(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122757
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】粘着シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20240902BHJP
C09J 133/04 20060101ALI20240902BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/04
C09J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030476
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千葉 みずほ
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004AB06
4J004FA08
4J040DF021
4J040EF282
4J040GA05
4J040JB07
4J040JB09
4J040NA20
4J040PA42
(57)【要約】 (修正有)
【課題】紫外線照射前には優れた粘着力を発揮し、照射後には糊残りなく被着体から剥離し得る粘着シートの製造方法。
【解決手段】ポリオール中で水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマーを含むモノマー組成物を重合し、水酸基を有する(メタ)アクリル系ポリマーを含む反応溶液を得る;そこに放射線重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物を添加し、ポリオールおよび水酸基を有する(メタ)アクリル系ポリマーに放射線重合性炭素-炭素二重結合を導入し、該二重結合が導入されたポリオール誘導体と該二重結合が導入された(メタ)アクリル系ポリマーとを含む反応溶液を得る;そこにポリイソシアネートと光重合開始剤とを添加して粘着剤溶液を調製し基材に粘着剤層を形成する;粘着剤層中のポリイソシアネートと放射線重合性炭素-炭素二重結合が導入されたポリオール誘導体と導入された(メタ)アクリル系ポリマーとをウレタン化反応させる;ことを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、活性エネルギー線硬化型粘着剤層と、を有する粘着シートを製造する方法であって、
ポリオール中で、水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマーを含むモノマー組成物を重合し、水酸基を有する(メタ)アクリル系ポリマーを含む反応溶液(1)を得ることと;
該反応溶液(1)に、放射線重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物を添加し、ポリオールおよび水酸基を有する(メタ)アクリル系ポリマーに放射線重合性炭素-炭素二重結合を導入し、放射線重合性炭素-炭素二重結合が導入されたポリオール誘導体と、放射線重合性炭素-炭素二重結合が導入された(メタ)アクリル系ポリマーと、を含む反応溶液(2)を得ることと;
該反応溶液(2)に、ポリイソシアネートと、光重合開始剤と、を添加し、粘着剤溶液を調製することと;
該粘着剤溶液を用いて基材に粘着剤層を形成することと;
該粘着剤層に含まれる該ポリイソシアネートと、該放射線重合性炭素-炭素二重結合が導入されたポリオール誘導体と、該放射線重合性炭素-炭素二重結合が導入された(メタ)アクリル系ポリマーと、を、ウレタン化反応させることと;を含む、粘着シートの製造方法。
【請求項2】
前記モノマー組成物に含まれる全モノマー成分の合計に対する前記水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマーの含有割合が30重量%以下である、請求項1に記載の粘着シートの製造方法。
【請求項3】
前記反応溶液(1)に含まれる前記ポリオールと前記水酸基を有する(メタ)アクリル系ポリマーとの重量比が、30:70~70:30である、請求項1に記載の粘着シートの製造方法。
【請求項4】
前記ポリオールの数平均分子量が3000以下である、請求項1に記載の粘着シートの製造方法。
【請求項5】
前記ポリオールが第二級水酸基を有する、請求項1に記載の粘着シートの製造方法。
【請求項6】
前記ポリオールがポリプロピレングリコールユニットを含む、請求項1に記載の粘着シートの製造方法。
【請求項7】
前記ポリオールおよび前記水酸基を有する(メタ)アクリル系ポリマーが有する水酸基の合計の50モル%~90モル%に放射線重合性炭素-炭素二重結合を導入する、請求項1に記載の粘着シートの製造方法。
【請求項8】
前記粘着シートが半導体ウエハ加工用粘着シートである、請求項1から7のいずれかに記載の粘着シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着シートは、被着体の表面保護、および、固定を目的として広く用いられている。例えば、半導体ウエハの加工工程では、被着体である半導体ウエハをバックグラインド工程、および、ダイシング工程で適切に保持するために用いられる。近年、チップの微細化および薄型化が進められており、加工時に半導体ウエハを薄く研削しても半導体ウエハを適切に保持可能な粘着力が要求される。また、近年、半導体チップの高性能化に伴い、半導体チップの表面構造が複雑化している。そのためより複雑な表面形状にも追従し、加工時に半導体ウエハを固定可能な粘着力を有する粘着シートが求められている。しかしながら、粘着力の高い粘着シートでは剥離時にウエハを破損するおそれがある。そのため、加工後は容易に被着体から剥離することができる軽剥離な粘着シートが求められている。このような粘着剤組成物としては、紫外線硬化型粘着剤を用いる粘着シートが提案されている(例えば、特許文献1)。粘着剤層を形成する粘着剤としては、溶剤を用いた粘着剤が広く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、紫外線照射前には優れた粘着力を発揮し、紫外線照射後には糊残りなく被着体から剥離し得る粘着シートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1.本発明の実施形態の粘着シートの製造方法は、基材と、活性エネルギー線硬化型粘着剤層と、を有する粘着シートを製造する方法であって、ポリオール中で、水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマーを含むモノマー組成物を重合し、水酸基を有する(メタ)アクリル系ポリマーを含む反応溶液(1)を得ることと;該反応溶液(1)に、放射線重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物を添加し、ポリオールおよび水酸基を有する(メタ)アクリル系ポリマーに放射線重合性炭素-炭素二重結合を導入し、放射線重合性炭素-炭素二重結合が導入されたポリオール誘導体と、放射線重合性炭素-炭素二重結合が導入された(メタ)アクリル系ポリマーと、を含む反応溶液(2)を得ることと;該反応溶液(2)に、ポリイソシアネートと、光重合開始剤と、を添加し、粘着剤溶液を調製することと;該粘着剤溶液を用いて基材に粘着剤層を形成することと;該粘着剤層に含まれる該ポリイソシアネートと、該放射線重合性炭素-炭素二重結合が導入されたポリオール誘導体と、該放射線重合性炭素-炭素二重結合が導入された(メタ)アクリル系ポリマーと、を、ウレタン化反応させることと;を含む。
2.上記1に記載の粘着シートの製造方法において、上記モノマー組成物に含まれる全モノマー成分の合計に対する上記水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマーの含有割合が30重量%以下であってもよい。
3.上記1または2に記載の粘着シートの製造方法において、上記反応溶液(1)に含まれる上記ポリオールと上記水酸基を有する(メタ)アクリル系ポリマーとの重量比は、30:70~70:30であってもよい。
4.上記1から3のいずれかに記載の粘着シートの製造方法において、上記ポリオールの数平均分子量は3000以下であってもよい。
5.上記1から4のいずれかに記載の粘着シートの製造方法において、上記ポリオールは第二級水酸基を有していてもよい。
6.上記1から5のいずれかに記載の粘着シートの製造方法において、上記ポリオールはポリプロピレングリコールユニットを含んでいてもよい。
7.上記1から6のいずれかに記載の粘着シートの製造方法は、上記反応溶液(2)に含まれる上記ポリオールおよび上記水酸基を有する(メタ)アクリル系ポリマーが有する水酸基の合計の50モル%~90モル%に放射線重合性炭素-炭素二重結合が導入されていてもよい。
8.上記1から7のいずれかに記載の粘着シートの製造方法において、上記粘着シートは半導体ウエハ加工用粘着シートであってもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態の製造方法によれば、紫外線照射前には優れた粘着力を発揮し、紫外線照射後には糊残りなく被着体から剥離し得る粘着シートが提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の1つの実施形態による粘着シートの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.粘着シートの製造方法
本発明の実施形態の粘着シートの製造方法は、基材と、活性エネルギー線硬化型粘着剤層と、を有する粘着シートを製造する方法であり、以下の工程を含む:(A-1)ポリオール中で、水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマーを含むモノマー組成物を重合し、水酸基を有する(メタ)アクリル系ポリマーを含む反応溶液(1)を得ること;(A-2)反応溶液(1)に、放射線重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物を添加し、ポリオールおよび水酸基を有する(メタ)アクリル系ポリマーに放射線重合性炭素-炭素二重結合を導入し、放射線重合性炭素-炭素二重結合が導入されたポリオール誘導体(以下、ポリオール誘導体ともいう)と、放射線重合性炭素-炭素二重結合が導入された(メタ)アクリル系ポリマーと、を含む反応溶液(2)を得ること;(A-3)反応溶液(2)に、ポリイソシアネートと、光重合開始剤と、を添加し、粘着剤溶液を調製すること;(A-4)得られた粘着剤溶液を用いて基材に粘着剤層を形成すること;(A-5)粘着剤層に含まれるポリイソシアネートと、放射線重合性炭素-炭素二重結合が導入されたポリオール誘導体と、放射線重合性炭素-炭素二重結合が導入された(メタ)アクリル系ポリマーと、を、ウレタン化反応させること。本発明の実施形態の製造方法では、(A-1)工程で溶媒として機能するポリオールに、(A-2)工程で放射線重合性炭素-炭素二重結合を導入する。得られる反応溶液(2)には、放射線重合性炭素-炭素二重結合を有する(メタ)アクリル系ポリマーと、ポリオールの有する水酸基の少なくとも1つに炭素-炭素二重結合が導入されたポリオール誘導体と、ポリオールと、が含まれる。この反応溶液(2)にポリイソシアネートおよび光重合開始剤を添加して粘着剤溶液を調製し、得られた粘着溶液を用いて基材、または、はく離ライナー上に粘着剤層を形成する。次いで、形成された粘着剤層中でウレタン化反応を行う。ウレタン化反応により、粘着剤層中でポリオール、(メタ)アクリル系ポリマー、および、ポリオール誘導体の未反応の水酸基がポリイソシアネートと反応し得る。ウレタン化反応後の粘着剤層には、上記(メタ)アクリル系ポリマーが主鎖となり、側鎖および/または末端にウレタン結合を介してポリオール、ポリオール誘導体、または、(メタ)アクリル系ポリマーが導入された活性エネルギー線硬化成分と、ポリオールまたはポリオール誘導体がウレタン結合を介して結合したオリゴマーである活性エネルギー線硬化成分とが含まれ得る。これらは粘着剤層に紫外線を照射することで硬化し得る。(メタ)アクリル系ポリマーの重合に用いられた溶媒であるポリオールも粘着剤層に含まれる硬化成分となるため、粘着剤層に含まれる溶媒(ポリオール)の量が格段に低減され得る。結果として、残存溶媒による環境負荷の低減に貢献し得る。また、形成される粘着剤層は柔軟であり段差追従性に優れるので、より表面構造が複雑な半導体ウエハの加工にも好適に用いることができる。本明細書において、(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルをいう。
【0009】
A-1.水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマーを含むモノマー組成物の重合
本発明の実施形態の製造方法では、まず、ポリオール中で、水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマーを含むモノマー組成物を重合し、水酸基を有する(メタ)アクリル系ポリマーを含む反応溶液(1)を得る。この工程において、ポリオールは溶媒として機能し得る。(メタ)アクリル系ポリマーは、粘着剤層を形成する粘着剤のベースポリマーとして機能し得る。上記のとおり、溶媒として用いられるポリオールは後の工程で紫外線硬化成分となり得るため、得られる粘着シートに含まれる溶媒の量は格段に低減され得る。
【0010】
A-1-1.ポリオール
ポリオールとしては、任意の適切なポリオールを用いることができる。例えば、多価アルコール類、アミン類、アルカノールアミン類、多価フェノール類等が挙げられる。具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、グリセリン、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類;エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアミン類;エタノールアミン、プロパノールアミン等のアルカノールアミン類;レゾルシン、ビスフェノール類等の多価フェノール類が挙げられる。より具体的には、例えば、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシブチレングリコール等のポリエーテル系ポリオール;ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等のポリオレフィン系ポリオール;その他アジペート系ポリオール、ラクトン系ポリオール、ヒマシ油等のポリエステル系ポリオール等が挙げられる。ポリオールは1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0011】
ポリオールの数平均分子量(Mn)は、好ましくは3000以下であり、より好ましくは400~3000であり、さらに好ましくは600~3000であり、特に好ましくは600~2000である。ポリオールの数平均分子量が上記範囲であれば、重量平均分子量が10万以下の(メタ)アクリル系ポリマーを用いる場合、常温塗工が可能な粘着剤溶液が得られ得る。また、半導体ウエハを加工時にSiウエハを固定するのに優れた粘着力を発現し得る。なお、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ測定(溶媒:テトラヒドロフラン、ポリスチレン換算)により求めることができる。
【0012】
1つの実施形態において、ポリオールは第二級水酸基を有することが好ましい。第二級水酸基を有するポリオールを用いれば、(A-2)工程で(メタ)アクリル系ポリマーの側鎖の第一級水酸基に優先的に放射線重合性炭素-炭素二重結合が導入され得る。(A-3)工程でポリオールはウレタン結合を介して(メタ)アクリル系ポリマーの主鎖骨格に取り込まれ得る。その結果、半導体ウエハ加工時にSiウエハを固定するのに十分な粘着力を発現し得る。ポリオールが有する第二級水酸基は1つであってもよく、2以上であってもよい。
【0013】
ポリオールは好ましくはポリプロピレングリコールユニットを含む。ポリプロピレングリコールユニットを含むポリオールを用いれば、常温で塗工可能な粘度の粘着剤溶液が得られ得る。また、ポリオールが有する水酸基が第二級水酸基であり、半導体ウエハを加工時にSiウエハを固定するのに十分な粘着力を発現し得る。ポリオールに含まれるポリプロピレングリコールユニットは1つであってもよく、2以上であってもよい。
【0014】
ポリオールとしては、好ましくはポリプロピレングリコール、ポリプロピレントリオールが用いられる。これらのポリオールを用いれば、常温で塗工可能な粘度の粘着剤溶液が得られ得る。また、ポリオールが有する水酸基が第二級水酸基であり、半導体ウエハを加工時にSiウエハを固定するのに十分な粘着力を発現し得る。
【0015】
ポリオールの25℃における粘度は、好ましくは1000mPa・s以下であり、より好ましくは800mPa・s以下であり、さらに好ましくは600mPa・s以下である。また、ポリオールの25℃における粘度は、例えば、50mPa・s以上である。粘度が上記範囲であれば常温塗工が可能な粘着剤溶液が得られ得る。また、半導体ウエハを加工時にSiウエハを固定するのに十分な粘着力を発現し得る。ポリオールの25℃における粘度は、任意の適切な方法で測定することができる。例えば、B型粘度計を用いることにより測定することができる。
【0016】
ポリオールとしては、市販品を用いてもよい。例えば、三洋化成工業社製、商品名「サンニックス PP-600」、「サンニックス PP-1000」、「サンニックス PP-2000」等のサンニックスPPシリーズ、三洋化成工業社製、商品名「サンニックス GP-1000」等のサンニックスGPシリーズ、AGC社製、商品名「EXCENOL 1020F」「EXCENOL 1030F」「EXCENOL 2020F」「EXCENOL 903」等が挙げられる。
【0017】
A-1-2.モノマー組成物
モノマー組成物が含むモノマーとしては、水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマー、水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマー以外の任意の適切な(メタ)アクリル系モノマー、および、任意のこれらと共重合可能なモノマーが挙げられる。これらのモノマーは1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0018】
水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては任意の適切なモノマーが挙げられる。例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシへキシル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシへキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4-ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチルアクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。好ましくは、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレートが挙げられる。これらのモノマーを用いることにより、ポリオールとの相溶性が良い(メタ)アクリル系ポリマーが得られ得る。また、紫外線照射前には優れた粘着力を発揮し、紫外線照射後には粘着力が十分に低下し得る粘着シートを提供し得る。水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマーは、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
モノマー組成物に含まれる全モノマー成分の合計に対する水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマーの含有割合は、好ましくは30重量%以下であり、より好ましくは20重量%以下であり、さらに好ましくは15重量%以下である。モノマー組成物に含まれる全モノマー成分の合計に対する水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマーの含有割合は、例えば、5重量%以上である。水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマーの含有割合が上記範囲であれば、得られる粘着剤溶液から形成される粘着剤層が紫外線照射前には優れた粘着力を発揮し、紫外線照射後には糊残りなく被着体から剥離し得る。
【0020】
水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマー以外の(メタ)アクリル系モノマーとしては、代表的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが用いられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等の(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。モノマー組成物に含まれる全モノマー成分に対する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有割合は、任意の適切な割合に調整され得る。モノマー組成物に含まれる全モノマー成分の合計に対する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有割合は、好ましくは50重量%~95重量%であり、より好ましくは50重量%~80重量%である。
【0021】
共重合可能なモノマーとして、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イコタン酸等の酸無水物モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルフォリン等の窒素含有モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル等の(メタ)アクリル酸アミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;N-シクロヘキシルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド等のマレイミド系モノマー;N-メチルイタコンイミド、N-エチルイタコンイミド等のイタコンイミド系モノマー;スクシンイミド系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N-ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン等のビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノアクリレートモノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール等のグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等の複素環、ハロゲン原子、ケイ素原子等を有するアクリル酸エステル系モノマー;イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;ビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー等が挙げられる。これらの単量体成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。モノマー組成物に含まれる全モノマー成分に対する共重合可能なモノマーの含有割合は、任意の適切な割合に調整され得る。例えば、共重合可能なモノマーの含有割合は水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマーと(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの合計が100重量%となるよう用いられる。モノマー組成物に含まれる全モノマー成分に対する共重合可能なモノマーの含有割合は好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは10重量%~50重量%である。
【0022】
A-1-3.その他の成分
水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマーの重合に用いられる組成物は、ポリオール、および、モノマー組成物以外の任意の適切な添加剤がさらに含まれていてもよい。例えば連鎖移動剤、重合開始剤等が挙げられる。
【0023】
重合開始剤としては、任意の適切な重合開始剤を用いることができる。例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’-アゾビス(N,N’-ジメチレンイソブチルアミジン)などのアゾ系重合開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素などの過酸化物系重合開始剤;過酸化物とアスコルビン酸との組み合わせ(過酸化水素水とアスコルビン酸との組み合わせ等)、過酸化物と鉄(II)塩との組み合わせ(過酸化水素水と鉄(II)塩との組み合わせ等)、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組み合わせ等による、過酸化物と還元剤との組み合わせによるレドックス系重合開始剤が挙げられる。重合開始剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
重合開始剤は、用いる重合開始剤の種類およびモノマー組成物の組成などに応じて任意の適切な量で用いることができる。重合開始剤の含有量は、例えば、モノマー組成物100重量部に対して0.01重量部~1重量部であり、好ましくは0.02重量部~0.5重量部である。
【0025】
連鎖移動剤としては任意の適切な連鎖移動剤が用いられる。例えば、ドデシルメルカプタン(ドデカンチオール)、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、2-メルカプトエタノール、メルカプト酢酸、チオグリコール酸2-エチルヘキシル、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール等のメルカプタン類、α-メチルスチレンダイマー等が挙げられる。連鎖移動剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。連鎖移動剤の含有量は、モノマー組成物100重量部に対して、例えば0.001重量部~0.5重量部である。
【0026】
A-1-4.重合反応
水酸基を有する(メタ)アクリル系ポリマーの重合は、任意の適切な方法で行うことができる。例えば、ポリオール、水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマーを含むモノマー組成物、重合開始剤、および、連鎖移動剤等の任意の適切な添加剤を重合用の反応容器に添加し、攪拌しながら加熱することにより行う。反応時間、および、反応温度は任意の適切な値に設定することができる。反応時間は、例えば、4時間~8時間であり、好ましくは6時間~8時間である。反応温度は、例えば、60℃~80℃であり、好ましくは60℃~70℃である。
【0027】
上記重合反応を行うことにより、水酸基を有する(メタ)アクリル系ポリマーを含む反応溶液(1)が得られる。反応溶液(1)において、ポリオールは未反応の状態で溶媒として存在し得る。反応溶液(1)に含まれるポリオールと水酸基を有する(メタ)アクリル系ポリマーの重量比は、好ましくは30:70~70:30であり、より好ましくは35:65~65:35であり、さらに好ましくは40:60~60:40である。反応溶液(1)に含まれるポリオールと水酸基を有する(メタ)アクリル系ポリマーの重量比が上記範囲であれば、ポリオールと水酸基を有する(メタ)アクリル系ポリマーの両方に、適切な割合で放射線重合性炭素-炭素二重結合を導入し得る。その結果、得られる粘着剤溶液から形成される粘着剤層が紫外線照射前には優れた粘着力を発揮し、紫外線照射後には糊残りなく被着体から剥離し得る。
【0028】
A-2.反応溶液(2)の調製
次いで、得られた反応溶液(1)に、放射線重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物を添加し、ポリオールおよび水酸基を有する(メタ)アクリル系ポリマーに放射線重合性炭素-炭素二重結合を導入し、放射線重合性炭素-炭素二重結合が導入されたポリオール誘導体と、放射線重合性炭素-炭素二重結合が導入された(メタ)アクリル系ポリマーと、を含む反応溶液(2)を得る。
【0029】
A-2-1.放射線重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物
放射線重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物としては、任意の適切な化合物を用いることができる。放射線重合性炭素-炭素二重結合を有する官能基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基、アセチレン基等が挙げられる。上記のとおり、ポリオールおよび(メタ)アクリル系ポリマーは水酸基を有する。水酸基と反応可能であり、反応追跡が容易であることから、イソシアネート基と、重合性炭素-炭素二重結合と、を有する化合物が好適に用いられる。具体的には、2-イソシアネートエチルメタクリレート、メタクリロイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(2-イソシアナトエチルメタクリレート)、m-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。これらの重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
A-2-2.放射線重合性炭素-炭素二重結合の導入
放射線重合性炭素-炭素二重結合をポリオールおよび水酸基を有する(メタ)アクリル系ポリマーに導入する方法としては任意の適切な方法を用いることができる。例えば、放射線重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物を、炭素-炭素二重結合の放射線重合性を維持したまま、ポリオールまたは(メタ)アクリル系ポリマーに対して縮合反応または付加反応させる方法が挙げられる。
【0031】
放射線重合性炭素-炭素二重結合の導入は、反応溶液(1)に放射線重合性炭素-炭素を有する化合物を添加し、任意の適切な触媒の存在下で反応させることにより行われる。反応温度および反応時間は任意の適切な値に設定される。反応時間は、例えば、6時間~72時間であり、好ましくは8時間~12時間である。反応温度は、例えば、23℃~60℃であり、好ましくは40℃~60℃である。
【0032】
上記反応により、ポリオールの水酸基および/または水酸基を有する(メタ)アクリル系ポリマーの水酸基と、放射線重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物が有する官能基(例えば、イソシアネート基)とが反応し、ポリオールおよび(メタ)アクリル系ポリマーに放射線重合性炭素-炭素二重結合が導入され得る。その結果、ポリオールに放射線重合性炭素-炭素二重結合が導入されたポリオール誘導体と、放射線重合性炭素-炭素二重結合が導入された(メタ)アクリル系ポリマー(以下、放射線重合性炭素-炭素二重結合を有する(メタ)アクリル系ポリマーともいう)とが得られ得る。放射線重合性炭素-炭素二重結合が導入されたポリオール誘導体において、放射線重合性炭素-炭素二重結合は、1つの水酸基に導入されていてもよく、2以上の水酸基に導入されていてもよい。放射線重合性炭素-炭素二重結合が導入された(メタ)アクリル系ポリマーにおいて、放射線重合性炭素-炭素二重結合は、1つの水酸基に導入されていてもよく、2以上の水酸基に導入されていてもよい。
【0033】
1つの実施形態において、ポリオールおよび水酸基を有する(メタ)アクリル系ポリマーが有する水酸基の合計の好ましくは50モル%~90モル%、より好ましくは55モル%~85モル%、さらに好ましくは60モル%~80モル%に放射線重合性炭素-炭素二重結合を導入する。ポリオールおよび水酸基を有する(メタ)アクリル系ポリマーが有する水酸基の合計のうち、放射線重合性炭素-炭素二重結合が導入された水酸基の割合が上記範囲であれば、得られる粘着剤溶液から形成される粘着剤層が紫外線照射前には優れた粘着力を発揮し、紫外線照射後には糊残りなく被着体から剥離し得る。
【0034】
放射線重合性炭素-炭素二重結合を有する(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは10万以下であり、より好ましくは8万以下である。また、放射線重合性炭素-炭素二重結合を有する(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、例えば、1万以上である。放射線重合性炭素-炭素二重結合を有する(メタ)アクリル系ポリマーを有する(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量が上記範囲であれば、常温で塗工可能な粘着剤溶液が得られ得る。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ測定(溶媒:テトラヒドロフラン、ポリスチレン換算)により求めることができる。
【0035】
A-3.粘着剤溶液の調製
次いで、上記で得られた反応性溶液(2)に、ポリイソシアネートと、光重合開始剤とを添加し、粘着剤溶液を調製する。
【0036】
A-3-1.ポリイソシアネート
ポリイソシアネートとしては、任意の適切なポリイソシアネートが用いられる。ポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、ならびに、これらのジイソシアネートの二量体および三量体などが挙げられる。具体的には、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、ブタン-1,4-ジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等、ならびに、これらの二量体および三量体、ポリフェニルメタンポリイソシアネートなどが挙げられる。また、上記三量体としては、イソシアヌレート型、ビューレット型、アロファネート型などが挙げられる。ポリイソシアネートは、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
ポリイソシアネートとしては、市販品を用いてもよい。市販品としては、三井化学社製、商品名「タケネート D101A」、「タケネート D165N」、東ソー製、「コロネートL」、「コロネートHL」、「コロネートHX」等が挙げられる。
【0038】
粘着剤溶液におけるポリイソシアネートの含有量は、任意の適切な値に設定され得る。好ましくは、ポリイソシアネートと、反応溶液(2)に含まれる水酸基の当量比が、NCO/OH=0.5~5.0であり、より好ましくは1.0~3.0であり、さらに好ましくは1.5~3.0である。当量比が上記範囲であれば、得られる粘着剤溶液から形成される粘着剤層が紫外線照射前には優れた粘着力を発揮し、紫外線照射後には糊残りなく被着体から剥離し得る。
【0039】
A-3-2.光重合開始剤
光重合開始剤としては、任意の適切な開始剤を用いることができる。光重合開始剤としては、例えば、エチル2,4,6-トリメチルベンジルフェニルホスフィネート、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤;4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、α-ヒドロキシ-α,α’-ジメチルアセトフェノン、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα-ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)-フェニル]-2-モルホリノプロパン-1等のアセトフェノン系化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール等のケタール系化合物;2-ナフタレンスルホニルクロリド等の芳香族スルホニルクロリド系化合物;1-フェノン-1,1-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム等の光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2-クロロチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、2,4-ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4-ジクロロチオキサンソン、2,4-ジエチルチオキサンソン、2,4-ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフォナート、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1等のα―ヒドロキシアセトフェノン等が挙げられる。光重合開始剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
光重合開始剤としては、市販品を用いてもよい。例えば、IGM Resins社製の商品名「Omnirad TPO-L」、「Omnirad 500」、「Omnirad MBF」等が挙げられる。
【0041】
光重合開始剤は任意の適切な量で用いられ得る。光重合開始剤の含有量は、反応溶液(2)に含まれる放射線重合性炭素-炭素二重結合が導入された(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、好ましくは0.5重量部~20重量部であり、より好ましくは1重量部~10重量部である。光重合開始剤の含有量が0.5重量部未満である場合、紫外線照射時に十分に硬化しないおそれがある。
【0042】
A-3-3.添加剤
粘着剤溶液には、必要に応じて、任意の適切な添加剤をさらに用いてもよい。添加剤としては、例えば、架橋剤、触媒(例えば、白金触媒)、粘着付与剤、可塑剤、顔料、染料、充填剤、老化防止剤、導電材、紫外線吸収剤、光安定剤、剥離調整剤、軟化剤、難燃剤、溶剤等が挙げられる。添加剤は目的に応じて任意の適切な量で用いられる。
【0043】
A-4.粘着剤層の形成
次いで、得られた粘着剤溶液を用いて基材に粘着剤層を形成する。粘着剤層は、任意の適切な方法で形成され得る。例えば、はく離ライナーに上記で得られた粘着剤溶液を塗布し、加熱させて、はく離ライナー上に粘着剤層を形成した後、基材に粘着剤層を転写することにより基材上に粘着剤層を形成し得る。また、基材上に粘着剤溶液を塗布し、加熱させて、粘着剤層を形成してもよい。
【0044】
粘着剤溶液の塗布方法としては、バーコーター塗布、エアナイフ塗布、グラビア塗布、グラビアリバース塗布、リバースロール塗布、リップ塗布、ダイ塗布、ディップ塗布、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷など種々の方法を採用することができる。加熱方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。
【0045】
基材は、任意の適切な樹脂から構成され得る。基材を構成する樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)などのポリエステル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体などのポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリイミド、セルロース類、フッ素系樹脂、ポリエーテル、ポリスチレンなどのポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられる。好ましくはポリオレフィン系樹脂、または、ポリエステル系樹脂である。これらの樹脂は紫外線を透過するため、紫外線照射により軽剥離性を有する粘着シートが得られ得る。
【0046】
基材は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分をさらに含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤等が挙げられる。その他の成分の種類および使用量は、目的に応じて任意の適切な量で用いることができる。
【0047】
A-5.ウレタン化反応
次いで、粘着剤層に含まれるポリイソシアネートと、放射線重合性炭素-炭素二重結合が導入されたポリオール誘導体と、放射線重合性炭素-炭素二重結合が導入された(メタ)アクリル系ポリマーと、ポリオールと、を、ウレタン化反応させる。ウレタン化反応により、ポリオール、ポリオール誘導体、および、(メタ)アクリル系ポリマーに含まれる未反応の水酸基がウレタン結合し得る。その結果、粘着剤層に含まれている未反応のポリオールは、(メタ)アクリル系ポリマーの側鎖または末端に結合し得る。または、未反応のポリオールおよび/またはポリオール誘導体で結合し活性エネルギー線硬化性のオリゴマーとなり得る。その結果、粘着剤層には、活性エネルギー線硬化性(メタ)アクリル系ポリマーと、活性エネルギー線硬化性オリゴマーとが含まれ得る。ウレタン化反応により、溶媒として用いられるポリオールは上記活性エネルギー線硬化成分となり、粘着剤層に残存する溶剤の量が低減され得る。
【0048】
1つの実施形態において、上記粘着剤溶液を基材、または、はく離ライナーに塗工し、加熱することによりウレタン化反応を行うことが好ましい。このようにしてウレタン化反応を行うことにより、粘着シートの生産性が向上し得る。この実施形態において、ウレタン化反応は基材上に形成された粘着剤層または基材に転写された粘着剤層で行ってもよく、はく離ライナー上に形成された粘着剤層でウレタン化反応を行い、次いで、基材に粘着剤層を転写してもよい。
【0049】
ウレタン化反応は任意の適切な方法で行われる。例えば、遮光した状態で、任意の適切な温度に、任意の適切な時間置くことにより、ウレタン化反応を行うことができる。反応時間は、例えば、1分~10分であり、好ましくは2分~5分である。反応温度は、例えば、110℃~150℃であり、好ましくは120℃~140℃である。
【0050】
B.粘着シート
B-1.粘着シートの全体構成
図1は、本発明の実施形態による粘着シートの概略断面図である。上記本発明の実施形態の製造方法で得られる粘着シート100は、基材20と、粘着剤層10と、をこの順に備える。上記のとおり、粘着剤層は放射線重合性炭素-炭素二重結合を有する(メタ)アクリル系ポリマーおよび放射線重合性炭素-炭素二重結合を有するオリゴマー、ならびに、光重合開始剤を含む。そのため、紫外線照射前においては被着体への優れた粘着力を示し、紫外線照射後においては被着体への糊残り等を抑制し、容易に被着体から剥離することができる。粘着シート100は、任意の適切な層をさらに含んでいてもよい。例えば、基材20と、粘着剤層10との間に、中間層(図示せず)が形成され得る。中間層を含む場合、表面に凹凸を有する被着体への追従性が向上し得る。
【0051】
粘着シートは、紫外線照射前の粘着シートのSiウエハに対する粘着力が好ましくは0.5N/20mm以上であり、より好ましくは0.75N/20mm以上であり、さらに好ましくは1.0N/20mm以上である。紫外線照射前のSiウエハに対する粘着力が上記範囲であれば、被着体への優れた密着性を有する。また、Siウエハに対する粘着力は、例えば、15N/20mm以下である。本明細書において、Siウエハに対する粘着力は、以下の方法により測定される粘着力をいう。粘着シートを幅20mm、長さ80mmに切断し、シリコンミラーウエハのミラー面に、23℃の雰囲気下、ハンドローラーを1往復させて圧着し、23℃で30分放置する。その後、粘着シートを剥離させるのに要する力を23℃、50%RH雰囲気下、引張速度300mm/分で180°剥離試験を行い測定する。
【0052】
粘着シートは、積算光量が460mJ/cm2となるよう紫外線を照射した後の粘着シートのSiウエハに対する粘着力が好ましくは0.20N/20mm以下であり、より好ましくは0.15N/20mm以下であり、さらに好ましくは0.10N/20mm以下である。紫外線照射後のSiウエハに対する粘着力が上記範囲であれば、軽剥離性を有する。紫外線照射後の粘着力は小さいほど好ましい。本明細書において、積算光量が460mJ/cm2となるよう紫外線を照射した後の粘着シートのSiウエハに対する粘着力は以下の方法で測定した値をいう。粘着シートを幅20mm、長さ80mmに切断し、シリコンミラーウエハのミラー面に、23℃の雰囲気下、ハンドローラーを1往復させて圧着し、23℃で30分放置する。その後、紫外線(UV)を積算光量が460mJ/cm2(365nm換算)となるよう粘着シート面側から照射する。次いで、粘着シートを剥離させるのに要する力を23℃、50%RH雰囲気下、引張速度300mm/分の条件で180°剥離試験を行い測定する。
【0053】
本発明の実施形態の製造方法により得られる粘着シートの厚みは任意の適切な厚みに設定され得る。粘着シートの厚みは、好ましくは30μm~400μmであり、より好ましくは40μm~300μmであり、さらに好ましくは50μm~200μmである。
【0054】
基材の厚みは、任意の適切な値に設定され得る。基材の厚みは、好ましくは30μm~200μmであり、より好ましくは40μm~180μmであり、さらに好ましくは45μm~180μmである。
【0055】
粘着剤層の厚みは、任意の適切な値に設定され得る。粘着剤層の厚みは、好ましくは2μm~200μmであり、より好ましくは3μm~150μmであり、さらに好ましくは5μm~100μmである。粘着剤層の厚みが上記範囲であれば、被着体に対し優れた粘着力を発揮し得る。
【0056】
C.粘着シートの用途
本発明の実施形態の製造方法により得られる粘着シートは半導体ウエハの製造工程に好適に用いることができる。例えば、ダイシングテープ、および、バックグラインドテープ等の半導体ウエハ加工用粘着シートとして用いることができる。本発明の実施形態の製造方法により得られる粘着シートは追従性に優れ得る。そのため、表面がより複雑な構造である半導体ウエハの加工にも好適に用いることができる。
【実施例0057】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。また、実施例において、特に明記しない限り、「部」および「%」は重量基準である。
【0058】
[実施例1]
アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)32.9重量部、アクリロイルモルフォリン(ACMO)8.4重量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)8.6重量部、1-ドデカンチオール(LSH)0.1重量部、ポリオール(三洋化成社製、商品名「サンニックス PP-600」)50重量部、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.1重量部を混合し、組成物を調製した。得られた組成物を、1L丸底セパラブルフラスコに、セパラブルカバー、分液ロート、温度計、窒素導入管、リービッヒ冷却器、バキュームシール、攪拌棒、攪拌羽が装備された重合用実験装置に投入し攪拌しながら、常温で1時間、窒素置換した。その後、窒素流入下、攪拌しながら、62℃で4時間、次いで78℃で2時間保持して重合させ、樹脂溶液を得た。次いで、得られた樹脂溶液の入ったフラスコを室温まで冷却した。その後、該樹脂溶液に、放射線重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物(昭和電工社製、商品名「カレンズMOI」)28重量部、および、触媒(ジラウリン酸ジブチルスズIV)0.08重量部を添加し、空気雰囲気下、50℃で8時間攪拌し、ポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液に、ポリイソシアネート(三井化学社製、商品名「タケネート D-101A」)21.6重量部、および、光重合開始剤(IGM Resins B.V.社製、商品名「Omnirad TPO-L」)4.5重量部を添加、混合し、粘着剤溶液を作製した。
一方の面にコロナ処理を施した厚み50μmのPETフィルム(東レ社製、商品名「ルミラー S105」」)のコロナ処理面に、粘着剤溶液を塗布し、130℃で3分間、乾燥機で加熱させ、厚み30μmの粘着剤層を形成した。その後、PET剥離ライナー(三菱ケミカル社製、商品名「ダイアホイルMRF38」)の離型処理面と形成した粘着剤層とを、ハンドローラーで貼り合わせた。次いで、遮光した状態で、50℃に設定した乾燥機内で48時間放置後、乾燥機から取り出し、粘着シートを得た。
【0059】
[実施例2~6]
粘着剤溶液の組成を表1に記載のように変更した以外は実施例1と同様にして、粘着剤溶液を得た。得られた粘着剤溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0060】
(比較例1)
粘着剤溶液の組成を表1に記載のように変更した以外は実施例1と同様にして、粘着剤溶液を得た。得られた粘着剤溶液を用いて、実施例1と同様に粘着シートの作製を試みたが、粘着剤層を形成することができず、粘着シートを得られなかった。
【0061】
<評価>
実施例または比較例で得られた粘着シートを用いて以下の評価を行った。結果を表1に示す。
1.粘着力
得られた粘着シートを、幅20mm、長さ80mmの大きさに切断し、シリコンミラーウエハ(信越半導体株式会社製)のミラー面に、23℃の雰囲気下、ハンドローラーを1往復させて圧着し、23℃で30分放置した。その後、粘着シートを剥離するのに要する力を23℃、50%RH雰囲気下、180°剥離、引張速度300mm/分の条件で、測定し、UV前粘着力とした。
また、同様の方法でシリコンミラーウエハに粘着シートを圧着し、23℃で30分放置した。次いで、紫外線(UV)(積算光量:460mJ/cm2(365nm換算))を粘着シート面側から照射した。その後、粘着シートを剥離させるのに要する力を、23℃、50%RH雰囲気下、180°剥離、引張速度300mm/分の条件で測定し、UV後粘着力とした。
【0062】
【0063】
本発明の実施例の粘着シートは、UV照射前は被着体への高い粘着力を有し、UV照射後には糊残りなく容易に剥離することができた。比較例1の粘着剤溶液では凝集力が不十分であり、粘着シートを得ることができなかった。