(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122759
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】エンコーダ
(51)【国際特許分類】
G01D 5/04 20060101AFI20240902BHJP
G01D 5/14 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
G01D5/04 C
G01D5/14 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030479
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】小原 崇弘
(72)【発明者】
【氏名】藤村 研介
(72)【発明者】
【氏名】楊 偉紅
(72)【発明者】
【氏名】福永 二三佳
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA28
2F077AA43
2F077CC02
2F077DD05
2F077JJ01
2F077JJ07
2F077JJ23
2F077QQ17
(57)【要約】
【課題】部品点数を削減することが可能なエンコーダを提供する。
【解決手段】エンコーダ1は、回転軸130と、回転軸130の回転角度を検知する第1のセンサ141と、第1の数N1の内歯151itを有する固定された第1のギア151と、内歯151itよりも少ない第2の数N2の外歯152otを有し、回転軸130の回転に伴い回転する第2のギア152と、第2のギア152の回転角度を検知する第2のセンサ142と、算出部170とを備える。第1のギア151と第2のギア152とは偏心揺動型減速機であり、算出部170は、第2のセンサ142が検知した回転角度に基づいて、回転軸130が回転した回数Tmを算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸の回転角度を検知する第1のセンサと、
径方向における前記回転軸側に複数の第1の数の内歯を有する固定された第1のギアと、
前記径方向における前記回転軸側とは反対側に前記第1のギアの前記内歯よりも少ない複数の第2の数の外歯を有し、前記回転軸の回転に伴い回転する第2のギアと、
前記第2のギアの回転角度を検知する第2のセンサと、
算出部と
を備え、
前記第1のギアと前記第2のギアとは偏心揺動型減速機であり、
前記算出部は、前記第2のセンサが検知した前記回転角度に基づいて、前記回転軸が回転した回数を算出する、エンコーダ。
【請求項2】
前記回転軸は、前記第2のギアを揺動させるクランク部を含む、請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項3】
前記第1のギア及び前記第2のギアはサイクロイド減速機構または波動歯車機構を構成している、請求項2に記載のエンコーダ。
【請求項4】
前記外歯の一部が前記内歯の一部に噛み合う噛合位置は、前記回転軸の回転に伴い前記第1のギアの周方向に沿って順次移動し、
前記噛合位置が前記周方向に沿って一周する際、前記第2のギアは、前記第1の数と前記第2の数との歯数差分、前記周方向に沿って回転する、請求項1から3のいずれか1項に記載のエンコーダ。
【請求項5】
前記回転軸は中空の軸である、請求項1から3のいずれか1項に記載のエンコーダ。
【請求項6】
前記回転軸に固定されるリング状の第1のマグネットを備え、
前記第1のセンサは、前記第1のマグネットから生じる磁気の変化を検出する磁気センサである、請求項1から3のいずれか1項に記載のエンコーダ。
【請求項7】
前記回転軸の軸方向から見る場合に、前記第2のセンサは前記第2のギアに重なっている、請求項1から3のいずれか1項に記載のエンコーダ。
【請求項8】
前記第2のギアの前記軸方向における前記第2のセンサ側の面に固定されるリング状の第2のマグネットを備え、
前記第2のセンサは、前記第2のマグネットから生じる磁気の変化を検出する磁気センサである、請求項7に記載のエンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンコーダに関し、特に、回転軸の回転位置を検出するエンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなエンコーダとして、例えば下記特許文献1に記載されたエンコーダが知られている。この特許文献1に記載されたエンコーダは、主軸と、2つの副軸とを含んでいる。特許文献1に記載されたエンコーダでは、主軸及び2つの副軸のそれぞれにセンサが取り付けられている。主軸に取り付けられたセンサは、主軸の回転角度を検出する。2つの副軸に取り付けられた2つのセンサのそれぞれは、対応する副軸の回転角度を検出する。主軸の回転は、複数の平歯車や複数のウォームギアを介して減速されて2つの副軸のそれぞれに伝わる。したがって、2つの副軸のそれぞれに取り付けられたセンサは、主軸の回転に対して減速された副軸の回転角度を検出する。
【0003】
このような特許文献1に記載されたエンコーダによれば、主軸に取り付けられたセンサによって主軸の回転角度を検出できるとともに、主軸の回転に対して減速された副軸の回転角度を検出することにより、主軸(回転軸)が何回転したか(以下、「回転軸の回転回数」と記載する場合がある。)を検出することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載されたようなエンコーダにおいては、例えばギアや軸などの部品の点数をより削減したいとの要請がある。
【0006】
そこで、本発明は、部品点数を削減することが可能なエンコーダを提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエンコーダは、回転軸と、前記回転軸の回転角度を検知する第1のセンサと、径方向における前記回転軸側に複数の第1の数の内歯を有する固定された第1のギアと、前記径方向における前記回転軸側とは反対側に前記第1のギアの前記内歯よりも少ない複数の第2の数の外歯を有し、前記回転軸の回転に伴い回転する第2のギアと、前記第2のギアの回転角度を検知する第2のセンサと、算出部とを備える。このエンコーダにおいて、前記第1のギアと前記第2のギアとは偏心揺動型減速機であり、前記算出部は、前記第2のセンサが検知した前記回転角度に基づいて、前記回転軸が回転した回数を算出する。
【0008】
このようなエンコーダにおいて、以下の構成の少なくとも1つをさらに備えてもよい。
【0009】
前記回転軸は、前記第2のギアを揺動させるクランク部を含んでもよい。この場合において、前記第1のギア及び前記第2のギアはサイクロイド機構または波動歯車機構を構成してもよい。
【0010】
前記外歯の一部が前記内歯の一部に噛み合う噛合位置は、前記回転軸の回転に伴い前記第1のギアの周方向に沿って順次移動し、前記噛合位置が前記周方向に沿って一周する際、前記第2のギアは、前記第1の数と前記第2の数との歯数差分、前記周方向に沿って回転してもよい。
【0011】
前記回転軸は中空の軸であってもよい。
【0012】
前記回転軸に固定されるリング状の第1のマグネットを備えてもよい。この場合において、前記第1のセンサは、前記第1のマグネットから生じる磁気の変化を検出する磁気センサであってもよい。
【0013】
前記回転軸の軸方向から見る場合に、前記第2のセンサは前記第2のギアに重なっていてもよい。この場合において、エンコーダは、前記第2のギアの前記軸方向における前記第2のセンサ側の面に固定されるリング状の第2のマグネットを備えてもよく、前記第2のセンサは、前記第2のマグネットから生じる磁気の変化を検出する磁気センサであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態におけるエンコーダをケース及び基板を透視して示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すエンコーダの軸方向における断面図である。
【
図3】
図1に示すエンコーダの径方向における断面図であり、主軸がある回転位置にある場合の様子を示す図である。
【
図4】
図1に示すエンコーダの径方向における断面図であり、主軸が
図3とは異なる回転位置にある場合の様子を示す図である。
【
図5】本発明の第2実施形態におけるエンコーダをケース及び基板を透視して示す斜視図である。
【
図6】
図5に示すエンコーダの軸方向における断面図である。
【
図7】
図5に示すエンコーダを示す、
図6のVII-VII線に沿った断面図である。
【
図8】
図5に示すエンコーダを示す、
図6のVIII-VIII線に沿った断面図である。
【
図9】本発明の第3実施形態におけるエンコーダをケース及び基板を透視して示す斜視図である。
【
図10】
図9に示すエンコーダの軸方向における断面図である。
【
図11】
図9に示すエンコーダを示す、
図10のXI-XI線に沿った断面図である。
【
図12】
図9に示すエンコーダを示す、
図10のXII-XII線に沿った断面図である。
【
図13】本発明の第4実施形態におけるエンコーダをケース及び基板を透視して示す斜視図である。
【
図14】
図13に示すエンコーダの軸方向における断面図である。
【
図16】
図1に示すエンコーダの第1の変形例を概略的に示す軸方向における断面図である。
【
図17】
図16に示すエンコーダを概略的に示す径方向における断面図である。
【
図18】
図1に示すエンコーダの第2の変形例をケース及び基板を透視して示す斜視図である。
【
図19】
図18に示すエンコーダの軸方向における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るエンコーダを実施するための形態が添付図面とともに例示される。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、以下の実施形態から変更、改良することができる。また、上記添付図面では、理解を容易にするために各部材の寸法が誇張又は縮小して示されていたり、ハッチングが省略されて示されていたりする場合がある。
【0016】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係るエンコーダについて説明する。
【0017】
図1は本実施形態におけるエンコーダを示す斜視図、
図2はエンコーダの回転軸の軸方向(以下、単に「軸方向」と記載する。)に沿った、ある基準状態における
図1に示すエンコーダの断面図、
図3は上記基準状態における
図1に示すエンコーダの一部を示す径方向に沿った断面図である。なお、径方向とは、上記軸方向に垂直な方向である。
【0018】
図1から
図3に示すように、本実施形態に係るエンコーダ1は、ケーシング110と、基板120と、減速機構100と、回転軸130と、第1のセンサ141と、第2のセンサ142とを主な構成として備えている。なお、
図1では、ケーシング110及び基板120が透視して示されており、透視されたケーシング110及び基板120が、便宜上、破線で示されている。
【0019】
ケーシング110は、軸方向における長さが径方向における長さよりも短い略扁平直方体状の形状を有している。ケーシング110の径方向における中央には、ケーシング110を軸方向に貫通する孔110hが形成されている。この孔110hを規定するケーシング110の内周面は、回転軸130が嵌まり込むことが可能な形状に形成されている。ケーシング110は、軸方向における一方側の第1の部分111と、他方側の第2の部分112とからなる。本実施形態では、軸方向において、第1の部分111と第2の部分112との長さは概ね等しいが、これに限定されるものではない。第1の部分111及び第2の部分112は、軸方向に重ねられて互いに固定されている。第1の部分111には、コネクタ121が取り付けられている。
【0020】
第2の部分112は、段差状の内面112iを有する。すなわち、内面112iは、軸方向において第1の部分111側に位置する第1の内面112iuと、軸方向において第1の部分111側とは反対側に位置する第2の内面112idとを有する。軸方向から見て、内面112iu,112idは回転軸130の中心130cを中心とする同心円であり、第2の内面112idの直径は第1の内面112iuの直径よりも小さい。なお、本明細書では、径方向において回転軸の中心に近い側を「内」と、回転軸の中心から遠い側を「外」と称している。第2の内面112idには、その全周に亘って複数の第1の数N1の内歯151itが形成されている。すなわち、ケーシング110の第2の部分112は、径方向における回転軸130側に複数の内歯151itを有する第1のギア151として形成されている。このように、第1のギア151は、ケーシング110の一部であり、ケーシング110に対して固定されている。なお、第1のギア151をケーシング110に対して別体にして、ケーシング110に固定してもよい。
【0021】
基板120は、軸方向においてケーシング110の第1の部分111と第2の部分112の少なくともいずれかにおいてケーシング110に固定されている。基板120の径方向における概ね中央を回転軸130が貫通している。基板120の第2の部分112側の面には、2つのセンサ(第1のセンサ141,第2のセンサ142)が取り付けられている。本実施形態において、センサ141,142は回転軸130の中心130cに対して反対側の位置に配置されているが、センサ141,142の位置関係はこれに限定されるものではない。なお、後述するように、第1のセンサ141は第1のマグネット161から生じる磁気を検出し、第2のセンサ142は第2のマグネット162から生じる磁気を検出するため、それぞれのセンサは検出対象とするマグネットの磁気を検出しやすい位置に配置するとよい。基板120の第1の部分111側の面には、コネクタ121が接続されている。このコネクタ121に接続された端子を介して、外部からの電力がセンサ141,142や後述する算出部170に供給されるとともに、算出部170によって算出されたデータが外部に出力されてもよい。
【0022】
回転軸130は、ケーシング110の孔110hに嵌め込まれており、ケーシング110に対して回転可能にケーシング110に支持されている。本実施形態において、回転軸130は、軸本体131と、クランク部132とを含んでいる。軸本体131は、軸方向から見て回転軸130の中心130cを中心とする円形のリング状に形成されている。本実施形態において、軸本体131は円筒状、すなわち中空に形成されており、中心130cを中心とし軸方向に延在する内周面131iを有する。すなわち、本実施形態において、回転軸130は中空の軸である。なお、軸本体131の内周面131iに他の回転する軸(例えば、モータの主軸等)を例えば圧入により取り付けてもよい。このように、回転軸130に他の回転する軸を取り付けることで、本発明は他の回転体の回転量を検出するエンコーダとして機能する。
【0023】
クランク部132は、軸本体131の外周面に形成されている。なお、クランク部132を軸本体131と一体的に形成してもよいし、別体として形成した上で軸本体131に固定してもよい。軸方向において、クランク部132の少なくとも一部と、後述する第2のギア152の少なくとも一部とは、同じ位置(高さ)にある。
図3は、クランク部132の少なくとも一部と、第2のギア152の少なくとも一部とが位置する軸方向の部分における径方向に沿った断面図である。
図3に示すように、回転軸130の外周面のうちクランク部132が形成されている部分132of(以下、便宜上、「クランク形成面132of」と記載する。)に着目すると、クランク部132は、回転軸130の中心130c(すなわち、軸本体131の中心)に対して径方向において偏心した面である偏心部132aを含んでいる。偏心部132aは、中心130cからクランク形成面132ofまでの径方向における距離RLがクランク形成面132ofの他の部分と比べて長い(すなわち、距離RLが最大となる)部分(面)である。なお、回転軸130において、少なくとも第2のギア152と接する部分が偏心していればよい。
【0024】
軸方向におけるクランク形成面132ofの位置には、軸方向における位置が変化しないように第2のギア152が支持されている。本実施形態において、第2のギア152は平歯車である。第2のギア152の径方向における中央を、クランク形成面132ofの形状に概ね対応する形状の貫通孔が軸方向に沿って貫通している。第2のギア152のこの貫通孔にクランク部132が挿通されている。また、クランク部132の外周面には、リング状の第1のマグネット161が固定されている。すなわち、回転軸130には、リング状の第1のマグネット161が固定されている。
【0025】
本実施形態において、
図2に示すように、上述の第1のセンサ141は、径方向から見る場合に、回転軸130に固定された第1のマグネット161に重なっている。なお、第1のセンサ141は、径方向から見る場合に第1のマグネット161に重なっていなくてもよい。本実施形態において、この第1のセンサ141は、磁気センサとして構成されている。第1のセンサ141は、第1のマグネット161から生じる磁気が、第1のマグネット161が回転軸130の回転に伴って回転することによって変化することを検出し、この第1のマグネット161の磁気の変化を電気信号に変換して、例えば基板120上に設けられた算出部170に出力する。第1のセンサ141を磁気センサとして構成する場合、磁気センサとしては特に限定されないが、例えば、コイルを用いたセンサ、リードスイッチを用いたセンサ、ホール素子を用いたセンサ、及び磁気抵抗素子を用いたセンサなどを使用することができる。後述する他のセンサを磁気センサとして構成する場合も同様である。なお、第1のセンサ141は磁気センサに限定されるものではなく、第1のセンサ141を磁気センサ以外のセンサ、例えば光学センサで構成する場合には、回転体にスリット円板等を用いるため、第1のマグネット161は不要である。また、磁気抵抗素子を用いたセンサと磁性材料で形成された歯車を用いる場合、回転軸に設ける第1のマグネット161の代わりに、基板等の固定部にマグネットを配置することができる。算出部170は、例えばCPU(Central Processing Unit)で構成されてもよく、第1のセンサ141から出力される上記電気信号を取得し、回転軸130の回転角度θ
sensor1を算出する。すなわち、第1のセンサ141は、算出部170を介して回転軸130の回転角度θ
sensor1を検知する。
【0026】
クランク部132の偏心部132aは、第2のギア152の上記貫通孔を規定する内周面152ifに対して摺動可能に内周面152ifに接触している。なお、偏心部132aと第2のギア152の内周面152ifとの少なくとも一方にコーティングを施して、偏心部132aと内周面152ifとにおける耐摩耗性や摺動性を向上させてもよい。第2のギア152の外周面(すなわち、第2のギア152の径方向における回転軸130側とは反対側の面)には、その全周に亘って、上記第1の数N1よりも少ない複数の第2の数N2の外歯152otが形成されている。第2のギア152は、第1のギア151の内歯151itよりも内側に配置されており、全周に亘って第1のギア151の内歯151itに取り囲まれている。複数の外歯152otのそれぞれは、第1のギア151の上記複数の内歯151itのそれぞれに噛合可能である。
【0027】
回転軸130が中心130cを中心に回転すると、クランク部132の偏心部132aも回転軸130と一体となって中心130cを中心にして回転し、この偏心部132aの回転に伴って第2のギア152が揺動する。この第2のギア152の揺動によって、中心130cから偏心部132aを通って径方向に延びる直線SL上にある外歯152otが、直線SL上にある内歯151itに噛合する。なお、直線SLは、
図3において破線で示されている。以下、第2のギア152の外歯152otの一部が第1のギア151の内歯151itの一部に噛合する位置を噛合位置EPと記載する。噛合位置EPは、直線SL上にある。
【0028】
図4に示すように、
図3の状態から回転軸130が所定の角度だけ回転すると、すなわち、クランク部132の偏心部132aが
図3の状態から所定の角度だけ回転すると、噛合位置EPも同様の角度だけ第1のギア151の周方向に沿って移動する。このように、噛合位置EPは、回転軸130の回転に伴い第1のギア151の周方向に沿って順次移動していく。そして、回転軸130が1回転すると、噛合位置EPが第1のギア151の周方向に沿って一周する。ここで、上記のように、第1のギア151の内歯151itの第1の数N1は、第2のギア152の外歯152otの第2の数N2よりも多い。したがって、噛合位置EPが第1のギア151の周方向に沿って一周する際、すなわち、回転軸130が1回転する際、第2のギア152は、第1の数N1と第2の数N2との歯数差分、第1のギア151の周方向に沿って第1のギア151に対して回転する。したがって、回転軸130に対する第2のギア152の減速比Grは、以下の式(1)で表すことができる。
例えば、第1のギア151の歯数(第1の数N1)が101で、第2のギア152の歯数(第2の数N2)が100の場合、回転軸130に対する第2のギア152の減速比Grは100である。なお、第2のギア152の回転方向は、回転軸130の回転方向とは反対である。
【0029】
このように、第1のギア151及び第2のギア152は、偏心揺動型減速機として構成されている。さらに言えば、第1のギア151及び第2のギア152は、ハイポサイクロイド機構、より具体的には、インボリュート歯車型ハイポサイクロイド機構を構成する減速機構100として機能している。
【0030】
図1に示すように、第2のギア152の軸方向における基板120側の面には、リング状の第2のマグネット162が固定されている。
図2に示すように、上述の第2のセンサ142は、軸方向から見る場合に第2のギア152に重なっており、軸方向において、第2のギア152と第2のセンサ142との間に第2のマグネット162がある。ただし、第2のセンサ142と、第2のギア152と、第2のマグネット162との位置関係はこれに限定されるものではない。本実施形態において、第2のセンサ142は、磁気センサとして構成されている。第2のセンサ142は、第2のマグネット162から生じる磁気が、第2のマグネット162が第2のギア152の回転に伴って回転することによって変化することを検出し、この第2のマグネット162の磁気の変化を電気信号に変換して、例えば算出部170に出力する。なお、第2のセンサ142は磁気センサに限定されるものではなく、第2のセンサ142を磁気センサ以外のセンサ、例えば光学センサで構成する場合には、回転体にスリット円板等を用いるため、第2のマグネット162は不要である。また、磁気抵抗素子を用いたセンサと磁性材料で形成された歯車を用いる場合もマグネットは不要である。算出部170は、第2のセンサ142から出力される上記電気信号を取得し、第2のギア152の回転角度θ
sensor2を算出する。すなわち、本実施形態では、第2のセンサ142は、算出部170を介して第2のギア152の回転角度θ
sensor2を検知している。
【0031】
上記のように、第2のギア152は、回転軸130が1回転すると第1のギア151の周方向に沿って第1の数N1と第2の数N2との歯数差分回転するため、第2のギア152の減速比Grは上記式(1)で表すことができる。このため、回転軸130が1回転した際の第2のギア152の回転角度θ
gear2(1)は、以下の式(2)で表すことができる。
例えば、減速比Grが100の場合に、回転軸130が1回転(360°回転)すると、第2のギア152は3.6°だけ回転軸130とは反対方向に回転する。よって、第2のセンサ142が算出部170を介して検知した第2のギア152の回転角度θ
sensor2を上記式(2)で得られた値で割ることによって、回転軸130の回転回数Tm(回転軸が何回転したか)を算出することができる。すなわち、回転回数Tmは、以下の式(3)に基づいて算出することができる。
また、回転軸130の回転回数を考慮した回転軸130の回転角度θは、回転軸130の回転角度θ
sensor1を用いて、以下の式(4)で表すことができる。
なお、式(4)において、INTは小数点以下を切り捨てることを意味する。
【0032】
算出部170は、回転軸130の回転角度θsensor1のデータと、第2のギア152の回転角度θsensor2のデータと、上記式(1)~(4)とに基づいて、回転軸130の回転回数Tmと回転角度θとを算出する。このように、エンコーダ1によれば、回転軸130の回転角度とともに回転軸130の回転回数Tmも検出することができる。なお、エンコーダ1の回転回数の検出上限は、減速比Grに対応する。したがって、例えば減速比が100の場合、回転回数Tmの検出上限は100回転である。
【0033】
以上説明したように、本実施形態に係るエンコーダ1は、回転軸130と、回転軸130の回転角度θsensor1を検知する第1のセンサ141と、径方向における回転軸130側に複数の第1の数N1の内歯151itを有する固定された第1のギア151と、径方向における回転軸130側とは反対側に第1のギア151の内歯151itよりも少ない複数の第2の数N2の外歯152otを有し、回転軸130の回転に伴い回転する第2のギア152と、第2のギア152の回転角度θsensor2を検知する第2のセンサ142と、算出部170と、を備えている。そして、このエンコーダ1において、第1のギア151と第2のギア152とは偏心揺動型減速機であり、算出部170は、第2のセンサ142が検知した回転角度θsensor2に基づいて、回転軸が回転した回転回数Tmを算出する。
【0034】
検出可能な軸の回転回数を増やすためには大きな減速比が必要であり、概して、要求される減速比が大きくなる程、それに応じてギア数の増加量が大きくなる傾向がある。しかし、上記のような構成を有する本実施形態に係るエンコーダ1では、2つのギア(第1のギア151、第2のギア152)によって大きな減速比(例えば、減速比100)が得られる。このため、要求される減速比が大きい場合でも、ギア数の増加量を抑えることができる。また、本実施形態に係るエンコーダ1では、エンコーダ1を構成するための軸が回転軸130の1つのみで足りる。このように、本実施形態に係るエンコーダ1では、ギアや軸などの部品の数を削減することが可能であり、部品の数が削減されることにより、エンコーダの製造コストの削減、組み立ての容易化、及び小型化(小径化、薄型化)を実現することが可能になる。また、本実施形態では、第1のギア151及び第2のギア152をインボリュート歯車型ハイポサイクロイド機構として予めユニット化して組み立て工程に供することが可能であるため、組み立てる際の部品点数をさらに削減することが可能であり、より容易にエンコーダとして組み立てることができる。
【0035】
また、本実施形態では、ハイポサイクロイド機構が減速機構として用いられているため、エンコーダを大型化させることなく回転軸を中空化し易い。
【0036】
また、ハイポサイクロイド機構を用いることによって、上記のように、少ないギア数でより大きな減速比を実現することが可能であるため、回転軸の回転回数の検出上限を効果的に高めることが可能である。
【0037】
なお、本実施形態において、回転軸130の外周面とケーシング110の内周面との間及びクランク部132の外周面と第2のギア152の内周面との間の少なくとも一方にベアリングを配置してもよい。
【0038】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るエンコーダについて説明する。
【0039】
図5は本実施形態におけるエンコーダを示す斜視図、
図6は
図5に示すエンコーダのある基準状態における軸方向に沿った断面図、
図7は
図5に示すエンコーダを示す
図6のVII-VII線に沿った断面図、
図8は
図5に示すエンコーダを示す
図6のVIII-VIII線に沿った断面図である。
【0040】
図5から
図8に示すように、本実施形態に係るエンコーダ2は、ケーシング210と、基板220と、減速機構200と、回転軸230と、第1のセンサ241と、第2のセンサ242とを主な構成として備えている。なお、
図5では、ケーシング210及び基板220が透視して示されており、透視されたケーシング210及び基板220が、便宜上、破線で示されている。
【0041】
ケーシング210は、軸方向における長さが径方向における長さよりも短い略扁平直方体状の形状を有している。ケーシング210の径方向における中央には、ケーシング210を軸方向に貫通する孔210hが形成されている。この孔210hを規定するケーシング210の内周面は、回転軸230が嵌まり込むことが可能な形状に形成されている。ケーシング210は、軸方向における一方側にある第1の部分211と、軸方向における他方側にある第2の部分212とからなる。本実施形態では、第1の部分211の軸方向における長さは、第2の部分212の軸方向における長さよりも短いが、これに限定されるものではない。第1の部分211及び第2の部分212は、軸方向に重ねられて互いに固定されている。第2の部分212には、コネクタ221が取り付けられている。
【0042】
第2の部分212は、段差状の内面212iを有する。内面212iは、軸方向において第1の部分211側に位置する第1の内面212iuと、軸方向において第1の部分211側とは反対側に位置する第2の内面212idと、第1の内面212iuと第2の内面212idとを連結する連結面212isとを有する。連結面212isは径方向に平行な平面である。軸方向から見て、内面212iu,212idは回転軸230の中心230cを中心とする同心円であり、第2の内面212idの直径は第1の内面212iuの直径よりも小さい。第2の内面212idには、その全周に亘って複数の第1の数N1の内歯251itが形成されている。すなわち、ケーシング210の第2の部分212は、径方向における回転軸230側に複数の内歯251itを有する第1のギア251として形成されている。このように、第1のギア251は、ケーシング210の一部であり、ケーシング210に対して固定されている。なお、第1のギア251をケーシング210に対して別体にして、ケーシング210に固定してもよい。
【0043】
基板220は、軸方向においてケーシング210の第1の部分211と第2の部分212との少なくともいずれかにおいてケーシング210に固定されている。基板220の径方向における概ね中央を回転軸230が貫通している。基板220の第2の部分212側の面には、2つのセンサ(第1のセンサ241,第2のセンサ242)が取り付けられている。本実施形態において、センサ241,242は回転軸230の中心230cに対して反対側の位置に配置されているが、センサ241,242の位置関係はこれに限定されるものではない。なお、後述するように、第1のセンサ241は第1のマグネット261から生じる磁気を検出し、第2のセンサ242は第2のマグネット262から生じる磁気を検出するため、それぞれのセンサは検出対象とするマグネットの磁気を検出しやすい位置に配置するとよい。また、基板220の第2の部分212側の面には、コネクタ221が接続されている。このコネクタ221に接続された端子を介して、外部からの電力がセンサ241,242や後述する算出部270に供給されるとともに、算出部270によって算出されたデータが外部に出力されてもよい。
【0044】
回転軸230は、ケーシング210の孔210hに嵌め込まれており、ケーシング210に対して回転可能にケーシング210に支持されている。本実施形態において、回転軸230は、軸本体231と、クランク部232とを含んでいる。軸本体231は、軸方向から見て回転軸230の中心230cを中心とする円形のリング状に形成されている。本実施形態において、軸本体231は円筒状、すなわち中空に形成されており、中心230cを中心とし軸方向に延在する内周面231iを有する。すなわち、本実施形態において、回転軸230は中空の軸である。なお、軸本体231の内周面231iに他の回転する軸(例えば、モータの主軸等)を例えば圧入により取り付けてもよい。このように、回転軸230に他の回転する軸を取り付けることで、本発明は他の回転体の回転量を検出するエンコーダとして機能する。
【0045】
クランク部232は、軸本体231の外周面に形成されている。なお、クランク部232を軸本体231と一体的に形成してもよいし、別体として形成した上で軸本体231に固定してもよい。軸方向において、クランク部232の少なくとも一部と後述する第2のギア252の少なくとも一部とは同じ位置(高さ)にあり、クランク部232の少なくとも一部と後述する第3のギア253の少なくとも一部とは同じ位置(高さ)にある。
図7は、クランク部232の少なくとも一部と、第2のギア252の少なくとも一部とが位置する軸方向の部分における径方向に沿った断面図である。
図8は、クランク部232の少なくとも一部と、第3のギア253の少なくとも一部とが位置する軸方向の部分における径方向に沿った断面図である。
図7及び
図8に示すように、回転軸230の外周面のうちクランク部232が形成されている部分232of(以下、便宜上、「クランク形成面232of」と記載する。)に着目すると、クランク部232は、回転軸230の中心230c(すなわち、軸本体231の中心)に対して径方向において偏心した面である偏心部232aを含んでいる。偏心部232aは、中心230cからクランク形成面232ofまでの径方向における距離RLがクランク形成面232ofの他の部分と比べて長い(すなわち、距離RLが最大となる)部分(面)である。なお、回転軸230において、少なくとも第2のギア252及び第3のギア253と接する部分が偏心していればよい。
【0046】
軸方向におけるクランク形成面232ofの位置には、クランク部232の軸方向における位置が変化しないように第2のギア252及び第3のギア253が支持されている。本実施形態において、第2のギア252及び第3のギア253は、一体的に形成された平歯車である。なお、便宜上、第2のギア252及び第3のギア253を総称して「ギア252,253」と記載する場合がある。第3のギア253は、軸方向における第2のギア252の一方側で第2のギア252と一体に形成されており、第2のギア252に対して軸方向における基板220側にある。第2のギア252の外周面は、径方向において、ケーシング210の第2の部分212の内面212idに対向している。すなわち、第2のギア252の外周面は、径方向において、第1のギア251の内歯251itに対向している。第2のギア252の外周面には、第2の数N2の外歯252otが形成されている。一方、第3のギア253の外周面は、径方向において、後述する第4のギア254を介してケーシング210の第2の部分212の内面212iuに対向している。第3のギア253の外周面には、第3の数N3の外歯253otが形成されている。ギア252,253の径方向における中央を、クランク部232のクランク形成面232ofの形状に概ね対応する形状の貫通孔が軸方向に沿って貫通している。この貫通孔にクランク部232が挿通されている。また、クランク部232の外周面には、リング状の第1のマグネット261が固定されている。すなわち、回転軸230にはリング状の第1のマグネット261が固定されている。
【0047】
本実施形態において、上述の第1のセンサ241は、磁気センサとして構成されている。第1のセンサ241は、第1のマグネット261から生じる磁気が、第1のマグネット261が回転軸230の回転に伴って回転することによって変化することを検出し、この第1のマグネット261の磁気の変化を電気信号に変換して、例えば基板220上に設けられた算出部270に出力する。なお、第1のセンサ241は磁気センサに限定されるものではなく、第1のセンサ241を磁気センサ以外のセンサ、例えば光学センサで構成する場合には、回転体にスリット円板等を用いるため、第1のマグネット261は不要である。また、磁気抵抗素子を用いたセンサと磁性材料で形成された歯車を用いる場合、回転軸230に設ける第1のマグネット261の代わりに、基板等の固定部にマグネットを配置することができる。算出部270は、第1のセンサ241から出力される上記電気信号を取得し、回転軸230の回転角度θsensor1を算出する。すなわち、第1のセンサ241は、算出部270を介して回転軸230の回転角度θsensor1を検知する。
【0048】
クランク部232の偏心部232aは、ギア252,253の上記貫通孔を規定する内周面252if,253if(第2のギア252の内周面252if、第3のギア253の内周面253if)に対して摺動可能に内周面252if,253ifに接触している。なお、偏心部232aとギア252,253の内周面252if,253ifとの少なくとも一方にコーティングを施して、偏心部232aと内周面252if,253ifとにおける耐摩耗性や摺動性を向上させてもよい。
【0049】
図7に示すように、第2のギア252の外周面(すなわち、第2のギア252の径方向における回転軸230側とは反対側の面)には、その全周に亘って、上記第1の数N1よりも少ない複数の第2の数N2の外歯252otが形成されている。第2のギア252は、第1のギア251の内歯251itよりも内側に配置されており、全周に亘って第1のギア251の内歯251itに取り囲まれている。複数の外歯252otのそれぞれは、第1のギア251の複数の内歯251itのそれぞれに噛合可能である。
【0050】
回転軸230が中心230cを中心に回転すると、クランク部232の偏心部232aも回転軸230と一体となって中心230cを中心にして回転し、この偏心部232aの回転に伴ってギア252,253が揺動する。このギア252,253の揺動によって、中心230cから偏心部232aを通って径方向に延びる直線SL上にある第2のギア252の外歯252otが、直線SL上にある第1のギア251の内歯251itに噛合する。なお、直線SLは、
図7及び
図8において破線で示されている。以下、第2のギア252の外歯252otの一部が第1のギア251の内歯251itの一部に噛合する位置を第1の噛合位置EP1と記載する。第1の噛合位置EP1は、直線SL上にある。
【0051】
図7の状態から回転軸230が所定の角度だけ回転すると、すなわち、クランク部232の偏心部232aが
図7の状態から所定の角度だけ回転すると、第1の噛合位置EP1も同様の角度だけ第1のギア251の周方向に沿って移動する。このように、第1の噛合位置EP1は、回転軸230の回転に伴い第1のギア251の周方向に沿って順次移動していく。そして、回転軸230が1回転すると、第1の噛合位置EP1が第1のギア251の周方向に沿って一周する。ここで、上記のように、第1のギア251の内歯251itの第1の数N1は、第2のギア252の外歯252otの第2の数N2よりも多い。したがって、第1の噛合位置EP1が第1のギア251の周方向に沿って一周する際、すなわち、回転軸230が1回転する際、第2のギア252(すなわち、ギア252,253)は、第1の数N1と第2の数N2との歯数差分、第1のギア251の周方向に沿って第1のギア251に対して回転する。したがって、回転軸230に対する第2のギア252の減速比Gr2は、以下の式(5)で表すことができる。
例えば、第1のギア251の歯数N1が101で、第2のギア252の歯数N2が100の場合、回転軸230に対する第2のギア252の減速比Grは100である。なお、第2のギア252の回転方向は、回転軸230の回転方向とは反対である。
【0052】
図6に示すように、ケーシング210の第2の部分212の連結面212isには、平歯車として形成された第4のギア254が載置されている。第4のギア254は、リング状に形成されており、回転軸230の中心230cが中心になるように配置されている。また、第4のギア254は、軸方向における位置が変化しないように、不図示の構成によりケーシング210に支持されている。第4のギア254の径方向における中央には貫通孔254hが形成されており、この貫通孔254hを回転軸230が貫通するとともに、貫通孔254hよりも内側に上述の第1のマグネット261が配置されている。第4のギア254の内周面は、内側から外側に向かって切り欠かれている。この切り欠きによって、第4のギア254は、リング状の外周縁部254Aと、外周縁部254Aの軸方向における基板220側の部分から内側に延在する円板状の円板部254Bとを含む。外周縁部254Aの内周面には、第3のギア253の外歯253otの第3の数N3よりも多い第4の数N4の内歯254itが形成されている。すなわち、第4のギア254は、径方向における回転軸230側に第3のギア253の外歯253otよりも多い複数の第4の数N4の内歯254itを有する。径方向において、第4のギア254の内歯254itは、第3のギア253の外歯253otに対向している。第3のギア253の外歯253otは、その全周に亘って、第4のギア254の内歯254itに取り囲まれている。第4のギア254の円板部254Bの軸方向における基板220側の面には、リング状の第2のマグネット262が固定されている。
【0053】
図8に示すように、第4のギア254の外周面254ofは、ケーシング210の第2の部分212の内面212iuに対して摺動可能に内面212iuに接している。なお、第4のギア254の外周面254ofとケーシング210の内面212iuとの少なくとも一方にコーティングを施して、第4のギア254とケーシング210とにおける耐摩耗性や摺動性を向上させてもよい。第3のギア253の複数の外歯253otのそれぞれは、第4のギア254の複数の内歯254itのそれぞれに噛合可能である。本実施形態では、直線SL上にある第3のギア253の外歯253otが、直線SL上にある第4のギア254の内歯254itに噛合する。以下、第3のギア253の外歯253otの一部が第4のギア254の内歯254itの一部に噛合する位置を第2の噛合位置EP2と記載する。第2の噛合位置EP2は、直線SL上にある。
【0054】
回転軸230が1回転することによって、ギア252,253が第1の数N1と第2の数N2との歯数差分、第1のギア251の周方向に沿って第1のギア251に対して回転すると、これに伴い、第2の噛合位置EL2も第1の数N1と第2の数N2との歯数差分の角度だけ
図8の状態から第4のギア254の周方向に沿って移動する。このように、第2の噛合位置EP2は、ギア252,253の回転に伴い第4のギア254の周方向に沿って順次移動していく。そして、ギア252,253が第1のギア251の周方向に沿って1回転すると、第2の噛合位置EP2が第4のギア254の周方向に沿って一周する。ここで、上記のように、第4のギア254の内歯254itの第4の数N4は、第3のギア253の外歯253otの第3の数N3よりも多い。したがって、第2の噛合位置EP2が第4のギア254の周方向に沿って一周する際、すなわち、ギア252,253が第1のギア251の周方向に沿って1回転する際、第4のギア254は、第4の数N4と第3の数N3との歯数差分、第4のギア254の周方向に沿ってケーシング210に対して回転する。したがって、ギア252,253に対する第4のギア254の減速比Gr4は、以下の式(6)で表すことができる。
例えば、第4のギア254の歯数(第4の数N4)が102で、第3のギア253の歯数(第3の数N3)が101の場合、ギア252,253に対する第4のギア254の減速比Gr4は101である。なお、第4のギア254の回転方向は、ギア252,253の回転方向とは反対であり、回転軸230の回転方向と同方向である。
【0055】
さらに言えば、回転軸230に対する第4のギア254の減速比Grは、式(5)によって求められるGr2と式(6)によって求められるGr4とを乗ずることによって求めることができる。したがって、回転軸230に対するギア252,253の減速比Gr2が例えば100で、ギア252,253に対する第4のギア254の減速比Gr4が例えば101の場合、減速比Grは、10100であり、第1の実施形態に係るエンコーダ1に比べてさらに大きな減速比が実現される。
【0056】
このように、第1のギア251と第2のギア252との第1のペア及び第3のギア253と第4のギア254との第2のペアのそれぞれは、偏心揺動型減速機であり、さらに言えば、第1のギア251、ギア252,253、及び第4のギア254は、インボリュート歯車型ハイポサイクロイド機構を構成する減速機構200として機能している。
【0057】
図6に示すように、上述の第2のセンサ242は、軸方向から見る場合に第4のギア254に重なっており、軸方向において、第4のギア254と第2のセンサ242との間に第2のマグネット262がある。ただし、第2のセンサ242、第4のギア254、及び第2のマグネット262との位置関係はこれに限定されるものではない。本実施形態において、第2のセンサ242は、磁気センサとして構成されている。第2のセンサ242は、第2のマグネット262から生じる磁気が、第2のマグネット262が第4のギア254の回転に伴って回転することによって変化することを検出し、この第2のマグネット262の磁気の変化を電気信号に変換して、例えば算出部270に出力する。なお、第2のセンサ242は磁気センサに限定されるものではなく、第2のセンサ242を磁気センサ以外のセンサ、例えば光学センサで構成する場合には、回転体にスリット円板等を用いるため、第2のマグネット262は不要である。また、磁気抵抗素子を用いたセンサと磁性材料で形成された歯車を用いる場合もマグネットは不要である。算出部270は、第2のセンサ242から出力される上記電気信号を取得し、第4のギア254の回転角度θ
sensor2を算出する。すなわち、本実施形態では、第2のセンサ242は、算出部270を介して第4のギア254の回転角度θ
sensor2を検知する。
【0058】
上記のように、回転軸230に対する第4のギア254の減速比Grは、ギア252,253の回転軸230に対する減速比Gr2と第4のギア254のギア252,253に対する減速比Gr4とを乗ずることによって求めることができる。したがって、回転軸230が1回転した際の第4のギア254の回転角度θ
gear4(1)は、以下の式(7)で表すことができる。
よって、第2のセンサ242が算出部270を介して検知した第4のギア254の回転角度θ
sensor2を上記式(7)から得られた値で割ることによって、回転軸230の回転回数Tmを算出することができる。すなわち、回転回数Tmは、以下の式(8)に基づいて算出することができる。
また、回転軸230の回転回数を考慮した回転軸230の回転角度θは、式(8)によって求めたTmを上述の式(4)に代入することによって求めることができる。
【0059】
算出部270は、回転軸230の回転角度θsensor1のデータと、第4のギア254の回転角度θsensor2のデータと、上記(4),(5)~(8)の式とに基づいて、回転軸230の回転回数Tm及び回転角度θを算出する。このように、エンコーダ2によれば、回転軸230の回転角度とともに回転軸230の回転回数Tmも検出することができる。なお、エンコーダ2の回転回数の検出上限は、減速比Gr2と減速比Gr4とを乗じた値に対応する。したがって、例えばGr2が100でGr4が101の場合、回転回数Tmの検出上限は10100回転である。
【0060】
以上説明したように、本実施形態に係るエンコーダ2は、回転軸230と、回転軸230の回転角度θsensor1を検知する第1のセンサ241と、径方向における回転軸230側に複数の第1の数N1の内歯251itを有する固定された第1のギア251と、径方向における回転軸230側とは反対側に第1のギア251の内歯251itよりも少ない複数の第2の数N2の外歯252otを有し、回転軸230の回転に伴い回転する第2のギア252と、回転軸230の軸方向における第2のギア252の一方側で第2のギア252と一体に形成され、径方向における回転軸230側とは反対側に複数の第3の数N3の外歯253otを有する第3のギア253と、径方向における回転軸230側に第3のギア253の外歯253otよりも多い複数の第4の数N4の内歯254itを有し、第3のギア253の回転に伴い回転する第4のギア254と、第4のギア254の回転角度θsensor2を検知する第2のセンサ242と、算出部270とを備える。このエンコーダ2において、第1のギア251と第2のギア252との第1のペア及び第3のギア253と第4のギア254との第2のペアのそれぞれは、偏心揺動型減速機であり、算出部270は、第2のセンサ242が検知した回転角度θsensor2に基づいて、回転軸230が回転した回数Tmを算出する。
【0061】
上記のような構成を有する本実施形態に係るエンコーダ2では、4つのギア(第1のギア251、第2のギア252、第3のギア253、第4のギア254)によって大きな減速比(例えば、減速比100100)が得られる。このため、要求される減速比が大きい場合でも、ギア数の増加量を抑えることができる。特に、エンコーダ2の減速機構200によれば、第1のギア251と第2のギア252との第1のペアによる減速比と、第3のギア253と第4のギア254との第2のペアによる減速比とを乗じた減速比を得られるため、例えば第1実施形態に係るエンコーダ1に比べてより大きな減速比を実現することができ、その結果、例えば第1実施形態に係るエンコーダ1に比べて、回転軸の回転回数の検出上限を高めることができる(式(8)参照)。また、エンコーダ2では、第2のギア252と第3のギア253とが一体のギアとして形成されているため、上記のような大きな減速比及び大きな検出上限を実現できるにも関わらず、必要となるギアの数は実質的に3つで足りる。さらに、エンコーダ2では、エンコーダ2を構成するための軸が回転軸230の1つのみで足りる。このように、本実施形態に係るエンコーダ2では、ギアや軸などの部品の数を削減することが可能であり、部品の数が削減されることにより、エンコーダの製造コストの削減、組み立ての容易化、および小型化(小径化、薄型化)を実現することが可能になる。また、本実施形態では、第1のギア251、第2のギア252、第3のギア253、及び第4のギア254をインボリュート歯車型ハイポサイクロイド機構として予めユニット化して組み立て工程に供することが可能であるため、組み立てる際の部品点数をさらに削減することが可能であり、より容易にエンコーダとして組み立てることができる。
【0062】
また、本実施形態では、ハイポサイクロイド機構が減速機構として用いられているため、エンコーダを大型化させることなく回転軸を中空化し易い。
【0063】
また、本実施形態では、ハイポサイクロイド機構を用いることによって、上記のように、少ないギア数でより大きな減速比を実現することが可能であるため、回転軸の回転回数の検出上限を効果的に高めることが可能である。
【0064】
なお、本実施形態において、回転軸230の外周面とケーシング210の内周面との間及びクランク部232の外周面とギア252,253の内周面との間の少なくとも一方にベアリングを配置してもよい。
【0065】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係るエンコーダについて説明する。
【0066】
図9は本実施形態におけるエンコーダを示す斜視図、
図10はある基準状態における
図9に示す軸方向に沿った断面図、
図11は
図9に示すエンコーダを示す
図10のXI-XIに沿った断面図、
図12は
図9に示すエンコーダを示す
図10のXII-XII線に沿った断面図である。
【0067】
図9から
図12に示すように、本実施形態に係るエンコーダ3は、ケーシング310と、基板320と、減速機構300と、回転軸330と、第1のセンサ341と、第2のセンサ342と、第3のセンサ343とを主な構成として備えている。減速機構300は、2つのインボリュート歯車型ハイポサイクロイド機構が軸方向において並んだ構成を有している。なお、
図9では、ケーシング310及び基板320が透視して示されており、透視されたケーシング310及び基板320が、便宜上、破線で示されている。
【0068】
ケーシング310は、軸方向における長さが径方向における長さよりも短い略扁平直方体状の形状を有している。ケーシング310の径方向における中央には、ケーシング310を軸方向に貫通する孔310hが形成されている。この孔310hを規定するケーシング310の内周面は、回転軸330が嵌まり込むことが可能な形状に形成されている。ケーシング310は、軸方向における一方側の第1の部分311と、他方側の第2の部分312とからなる。本実施形態では、軸方向において、第1の部分311と第2の部分312との長さは概ね等しいが、これに限定されるものではない。第1の部分311及び第2の部分312は、軸方向に重ねられて互いに固定されている。第1の部分311には、コネクタ321が取り付けられている。
【0069】
ケーシング310の第1の部分311は、段差状の内面311iを有する。内面311iは、軸方向において第2の部分312側に位置する第1の内面311idと、軸方向において第2の部分312側とは反対側に位置する第2の内面311iuとを有する。軸方向から見て、内面311id,311iuは回転軸330の中心330cを中心とする同心円であり、第1の内面311idの直径は第2の内面311iuの直径よりも大きい。第2の内面311iuには、その全周に亘って複数の第1の数N1の内歯351itが形成されている。すなわち、ケーシング310の第1の部分311は、径方向における回転軸330側に複数の内歯351itを有する第1のギア351として形成されている。このように、第1のギア351は、ケーシング310の一部であり、ケーシング310に対して固定されている。なお、第1のギア351をケーシング310に対して別体にして、ケーシング310に固定してもよい。
【0070】
ケーシング310の第2の部分312は、段差状の内面312iを有する。内面312iは、軸方向において第1の部分311側に位置する第1の内面312iuと、軸方向において第1の部分311側とは反対側に位置する第2の内面312idとを有する。軸方向から見て、内面312iu,312idは回転軸330の中心330cを中心とする同心円であり、第1の内面312iuの直径は第2の内面312idの直径よりも大きい。また、本実施形態では、第2の部分312の第1の内面312iuの直径と、第1の部分311の第1の内面311idの直径とは概ね等しく、また、内面312iu,311idは軸方向において基板320を挟んで隣接している。また、本実施形態では、第2の部分312の第2の内面312idの直径は、第1の部分311の第2の内面311iuの直径よりも小さい。第2の部分312の第2の内面312idには、その全周に亘って複数の第3の数N3の内歯353itが形成されている。すなわち、ケーシング310の第2の部分312は、径方向における回転軸330側に複数の内歯353itを有する第3のギア353として形成されている。このように、第3のギア353は、ケーシング310の一部であり、ケーシング310に対して固定されている。なお、第3のギア353をケーシング310に対して別体にして、ケーシング310に固定してもよい。
【0071】
基板320は、軸方向においてケーシング310の第1の部分311と第2の部分312との少なくともいずれかにおいてケーシング310に固定されている。基板320の径方向における概ね中央を回転軸330が貫通している。基板320の第1の部分311側の面には、1つのセンサ(第2のセンサ342)が取り付けられている。一方、基板320の第2の部分312側の面には、2つのセンサ(第1のセンサ341、第3のセンサ343)が取り付けられている。本実施形態において、センサ341,343は回転軸330の中心330cに対して反対側の位置に配置されているが、センサ341,343の位置関係はこれに限定されるものではない。なお、後述するように、第1のセンサ341は第1のマグネット361から生じる磁気を検出し、第3のセンサ343は第3のマグネット363から生じる磁気を検出するため、それぞれのセンサは検出対象とするマグネットの磁気を検出しやすい位置に配置するとよい。また、基板320の第1の部分311側の面には、コネクタ321が接続されている。このコネクタ321に接続された端子を介して、外部からの電力がセンサ341,342,343や後述する算出部370に供給されるとともに、算出部370によって算出されたデータが外部に出力されてもよい。
【0072】
回転軸330は、ケーシング310の孔310hに嵌め込まれており、ケーシング310に対して回転可能にケーシング310に支持されている。本実施形態において、回転軸330は、軸本体331と、クランク部332とを含んでいる。軸本体331は、軸方向から見て回転軸330の中心330cを中心とする円形のリング状に形成されている。本実施形態において、軸本体331は円筒状、すなわち中空に形成されており、中心330cを中心とし軸方向に延在する内周面331iを有する。すなわち、本実施形態において、回転軸330は中空の軸である。なお、軸本体331の内周面331iに他の回転する軸(例えば、モータの主軸等)を例えば圧入により取り付けてもよい。このように、回転軸330に他の回転する軸を取り付けることで、本発明は他の回転体の回転量を検出するエンコーダとして機能する。
【0073】
クランク部332は、軸本体331の外周面に形成されている。なお、クランク部332を軸本体331と一体的に形成してもよいし、別体として形成した上で軸本体331に固定してもよい。軸方向において、クランク部332の少なくとも一部と後述する第2のギア352の少なくとも一部とは同じ位置(高さ)にあり、クランク部332の少なくとも一部と後述する第4のギア354の少なくとも一部とは同じ位置(高さ)にある。
図11は、クランク部332の少なくとも一部と、第2のギア352の少なくとも一部とが位置する軸方向の部分における径方向に沿った断面図である。
図12は、クランク部332の少なくとも一部と、第4のギア354の少なくとも一部とが位置する軸方向の部分における径方向に沿った断面図である。
図11及び
図12に示すように、回転軸330の外周面のうちクランク部332が形成されている部分332of(以下、便宜上、「クランク形成面332of」と記載する。)に着目すると、クランク部332は、回転軸330の中心330c(すなわち、軸本体331の中心)に対して径方向において偏心した面である偏心部332aを含んでいる。本実施形態では、
図10に示すように、クランク形成面232ofは、軸方向において離間した2つの偏心部332aを有している。2つの偏心部332aのそれぞれは、中心330cからクランク形成面332ofまでの径方向における距離RLがクランク形成面332ofの他の部分と比べて長い(すなわち、距離RLが最大となる)部分(面)である。なお、回転軸330において、少なくとも第2のギア352及び第4のギア354と接する部分が偏心していればよい。
【0074】
軸方向におけるクランク形成面332ofの位置には、軸方向における位置が変化しないように第2のギア352及び第4のギア354が支持されている。本実施形態において、第2のギア352及び第4のギア354はそれぞれ平歯車である。第2のギア352は、基板320に対して軸方向における第1のギア351側にあり、第4のギア354は、基板320に対して軸方向における第3のギア353側にある。すなわち、第2のギア352及び第4のギア354は互いに分離しており、別体として形成されている。第2のギア352及び第4のギア354のそれぞれにおいて、径方向における中央を、クランク部332のクランク形成面332ofの形状に概ね対応する形状の貫通孔が軸方向に沿って貫通している。第2のギア352の貫通孔及び第4のギア354の貫通孔のそれぞれにクランク部332が挿通されている。また、クランク部332の外周面には、リング状の第1のマグネット361が固定されている。すなわち、回転軸330には、リング状の第1のマグネット361が固定されている。この第1のマグネット361は、軸方向において、2つの偏心部332aの間にあり、第2のギア352と第4のギア354との間にある。
【0075】
本実施形態において、上述の第1のセンサ341は、磁気センサとして構成されている。第1のセンサ341は、第1のマグネット361から生じる磁気が、第1のマグネット361が回転軸330の回転に伴って回転することによって変化することを検出し、この第1のマグネット361の磁気の変化を電気信号に変換して、例えば基板320上に設けられた算出部370に出力する。なお、第1のセンサ341は磁気センサに限定されるものではなく、第1のセンサ341を磁気センサ以外のセンサ、例えば光学センサで構成する場合には、回転体にスリット円板等を用いるため、第1のマグネット361は不要である。また、磁気抵抗素子を用いたセンサと磁性材料で形成された歯車を用いる場合、回転軸330に設ける第1のマグネット361の代わりに、基板等の固定部にマグネットを配置することができる。算出部370は、第1のセンサ341から出力される上記電気信号を取得し、回転軸330の回転角度θsensor1を算出する。すなわち、第1のセンサ341は、算出部370を介して回転軸330の回転角度θsensor1を検知する。
【0076】
クランク部332の偏心部332aは、第2のギア352の上記貫通孔を規定する内周面352ifに対して摺動可能に内周面352ifに接触している。なお、偏心部332aと第2のギア352の内周面352ifとの少なくとも一方にコーティングを施して、偏心部332aと内周面352ifとにおける耐摩耗性や摺動性を向上させてもよい。
図11に示すように、第2のギア352の外周面(すなわち、第2のギア352の径方向における回転軸330側とは反対側の面)には、その全周に亘って、上記第1の数N1よりも少ない複数の第2の数N2の外歯352otが形成されている。第2のギア352は、第1のギア351の内歯351itよりも内側に配置されており、全周に亘って第1のギア351の内歯351itに取り囲まれている。複数の外歯352otのそれぞれは、第1のギア351の複数の内歯351itのそれぞれに噛合可能である。
【0077】
回転軸330が中心330cを中心に回転すると、クランク部332の偏心部332aも回転軸330と一体となって中心330cを中心にして回転し、この偏心部332aの回転に伴って第2のギア352が揺動する。この第2のギア352の揺動によって、中心330cから偏心部332aを通って径方向に延びる直線SL上にある外歯352otが、直線SL上にある内歯351itに噛合する。なお、直線SLは、
図11及び
図12において破線で示されている。以下、第2のギア352の外歯352otの一部が第1のギア351の内歯351itの一部に噛合する位置を第1の噛合位置EP1と記載する。第1の噛合位置EP1は、直線SL上にある。
【0078】
図11の状態から回転軸330が所定の角度だけ回転すると、すなわち、クランク部332の偏心部332aが
図11の状態から所定の角度だけ回転すると、第1の噛合位置EP1も同様の角度だけ第1のギア151の周方向に沿って移動する。このように、第1の噛合位置EP1は、回転軸330の回転に伴い第1のギア351の周方向に沿って順次移動していく。そして、回転軸330が1回転すると、第1の噛合位置EP1が第1のギア351の周方向に沿って一周する。ここで、上記のように、第1のギア351の内歯351itの第1の数N1は、第2のギア352の外歯352otの第2の数N2よりも多い。したがって、第1の噛合位置EP1が第1のギア351の周方向に沿って一周する際、すなわち、回転軸330が1回転する際、第2のギア352は、第1の数N1と第2の数N2との歯数差分、第1のギア351の周方向に沿って第1のギア351に対して回転する。したがって、回転軸330に対する第2のギア352の減速比Gr2は、下記式(9)で表すことができる。
なお、第2のギア352の回転方向は、回転軸330の回転方向とは反対である。
【0079】
このように、第1のギア351と第2のギア352との第1のペアは、偏心揺動型減速機として構成されており、さらに言えば、インボリュート歯車型ハイポサイクロイド機構を構成している。
【0080】
クランク部332の偏心部332aは、第4のギア354の上記貫通孔を規定する内周面354ifに対して摺動可能に内周面354ifに接触している。なお、偏心部332aと第4のギア354の内周面354ifとの少なくとも一方にコーティングを施して、偏心部332aと内周面354ifとにおける耐摩耗性や摺動性を向上させてもよい。
図12に示すように、第4のギア354の外周面(すなわち、第4のギア354の径方向における回転軸330側とは反対側の面)には、その全周に亘って、上記第3の数N3よりも少ない複数の第4の数N4の外歯354otが形成されている。第4のギア354は、第3のギア353の内歯353itよりも内側に配置されており、全周に亘って第3のギア353の内歯353itに取り囲まれている。複数の外歯354otのそれぞれは、第3のギア353の上記複数の内歯353itのそれぞれに噛合可能である。
【0081】
クランク部332の偏心部332aが上記のように回転すると、第4のギア354は、この偏心部332aの回転に伴って揺動する。この第4のギア354の揺動によって、中心330cから偏心部332aを通って径方向に延びる直線SL上にある外歯354otが、直線SL上にある内歯353itに噛合する。以下、第4のギア354の外歯354otの一部が第3のギア353の内歯353itの一部に噛合する位置を第2の噛合位置EP2と記載する。第2の噛合位置EP2は、直線SL上にある。
【0082】
図12の状態から回転軸330が所定の角度だけ回転すると、すなわち、クランク部3332の偏心部332aが
図12の状態から所定の角度だけ回転すると、第2の噛合位置EP2も同様の角度だけ第3のギア153の周方向に沿って移動する。このように、第2の噛合位置EP2は、回転軸330の回転に伴い第3のギア353の周方向に沿って順次移動していく。そして、回転軸330が1回転すると、第2の噛合位置EP2が第3のギア353の周方向に沿って一周する。ここで、上記のように、第3のギア353の内歯353itの第3の数N3は、第4のギア354の外歯354otの第4の数N4よりも多い。したがって、第2の噛合位置EP2が第3のギア353の周方向に沿って一周する際、すなわち、回転軸330が1回転する際、第4のギア354は、第3の数N3と第4の数N4との歯数差分、第3のギア353の周方向に沿って第3のギア353に対して回転する。したがって、回転軸330に対する第4のギア354の減速比Gr4は、下記式(10)で表すことができる。
なお、第4のギア354の回転方向は、回転軸330の回転方向とは反対である。
【0083】
このように、第3のギア353と第4のギア354との第2のペアは、偏心揺動型減速機として構成されており、さらに言えば、インボリュート歯車型ハイポサイクロイド機構を構成している。
【0084】
したがって、本実施形態では、第1のギア351と第2のギア352との第1のペア及び第3のギア353と第4のギア354との第2のペアが軸方向において並んで減速機構300を構成しており、減速機構300は、2つのインボリュート歯車型ハイポサイクロイド機構が軸方向において並んだ構成を有している。
【0085】
上記式(9)から算出される減速比Gr2は上記第1のペアの減速比に対応し、上記式(10)から算出される減速比Gr4は上記第2のペアの減速比に対応する。エンコーダ3は、減速比Gr2と減速比Gr4とが異なるように構成されている。このことは、回転軸330が1回転した場合に、第2のギア352の回転角度(回転量)と第4のギア354の回転角度(回転量)に差が生じることを意味する。なお、本実施形態では、減速比Gr2が減速比Gr4よりも大きい。したがって、本実施形態では、第4のギア354の回転量が第2のギア352の回転量よりも大きい。ただし、減速比Gr2と減速比Gr4との大小関係が逆であっても構わない。
【0086】
図10に示すように、第2のギア352の軸方向における基板320側の面には、リング状の第2のマグネット362が固定されている。上述の第2のセンサ342は、軸方向から見る場合に第2のギア352に重なっており、軸方向において、第2のギア352と第2のセンサ342との間に第2のマグネット362がある。ただし、第2のセンサ342と、第2のギア352と、第2のマグネット362との位置関係はこれに限定されるものではない。本実施形態において、第2のセンサ342は、磁気センサとして構成されている。第2のセンサ342は、第2のマグネット362から生じる磁気が、第2のマグネット362が第2のギア352の回転に伴って回転することによって変化することを検出し、この第2のマグネット362の磁気の変化を電気信号に変換して、例えば算出部370に出力する。なお、第2のセンサ342は磁気センサに限定されるものではなく、第2のセンサ342を磁気センサ以外のセンサ、例えば光学センサで構成する場合には、回転体にスリット円板等を用いるため、第2のマグネット362は不要である。また、磁気抵抗素子を用いたセンサと磁性材料で形成された歯車を用いる場合もマグネットは不要である。算出部370は、第2のセンサ342から出力される上記電気信号を取得し、第2のギア352の回転角度θ
sensor2を算出する。すなわち、本実施形態では、第2のセンサ342は、算出部370を介して第2のギア352回転角度θ
sensor2を検知する。
【0087】
図10に示すように、第4のギア354の軸方向における基板320側の面には、リング状の第3のマグネット363が固定されている。上述の第3のセンサ343は、軸方向から見る場合に第4のギア354に重なっており、軸方向において、第4のギア354と第3のセンサ343との間に第3のマグネット363がある。ただし、第3のセンサ343と、第4のギア354と、第3のマグネット363との位置関係はこれに限定されるものではない。本実施形態において、第3のセンサ343は、磁気センサとして構成されている。第3のセンサ343は、第3のマグネット363から生じる磁気が、第3のマグネット363が第4のギア354の回転に伴って回転することによって変化することを検出し、この第3のマグネット363の磁気の変化を電気信号に変換して、例えば算出部370に出力する。なお、第3のセンサ343は磁気センサに限定されるものではなく、第3のセンサ343を磁気センサ以外のセンサ、例えば光学センサで構成する場合には、回転体にスリット円板等を用いるため、第3のマグネット363は不要である。また、磁気抵抗素子を用いたセンサと磁性材料で形成された歯車を用いる場合もマグネットは不要である。算出部370は、第3のセンサ343から出力される上記電気信号を取得し、第4のギア354の回転角度θ
sensor3を算出する。すなわち、本実施形態では、第3のセンサ343は、算出部370を介して第4のギア354の回転角度θ
sensor3を検知する。
【0088】
上記のように、本実施形態では、第4のギア354の回転量が第2のギア352の回転量よりも大きいため、第4のギア354と第2のギア352との回転角度の差αは、θ
sensor3からθ
sensor2を減じた値となる。また、回転軸330が1回転した場合に生じる第4のギア354の回転角度θ
sensor3と第2のギア352の回転角度θ
sensor2との差βは、減速比Gr2と減速比Gr4とを用いて下記式(11)で表すことができる。
したがって、本実施形態における回転軸330の回転回数Tmは、αをβで割ることによって算出することができ、具体的には、下記式(12)に基づいて算出することができる。
また、回転軸330の回転回数を考慮した回転軸330の回転角度θは、第1のセンサ341が算出部370を介して検知した回転軸330の回転角度θ
sensor1を用いて、上述の式(4)で表すことができる。
【0089】
算出部370は、回転軸330の回転角度θsensor1のデータと、第2のギア352の回転角度θsensor2のデータと、第4のギア354の回転角度θsensor3のデータと、上記(4),(9)~(12)の式とに基づいて、回転軸330の回転回数Tm及び回転角度θを算出する。このように、エンコーダ3によれば、回転軸330の回転角度とともに回転軸330の回転回数Tmも検出することができる。
【0090】
以上説明したように、エンコーダ3は、回転軸330と、回転軸330の回転角度θsensor1を検知する第1のセンサ341と、径方向における回転軸330側に複数の第1の数N1の内歯351itを有する固定された第1のギア351と、径方向における回転軸330側とは反対側に第1のギア351の内歯351itよりも少ない複数の第2の数N2の外歯352otを有し、回転軸330の回転に伴い回転する第2のギア352と、径方向における回転軸330側に複数の第3の数N3の内歯353itを有する固定された第3のギア353と、径方向における回転軸330側とは反対側に第3のギア353の内歯353itよりも少ない複数の第4の数N4の外歯354otを有し、回転軸330の回転に伴い回転する第4のギア354と、第2のギア352の回転角度θsensor2を検知する第2のセンサ342と、記第4のギア354の回転角度θsensor3を検知する第3のセンサ343と、算出部370とを備える。エンコーダ3において、第1のギア351と第2のギア352との第1のペア及び第3のギア353と第4のギア354との第2のペアのそれぞれは、偏心揺動型減速機であり、算出部370は、第2のセンサ342が検知した回転角度θsensor2と第3のセンサ343が検知した回転角度θsensor3をとの差に基づいて、回転軸330が回転した回数Tmを算出する。
【0091】
上記のような構成を有する本実施形態に係るエンコーダ3では、4つのギア(第1のギア351、第2のギア352、第3のギア353、第4のギア354)によって大きな減速比が得られる。このため、要求される減速比が大きい場合でも、ギア数の増加量を抑えることができる。特に、エンコーダ3の減速機構300によれば、式(12)に示すように、第1のギア351と第2のギア352との第1のペアにおける第2のギア352の回転角度と、第3のギア353と第4のギア354との第2のペアにおける第4のギア354の回転角度との差と、上記第1のペアの減速比Gr2と上記第2のペアの減速比Gr4とを乗じた値とに基づいて回転軸の回転回数が算出されるため、例えば第1の実施形態1に係るエンコーダ1に比べて、回転軸の回転回数の検出上限を高めることができる。また、エンコーダ4では、上記のような大きな検出上限を実現できるにも関わらず、必要となるギアの数は実質的に4つで足りる。さらに、エンコーダ4では、エンコーダ4を構成するための軸が回転軸330の1つのみで足りる。このように、本実施形態に係るエンコーダ4では、ギアや軸などの部品の数を削減することが可能であり、部品の数が削減されることにより、エンコーダの製造コストの削減、組み立ての容易化、及び小型化(小径化、薄型化)を実現することが可能になる。また、本実施形態では、第1のギア351、第2のギア352、第3のギア353、及び第4のギア354を、軸方向において2段に重ねられたインボリュート歯車型ハイポサイクロイド機構として予めユニット化して組み立て工程に供することが可能であるため、組み立てる際の部品点数をさらに削減することが可能であり、より容易にエンコーダとして組み立てることができる。
【0092】
また、本実施形態では、ハイポサイクロイド機構が減速機構として用いられているため、エンコーダを大型化させることなく回転軸を中空化し易い。
【0093】
また、本実施形態では、ハイポサイクロイド機構を用いることによって、上記のように、少ないギア数でより大きな減速比を実現することが可能であるため、回転軸の回転回数の検出上限を効果的に高めることが可能である。
【0094】
なお、本実施形態において、回転軸330の外周面とケーシング310の内周面との間、クランク部332の外周面と第2のギア352の内周面との間、及びクランク部332の外周面と第4のギア354の内周面との間の少なくとも1つにベアリングを配置してもよい。
【0095】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係るエンコーダについて説明する。
【0096】
図13は本実施形態におけるエンコーダを示す斜視図、
図14は
図13に示すエンコーダのある基準状態における軸方向に沿った断面図、
図15は
図13に示すエンコーダを示す
図14のXV-XVに沿った断面図である。
【0097】
図13から
図15に示すように、本実施形態に係るエンコーダ4は、ケーシング410と、基板420と、減速機構400と、回転軸430と、第1のセンサ441と、第2のセンサ442と、第3のセンサ443とを主な構成として備えている。減速機構400は、2つのインボリュート歯車型ハイポサイクロイド機構が径方向において並んだ構成を有している。なお、
図13では、ケーシング410及び基板420が透視して示されており、透視されたケーシング410及び基板420が、便宜上、破線で示されている。
【0098】
ケーシング410は、軸方向における長さが径方向における長さよりも短い略扁平直方体状の形状を有している。ケーシング410の径方向における中央には、ケーシング410を軸方向に貫通する孔410hが形成されている。この孔410hを規定するケーシング410の内周面は、回転軸430が嵌まり込むことが可能な形状に形成されている。ケーシング410は、軸方向における一方側にある第1の部分411と、軸方向における他方側にある第2の部分412とからなる。本実施形態では、第2の部分412の軸方向における長さは、第1の部分411の軸方向における長さよりも長いが、これに限定されるものではない。第1の部分411及び第2の部分412は、軸方向に重ねられて互いに固定されている。第2の部分412には、コネクタ421が取り付けられている。
【0099】
第2の部分412は、軸方向における第1の部分411側とは反対側の底部413と、底部413の外周縁から軸方向における第1の部分411側に延びる外周壁415と、径方向において回転軸430と外周壁415との間にある壁部414とを含んでいる。壁部414は、底部413から軸方向における第1の部分411側に延びている。軸方向から見る場合に、壁部414及び外周壁415は、回転軸430の中心430cを中心とする同心円をなしている。本実施形態では、径方向において壁部414は底部413の概ね中央にあるが、これに限定されるものではない。
【0100】
壁部414の内周面(回転軸430側の面)には、その全周に亘って複数の第1の数N1の内歯451itが形成されている。すなわち、ケーシング410の壁部414は、径方向における回転軸430側に複数の内歯451itを有する第1のギア451として形成されている。このように、第1のギア451は、ケーシング410の一部であり、ケーシング410に対して固定されている。なお、第1のギア451をケーシング410に対して別体にして、ケーシング410に固定してもよい。
【0101】
外周壁415の内周面(回転軸430側の面)には、その全周に亘って複数の第3の数N3の内歯453itが形成されている。すなわち、ケーシング410の外周壁415は、径方向における回転軸430側に複数の内歯453itを有する第3のギア453として形成されている。このように、第3のギア453は、ケーシング410の一部であり、ケーシング410に対して固定されている。なお、第3のギア453をケーシング410に対して別体にして、ケーシング410に固定してもよい。
【0102】
基板420は、軸方向においてケーシング410の第1の部分411と第2の部分412との少なくともいずれかにおいてケーシング410に固定されている。基板420の径方向における概ね中央を回転軸430が貫通している。基板420の第2の部分412側の面には、3つのセンサ(第1のセンサ441、第2のセンサ442、及び第3のセンサ443)が取り付けられている。3つのセンサは、径方向において内側から外側に向かって、第1のセンサ441、第2のセンサ442、及び第3のセンサ443の順に並んでいる。なお、後述するように、第1のセンサ441は第1のマグネット461から生じる磁気を検出し、第2のセンサ442は第2のマグネット462から生じる磁気を検出し、第3のセンサ443は第3のマグネット463から生じる磁気を検出するため、それぞれのセンサは検出対象とするマグネットの磁気を検出しやすい位置に配置するとよい。また、基板420の第2の部分412側の面には、コネクタ421が接続されている。このコネクタ421に接続された端子を介して、外部からの電力がセンサ441,442,443や後述する算出部470に供給されるとともに、算出部470によって算出されたデータが外部に出力されてもよい。
【0103】
回転軸430は、ケーシング410の孔410hに嵌め込まれており、ケーシング410に対して回転可能にケーシング410に支持されている。本実施形態において、回転軸430は、軸本体431と、クランク部432とを含んでいる。軸本体431は、軸方向から見て回転軸430の中心430cを中心とする円形のリング状に形成されている。本実施形態において、軸本体431は、円筒状、すなわち中空に形成されており、中心430cを中心とし軸方向に延在する内周面431iを有する。すなわち、本実施形態において、回転軸430は中空の軸である。なお、軸本体431の内周面431iに他の回転する軸(例えば、モータの主軸等)を例えば圧入により取り付けてもよい。このように、回転軸430に他の回転する軸を取り付けることで、本発明は他の回転体の回転量を検出するエンコーダとして機能する。
【0104】
クランク部432は、軸本体431の外周面に形成されている。なお、クランク部432を軸本体431と一体的に形成してもよいし、別体として形成した上で軸本体431に固定してもよい。軸方向において、クランク部432の少なくとも一部と後述する第2のギア452の少なくとも一部とは同じ位置(高さ)にあり、クランク部432の少なくとも一部と後述する第4のギア454の少なくとも一部とは同じ位置(高さ)にある。また、後述するように、軸方向において、第2のギア452の少なくとも一部と第4のギア454の少なくとも一部とは同じ位置(高さ)にある。
図15は、クランク部432の少なくとも一部と、第2のギア452の少なくとも一部と、第4のギア454の少なくとも一部とが位置する軸方向の部分における径方向に沿った断面図である。
図15に示すように、回転軸430の外周面のうちクランク部432が形成されている部分432of(以下、便宜上、「クランク形成面432of」と記載する。)に着目すると、クランク部432は、回転軸430の中心430c(すなわち、軸本体431の中心)に対して径方向において偏心した面である偏心部432aを含んでいる。偏心部432aは、中心430cからクランク形成面432ofまでの径方向における距離RLがクランク形成面432ofの他の部分と比べて長い(すなわち、距離RLが最大となる)部分(面)である。なお、回転軸430において、第2のギア452及び第4のギア454と接する部分が偏心していればよい。
【0105】
本実施形態において、クランク部432は、外周面から径方向における外側に向かって張り出すフランジ部433を含んでいる。すなわち、フランジ部433は、回転軸430の一部であり、軸本体431と一体となって回転する。フランジ部433は、非磁性体から形成されており、軸方向から見て円形のリング状である。フランジ部433は、径方向に延在するリング状の円板部433Aと、円板部433Aの外周縁からケーシング410の底部413側に向かって軸方向に延在する外壁部433Bとを含んでいる。円板部433Aは、軸方向においてケーシング410の壁部414に対して間隔を空けて壁部414よりも基板420側に配置されている。フランジ部433の外壁部433Bは、円筒状に形成されており、径方向において壁部414に対して間隔を空けて壁部414よりも外側に配置されている。
【0106】
円板部433Aの基板420側の面にはリング状の溝が形成されており、この溝にリング状の第1のマグネット461が嵌め込まれている。軸方向から見る場合に、第1のセンサ441は、第1のマグネット461に重なっている。第1のセンサ441は、磁気センサとして構成されている。第1のセンサ441は、第1のマグネット461から生じる磁気が、第1のマグネット461が回転軸430の回転に伴って回転することによって変化することを検出し、この第1のマグネット461の磁気の変化を電気信号に変換して、例えば基板420上に設けられた算出部470に出力する。算出部470は、第1のセンサ441から出力される上記電気信号を取得し、回転軸430の回転角度θsensor1を算出する。なお、第1のセンサ441は磁気センサに限定されるものではなく、第1のセンサ441を磁気センサ以外のセンサ、例えば光学センサで構成する場合には、回転体にスリット円板等を用いるため、第1のマグネット461は不要である。また、磁気抵抗素子を用いたセンサと磁性材料で形成された歯車を用いる場合、回転軸430に設ける第1のマグネット461の代わりに、基板等の固定部にマグネットを配置することができる。すなわち、第1のセンサ441は、算出部470を介して回転軸430の回転角度θsensor1を検知する。
【0107】
軸方向におけるクランク形成面432ofの位置には、軸方向における位置が変化しないように第2のギア452が支持されてる。本実施形態において、第2のギア452は平歯車である。第2のギア452は、径方向において壁部414(第1のギア451)よりも内側にあり、軸方向においてフランジ部433の円板部433Aとケーシング410の底部413との間にある。クランク部432の偏心部432aは、第2のギア452の内周面452ifに対して摺動可能に内周面452ifに接触している。なお、偏心部432aと第2のギア452の内周面452ifとの少なくとも一方にコーティングを施して、偏心部432aと内周面452ifとにおける耐摩耗性や摺動性を向上させてもよい。
図15に示すように、第2のギア452の外周面(すなわち、第2のギア452の径方向における回転軸430側とは反対側の面)には、その全周に亘って、上記第1の数N1よりも少ない複数の第2の数N2の外歯452otが形成されている。第2のギア452は、第1のギア451の内歯451itよりも内側に配置されており、全周に亘って第1のギア451の内歯451itに取り囲まれている。複数の外歯452otのそれぞれは、第1のギア451の上記複数の内歯451itのそれぞれに噛合可能である。
【0108】
回転軸430が中心430cを中心に回転すると、クランク部432の偏心部432aも回転軸430と一体となって中心430cを中心にして回転し、この偏心部432aの回転に伴って第2のギア452が揺動する。この第2のギア452の揺動によって、中心430cから偏心部432aを通って径方向に延びる直線SL上にある外歯452otが、直線SL上にある内歯451itに噛合する。なお、直線SLは、
図15において破線で示されている。以下、第2のギア452の外歯452otの一部が第1のギア451の内歯451itの一部に噛合する位置を第1の噛合位置EP1と記載する。第1の噛合位置EP1は、直線SL上にある。
【0109】
図15の状態から回転軸430が所定の角度だけ回転すると、すなわち、クランク部432の偏心部432aが
図15の状態から所定の角度だけ回転すると、第1の噛合位置EP1も同様の角度だけ第1のギア451の周方向に沿って移動する。このように、第1の噛合位置EP1は、回転軸430の回転に伴い第1のギア451の周方向に沿って順次移動していく。そして、回転軸430が1回転すると、第1の噛合位置EP1が第1のギア451の周方向に沿って一周する。ここで、上記のように、第1のギア451の内歯451itの第1の数N1は、第2のギア452の外歯452otの第2の数N2よりも多い。したがって、第1の噛合位置EP1が第1のギア451の周方向に沿って一周する際、すなわち、回転軸430が1回転する際、第2のギア452は、第1の数N1と第2の数N2との歯数差分、第1のギア451の周方向に沿って第1のギア451に対して回転する。したがって、回転軸430に対する第2のギア452の減速比Gr2は、第3実施形態と同様に式(9)で表すことができる。なお、第2のギア452の回転方向は、回転軸430の回転方向とは反対である。
【0110】
このように、第1のギア451と第2のギア452との第1のペアは、偏心揺動型減速機として構成されており、さらに言えば、インボリュート歯車型ハイポサイクロイド機構を構成している。
【0111】
第2のギア452の基板420側の面には、リング状の第2のマグネット462が固定されている。本実施形態では、軸方向から見る場合に、第2のセンサ442は、フランジ部433の円板部433Aを介して、第2のマグネット462と第2のギア452とに重なっており、軸方向において、第2のギア452と第2のセンサ442との間に第2のマグネット462がある。ただし、第2のセンサ442と、第2のギア452と、第2のマグネット462との位置関係はこれに限定されるものではない。第2のセンサ442は、磁気センサとして構成されている。第2のセンサ442は、第2のマグネット462から生じる磁気が、第2のマグネット462が第2のギア452の回転に伴って回転することによって変化することを検出し、この第2のマグネット462の磁気の変化を電気信号に変換して、例えば基板420上に設けられた算出部470に出力する。なお、第2のセンサ442は磁気センサに限定されるものではなく、第2のセンサ442を磁気センサ以外のセンサ、例えば光学センサで構成する場合には、回転体にスリット円板等を用いるため、第2のマグネット462は不要である。また、磁気抵抗素子を用いたセンサと磁性材料で形成された歯車を用いる場合もマグネットは不要である。算出部470は、第2のセンサ442から出力される上記電気信号を取得し、第2のギア452の回転角度θsensor2を算出する。すなわち、本実施形態では、第2のセンサ442は、算出部470を介して第2のギア452の回転角度θsensor2を検知する。
【0112】
軸方向における外壁部433Bの位置には、軸方向における位置が変化しないように第4のギア454が支持されている。本実施形態において、第4のギア454は平歯車である。第4のギア454は、径方向において壁部414と外周壁415(第3のギア453)との間にあり、軸方向において基板420とケーシング410の底部413との間にある。さらに言えば、軸方向において、第4のギア454は、第2のギア452と概ね同じ位置(高さ)にある。しかし、軸方向における第4のギア454と第2のギア452との位置関係はこれに限られるものではない。クランク部432の外壁部433Bの外周面433ofのうち上述の直線SL上に位置する部分は、第4のギア454の内周面454ifに対して摺動可能に内周面454ifに接触している。なお、外壁部433Bの外周面433ofと第4のギア454の内周面454ifとの少なくとも一方にコーティングを施して、外壁部433Bと第4のギア454の内周面454ifとにおける耐摩耗性や摺動性を向上させてもよい。
図15に示すように、第4のギア454の外周面(すなわち、第4のギア454の径方向における回転軸430側とは反対側の面)には、その全周に亘って、上記第3の数N3よりも少ない複数の第4の数N4の外歯454otが形成されている。第4のギア454は、第3のギア453の内歯453itよりも内側に配置されており、全周に亘って第3のギア453の内歯453itに取り囲まれている。複数の外歯454otのそれぞれは、第3のギア453の複数の内歯453itのそれぞれに噛合可能である。
【0113】
回転軸430が中心430cを中心に回転すると、クランク部432の偏心部432aも回転軸430と一体となって中心430cを中心にして回転し、この偏心部432aの回転に伴って第4のギア454が揺動する。この第4のギア454の揺動によって、上述の直線SL上にある外歯454otが、直線SL上にある内歯453itに噛合する。以下、第4のギア454の外歯454otの一部が第3のギア453の内歯453itの一部に噛合する位置を第2の噛合位置EP2と記載する。第2の噛合位置EP2は、直線SL上にある。
【0114】
図15の状態から回転軸430が所定の角度だけ回転すると、すなわち、クランク部432の偏心部432aが
図15の状態から所定の角度だけ回転すると、第2の噛合位置EP2も同様の角度だけ第3のギア453の周方向に沿って移動する。このように、第2の噛合位置EP2は、回転軸430の回転に伴い第3のギア453の周方向に沿って順次移動していく。そして、回転軸430が1回転すると、第2の噛合位置EP2が第3のギア453の周方向に沿って一周する。ここで、上記のように、第3のギア453の内歯453itの第3の数N3は、第4のギア454の外歯454otの第4の数N4よりも多い。したがって、第2の噛合位置EP2が第3のギア453の周方向に沿って一周する際、すなわち、回転軸430が1回転する際、第4のギア454は、第3の数N3と第4の数N4との歯数差分、第3のギア453の周方向に沿って第3のギア453に対して回転する。したがって、回転軸430に対する第4のギア454の減速比Gr4は、第3実施形態と同様に式(10)で表すことができる。なお、第2のギア452の回転方向は、回転軸430の回転方向とは反対である。
【0115】
このように、第3のギア453と第4のギア454との第2のペアは、偏心揺動型減速機として構成されており、さらに言えば、インボリュート歯車型ハイポサイクロイド機構を構成している。
【0116】
したがって、本実施形態では、第1のギア451と第2のギア452との第1のペア及び第3のギア453と第4のギア454との第2のペアが径方向において並んで減速機構400を構成しており、減速機構400は、2つのインボリュート歯車型ハイポサイクロイド機構が径方向において並んだ構成を有している。
【0117】
上記式(9)から算出される減速比Gr2は上記第1のペアの減速比に対応し、上記式(10)から算出される減速比Gr4は上記第2のペアの減速比に対応する。エンコーダ4は、減速比Gr2と減速比Gr4とが異なるように構成されている。このことは、回転軸430が1回転した場合に、第2のギア452の回転角度(回転量)と第4のギア454の回転角度(回転量)に差が生じることを意味する。なお、本実施形態では、減速比Gr2が減速比Gr4よりも大きい。したがって、本実施形態では、第4のギア454の回転量が第2のギア452の回転量よりも大きい。ただし、減速比Gr2と減速比Gr4との大小関係が逆であっても構わない。
【0118】
図14に示すように、第4のギア454の軸方向における基板420側の面には、リング状の第3のマグネット463が固定されている。上述の第3のセンサ443は、軸方向から見る場合に第3のマグネット463及び第4のギア454に重なっており、軸方向において、第4のギア454と第3のセンサ443との間に第3のマグネット463がある。ただし、第3のセンサ443と、第4のギア454と、第3のマグネット463との位置関係はこれに限定されるものではない。本実施形態において、第3のセンサ443は、磁気センサとして構成されている。第3のセンサ443は、第3のマグネット463から生じる磁気が、第3のマグネット463が第4のギア454の回転に伴って回転することによって変化することを検出し、この第3のマグネット463の磁気の変化を電気信号に変換して、例えば算出部470に出力する。なお、第3のセンサ443は磁気センサに限定されるものではなく、第3のセンサ443を磁気センサ以外のセンサ、例えば光学センサで構成する場合には、回転体にスリット円板等を用いるため、第3のマグネット463は不要である。また、磁気抵抗素子を用いたセンサと磁性材料で形成された歯車を用いる場合もマグネットは不要である。算出部470は、第3のセンサ443から出力される上記電気信号を取得し、第4のギア454の回転角度θ
sensor3を算出する。すなわち、本実施形態では、第3のセンサ443は、算出部470を介して第4のギア454の回転角度θ
sensor3を検知する。
【0119】
上記のように、本実施形態では、第4のギア454の回転量が第2のギア452の回転量よりも大きいため、第4のギア454と第2のギア452との回転角度の差αは、θsensor3からθsensor2を減じた値となる。また、回転軸430が1回転した場合に生じる第4のギア454の回転角度と第2のギア452の回転角度との差βは、減速比Gr2と減速比Gr4とを用いて、第3実施形態と同様に式(11)で表すことができる。したがって、本実施形態における回転軸430の回転回数Tmは、第3実施形態と同様に式(12)に基づいて算出することができる。また、回転軸430の回転回数を考慮した回転軸430の回転角度θは、第1のセンサ441が算出部470を介して検知した回転軸430の回転角度θsensor1を用いて、上述の式(4)で表すことができる。
【0120】
算出部470は、回転軸330の回転角度θsensor1のデータと、第2のギア452の回転角度θsensor2のデータと、第4のギア454の回転角度θsensor3のデータと、上記(4),(9)~(12)の式とに基づいて、回転軸430の回転回数Tm及び回転角度θを算出する。このように、エンコーダ4によれば、回転軸430の回転角度とともに回転軸430の回転回数Tmも検出することができる。
【0121】
以上説明したように、エンコーダ4は、回転軸430と、回転軸430の回転角度θsensor1を検知する第1のセンサ441と、径方向における回転軸430側に複数の第1の数N1の内歯451itを有する固定された第1のギア451と、径方向における回転軸430側とは反対側に第1のギア451の内歯451itよりも少ない複数の第2の数N2の外歯452otを有し、回転軸430の回転に伴い回転する第2のギア452と、径方向における回転軸430側に複数の第3の数N3の内歯453itを有する固定された第3のギア453と、径方向における回転軸430側とは反対側に第3のギア453の内歯453itよりも少ない複数の第4の数N4の外歯454otを有し、回転軸430の回転に伴い回転する第4のギア454と、第2のギア452の回転角度θsensor2を検知する第2のセンサ442と、第4のギア454の回転角度θsensor3を検知する第3のセンサ443と、算出部470とを備える。エンコーダ4において、第1のギア451と第2のギア452との第1のペア及び第3のギア453と第4のギア454との第2のペアのそれぞれは、偏心揺動型減速機であり、算出部470は、第2のセンサ442が検知した回転角度θsensor2と第3のセンサ443が検知した回転角度θsensor3をとの差に基づいて、回転軸430が回転した回数Tmを算出する。
【0122】
このような構成を有するエンコーダ4によれば、第3の実施形態に係るエンコーダ3と同様の効果を得られる。
【0123】
また、エンコーダ4では、上記第1のペアと上記第2のペアとが径方向に並んでいるため、第1のペアと第2のペアとが軸方向に並ぶ第3実施形態に係るエンコーダ3に比べて、同様の減速比を実現する場合にエンコーダの軸方向の長さを短くすることができ、薄型化することができる。
【0124】
一方、第3実施形態に係るエンコーダ3によれば、上記第1のペアと上記第2のペアとが軸方向に並んでいるため、第1のペアと第2のペアとが径方向に並ぶエンコーダ4に比べて、同様の減速比を実転する場合にエンコーダの軸方向に垂直な断面の面積を小さくすることができる。
【0125】
なお、本実施形態において、回転軸430の外周面とケーシング410の内周面との間、クランク部432の外周面のうち第2のギア452と対向する部分と第2のギア452の内周面との間、及びのクランク部432の外壁部433Bと第4のギア454の内周面との間の少なくとも1つにベアリングを配置してもよい。
【0126】
以上、本発明について上記実施形態を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0127】
例えば、第1実施形態~第4実施形態では、減速機構をインボリュート歯車型ハイポサイクロイド機構で構成する例を説明したが、他の機構により減速機構を構成してもよい。この点について、以下、第1実施形態の第1変形例及び第2変形例を例にして説明する。
【0128】
(第1変形例)
まず、第1変形例について説明する。
図16は、本変形例に係るエンコーダを概略的に示す軸方向に沿った断面である。
図17は、
図16に示すエンコーダを概略的に示す径方向に沿った断面図である。なお、第1実施形態と同様の構成については、第1実施形態と同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0129】
図16及び
図17に示すように、本変形例に係るエンコーダ1Aでは、減速機構100が減速機構100Aに置き換わっている。また、エンコーダ1Aでは、減速機構100Aを採用したことにより、回転軸130は軸本体131Aのみから構成されている。エンコーダ1Aでは、軸本体131の外周面131ofにリング状の第1のマグネット161が固定されている。
【0130】
エンコーダ1Aの減速機構100Aは、不図示のケーシングに固定された第1のギア1151と、第1のギア1151よりも内側にある第2のギア1152と、第2のギア11152よりも内側にある回転部材1153とを含んでいる。回転部材1153は、軸方向から見る場合に楕円のリング状の部材であり、その内周面が軸本体131の外周面131ofに固定されている。したがって、回転部材1153は、回転軸130と一体となって回転する。軸方向から見て、回転部材1153の中心は、回転軸130の中心130cに一致する。
【0131】
第2のギア1152は、不図示のケーシングに対して回転可能に当該ケーシングに支持されている。第2のギア1152は、可撓性を有しており、例えば内側から外側に向かって径方向に作用する押圧を受けた場合、その押圧に対応して撓む(変形する)ことができる。第2のギア1152は、変形していない場合において、軸方向から見て円形のリング状の外形を有しており、円筒状の外周壁1152Aと、外周壁1152Aの軸方向における一方側の端部から回転軸130側に向かって突出するフランジ部1152Bとを含んでいる。外周壁1152Aの内周面1152ifよりも内側に回転部材1153が配置されている。
【0132】
第2のギア1152が変形していない場合において、外周壁1152Aの内周面1152ifの直径は、回転部材1153の長軸LAよりも短く、回転部材1153の短軸よりも長い。このため、外周壁1152Aの内周面1152ifは、外周壁1152Aよりも内側にある回転部材1153における長軸LAの部分によって径方向の内側から外側に向かって押圧されている。これによって、第2のギア1152は、軸方向から見る場合に楕円形に変形している。
図17において、回転部材1153の長軸LA及び長軸LAの延長線が破線で示されている。回転部材1153の外周面1153ofのうち長軸LAが通る部分以外の部分は、外周壁1152Aの内周面1152ifに接していない。回転部材1153の外周面1153ofは、外周壁1152Aの内周面1152ifに接して摺動することができる。外周壁1152Aの外周面(すなわち、径方向における回転軸130側とは反対側の面)には、複数の第2の数N2の外歯1152otが形成されている。
【0133】
第2のギア1152のフランジ部1152Bは、リング状の板状部材であり、フランジ部1152Bの内周面によって規定される貫通孔を回転軸130が貫通している。フランジ部1152Bを挟んで軸方向における一方側に基板120があり、他方側に回転部材1153がある。また、フランジ部1152Bは、径方向において、第1のマグネット161に対向している。フランジ部1152Bの軸方向における基板120側の面には、リング状の第2のマグネット162が固定されている。
【0134】
第1のギア1151は、剛性の高い材料で形成されており、変形しないように形成されている。第1のギア1151は、不図示のケーシングに固定されている。第1のギア1151は、軸方向から見る場合に円形のリング状であり、第1のギア1151の中心は回転軸130の中心130cに一致する。第1のギア1151の内周面(すなわち、径方向における回転軸130側の面)には、上記第2の数N2よりも多い第1の数N1の内歯1152itが形成されている。本実施形態において、第1の数N1と第2の数N2との差は2n(nは任意の自然数)である。第1のギア1151の内歯1152itは、第2のギア1152の外歯1152otを全周に亘って取り囲んでいる。
【0135】
第2のギア1152の複数の外歯1152otのそれぞれは、第1のギア1151の複数の内歯1151itのそれぞれに噛合可能である。本実施形態では、
図17に示すように、第2のギア1152の複数の外歯1152otのうち長軸LAの延長線が通る外歯1152otが、第1のギア1151の内歯1151itに噛合する。したがって、複数の外歯1152otのうち長軸LAの延長線が通る2か所、すなわち、中心130cに対して対称の位置にある2か所にある外歯1152otが、内歯1151itに噛合している。このように、本変形例に係るエンコーダ1Aは、2か所の噛合位置EPを有する。
【0136】
回転軸130が中心130cを中心に回転すると、回転部材1153も回転軸130と一体となって中心130cを中心にして回転する。すなわち、回転部材1153の長軸LAが中心130cを中心にして回転する。長軸LAが所定の角度だけ回転すると、噛合位置EPも同様の角度だけ第1のギア1151の周方向に沿って移動する。このように、噛合位置EPは、回転軸130の回転に伴い第1のギア1151の周方向に沿って順次移動していく。そして、回転軸130が1回転すると、噛合位置EPが第1のギア1151の周方向に沿って一周する。ここで、上記のように、第1のギア1151の内歯1151itの第1の数N1は、第2のギア1152の外歯1152otの第2の数N2よりも2n多い。したがって、噛合位置EPが第1のギア1151の周方向に沿って一周する際、すなわち、回転軸130が1回転する際、第2のギア1152は、第1の数N1と第2の数N2との歯数差分(歯数差2n分)、第1のギア1151の周方向に沿って第1のギア1151に対して回転する。なお、第2のギア1152の回転方向は、回転軸130の回転方向とは反対である。
【0137】
本変形例では、回転部材1153を第1実施形態におけるクランク部132と同様にみなすことができる。このように、第1のギア1151及び第2のギア1152は、偏心揺動型減速機として構成されており、さらに言えば、波動歯車機構を構成する減速機構100Aとして機能している。
【0138】
軸方向において、基板120のフランジ部1152B側の面には、磁気センサである第1のセンサ141及び第2のセンサ142が取り付けられている。第1のセンサ141は、第1のマグネット161から生じる磁気が、第1のマグネット161が回転軸130の回転に伴って回転することによって変化することを検出し、算出部170を介して回転軸130の回転角度θsensor1を検知する。第2のセンサ142は、第2のマグネット162から生じる磁気が、第2のマグネット162が第2のギア1152の回転に伴って回転することによって変化することを検出し、算出部170を介して第2のギア1152の回転角度θsensor2を検知する。
【0139】
したがって、本変形例に係るエンコーダ1Aによれば、第1実施形態と同様に、式(1)~(4)に基づいて、回転軸130の回転回数Tm及び回転角度θを算出することができる。
【0140】
なお、上述の第2~第4の実施形態においても、減速機構をこの変形例で説明したような波動歯車機構で構成してもよい。
【0141】
(第2変形例)
次に、第2変形例について説明する。
図18は、本変形例におけるエンコーダを示す斜視図である。
図19は、
図18に示すエンコーダの軸方向に沿った断面図である。なお、第1実施形態と同様の構成については、第1実施形態と同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0142】
図18及び
図19に示すように、本変形例に係るエンコーダ1Bでは、減速機構100が減速機構100Bに置き換わっている。エンコーダ1Bの減速機構100Bは、第1のギア2151と第2のギア2152とを備えている。
【0143】
回転軸130のクランク部132の軸方向における位置には、軸方向における位置が変化しないように第2のギア2152が支持されている。クランク部132の偏心部132aは、第2のギア2152の内周面に対して摺動可能に第2のギア2152の内周面に接している。なお、上述の実施形態で述べたように、これらの面の少なくとも一方にコーティングを施してもよい。軸方向から見る場合に、第2のギア2152の外周面(径方向における回転軸130側とは反対側の面)は、エピトロコイド曲線を描くように形成されている。したがって、第2のギア2152の外縁部は、複数の数N2の外側に突出する弧状の突出部2152Tによって形成されている。本変形例では、これら複数の突出部2152Tのそれぞれが第2のギア2152の外歯2152otとして機能する。
【0144】
第2のギア2152の軸方向における第1の部分111側の面には、リング状の第2のマグネット162が固定されている。クランク部132の外周面には、リング状の第1のマグネット161が固定されている。基板120の軸方向における第2のギア2152側の面には、磁気センサとして第1のセンサ141及び第2のセンサ142が取り付けられている。第1のセンサ141は、回転軸130が回転することによる第1のマグネット161から生じる磁気の変化に基づいて、算出部170を介して回転軸130の回転角度θsensor1を検知する。
【0145】
ケーシング110の第2の部分112は、軸方向における第1の部分111側とは反対側に底部112Bを有している。底部112Bは、ケーシング110の底をなしている。底部112Bには、同一の寸法を有する複数の第1の数N1のピン2153が設けられている。第1の数N1は、第2の数N2よりも大きい。複数のピン2153は、それぞれ円柱状に形成されており、底部112Bから軸方向に沿って第1の部分111側に突出している。複数のピン2153は、ケーシング110の外壁110ofに対して径方向における内側に配置されている。また、複数のピン2153は、回転軸130の中心130cを中心とする同一の円Cr上に円Crの周方向に沿って等間隔に配置されている。なお、
図18において、円Crの一部が破線で示されている。第2のギア2152の複数の突出部2152T(外歯2152ot)のそれぞれは、円Crの周方向において隣接する2つのピン2153の間に噛合することができる。このように、複数のピン2153は、第2のギア2152の外歯2152otに噛み合う内歯2151itとして機能する。したがって、ケーシング110の第2の部分112は、径方向における回転軸130側に複数の第1の数N1の内歯2151itを有する第1のギア2151として機能する。
【0146】
本実施形態では、
図18に示すように、複数の外歯2152otのうち直線SLにある外歯2152otが、直線SL上にある内歯2151it(より具体的には、円Crの周方向において隣接する2つの内歯2151it間の間隙のうち、直線SLが通る間隙)に噛合する。なお、第1実施形態と同様に、直線SLは、中心130cからクランク部132の偏心部132aを通り径方向に延びる直線である。なお、
図18において、直線SLが破線で示されている。したがって、エンコーダ1Bは、外歯2152otの一部と内歯2151itの一部とが噛合する噛合位置EPを有する。本変形例における噛合位置EPは、円Crの周方向において隣接する2つの内歯2151it間の間隙のうち、直線SLが通る間隙として定義してもよい。
【0147】
回転軸130が
図18の状態から所定の角度だけ回転すると、すなわち、クランク部132の偏心部132aが
図18の状態から所定の角度だけ回転すると、噛合位置EPも同様の角度だけ第1のギア2151の周方向(円Crの周方向)に沿って移動する。このように、噛合位置EPは、回転軸130の回転に伴い第1のギア2151の周方向に沿って順次移動していく。そして、回転軸130が1回転すると、噛合位置EPが第1のギア2151の周方向に沿って一周する。ここで、上記のように、第1のギア2151の内歯2151itの第1の数N1は、第2のギア2152の外歯2152otの第2の数N2よりも多い。したがって、噛合位置EPが第1のギア2151の周方向に沿って一周する際、すなわち、回転軸130が1回転する際、第2のギア2152は、第1の数N1と第2の数N2との歯数差分、第1のギア2151の周方向に沿って第1のギア2151に対して回転する。なお、第2のギア2152の回転方向は、回転軸130の回転方向とは反対である。
【0148】
このように、第1のギア2151及び第2のギア2152は、偏心揺動型減速機として構成されており、さらに言えば、ハイポサイクロイド機構、より具体的には、ピン歯車型ハイポサイクロイドを構成する減速機構100Bとして機能している。
【0149】
第2のセンサ142は、第2のギア2152が回転することによる第2のマグネット162から生じる磁気の変化に基づいて、算出部170を介して第2のギア2152の回転角度θsensor2を検知する。
【0150】
したがって、本変形例に係るエンコーダ1Bによれば、第1実施形態と同様に、式(1)~(4)に基づいて、回転軸130の回転回数Tm及び回転角度θを算出することができる。
【0151】
なお、上述の第2~第4の実施形態においても、減速機構をこの変形例で説明したような波動歯車機構で構成してもよい。
【0152】
また、上記各実施形態及び各変形例では、回転軸が中空の軸である例を説明したが、回転軸は中空の軸に限定されるものではない。
【0153】
また、上記に説明したエンコーダ1,2,3,4,1A,1Bは、アブソリュート型のロータリーエンコーダとして使用してもよいし、インクリメンタル型のロータリーエンコーダとして使用してもよい。また、エンコーダ1,2,3,4,1A,1Bは、電源からの電力供給が一時的にOFFとなり、再度供給された場合でも原点復帰が不要なバッテリレスアブソリュートエンコーダとしても使用可能である。
【0154】
その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明のエンコーダを適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0155】
1…エンコーダ、130…回転軸、132…クランク部、141…第1のセンサ、142…第2のセンサ、151…第1のギア、151it…内歯、152…第2のギア、152ot…外歯、161…第1のマグネット、162…第2のマグネット、170…算出部