は、ロック部材3の軸X方向で一方の端部以外の他の位置に設けられていてもよい。本実施形態では、押圧部33は、ロック部材3の内面において、周方向に連続して環状に設けられている。しかし、押圧部33は、周方向で部分的に設けられていてもよい。
【0051】
本実施形態では、押圧部33は、
図11および
図12に示されるように、ロック部材3がコネクタ2に対して軸X方向に移動する際に、押圧部33から被押圧部45に加わる力を、フェルール4の脚部41を径方向内側に変位させ、かつ、フェルール4を軸X方向に移動させる力に変換可能な傾斜面SLを有している。この場合、ロック部材3をコネクタ2に接続する際に、ロック部材3をコネクタ2に対して軸X方向に移動させる動作によって、脚部41が径方向内側に変位する。したがって、ロック部材3のコネクタ2への接続動作だけで脚部41を径方向内側に変位させることができ、脚部41を変位させるために、特別な操作が別途必要とされない。したがって、ロック部材3とコネクタ2との簡単な接続動作によって、脚部41の径方向内側への変位による弾性部材5の押圧が可能となる。
図11および
図12に示されるように、押圧部33の傾斜面SLは、ロック部材3の内面において、軸X方向で一方側に進むにつれて、内径が小さくなるように傾斜している。本実施形態では、傾斜面SLは、
図11に示されるように、無負荷状態(径方向内側に変位していない状態)の脚部41の被押圧部45に当接可能に構成されている。また、傾斜面SLは、
図12に示されるように、保持部46が第2筒状部212に取り付けられた人工血管VEを押圧する径方向の位置まで到達できるように、被押圧部45を押圧するように構成されている。
【0052】
なお、ロック部材3がコネクタ2に対して軸X方向に移動する際に、フェルール4の脚部41を径方向内側に変位させることが可能であれば、押圧部33および被押圧部45の両方に傾斜面が設けられていてもよいし、被押圧部45のみに傾斜面が設けられていてもよい。また、本実施形態では、押圧部33は、ロック部材3がコネクタ2に対して軸X方向に移動する際に、被押圧部45を押圧しているが、ロック部材3がコネクタ2に対して軸X方向に移動する際以外のタイミングで被押圧部45を押圧してもよい。例えば、ロック部材3がコネクタ2に接続された後に、ロック部材3が縮径することで(例えば、ロック部材3にロック部材3を縮径できる機構が設けられている場合)、被押圧部45が押圧されてもよい。
【0053】
弾性部材5は、弾性変形可能な材料によって構成された環状(筒状)の部材である。弾性部材5は、後述するように、フェルール4の内面によって押圧されることで、コネクタ2の第2筒状部212の凹凸部212aの位置に設けられた人工血管VEを押圧する。これにより、
図12に示されるように、人工血管VEの端部は、径方向でフェルール4と第2筒状部212との間において、凹凸部212aと弾性部材5に挟持され、人工血管VEとコネクタ2とが液密に接続される。弾性部材5の材料は、特に限定されないが、例えば、生体適合性を有するゴムやエラストマーを用いることができる。
【0054】
図7および
図12に示されるように、弾性部材5は、凹凸部212aの径方向外側かつフェルール4の径方向内側に配置される。ここで、「弾性部材5が凹凸部212aの径方向外側に配置される」とは、弾性部材5が、凹凸部212aが設けられた領域のうちの、少なくとも一部において径方向外側に配置されていればよいことを意味する。したがって、弾性部材5は、凹凸部212aの全体を覆うように設けられていてもよいし、凹凸部212aを部分的に覆うように設けられていてもよい。なお、本実施形態では、弾性部材5は、軸X方向で凹凸部212aに沿って設けられている。ここで、「軸X方向で凹凸部212aに沿って設けられている」とは、弾性部材5が押圧された際に、軸X方向で所定の領域に亘って、凹凸部212aの表面の凹凸形状に倣うように変形して設けられることを意味する。この場合、弾性部材5が径方向内側に押圧された際に、凹凸部212aの外側に配置された人工血管VEと凹凸部212の表面とが、軸X方向の所定の領域に亘って密着する。したがって、人工血管接続構造1の耐漏血性が高まる。
【0055】
弾性部材5の軸X方向の幅は、特に限定されないが、例えば、凹凸部212aの軸X方向の幅(凹凸部212aの突出部分が設けられた領域)の80~120%とすることができる。弾性部材5の軸X方向の幅は、凹凸部212aの軸X方向の幅と同様の幅であるか、凹凸部212aの軸X方向の幅よりも大きいことがより好ましい。この場合、弾性部材5が凹凸部212aの全体において、径方向外側に配置されることで、凹凸部212aの表面全体に沿って配置された人工血管VEの山部Mおよび谷部Vの内面が、弾性部材5によって押圧されて凹凸部212aの表面全体に隙間なく密着する。したがって、人工血管接続構造1の耐漏血性をさらに高めることができる。
【0056】
なお、弾性部材5は、フェルール4がコネクタ2に接続される前の状態で、予め凹凸部212aの径方向外側に配置されてもよいし、弾性部材5が予めフェルール4の内面(弾性部材配置領域R)に配置された状態で、フェルール4と共に軸X方向に移動して、凹凸部212aの径方向外側へと移動するように構成されていてもよい。
【0057】
本実施形態では、弾性材料5は、
図2に示されるように、所定の幅を有する環状(筒状)に形成されている。弾性部材5の外径および内径は、弾性部材5を凹凸部212aの径方向外側かつフェルール4の径方向内側に配置することができれば、特に限定されない。本実施形態では、弾性部材5の内径は、凹凸部212aの最も外径が大きい部分(好ましくは、凹凸部212aの外側に人工血管VEが配置された状態における最も外径が大きい部分)よりも大きくなるように構成されている。この場合、弾性部材5を凹凸部212aの径方向外側に容易に配置することが可能となる。また、弾性部材5の内径は、脚部41が径方向内側に変位して弾性部材5が押圧されたときに、凹凸部212aに配置された人工血管VEに接触するような大きさに設定される。なお、本実施形態では、弾性部材5は、
図10に示されるように、軸X方向で他方に向かうにつれて外径が大きくなるように傾斜している。
【0058】
図10、
図12および
図13に示されるように、押圧部33によって脚部41が径方向内側に変位する際に、弾性部材5は、フェルール4の内面によって、凹凸部212aに向かって押圧されて弾性変形するように構成されている。これにより、人工血管VEがコネクタ2に接続された状態の人工血管接続構造1において、簡単な構造で耐漏血性を高くすることができる。以下、この点について詳細に説明する。
【0059】
図7および
図12に示されるように、ロック部材3の押圧部33によってフェルール4の脚部41が径方向内側に押圧されると、脚部41は径方向内側へと変位する。脚部41が径方向内側へ変位することで、フェルール4の内面は軸Xに近付くように径方向内側に変位する。これにより、弾性部材5は、フェルール4の内面によって径方向内側に押圧される。この際、弾性部材5は、
図12および
図13に示されるように、凹凸部212aの径方向外側に配置された人工血管VEの外面に接触して、人工血管VEを凹凸部212aに向かって押し付ける。これにより、
図12および
図13に示されるように、山部Mおよび谷部Vが配置された人工血管VEは、凹凸部212aの表面に沿って密着して配置される。さらに、
図12および
図13に示されるように、人工血管VEの外側において、隣接する山部Mの間の谷部Vが設けられた部分の空間に弾性部材5が変形して入り込む。したがって、人工血管VEの内面と第2筒状部212(凹凸部212a)の外面との間の隙間、弾性部材5の内面と人工血管VEの外面との間の隙間がシールされるとともに、シールされた隙間は軸X方向に凹凸状の経路となるので、耐漏血性が向上する。
【0060】
また、本実施形態では、弾性部材5は、
図7、
図12および
図13に示されるように、軸X方向で係止部44と段差部STとの間に配置されている。また、フェルール4がロック部材3によって、コネクタ2に対して軸X方向に押圧されて、軸X方向に移動する際に、弾性部材5が軸X方向に圧縮されるように構成されている(
図10、
図12および
図13参照)。弾性部材5が軸X方向に押圧された場合、弾性部材5は、軸X方向の両側については段差部STおよび係止部44によって、径方向外側についてはフェルール4の内面によって逃げ場が存在しない。そのため、逃げ場が無くなった弾性部材5は、凹凸部212aの突出した部分と隣接する突出した部分との間の隙間に向かって、(本実施形態では、凹凸部212aの外側に配置された人工血管VEの山部Mと山部Mとの間の隙間)へと入り込むように径方向内側に変形する。したがって、弾性部材5は、脚部41による径方向内側への変位に加えて、軸X方向で圧縮されることで、径方向内側に変形して、人工血管VEを径方向内側に押圧する。これにより、人工血管VEが凹凸部212aに対してより強い力で圧縮され、耐漏血性がさらに向上する。
【0061】
なお、本実施形態では、ロック部材3がコネクタ2に対して接続された状態(
図12参照)における、段差部STと係止部44との間の軸X方向の間隔が、無負荷状態における弾性部材5の軸X方向の長さよりも短くなるように構成されている。これにより、弾性部材5は軸X方向に圧縮可能となる。
【0062】
つぎに、人工血管VEの接続方法について、本実施形態の人工血管接続構造1を例に挙げて説明する。なお、以下の説明はあくまで一例であり、以下の説明によって人工血管接続構造1は限定されない。
【0063】
まず、端部まで山部Mおよび谷部Vが形成された人工血管VE(
図8参照)が用意される。この人工血管VEの外側に、ロック部材3、フェルール4および弾性部材5を順に取り付ける(
図2~
図4において、コネクタ2が取り除かれた状態)。つぎに、
図2~
図4および
図8に示されるように、人工血管VE(
図2~
図4においては二点鎖線で示す)の端部をコネクタ2の第2筒状部212に取り付ける。この際、人工血管VEの端部が凹凸部212aの外側の位置まで到達するように人工血管VEを移動させる(
図8参照)。この状態において、
図8に示されるように、人工血管VEの山部Mおよび谷部Vは、凹凸部212aの凹凸に沿って配置され、人工血管VEは、第2筒状部212から離脱する方向(
図8における右側)に移動しにくくなる。したがって、フェルール4やロック部材3をコネクタ2に取り付ける前の状態で、人工血管VEが第2筒状部212から離脱しにくくなり、フェルール4やロック部材3の取り付け作業が容易になる。
【0064】
つぎに、弾性部材5を凹凸部212aの径方向外側となる位置まで軸X方向に移動させる。弾性部材5を凹凸部212aの径方向外側に移動させた後、フェルール4の挿入部43がコネクタ2の第1筒状部211の被挿入部211cに挿入されるまで、フェルール4をコネクタ2に向かって軸X方向に移動させる(
図10参照)。フェルール4の挿入部43が被挿入部211cに挿入されると、コネクタ2に対するフェルール4の軸Xまわりの回転が規制される。
【0065】
この状態で、ロック部材3をコネクタ2に向かって軸X方向に移動させる。ロック部材3がコネクタ2に向かって軸X方向に移動すると、
図11に示されるように、ロック部材3の押圧部33の傾斜面SLが、フェルール4の被押圧部45に当接する。そのままロック部材3を軸X方向に移動させると、フェルール4の被押圧部45がロック部材3の押圧部33に押圧されて、脚部41が径方向内側にわずかに撓むとともに、フェルール4は軸X方向に移動する。ロック部材3の係合部31がコネクタ2の被係合部211aの位置まで到達すると、ロック部材3を軸Xまわりに回転させて、ロック部材3をコネクタ2に螺合する。ロック部材3をコネクタ2に螺合すると、ロック部材3は軸Xまわりに回転しながら、さらに軸X方向に移動する。これにより、フェルール4の被押圧部45はロック部材3の押圧部33によってさらに径方向内側にさらに力を受け、脚部41が基端部を支点としてさらに撓み、脚部41の先端側が径方向内側にさらに変位する。この脚部41の撓みによって、フェルール4の内面が径方向内側に変位し、それによって、弾性部材5が径方向内側に押圧される(
図13の矢印AR1参照)。したがって、凹凸部212aに沿って配置された人工血管VEの山部Mおよび谷部Vは、凹凸部212aの表面に密着して、人工血管VEと凹凸部212aとの間の隙間がほぼなくなる。また、本実施形態では、ロック部材3が軸X方向に移動することで、上述したように、フェルール4も軸X方向に移動する。これにより、フェルール4の内面に設けられた係止部44は、弾性部材5を軸X方向に押圧する(
図13の矢印AR2参照)。段差部STと係止部44の間で軸X方向に挟み込まれた弾性部材5は、軸X方向に圧縮されながら、凹凸部212aに沿って配置された人工血管VEの山部Mと山部Mとの間の空間を埋めるように径方向内側に変形する。これにより、人工血管VEの内面と第2筒状部212(凹凸部212a)の外面との間の隙間、弾性部材5の内面と人工血管VEの外面との間の隙間がシールされる。また、
図13に示されるように、シールされた隙間は軸X方向に凹凸状の経路となり、軸X方向に血液が移動しにくくなるので、人工血管接続構造1の耐漏血性が向上する。なお、本実施形態において、弾性部材配置領域Rは、軸X方向で他方に向かうにつれて、内径が大きくなるように傾斜しており、また、弾性部材5は、軸X方向で他方に向かうにつれて外径が大きくなるように傾斜し、軸X方向で他方に向かうにつれて径方向の厚さが厚くなるように構成されている。そのため、フェルール4の脚部41が径方向内側に撓んだ際に、弾性部材配置領域Rから弾性部材5への押圧力は(
図13の矢印AR1)弾性部材5の軸X方向全長に亘って均一に作用しやすくなる(軸X方向の位置での、押圧力のズレを小さくすることが可能となる)。弾性部材5によるシール性能は、軸X方向長さに比例するため、所望の性能によって適宜設定すればよい。なお、本実施形態では、弾性部材5の内径は、軸X方向で一定となるように構成されているが、弾性部材5の内径は、軸X方向で他方に向かうにつれて大きくなるように構成されていてもよい。
【0066】
また、ロック部材3がコネクタ2に対して螺合された状態において、
図7および
図12に示されるように、人工血管VEは、脚部41の先端側に設けられた凹凸構造を有する保持部46によって径方向内側に押圧されている。凹凸構造を有する保持部46は、人工血管VEの山部Mおよび谷部Vの表面にフィットして、効果的に耐漏血性を高めることができる。このように、本実施形態では、人工血管VEは、人工血管VEの先端部において、弾性部材5と凹凸部212aによって挟持されるとともに、先端部から所定の距離離れた部分において、保持部46と第2筒状部212とによって挟持されている。したがって、より耐漏血性を向上させることができる。
【0067】
このように人工血管VEが液密に接続された状態の、人工血管接続構造1が、接続対象Cとなる補助人工心臓の被接続部Caに接続される。これにより、人工血管VEが接続対象Cに接続され、人工血管VEと接続対象Cとの間の接続箇所における漏血を大幅に低減させることができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されない。なお、上記した実施形態は、以下の構成を有する発明を主に説明するものである。
【0069】
(1)人工血管を接続対象に接続するための、人工血管接続構造であって、前記人工血管接続構造が、
被係合部を有する第1筒状部と、前記第1筒状部に対して軸方向で一方側に配置され、前記人工血管の内側に嵌入される第2筒状部とを備えた、前記接続対象に接続されるコネクタと、
前記第1筒状部の前記被係合部に係合する係合部と、前記第2筒状部に対して径方向外側に配置されるロック部材筒部とを備え、前記コネクタと接続される、筒状のロック部材と、
前記ロック部材の径方向で、前記コネクタの前記第2筒状部と、前記ロック部材の前記ロック部材筒部との間に設けられるフェルールと
を備え、
前記コネクタの前記第2筒状部が、前記第2筒状部の外周の少なくとも一部に凹凸部を有し、
前記人工血管接続構造がさらに、前記凹凸部の径方向外側かつ前記フェルールの径方向内側に配置される環状の弾性部材を備え、
前記フェルールは、径方向内側に変位可能な、可撓性を有する脚部を備え、
前記ロック部材は、前記ロック部材筒部の内面に、前記脚部を径方向内側に押圧して変位させる押圧部を備え、
前記弾性部材は、
前記押圧部によって前記脚部が径方向内側に変位する際に、前記フェルールの内面によって前記凹凸部に向かって押圧されて弾性変形するように構成されている、
人工血管接続構造。
【0070】
(2)前記凹凸部が、前記第2筒状部のうち、前記軸方向で他方側となる基端領域に設けられ、
前記弾性部材が、前記軸方向で前記凹凸部に沿って設けられている、
(1)に記載の人工血管接続構造。
【0071】
(3)前記フェルールは、前記ロック部材が前記コネクタに対して前記軸方向に移動する際に、前記ロック部材によって前記コネクタに対して軸方向に押圧されて、前記軸方向に移動するように構成され、
前記フェルールは、前記フェルールの内面に、前記弾性部材の前記軸方向の一方側の端部に係合可能な係止部を有し、
前記第1筒状部の外径は、前記第2筒状部の外径よりも大きく、前記第1筒状部と前記第2筒状部との間に段差部が設けられ、
前記弾性部材が、前記軸方向で前記係止部と前記段差部との間に配置され、
前記フェルールが、前記ロック部材によって、前記コネクタに対して軸方向に押圧されて、前記軸方向に移動する際に、前記弾性部材が前記軸方向に圧縮される、(1)または(2)に記載の人工血管接続構造。
【0072】
(4)前記フェルールは、前記フェルールの外面に前記押圧部に押圧される被押圧部を有し、
前記ロック部材の前記押圧部、および/または、前記フェルールの被押圧部が、前記ロック部材が前記コネクタに対して前記軸方向に移動する際に、前記押圧部から前記被押圧部に加わる力を、前記フェルールの脚部を径方向内側に変位させ、かつ、前記フェルールを軸方向に移動させる力に変換可能な傾斜面を有している、(1)~(3)のいずれか1つに記載の人工血管接続構造。
【0073】
(5)前記フェルールの前記脚部が、前記脚部の内面に、前記押圧部によって前記脚部が径方向内側に変位した際に、前記人工血管の外面を保持できるように、前記第2筒状部の外周に向かって押圧される保持部を有している、(1)~(4)のいずれか1つに記載の人工血管接続構造。
【0074】
(6)前記保持部が前記軸方向に凹凸が形成された凹凸構造を有している、(1)~(5)のいずれか1つに記載の人工血管接続構造。
【0075】
(7)前記凹凸部は、前記第2筒状部の周方向に沿って延びる複数の環状凸部または螺旋状の凸部によって構成されている、(1)~(6)のいずれか1つに記載の人工血管接続構造。
【0076】
(8)前記第1筒状部が、前記フェルールの前記軸方向で他方側の端部に設けられた挿入部が挿入される被挿入部を有し、前記被挿入部は、前記挿入部と軸まわり方向で係合して、前記フェルールが前記第1筒状部に対して軸まわりに回転することを規制するように構成されている、(1)~(7)のいずれか1つに記載の人工血管接続構造。
【0077】
(9)前記人工血管接続構造は、人工血管をさらに備え、
前記人工血管は、前記人工血管の長さ方向全体に亘って山部と谷部とが交互に形成されており、
前記人工血管の端部は、前記径方向で前記フェルールと前記第2筒状部との間において、前記凹凸部と前記弾性部材に挟持されている、
(1)~(8)のいずれか1つのいずれか1つに記載の人工血管接続構造。
【符号の説明】
【0078】
1 人工血管接続構造
2 コネクタ
21 コネクタ本体
211 第1筒状部
211a 被係合部
211b 円筒部
211c 被挿入部
212 第2筒状部
212a 凹凸部
213 第3筒状部
22 連結部
3 ロック部材
31 係合部
32 ロック部材筒部
33 押圧部
4 フェルール
41 脚部
42 フェルール筒状部
43 挿入部
44 係止部
45 被押圧部
46 保持部
5 弾性部材
C 接続対象
Ca 被接続部
CT 切欠部
M 山部
R 弾性部材配置領域
SL 傾斜面
ST 段差部
V 谷部
VE 人工血管
X 軸