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特開2024-122766振動検出システム、振動検出方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122766
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】振動検出システム、振動検出方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01V 1/01 20240101AFI20240902BHJP
   G01V 1/00 20240101ALI20240902BHJP
   G08B 13/02 20060101ALI20240902BHJP
   G01H 1/00 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
G01V1/00 D
G01V1/00 A
G08B13/02 A
G01H1/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030491
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上村 和久
【テーマコード(参考)】
2G064
2G105
5C084
【Fターム(参考)】
2G064AA05
2G064AB02
2G064BA02
2G064BD02
2G064DD02
2G105AA01
2G105AA03
2G105BB01
2G105EE02
2G105GG03
2G105HH01
2G105JJ05
2G105MM02
2G105NN02
5C084AA02
5C084AA08
5C084AA13
5C084BB33
5C084DD79
5C084EE01
5C084HH01
5C084HH07
(57)【要約】
【課題】地震発生時以外においても活用可能な振動検出システム、振動検出方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】振動検出システム1は、建物90が受けた振動を検出するシステムであり、建物90の基部91に設けられた第1の振動検出器11から振動に関する第1の振動データを収集すると共に、基部91の上に構築された建物90の上部95に設けられた第2の振動検出器12から振動に関する第2の振動データを収集する収集部31と、収集部31が収集した第1の振動データ及び第2の振動データに基づいて、建物90が受けた振動を記録する記録部32とを備える。振動検出方法及びプログラムは、第1の振動検出器11から第1の振動データを収集し、第2の振動検出器12から第2の振動データを収集し、収集した第1の振動データ及び第2の振動データに基づいて建物90が受けた振動を記録する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物が受けた振動を検出するシステムであって、
前記建物の基部に設けられた第1の振動検出器から振動に関する第1の振動データを収集すると共に、前記基部の上に構築された前記建物の上部に設けられた第2の振動検出器から振動に関する第2の振動データを収集する収集部と、
前記収集部が収集した前記第1の振動データ及び前記第2の振動データに基づいて、前記建物が受けた振動を記録する記録部と、を備える、
振動検出システム。
【請求項2】
前記記録部は、前記第1の振動データが第1の所定の値以上の大きさで第1の所定の時間以上継続した振動のデータである場合、又は、前記第1の振動データが前記第1の所定の値以上の大きさで継続した時間が前記第1の所定の時間未満である振動のデータであり、かつ、前記第2の振動データが第2の所定の値以上の大きさで第2の所定の時間以上継続した振動のデータである場合に、前記建物が受けた振動を記録する、
請求項1に記載の振動検出システム。
【請求項3】
前記収集部が収集した前記第1の振動データ及び前記第2の振動データに基づいて、前記建物が受けた振動の種類を判定する判定部を備え、
前記判定部は、前記第1の振動データが第1の所定の値以上の大きさで第1の所定の時間以上継続した振動のデータであり、かつ、前記第2の振動データが第2の所定の値以上の大きさで第2の所定の時間以上継続した振動のデータである場合に、当該振動が地震に起因する振動であると判定する、
請求項1に記載の振動検出システム。
【請求項4】
建物が受けた振動を検出するシステムであって、
前記建物の基部に設けられた第1の振動検出器から振動に関する第1の振動データを収集すると共に、前記基部の上に構築された前記建物の上部に設けられた第2の振動検出器から振動に関する第2の振動データを収集する収集部と、
前記収集部が収集した前記第1の振動データ及び前記第2の振動データに基づいて、前記建物の内部に設けられた報知装置を作動させる報知指令部と、を備える、
振動検出システム。
【請求項5】
前記報知指令部は、前記第1の振動データが第1の所定の値以上の大きさで継続した時間が第1の所定の時間未満である振動のデータであり、かつ、前記第2の振動データが第2の所定の値以上の大きさで第2の所定の時間以上継続した振動のデータである場合に、前記報知装置を作動させる、
請求項4に記載の振動検出システム。
【請求項6】
前記収集部が収集した前記第1の振動データ及び前記第2の振動データに基づいて、前記建物が受けた振動の種類を判定する判定部を備え、
前記判定部は、前記第1の振動データが第1の所定の値以上の大きさで継続した時間が第1の所定の時間未満である振動のデータであり、かつ、前記第2の振動データが第2の所定の値以上の大きさで第2の所定の時間以上継続した振動のデータである場合に、当該振動が前記建物の内部で発生した振動であると判定する、
請求項4に記載の振動検出システム。
【請求項7】
前記判定部は、前記建物が受けた振動の種類が前記建物の内部で発生した振動であると判定し、かつ、防犯機能を有効にしている場合に、前記報知装置を作動させる、
請求項6に記載の振動検出システム。
【請求項8】
前記第1の振動検出器と、前記第2の振動検出器と、を備える、
請求項1又は請求項4に記載の振動検出システム。
【請求項9】
前記第1の振動検出器から前記収集部に送信される前記第1の振動データ及び前記第2の振動検出器から前記収集部に送信される前記第2の振動データを中継するゲートウェイを備え、
前記ゲートウェイは、前記ゲートウェイを作動させる電池を有する、
請求項8に記載の振動検出システム。
【請求項10】
前記第2の振動検出器は、複数が、前記建物内の異なる場所に設置されており、
前記第2の振動データを検出したそれぞれの前記第2の振動検出器の設置場所及び当該第2の振動検出器が前記第2の振動データを検出した時刻を特定して、前記建物の内部で発生した振動の移動経路を特定する、
請求項8に記載の振動検出システム。
【請求項11】
建物が受けた振動を検出する方法であって、
前記建物の基部に設けられた第1の振動検出器から振動に関する第1の振動データを収集するステップと、
前記基部の上に構築された前記建物の上部に設けられた第2の振動検出器から振動に関する第2の振動データを収集するステップと、
収集した前記第1の振動データ及び前記第2の振動データに基づいて、前記建物が受けた振動を記録するステップと、を備える、
振動検出方法。
【請求項12】
コンピュータに、
建物の基部に設けられた第1の振動検出器から振動に関する第1の振動データを収集するステップと、
前記基部の上に構築された前記建物の上部に設けられた第2の振動検出器から振動に関する第2の振動データを収集するステップと、
収集した前記第1の振動データ及び前記第2の振動データに基づいて、前記建物が受けた振動を記録するステップと、を実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は振動検出システム、振動検出方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、地震計と、当該地震計と通信ネットワークを介して接続され、当該地震計から転送された地震の波形ファイルを受信する受信装置と、を備える地震観測システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-3982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、地震計は、地震が発生した場合のみ、その地震動の加速度データなどを波形ファイルとして内部に記録する。そのため、地震計は、地震が発生していない平常時においては、地震の発生に備えて待機しているだけであり、有効活用されているとは言い難い。
【0005】
本開示は上述の課題に鑑み、地震発生時以外においても活用可能な振動検出システム、振動検出方法、及びプログラムを提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様に係る振動検出システムは、建物が受けた振動を検出するシステムであって、前記建物の基部に設けられた第1の振動検出器から振動に関する第1の振動データを収集すると共に、前記基部の上に構築された前記建物の上部に設けられた第2の振動検出器から振動に関する第2の振動データを収集する収集部と、前記収集部が収集した前記第1の振動データ及び前記第2の振動データに基づいて、前記建物が受けた振動を記録する記録部と、を備える。
【0007】
本開示の第2の態様に係る振動検出システムは、上記本開示の第1の態様に係る振動検出システムにおいて、前記記録部は、前記第1の振動データが第1の所定の値以上の大きさで第1の所定の時間以上継続した振動のデータである場合に、又は、前記第1の振動データが前記第1の所定の値以上の大きさで継続した時間が前記第1の所定の時間未満である振動のデータであり、かつ、前記第2の振動データが第2の所定の値以上の大きさで第2の所定の時間以上継続した振動のデータである場合に、前記建物が受けた振動を記録する。
【0008】
本開示の第3の態様に係る振動検出システムは、上記本開示の第1の態様又は第2の態様に係る振動検出システムにおいて、前記収集部が収集した前記第1の振動データ及び前記第2の振動データに基づいて、前記建物が受けた振動の種類を判定する判定部を備え、前記判定部は、前記第1の振動データが第1の所定の値以上の大きさで第1の所定の時間以上継続した振動のデータであり、かつ、前記第2の振動データが第2の所定の値以上の大きさで第2の所定の時間以上継続した振動のデータである場合に、当該振動が地震に起因する振動であると判定する。
【0009】
本開示の第4の態様に係る振動検出システムは、建物が受けた振動を検出するシステムであって、前記建物の基部に設けられた第1の振動検出器から振動に関する第1の振動データを収集すると共に、前記基部の上に構築された前記建物の上部に設けられた第2の振動検出器から振動に関する第2の振動データを収集する収集部と、前記収集部が収集した前記第1の振動データ及び前記第2の振動データに基づいて、前記建物の内部に設けられた報知装置を作動させる報知指令部と、を備える。
【0010】
本開示の第5の態様に係る振動検出システムは、上記本開示の第4の態様に係る振動検出システムにおいて、前記報知指令部は、前記第1の振動データが第1の所定の値以上の大きさで継続した時間が第1の所定の時間未満である振動のデータであり、かつ、前記第2の振動データが第2の所定の値以上の大きさで第2の所定の時間以上継続した振動のデータである場合に、前記報知装置を作動させる。
【0011】
本開示の第6の態様に係る振動検出システムは、上記本開示の第1の態様乃至第5の態様のいずれか1つの態様に係る振動検出システムにおいて、前記収集部が収集した前記第1の振動データ及び前記第2の振動データに基づいて、前記建物が受けた振動の種類を判定する判定部を備え、前記判定部は、前記第1の振動データが第1の所定の値以上の大きさで継続した時間が第1の所定の時間未満である振動のデータであり、かつ、前記第2の振動データが第2の所定の値以上の大きさで第2の所定の時間以上継続した振動のデータである場合に、当該振動が前記建物の内部で発生した振動であると判定する。
【0012】
本開示の第7の態様に係る振動検出システムは、上記本開示の第4の態様乃至第6の態様のいずれか1つの態様に係る振動検出システムにおいて、前記判定部は、前記建物が受けた振動の種類が前記建物の内部で発生した振動であると判定し、かつ、防犯機能を有効にしている場合に、前記報知装置を作動させる。
【0013】
本開示の第8の態様に係る振動検出システムは、上記本開示の第1の態様乃至第7の態様のいずれか1つの態様に係る振動検出システムにおいて、前記第1の振動検出器と、前記第2の振動検出器と、を備える。
【0014】
本開示の第9の態様に係る振動検出システムは、上記本開示の第1の態様乃至第8の態様のいずれか1つの態様に係る振動検出システムにおいて、前記第1の振動検出器から前記収集部に送信される前記第1の振動データ及び前記第2の振動検出器から前記収集部に送信される前記第2の振動データを中継するゲートウェイを備え、前記ゲートウェイは、前記ゲートウェイを作動させる電池を有する。
【0015】
本開示の第10の態様に係る振動検出システムは、上記本開示の第1の態様乃至第9の態様のいずれか1つの態様に係る振動検出システムにおいて、前記第2の振動検出器は、複数が、前記建物内の異なる場所に設置されており、前記第2の振動データを検出したそれぞれの前記第2の振動検出器の設置場所及び当該第2の振動検出器が前記第2の振動データを検出した時刻を特定して、前記建物の内部で発生した振動の移動経路を特定する。
【0016】
本開示の第11の態様に係る振動検出方法は、建物が受けた振動を検出する方法であって、前記建物の基部に設けられた第1の振動検出器から振動に関する第1の振動データを収集するステップと、前記基部の上に構築された前記建物の上部に設けられた第2の振動検出器から振動に関する第2の振動データを収集するステップと、収集した前記第1の振動データ及び前記第2の振動データに基づいて、前記建物が受けた振動を記録するステップと、を備える。
【0017】
本開示の第12の態様に係るプログラムは、コンピュータに、建物の基部に設けられた第1の振動検出器から振動に関する第1の振動データを収集するステップと、前記基部の上に構築された前記建物の上部に設けられた第2の振動検出器から振動に関する第2の振動データを収集するステップと、収集した前記第1の振動データ及び前記第2の振動データに基づいて、前記建物が受けた振動を記録するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、地震発生時以外においても活用可能な振動検出システム、振動検出方法、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施の形態に係る振動検出システムの概略構成図である。
図2】振動検出器の概略構成を示すブロック図である。
図3】電算機のハードウェア構成の概念を示すブロック図である。
図4】振動検出器における処理を例示するフローチャートである。
図5】電算機における処理を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0021】
まず図1を参照して、一実施の形態に係る振動検出システム1を説明する。図1は、振動検出システム1の概略構成図である。振動検出システム1は、建物90が受けた振動を検出し、必要に応じて記録し、その振動の種類を判別して、得られた結果を、以下で説明するように利用することを可能にするシステムである。
【0022】
振動検出システム1では、建物90に設置された振動検出器10によって、地震を検出することができる。仮に、振動検出器10を地震計として利用する場合、原則として地震発生時以外では振動検出が出力されない。日本の気象庁が提供するデータによれば、例えば東京都港区で観測された震度1以上の有感地震は1年あたり20回前後であり、これよりも大きな震度を観測する回数はさらに少なくなる。このことから、振動検出器10は、地震検出の用途に限った場合はほとんどの時間で振動が検出されないこととなり、外形的にはほとんどの時間で休眠状態となる。本実施の形態に係る振動検出システム1は、振動検出器10を、例えば不審者の挙動に起因する振動をも検出して利用の一形態として防犯用途に適用可能にし、地震発生時以外においても活用することができるものとしている。
【0023】
振動検出システム1では、建物90に設置された複数の振動検出器10を利用している。振動検出器10に関し、建物90の基部91に設置されたものを第1振動検出器11(第1の振動検出器に相当)、建物90の上部95に設置されたものを第2振動検出器12(第2の振動検出器に相当)とそれぞれ呼称して、区別する場合がある。なお、第1振動検出器11及び第2振動検出器12は、建物90における設置位置によって区別しているが、両者は同じ構成の振動検出器10であるため、共通の構成又は性質に言及するときは総称して「振動検出器10」ということとする。
【0024】
基部91は、建物90の基礎部、及び、建物90が定着している地盤が振動したときに当該基礎部が受ける振動の大きさと同等の大きさの振動を受ける建物90の部分を含む。基礎部は、典型的には、基礎自体(例えば、ベタ基礎、布基礎)、及び、当該基礎に直接固定された土台を含む。基礎部と同等の大きさの振動を受ける建物90の部分として、例えば、RC造(鉄筋コンクリート造)の構造体等で、建物90の外部からの振動が基礎部と実質的に同じ大きさで伝播する部分が挙げられる。ここでいう実質的に同じ大きさとは、ある外部振動に対して、第1振動検出器11での検出値が外部振動に起因することであると特定することができる大きさである。第1振動検出器11は、建物90の基礎部、及び、当該基礎部が受ける振動の大きさと同等の大きさの振動を受ける建物90の部分、の両方に設置されていてもよく、これらの少なくとも一方に設置されていてもよい。第1振動検出器11は、その複数が基部91に設置されていてもよい。
【0025】
上部95は、建物90の内装材、及び、当該内装材が振動したときに当該内装材が振動したことを検出することができる建物90の部分を含む。内装材は、典型的には、建物90内の部屋の床、壁、天井等に使う仕上げ材や下地材の総称であり、室内に直接面したフローリングやカーペット、タイル、壁クロス、合板、塗装材等の仕上げ材のほか、そのすぐ下の下地材を含む。第2振動検出器12は、建物90の内装材、及び、当該内装材が振動したことを検出することができる建物90の部分、の両方に設置されていてもよく、これらの少なくとも一方に設置されていてもよい。第2振動検出器12の設置位置は、室内の美観を向上させる観点から、壁裏、床裏、及び/又は天井裏等の部屋の裏側としてもよく、保守を容易にする観点から、部屋内の壁、床、及び/又は天井としてもよい。第2振動検出器12は、本実施の形態では、その複数が、上部95に、適宜の間隔をあけて、設置されている。ここでの適宜の間隔は、例えば、建物90内の区画ごと(居室、廊下、階段、洗面所等)であり、比較的大きな区画内には複数の第2振動検出器12が設けられてもよい。
【0026】
ここで図2に示すブロック図を参照して、振動検出器10の構成を説明する。振動検出器10は、加速度センサ15と、プロセッサ16と、メモリ17と、通信インターフェース18とを有している。加速度センサ15は、振動検出器10が設置された部分の振動を検出するものである。加速度センサ15は、時刻ごとの振動の大きさ及び方向を検出する。プロセッサ16は、振動検出器10における各種の情報を処理する。プロセッサ16が処理する各種の情報として、加速度センサ15が検出した振動をデータとしてメモリ17に保存することの要否の判断、他の機器との通信等がある。プロセッサ16は、マイクロプロセッサ、回路基板、又は他の電気回路を含んでいてもよい。
【0027】
プロセッサ16が判断する、加速度センサ15が検出した振動をデータとしてメモリ17に保存することの要否の基準として、以下の事項を採用することができる。加速度センサ15が所定の値以上の大きさの振動をあらかじめ決められた時間を超えて継続したことを検出した場合に、プロセッサ16はその振動をデータとしてメモリ17に記録する。このようにすると、小さい短時間の振動を記録しなくて済み、ノイズの抽出を軽減することができる。振動の大きさに関する所定の値、及びあらかじめ決められた時間は、それぞれ設定値であり、初期設定がなされていてもよいが、典型的には、スマートフォン等の利用者端末81(図1参照)から任意の値を設定できるようになっている。これらの設定値は、モードに応じて切り替え可能な複数の値を設定可能であってもよい。例えば、防犯モードがオンの場合は、地震に起因する蓋然性が高い振動及び不審者の挙動に起因する蓋然性が高い振動の両方を記録することができる設定値を採用してもよい。他方、防犯モードがオフの場合は、地震に起因する蓋然性が高い振動は記録するが人の行動に起因する蓋然性が高い振動は極力記録しない設定値を採用してもよい。防犯モードのオン・オフは、典型的には利用者端末81(図1参照)から切り替え可能になっている。防犯モードのオン・オフを切り替え可能にすると、居住者が在宅時にオフにすることで、居住者の行動に起因する振動を検知して防犯対策が作動してしまうことを防ぐことができる。
【0028】
メモリ17は、加速度センサ15で検出された振動をデータとして記録することができるものである。また、メモリ17には、加速度センサ15が検出した振動をデータとしてメモリ17に保存することの要否をプロセッサ16が判断するためのプログラムが記憶されている。このプログラムは、事後的に(つまり振動検出器10の製造後に)追加・変更することが可能である。メモリ17には、さらに、他の振動検出器10と区別可能な、シリアル番号等の固有識別情報が記憶されている。メモリ17は、RAM等の揮発性メモリ及びROM等の不揮発性メモリを含んでいてもよい。通信インターフェース18は、振動検出器10以外の機器と通信を行う。通信インターフェース18は、メモリ17に記録されている振動データを、必要に応じて外部機器に送信する。振動検出器10は、電池19が内蔵されており、電池19によって作動する。電池19は、ボタン型電池等の交換可能な電池であってもよく、充電式の電池であってもよい。
【0029】
前述のように、振動検出器10は、設置場所に応じて、第1振動検出器11又は第2振動検出器12として機能する。振動検出器10は、第1振動検出器11として機能するとき、取り扱う振動データは第1の振動データに相当する。振動検出器10は、第2振動検出器12として機能するとき、取り扱う振動データは第2の振動データに相当する。
【0030】
再び図1に戻って、振動検出システム1の説明を続ける。本実施の形態に係る振動検出システム1は、上述の振動検出器10のほか、ゲートウェイ21と、電算機30と、報知装置40とを備えている。
【0031】
ゲートウェイ21は、それぞれの振動検出器10と電算機30との間の通信を中継する機器である。ゲートウェイ21は、振動検出器10で用いられている通信プロトコル及び電算機30で用いられている通信プロトコルを相互に変換する。ゲートウェイ21は、本実施の形態では、電算機30と報知装置40との間の通信も中継することができる。ゲートウェイ21は、それぞれの振動検出器10及び報知装置40に対して、典型的には無線で通信する。無線による通信は、例えば、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、ZigBee(登録商標)、セルラ、又は近距離無線通信(NFC)等を用いることができる。ゲートウェイ21は、電算機30に対して、公衆回線又は専用回線のネットワークNを介して、有線及び/又は無線で通信することができる。ゲートウェイ21は、本実施の形態では、電池22を有している。電池22は、典型的には蓄電池(バックアップ電源)が用いられている。ゲートウェイ21は、商用電源又はその他の電源からの電力も入力することができ、平常時は商用電源又はその他の電源からの電力で作動し、必要に応じて電池22が充電される。ゲートウェイ21は、電池22を備えていることで、停電時等の非常時で商用電源からの電力を受電できない場合であっても、振動検出器10に記録されていた振動データを電算機30に送信することができる。なお、電池22は、蓄電池に代えて、交換用電池が用いられてもよい。
【0032】
電算機30は、それぞれの振動検出器10から振動データを収集し、収集した振動データを必要に応じて記録し、さらに解析して、建物90が受けた振動の種類を判定することができる情報処理装置(コンピュータ)として機能する。電算機30は、典型的には、建物90から離れた場所にあるデータセンター99に設置されている。電算機30は、図1では機能的な構成が示されており、収集部31と、記録部32と、判定部33と、通信部34とを有している。収集部31は、それぞれの振動検出器10から振動データを収集し、収集した振動データを一時的に記録する。収集部31は、収集した振動データを、個別の振動検出器10と紐付けて一時的に記録する。本実施の形態では、収集部31には、それぞれの振動検出器10について、その固有識別情報と、建物90における設置場所(例えば、2階納戸床裏等)との関係が登録されている。記録部32は、収集部31が収集した振動データを、必要に応じて、典型的には事後的に参照(アクセス)するために、記録する。記録部32は、振動データを、比較的長期にわたって保存することを前提として記録する。
【0033】
判定部33は、収集部31が収集した振動データに基づいて、建物90が受けた振動の種類を判定する。振動の種類は、大別して、建物90の外部で発生した振動と、建物90の内部で発生した振動がある。建物90の外部で発生した振動の例として、地震による振動、大型車両の通行に伴う交通振動、近隣施設におけるイベント開催に伴う振動等が挙げられる。建物90の外部で発生した振動を検出することで、建物90が立地する環境把握および振動抑制の改善要求が必要になった際のエビデンスとして活用できる他、建物90の変形や亀裂の発生の有無等の判定に役立てることができる。建物90の内部で発生した振動の例として、人間を含む物体の移動時の振動(物体の落下による衝撃を含む)が挙げられる。建物90の内部で発生した振動を検出することで、例えば空き巣等の不審者の侵入の可能性に気付くことができる。判定部33は、振動の種類の判定として、少なくとも第1振動検出器11から収集した第1の振動データが比較的大きな振動の検出を示している場合、その振動は建物90の外部で発生した振動であると推定することができる。判定部33は、第2振動検出器12から収集した第2の振動データは比較的大きな振動の検出を示しているが、第1の振動データは有意な振動検出を示していない場合、その振動は建物90の内部で発生した振動であると推定することができる。判定部33は、収集部31に一時的に記録されているそれぞれの振動データの元となる振動が、建物90の外部で発生したものか内部で発生したものかの判定結果を、記録部32に記録させる。また、判定部33は、判定した振動データの元となる振動が、報知装置40を作動させる必要がある振動と判断した場合に、報知装置40に作動すべき旨の信号を送信する。報知装置40を作動させる機能を有する判定部33は、報知指令部としても機能し、換言すれば、報知指令部を兼ねる。
【0034】
通信部34は、電算機30以外の機器と通信するために設けられている。通信部34は、収集部31が収集する振動データを、外部の機器から受信する。また、通信部34は、報知装置40を含む外部の機器を作動させる信号を、外部の機器に送信する。
【0035】
ここで図3に示すブロック図を参照して、電算機30のハードウェア構成を説明する。図3に示すブロック図は、電算機30の物理的な構成の概念を示している点で、機能の観点からの構成の概念を示している図1中の電算機30と異なっているが、両者は同じ電算機30である。電算機30は、情報処理装置又はコンピュータと呼ばれることもあるものであり、サーバ、デスクトップコンピュータ、ラップトップ/ノートブックコンピュータ、スマートフォン、タブレットコンピュータデバイス等のコンピュータを包含することを意図している。電算機30は、プロセッサ35と、メモリ36と、ストレージ37と、通信インターフェース38とを有している。
【0036】
プロセッサ35は、電算機30における各種の情報を処理する。プロセッサ35が処理する各種の情報として、収集部31(図1参照)における振動データの収集、判定部33(図1参照)における振動の種類の判定、他の機器との通信等がある。プロセッサ35は、単一のプロセッサであってもよく、2つ以上のプロセッサであってもよい。プロセッサ35は、中央処理装置(CPU)、マイクロプロセッサ、コントローラカード、回路基板、又は他の電気回路を含んでいてもよい。プロセッサ35は、プログラムを実行し、データを操作して、本開示において説明される任意のアルゴリズム、方法、機能、プロセス、フロー、及び手順を用いる動作を含む電算機30の動作を実行することができる。
【0037】
メモリ36は、電算機30における情報処理に用いられるプログラム及び/又はデータを、一時的に又は永続的に記録する。メモリ36は、収集部31(図1参照)が収集した振動データが記録されてもよく、及び/又は、判定部33(図1参照)が振動の種類の判定を行う際のプログラムが記憶されていてもよい。このプログラムは、事後的に(つまり電算機30の製造後に)追加・変更することが可能である。メモリ36は、単一のメモリであってもよく、2つ以上のメモリであってもよい。メモリ36は、RAMやキャッシュ等の揮発性メモリ及びROM等の不揮発性メモリを含んでいてもよい。
【0038】
ストレージ37は、典型的には電算機30で用いられるデータを保持するが、電算機30以外で用いられるデータを保持してもよい。ストレージ37は、収集部31(図1参照)が収集した振動データが記録されてもよく、及び/又は、判定部33(図1参照)が振動の種類の判定を行う際のプログラムが記憶されていてもよい。ストレージ37は、電算機30又は他の機器で実行可能な、オペレーティングシステムを含むその他のプログラムを保持していてもよい。またストレージ37は、判定部33が判定した振動の種類を記録すると共に、その振動の種類の判定の元となった振動を、振動検出器10ごとに、当該振動を検出した時刻と共に、データとして保持してもよい。このように、ストレージ37の少なくとも一部は、記録部32(図1参照)としての機能を果たすことができる。ストレージ37は、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)、及び/又はフラッシュメモリ等を含んでいてもよい。
【0039】
通信インターフェース38は、電算機30以外の機器と通信を行う。通信インターフェース38は、振動検出器10からの振動データを受信し、報知装置40へ作動指令の信号を送信することができる。通信インターフェース38は、他の機器と通信する際、例えば、イーサネット(登録商標)等の有線通信の規格、及び/又は、4G、5G、若しくはWi-Fi(登録商標)等の無線通信の規格を用いることができる。
【0040】
電算機30の各コンポーネント(プロセッサ35、メモリ36、ストレージ37、及び通信インターフェース38を含む)は、システムバスやコントロールバス等のバスにより互いに接続されていて互いに通信することができる。また、電算機30は、電源39を有している。電源39は、典型的には、商用電源又はその他の電源からの電力を取り込む電源プラグを含んでいる。電源39は、交換可能又は交換不可能なバッテリを含んでいてもよく、バッテリは商用電源又はその他の電源からの電力を受けて充電できるものであってもよい。
【0041】
再び図1に戻って、振動検出システム1の説明を続ける。報知装置40は、建物90の内部に設置され、建物90の内部にいる人の感覚器官に刺激を与えるものである。報知装置40は、音及び/又は光を発して(以下「出力」という。)人の感覚器官に刺激を与えるものであってもよい。報知装置40の例として、スピーカー、ライト等が挙げられる。報知装置40は、出力により、例えば、建物90の居住者に対して、振動の蓄積に伴う建物90の損傷の有無についての査察を専門家に依頼すべき時期が到来した旨を通知することができる。また、報知装置40は、例えば、建物90の内部で発生した振動があると判定部33が判定したその原因が、不審者の挙動によるものであった場合に、出力により、その不審者を威嚇する威嚇装置として機能することができる。報知装置40は、典型的には、判定部33からの指令によって作動する。
【0042】
次に図4及び図5を参照して、一実施の形態に係る振動判定方法を説明する。ここで説明する振動判定方法は、典型的には上述の振動検出システム1を用いて行われるが、他のシステムを用いて行われてもよい。以下の振動判定方法の説明は、振動検出システム1の作用の説明を兼ねる。以下の説明において、振動検出システム1の構成に言及しているときは、適宜図1図3を参照することとする。図4に示すフローチャートは振動検出器10における処理を表しており、図5に示すフローチャートは電算機30における処理を表している。以下の説明においても、第1振動検出器11及び第2振動検出器12における共通の処理については総じて「振動検出器10」の処理として説明し、第1振動検出器11及び第2振動検出器12それぞれに特有の事項についてはその旨に言及する。
【0043】
まず図4を参照して、振動検出器10における処理を説明する。振動検出器10では、プロセッサ16が、メモリ17にてプログラムを読み出し実行することにより、図4に示す処理が行われる。振動検出器10では、まず、加速度センサ15が振動を検出したか否かを判断する(S11)。ここで検出する振動は、典型的には加速度センサ15が検出可能なすべての振動である。加速度センサ15が振動を検出しなかった場合はステップ(S11)に戻る。他方、振動を検出した場合は、その振動の大きさが所定の値以上か否かを判断する(S12)。所定の値は、記録する意義のある大きさの振動の最小値であり、第1振動検出器11においては第1の所定の値となり、第2振動検出器12においては第2の所定の値となる。第1の所定の値及び第2の所定の値は、典型的には異なる値であるが、同じ値であってもよい。加速度センサ15によって検出された振動が所定の値以上でない場合はステップ(S11)に戻る。他方、所定の値以上の場合は、その振動データをメモリ17に記録する(S13)。メモリ17に記録される振動のデータには、その振動の大きさ及びその振動が継続した時間が含まれる。
【0044】
次に、メモリ17に記録した振動データを、通信インターフェース18により、電算機30へ送信する(S14)。メモリ17に記録された振動データは、電算機30へ送信された直後に消去されてもよく、電算機30へ送信されてから一定期間保持された後に消去されてもよい。次に、振動検出器10による振動の有無の監視を終了する指令を受けたか否かを判断する(S15)。監視を終了する旨の指令を受けた場合(ステップS15でYES)、監視処理を終了する。他方、監視を終了する旨の指令を受けていない場合(ステップS15でNO)、ステップ(S11)に戻り、以降、上述の手順に従うステップを順次実行する。
【0045】
次に図5を参照して、電算機30における処理を説明する。電算機30では、プロセッサ35が、メモリ36又はストレージ37からプログラムを読み出し、メモリ36に展開して実行することにより、図5に示す処理が行われる。電算機30では、まず、通信インターフェース38が振動検出器10から振動データを受信して、受信した振動データを収集部31が収集する(S21)。ここで受信し収集する振動データは、第1振動検出器11からのものである場合は第1の振動データとなり、第2振動検出器12からのものである場合は第2の振動データとなる。
【0046】
収集部31が振動データを収集したら、判定部33は、収集した第1の振動データにおける振動(以下「第1の振動」という場合がある。)が第1の所定の時間以上継続したものであるか否かを判断する(S22)。第1の所定の時間は、前述のあらかじめ決められた時間よりも長い時間であり、典型的には検出した振動がノイズではないと推定できる程度の時間である。ステップ(S22)において第1の振動が第1の所定の時間以上継続したものである場合(ステップS22でYES)、同時刻の第2の振動データにおける振動(以下「第2の振動」という場合がある。)が第2の所定の時間以上継続したものであるか否かを判断する(S23)。第2の所定の時間は、第1の所定の時間と同様に、あらかじめ決められた時間よりも長い時間であり、典型的には検出した振動がノイズではないと推定できる程度の時間である。第1の所定の時間及び第2の所定の時間は、典型的には同じ時間であるが、異なる時間であってもよい。例えば、第1の所定の時間及び第2の所定の時間が共に5秒であってもよく、第1の所定の時間が5秒で第2の所定の時間が8秒であってもよく、ここに例示した時間以外であってもよい。以下、説明の便宜上、第1の所定の時間及び第2の所定の時間を総称して「所定の時間」ということがあるが、この「所定の時間」は、第1の振動においては第1の所定の時間を意味し、第2の振動においては第2の所定の時間を意味する。
【0047】
ステップ(S23)において第2の振動が第2の所定の時間以上継続したものである場合(ステップS23でYES)、同時刻の第1の振動及び第2の振動の継続時間は共に所定の時間以上となる。判定部33は、このような振動(ステップS22でYESかつステップS23でYES)の場合、地震に起因する振動である蓋然性が高いと推定(判定)し、その振動が地震であることを、振動の大きさ及び継続時間と共にストレージ37(記録部32)に記録する(S24)。次に、電算機30が、振動検出器10による振動の有無の監視を終了する指令を受けたか否かを判断する(S25)。監視を終了する旨の指令を受けた場合(ステップS25でYES)、監視処理を終了する。他方、監視を終了する旨の指令を受けていない場合(ステップS25でNO)、ステップ(S21)に戻る。
【0048】
ステップ(S23)において第2の振動が第2の所定の時間以上継続したものでない場合(ステップS23でNO)、同時刻の第1の振動は第1の所定の時間以上継続した一方で、第2の振動の継続時間は第2の所定の時間未満となる。このような振動(ステップS22でYESかつステップS23でNO)の場合、判定部33は、建物90の外部で発生した振動(典型的には地震以外)である蓋然性が高いと推定(判定)し、「外部振動検出」のカウントを加算して、その加算値をメモリ36に記録する(S26)。また、外部振動検出のカウントを加算した第1の振動データ及び第2の振動データをストレージ37に記録する(S27)。外部振動検出のカウントは、外部振動を検出した回数であり、外部振動を検出する度に自然数で1ずつ加算されていく。なお、図5ではステップ(S26)の後にステップ(S27)を実行するように示しているが、両ステップ(S26、S27)は、典型的には同時に行われ、場合によっては順序が逆であってもよい。
【0049】
次に、外部振動検出のカウントが設定値以上になったか否かを判断する(S28)。外部振動検出のカウントが設定値以上になっていない場合(ステップS28でNO)、ステップ(S25)に進み、以降、上述の手順に従うステップを順次実行する。他方、外部振動検出のカウントが設定値以上になっている場合(ステップS28でYES)、判定部33は、建物90が相応のダメージを受けたと推定して、建物90が相応の外部振動を受けた旨の通知を、通信インターフェース38により、居住者に通知する(S29)。この、居住者への通知は、あらかじめ登録されている電子メールアドレスに電子メールを送信することで行ってもよい。外部振動検出のカウントが設定値以上になってから通知することで、居住者が煩わしく感じることを低減することができる。このような趣旨に鑑み、外部振動検出のカウントの設定値は、建物90のダメージの程度を居住者に通知する必要性と、通知受信の煩の回避とを比較考量して、設定するとよい。外部振動検出のカウントの設定値は、適宜設定・変更することができる。次に、判定部33は、外部振動検出のカウントをリセットする(S30)。その後、ステップ(S25)に進み、以降、上述の手順に従うステップを順次実行する。
【0050】
ステップ(S22)において第1の振動が第1の所定の時間以上継続したものでない場合(ステップS22でNO)も、次に、同時刻の第2の振動が第2の所定の時間以上継続したものであるか否かを判断する(S31)。このステップ(S31)は、ステップ(S23)と内容は同じであるが、その後に続くステップが異なるため、別のステップとして規定している。ステップ(S31)において第2の振動が第2の所定の時間以上継続したものである場合(ステップS31でYES)、同時刻の第1の振動の継続時間は第1の所定の時間未満となる一方で、第2の振動は第2の所定の時間以上継続したことになる。このような振動(ステップS22でNOかつステップS23でYES)の場合、判定部33は、建物90の内部で発生した振動である蓋然性が高いと推定(判定)し、「内部振動検出」のカウントを加算して、加算値をメモリ36に記録する(S32)。また、内部振動検出のカウントを加算した第1の振動データ及び第2の振動データをストレージ37に記録する(S33)。内部振動検出のカウントは、内部振動を検出した回数であり、内部振動を検出する度に自然数で1ずつ加算されていく。なお、図5ではステップ(S32)の後にステップ(S33)を実行するように示しているが、両ステップ(S32、S33)は、典型的には同時に行われ、場合によっては順序が逆であってもよい。
【0051】
次に、内部振動検出のカウントが設定値以上になったか否かを判断する(S34)。内部振動検出のカウントの設定値は、ノイズによる検出を極力排除するために設定する値であり、ノイズを排除する観点からは大きな値とするとよく、建物90の内部の振動の原因への対応を急ぐ観点からは小さな値とするとよい。内部振動検出のカウントの設定値は、適宜設定・変更することができる。内部振動検出のカウントが設定値以上になっている場合(ステップS34でYES)、判定部33は、振動検出システム1の防犯機能が有効であるか(防犯モードがオンであるか)否かを判断する(S35)。防犯機能が有効である場合(ステップS35でYES)、判定部33は、報知装置40を作動させる旨の信号を、通信インターフェース38により、報知装置40へ送信する(S36)。ここで、判定部33が報知装置40を作動させる旨の指令を発するのは、内部振動検出のカウントが設定値以上になっている場合(ステップS34でYES)に、建物90の内部に不審者がいると判定したことに基づいている。信号を受信した報知装置40は、音及び/又は光を発して不審者を威嚇することができる。このように、内部振動検出のカウントが設定値以上になった場合に報知装置40を作動させるので、不審者の挙動に基づかない偶発的な要因による報知装置40の作動を低減することができる。報知装置40へ信号を送信したら、判定部33は、内部振動検出のカウントをリセットする(S37)。
【0052】
ステップ(S34)において内部振動検出のカウントが設定値以上になっていない場合(ステップS34でNO)、及びステップ(S35)において防犯機能が有効でない場合(ステップS35でNO)、それぞれステップ(S25)に進み、以降、上述の手順に従うステップを順次実行する。
【0053】
ステップ(S31)において第2の振動が第2の所定の時間以上継続したものでない場合(ステップS23でNO)、同時刻の第1の振動及び第2の振動の継続時間は共に所定の時間未満となる。判定部33は、このような振動(ステップS22でNOかつステップS23でNO)の場合、地震に起因する振動である蓋然性が高いものの、伝わりにくい程度の軽微な地震と判定する(S38)。判定部33が軽微な地震であると判定したら(S38)、その振動は記録をするに及ばないため、そのままステップ(S25)に進み、以降、上述の手順に従うステップを順次実行する。なお、判定部33は、軽微な地震であると判定した際に(S38)、念のため、その振動データをストレージ37に記録してもよい。
【0054】
図5に例示した電算機30における処理の説明では、第1の振動及び第2の振動が共に所定の値以上の大きさで、かつ、第1の振動が第1の所定の時間以上継続した場合、又は第1の振動の継続は第1の所定の時間未満であるが第2の振動が第2の所定の時間以上継続した場合に、振動データを記録部32に記録することとした。しかしながら、所定の値以上の大きさの振動については、振動の継続時間にかかわらず記録部32に記録することとして、建物90の痛み具合の判定に役立ててもよい。あるいは、振動の大きさにかかわらず、振動が所定の時間以上継続した場合に、その振動データを記録部32に記録することとしてもよい。
【0055】
以上で説明したように、本実施の形態に係る振動検出システム1、振動判定方法、及びプログラムによれば、これまで地震発生時以外に有効活用されていなかった振動検出器10を、防犯用途に利用することができ、地震発生時以外にも有効活用することができる。また、振動検出システム1は、地震検出目的で元来建物90に設置されていた振動検出器を含むシステムに対して、ソフトウェアの変更で防犯用途としても利用可能に改変することができ、従来使用していたハードウェア構成のまま防犯機能を追加することができる。
【0056】
以上の説明では、振動検出システム1が振動検出器10(第1振動検出器11及び第2振動検出器12)を含んでいることとした。しかし、外部の振動検出器(第1の振動検出器及び第2の振動検出器)を利用することとして、外部の振動検出器を動作させるプログラムを含むものの、振動検出器自体は振動検出システム1に含まれていなくてもよい。しかしながら、振動検出システム1が振動検出器10(第1振動検出器11及び第2振動検出器12)を含んでいると、収集部31と第1振動検出器11及び第2振動検出器12との通信規格の自由度を向上させることができる。
【0057】
以上の説明では、第2振動検出器12が、上部95の複数箇所に設けられているとしたが、上部95の1箇所に設けられることとしてもよい。しかしながら、第2振動検出器12の設置箇所を増やすほど不審な振動の検出確率を高くすることができ、好ましい。また、第2振動検出器12の複数を建物の異なる場所に設けた場合、それぞれの第2振動検出器12からの第2の振動データの検出場所及び検出時刻を判定部33が特定することで、建物90内における振動の移動経路を特定することが可能になる。このことにより、建物90の内部で発生した振動の原因が不審者である場合に、その不審者の足取りをつかむことが可能になる。
【0058】
以上の説明では、振動検出システム1がゲートウェイ21を備えているとしたが、振動検出器10と電算機30とが直接通信できる場合は、ゲートウェイ21を省略することができる。
【0059】
以上の説明では、収集部31、記録部32、及び判定部33が、建物90から離れた場所にあるデータセンター99に設置された電算機30に設けられていることとしたが、建物90の内部に設置されたコンピュータに設けられていてもよい。このとき、ゲートウェイ21がコンピュータで構成されていて収集部31、記録部32、及び判定部33の機能を果たすことができる場合は、収集部31、記録部32、及び判定部33がゲートウェイ21に設けられていてもよい。
【0060】
以上の説明では、振動検出システム1が報知装置40を備えているとしたが、建物90の内部にいる人の感覚器官に刺激を与える必要がない場合は、報知装置40を省略することができる。
【0061】
以上の説明では、第2振動検出器12が、上部95に設けられているとしたが、上部95の他に、通常は移動することが予定されていない貴重品に取り付けられていてもよい。通常は移動することが予定されていない貴重品の例として、絵画や金庫等が挙げられる。このような貴重品に第2振動検出器12を取り付けることで、貴重品に手が付けられているか否か、向きが変化しているか否かを検出することが可能になる。また、貴重品に取り付けられた第2振動検出器12に対して定期的に正常動作確認用の信号を送信して正常動作していることを確認することで、異常検出信号送信前に破壊されたり、意図的に電波が届かない状況にされたりしても、異常を検出することが可能になる。
【0062】
以上の説明では、本開示において説明された任意のアルゴリズム、方法、機能、プロセス、フロー、及び/又は手順を用いる動作を実行するプログラムが、メモリ36及び/又はストレージ37に記憶されているとした。しかしながら、当該プログラムは、非一時的なコンピュータ読取可能媒体に記憶されていてもよい。非一時的なコンピュータ読取可能媒体は、コンピュータにより実施される方法を実行するコンピュータにより読取可能な命令を格納する。コンピュータ読取可能媒体は、光磁気ディスク及び光学メモリデバイス、並びに、デジタルビデオディスク(DVD)、CD-ROM、DVD+/-R、DVD-RAM、DVD-ROM、HD-DVD、及びBlu-ray(登録商標)などを含むことができる。コンピュータ読取可能な媒体は、また、テープ、カートリッジ、カセット、及びリムーバブルディスクなどの磁気デバイスを含むことができる。各コンピュータプログラムは、電算機30を含む情報処理装置が実行するために、又は情報処理装置の動作を制御するために、有形の非一時的なコンピュータ読取可能媒体上にエンコードされたコンピュータプログラム命令の1つ又は複数のモジュールを含むことができる。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 振動判定システム
10 振動検出器
11 第1振動検出器(第1の振動検出器)
12 第2振動検出器(第2の振動検出器)
17 メモリ
21 ゲートウェイ
22 電池
30 電算機(コンピュータ)
31 収集部
32 記録部
33 判定部
40 報知装置
90 建物
91 基部
95 上部
図1
図2
図3
図4
図5