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特開2024-122764プラスチック光ファイバーの形状を特定する方法、プログラム、及びプラスチック光ファイバーの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122764
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】プラスチック光ファイバーの形状を特定する方法、プログラム、及びプラスチック光ファイバーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/00 20060101AFI20240902BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
G01M11/00 G
G02B6/02 366
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030488
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100143236
【弁理士】
【氏名又は名称】間中 恵子
(72)【発明者】
【氏名】清水 享
(72)【発明者】
【氏名】中村 晃規
(72)【発明者】
【氏名】高山 一也
【テーマコード(参考)】
2G086
2H250
【Fターム(参考)】
2G086AA04
2H250AA29
2H250AB33
2H250AB35
2H250AB37
2H250AD43
2H250BA02
2H250BA11
2H250BA34
2H250BB13
2H250BB17
2H250BB18
2H250BC01
2H250BD18
(57)【要約】      (修正有)
【課題】コア、クラッド、及び被覆層を備えたプラスチック光ファイバーについて、コアの外形及び被覆層の外形を同時に特定できる新規の方法を提供する。
【解決手段】コアと、コアの外周に配置されたクラッドと、クラッドの外周に配置された被覆層とを備えたプラスチック光ファイバーについて、少なくともコアの外形及び被覆層の外形を同時に特定する方法であり、
(A)所定の長さを有するプラスチック光ファイバーの第一の末端から、プラスチック光ファイバーに光を入射して、プラスチック光ファイバーの第二の末端から光を出射させるとともに、第二の末端に落射光を照射することと、
(B)第二の末端の近傍における光強度の面分布を測定することと、
(C)光強度の面分布の測定結果を用いて、コアの外形及び被覆層の外形を特定することと、
を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、前記コアの外周に配置されたクラッドと、前記クラッドの外周に配置された被覆層とを備えたプラスチック光ファイバーについて、少なくとも前記コアの外形及び前記被覆層の外形を同時に特定する方法であって、
前記方法は、
(A)所定の長さを有する前記プラスチック光ファイバーの第一の末端から、前記プラスチック光ファイバーに光を入射して、前記プラスチック光ファイバーの第二の末端から前記光を出射させるとともに、前記第二の末端に落射光を照射することと、
(B)前記第二の末端の近傍における光強度の面分布を測定することと、
(C)前記光強度の前記面分布の測定結果を用いて、前記コアの前記外形及び前記被覆層の前記外形を特定することと、
を含む、プラスチック光ファイバーの形状を特定する方法。
【請求項2】
前記(C)において特定された前記コアの前記外形及び前記被覆層の前記外形に基づいて、コア径及び前記被覆層の外径を計測すること、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光強度の前記面分布は、対物レンズ及び結像レンズを備えた光計測装置によって測定され、
前記落射光は、同軸落射光である、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記光計測装置は、前記対物レンズと前記結像レンズとの間に設けられたハーフミラーをさらに備え、
前記落射光は、前記ハーフミラーによって、前記同軸落射光として前記第二の末端に導かれる、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記所定の長さは、1m以上である、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記光強度の前記面分布の前記測定結果を用いて、前記コアの中心の位置及び前記被覆層の中心の位置を求め、前記コアの中心と前記被覆層の中心との距離を計算して偏心量を求めること、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記光強度の前記面分布の前記測定結果に基づいて、前記コア及び前記被覆層の画像を得ること、
をさらに含み、
前記コアの前記中心の位置及び前記被覆層の前記中心の位置が、前記画像を用いて求められ、前記コアの前記中心と前記被覆層の前記中心との距離が計算されることによって、前記偏心量が求められる、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第一の末端から前記プラスチック光ファイバーに入射された前記光は、前記第二の末端において前記被覆層の外表面まで到達しない、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の方法を実行するためのプログラム。
【請求項10】
(I)コアと、前記コアの外周に配置されたクラッドと、前記クラッドの外周に配置された被覆層とを備えた、検査用プラスチック光ファイバーを作製することと、
(II)前記検査用プラスチック光ファイバーに対し、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法を実施して、前記検査用プラスチック光ファイバーの形状を特定することと、
(III)前記(II)で特定された前記検査用プラスチック光ファイバーの形状に基づいて、プラスチック光ファイバーの製造条件を決定することと、
(IV)前記(III)で決定された前記製造条件に基づいて、プラスチック光ファイバーを製造することと、
を含む、プラスチック光ファイバーの製造方法。
【請求項11】
(i)コアと、前記コアの外周に配置されたクラッドと、前記クラッドの外周に配置された被覆層とを備えた、プラスチック光ファイバーを作製することと、
(ii)前記(i)で作製された前記プラスチック光ファイバーの中から所定の数のプラスチック光ファイバーを抜き取り、抜き取られた前記プラスチック光ファイバーに対して請求項1から8のいずれか1項に記載の方法を実施して、前記プラスチック光ファイバーの品質検査を行うことと、
を含む、プラスチック光ファイバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラスチック光ファイバーの形状を特定する方法、プログラム、及びプラスチック光ファイバーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバーは、光を伝送する部分としての中心部のコアと、当該コアの外周を覆うクラッドとを備えている。光ファイバーについては、光ファイバーの外径の中心とコア径の中心との距離、すなわちコアの偏心量が、他の光学部材と接続する際の、挿入損失などに大きな影響を及ぼすことが知られている。したがって、良好な特性を有する光ファイバーを安定的に提供するためには、コアの偏心量を正確に計測することが必要である。光ファイバーのコアの偏心量を正確に計測するためには、光ファイバーの外径とその中心位置、及びコア径とその中心位置の正確な計測が必要となる。
【0003】
ガラス光ファイバー(以下、「GOF」と記載する。)は、コア及びクラッドがガラス材料によって形成されている。GOFにおけるコアの偏心量は、通常、外径であるクラッド径の中心と、コア径の中心との距離である。GOFについては、コア径とその中心位置だけでなく、クラッド径とその中心位置も、IEC60793-1-20及びIEC60793-2-40で規定されているニアフィールドパターン法によって正確に求めることが可能である。したがって、GOFについてコアの偏心量を正確に計測することは、例えばニアフィールドパターン法を利用することによって可能である。
【0004】
プラスチック光ファイバー(以下、「POF」と記載する。)は、光を伝送する部分としての中心部のコアと、当該コアの外周を覆うクラッドとを備えている。コアは、高屈折率を有する樹脂材料によって形成されている。クラッドは、光をコア内に留めるために、コアの樹脂材料よりも低い屈折率を有する樹脂材料によって形成されている。さらに、POFには、通常、POFを補強するために、クラッドの外周に被覆層が設けられる。したがって、POFについてコアの偏心量を求めるためには、POFの外径である被覆層の外径とその中心位置、及びPOFのコア径とその中心位置を正確に計測し、被覆層の外径の中心とコア径の中心との距離を求めことが必要である。
【0005】
POFについて、POFの外径である被覆層の外径とその中心位置、及びPOFのコア径とその中心位置を正確に計測しうる方法として、確立した方法は未だ提案されていない。特に、POFの被覆層の外径及びその中心位置を、コア径及びその中心位置と対比できるように、コア径及びその中心位置と同時に計測できる方法は確立されていない。なお、POFの被覆層の外径の中心位置とコア径の中心位置との間の偏心量ではなく、光ファイバーが内部に挿入されたフェルールについて、フェルールの外径に対する光ファイバーのコア中心位置のずれ、すなわちフェルールにおけるコアの偏心量を測定する方法が、例えば、特許文献1に提案されている。特許文献1には、偏心マスタフェルールに対して被測定フェルールを対向接続させて、被測定フェルールに光入射し、偏心マスタフェルールもしくは被測定フェルールの一方をその軸周りに回転させながら挿入損失を測定し、測定された挿入損失からコア偏心量を測定する手法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-184271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のとおり、GOFの場合は、コア及びクラッドが共にガラス材料によって形成されているので、ニアフィールドパターン法によって得られる光強度の面分布から、クラッドとその外側(すなわち、空気)との境界、すなわちクラッドの外形も確認することができる。したがって、GOFの場合は、ニアフィールドパターン法による測定で得られた光強度の面分布から、同時に、コア径とその中心位置、及びクラッド径とその中心位置を求めることができ、正確なコア偏心量が求められる。
【0008】
しかし、POFの場合、ニアフィールドパターン法によって得られる光強度の面分布を用いて、被覆層の外形を確認することは困難である。これは、ニアフィールドパターン法による測定の際にPOFに入射した光のうち、コア及びクラッドから漏れて被覆層に広がった光は、POFを通過する間に減衰し、被覆層とその外側(すなわち、空気)との境界まで到達できないためである。したがって、POFの場合、ニアフィールドパターン法によって得られる光強度の面分布から、POFの外径とその中心位置を求めることが困難であり、その結果、正確なコア偏心量を求めることもできない。
【0009】
なお、特許文献1に開示されている方法は、フェルールの外径の中心位置と光ファイバーのコアの中心位置との間の偏心量を求める方法であるため、その方法を適用してもPOFにおけるコアの偏心量を正確に求めることはできない。
【0010】
本開示は、コアと、当該コアの外周に配置されたクラッドと、当該クラッドの外周に配置された被覆層とを備えたPOFについて、少なくともコアの外形及び被覆層の外形を同時に特定することができる新規の方法を提供することを目的とする。さらに、本開示は、その方法を実行するためのプログラムを提供することを目的とする。さらに、本開示は、その方法を利用するPOFの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の第1態様に係るPOFの形状を特定する方法は、コアと、前記コアの外周に配置されたクラッドと、前記クラッドの外周に配置された被覆層とを備えたPOFについて、少なくともコアの外形及び前記被覆層の外形を同時に特定する方法であって、
(A)所定の長さを有する前記POFの第一の末端から、前記POFに光を入射して、前記POFの第二の末端から前記光を出射させるとともに、前記第二の末端に落射光を照射することと、
(B)前記第二の末端の近傍における光強度の面分布を測定することと、
(C)前記光強度の前記面分布の測定結果を用いて、前記コアの前記外形及び前記被覆層の前記外形を特定することと、
を含む。
【0012】
本開示の第2態様に係るプログラムは、本開示の第1態様に係る方法を実行するためのプログラムである。
【0013】
本開示の第3態様に係るPOFの製造方法は、
(I)コアと、前記コアの外周に配置されたクラッドと、前記クラッドの外周に配置された被覆層とを備えた、検査用POFを作製することと、
(II)前記検査用POFに対し、本開示の第1態様に係る方法を実施して、前記検査用POFの形状を特定することと、
(III)前記(II)で特定された前記検査用POFの形状に基づいて、POFの製造条件を決定することと、
(IV)前記(III)で決定された前記製造条件に基づいて、POFを製造することと、
を含む。
【0014】
本開示の第4態様に係るPOFの製造方法は、
(i)コアと、前記コアの外周に配置されたクラッドと、前記クラッドの外周に配置された被覆層とを備えた、POFを作製することと、
(ii)前記(i)で作製された前記POFの中から所定の数のPOFを抜き取り、抜き取られた前記POFに対して本開示の第1態様に係る方法を実施して、前記POFの品質検査を行うことと、
を含む。
【発明の効果】
【0015】
本開示のPOFの形状を特定する方法によれば、コアと、当該コアの外周に配置されたクラッドと、当該クラッドの外周に配置された被覆層とを備えたPOFについて、少なくともコアの外形及び被覆層の外形を同時に特定することができる。さらに、本開示は、その方法を実行するためのプログラムを提供することができる。さらに、本開示は、その方法を利用するPOFの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、コア、クラッド、及び被覆層を備えたPOFを示す断面図である。
図2図2は、本開示の第1実施形態によるPOFの形状を特定する方法を示すフローチャートである。
図3図3は、本開示の第1実施形態によるPOFの形状を特定する方法を実施するための計測システムの一例を示す模式図である。
図4図4は、本開示の第2実施形態によるPOFの形状を特定する方法を示すフローチャートである。
図5図5は、POFにおけるコアの偏心量を説明するための模式図である。
図6図6は、本開示の第3実施形態によるPOFの製造方法を示すフローチャートである。
図7図7は、本開示の第4実施形態によるPOFの製造方法を示すフローチャートである。
図8図8は、実施例においてPOFの製造に使用した製造装置を示す概略断面図である。
図9図9は、実施例1のPOFの第二の末端の近傍における光強度の面分布を示す。
図10図10は、比較例3のPOFの第二の末端から出射される透過光をマイクロスコープで観察した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(用語の定義)
本明細書において、POFの長さとは、POFの軸方向の長さのことであり、第一の末端から第二の末端までの長さである。
【0018】
本明細書において、POFのコア径とは、コアの外径のことである。コアの外径は、IEC60793-1-20及びIEC60793-2-40 subcategory A4h に準拠した手法のうち、波長850nmの光を用いたニアフィールドパターン法(以下、「NFP法」という)によって測定される光強度5%の径である。光強度5%の径とは、光強度のピーク値に対して5%の光強度を有する箇所によって特定される径のことである。
【0019】
本明細書において、「少なくともコアの外形及び被覆層の外形を同時に特定する」とは、一つの光強度の面分布の測定結果を用いて、コアの外形及び被覆層の外形の両方を特定することを意味する。
【0020】
(第1実施形態)
本開示の第1実施形態によるPOFの形状を特定する方法について説明する。
【0021】
第1実施形態によるPOFの形状を特定する方法は、コアと、当該コアの外周に配置されたクラッドと、当該クラッドの外周に配置された被覆層とを備えたPOFについて、少なくともコアの外形及び被覆層の外形を同時に特定する方法である。
【0022】
まず、形状を特定する対象のPOFについて説明する。図1は、コア、クラッド、及び被覆層を備えたPOFを示す断面図である。図1に示すように、形状を特定する対象のPOF10は、コア11と、コア11の外周に配置されたクラッド12と、クラッド12の外周に配置された被覆層13とを備える。言い換えると、図1に示すように、クラッド12は、コア11と被覆層13との間に設けられている。コア径はコア11の外形により決定されるコア11外径であり、図1において「D1」で示されている長さである。上述のとおり、本明細書において、コア径D1は、NFP法によって測定される光強度5%の径である。また、被覆層13の外径は、被覆層13の外形により決定され、図1において、「D2」で示されている長さである。
【0023】
形状を特定する対象のPOF10は、例えば、屈折率分布(GI)型のPOFであってもよい。
【0024】
コア11は、光を伝送する領域である。コア11は、クラッド12よりも高い屈折率を有する第1樹脂材料によって形成されている。この構成により、コア11内に入射した光は、クラッド12によってコア11内部に閉じ込められて、POF10内を伝搬する。コア11の第1樹脂材料は、例えば、第1樹脂と、屈折率調整剤等の添加剤とを含んでいてもよい。POF10が例えばGI型である場合、コア11は、径方向(図1の矢印を参照)に対して屈折率が変化する屈折率分布を有する。このような屈折率分布は、例えば、第1樹脂に屈折率調整剤を添加し、屈折率調整剤を第1樹脂中で拡散(例えば、熱拡散)させることによって、形成され得る。コア11に含まれる第1樹脂は、高い透明性を有する樹脂であればよく、特には限定されない。第1樹脂としては、例えば、含フッ素樹脂、メチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、及びカーボネート系樹脂等が挙げられる。第1樹脂としては、含フッ素樹脂が好適に用いられる。
【0025】
クラッド12は、光をコア11内に留めるために、コア11を構成する第1樹脂材料よりも低い屈折率を有する第2樹脂材料によって形成されている。第2樹脂材料は、例えば第2樹脂を含む。クラッド12に含まれる第2樹脂は、高い透明性を有する樹脂であればよく、特には限定されない。第2樹脂の例は、第1樹脂として用いることができる樹脂として例示したものと同じである。第1樹脂と同様に、第2樹脂としては、含フッ素樹脂が好適に用いられる。
【0026】
被覆層13は、通常、POF10の機械的強度を向上させるために、クラッド12の外周に設けられる。被覆層13は、通常、POF10の最外層として設けられている。すなわち、被覆層13の外径は、通常、POF10の外径とみなすことができる。被覆層13の材料としては、例えば、ポリカーボネート等の各種エンジニアリングプラスチック、ポリエステル、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、変性PTFE、及びテトラフルオロエチレン-パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、又はそれらの共重合体や混合体等が挙げられる。被覆層13の材料は、通常、コア11及びクラッド12の材料よりも高い屈折率を有している。被覆層13は、POF10の機械的強度を十分に向上させるために、通常、厚く(例えば、30μm以上220μm以下程度の厚み)設けられる。すなわち、一般的なPOF10の最外層として、屈折率の高い厚い層が存在している。このような被覆層13の存在により、従来の一般的なNFP法では、POF10の外形を特定することが困難である。
【0027】
図2は、第1実施形態によるPOFの形状を特定する方法を示すフローチャートである。図2に示すように、第1実施形態によるPOFの形状を特定する方法は、
(A)所定の長さを有するPOFの第一の末端からPOFに光を入射して、POFの第二の末端から上記光を出射させるとともに、第二の末端に落射光を照射すること(S11)と、
(B)上記第二の末端の近傍における光強度の面分布を測定すること(S12)と、
(C)上記の光強度の面分布の測定結果を用いて、コアの外形及び被覆層の外形を特定すること(S13)と、
を含む。
【0028】
第1実施形態による方法によれば、POFについて、コアの外形及び被覆層の外形を同時に特定することができる。第1実施形態による方法では、POFの第一の末端から光を入射し、POFの第二の末端からその光を出射させることに加えて、POFの第二の末端に落射光が照射される。第1実施形態による方法では、このような状態のPOFの第二の末端、すなわち第一の末端から入射してPOFを伝搬した光を出射し、かつそれと同時に落射光が照射されている状態のPOFの第二の末端に対し、その近傍における光強度の面分布、すなわちNFPが求められる。これにより、第1実施形態による方法によれば、光強度の面分布の測定結果から、コア11の外形だけでなく、同時に被覆層13の外形も特定することができる。
【0029】
第1実施形態による方法は、上記(C)において特定されたコアの外形及び被覆層の外形に基づいて、コア径及び被覆層の外径を計測すること、をさらに含んでもよい。この方法によれば、特定されたコア11の外形及び被覆層13の外形から、それぞれ、コア径D1及び被覆層13の外径D2を求めることができる。
【0030】
形状を特定する対象のPOF10の上記所定の長さは、例えば1m以上である。第1実施形態による方法によれば、1m以上の長さを有するPOF10について、コアの外形及び被覆層の外形を同時に求めることができ、さらにコア径D1及び被覆層の外径D2も同時に求めることができる。計測対象のPOF10の上記所定の長さは、例えば、200m以下であり、100m以下であってもよく、50m以下であってもよく、10m以下であってもよい。以上から、形状を特定する対象のPOF10の上記所定の長さは、例えば、1m以上200m以下であり、1m以上100m以下であってもよく、1m以上50m以下であってもよく、1m以上10m以下であってもよい。
【0031】
形状を特定する対象のPOF10において、第一の末端からPOF10に入射された光は、POF第二の末端において被覆層13の外表面まで到達しなくてもよい。例えば、被覆層13は、第一の末端からPOF10に入射された光が、POF第二の末端において被覆層13の外表面まで到達しないような材料によって形成されていてもよい。また、被覆層13は、第一の末端からPOF10に入射された光が、POF第二の末端において被覆層13の外表面まで到達しないような屈折率を有していてもよい。なお、「光が、POF第二の末端において被覆層13の外表面まで到達しない」とは、NFPの測定により被覆層の外表面で光が観測されないことを意味する。このような被覆層13を備えたPOF10であっても、第1実施形態による方法によれば、通常のNFP法によるPOF10への光の入射に加えて、光の出射端である第二の末端に落射光を照射することにより、光強度の面分布の測定結果から被覆層13の外形を特定して、外径D2を求めることができる。
【0032】
POF10の第二の末端に照射される落射光は、同軸落射光であってもよいし、側射光であってもよい。落射光としていずれを用いた場合でも、得られた光強度の面分布の測定結果から被覆層13の外形を決定することが可能であるので、コア11の外形及び被覆層13の外形を同時に特定し、さらにコア径D1及び被覆層13の外径D2を同時に求めることができる。被覆層13の外形をより正確に決定するために、同軸落射光を落射光として用いることが望ましい。
【0033】
図3は、本開示の第1実施形態によるPOFの形状を特定する方法を実施するための計測システムの一例を示す模式図である。
【0034】
図3に示すように、第1実施形態によるPOFの形状を特定する方法を実施するための計測システム100は、例えば、計測対象のPOF10の第一の末端10aに光を入射するための第1の光源20と、POF10の第二の末端10bから出射された光を用いて、第二の末端10bの近傍における光強度の面分布を測定するための光計測装置30と、を備える。
【0035】
またPOF10の第一の末端10aに入射する光を調整するために、光源20とPOF10の間に、適切なファイバー、モードスクランブラー、及び/又はモードフィルターを設置してもよい。
【0036】
第1の光源20は、IEC60793-1-20及びIEC60793-2-40 subcategory A4h に準拠した手法のうち、波長850nmの光を用いたNFP法によってコア径を計測するために用いられる光源である。したがって、第1の光源20には、例えば、850nmの波長を含む光を出射させることができる光源が使用できる。第1の光源20として、例えばLED(Light Emitting Diode)光源を使用することができ、一例として、ピーク発光波長が850nmであるLED光源を第1の光源20として使用することができる。
【0037】
光計測装置30は、対物レンズ31、結像レンズ32、及び検出器33を備える。対物レンズ31は、POF10の第二の末端10bから出射した光を拡大する。結像レンズ32は、対物レンズ31によって拡大された光を検出器33に結像させる。検出器33は、取り込まれた画像を用いて、第二の末端10bの近傍における光強度の面分布を測定する。検出器33は、検出器33で検出された情報を処理するためのPC(Personal Computer)等の情報処理装置(図示せず)及び画像出力装置(図示せず)等と接続されていてもよい。光計測装置30は、例えば、POF10の第二の末端10bに照射するための落射光用光学系(すなわち、落射光照射装置)をさらに備えていてもよい。例えば、同軸落射光を落射光として用いる場合、光計測装置30は、落射光用光学系として、例えば図3に示すように、同軸落射光用光源としての第2の光源34、同軸照射用レンズ35、及びハーフミラー36をさらに備えていてもよい。この場合、ハーフミラー36は、対物レンズ31と結像レンズ32との間に設けられる。なお、図3に示すように、対物レンズ31から結像レンズ32を経由して、検出器33にかけて記載された矢印は、POF10の第二の末端10bから出射された光の進行を示す。また、図3に示すように、第2の光源34から同軸照射用レンズ35に記載されている点線は、第2の光源34から出力された光の進行を示す。
【0038】
なお、落射光として同軸落射光が用いられる場合の光学系の構造は、図3に示されたハーフミラー36を備えた落射光用光学系に限定されない。POF10の第二の末端10bに同軸落射光を照射できる光学系であればよく、ハーフミラー36を用いない光学系であってもよい。
【0039】
POF10の第二の末端10bに照射される落射光には、例えば、POF10の第一の末端10aに入射される光の波長を含む落射光が用いられる。したがって、第2の光源34には、例えば、第1の光源20から出射される光の波長を含む光を出射できる光源が使用されるとよい。第2の光源34として、例えばLED光源を使用することができ、一例として、ピーク発光波長が850nmであるLED光源又は白色LED光源を第2の光源34として使用することができる。
【0040】
なお、第1実施形態による方法に用いられる計測システムは、上述の図3に示された計測システム100に限定されない。第1実施形態による方法を実施するための計測システムは、例えば、以下のような計測システムであってもよい:
コアと、前記コアの外周に配置されたクラッドと、前記クラッドの外周に配置された被覆層とを備えたPOFについて、少なくとも前記コアの外形及び前記被覆層の外形を同時に特定するための計測システムであって、
前記計測システムは、
前記POFの第一の末端に入射させる光を出射する第1の光源と、
前記第一の末端から入射した前記光を出射する前記POFの第二の末端に落射光を照射する落射光照射装置と、
前記POFの前記第二の末端の近傍の光強度の面分布を測定する光計測装置と、
を備える。
【0041】
上記計測システムは、上記光計測装置の計測結果に基づいて、上記コア及び上記被覆層の画像を出力する画像出力装置をさらに備えていてもよい。
【0042】
また、上記計測システムにおいて、上記落射光照射装置は、上記第2の光源と、当該第2の光源から出射された光を上記POFの第二の末端に導く光学系と、を含んでいてもよい。
【0043】
上述の第1実施形態による方法は、プログラムによって実施されてもよい。すなわち、第1実施形態による方法を実施するプログラムは、上述の第1実施形態の方法を実行するためのプログラムであってもよい。第1実施形態による方法を実施するプログラムは、コンピュータによって実行可能なプログラムである。当該プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であってもよい。また、当該プログラムは、インターネット等の手段を介して提供されてもよい。
【0044】
(第2実施形態)
本開示の第2実施形態によるPOFの形状を特定する方法について説明する。
【0045】
第2実施形態による方法では、第1実施形態による方法によって得られた光強度の面分布の測定結果を用いて、コアの外形及び被覆層の外形を同時に特定することに加えて、さらにコアの偏心量も求める。すなわち、第2実施形態による方法では、第1実施形態による方法において、光強度の面分布の測定結果を用いて、コア11の中心の位置及び被覆層13の中心の位置を求め、コア11の中心と被覆層13の中心との距離を計算して偏心量を求めること、をさらに含む。
【0046】
図4は、第2実施形態によるPOFの形状を特定する方法を示すフローチャートである。図4に示すように、第2実施形態によるPOFの方法は、
(a)所定の長さを有するPOFの第一の末端からPOFに光を入射して、POFの第二の末端から上記光を出射させるとともに、第二の末端に落射光を照射すること(S21)と、
(b)上記第二の末端の近傍における光強度の面分布を測定すること(S22)と、
(c)上記の光強度の面分布の測定結果を用いて、コアの外形及び被覆層の外形を求め、さらにコアの偏心量を求めること(S23)と、
を含む。
【0047】
なお、S21及びS22は、それぞれ、第1実施形態で説明したS11及びS12と同じである。
【0048】
図5は、POFにおけるコアの偏心量を説明するための模式図である。図5において、偏心量は「A」で示されている。図5に示すように、偏心量Aは、コア11の中心位置C1と被覆層13の中心位置C2との間の距離である。コア11の中心位置C1及び被覆層13の中心位置C2は、共に、光強度の面分布の測定結果を用いて、以下の手順で求められる。
(a)光強度の変化するポイントをコア径や被覆層の外径エッジとして1度ごとに360点捉えること
(b)その360点に基づいて近似円を描くこと
(c)その近似円に基づいて中心位置を特定すること
【0049】
第1実施形態で説明したとおり、第1実施形態による方法によれば、光強度の面分布の測定結果を用いて、コア11の外形及び被覆層13の外形を同時に特定することができる。第2実施形態による方法において測定される光強度の面分布は、第1実施形態による方法において測定される光強度の面分布と同様の方法で得られるものである。したがって、第1実施形態による方法によっても、同様に、コア11の外形及び被覆層13の外形を同時に特定することができる。第2実施形態による方法では、特定されたコア11の外形から、コア11の中心位置C1を求めることができる。同様に、第2実施形態による方法では、特定された被覆層13の外形から、被覆層13の中心位置C2を求めることができる。なお、第2実施形態による方法において、特定されたコア11の外形及び被覆層13の外形から、コア径D1及び被覆層の外径D2を計測して同時に求めてもよい。
【0050】
第2実施形態による方法によれば、被覆層13の中心位置C2を従来よりも正確に求めることができるので、コア11の偏心量を従来よりも正確に求めることができる。したがって、例えば、取得された偏心量に基づいてPOF10の製造条件を調整することで、偏心量が低減されることによって優れた特性を実現できるPOF10を製造することが可能となる。
【0051】
第2実施形態による方法においては、上述のとおり、光強度の面分布から、コア11の中心位置C1及び被覆層13の中心位置C2を求めることができる。ただし、第2実施形態による方法は、これに限定されず、別の例として、光強度の面分布の測定結果に基づいてコア11及び被覆層13の画像を得ることをさらに含んでいてもよい。この場合、コア11の中心位置C1及び被覆層13の中心位置C2が、上記画像を用いて求められ、コア11の中心位置C1と被覆層13の中心位置C2との距離が計算されることによって、偏心量が求められる。このように、光強度の面分布から画像を経由して偏心量が求められてもよく、この方法によっても従来よりも正確に偏心量を求めることができる。
【0052】
第2実施形態による方法も、第1実施形態による方法を実施するための計測システムと同様のシステムを用いて実施されうる。すなわち、図3に示された計測システムを利用することができる。
【0053】
上述の第2実施形態による方法は、プログラムによって実施されてもよい。すなわち、第2実施形態による方法を実施するプログラムは、上述の第2実施形態の方法を実行するためのプログラムであってもよい。第2実施形態による方法を実施するプログラムは、コンピュータによって実行可能なプログラムである。当該プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であってもよい。また、当該プログラムは、インターネット等の手段を介して提供されてもよい。
【0054】
(第3実施形態)
本開示の第3実施形態によるPOFの製造方法について説明する。
【0055】
図6は、本開示の第3実施形態によるPOFの製造方法を示すフローチャートである。図6に示すように、第3実施形態によるPOFの製造方法は、
(I)コアと、コアの外周に配置されたクラッドと、クラッドの外周に配置された被覆層とを備えた、検査用POFを作製すること(S31)と、
(II)上記検査用POFに対し、第1実施形態又は第2実施形態によるPOFの形状を特定する方法を実施して、上記検査用POFの形状を特定すること(S32)と、
(III)上記(II)で特定された上記検査用POFの形状に基づいて、POFの製造条件を決定すること(S33)と、
(IV)上記(III)で決定された製造条件に基づいて、POFを製造すること(S34)と、
を含む。
【0056】
第3実施形態による製造方法では、第1実施形態による方法又は第2実施形態による方法によって特定されたPOFの形状に基づいて、POFの製造条件を決定する。したがって、第3実施形態による製造方法によれば、所望の形状(例えば、所望のコア径及び被覆層の外径、所望のコアの偏心量等)を有するPOFを、正確に、安定して製造することができる。
【0057】
上記(I)において作製される検査用POFは、製造目的のPOFと同様の構成を有するものを、同様の材料を用いて作製される。検査用POFの作製に用いられる製造装置には、POFの製造に用いられる装置と同じものが使用される。
【0058】
上記(II)において検査用POFに対して実施される方法は、第1実施形態及び第2実施形態で詳細に説明されているとおりである。これにより、検査用POFの形状(すなわち、少なくともコアの外形及び被覆層の外形)が特定される。上記(II)において、、検査用POFの形状として、例えば、コア径、被覆層の外径、コアの偏心量等が特定されてもよい。
【0059】
上記(III)において、上記(II)で特定された上記検査用POFの形状に基づいて、POFの製造条件が決定される。決定される製造条件は、特には限定されない。調整したいPOFの構成に応じて、その構成に影響を及ぼす製造条件を適宜選択して決定することができる。例えば、POFの材料として用いられる樹脂材料を加熱する際の温度条件、樹脂材料の吐出条件等が調整されて決定されてもよい。
【0060】
所望の形状を有するPOFを製造しうる製造条件が確定するまで、上記(I)から(III)が繰り返し実施されてもよい。
【0061】
上記(IV)において、上記(III)で決定された製造条件に基づいてPOFを製造する。
【0062】
(第4実施形態)
本開示の第4実施形態によるPOFの製造方法について説明する。
【0063】
図7は、本開示の第4実施形態によるPOFの製造方法を示すフローチャートである。図7に示すように、第4実施形態によるPOFの製造方法は、
(i)コアと、コアの外周に配置されたクラッドと、クラッドの外周に配置された被覆層とを備えた、POFを作製すること(S41)と、
(ii)上記(i)で作製されたPOFの中から所定の数のPOFを抜き取り、抜き取られたPOFに対して第1実施形態又は第2実施形態による方法を実施して、POFの品質検査を行うこと(S42)と、
を含む。
【0064】
第4実施形態による製造方法では、第1実施形態による方法又は第2実施形態による方法を、POFの抜き取りの品質検査に用いることができる。したがって、第4実施形態による製造方法によれば、所望の形状(例えば、所望のコア径及び被覆層の外径、所望のコアの偏心量等)を有するPOFを提供することができる。
【実施例0065】
(形状を特定する対象のPOFの作製)
[含フッ素樹脂の作製]
含フッ素樹脂として、パーフルオロ-4-メチル-2-メチレン-1,3-ジオキソラン(PFMMD)の重合体を準備した。パーフルオロ-4-メチル-2-メチレン-1,3-ジオキソランは、まず2-カルボメチル-2-トリフルオロメチル-4-メチル-1,3-ジオキソランを合成し、これをフッ素化し、得られたカルボン酸塩を脱炭酸分離することによって合成された。パーフルオロ-4-メチル-2-メチレン-1,3-ジオキソランの重合には、重合開始剤として、パーフルオロ過酸化ベンゾイルが用いられた。
【0066】
以下に、2-カルボメチル-2-トリフルオロメチル-4-メチル-1,3-ジオキソランの合成、2-カルボメチル-2-トリフルオロメチル-4-メチル-1,3-ジオキソランのフッ素化、パーフルオロ-4-メチル-2-メチレン-1,3-ジオキソランの合成、及びパーフルオロ-4-メチル-2-メチレン-1,3-ジオキソランの重合について、詳細を説明する。
【0067】
<2-カルボメチル-2-トリフルオロメチル-4-メチル-1,3-ジオキソランの合成>
水冷冷却器を備えた3L三口フラスコ、温度計、マグネチックスターラー、及び等圧滴下漏斗を準備し、2-クロロ-1-プロパノールと1-クロロ-2-プロパノールとの混合物を139.4g(計1.4モル)をフラスコに投入した。フラスコは0℃に冷やし、その中にトリフルオロピルビン酸メチルをゆっくりと加え、さらに2時間攪拌した。そこに100mLのジメチルスルホキシド(DMSO)と194gの炭酸カリウムとを1時間かけて加えた後、さらに続けて8時間攪拌し、反応混合物を得た。この生成した反応混合物を1Lの水と混合し、その水相をわけ、これを更にジクロロメチレンで抽出後、このジクロロメチレン溶液を有機反応混合物相と混合し、その溶液を硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を除去した後、245.5gの粗製物が得られた。この粗製物を減圧下(12Torr)で分留し、2-カルボメチル-2-トリフルオロメチル-4-メチル-1,3-ジオキソランの精製物を230.9g得た。精製物の沸点は、77~78℃で、収率は77%であった。なお、得られた精製物が2-カルボメチル-2-トリフルオロメチル-4-メチル-1,3-ジオキソランであることは、HNMR及び19FNMRによって確認された。
【0068】
HNMR(ppm):4.2-4.6,3.8-3.6(CHCH2,muliplet,3H),3.85-3.88(COOCH3,multiplet,3H),1.36-1.43(CCH3,multiplet,3H)
19FNMR(ppm):-81.3(CF3,s,3F)
【0069】
<2-カルボメチル-2-トリフルオロメチル-4-メチル-1,3-ジオキソランのフッ素化>
10Lの攪拌反応槽に4Lの1,1,2-トリクロロトリフルオロエタンを注入した。攪拌反応槽で、窒素を1340cc/minの流速で流し、フッ素を580cc/minの流速で流し、窒素/フッ素の雰囲気下とした。5分後、先に準備した2-カルボメチル-2-トリフルオロメチル-4-メチル-1,3-ジオキソランの290gを750mLの1,1,2-トリクロロトリフルオロエタン溶液に溶かし、この溶液を反応槽に0.5ml/分の速度で加えた。反応槽は0℃に冷却した。全てのジオキソランを24時間で加えた後、フッ素ガス流を止めた。窒素ガスをパージした後、水酸化カリウム水溶液を弱アルカリ性になるまで加えた。
【0070】
減圧下で揮発物質を除去した後、反応槽の周囲を冷却し、その後48時間70℃の減圧下で乾燥して、固体の反応生成物を得た。固形の反応生成物は、500mLの水に溶解させ、過剰の塩酸を添加して、有機相と水相とに分離させた。有機相を分離して減圧下で蒸留し、パーフルオロ-2,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-カルボン酸を得た。主蒸留物の沸点は103℃-106℃/100mmHgであった。フッ素化の収率は、85%であった。
【0071】
<パーフルオロ-4-メチル-2-メチレン-1,3-ジオキソランの合成>
上記蒸留物を水酸化カリウム水溶液で中和し、パーフルオロ-2,4-ジメチル-2-カルボン酸カリウム-1,3-ジオキソランを得た。このカリウム塩を1日間70℃で真空乾燥した。250℃~280℃で、かつ窒素又はアルゴン雰囲気下で、塩を分解した。-78℃に冷やした冷却トラップで凝縮させ、収率82%でパーフルオロ-4-メチル-2-メチレン-1,3-ジオキソランを得た。生成物の沸点は45℃/760mmHgであった。19FNMRとGC-MSを用いて生成物を同定した。
【0072】
19FNMR:-84ppm(3F,CF3),-129ppm(2F,=CF2
GC-MS:m/e244(Molecular ion)225,197,169,150,131,100,75,50.
【0073】
<パーフルオロ-4-メチル-2-メチレン-1,3-ジオキソランの重合>
上記方法で得られたパーフルオロ-4-メチル-2-メチレン-1,3-ジオキソラン100gと、パーフルオロ過酸化ベンゾイル1gとをガラスチューブに封入した。このガラスチューブは、凍結脱気法によって系中の酸素が除去された後にアルゴンが再充填されて、50℃で数時間加熱された。内容物は固体となったが、さらに70℃で一晩加熱すると、100gの透明な棒状物が得られた。
【0074】
得られた透明棒状物をFluorinert FC-75(住友スリーエム社製)に溶かし、得られた溶液をガラス板に注ぎ、重合体の薄膜を得た。得られた重合体のガラス転移温度は117℃で、完全な非晶質であった。透明棒状物をヘキサフルオロベンゼンに溶かし、これにクロロホルムを加え沈殿させることで、生成物を精製させた。精製された重合体のガラス転移温度は、約131℃であった。この重合体を、含フッ素樹脂とした。
【0075】
[屈折率調整剤]
屈折率調整剤として、クロロトリフルオロエチレンオリゴマー(分子量585)を用いた。具体的には、ダイキン工業社製「ダイフロイル#10」を蒸留し、分子量585の成分のみを分取した。分取した分子量585の成分を孔径40nmのフィルター「DFA1ANDESW44」(PALL社製)でろ過し、屈折率調整剤を得た。
【0076】
[第1コア材料]
上記の方法で作製した含フッ素樹脂を、溶媒であるバートレルXF-UP(三井・ケマーズ フロロプロダクツ社製)に溶解した。溶解液を孔径100nmのフィルター「LPJ-CTA-001-N3」(ロキテクノ社製)で2回ろ過し、そのろ過液を260℃に加熱されたハステロイ製の容器に滴下して溶媒を蒸発させて、乾固させた。乾固させて得られたろ過処理後の含フッ素樹脂と、上記の屈折率調整剤とを、260℃にて溶融混合して樹脂組成物を作製した。得られた樹脂組成物における屈折率調整剤の濃度は、12質量%であった。この樹脂組成物を第1コア材料として用いた。
【0077】
[第2コア材料]
上記の方法で作製した含フッ素樹脂を、第1コア材料の作製における含フッ素樹脂のろ過と同様の方法でろ過し、ろ過処理後の含フッ素樹脂を得た。このろ過処理後の含フッ素樹脂を、第2コア材料として用いた。
【0078】
[クラッド材料]
フッ素樹脂としての「Teflon AF1600」(三井・ケマーズ フロロプロダクツ社製)と、粘度調整剤としての「Fomblin YR」(Solvay社製)とを、溶媒であるバートレルXF-UP(三井・ケマーズ フロロプロダクツ社製)に溶解した。なお、「Teflon AF1600」と「Fomblin YR」との混合比率は、質量比で、「Teflon AF1600」:「Fomblin YR」=7:3とした。得られた溶解液を孔径300nmのフィルター「LPA-SLF-003-N2」(ロキテクノ社製)でろ過し、そのろ過液を260℃に加熱されたハステロイ製の容器に滴下して溶媒を蒸発させて、乾固させた。乾固させて得られた樹脂組成物を、クラッド材料として用いた。
【0079】
[被覆層材料]
被覆層材料として、Xylex(SABIC社製、ガラス転移温度:113℃)を用いた。
【0080】
[POF]
上記の方法で準備した第1コア材料、第2コア材料、クラッド材料、及び被覆層材料を用い、溶融紡糸法によって、図1に示されたPOF10と同様の構成を有するPOFを作製した。図8は、実施例においてPOFの製造に使用した製造装置を示す概略断面図である。
【0081】
図8に示された装置1000は、第1コア材料を押出成形するための第1押出装置101a、第2コア材料を押出成形するための第2押出装置101b、クラッド材料を押出成形するための第3押出装置101c、及び被覆層形成用の第4押出装置101dを備える。
【0082】
第1押出装置101aは、第1コア材料1aを収容する第1収容部102aと、第1収容部102aに収容されている第1コア材料1aを第1収容部102aから押し出す第1押出部103aとを有する。第1押出装置101aには、第1収容部102aで第1コア材料1aを溶融させることができるように、さらに溶融された第1コア材料1aが成形されるまで溶融状態を保つことができるように、加熱部(図示せず)がさらに設けられている。ロッド状の第1コア材料(プリフォーム)1aが、第1収容部102aの上方の開口部を通じて第1収容部102a内に挿入されて、第1収容部102a内で加熱されることによって溶融される。
【0083】
第1押出装置101aにおいては、第1コア材料1aは、ガス押出によって、第1押出部103aを介して第1収容部102aからコア内層部2を形成するように外に押し出される。第1押出部103aを介してコア内層部2を形成するように押し出された第1コア材料1aは、その後鉛直方向下方に移動し、第1室110に供給される。
【0084】
第2押出装置101bは、第2コア材料1bを収容する第2収容部102bと、第2収容部102bに収容されている第2コア材料1bを第2収容部102bから押し出す第2押出部103bとを有する。第2押出装置101bは、溶融した第2コア材料を、第1押出装置101aから押し出された第1コア材料1aで形成されたコア内層部2の外周を被覆するように押し出す。具体的には、第2押出装置101bから押し出された第2コア材料は、第1室110に供給される。第1室110内において、第1コア材料1aで形成されるコア内層部2を第2コア材料で被覆することによって、コア内層部2の外周を覆うコア外周部3を形成することができる。コア内層部2と、コア内層部2の外周を被覆するコア外周部3とで形成された積層体4は、第1室110から第1室110の鉛直方向下方に配置された拡散管120に移動する。拡散管120には、この積層体を加熱するためのヒーター(図示せず)が配置されている。拡散管120は、拡散管120の内部を通過する積層体4のコア内層部2に含まれる屈折率調整剤等のドーパントを、コア外周部3に向かって拡散させる。すなわち、コア内層部2とコア外周部3とによって、最終的にコアが形成される。
【0085】
第3押出装置101cは、クラッド材料1cを収容する第3収容部102cと、第3収容部102cに収容されているクラッド材料1cを第3収容部102cから押し出す第3押出部103cとを有する。第3押出装置101cは、溶融したクラッド材料1cを、拡散管120を通過した積層体4の外周を被覆するように押し出す。具体的には、第3押出装置101cから押し出されたクラッド材料1cは、第2室130に供給される。第2室130内において、積層体4(すなわちコア)をクラッド材料1cで被覆することによって、コアの外周を覆うクラッド5を形成することができる。なお、以下、積層体4をコア4という。コア4とクラッド5で形成された積層体は、第2室130から第2室130の鉛直方向下方に配置された第3室140に移動する。
【0086】
第4押出装置101dは、被覆層材料1dを収容する第4収容部102d、第4収容部102d内に配置されたスクリュー104、及び、第4収容部102dに接続されたホッパー105を備えている。第4押出装置101dでは、例えばペレット状の被覆層材料1dが、ホッパー105を通じて、第4収容部102dに供給される。第4収容部102dに供給された被覆層材料1dは、加熱されながらスクリュー104によって混錬されることによって、軟化して流動可能となる。軟化した被覆層材料1dは、スクリュー104によって第4収容部102dから押し出される。
【0087】
第4押出装置101dから押し出された被覆層材料1dは、第3室140に供給される。第3室140内において、コア4及びクラッド5で形成された積層体の表面を被覆層材料1dで被覆することによって、クラッド5の外周を覆う被覆層6が形成される。
【0088】
コア4、クラッド5、及び被覆層6が同心円状に積層された積層体7は、第3室140からノズル150の流入口を介して内部流路に流入する。積層体7は、内部流路を通過して縮径されて、ノズル150の吐出口からファイバー状に吐出される。
【0089】
ノズル150の吐出口からファイバー状に吐出された積層体7は、冷却管160の内部空間161内に流入し、内部空間161内を通過しながら冷却されて、開口部から冷却管160の外へ放出される。冷却管160から放出された積層体7は、ニップロール170が有する2つのロール171及び172の間を通過し、さらにガイドロール173~175を経由して、POF10として巻き取りロール176に巻き取られる。巻き取りロール176の近傍、例えばガイドロール175と巻き取りロール176との間、においてPOF10の外径を測定する変位計180をさらに備えていた。
【0090】
本実施例において、第1コア材料の溶融温度は250℃、第2コア材料の溶融温度は255℃、クラッド材料の溶融温度は260℃、被覆層材料の溶融温度は240℃であった。また、拡散管120の温度は275℃に設定された。第1コア材料と第2コア材料とでコアが形成された。コア、クラッド、及び被覆層からなる積層体7の引き落としの温度は、240℃であった。
【0091】
各材料の吐出の体積割合は、第1コア材料1に対して、第2コア材料1.5、クラッド材料1.5、被覆層材料50の比率にて、溶融押出を行った。また、拡散時間、すなわち拡散管120内を積層体が通過する時間を、960secとした。
【0092】
以上の方法で製造されたPOFについて、以下の実施例1及び比較例1から5の方法で、コア及び被覆層の計測を行った。
【0093】
(実施例1)
図3に示された計測システム100と同様のシステムを用いて、上記の方法で作製されたPOFのコア及び被覆層の形状を特定した。具体的には、コアの外形及び被覆層の外形を特定し、コアの外径及び被覆層の外径を求め、さらにコアの中心位置及び被覆層の中心位置を求めて偏心量を測定した。
【0094】
<使用した装置及びPOF>
・第1の光源:澤木工房社製FOLS-01 波長850nm
・第2の光源(落射光源):CCS社製LS-EL001/850
・光計測装置:シナジーオプトシステム社製 M-Scpoe TypeS
・POF:(計測対象のPOFの作製)に記載されているもの、長さ6m
【0095】
具体的な手順は次の通りである。はじめに、第1の光源、POF、光計測装置を接続した。光計測装置には、落射光源である第2の光源を含む落射光用光学系を設けた。このようにして、POFの第二の末端から出射された光に対して、従来のNFP法による測定を実施するための装置に落射光源を併用した光計測装置を用いて計測を行った。その結果は、図9に示される。図9は、実施例1のPOFの第二の末端の近傍における光強度の面分布を示す。
【0096】
実施例1で計測されたコア径は49μm、被覆層の外径は235μmであった。また、偏心量は0.3μmであった。なお、実施例1で求めたコア径は、輝度が5%のところを360°検出し、その360点の平均値から求められた径である。また、輝度が100%のところとは、コアの中でも輝度が最も高いところを意味する。
【0097】
(比較例1)
落射光源を光計測装置に設けなかった点を除き、実施例1と同様の方法でコア及び被覆層の計測を試みた。しかし、被覆層の外形を決定できなかったため被覆層の外径を求めることができず、偏心量を測定できなかった。なお、比較例1で計測されたコア径は、49μmであった。
【0098】
(比較例2)
下記の装置等を用いて、POFのコア及び被覆層の計測を試みた。
【0099】
<使用した装置及びPOF>
・第2の光源(落射光源):CCS社製PJ2-1505-2CA-PE
・光計測装置:シナジーオプトシステム社製 M-Scpoe TypeS
・POF:(計測対象のPOFの作製)に記載されているもの、長さ6m
【0100】
具体的な手順は次の通りである。はじめに、POFと光計測装置とを接続した。ついで、落射光源を用いてPOFの第二の末端に光を照射した。出力した画像からコア径と、被覆層の外径とを算出した。すなわち、比較例2では、第1の光源を使用せず、POFの第二の末端に落射光を照射して画像を出力した。比較例2で得られた画像では、コア部分より被覆層部分の光強度が高く、光強度の5%を検出することがそもそもできず、コア径を求めることができなかった。
【0101】
(比較例3)
POFを2cmに切断し、デジタルマイクロスコープ:キーエンス社製VHX-950Fの資料台に対してPOFの軸が垂直になるようにPOFを設置した。マイクロスコープ付属の光源をPOFの第一の末端に照射し、第二の末端から出射される透過光を観察し、POFのコア及び被覆層を計測した。観察した結果が、図10に示される。図10は、比較例3のPOFの第二の末端から出射される透過光をマイクロスコープで観察した結果を示す。
【0102】
出力した画像からコア径と、被覆層の外径とを算出した。比較例3で計測されたコア径は51μm、被覆層の外径は235μm、偏心量は0.6μmであった。しかし、用いたPOFの長さは2cmであった。比較例3の方法では数cm程度の長さのPOFのコア径及び被覆層の外径しか測定できず、さらにIEC60793-1-20及びIEC60793-2-40に記載のコア径とは測定の手法が異なっており、正しいコア径とは言えなかった。
【0103】
(比較例4)
比較例1と同様の方法で画像(第1の画像)を出力した。また、比較例3と同様の方法で画像(第2の画像)を出力した。そして、第1の画像と第2の画像とを用いて、これらの画像を合成することで、POFのコア及び被覆層の計測を試みた。
【0104】
画像を合成する際の基準として、比較例1及び比較例3の手法で測定したコア径を基に合成しようと試みたが、比較例1及び比較例3の手法で測定したコア径の大きさが異なっており、コア径が重ならず、第1の画像と第2の画像との合成ができなかった。したがって、第1の画像と第2の画像との合成画像を用いてコア径、被覆層の外径、及び偏心量の計測はできなかった。
【0105】
(比較例5)
下記の装置等を用いて、POFのコア及び被覆層を計測しようと試みた。すなわち、ラマン/TOF-SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析法)の方法を使用して計測を試みた。
【0106】
<使用した装置及びPOF>
・TOF-SIMS:アルバック・ファイ社製TRIFT V
・POF:(計測対象のPOFの作製)に記載のもの、長さ2mm
【0107】
測定対象のPOFについて、ミクロトームにて平滑面を得た。この平滑面は、POFの軸方向に垂直な面であった。この平滑面に、一次イオンを照射した。照射した一次イオンとしてはBi3 ++イオンを用い、加速電圧を30kVに調整した。
【0108】
コア径を求めるため、コアに添加されている屈折率調整剤の塩素イオンに着目し、質量数m/z35のイオンの強度分布を得た。強度分布像から一軸のラインプロファイルを作成し、ピーク強度の5%の強度を求め、コア径を求めた。
【0109】
被覆層の外径を求めるため、被覆層に含まれるポリカーボネート樹脂中のビスフェノールAの構造に着目し、質量数m/z211のイオン強度分布を得た。強度分布像から一軸のラインプロファイルを作成し、被覆層と空間の境界部を求め、被覆層の外径を求めた。
【0110】
結果、比較例5で計測されたコア径は50μm、被覆層の外径は235μm、偏心量は0.6μmであった。比較例5では、用いたPOFの長さは2mmであった。比較例5の方法では数mm程度の長さのPOFのコア径及び被覆層の外径しか測定できず、さらにIEC60793-1-20及びIEC60793-2-40に記載のコア径とは測定の手法が異なっており、正しいコア径とは言えなかった。
【0111】
以上の実施例1及び比較例1から5の結果から、本開示の形状を特定する方法を実施した実施例1のみが、コアの外形と被覆層の外形とを同時に特定して、被覆層の外径と、IEC60793-1-20及びIEC60793-2-40に記載のコア径とを同時に、そして正確に計測することが可能であった。
【0112】
比較例1の従来のNFP法のみでの計測では、被覆層の外形を特定することができないため被覆層の外径を測定することができず、その結果、偏心量を求めることができなかった。
【0113】
比較例2の落射光のみを使用した計測では、被覆層の外形を特定して被覆層の外径を計測することはできたが、計測されたコア径がそもそもIEC60793-1-20及びIEC60793-2-40に記載のコア径ではなく、IEC60793-1-20及びIEC60793-2-40に記載コア径と被覆層の外径とを同時に計測することができなかった。したがって、比較例2では、正確に偏心量を計測することも不可能であった。
【0114】
比較例3のデジタルマイクロスコープを使用した方法では、数cm程度の長さのPOFの計測しかできず、さらにIEC60793-1-20及びIEC60793-2-40に記載のコア径とは測定の手法が異なっており、正しいコア径とは言えなかった。
【0115】
比較例4の、NFP法で得られる画像とデジタルマイクロスコープを使用して得られる画像とを合成し、得られた合成画像を用いてコア及び被覆層を計測する方法は、そもそも第1の画像と第2の画像との合成がでず、合成画像からのコア径、被覆層の外径、及び偏心量の計測はできなかった。
【0116】
比較例5のラマン/TOF-SIMSを使用した方法では、被覆層の外径を計測することはできたが、計測されたコア径がそもそもIEC60793-1-20及びIEC60793-2-40に記載のコア径ではなく、IEC60793-1-20及びIEC60793-2-40に記載コア径と被覆層の外径とを同時に計測することができなかった。したがって、比較例5では、正確に偏心量を計測することも不可能であった。また、比較例5の方法では、数mm程度の長さのPOFの計測しかできなかった。
【0117】
[付記]
以上をまとめると、本開示の発明の一形態は、下記である。
【0118】
(1)
コアと、前記コアの外周に配置されたクラッドと、前記クラッドの外周に配置された被覆層とを備えたプラスチック光ファイバーについて、少なくとも前記コアの外形及び前記被覆層の外形を同時に特定する方法であって、
前記方法は、
(A)所定の長さを有する前記プラスチック光ファイバーの第一の末端から、前記プラスチック光ファイバーに光を入射して、前記プラスチック光ファイバーの第二の末端から前記光を出射させるとともに、前記第二の末端に落射光を照射することと、
(B)前記第二の末端の近傍における光強度の面分布を測定することと、
(C)前記光強度の前記面分布の測定結果を用いて、前記コアの前記外形及び前記被覆層の前記外形を特定することと、
を含む、プラスチック光ファイバーの形状を特定する方法。
【0119】
(2)
前記(C)において特定された前記コアの前記外形及び前記被覆層の前記外形に基づいて、コア径及び前記被覆層の外径を計測すること、
をさらに含む、上記(1)に記載の方法。
【0120】
(3)
前記光強度の前記面分布は、対物レンズ及び結像レンズを備えた光計測装置によって測定され、
前記落射光は、同軸落射光である、
上記(1)又は(2)に記載の方法。
【0121】
(4)
前記光計測装置は、前記対物レンズと前記結像レンズとの間に設けられたハーフミラーをさらに備え、
前記落射光は、前記ハーフミラーによって、前記同軸落射光として前記第二の末端に導かれる、
上記(3)に記載の方法。
【0122】
(5)
前記所定の長さは、1m以上である、
上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の方法。
【0123】
(6)
前記光強度の前記面分布の前記測定結果を用いて、前記コアの中心の位置及び前記被覆層の中心の位置を求め、前記コアの中心と前記被覆層の中心との距離を計算して偏心量を求めること、
をさらに含む、上記(1)から(5)のいずれか1つに記載の方法。
【0124】
(7)
前記光強度の前記面分布の前記測定結果に基づいて、前記コア及び前記被覆層の画像を得ること、
をさらに含み、
前記コアの前記中心の位置及び前記被覆層の前記中心の位置が、前記画像を用いて求められ、前記コアの前記中心と前記被覆層の前記中心との距離が計算されることによって、前記偏心量が求められる、
上記(6)に記載の方法。
【0125】
(8)
前記第一の末端から前記プラスチック光ファイバーに入射された前記光は、前記第二の末端において前記被覆層の外表面まで到達しない、
上記(1)から(7)のいずれか1つに記載の方法。
【0126】
(9)
上記(1)から(8)のいずれか1つに記載の方法を実行するためのプログラム。
【0127】
(10)
(I)コアと、前記コアの外周に配置されたクラッドと、前記クラッドの外周に配置された被覆層とを備えた、検査用プラスチック光ファイバーを作製することと、
(II)前記検査用プラスチック光ファイバーに対し、上記(1)から(8)のいずれか1つに記載の方法を実施して、前記検査用プラスチック光ファイバーの形状を特定することと、
(III)前記(II)で特定された前記検査用プラスチック光ファイバーの形状に基づいて、プラスチック光ファイバーの製造条件を決定することと、
(IV)前記(III)で決定された前記製造条件に基づいて、プラスチック光ファイバーを製造することと、
を含む、プラスチック光ファイバーの製造方法。
【0128】
(11)
(i)コアと、前記コアの外周に配置されたクラッドと、前記クラッドの外周に配置された被覆層とを備えた、プラスチック光ファイバーを作製することと、
(ii)前記(i)で作製された前記プラスチック光ファイバーの中から所定の数のプラスチック光ファイバーを抜き取り、抜き取られた前記プラスチック光ファイバーに対して上記(1)から(8)のいずれか1つに記載の方法を実施して、前記プラスチック光ファイバーの品質検査を行うことと、
を含む、プラスチック光ファイバーの製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本開示の形状を特定する方法は、例えばPOFのコアの外形及び被覆層の外形を同時に計測することができるので、例えば、POFのコアの偏心量の測定及びPOFの品質検査に適している。
【符号の説明】
【0130】
1a 第1コア材料
1b 第2コア材料
1c クラッド材料
1d 被覆層材料
2 コア内層部
3 コア外周部
4 積層体(コア)
5 クラッド
6 被覆層
7 積層体
10 POF
10a 第一の末端
10b 第二の末端
11 コア
12 クラッド
13 被覆層
20 第1の光源
30 光計測装置
31 対物レンズ
32 結像レンズ
33 検出器
34 第2の光源
35 同軸照射用レンズ
36 ハーフミラー
100 計測システム
101a 第1押出装置
101b 第2押出装置
101c 第3押出装置
101d 第4押出装置
102a 第1収容部
102b 第2収容部
102c 第3収容部
102d 第4収容部
103a 第1押出部
103b 第2押出部
103c 第3押出部
104 スクリュー
105 ホッパー
110 第1室
120 拡散管
130 第2室
140 第3室
150 ノズル
160 冷却管
161 内部空間
170 ニップロール
171,172 ロール
173,174,175 ガイドロール
176 巻き取りロール
180 変位計
1000 製造装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10