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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122754
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】石炭の粉砕方法および粉砕設備
(51)【国際特許分類】
   B02C 25/00 20060101AFI20240902BHJP
   C10B 57/04 20060101ALI20240902BHJP
   B02C 13/04 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
B02C25/00
C10B57/04
B02C13/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030472
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083253
【弁理士】
【氏名又は名称】苫米地 正敏
(72)【発明者】
【氏名】水野 拓陽
(72)【発明者】
【氏名】山平 尚史
(72)【発明者】
【氏名】徳田 晃一郎
【テーマコード(参考)】
4D065
4D067
4H012
【Fターム(参考)】
4D065AA01
4D065BB01
4D065EB01
4D065ED12
4D065ED22
4D065EE02
4D067FF02
4D067FF14
4D067GA04
4D067GB03
4H012MA01
(57)【要約】
【課題】複数列の配合槽ラインAに硬度範囲別に石炭を振り分けて粉砕を行う場合に、石炭配合計画の変更に応じて石炭の粉砕条件を迅速かつ的確に変更する。
【解決手段】各配合槽ラインAで粉砕される石炭の硬度と送炭量の積を処理量pとした場合、各配合槽ラインAで予め求めた石炭の粉砕強度と粉砕後の石炭粒度との関係の回帰直線rの傾きを求め、それら傾きと処理量pとの関係を座標として描かれる近似曲線aを求めておく。配合計画の変更により処理量pが変更される際に、近似曲線aを利用して、変更後の処理量pに対応した「回帰直線の傾きe」を求めるとともに、配合計画変更後においても、一定時間、配合計画変更前の粉砕強度のままで石炭の粉砕を継続して粉砕後の石炭粒度を計測し、この計測粒度と目標粒度との差分Δdを求める。「回帰直線の傾きe」と「粒度の差分Δd」に基づき、配合計画変更前の粉砕強度fに対する変更量Δfを求め、その粉砕強度f+Δfで石炭を粉砕する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭を貯留する1つ以上の配合槽(1)と、該配合槽(1)から切り出された石炭を粉砕する粉砕機(2)と、該粉砕機(2)で粉砕された石炭の粒度を計測する粒度計(3)を備えた複数列の配合槽ライン(A)を有する石炭の粉砕設備において、複数列の配合槽ライン(A)に硬度範囲別に石炭を振り分けて粉砕処理を行うとともに、各配合槽ライン(A)では、粉砕機(2)による石炭の粉砕強度と粉砕後の石炭粒度との関係を予め求めておき、この関係に基づき、粒度計(3)で計測された粉砕後の石炭粒度が目標粒度となるように粉砕機(2)による石炭の粉砕強度を調整しつつ石炭の粉砕を行う方法であって、
各配合槽ライン(A)において粉砕処理される石炭の硬度と送炭量の積を処理量pとした場合、
予め、各配合槽ライン(A)における粉砕機(2)による石炭の粉砕強度と粉砕後の石炭粒度との前記関係を直線に回帰して、それらの回帰直線rの傾きを求め、それら回帰直線rの傾きと処理量pとの関係を座標として描かれる近似曲線aの式を求めておき、
任意の1つ以上の配合槽ライン(A)において石炭配合計画の変更により処理量pが変更される際に、下記(i)~(iii)により、石炭配合計画の変更前の粉砕強度fに対する粉砕強度の変更量Δfを求め、以後は、その粉砕強度(f+Δf)で石炭を粉砕することを特徴とする石炭の粉砕方法。
(i)石炭配合計画の変更による変更後の処理量pを近似曲線aの式に適用して、変更後の処理量pに対応した「回帰直線の傾きe」を求める。
(ii)石炭配合計画の変更後においても、一定時間、石炭配合計画の変更前の粉砕強度のままで粉砕機(2)による石炭の粉砕を継続して、粒度計(3)で粉砕後の石炭粒度を計測し、この計測粒度と目標粒度との差分Δdを求める。
(iii)前記(i)で求めた「回帰直線の傾きe」と前記(ii)で求めた「計測粒度と目標粒度との差分Δd」に基づく下式(1)により、変更後の処理量pに対応した、石炭配合計画の変更前の粉砕強度fに対する粉砕強度の変更量Δfを求める。
Δf=Δd/e …(1)
【請求項2】
粉砕機(2)がハンマクラッシャーであり、粉砕機(2)による石炭の粉砕強度は、粉砕機(2)のハンマ回転数であることを特徴とする請求項1に記載の石炭の粉砕方法。
【請求項3】
石炭の硬度は、HGI(ハードグローブ粉砕性指数)であることを特徴とする請求項1に記載の石炭の粉砕方法。
【請求項4】
各配合槽ライン(A)が複数の配合槽(1)を有し、これら複数の配合槽(1)に異なる硬さの石炭が貯留され、複数の配合槽(1)から切り出された石炭が粉砕処理される場合において、処理量pは、各配合槽(1)からの石炭切出量と当該石炭の硬度の積の合計値であることを特徴とする請求項1に記載の石炭の粉砕方法。
【請求項5】
粒度計(3)は、粉砕機(2)で粉砕された後、搬送コンベアで搬送される石炭層の表面を撮像し、その画像に基づき石炭の粗粒割合を計測するものであることを特徴とする請求項1に記載の石炭の粉砕方法。
【請求項6】
変更後の処理量pに応じて設定された粉砕強度(f+Δf)で石炭を粉砕した際に、粒度計(3)で計測された粉砕後の石炭粒度が経時的に目標粒度よりも大きい場合には、粉砕機(2)での粉砕方法を変更することを特徴とする請求項1に記載の石炭の粉砕方法。
【請求項7】
粉砕機(2)がハンマクラッシャーであり、粉砕機(2)での粉砕方法の変更は、下記(i)、(ii)の1つ以上であることを特徴とする請求項6に記載の石炭の粉砕方法。
(i)粉砕機(2)のハンマの回転方向を変更する。
(ii)粉砕機(2)のハンマと反撥板の隙間を変更する。
【請求項8】
粉砕機(2)での粉砕方法の変更は、下記(i)を優先して実行し、この粉砕方法の変更後も粒度計(3)で計測された粉砕後の石炭粒度が目標粒度よりも大きい場合に、下記(ii)を実行することを特徴とする請求項7に記載の石炭の粉砕方法。
(i)粉砕機(2)のハンマの回転方向を変更する。
(ii)粉砕機(2)のハンマと反撥板の隙間を変更する。
【請求項9】
石炭を貯留する1つ以上の配合槽(1)、該配合槽(1)から切り出された石炭を粉砕する粉砕機(2)、該粉砕機(2)の粉砕強度を調整するコントローラ(7)、および粉砕機(2)で粉砕された石炭の粒度を計測する粒度計(3)を備えた複数列の配合槽ライン(A)と、予め求められた、各配合槽ライン(A)における粉砕機(2)による石炭の粉砕強度と粉砕後の石炭粒度との関係に基づき、粒度計(3)で計測された粉砕後の石炭粒度が目標粒度となるように、コントローラ(7)を介して粉砕機(2)の石炭の粉砕強度を制御する演算制御装置(6)を有し、複数列の配合槽ライン(A)に硬度範囲別に石炭を振り分けて粉砕処理を行う石炭の粉砕設備であって、
演算制御装置(6)は、各配合槽ライン(A)において粉砕処理される石炭の硬度と送炭量の積を処理量pとした場合、予め、各配合槽ライン(A)における粉砕機(2)による石炭の粉砕強度と粉砕後の石炭粒度との前記関係を直線に回帰して、それらの回帰直線rの傾きを求め、それら回帰直線rの傾きと処理量pとの関係を座標として描かれる近似曲線aの式を求めておき、任意の1つ以上の配合槽ライン(A)において石炭配合計画の変更により処理量pが変更される際に、下記(i)~(iii)により、石炭配合計画の変更前の粉砕強度fに対する粉砕強度の変更量Δfを求め、以後は、その粉砕強度(f+Δf)で石炭を粉砕するように、コントローラ(7)を介して粉砕機(2)の粉砕強度を制御することを特徴とする石炭の粉砕設備。
(i)石炭配合計画の変更による変更後の処理量pを近似曲線aの式に適用して、変更後の処理量pに対応した「回帰直線の傾きe」を求める。
(ii)石炭配合計画の変更後においても、一定時間、石炭配合計画の変更前の粉砕強度のままで粉砕機(2)による石炭の粉砕を継続して、粒度計(3)で粉砕後の石炭粒度を計測し、この計測粒度と目標粒度との差分Δdを求める。
(iii)前記(i)で求めた「回帰直線の傾きe」と前記(ii)で求めた「計測粒度と目標粒度との差分Δd」に基づく下式(1)により、変更後の処理量pに対応した、石炭配合計画の変更前の粉砕強度fに対する粉砕強度の変更量Δfを求める。
Δf=Δd/e …(1)
【請求項10】
粉砕機(2)がハンマクラッシャーであり、粉砕機(2)による石炭の粉砕強度は、粉砕機(2)のハンマ回転数であることを特徴とする請求項9に記載の石炭の粉砕設備。
【請求項11】
石炭の硬度は、HGI(ハードグローブ粉砕性指数)であることを特徴とする請求項9に記載の石炭の粉砕設備。
【請求項12】
各配合槽ライン(A)が複数の配合槽(1)を有し、これら複数の配合槽(1)に異なる硬さの石炭が貯留され、複数の配合槽(1)から切り出された石炭が粉砕処理される場合において、処理量pは、各配合槽(1)からの石炭切出量と当該石炭の硬度の積の合計値であることを特徴とする請求項9に記載の石炭の粉砕設備。
【請求項13】
粒度計(3)は、粉砕機(2)で粉砕された後、搬送コンベアで搬送される石炭層の表面を撮像し、その画像に基づき石炭の粗粒割合を計測するものであることを特徴とする請求項9に記載の石炭の粉砕設備。
【請求項14】
演算制御装置(6)は、変更後の処理量pに応じて設定された粉砕強度(f+Δf)で石炭を粉砕した際に、粒度計(3)で計測された粉砕後の石炭粒度が経時的に目標粒度よりも大きい場合には、粉砕機(2)自体の要因による不適合な粉砕粒度であると判定し、該判定結果または該判定結果に基づいた粉砕機(2)の粉砕方法を変更すべき旨の指示を出力することを特徴とする請求項9に記載の石炭の粉砕設備。
【請求項15】
粉砕機(2)がハンマクラッシャーであり、変更可能な粉砕機(2)の粉砕方法が、下記(i)、(ii)の1つ以上であることを特徴とする請求項14に記載の石炭の粉砕設備。
(i)粉砕機(2)のハンマの回転方向を変更する。
(ii)粉砕機(2)のハンマと反撥板の隙間を変更する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークスの製造工程等において、石炭配合計画の変更に対応して、石炭の粉砕粒度を適切に調整・管理することができる石炭の粉砕技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高炉で使用するコークスは、炉内の通気性を確保するために高強度で品質(粒度および強度)が均一であることが要求される。高強度で品質が均一なコークスを製造するには、石炭をコークス炉で加熱し乾留させる際に石炭粒子間に強固な接触が生じるように、コークス炉に装入する石炭の嵩密度を高める必要がある。そのためには、コークス炉に装入する石炭の粒度を最適化することが重要である。
粒径の大きい粗粒の石炭粒子は、コークス炉内での加熱乾留時に隣接する石炭粒子との収縮率の差により接触界面にひび割れが生じ、コークス強度を低下させる。一方、粒子が小さい細粒の石炭粒子は、コークス炉に装入時に空気中に舞い、嵩密度を低下させる。したがって、高強度で品質が均一なコークスを製造するためには、石炭を粉砕機で粉砕処理する際に、目標とする粒度となるように粉砕条件を選択し、粒度のばらつきを低減させる必要がある。
【0003】
粉砕機による石炭の粉砕粒度は、粉砕機のハンマと反撥板(磨砕板)の隙間、粉砕機のモータの電流値、粉砕機のハンマの回転数などにより変わるため、これらを調整することで、粉砕後の石炭粒度を目標とする粒度に合わせ込む方法が一般的である。
石炭の粉砕方法に関する従来技術としては、粉砕後の石炭粒度を測定して粉砕機のハンマと反撥板の隙間を調整する方法(特許文献1)、同じく粉砕機のハンマの回転数を調整する方法(特許文献2)、石炭の粉砕エネルギーと粉砕前後の粒度分布の関係を示す式を用い、粉砕前の石炭の粒度と水分量に応じて粉砕機の電流値を調整する方法(特許文献3)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-319663号公報
【特許文献2】特開2004-16983号公報
【特許文献3】特開2016-159196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2のような粉砕後の石炭粒度(測定値)に基づいて粉砕条件を変更する方法では、石炭配合計画が変更された場合に石炭の粉砕粒度を目標粒度範囲に調整することが難しい。すなわち、コークスの製造では、コークスの生産性や品質確保の観点から頻繁に石炭配合計画が変更され、その都度、銘柄によって硬度(HGIなど)が異なる石炭の配合割合が変わるため、特許文献1、2のように粉砕後の石炭粒度に基づいて粉砕条件を変更するだけでは、石炭配合計画が変更された場合に、粉砕後の石炭粒度を目標粒度範囲に調整することは困難である。このため、石炭配合計画が変更される毎に、粉砕条件を変えた粉砕を複数回行って粉砕粒度を測定し、粉砕条件と粉砕粒度との関係を求める必要があり、石炭の粉砕条件を迅速かつ的確に変更できないという問題がある。
また、特許文献3のように粉砕前の石炭の粒度と水分量に応じて粉砕機の電流値を調整する方法でも、石炭配合計画が変更された場合に粉砕後の石炭粒度を目標粒度範囲に調整することは困難である。さらに、特許文献3の方法では、粉砕後の石炭粒度を把握することができないため、粉砕後の石炭粒度に基づいて粉砕条件を調整することもできない。
【0006】
したがって本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決し、粉砕後の石炭粒度を把握して粉砕条件を調整することができるとともに、石炭配合計画の変更に対応して、石炭の粉砕条件を迅速かつ的確に変更し、石炭の粉砕粒度を適切に調整・管理することができる石炭の粉砕方法および粉砕設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]石炭を貯留する1つ以上の配合槽(1)と、該配合槽(1)から切り出された石炭を粉砕する粉砕機(2)と、該粉砕機(2)で粉砕された石炭の粒度を計測する粒度計(3)を備えた複数列の配合槽ライン(A)を有する石炭の粉砕設備において、複数列の配合槽ライン(A)に硬度範囲別に石炭を振り分けて粉砕処理を行うとともに、各配合槽ライン(A)では、粉砕機(2)による石炭の粉砕強度と粉砕後の石炭粒度との関係を予め求めておき、この関係に基づき、粒度計(3)で計測された粉砕後の石炭粒度が目標粒度となるように粉砕機(2)による石炭の粉砕強度を調整しつつ石炭の粉砕を行う方法であって、
各配合槽ライン(A)において粉砕処理される石炭の硬度と送炭量の積を処理量pとした場合、
予め、各配合槽ライン(A)における粉砕機(2)による石炭の粉砕強度と粉砕後の石炭粒度との前記関係を直線に回帰して、それらの回帰直線rの傾きを求め、それら回帰直線rの傾きと処理量pとの関係を座標として描かれる近似曲線aの式を求めておき、
任意の1つ以上の配合槽ライン(A)において石炭配合計画の変更により処理量pが変更される際に、下記(i)~(iii)により、石炭配合計画の変更前の粉砕強度fに対する粉砕強度の変更量Δfを求め、以後は、その粉砕強度(f+Δf)で石炭を粉砕することを特徴とする石炭の粉砕方法。
(i)石炭配合計画の変更による変更後の処理量pを近似曲線aの式に適用して、変更後の処理量pに対応した「回帰直線の傾きe」を求める。
(ii)石炭配合計画の変更後においても、一定時間、石炭配合計画の変更前の粉砕強度のままで粉砕機(2)による石炭の粉砕を継続して、粒度計(3)で粉砕後の石炭粒度を計測し、この計測粒度と目標粒度との差分Δdを求める。
(iii)前記(i)で求めた「回帰直線の傾きe」と前記(ii)で求めた「計測粒度と目標粒度との差分Δd」に基づく下式(1)により、変更後の処理量pに対応した、石炭配合計画の変更前の粉砕強度fに対する粉砕強度の変更量Δfを求める。
Δf=Δd/e …(1)
【0008】
[2]上記[1]の粉砕方法において、粉砕機(2)がハンマクラッシャーであり、粉砕機(2)による石炭の粉砕強度は、粉砕機(2)のハンマ回転数であることを特徴とする石炭の粉砕方法。
[3]上記[1]または[2]の粉砕方法において、石炭の硬度は、HGI(ハードグローブ粉砕性指数)であることを特徴とする石炭の粉砕方法。
[4]上記[1]~[3]のいずれかの粉砕方法において、各配合槽ライン(A)が複数の配合槽(1)を有し、これら複数の配合槽(1)に異なる硬さの石炭が貯留され、複数の配合槽(1)から切り出された石炭が粉砕処理される場合において、処理量pは、各配合槽(1)からの石炭切出量と当該石炭の硬度の積の合計値であることを特徴とする石炭の粉砕方法。
[5]上記[1]~[4]のいずれかの粉砕方法において、粒度計(3)は、粉砕機(2)で粉砕された後、搬送コンベアで搬送される石炭層の表面を撮像し、その画像に基づき石炭の粗粒割合を計測するものであることを特徴とする石炭の粉砕方法。
【0009】
[6]上記[1]~[5]のいずれかの粉砕方法において、変更後の処理量pに応じて設定された粉砕強度(f+Δf)で石炭を粉砕した際に、粒度計(3)で計測された粉砕後の石炭粒度が経時的に目標粒度よりも大きい場合には、粉砕機(2)での粉砕方法を変更することを特徴とする石炭の粉砕方法。
[7]上記[6]の粉砕方法において、粉砕機(2)がハンマクラッシャーであり、粉砕機(2)での粉砕方法の変更は、下記(i)、(ii)の1つ以上であることを特徴とする石炭の粉砕方法。
(i)粉砕機(2)のハンマの回転方向を変更する。
(ii)粉砕機(2)のハンマと反撥板の隙間を変更する。
[8]上記[7]の粉砕方法において、粉砕機(2)での粉砕方法の変更は、下記(i)を優先して実行し、この粉砕方法の変更後も粒度計(3)で計測された粉砕後の石炭粒度が目標粒度よりも大きい場合に、下記(ii)を実行することを特徴とする石炭の粉砕方法。
(i)粉砕機(2)のハンマの回転方向を変更する。
(ii)粉砕機(2)のハンマと反撥板の隙間を変更する。
【0010】
[9]石炭を貯留する1つ以上の配合槽(1)、該配合槽(1)から切り出された石炭を粉砕する粉砕機(2)、該粉砕機(2)の粉砕強度を調整するコントローラ(7)、および粉砕機(2)で粉砕された石炭の粒度を計測する粒度計(3)を備えた複数列の配合槽ライン(A)と、予め求められた、各配合槽ライン(A)における粉砕機(2)による石炭の粉砕強度と粉砕後の石炭粒度との関係に基づき、粒度計(3)で計測された粉砕後の石炭粒度が目標粒度となるように、コントローラ(7)を介して粉砕機(2)の石炭の粉砕強度を制御する演算制御装置(6)を有し、複数列の配合槽ライン(A)に硬度範囲別に石炭を振り分けて粉砕処理を行う石炭の粉砕設備であって、
演算制御装置(6)は、各配合槽ライン(A)において粉砕処理される石炭の硬度と送炭量の積を処理量pとした場合、予め、各配合槽ライン(A)における粉砕機(2)による石炭の粉砕強度と粉砕後の石炭粒度との前記関係を直線に回帰して、それらの回帰直線rの傾きを求め、それら回帰直線rの傾きと処理量pとの関係を座標として描かれる近似曲線aの式を求めておき、任意の1つ以上の配合槽ライン(A)において石炭配合計画の変更により処理量pが変更される際に、下記(i)~(iii)により、石炭配合計画の変更前の粉砕強度fに対する粉砕強度の変更量Δfを求め、以後は、その粉砕強度(f+Δf)で石炭を粉砕するように、コントローラ(7)を介して粉砕機(2)の粉砕強度を制御することを特徴とする石炭の粉砕設備。
(i)石炭配合計画の変更による変更後の処理量pを近似曲線aの式に適用して、変更後の処理量pに対応した「回帰直線の傾きe」を求める。
(ii)石炭配合計画の変更後においても、一定時間、石炭配合計画の変更前の粉砕強度のままで粉砕機(2)による石炭の粉砕を継続して、粒度計(3)で粉砕後の石炭粒度を計測し、この計測粒度と目標粒度との差分Δdを求める。
(iii)前記(i)で求めた「回帰直線の傾きe」と前記(ii)で求めた「計測粒度と目標粒度との差分Δd」に基づく下式(1)により、変更後の処理量pに対応した、石炭配合計画の変更前の粉砕強度fに対する粉砕強度の変更量Δfを求める。
Δf=Δd/e …(1)
【0011】
[10]上記[9]の粉砕設備において、粉砕機(2)がハンマクラッシャーであり、粉砕機(2)による石炭の粉砕強度は、粉砕機(2)のハンマ回転数であることを特徴とする石炭の粉砕設備。
[11]上記[9]または[10]の粉砕設備において、石炭の硬度は、HGI(ハードグローブ粉砕性指数)であることを特徴とする石炭の粉砕設備。
[12]上記[9]~[11]のいずれかの粉砕設備において、各配合槽ライン(A)が複数の配合槽(1)を有し、これら複数の配合槽(1)に異なる硬さの石炭が貯留され、複数の配合槽(1)から切り出された石炭が粉砕処理される場合において、処理量pは、各配合槽(1)からの石炭切出量と当該石炭の硬度の積の合計値であることを特徴とする石炭の粉砕設備。
[13]上記[9]~[12]のいずれかの粉砕設備において、粒度計(3)は、粉砕機(2)で粉砕された後、搬送コンベアで搬送される石炭層の表面を撮像し、その画像に基づき石炭の粗粒割合を計測するものであることを特徴とする石炭の粉砕設備。
【0012】
[14]上記[9]~[13]のいずれかの粉砕設備において、演算制御装置(6)は、変更後の処理量pに応じて設定された粉砕強度(f+Δf)で石炭を粉砕した際に、粒度計(3)で計測された粉砕後の石炭粒度が経時的に目標粒度よりも大きい場合には、粉砕機(2)自体の要因による不適合な粉砕粒度であると判定し、該判定結果または該判定結果に基づいた粉砕機(2)の粉砕方法を変更すべき旨の指示を出力することを特徴とする石炭の粉砕設備。
[15]上記[14]の粉砕設備において、粉砕機(2)がハンマクラッシャーであり、変更可能な粉砕機(2)の粉砕方法が、下記(i)、(ii)の1つ以上であることを特徴とする石炭の粉砕設備。
(i)粉砕機(2)のハンマの回転方向を変更する。
(ii)粉砕機(2)のハンマと反撥板の隙間を変更する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、粉砕後の石炭粒度を把握して粉砕条件を調整することができるとともに、石炭配合計画の変更に対応して、石炭の粉砕条件を迅速かつ的確に変更し、石炭の粉砕粒度を適切に調整・管理することができる。このため、高強度で均一な品質のコークスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明法の実施に供されるコークス製造用の石炭粉砕設備と、この石炭粉砕設備を利用した本発明法の一実施形態を模式的に示す説明図
図2】粉砕機による石炭の粉砕強度と粉砕後の石炭粒度との関係を模式的に示すグラフ
図3図1の実施形態において、配合槽ラインA1~A3における処理量p~pの算出方法を模式的に示す説明図
図4図1の実施形態において、配合槽ラインA1~A3毎に予め求められている「粉砕機のハンマ回転数と粉砕後の石炭粒度との関係」を規定する回帰直線であって、傾き(傾きの絶対値)e~eの回帰直線r~rを模式的に示す図面
図5図1の実施形態において、配合槽ラインA1~A3での処理量p~pと、図4の回帰直線の傾き(傾きの絶対値)e~eとの関係を座標として描かれる近似曲線aを示すグラフ
図6図1の実施形態において、石炭配合計画の変更により処理量pが変更される場合、配合槽ラインA1~A3における変更後の処理量pm1~pm3の算出方法を模式的に示す説明図
図7図1の実施形態において、図6に示す変更後の処理量pm1~pm3図5に示す近似曲線aに適用して、変更後の処理量pm1~pm3に対応した「回帰直線の傾き(傾きの絶対値)em1~em3」を求めた場合を模式的に示す図面
図8図1の実施形態において、石炭配合計画の変更により処理量pが変更される際に、本発明が規定する(i)~(iii)により、石炭配合計画の変更前のハンマ回転数Nに対するハンマ回転数の変更量ΔNを求めることを説明するための図面(模式図)
図9】本発明で使用する粒度計の一実施形態とその使用状況を模式的に示す説明図
図10図9の粒度計により石炭粗粒割合(石炭粒度)を計測する際の粒度算出装置での処理フローを示す説明図
図11】実施例において、配合槽ラインA1~A3毎に予め求められている「粉砕機のハンマ回転数と粉砕後の石炭粒度との関係」を規定する回帰直線であって、傾きの絶対値がそれぞれ0.007、0.0135、0.0198の回帰直線r~rを示す図面
図12】実施例において、配合槽ラインA1~A3での処理量と、図11の回帰直線の傾きの絶対値との関係を座標として描かれる近似曲線aを示すグラフ
図13】実施例において、石炭配合計画の変更により変更された処理量pm1~pm3図12に示す近似曲線aに適用して、変更後の処理量pm1~pm3に対応した「回帰直線の傾き(傾きの絶対値)em1~em3」を求めた場合を示す図面
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施に供されるコークス製造用の石炭粉砕設備は、石炭粉砕系列として複数列の配合槽ラインA(n列の配合槽ラインA1~An)を有しており、本発明では、この複数列の配合槽ラインAに硬度範囲別に石炭を振り分けて粉砕処理を行う。すなわち、配合槽ラインA毎に異なる硬度範囲の石炭を粉砕処理する。一般に石炭の硬度としてはHGI(ハードグローブ粉砕性指数)が用いられるので、ここでは、配合槽ラインA毎にHGI範囲が異なる石炭を粉砕処理する場合について説明する。
図1は、本発明の実施に供されるコークス製造用の石炭粉砕設備と、この石炭粉砕設備を利用した本発明法の一実施形態を模式的に示すものである。この実施形態では、石炭をHGIの大きさで3グループ(HGI:大、HGI:中、HGI:小)に分け、このHGI範囲が異なる3グループの石炭を3系列の配合槽ラインA1~A3に振り分け、それぞれのラインで粉砕処理している。
【0016】
以下、この図1に基づいて、本発明の基礎となる石炭粉砕方法および設備の概要を説明する。各配合槽ラインA(A1~A3)は、石炭を貯留する複数の配合槽1と、これらの配合槽1から切り出された石炭を粉砕する粉砕機2(2a~2c)と、この粉砕機2で粉砕された石炭の粒度を計測する粒度計3(3a~3c)などを備えている。
石炭は銘柄別に石炭ヤードに貯留されており、貯留されている石炭のうち使用される石炭が銘柄別に搬送コンベア(ベルトコンベア)で搬送され、配合槽1に貯留される。上述したように、本発明では、複数列の配合槽ラインAにHGI範囲別に石炭を振り分けて粉砕処理を行うが、通常、各配合槽ラインAの複数の配合槽1には異なる銘柄の石炭(当然これら銘柄が異なる石炭はHGIも異なる)が貯留される。
【0017】
コークス炉に装入する石炭の配合計画(配合割合に関する計画)が決定されると、この配合計画に合わせて、各配合槽ラインAの複数の配合槽1から所定銘柄の石炭が所定量(単位時間当たりの所定量)切り出され、搬送コンベア4(ベルトコンベア)で粉砕機2まで搬送され、粉砕機2で所定の粒度に粉砕される。粉砕機2で粉砕された石炭は、さらに搬送コンベア5(ベルトコンベア)でコークス炉(その入側設備)まで搬送されるが、この搬送コンベア5で搬送中の石炭について、粒度計3による石炭粒度の計測が継続的に行われる。なお、複数列の配合槽ラインAで粉砕処理された石炭は、その後合流して混合され、必要な処理(調湿処理など)を施した上でコークス炉に装入される。
【0018】
粒度計3により計測される石炭粒度やその計測方法は特に限定されないが、粒度計3により計測される石炭粒度は、全体の粒度分布ではなく、石炭中の粗粒割合(例えば、粒径6mm以上の粗粒割合)とすることができる。すなわち、この粗粒割合をもって石炭の粒度分布を代表させることができ、後述するように粉砕機2の粉砕強度との高い相関性を有する。また、さきに述べたように石炭中の粗粒はコークス強度を低下させるので、粗粒割合を計測して粒度管理することは、コークス強度を確保する上でも意義がある。石炭の粗粒割合は、後述するように搬送コンベア5で搬送中の石炭層表面をCCDカメラ等で撮像し、これを画像処理して粒度を算出することにより、オンラインで簡単且つ高精度に計測することができる。この石炭粗粒割合の測定方法については、後に詳述する。粒度計3により石炭粗粒割合を計測する場合、通常、粒径6mm~50mmの範囲で粒径下限値(例えば6mm)を決め、それ以上の粒径のものを粗粒とし、その割合(石炭全量に対する割合)を求める。ここで、粗粒の粒径下限値を上記の範囲とするのは、その粒径であればカメラ式の測定手段で優位に測定でき、かつ割合が少なく、粗粒どうしが積層する頻度が低いためである。粗粒の粒径下限値を6mm未満とした場合には、測定にレーザー回折法等を用いる必要がある。
粉砕機2の形式は特に限定されず、例えば、ハンマクラッシャー、インパクトクラッシャー、ロール破砕機などが使用できるが、ハンマクラッシャーが使用される場合が多い。以下の説明でも、主にハンマクラッシャーが使用される場合を例に説明する。
【0019】
本発明において、石炭を粉砕する基本的な形態は、次のようなものである。各配合槽ラインA(A1~A3)において、粉砕機2で石炭を粉砕する際の粉砕強度と粉砕後の石炭粒度(好ましくは粗粒割合。以下同様)との関係(相関関係)、すなわち図2に模式的に示すような関係を、事前に実施した試験若しくは実操業の結果に基づいて予め求めておく。そして、この関係に基づき、粒度計3で計測された石炭粒度が目標粒度(目標とする粉砕後の粒度。以下同様)と一致するように粉砕機2の粉砕強度をコントローラ7で調整(制御)しつつ石炭の粉砕を行う。ここで、粉砕機2の粉砕強度と粉砕後の石炭粒度との関係(相関関係)は石炭のHGIにより異なる。図1に示すように本発明では、複数列の配合槽ラインAにおいてHGI範囲が異なる石炭を別々に粉砕するので、各配合槽ラインAにおいて、粉砕機2の粉砕強度と粉砕後の石炭粒度との関係を求めておく。
【0020】
粉砕機2で石炭を粉砕する際の粉砕強度とは、例えばハンマクラッシャーの場合はハンマ回転数などである。したがって、粉砕強度がハンマ回転数の場合には、各配合槽ラインAにおける粉砕機2のハンマ回転数と粉砕後の石炭粒度との関係を予め求めておき、この関係に基づき、粉砕機2のハンマ回転数をコントローラ7で上記のように調整(制御)する。
具体的には、演算制御装置6において、粒度計3で計測された石炭粒度が目標粒度と比較され、予め求めておいた上述した関係に基づき、目標粒度とするためのハンマ回転数が求められ、コントローラ7を通じてそのハンマ回転数で粉砕機2のハンマを回転させ、石炭を粉砕する。
また、他の形式の粉砕機の場合の粉砕強度としては、例えば、ロール破砕機の場合はロール回転数、インパクトクラッシャーの場合はロータ回転数などが挙げられる。
【0021】
本発明では、以上のようにして行われる石炭の粉砕処理において、任意の1つ以上の配合槽ラインAmにおいて石炭配合計画が変更された場合、粉砕条件(粉砕強度)を以下のように変更して石炭の粉砕を行う。
ここで、各配合槽ラインAにおいて粉砕処理される石炭の硬度(HGI)と送炭量の積を処理量pとする。したがって、各配合槽ラインAが複数の配合槽1を有し、これら複数の配合槽1に異なるHGIの石炭が貯留され、これらが搬送コンベア4に切り出される場合の処理量pは、各配合槽1からの石炭切出量と当該石炭のHGIの積の合計値(各配合槽1毎に求められる値(=石炭切出量×石炭のHGI)の合計)である。
【0022】
本発明では、予め、各配合槽ラインAにおける粉砕機2による石炭の粉砕強度と粉砕後の石炭粒度との前記関係(相関関係)を直線に回帰して、それらの回帰直線rの傾きを求めておき、さらに、それら回帰直線rの傾きと処理量pとの関係を座標として描かれる近似曲線aの式を求めておく。そして、任意の1つ以上の配合槽ラインAmにおいて石炭配合計画の変更により処理量pが変更される際に、下記(i)~(iii)により、石炭配合計画の変更前の粉砕強度fに対する粉砕強度の変更量Δfを求め、以後は、その粉砕強度(f+Δf)で石炭を粉砕する。
(i)石炭配合計画の変更による変更後の処理量pを近似曲線aの式に適用して、変更後の処理量pに対応した「回帰直線の傾きe」を求める。
(ii)石炭配合計画の変更後においても、一定時間、石炭配合計画の変更前の粉砕強度のままで粉砕機2による石炭の粉砕を継続して、粒度計3で粉砕後の石炭粒度を計測し、この計測粒度と目標粒度との差分Δdを求める。
(iii)前記(i)で求めた「回帰直線の傾きe」と前記(ii)で求めた「計測粒度と目標粒度との差分Δd」に基づく下式(1)により、変更後の処理量pに対応した、石炭配合計画の変更前の粉砕強度fに対する粉砕強度の変更量Δfを求める。
Δf=Δd/e …(1)
ここで、上記(ii)の「一定時間」は、粉砕後の石炭粒度を安定して計測できるようになるまでの時間であればよいので、その時間は状況に応じて適宜設定すればよい。
以上のような本発明による粉砕条件の変更は、通常、石炭配合計画が変更される毎に繰り返し実施される。
【0023】
また、変更後の処理量pに応じて設定された粉砕強度(f+Δf)で石炭を粉砕した際に、粒度計3で計測された「粉砕後の石炭粒度」が経時的に目標粒度よりも大きい場合には、粉砕機2自体の要因(例えばハンマの摩耗)による不適合な粉砕粒度であるといえる。このため、この場合には、事前に求められた「粉砕機2による石炭の粉砕強度と粉砕後の石炭粒度との関係」が成立していないと判断し、粉砕機2での石炭粉砕方法を変更するアクションを採る。
ここで、粉砕後の石炭粒度が「経時的に」目標粒度よりも大きいとは、粉砕後の石炭粒度が一定時間継続して目標粒度よりも大きいという意味である。例えば、粉砕後の石炭粒度が、ヤード山にある石炭を切り崩す時間よりも長い時間継続して目標粒度よりも大きい場合などが挙げられる。また、石炭粉砕方法の変更とは、例えば、粉砕機2がハンマクラッシャーの場合、粉砕機2のハンマの回転方向の変更、粉砕機2のハンマと反撥板の隙間の変更などである。
【0024】
以下、図1の実施形態をより具体的に説明するが、ここでは、石炭の粉砕強度が「粉砕機2のハンマ回転数」である場合について説明する。
本発明を実施するに当たり、HGI範囲別に石炭が振り分けられて粉砕処理が行われる配合槽ラインA1~A3毎に、「粉砕機2のハンマ回転数と粉砕後の石炭粒度との関係」(すなわち、後述するような石炭配合計画の変更がなされる前の「粉砕機2のハンマ回転数と粉砕後の石炭粒度との関係」)を事前に求めておく。各配合槽ラインA毎に粉砕後の目標粒度を決定し、事前に求めた前記「粉砕機2のハンマ回転数と粉砕後の石炭粒度との関係」に基づき、演算制御装置6で目標粒度に応じたハンマ回転数Nを演算する。このハンマ回転数Nは配合槽ラインA1~A3毎に異なる。演算制御装置6は、コントローラ7を介してハンマ回転数Nで石炭を粉砕するよう粉砕機2を制御する。この粉砕後の石炭粒度は粒度計3で計測される。演算制御装置6は、この計測された石炭粒度と目標粒度を比較し、差異がある場合、一致させるようなハンマ回転数の変更量を演算する。そして、コントローラ7に変更する粉砕機2のハンマの回転数N(このハンマ回転数Nは配合槽ラインA1~A3毎に異なる)を与え、このハンマ回転数Nで石炭を粉砕するよう粉砕機2を制御する。
【0025】
上記のようにして行われる石炭の粉砕処理において、配合槽ラインA1~A3の石炭配合計画が変更される場合、粉砕条件(粉砕機2のハンマ回転数)を以下のように変更して石炭の粉砕を行う。
まず、各配合槽ラインA1~A3における処理量p(処理量p~p)は、粉砕処理される石炭の硬度(HGI)と送炭量の積であり、その算出方法を図3に模式的に示す。例えば、配合槽ラインA1でHGI:80以上100未満の石炭を、配合槽ラインA2でHGI:60以上80未満の石炭を、配合槽ラインA3でHGI:40以上60未満の石炭を、それぞれ粉砕処理するものとする。この場合、例えば、配合槽ラインA1の4つの配合槽1がそれぞれHGI:82、HGI:96、HGI:92、HGI:86の石炭を貯留し、各配合槽1からの送炭量がx~x(t/h)であるとすると、処理量pはp=82*x+96*x+92*x+86*xとなる。ここでは、例えば、p=90とする。また、例えば、配合槽ラインA2の4つの配合槽1がそれぞれHGI:62、HGI:76、HGI:72、HGI:66の石炭を貯留し、各配合槽1からの送炭量がy~y(t/h)であるとすると、処理量pはp=62*y+76*y+72*y+66*yとなる。ここでは、例えば、p=70とする。また、例えば、配合槽ラインA3の4つの配合槽1がそれぞれHGI:42、HGI:56、HGI:52、HGI:46の石炭を貯留し、各配合槽1からの送炭量がz~z(t/h)であるとすると、処理量pはp=42*z+56*z+52*z+46*zとなる。ここでは、例えば、p=50とする。
【0026】
そして、配合槽ラインA1~A3毎に予め求められている前記「粉砕機2のハンマ回転数と粉砕後の石炭粒度との関係」(すなわち、石炭配合計画の変更前の「粉砕機2のハンマ回転数と粉砕後の石炭粒度との関係」)を、図4(a)~(c)に模式的に示すように直線に回帰し、それらの回帰直線r~rの傾き(傾きの絶対値)e=1、e=2、e=3を求めておく。さらに、図5に模式的に示すように、それらの傾き(傾きの絶対値)e=1、e=2、e=3と処理量p=90、p=70、p=50との関係を座標として描かれる近似曲線aの式を求めておく。この近似曲線は、石炭の破砕のしやすさを表している。
【0027】
図6は、配合槽ラインA1~A3において、石炭配合計画が変更された場合の処理量p(pm1~pm3)の算出方法を模式的に示している。この例では、配合槽ラインA1~A3の各配合槽1からの送炭量が変更され、配合槽ラインA1~A3の処理量pが変更されている。ここで、配合槽ラインA1では、各配合槽1からの送炭量がx~x(t/h)に変更されたとすると、処理量pはpm1=82*x+96*x+92*x+86*xに変更される。ここでは、例えば、pm1=95とする。また、配合槽ラインA2では、各配合槽1からの送炭量がy~y(t/h)に変更されたとすると、処理量pはpm2=62*y+76*y+72*y+66*yに変更される。ここでは、例えば、pm2=80とする。また、配合槽ラインA3では、各配合槽1からの送炭量がz~z(t/h)に変更されたとすると、処理量pはpm3=42*z+56*z+52*z+46*zに変更される。ここでは、例えば、pm3=45とする。
【0028】
そして、演算制御装置6において、この変更後の処理量pm1~pm3に対応した粉砕機2のハンマ回転数(=粉砕機2による石炭の粉砕強度)を求める。具体的には、下記(i)~(iii)により、石炭配合計画の変更前の粉砕機2のハンマ回転数Nに対するハンマ回転数の変更量ΔN(石炭配合計画の変更前の粉砕強度fに対する粉砕強度の変更量Δf)を求める。
(i)図7に模式的に示すように、変更後の処理量pm1~pm3図5の近似曲線aの式に適用して、変更後の処理量pm1~pm3に対応した「回帰直線の傾き(傾きの絶対値)e」を求める。図7の例では、配合槽ラインA1での変更後の処理量pm1=95に対して、これに対応する回帰直線の傾き(傾きの絶対値)em1=0.75が、配合槽ラインA2での変更後の処理量pm2=80に対して、これに対応する回帰直線の傾き(傾きの絶対値)em2=2.5が、配合槽ラインA3での変更後の処理量pm3=45に対して、これに対応する回帰直線の傾き(傾きの絶対値)em3=3.25が、それぞれ求められる。
【0029】
(ii)上記(i)による「回帰直線の傾き(傾きの絶対値)e」の算出とは別に、石炭配合計画の変更後においても、一定時間、石炭配合計画の変更前のハンマ回転数N(=粉砕強度)のままで粉砕機2による石炭の粉砕を継続して、各配合槽ラインAの粒度計3で粉砕後の石炭粒度を計測し、この計測粒度と目標粒度との差分Δdを求める。図8(A)は、ある配合槽ラインAにおいて計測された石炭粒度と、この計測粒度と目標粒度との差分Δdを模式的に示したものである。
(iii)上記(i)で求めた「回帰直線の傾き(傾きの絶対値)e」と上記(ii)で求めた「計測粒度と目標粒度との差分Δd」に基づく下式(1a)により、変更後の処理量pに対応した、石炭配合計画の変更前のハンマ回転数Nに対するハンマ回転数の変更量ΔNを求める。図8(B)は、ある配合槽ラインAにおいて求められたハンマ回転数の変更量ΔNを示したものである。
ΔN=Δd/e …(1a)
【0030】
ここで、上記のようにハンマ回転数の変更量ΔN(粉砕強度の変更量Δf)を求めるのに、石炭配合計画の変更前のハンマ回転数Nのままで粉砕を継続して計測した「粉砕後の石炭粒度(計測値)」を利用するのは、次のような理由による。配合槽ラインA1~A3には、それぞれ比較的狭いHGI範囲の石炭が振り分けられており、石炭配合計画の変更はその中で行われているため、処理量の変更幅もそれほど大きくない。このため、石炭配合計画の変更前のハンマ回転数のままで粉砕を継続して計測した「粉砕後の石炭粒度(計測値)」を利用しても、それほど大きな誤差は生じないと考えられる。
【0031】
以上のようにして、演算制御装置6において、変更後の処理量pm1(=95)、pm2(=80)、pm3(=45)に対応した、石炭配合計画の変更前のハンマ回転数Nに対するハンマ回転数の変更量ΔNを演算する。図8(C)は、一例として配合槽ラインA1における石炭のハンマ回転数の変更量ΔNの計算例を模式的に示したものである。この例では、目標粒度8%に対して計測粒度が13%であるので、両粒度の差分Δdは5%である。「回帰直線の傾き(傾きの絶対値)em1」が0.75であるので、ハンマ回転数の変更量ΔNは以下のようになる。
0.75=5/ΔN
ΔN=5/0.75=6.6
【0032】
したがって、上記のようにハンマ回転数の変更量ΔNが求められた以後は、石炭配合計画の変更前のハンマ回転数Nに対して、ハンマ回転数(N+ΔN)(=粉砕強度(f+Δf))で石炭の粉砕がなされる。すなわち、演算制御装置6はハンマ回転数(N+ΔN)をコントローラ7に与え、このハンマ回転数(N+ΔN)で石炭を粉砕するよう粉砕機2を制御する。つまり、ハンマ回転数(N+ΔN)を石炭配合計画の変更後の初期設定値として石炭を粉砕する。
石炭配合計画の変更後においても、当然、粉砕機2による粉砕後の石炭粒度が粒度計3で計測される。演算制御装置6は、この計測された石炭粒度と目標粒度を比較し、差異がある場合、一致させるようなハンマ回転数の変更量を演算する。そして、コントローラ7に変更する粉砕機2のハンマ変更量(このハンマ変更量は配合槽ラインA1~A3毎に異なる)を与え、このハンマ変更量で石炭を粉砕するよう粉砕機2を制御する。
【0033】
また、以上のように変更後の処理量pm1~pm3に応じて設定されたハンマ回転数(N+ΔN)で、或いは、さらに調整されたハンマ回転数で石炭を粉砕した際に、粒度計3で計測された粉砕後の石炭粒度が経時的に(すなわち、一定時間継続して)目標粒度よりも大きい場合には、粉砕機2自体の要因(例えばハンマの摩耗)による不適合な粉砕粒度であるといえる。このため、この場合には、前記「粉砕機2のハンマ回転数と粉砕後の石炭粒度との関係」が成立していないと判断し、粉砕機2での石炭粉砕方法を変更するアクションを採る。
したがって、演算制御装置6は、上記のように粒度計3で計測された粉砕後の石炭粒度が目標粒度よりも大きい場合には、粉砕機2自体の要因による不適合な粉砕粒度であると判定し、その判定結果またはその判定結果に基づいた粉砕機2の粉砕方法を変更すべき旨の指示を出力し、これをモニタ8等に表示する。これに基づき、粉砕機2の粉砕方法の変更が実施される。
ここで、変更する「粉砕機での石炭粉砕方法」とは、石炭を粉砕するための機構上の設定条件や運転方法であり、ハンマクラッシャーの場合には、例えば、(i)ハンマの回転方向、(ii)ハンマと反撥板(磨砕板)の隙間、などが挙げられ、これらの1つ以上を変更する。また、他の形式の粉砕機では、例えば、ロール破砕機の場合にはロール間ギャップ、インパクトクラッシャーの場合には打撃板と衝突版の隙間などが挙げられる。
【0034】
なお、「ハンマと反撥板の隙間」については、事前に、粉砕機2のハンマ回転数が一定の粉砕条件下で、粉砕後の石炭粒度と「ハンマと反撥板の隙間」の関係(相関関係)が求められ、この関係に基づいてハンマと反撥板の隙間の初期設定がなされており、上記(ii)はこのハンマと反撥板の隙間を変更するものである。また、ロール破砕機の場合のロール間ギャップ、インパクトクラッシャーの場合の打撃板と衝突版の隙間なども同様である。
また、ハンマクラッシャーで上記(i)、(ii)の粉砕方法の変更を実施する場合、まず、(i)を優先して実行し、この粉砕方法の変更後も粒度計3で計測された粉砕後の石炭粒度が目標粒度よりも大きい場合に、上記(ii)を実行することが好ましい。これは、粉砕機2の粉砕方法の変更の形態としては、上記(ii)よりも上記(i)の方が簡便であり、迅速に対応できる利点があるが、粉砕機2のハンマの摩耗等を要因とする不適合な粉砕粒度のなかでも、比較的軽微な摩耗等による場合は、上記(i)の対応で解消されることが多いからである。
【0035】
以上述べた本発明の石炭の粉砕方法を実施するための粉砕設備は、次のような構成を有する。すなわち、この粉砕設備は、石炭を貯留する1つ以上の配合槽1と、この配合槽1から切り出された石炭を粉砕する粉砕機2と、この粉砕機2の粉砕強度を調整するコントローラ7と、粉砕機2で粉砕された石炭の粒度を計測する粒度計3などを備えた複数列の配合槽ラインAを有する。さらに、予め求められた、各配合槽ラインAにおける粉砕機2による石炭の粉砕強度と粉砕後の石炭粒度との関係に基づき、粒度計3で計測された粉砕後の石炭粒度が目標粒度となるように、コントローラ7を介して粉砕機2の石炭の粉砕強度を制御する演算制御装置6を有する。この粉砕設備は、複数列の配合槽ラインAに硬度範囲別に石炭を振り分けて粉砕処理を行う。
【0036】
演算制御装置6は、各配合槽ラインAにおいて粉砕処理される石炭の硬度と送炭量の積を処理量pとした場合、予め、各配合槽ラインAにおける粉砕機2による石炭の粉砕強度と粉砕後の石炭粒度との前記関係を直線に回帰して、それらの回帰直線rの傾きを求め、それら回帰直線rの傾きと処理量pとの関係を座標として描かれる近似曲線aの式を求めておく。そして、任意の1つ以上の配合槽ラインAにおいて石炭配合計画の変更により処理量pが変更される際に、下記(i)~(iii)により、石炭配合計画の変更前の粉砕強度fに対する粉砕強度の変更量Δfを求め、以後は、その粉砕強度(f+Δf)で石炭を粉砕するように、コントローラ7を介して粉砕機2の粉砕強度を制御する。このような粉砕設備の構成および機能と使用形態の詳細は、さきに述べた通りである。
(i)石炭配合計画の変更による変更後の処理量pを近似曲線aの式に適用して、変更後の処理量pに対応した「回帰直線の傾きe」を求める。
(ii)石炭配合計画の変更後においても、一定時間、石炭配合計画の変更前の粉砕強度のままで粉砕機2による石炭の粉砕を継続して、粒度計3で粉砕後の石炭粒度を計測し、この計測粒度と目標粒度との差分Δdを求める。
(iii)前記(i)で求めた「回帰直線の傾きe」と前記(ii)で求めた「計測粒度と目標粒度との差分Δd」に基づく下式(1)により、変更後の処理量pに対応した、石炭配合計画の変更前の粉砕強度fに対する粉砕強度の変更量Δfを求める。
Δf=Δd/e …(1)
【0037】
以下、粒度計3により石炭粒度(粗粒割合)を測定する方法について説明する。
図9は、本発明で使用する粒度計3の一実施形態とその使用状況を模式的に示している。この粒度計3は、石炭を撮像するCCDカメラ30と、このCCDカメラ30に撮像された画像を画像処理した上で、石炭粒度(粗粒割合)を算出する粒度算出装置31(画像処理とそれに基づく粒度の計算を行う装置)で構成されている。
CCDカメラ30は、搬送コンベア5で搬送中の石炭層の上方(石炭層表面に近い位置)に設置され、搬送中の石炭層表面を撮像する。CCDカメラ30の設置高さは特に制限はなく、カメラやレンズの性能に応じて、石炭層表面の石炭粒子が十分確認できる位置(例えば、石炭層表面から500mm程度の高さ位置)に設置すればよい。また、カメラのシャッタースピードは、ベルトコンベアの速度と撮像した画像の輝度などに応じて適宜選択すればよい。
【0038】
搬送コンベア5で搬送される石炭層の表面は平坦ではなく凹凸があり、高さが一定ではないが、CCDカメラ30に焦点深度が広い範囲のカメラレンズを使用する(すなわち、凹凸による高さ変位に対応した光学設計を行う)とともに、露光時間を短くした上で、瞬間的に発光可能なストロボ光源(図示せず)で光量を与えることにより、ピントボケしない鮮明な画像が得られ、後述する画像処理およびそれに基づく粒度の計算により、粗粒割合を正確に計測することができる。
【0039】
ここで、層状の粉粒体に振動が加わると、ブラジリアンナッツ効果により粗粒が表層側に集まる傾向があることが知られている。粉砕後、搬送コンベア5に載せられて搬送される石炭は、当初は粗粒が層中に埋もれた状態にあるが、搬送コンベア5で搬送される石炭層には振動が加わるため、ブラジリアンナッツ効果により粗粒が表層側に移動して露出した状態となり、この石炭層表面が撮像されることになる。この撮像される石炭層表面の粒度分布と石炭層全体の粒度割合には相関があると考えられ、石炭層表面から全体の粒度分布を想定することが可能である。なお、ブラジリアンナッツ効果で表層側に粗粒を移動させた後に粒度計測を行うために、粒度計3は粉砕機2からある程度離れた位置(例えば、1~2m程度離れた位置)に置くことが好ましい。
CCDカメラ30で得られた石炭層表面の画像は粒度算出装置31に送られる。この粒度算出装置31は、画像処理部310と演算部311を有しており、CCDカメラ30から送られた画像は、画像処理部310で画像処理されることで粗粒が抽出され、演算部311では、この粗粒の抽出に基づいて粗粒割合が算出される。この粗粒割合が石炭粒度の計測値として演算制御装置6に送られ、粉砕機2の制御および粉砕粒度の適否の判定に用いられる。
【0040】
図10に、粒度算出装置31において、CCDカメラ30による撮像画像から粗粒割合を算出する処理フローの概要を示す。
CCDカメラ30による撮像画像が粒度算出装置31に入力されると、まず、輝度のむらを除去する処理(輝度むら修正)を行う。この輝度むら除去は、照明のあたり具合や撮像角度によって生じる画像全体の輝度むらを除去する処理であり、シェーディング補正として画像処理において一般的に使用されている手法が使用できる。次いで、画像を2値化処理した後、watershed法により粒界を強調し、画像から粒子を識別する処理(粒子分離)を行う。すなわち、2値化画像のうち、隣接する粒子を識別するために、微小な輝度差に着目したwatershed処理を実施し、隣接する粒子の分離を実施する。この処理で得られた粒子画像の面積を個々に算出して、これらの面積を楕円近似した際の長軸と短軸の粒径を算出する。その後、短軸が閾値以上の粒子のみを識別することで、石炭粒子のうち粒子の大きい粗粒のみを抽出する。この抽出(識別)された粗粒について、その粒径から各粒子の重さを算出し、その総和から石炭のうち粗粒の質量を算出し、その結果から、粗粒割合(石炭粒度)を算出する。以上のようにして算出された粗粒割合(石炭粒度)はリアルタイムで演算制御装置6に送られる。
【0041】
なお、以上はCCDカメラ30による撮像画像を画像処理して粗粒割合を算出する場合について説明したが、3Dカメラのような光学機器を用いて粗粒割合を算出するようにしてもよい。
本発明はコークスを製造するために石炭の粉砕方法として好適なものであるが、これに限定されるものではなく、例えば、高炉操業において羽口から吹き込まれる微粉炭などを得るための石炭粉砕にも適用できる。
【実施例0042】
図1に示すような3つの配合槽ラインA1~A3を備えた石炭粉砕設備で本発明を実施する場合について、配合計画変更後の処理量pm1~pm3に対応した「回帰直線の傾き(傾きの絶対値)em1~em3」を求めるまでをシミュレーションした。各配合槽Aが備える粉砕機2はハンマクラッシャーであり、粒度計3には、上述した粗粒割合を計測する装置を用いた。
配合槽ラインA1にはHGI:80以上100未満の石炭が、配合槽ラインA2にはHGI:60以上80未満の石炭が、配合槽ラインA3にはHGI:40以上60未満の石炭が振り分けられ、それぞれラインで石炭を粉砕処理した。
【0043】
本発明を実施するに当たり、事前に配合槽ラインA1~A3毎に「粉砕機2のハンマ回転数と粉砕後の石炭粒度との関係」を求めた。各配合槽ラインA1~A3毎に粉砕後の目標粒度を決定し、事前に求めた前記「粉砕機2のハンマ回転数と粉砕後の石炭粒度の相関関係」に基づき、目標粒度に応じたハンマ回転数を求め、このハンマ回転数で石炭を粉砕した。粉砕後の石炭粒度を粒度計3で計測し、この粉砕後の石炭粒度が目標粒度となるようにハンマ回転数を調整しつつ石炭の粉砕を行った。事前に求めておいた前記「粉砕機2のハンマ回転数と粉砕後の石炭粒度との関係」を直線に回帰し、その回帰直線の傾きの絶対値を求めた。図11に、各配合槽ラインA1~A3毎に予め求められている「粉砕機2のハンマ回転数と粉砕後の石炭粒度との関係」と、これを直線に回帰して得られた、傾きの絶対値e=0.007、e=0.0135、e=0.0198の回帰直線r~rを示す。
なお、図11の粉砕後の石炭粒度(石炭粗粒割合)は、本実施形態では粒径6mm以上の粗粒割合である。
【0044】
各配合槽ラインA1~A3の処理量pはp=4.1、p=3.5、p=2.4であり、図12に示すように、傾きの絶対値e~eと処理量p~pとの関係を座標として描かれる近似曲線aの式を求めた。
操業途中に石炭配合計画が変更され、配合槽ラインA1~A3の処理量pがpm1=4、pm2=3、pm3=2に変更された。このため、図13に示すように、変更後の処理量pm1~pm3図12の近似曲線aの式に適用して、変更後の処理量pm1~pm3に対応した「回帰直線の傾き(傾きの絶対値)」、すなわち傾きの絶対値em1:0.0086、em2:0.0159、em3:0.0232を求めた。
なお、各配合槽ラインA1~A3の処理量pは、例えば、上述したように「石炭硬度(HGI)×送炭量(石炭切出量)」と定義してもよいが、実際の処理量には他の因子(例えば、粒度や水分などの石炭性状)も影響するので、図12図13の処理量p,pは、「石炭硬度(HGI)×送炭量(石炭切出量)」に対してそれらの因子(すなわち粉砕しやすさに影響する因子)を加味した指数(無次元量)で表してある。
【0045】
さきに説明したように、本発明では、石炭配合計画の変更後においても、一定時間、石炭配合計画の変更前のハンマ回転数Nのままで石炭の粉砕を継続して、粉砕後の石炭粒度を計測し、この計測粒度と目標粒度との差分Δdを求める。以上のようにして求めた「回帰直線の傾きe」と「計測粒度と目標粒度との差分Δd」に基づき、石炭配合計画の変更前のハンマ回転数Nに対するハンマ回転数の変更量ΔNを求める。そして、それ以後は、そのハンマ回転数(N+ΔN)で石炭を粉砕するものである。このような本発明によれば、石炭配合計画の変更に対応して、石炭の粉砕条件を迅速かつ的確に変更し、石炭の粉砕粒度を適切に調整・管理することができ、石炭粒度およびコークス品質のばらつきが低減可能となる。
【符号の説明】
【0046】
1 配合槽
2,2a,2b,2c 粉砕機
3,3a,3b,3c 粒度計
4,5 搬送コンベア
6 演算制御装置
7 コントローラ
8 モニタ
30 CCDカメラ
31 粒度算出装置
310 画像処理部
311 演算部
A,A1,A2,A3 配合槽ライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図9
図10
図11
図12
図13