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特開2024-122768検出装置、搬送型治療台及び治療システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122768
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】検出装置、搬送型治療台及び治療システム
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
A61N5/10 M
A61N5/10 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030495
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】518119249
【氏名又は名称】株式会社ビードットメディカル
(74)【代理人】
【識別番号】100145838
【弁理士】
【氏名又は名称】畑添 隆人
(74)【代理人】
【識別番号】100103137
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 滋
(74)【代理人】
【識別番号】100216367
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 梨絵
(72)【発明者】
【氏名】蓑原 伸一
(72)【発明者】
【氏名】久保田 佳樹
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082AE01
4C082AG52
4C082AJ02
4C082AJ03
4C082AN05
4C082AP07
4C082AP16
4C082AR02
(57)【要約】
【課題】検出装置を用いた治療の安全性又は利便性を向上させることを課題とする。
【解決手段】検出装置5に、載置部2を有する治療台1に設置され、載置部2に載せられた生体の表面位置及び/又は体動変位を検出する検出部51と、外部の給電設備から切り離された状態で検出部51へ給電可能なバッテリ6と、検出部51から出力される信号に応じたデータを外部装置に対して無線伝送する通信部52と、検出部51を治療台1に接続する接続部53であって、治療台1において可動である載置部2の動きに合わせて検出部51を移動可能に接続する接続部53と、を備えた。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体が載せられる載置部を有する診療台に設置され、前記載置部に載せられた前記生体の表面位置及び/又は体動変位を検出する検出部と、
前記診療台と共に移動可能なバッテリであって、外部の給電設備から切り離された状態で前記検出部へ給電可能なバッテリと、
前記検出部から出力される信号に応じたデータを外部装置に対して無線伝送する通信部と、
前記検出部を前記診療台に接続する接続部であって、該診療台において可動である前記載置部の動きに合わせて前記検出部を移動可能に接続する接続部と、
を備える、検出装置。
【請求項2】
前記接続部は、前記載置部に載せられた前記生体と前記検出部との相対的位置関係が維持されるように、前記診療台に対して前記検出部を接続する、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記接続部は、前記検出部を前記載置部に固定することで、前記載置部に載せられた前記生体と前記検出部との相対的位置関係を維持する、
請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記診療台は、前記載置部に前記生体が載せられた状態で異なる場所へ搬送可能な搬送型診療台である、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項5】
前記検出部によって検出された表面位置及び/又は体動変位を表示可能な表示部を更に備える、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項6】
前記検出部によって検出された表面位置及び/又は体動変位が予め設定された条件を満たした場合に、アラートを出力するアラート出力部を更に備える、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項7】
前記通信部は、前記検出部によって検出された表面位置及び/又は体動変位に応じた制御データを、前記外部装置に対して伝送する、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項8】
前記生体に設置される反射体を更に備え、
前記検出部は、光源及び光位置検出センサを有し、前記光源から前記生体に対して発せられた入射光が前記反射体によって反射され、該反射体による反射光が前記光位置検出センサに入力されるように光路が構成される、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項9】
前記反射体からの前記反射光が得られる方向と略同方向を撮像可能なカメラを更に備える、
請求項8に記載の検出装置。
【請求項10】
前記検出部は、前記入射光及び/又は前記反射光の軌道を制御する1又は複数の光学部材を更に有する、
請求項8に記載の検出装置。
【請求項11】
前記1又は複数の光学部材は、
前記入射光の光軸と前記反射光の光軸とを、前記反射体と該光学部材との間の区間において略一致させ、該光学部材と前記光源又は前記光位置検出センサとの間の区間において分離させるハーフミラー、及び、
前記反射体と前記光位置検出センサとの間の区間に設けられることで、該区間における前記入射光の光軸と前記反射光の光軸とを制御する反射ミラー、
の少なくともいずれかを含む、
請求項10に記載の検出装置。
【請求項12】
前記反射体からの前記反射光が得られる方向を撮像可能なカメラを更に備え、
前記1又は複数の光学部材のうち少なくとも1つの光学部材は、前記反射光を含む前記生体側からの入力光を、前記光位置検出センサに入る前記反射光を少なくとも含む光と、前記カメラに入る前記生体側からの可視光を少なくとも含む光とに分離するスプリッタである、
請求項10に記載の検出装置。
【請求項13】
前記反射体は、再帰性反射体である、
請求項8に記載の検出装置。
【請求項14】
生体が載せられた状態で異なる場所へ搬送可能な搬送型診療台であって、
生体が載せられる載置部と、
前記載置部に載せられた前記生体の表面位置及び/又は体動変位を検出する検出部と、
前記搬送型診療台と共に移動可能なバッテリであって、外部の給電設備から切り離された状態で前記検出部へ給電可能なバッテリと、
前記検出部から出力される信号に応じたデータを外部装置に対して無線伝送する通信部と、
前記検出部を前記可搬型診療台に接続する接続部であって、該可搬型診療台において可動である前記載置部の動きに合わせて前記検出部を移動可能に接続する接続部と、
該搬送型診療台を移動可能とするための搬送部と、
を備える、搬送型診療台。
【請求項15】
前記バッテリは、前記検出部に加えて、前記搬送部へ給電する、
請求項14に記載の搬送型診療台。
【請求項16】
前記搬送型診療台は、前記載置部を平行移動及び/又は回転させる駆動部を更に備え、
前記バッテリは、前記検出部に加えて、前記駆動部へ給電する、
請求項14に記載の搬送型診療台。
【請求項17】
生体が載せられた状態で異なる場所へ搬送可能な搬送型治療台と、前記生体に対する治療用のビーム照射を行う照射装置と、入力されたデータに応じて前記照射装置を制御する信号制御装置と、を備える治療システムであって、
前記搬送型治療台は、
生体が載せられる載置部と、
前記載置部に載せられた前記生体の表面位置及び/又は体動変位を検出する検出部と、
前記搬送型治療台と共に移動可能なバッテリであって、外部の給電設備から切り離された状態で前記検出部へ給電可能なバッテリと、
前記検出部から出力される信号に応じたデータを外部装置に対して無線伝送する通信部と、
前記検出部を前記搬送型治療台に接続する接続部であって、該搬送型治療台において可動である前記載置部の動きに合わせて前記検出部を移動可能に接続する接続部と、
該搬送型治療台を移動可能とするための搬送部と、を備え、
前記信号制御装置は、
前記通信部によって無線伝送された前記データを受信するデータ受信部と、
受信された前記データに基づいて、前記照射装置による前記ビーム照射を制御することが可能な信号を出力する制御信号出力部と、を備える、
治療システム。
【請求項18】
前記信号制御装置は、
受信された前記データに基づいて、前記生体の表面位置及び/又は体動変位を表す波形を生成する波形生成部を更に備え、
前記制御信号出力部は、前記波形において前記生体の表面位置及び/又は体動変位が安定していると判定するための所定の条件を満たすタイミングで前記ビーム照射が行われるように、前記照射装置に対して前記ビーム照射を制御するための信号を出力する、
請求項17に記載の治療システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生体の表面位置及び/又は体動変位を監視するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生体の表面位置及び/又は体動変位を監視するための技術が種々提案されている(特許文献1から4及び非特許文献1を参照)。また、従来、患者を載せるための天板を着脱可能な治療台が提案されている(特許文献5を参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3326597号公報
【特許文献2】特許3643573号公報
【特許文献3】特許5373285号公報
【特許文献4】特開2018-192253号公報
【特許文献5】特許5795903号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】K. Shioiri,外9名,“Development of an easy-to-use respiration sensor with fast response for respiratory gated radiation therapy”,56th Annual Conference of the Particle Therapy Co-operative Group,Poster発表No.263,2017年5月,<URL:https://www.czech-in.org/cmgateway/ptcog17/index.html?module=searchableprogramme&personid=anonymous&key=0b043bad6d30b7641c8df4bb4ba50591f39d2bfe#!abstractdetails/0044702>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、生体の表面位置及び/又は体動変位を監視するための検出装置が種々提案されている。しかし、いずれも電源供給又は通信のためにケーブル類を取り回すことが必要な検出装置であったため、治療の安全性又は利便性において課題があった。
【0006】
本開示は、上記した問題に鑑み、検出装置を用いた治療の安全性又は利便性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一例は、生体が載せられる載置部を有する診療台に設置され、前記載置部に載せられた前記生体の表面位置及び/又は体動変位を検出する検出部と、診療台と共に移動可能なバッテリであって、外部の給電設備から切り離された状態で前記検出部へ給電可能なバッテリと、前記検出部から出力される信号に応じたデータを外部装置に対して無線伝送する通信部と、前記検出部を前記診療台に接続する接続部であって、該診療台において可動である前記載置部の動きに合わせて前記検出部を移動可能に接続する接続部と、を備える、検出装置である。
【0008】
本開示の一例は、生体が載せられた状態で異なる場所へ搬送可能な搬送型診療台であって、生体が載せられる載置部と、前記載置部に載せられた前記生体の表面位置及び/又は体動変位を検出する検出部と、搬送型診療台と共に移動可能なバッテリであって、外部の給電設備から切り離された状態で前記検出部へ給電可能なバッテリと、前記検出部から出力される信号に応じたデータを外部装置に対して無線伝送する通信部と、前記検出部を前記搬送型診療台に接続する接続部であって、該搬送型診療台において可動である前記載置部の動きに合わせて前記検出部を移動可能に接続する接続部と、該搬送型診療台を移動可能とするための搬送部と、を備える、搬送型診療台である。
【0009】
本開示の一例は、生体が載せられた状態で異なる場所へ搬送可能な搬送型治療台と、前記生体に対する治療用のビーム照射を行う照射装置と、入力されたデータに応じて前記照射装置を制御する信号制御装置と、を備える治療システムであって、前記搬送型治療台は、生体が載せられる載置部と、前記載置部に載せられた前記生体の表面位置及び/又は体動変位を検出する検出部と、搬送型治療台と共に移動可能なバッテリであって、外部の給電設備から切り離された状態で前記検出部へ給電可能なバッテリと、前記検出部から出力される信号に応じたデータを外部装置に対して無線伝送する通信部と、前記検出部を前記搬送型治療台に接続する接続部であって、該治療台において可動である前記載置部の動きに合わせて前記検出部を移動可能に接続する接続部と、該搬送型治療台を移動可能とするための搬送部と、を備え、前記信号制御装置は、前記通信部によって無線伝送された前記データを受信するデータ受信部と、受信された前記データに基づいて、前記照射装置による前記ビーム照射を制御することが可能な信号を出力する制御信号出力部と、を備える、治療システムである。
【0010】
本開示の一例は、生体が載せられる載置部を有する診療台に設置され、前記載置部に載せられた前記生体の表面位置及び/又は体動変位を検出する検出部と、前記生体に設置される反射体と、を備え、前記検出部は、光源及び光位置検出センサを有し、前記光源から前記生体に対して発せられた入射光が前記反射体によって反射され、該反射体による反射光が前記光位置検出センサに入力されるように光路が構成される、検出装置である。
【0011】
本開示は、情報処理装置、システム、コンピューターによって実行される方法又はコンピューターに実行させるプログラムとして把握することが可能である。また、本開示は、そのようなプログラムをコンピューターその他の装置、機械等が読み取り可能な記録媒体に記録したものとしても把握できる。ここで、コンピューター等が読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的又は化学的作用によって蓄積し、コンピューター等から読み取ることができる記録媒体をいう。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、検出装置を用いた治療の安全性又は利便性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係るシステム構成の一例を示す図である。
図2】実施形態に係る搬送型治療台の外観における構成の一例を示す図である。
図3】実施形態に係る検出装置において構成される光路の概略を示す図(1)である。
図4】実施形態に係る検出装置において構成される光路の概略を示す図(2)である。
図5】実施形態に係る検出装置において構成される光路の概略を示す図(3)である。
図6】実施形態に係る検出装置において構成される光路の概略を示す図(4)である。
図7】実施形態に係る検出装置において構成される光路の概略を示す図(5)である。
図8】実施形態における信号制御ポートの構成の概略を示す図である。
図9】実施形態における、呼吸性移動臓器の治療における検出装置の使用例を示す図である。
図10】実施形態における、信号制御ポートで受信された呼吸波形と、それに応じたゲート信号生成とビーム照射制御の例を示す図である。
図11】実施形態に係る搬送型治療台を用いた治療の流れの一例を示す図である。
図12】実施形態において表示操作ユニット(表示部)に表示される情報の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
放射線(光子線又は粒子線)のビーム照射を伴う治療では、呼吸性移動臓器に対して正確にビーム照射を行うために、臓器の位置を把握し動きに合わせて照射する呼吸同期照射が行われる。呼吸同期照射のための同期法には、生体表面の動きから体内の腫瘍の動きを間接的に監視し照射する外部同期法と、X線を曝射して体内の動きを直接監視して照射する内部同期法があり、前者は、事前に腫瘍の動きと生体表面の動きを相関付けることで、X線被ばくのない治療法となる。また、ビーム照射を伴う治療では、小児や認知症の高齢者、また不随意運動を呈する患者への照射も行われるため、通常であれば固定具で固定さえしていればよい照射部位についても、照射領域近くの体動を監視し、臨床的に許容されるよりも大きな変動があった場合には照射を中断することが好ましい。
【0015】
なお、体幹部の画像診断(CT、MRI、PET等)の分野においては、画像にアーチファクトが生じないように適切な呼吸のタイミング(呼気、吸気等)で撮像したり、自由呼吸下で高速に撮像し呼吸位相情報と撮像タイミングを同期したりして画像化(4D撮像)することが好ましい。このため、画像診断においては、生体表面の位置を測定して、呼吸位相に相当する情報を用いて画像処理することが行われている。
【0016】
ここで、従来、患者の生体表面の動きを測定するためには、診療内容を問わず、患者の生体表面を直接、もしくは測定点となる物体を設置し間接的に測定する方法が採用されている。生体表面の変位を直接測定する方法として、ひずみ計やレーザ変位計又はレーザ距離計を用いる場合がある。ひずみ計の場合、患者を診療台に固定する固定具表面では正確な計測が難しいため固定具下の生体表面に取り付けることになる。しかし、固定具装着後の感度調整が難しくなり、また患者ごとの調整で設定に時間を要する。
【0017】
また例えば、レーザ変位計又はレーザ距離計を用いる場合、患者の近辺で、生体表面に対してほぼ垂直の方向に設置するため、撮影及び照射機器との干渉、ならびにそれらの撮影視野・照射視野との干渉する可能性が生じ、患者ごとに検出装置設置位置を調整することが行われている。
【0018】
また例えば、天井又は壁面に設置した2次元又は3次元のカメラ画像によって患者の生体表面画像や生体表面に設置したマーカの画像を取得して生体表面の変位を計測する検出装置が提案されている。しかしこの方式では、CCDカメラを複数台設置したステレオカメラで測定するため、一般的な放射線治療の場合、回転移動する照射ポートと患者の位置関係において、カメラの視野が遮られて計測できない場合がある。また、位置計測には、ビデオ画像を送信し画像処理するため、時間を要して応答時間が遅くなる。実際の診療時には、位置検出の遅延時間によって、画像再構成の精度が落ち正確な画像診断・評価が行えなかったり、治療時に照射位置のずれが生じたりする。
【0019】
上記説明した従来の、ひずみ計、レーサ変位計、レーザ距離計や診療台上のカメラ設置による生体表面計測では、検出装置が患者周りに設置され、いずれも、計測系装置への電力供給、及び測定位置を信号送信するケーブル配線が行われる。このため、患者の周辺にケーブルを取り回すこととなり、診療時の医療スタッフの作業性や、患者の安全性に影響を及ぼす。
【0020】
具体的には、患者の診療台は撮像位置・照射位置を位置調整できるように診療台又は診療台載置部が移動するがケーブルやコードを引き回すことで、診療台の駆動中に予期せずケーブルが挟まれ、利用のたびのケーブルの着脱が煩雑で、ケーブルの損傷の原因になる。診療室の床面にある場合、患者及び医療スタッフがそれらにつまずく可能性があり、作業性及び安全性に問題がある。また、安全のためにケーブルの長さに制限を設けた場合、患者の診療部位によってはセッティングが不可能な場合が生じる。
【0021】
また、天井にカメラを設置する場合は、患者周りのスペースを広く保てる。しかしながら、ビデオ信号を送信するため、画像取得とソフトウエアによる画像処理による追跡で約100msを要している。カメラ画像による検出装置では、応答時間の遅延が問題となる。また診療台及び照射機器の動作によって、カメラの視野が遮られる場合がある。
【0022】
また、従来の検出装置は、検出信号を有線伝送で送信する。これは、無線伝送では通信速度の安定性が悪く、通信速度が遅いためである。例えば、信号送信に無線LAN(4G)を使用すると、遅延時間は20ms以上を要する。信号伝送方法を有線から無線に変更した場合は、従来の応答時間の遅延に加え、更に遅延が生じることとなる。信号伝送が予期せず中断された場合、診療は即座に中断されることが好ましいが、信号送信の無線伝送は安定性と速度に問題があり、診療の精度に影響を与える。
【0023】
また、放射線治療では、一度の治療において複数の方向から照射する多門照射(正常組織への被曝を低減するために、照射角度を変えて行う照射)が行われる場合があり、この場合、1度の治療中に患者を載せた載置部が大きく回転することがある。呼吸同期照射の場合、動かない臓器への照射と比較し照射可能な期間が限られるため、ビームON/OFF制御時間をトータルすると通常の照射時間(通常1分以内)の5倍~20倍の時間を要することがある。そのため、門毎に治療台を動かして照射する(例えば治療台を180度回転させて対向方向から照射する)ことがあるが、検出装置が有線であることで、ケーブルの脱着作業が必要となり時間を要することで、患者の姿勢保持の精度が落ち、結果として治療の精度低下に繋がる。
【0024】
また、治療毎に可能な限り治療計画CTの撮像時と同じ患者の姿勢を再現するための患者位置決め精度を向上させるため、近年、治療室内にin-roomCTを導入する施設が増えてきている。患者位置決めにおいては通常、2次元画像を取得するX線撮像装置を使用して、体内の動かないランドマーク(例えば、骨構造)で位置決めを行う。しかし、呼吸性移動臓器においては、骨構造のみでの位置決めでは不十分で、腫瘍そのものの位置とその他周囲の臓器との相対位置関係を考慮した位置合わせが行われる。そして、多くの腫瘍は軟部組織で通常の2次元X線画像では不十分であるため、3次元画像で軟部組織を捉えることができるCT画像を使用して位置決めが行われる。このときCTは、照射装置からの二次放射線の影響から遮蔽する目的で、比較的照射装置から離れた位置に設置される。このため、有線の検出装置を用いた場合、都度、検出装置の脱着と再セッティングが行われ、作業効率が落ちる。
【0025】
以下に説明する実施形態は、上記説明した従来の技術における課題の少なくとも1つ以上を解決するものである。但し、本開示に係る技術を採用する実施形態は、上記説明した従来の技術における課題の少なくとも一部を解決するものであればよく、課題の全てを解決するものでなくてもよい。
【0026】
以下、本開示に係る検出装置、搬送型治療台及び治療システムの実施の形態を、図面に基づいて説明する。但し、以下に説明する実施の形態は、実施形態を例示するものであって、本開示に係る検出装置、搬送型治療台及び治療システムを以下に説明する具体的構成に限定するものではない。実施にあたっては、実施の態様に応じた具体的構成が適宜採用され、また、種々の改良や変形が行われてよい。例えば、搬送型治療台だけでなく、診断(例えば、CT撮像やMRI撮像)にも使用可能な搬送型診療台や、治療室や診断室(例えば、CT撮像室やMRI撮像室など)に固定された診療台であってもよい。
【0027】
<第一の実施形態>
本実施形態では、本開示に係る技術を、治療用のビーム照射を行なって患者を治療するための治療システムにおいて実施した場合の実施の形態について説明する。但し、本開示に係る技術は、生体の表面位置及び/又は体動変位を監視するために広く用いることが可能であり、本開示の適用対象は、実施形態において示した例に限定されない。
【0028】
図1は、本実施形態に係るシステム構成の一例を示す図である。本実施形態に係るシステムは、搬送型治療台1、信号制御ポート8及び照射装置9を備える治療システム100である。本実施形態に係る搬送型治療台1は、生体が載せられた状態で異なる場所(例えば、位置決め室→治療室)へ搬送可能な搬送型治療台1であり、載置部2、駆動部3、搬送部4及び検出装置5を備え、また、搬送部4の内部にバッテリユニット6を備える。また、検出装置5は、信号制御ポート8を外部に備え、照射装置9へ信号出力する。
【0029】
載置部2は、換言すればベッド部であり、治療や処置の対象となる生体が載せられる。また、載置部2には、載せられた生体を固定するための固定具等が備えられていてもよい。更に、載置部は搬送型治療台1に対して着脱可能であってもよい。
【0030】
図2は、本実施形態に係る搬送型治療台1の外観における構成の一例を示す図である。上述の通り、搬送型治療台1は、載置部2、駆動部3、搬送部4、検出装置5及びバッテリユニット6を備える。載置部2に載せられた生体(図2に示す例では、患者)には、後述する反射体56が設置される。
【0031】
駆動部3(ロボットアーム部)は、バッテリユニット6からの給電を受けて駆動することで、載置部2を平行移動及び/又は回転させる。図2に示すように、駆動部3は所謂ロボットアームの構造を有していてよく、これによって、駆動部3は、載置部2及び載置部2に載せられた生体に様々な姿勢を取らせることが可能である。
【0032】
搬送部4は、搬送型治療台1を異なる場所間で移動(例えば、走行)可能とするための機構である。なお、搬送部4は、単に車輪や軌道等の、搬送時に路面から受ける抵抗を軽減する搬送補助機構が設けられることで搬送型治療台1を人力で搬送可能とするものであってもよいし、バッテリユニット6からの給電を受けて車輪等を駆動することで人力による搬送作業を補助可能なものであってもよいし、バッテリユニット6からの給電を受けて駆動することで自走可能なものであってもよい。また、自走可能な搬送部4は、ユーザによる指示に従って前進、後退、方向転換等することでユーザ所望の移動を可能とするものであってよいし、予めプログラムされた経路に従って移動することで定められた場所間で自動的に移動可能なものであってもよい。
【0033】
検出装置5(体表面位置検出センサ装置)は、治療台に設置されて、載置部2に載せられた生体の表面位置及び/又は体動変位を検出する。検出装置5の構成については後述する。
【0034】
バッテリユニット6は、蓄電池を備えた電源ユニットであり、外部の給電設備から切り離された状態で、検出装置5、駆動部3及び搬送部4の少なくともいずれかへの給電が可能なバッテリユニットである。本実施形態に係る搬送型治療台1では、搬送部4のために設けられたバッテリユニット6が共用されることで、搬送型治療台1及び後述する検出装置5を小型化することを可能としている。但し、バッテリユニットは、後述する検出装置5に内蔵されてもよいし、搬送型治療台1の載置部2や駆動部3等の近隣に設置されてもよい。
【0035】
本実施形態に係る検出装置5は、生体の表面位置及び/又は体動変位を検出するための検出装置5であり、検出部51、通信部52、接続部53、表示部54、アラート出力部55、反射体56、及びカメラ57を備える。
【0036】
検出部51は、載置部2に載せられた生体の表面位置及び/又は体動変位を検出する。ここで、検出部51は、載置部2に載せられた生体の表面位置及び/又は体動変位を検出可能な構成を備えるものであれば、その具体的な構成は限定されない。
【0037】
図3は、本実施形態に係る検出装置5において構成される光路の概略を示す図である。本実施形態における検出部51は、光源61及び光位置検出センサ62を備える。光源61は、光学部材による光路制御の結果、光位置検出センサ62と光学的に略等価とみなせる光軸(以下、「同一光路」と称する)上に光を照射する。光位置検出センサ62は、患者の生体表面に設置(貼り付け)された反射体56により反射した光を受光する。即ち、検出部51は、光源61から生体に対して発せられた入射光が反射体56によって反射され、反射体56による反射光が光位置検出センサ62に入力されるように光路が構成されている。光位置検出センサ62は光の位置に対応した電気信号を出力し、信号制御ポート8(データ受信部91)へ送信する。光位置検出センサ62と光源61への給電はバッテリユニット6で行い、信号制御ポート8への信号送信は無線を介して行われる。
【0038】
更に、検出部51は、入射光及び/又は反射光の軌道を制御して光学系の光路を形成する1又は複数の光学部材(例えば、レンズ63、反射ミラー64、偏光スプリッタ65やハーフミラー66等)を更に有してもよい。ここで、光学部材を用いてアレンジされる光路には様々な態様が採用可能であるため、バリエーションとして後述する。例えば図3に示された検出装置5には、入射光及び反射光を制御するレンズ63の他、入射光の光軸と反射光の光軸とを、反射体56と当該光学部材との間の区間において略一致させ、当該光学部材と光源61又は光位置検出センサ62との間の区間において分離させるハーフミラー66が設置されている。
【0039】
光位置検出センサ62は2次元面のセンサであり、センサ面上でのスポット光の位置座標(x,y)に応じた電気的出力を有する。光位置検出センサ62には、例えば、半導体位置検出素子(Position Sensive Detector。以下、「PSD」)が用いられてよい。PSDはスポット光の位置座標(x,y)に比例して、xとyの2チャンネルの電圧信号をソフトウエア的な処理を介さずに直接出力でき、またソフトウエアでの画像処理等が不要であるため、応答の遅延が少ない。この原理を利用して、患者の生体表面に設置された反射体56により、生体表面の変動に合わせて変位をする反射光のセンサ面でのスポット位置を、位置座標に比例して連続的にかつ小さな遅延時間で電圧出力することができる。反射体56からのスポット光がPSDに入射した場合、生じた光電流が抵抗層に達すると、対向する位置に配置されたそれぞれの出力電極への距離に逆比例して電荷が取り出される。二次元PSDは、2組の出力電極が直交に配置され、X、Y座標としてスポット光の位置を検出可能である。これを利用し、生体表面の位置変位を2次元で検出する。
【0040】
光位置検出センサ62によって検出された位置座標(x、y)は、電気信号として連続的に信号制御ポート8へ無線送信される。信号制御ポート8は、受信された信号に基づいて、患者の体動変位を、2次元位置の変位として連続的に検出する。位置座標(x、y)のうち、xが水平方向、yが垂直方向の変位とした場合、位置座標(x、y)の時間変位は、それぞれ患者の生体表面の左右方向及び上下方向の変位に該当する。本実施形態に係る治療システム100は、このようにして、反射体56が置かれた部位の患者の体動を連続的に監視する。
【0041】
患者の生体表面の呼吸による上下運動は、y又は√(x+y)によって示され、これを呼吸波形として用いることができる。取得された電気信号を規格化し、診断装置、照射装置用に事前に決定された出力条件に基づき外部出力信号に変換する。その結果、適切なタイミングで診療用の照射ができるように、同期信号に基づいて診断装置あるいは、照射装置に対し照射要求信号(例えば、ゲート信号)を送信し、照射制御を行う。
【0042】
本実施形態では、光位置検出センサ62にPSD等の半導体検出器を使用することで、連続的な電気信号として直接位置を検出することとした。このため、本実施形態によれば、実際の体動からデータ送信までの応答時間が、従来のCCDカメラ及び画像処理を用いた位置検出を採用する場合に比べて低減され、体動検出からビーム照射制御までの遅延が改善される。
【0043】
また、光位置検出センサ62としてPSDを採用し、光源61に赤外線LEDを採用することで、体表面位置検出に消費電力の大きなCCDカメラ等を用いる場合に比べて、消費電力を抑えることができ、バッテリ駆動に有利である。
【0044】
通信部52は、検出部51から出力される信号に応じたデータを信号制御ポート8等の外部装置に対して無線伝送する。本実施形態では、伝送方法に第5世代移動通信システム(以下、「5G」)等の高速無線通信を用いることで、データ伝送による遅延を低減させることとした(理論上約1ms)。このため、本実施形態によれば、データ送信による遅延時間を、従来の無線LANや第4世代移動通信システム(以下、「4G」)等の無線通信技術を用いた場合に比べて低減し、体動検出からビーム照射制御までの遅延が改善される。なお、用いられる5G通信は、通信業者によって提供される5Gであってもよいし、敷地内に限定的にシステムを構築可能なローカル5Gであってもよい。通信手段に5Gを用いることで、無線伝送方式であっても、有線伝送同等の遅延時間の抑制と安定性が実現可能である。
【0045】
接続部53は、検出部51を治療台に接続する接続部53であって、治療台において可動である載置部2の動きに合わせて検出部51を移動可能に接続する。本実施形態において、接続部53は、検出部51を載置部2に固定することで、載置部2に載せられた生体と検出部51との相対的位置関係が維持されるように、治療台に対して検出部51を接続する。
【0046】
表示部54(ディスプレイ)は、検出部51によって検出された表面位置及び/又は体動変位を表示する。また、表示部54は、キーボードやマウス、タッチパネル等の入力デバイスに接続されることで、ユーザによる入力を受け付け可能であってもよい。
【0047】
アラート出力部55は、検出部51によって検出された表面位置及び/又は体動変位が予め設定された条件を満たした場合に、アラートを出力する。
【0048】
反射体56は、生体に設置(例えば、生体表面に貼り付け)されることで、検出部51の光源61から生体に向けて発せられた光を反射し、検出部51に戻す。反射体56として採用可能な部材は限定されないが、本実施形態では、反射体56として、光がどのような方向から当たっても入射した光源61方向に向かって反射する再帰性反射体56が用いられる。再帰性反射体56は、例えばコーナーキューブであってよく、3枚の平面の鏡を互いに直角に組み合わせ立体角の頂点型にした装置で、入射光が平面で複数回反射されることで、入射光の方向に関係なく光源61の方向に反射する。
【0049】
光位置検出センサ62と光源61とを光学的に略等価とみなせる光軸(同一光路)上に配置し、再帰性反射体56を生体表面に設置することで、再帰性反射体56の反射面が概ね正しく設定されていれば、反射光は光源61方向、即ち同一光路上にある光位置検出センサ62面に反射される。一方、再帰性を有しない反射体(平面のミラー等)は、入射光に対して反射角度を持つ。そのため、再帰性を有しない反射体を用いる場合には、反射体からの反射光が光位置検出センサ62面にスポット光として入射するために反射面と光位置検出センサ62面との微調整を行い、これらを正確に正対させることが好ましい。本実施形態では、再帰性反射体を用いることで、反射体の反射面の向き調整が不要となり、患者の生体表面への設置を容易且つ短時間で実施できる。加えて、再帰性反射体56として大きさ約1cm程度で且つ重さ数g(例えば、10g)以下のコーナーキューブを用いることとすれば、患者へ与える不快感・負荷を低減させることができる。また、金属製でない反射体56を用いることで、X線撮像又はCT撮像における画像アーティファクトを低減させることも可能である。
【0050】
一般に生体表面の動き、特に呼吸性移動は、単純な往復運動ではなく3次元的に複雑な動きである(AP:上下方向、LR:左右方向、SI:体軸方向)。加えて、生体表面には複雑な凹凸が存在する。このため、従来使用されている再帰性を有しない反射体56では、生体表面に反射体56を設置する際に、一周期分の呼吸性移動の軌跡を捉えられるようにセッティングすることは困難である。また、再帰性を有しない反射体56は、再帰性反射体56に比べてスポット光の移動を受光する範囲が広いため、位置検出の分解能を維持するためには、焦点距離を短くするか、検出装置の検出領域を広くしなくてはならない。焦点距離を短くするために、検出装置を生体の近くに設置すると、診断モダリティとの干渉が生じたり、照射野を邪魔してしまったり、治療ビームによって検出装置そのものに誤作動や破損を招いたりする恐れがある。また、検出領域の大きな検出装置を用いた場合、検出装置本体の大型化や、検出装置駆動のため受電装置が大型化し、生体周りのスペースの占有やコード引き回しによって、術者の動線や治療台の移動を妨げる要因になる。
【0051】
また、生体表面に反射体56を設置する方法ではなく、生体表面にLED等の光源を設置する方法もあるが、生体表面上を引き回すLEDには給電ケーブルが接続される。更に、LED面と検出装置のセンサ面を光学的に正対するよう向きの微調整も行われる。
【0052】
以上のことから、本実施形態では、反射体56として再帰性反射体56を用いることとしている。反射体56が再帰性を有することで、生体表面に概ね適当に設置しても、入射光の入射方向に関係なく反射光は元の方向に反射される。例えば、検出装置5に視準用の簡単なカメラ57を設置し、呼吸一周期分の反射体56の軌跡がカメラ57の一定の画角(光位置検出センサ62の有効視野の領域)に入ることを確認するだけで、容易に表面位置置監視のセッティングをすることが可能である。また、再帰性反射体56を用いることによって、どの角度から入射光が入射しても反射光が同じ位置に戻るため、検出領域が変位相当あれば足り、検出装置5の小型化が容易となる。
【0053】
カメラ57は、反射体56からの反射光が得られる方向と略同方向を撮像可能な、視準用のカメラ57である。視準用カメラ57を有することで、検出装置5の検出領域が生体表面の反射体56を適切に捉えるように、検出装置5をセッティングすることが容易になる。セッティングを行うユーザは、反射体56と視準用カメラ57のモニタに映る反射体56が、画面の概ね中心付近に表示されるように、検出装置5本体の向き(高さ、方位角、仰角)を調整するだけでよい。このとき、検出装置5本体の裏面にモニタを設け、視準用カメラ画像を表示すると、ユーザ操作が容易となる。モニタには、同時に光位置検出センサ62の信号(位置座標(x、y))、無線通信状態、及びバッテリ残量等が表示されてもよい。
【0054】
視準用カメラ57に採用可能なカメラは限定されないが、例えばCMOSカメラを用いることで、消費電力を抑えることができる。本実施形態に係る検出装置5はコードレスでバッテリ駆動が可能であるため、より長い稼働時間を確保するためにも、他のカメラセンサに比べて消費電力の比較的小さいCMOSカメラは有利である。また、視準用カメラ57は検出装置5のセッティングの際の視準が主とした又は唯一の目的であり、ビデオ画像の送信の優先度は低いため、信号制御ポート8等の外部装置へのビデオ画像の伝送は行われなくてよい。ビデオ画像の無線伝送を省略することで、無線伝送の対象が位置検出のデータ(電気信号)のみとなり、上記説明した実施形態と同様、高速な無線伝送を維持することが可能となる。即ち、本実施形態に示されたPSDとCMOSカメラの組み合わせによれば、高画質なCCDカメラを使用した場合と同等の使いやすさを実現可能である。
【0055】
本実施形態に係る照射装置9は、信号制御ポート8から入力されたデータに応じて生体に対する治療用のビーム照射を伴う治療を実行する。信号制御ポート8は、データ受信部91、波形生成部92、制御信号出力部93を備える。
【0056】
データ受信部91は、通信部52によって無線伝送されたデータを受信する。
【0057】
波形生成部92は、受信されたデータ(反射光位置の変位を電圧変位として検出した検出装置5から無線で送信された信号)に基づいて、生体の表面位置及び/又は体動変位を表す波形(例えば、規格化呼吸波形)を生成する。
【0058】
制御信号出力部93は、受信されたデータに基づいて、照射装置9によるビーム照射を制御することが可能な信号を出力する。より具体的には、本実施形態において、制御信号出力部93は、波形において生体の表面位置及び/又は体動変位が安定していると判定するための所定の条件(設定レベル)を満たすタイミングでビーム照射が行われるように、照射装置9に対してビーム照射を制御するための信号(ビーム要求信号/ゲート信号)を出力する。
【0059】
照射装置9は、載置部2に載せられた生体に対して、治療用の放射線(光子線又は粒子線)のビーム照射を行う。
【0060】
なお、上記説明した各構成は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、記憶装置、入力デバイス、出力デバイス、及び通信ユニット、等を備える制御部(コンピューター)によって制御されてよい(図示は省略する)。制御部の具体的なハードウェア構成に関しては、実施の態様に応じて適宜省略や置換、追加が可能である。また、制御部は、単一の筐体からなる装置に限定されない。制御部は、所謂クラウドや分散コンピューティングの技術等を用いた、複数の装置によって実現されてよい。制御部は、記憶装置14に記録されているプログラムがRAMに読み出されCPUによって実行されて各ハードウェアを制御することで、検出装置5を、上記説明した各構成を備える情報処理装置として機能させる。なお、本実施形態及び後述する他の実施形態では、制御部の備える各機能は汎用プロセッサであるCPUによって実行されるが、これらの機能の一部又は全部は、1又は複数の専用プロセッサによって実行されてもよい。
【0061】
以下、上記説明した本開示に係る技術を実施する場合のその他の実施形態を説明する。なお、本開示において説明する実施形態では、互いに共通する構成については同一の符号を付して説明し、説明を省略する。また、以下に説明する実施形態では、表面位置及び/又は体動変位の検出対象の生体が治療対象の人間(以下、「患者」と称する)である場合について説明する。但し、本開示に係る技術を適用可能な生体は治療対象の人間に限定されず、疾患を有することが明らかでない人間に対して(例えば、検査等の目的で)実施されてもよいし、人間以外の生体に対して実施されてもよい。
【0062】
<第二の実施形態>
図4は、本実施形態に係る検出装置5において構成される光路の概略を示す図である。本実施形態では、上記説明した第一の実施形態における構成に加えて、視準用カメラ57が設けられる例を説明する。患者の生体表面に反射体56を設置し、光位置検出センサ62と同一の方向にある光源61から光を照射し、反射体56により反射した光を光位置検出センサ62で受光する点、光位置検出センサ62が光の位置に対応した電気信号を出力し、照射装置9の信号制御ポート8(データ受信部91)へ送信する点、光位置検出センサ62と光源61への給電がバッテリユニット6から行われ、信号制御ポート8への信号送信が無線を介して行われる点等は、上記説明した第一の実施形態と概略同様である。
【0063】
視準用カメラ57を併設することで、PSDが監視可能な有効視野が狭い場合であっても、容易に視野確認を行い、適切な方向に検出装置5を設定することが可能となる。PSDの変位量に対する感度は、PSDセンサの有効領域が一定なので、監視する有効視野が狭いほど上がる(小さな変化も大きな電気信号として検出できる)ため、検出装置5の性能上も有利である。なお、図4に示す例では、光源61、光位置検出センサ62、視準用カメラ57が、光学的に略等価とみなせる光軸(同一光路)上に配置される例を説明する。
【0064】
検出装置5の光学系の光路形成には、レンズ63、反射ミラー64、偏光スプリッタ65、ハーフミラー66等の光学部材が適宜使用されてよい。例えば図4に示すように、視準用カメラ57は、偏光スプリッタ65を用いて光位置検出センサ62の位置と同一軸上でない位置に設置されてよい。
【0065】
<第三の実施形態>
検出装置5における光路の全体が直線である場合、検出装置5本体の患者体軸方向(反射体56へ向けられる方向)への長さ(奥行長さ)が長くなってしまう。検出装置5を治療台の載置部2(ベッド部/天板)のうち患者の足元側に設置する場合、患者の邪魔にならないように検出装置5を支える接続部53(架台)のサイズは抑制されることが好ましいが、接続部53のサイズが抑えられ且つ検出装置5本体の奥行長さが長い場合、検出装置5を固定する構造(例えば、一点で支える構造等)が治療台の移動時等の振動に対して不十分となり、光軸のずれによる測定精度の低下や光学機器の故障の原因となる。
【0066】
このため、本実施形態では、検出装置5の奥行長さを短縮するために、1又は複数の光学部材を用いて光路を曲げる構成が採用される。図5又は図6に示すように光路を患者の体軸方向に対して鉛直面内に曲げることで、検出装置5の奥行長さを短くして検出装置5全体を小型化し、接続部53のサイズが抑えられた状態でもバランス良く支えることができ、振動に対して十分な固定を確保することが可能となる。
【0067】
ここで、1又は複数の光学部材のうち少なくとも1つの光学部材は、ハーフミラー66であってよい。ハーフミラー66は、入射光の光軸と反射光の光軸とを、反射体56と当該ハーフミラー66との間の区間において略一致させ、当該ハーフミラー66と光源61又は光位置検出センサ62との間の区間において分離させる。
【0068】
また、1又は複数の光学部材のうち少なくとも1つの光学部材は、反射ミラー64であってよい。反射ミラー64は、反射体56と光位置検出センサとの間の区間に設けられることで、当該区間における入射光の光軸と反射光の光軸とを制御する。
【0069】
また、1又は複数の光学部材のうち少なくとも1つの光学部材は、偏光スプリッタ65であってよい。偏光スプリッタ65は、反射光を含む生体側からの入力光を、光位置検出センサ62に入る反射光を少なくとも含む光と、カメラ57に入る生体側からの可視光を少なくとも含む光とに分離する。
【0070】
図5は、本実施形態に係る検出装置5において構成される光路の概略を示す図である。図に示された例では、ハーフミラー66、偏光スプリッタ65及び反射ミラー64を用いて光路を患者の体軸方向に対して鉛直面内に曲げ、光源61、PSD(光位置検出センサ62)及び視準用カメラ57を概ね一列に配置することで、患者体軸方向(反射体56へ向けられる方向)への光路が短縮されている。光源61から出射されハーフミラー66を通過した光は、患者の生体表面に設置された再帰性反射する反射体56(例えば、コーナーキューブ)に向かう入射光として進行する。反射体56による反射光は、ハーフミラー66に向かって再帰性反射する。反射光はハーフミラー66で分離された後、偏光スプリッタ65によって、PSDで受光され光と、反射ミラー64で反射されて視準用の画像カメラ57で受光される光とに更に分離される。なお、偏光スプリッタ65やミラー等の光学部材は目的に応じて適切なものが用いられてよい。
【0071】
図6は、本実施形態に係る検出装置5において構成される光路の概略を示す図である。図に示された例では、光源61とPSDが列1上に設置され、視準用カメラ57が列1とほぼ平行な列2に配置されることで、患者体軸方向(反射体56へ向けられる方向)への光路が短縮されている。概ね列1上に設置された光源61から出射した光は列2上に設置されたハーフミラー66で分離され、分離された光は列2上に設置された反射ミラー64により更に反射され、患者の生体表面に設置された再帰性反射する反射体56(例えば、コーナーキューブ)に向かう入射光として進行する。反射体56による反射光は、列2上の反射ミラー64に向かって再帰性反射する。反射光は反射ミラー64で反射された後、列2上を進行して偏光スプリッタ65で光路が分離され、列1上に設置された反射ミラー64で反射されて列1上を進行し、PSDで受光される。一方、偏光スプリッタ65を透過した反射光は、列2上を進行し、視準用の画像カメラ57で受光される。上述の通り、偏光スプリッタ65やミラー等の光学部材は目的に応じて適切なものが用いられてよい。
【0072】
患者体軸方向(反射体56へ向けられる方向)への長さ(奥行長さ)が短くなり、一方で患者体軸方向に対して鉛直面内で広くなるが、上述したように光路設計を工夫することで従来の奥行き長さよりもコンパクトに構成できる。よって、検出装置5の接続部53は、検出装置5本体を1点で支える構造から、検出装置5本体を当該装置の両サイドで支える構造(図2を参照)に変更することが容易となる。従来の接続部は検出装置5本体を1点で支える構造であったために、診療台への固定位置が限定され載置部から部分的に突出して、周囲の装置と干渉する可能性があった。一方で、より小型化された検出装置5本体を、両サイドで支える構造にすることで診療台から検出装置5本体が突出することがなくなり、周囲の装置との干渉が抑制される。また、治療台の載置部2の端等の限定された場所だけでなく、載置部2の両サイドを支点として載置部2の任意の位置で固定出来る。このため、検出装置5の固定を強固にでき、治療台が移動する際の振動による検出装置5への振動等の影響を抑制できる。さらに検出装置5の角度を微調整するための機構を両サイド支点として取り付けることができ、調整が容易になる。また、載置部2の患者体軸方向の両サイドにレールを取り付け、接続部53がレール上を移動できる機構を設けることにより、小児等の身長の小さな患者に対しても検出装置5をより近づけて適切な位置に設置することができるようになり、様々な患者の様々な体位に対して生体表面の動きの検出能を維持可能となる。一般的な転載部2には、患者体軸方向の両サイドに、患者のLR方向に市販のバーを渡して固定具を固定するための複数の穴が等間隔で空いている。この穴を利用して、接続部53を任意の位置に設置することも可能である。
【0073】
<第四の実施形態>
コーナキューブのような再帰性反射する反射体56を使用した場合、光源61とPSDが同じ光路上に位置すれば、視準用カメラ57は必ずしも同一光路上に設置されなくてもよい。反射体56は検出部51からある一定の距離内(例えば、体幹部から足元までの1m程度の範囲内)に設置されることが想定されるため、反射体56の動きを捉えるための視準用カメラ57の設置角度の範囲は所定の範囲内に収まる。このため、反射体56に対する入射光/反射光の光軸と、視準用カメラ57の光軸との成す角度を適切な所定の範囲内に収まっていれば、視準用カメラ57は入射光/反射光の光軸外に設置されてもよい。
【0074】
図7は、本実施形態に係る検出装置5において構成される光路の概略を示す図である。図7に示す例では、視準用カメラ57を入射光/反射光の光軸外に設けることで、シンプルな光路形成を可能とし、且つ光路全体を短くすることを可能としている。先述の通り、反射体56に対する入射光/反射光の光軸と、視準用カメラ57の光軸との成す角度は、反射体56の動きを視準用カメラ57が捉えることが可能な適切な所定の範囲内に収められる。また、ズームレンズ67を光軸上に設置することで、生体表面の振幅が小さい場合でも検出能を上げることが可能である。なお、ここで用いられるズームレンズ67は、検出装置5に設けられたタッチパネル等のユーザインターフェースを介したユーザ指示に従って駆動するモータによってズーム操作可能な電動式のズームレンズであってもよいし、ユーザが直接ズームレンズを回してズーム操作を行うマニュアル式のズームレンズであってもよい。
【0075】
<第五の実施形態>
呼吸によって動く臓器に高精度にビーム照射を行うためには、治療計画を作成する基準となるCT画像(以下、「治療計画CT」)を取得するステップから呼気位相の把握が行われる。例えば、肺、肝臓又は膵臓等が照射対象であるために呼吸性移動によって腫瘍自体が動く場合、比較的振幅の変位が小さい呼気位相にタイミングを合わせて照射することが一般的であり、そのために、変位が小さい呼気位相で治療計画CTが撮像されることが好ましい。3から5秒程度の呼吸周期の中で照射可能なのは、一般的に変位が小さい呼気位相であり、当該呼気位相の前後において臓器は急速に変位するため、同期信号が遅延すると照射位置がずれてしまい、照射精度が低下する。治療は自由呼吸下で行われるため、呼気位相に合わせて治療ビームを照射する呼吸同期照射が行われることが好ましい。以下に呼吸同期照射の一例を挙げる。
【0076】
本実施形態では、はじめに、治療計画CTとして、時間を考慮した4DCT又は4DMRTが撮像される。4D撮像の場合、取得したい範囲で2D或いは3Dの複数枚の画像が、位置を変えながら取得される。同時に検出装置5により検出された生体表面の変位量、即ち呼吸波形も取得され、取得された画像及び呼気波形は、時空間的に関連付けて並び替えられる。例えば、CTの場合は、寝台あるいはCT自体を自走させ位置を変えて撮像し、MRIの場合は矢状断面や体軸断面を呼吸周期ごとに取得する。例えば、このとき取得した呼吸波形は治療における基準呼吸波形とする。そして、治療前に4D撮像画像上の体内の腫瘍の変位と基準呼吸波形とを相関させ、ビーム照射する呼吸波形信号の設定レベルが決定される。
【0077】
図8は、本実施形態における信号制御ポート8の構成の概略を示す図である。検出装置5は、毎回の治療直前に、呼吸波形を取得する。信号制御ポート8へ無線送信された呼吸波形は、信号制御ポート8に内蔵された信号制御ユニット(波形生成部92)によって、最大呼気位置と最大吸気位置の間で規格化される。設定・記録用PCは、規格化された呼吸波形を事前に取得された基準呼吸波形と比較し、比較の結果に応じて、事前に設定された設定レベルを付す。例えば、設定・記録用PCは、最大呼気位置を0%とした場合、0から20%の間の呼吸位相の間は照射可能とする設定レベルを付す。設定・記録用PCは、設定レベルを信号制御ポート8へ送信し、信号制御ユニット(制御信号出力部93)は、リアルタイムに無線受信する呼吸波形に対し、呼吸位相が設定レベル内である場合に、矩形波のゲート信号を生成する。
【0078】
検出装置5は、治療中においても、連続して呼吸波形を取得する。信号制御ポート8は、設定レベルに応じたゲート信号を生成して、上位制御へ送信し、設定レベル内に入った変位量が検出された場合、ゲート信号(例えばビーム要求信号)が立ち、ビームが照射される(ビームON)。設定レベル外になった変位量が検出された場合、ゲート信号が落ち、直ちにビームが停止される(ビームOFF)。
【0079】
図9は、本実施形態における、呼吸性移動臓器の治療における検出装置5の使用例を示す図である。なお、放射線治療室は約1から2mの厚さの遮蔽コンクリートに囲まれるため、無線通信は治療室内に留めることが好ましいがその限りではない。信号制御ポート8、設定・記録用PC、及び上位制御は、高速且つ安定した通信が好ましいため、有線(例えば、有線LAN)で接続されてもよい。また、フェールセーフとして、信号制御ポート8には同期OFFハンドスイッチ(図示せず)等のハードウェアが接続され、手動でビームOFF信号を上位制御へ送信可能としてもよい。
【0080】
図10は、本実施形態における、信号制御ポート8で受信された呼吸波形と、それに応じたゲート信号生成とビーム照射制御の例を示す図である。本実施形態における治療システム100では、自由呼吸下では設定レベル内の呼吸位相においてのみ、ゲート信号が立ち、それに従いビームが照射される。この際、信号制御ポート8は、呼吸波形から信号を予測し、事前にビームOFFの予測ゲート信号により実際の呼吸波形から得られる設定レベルを超過する前にビームOFFする制御にしてもよい。咳等による意図しない呼吸の乱れが生じた際には、ビームOFFするように制御される。これにより、呼吸によって動く臓器に対して、狙った位置にのみ照射することで照射精度を向上させ、周囲の正常組織の被曝を最小限にすることが可能となる。
【0081】
<第六の実施形態>
放射線治療の照射そのものは1分程度で終了するが、治療全体で要する時間においては患者位置決め作業の占める時間が大半であり、位置決め作業には早くても10分程度、呼吸同期照射等の場合1時間程度の時間を要し、このような位置決め作業を治療室で行うと治療室の利用効率が下がってしまう。このため、本実施形態では、ロボットアーム(駆動部3)を備えた治療台の機能を有する搬送型治療台1(シャトル)を放射線治療に用いることで、位置決め作業を治療室以外の場所(例えば、位置決め室)で行い、治療室の利用効率を向上させる。
【0082】
図11は、本実施形態に係る搬送型治療台1を用いた治療の流れの一例を示す図である。本実施形態では、搬送型治療台1の載置部2に載置した(治療台に寝かせ、固定具が装着された)患者の位置決めを位置決め室において行った後、位置決めされた状態における駆動部3の姿勢データ(例えば、並進と回転の6軸情報(x,y,z,ψ,Φ,θ))が、各部屋の上位制御システム(例えば、位置決め室管理装置)に記録され、更に上位の制御システム(例えば治療制御システム)に送信及び保存される。位置決め室に固定されていた搬送型治療台1の固定が解除されると、位置決め後の患者は、固定具等で搬送型治療台1の載置部2に固定されたまま、治療室へ搬送される。治療室に到着し、搬送型治療台1が治療室内の照射装置9に対して固定されると、治療室管理装置によって治療制御システムに保存された姿勢データが読み込まれ、駆動部3が姿勢データに基づいて駆動することで、位置決め室で位置決めされた姿勢を再現する。なお、搬送時は患者の安全のため、ロボットアーム等の姿勢調整・保持部はアームがスタックされたホーム位置等をとってもよい。治療が終了すると、姿勢調整・保持部はホーム位置に戻り、治療室に固定されていた搬送型治療台1の固定が解除され、指定された停車場所(位置決め室であってもよいし、その他の部屋であってもよい。)にまで搬送される。患者は固定具等を取り外され、搬送型治療台1から降車し、治療終了となる。ここで、本実施形態に係る搬送型治療台1によれば、患者が載置部2に載置されて検出装置による監視が開始されてから少なくとも治療終了までの間、移動中も含めて検出装置による監視が継続される。
【0083】
本実施形態で示した呼吸同期照射の患者の場合は、患者位置決め作業時から治療完了まで検出装置5による監視が行われることが好ましいため、検出装置5は、搬送型治療台1とともに移動可能とされる。このとき、有線の検出装置では、部屋ごとに脱着したり、セッティングしたりする手間が生じるため、作業効率が低下する。
【0084】
また、搬送中に患者が何らかの理由で動いてしまった場合、その変化が臨床的に許容できない場合は、患者位置決めがやり直される。搬送型治療台1には介助者が並走するが、患者の体動のみに集中することは難しい。そのため、定量的に搬送中に患者の状態を監視するモニタが用いられることが好ましい。このとき、2次元の変量を検出できる本開示に係る検出装置5であれば、患者の体動を検知することができる。例えば表示部54(表示操作ユニット)に、簡易的な許容値登録を行う機能を内蔵し、許容値を超過した場合、検出装置5のアラート出力部55がアラート音やアラート表示等を出力することで介助者への通知を行い、速やかに位置決め室に戻り、再度、患者位置決めのやり直しを行うことができる。
【0085】
搬送型治療台1における搬送中の検出装置5の体動監視機能は、呼吸同期照射法にとどまらない。体幹部以外の照射で呼吸性移動を考慮しなくて良い部位、例えば、頭頸部や骨盤部の患者に対して、患者が静止状態を維持しにくい小児や高齢者、あるいは不随意運動を呈する患者にも有効である。また、治療中においても、照射部位に近い体動をいつでも簡単に監視することができる。呼吸同期照射法でない場合、従来は患者が予測しない動き(例えば咳等)で動いた場合は、医師や放射線技師等が手動で照射ビームを止めていた。しかし、コードレスであれば任意の表面位置の変位を常に検出装置5で監視できる。更に、ビームゲート信号を送信することもでき、自動でビーム停止することも可能となり、より安全な治療を行うことができる。
【0086】
<第七の実施形態>
検出装置5には、光位置検出センサ62で検出した電圧変位を内外に出力する複数のユニット、例えば、信号制御ユニット、表示操作ユニット(表示部54)及び無線通信ユニット(通信部52)等が内蔵されていてもよい。例えば、PSDからアナログ出力された電圧変位は、検出装置5に内蔵されたセンサ信号ユニット(図示は省略する)によってデジタル変換されて出力されてよい。出力されたデジタル信号は、例えば、通信部52から、信号制御ポート8のデータ受信部91へ送信される。信号制御ポート8には、受信されたデジタル信号に基づいて、規格化された波形信号とビームのON/OFF要求信号を出力する信号制御ユニット(制御信号出力部93)が内蔵されている。
【0087】
図12は、本実施形態において表示操作ユニット(表示部54)に表示される情報の例を示す図である。上記説明したデジタル信号は、検出装置5に内蔵された表示操作ユニットに送信される。本実施形態では、視準用カメラ57からの画像信号も表示操作ユニットへ送信され、生体表面の変位量が、デジタル信号と同期して1次元又は2次元情報として、リアルタイムで液晶モニタ等の表示部54に表示されてよい。なお、この表示は、反射体56と検出装置5本体の位置合わせのための液晶モニタ表示であるため、表示の遅延は許容される。このため、表示内容は規格化処理済の波形であってもよい。
【0088】
<その他のバリエーション>
また、上記説明した実施形態では、信号制御ポート8が波形生成部及び/又は制御信号出力部を備え、信号制御ポート8がゲート信号を出力する実施の態様を説明したが、このような態様に代えて、検出装置5自体がゲート信号を出力することとしてもよい。即ち、通信部52は、検出部51によって検出された表面位置及び/又は体動変位に応じた制御データ(例えば、ゲート信号)を、外部装置に対して伝送してもよい。
【0089】
<効果>
上記説明した実施形態によれば、検出装置5をコードレス化することで、載置部周りが省スペース化される。この結果、ケーブルが患者や医療スタッフの動作を妨げない、駆動範囲に対しケーブル長さが不足することがない、周囲の他の機器(診察機器や照射機器等)との干渉(機械的な干渉、及び撮影視野や照射野との干渉)が避けられる、治療台の患者足元側に検出装置本体を設置可能となる、検出装置を用いない患者に対しても妨げにならない、検出装置本体を治療台に設置したままで良いので、セットアップに要する作業を短縮できる、等の様々なメリットを享受でき、治療の安全性及び利便性が向上する。
【0090】
また、上記説明した実施形態によれば、患者位置決め完了後の移動中でも患者姿勢をモニタでき、臨床的に許容できない大きな動きが生じた際、介助者に注意喚起を促し、すぐさま位置決めをやり直すことが出来る。
【0091】
また、上記説明した実施形態によれば、光位置検出センサ62にPSD等の半導体検出器を使用し、伝送方法に高速無線通信を用いることで、実際の体動からビーム照射制御までの全体の遅延時間が従来に比べて低減され(例えば、全体の遅延時間約10ms以下)、体動検出からビーム照射制御までの遅延が改善され、患者の生体表面の動きが臨床的に許容できない場合に、即座にビーム照射を停止することが可能となる。
【0092】
<付記>
以下、本開示に関連して当業者が実施可能な技術的思想を付記する。
(付記1)
生体が載せられる載置部を有する診療台に設置され、前記載置部に載せられた前記生体の表面位置及び/又は体動変位を検出する検出部と、
前記診療台と共に移動可能なバッテリであって、外部の給電設備から切り離された状態で前記検出部へ給電可能なバッテリと、
前記検出部から出力される信号に応じたデータを外部装置に対して無線伝送する通信部と、
前記検出部を前記診療台に接続する接続部であって、該診療台において可動である前記載置部の動きに合わせて前記検出部を移動可能に接続する接続部と、
を備える、検出装置。
(付記2)
前記接続部は、前記載置部に載せられた前記生体と前記検出部との相対的位置関係が維持されるように、前記診療台に対して前記検出部を接続する、
付記1に記載の検出装置。
(付記3)
前記接続部は、前記検出部を前記載置部に固定することで、前記載置部に載せられた前記生体と前記検出部との相対的位置関係を維持する、
付記2に記載の検出装置。
(付記4)
前記診療台は、前記載置部に前記生体が載せられた状態で異なる場所へ搬送可能な搬送型診療台である、
付記1に記載の検出装置。
(付記5)
前記検出部によって検出された表面位置及び/又は体動変位を表示可能な表示部を更に備える、
付記1に記載の検出装置。
(付記6)
前記検出部によって検出された表面位置及び/又は体動変位が予め設定された条件を満たした場合に、アラートを出力するアラート出力部を更に備える、
付記1に記載の検出装置。
(付記7)
前記通信部は、前記検出部によって検出された表面位置及び/又は体動変位に応じた制御データを、前記外部装置に対して伝送する、
付記1に記載の検出装置。
(付記8)
前記生体に設置される反射体を更に備え、
前記検出部は、光源及び光位置検出センサを有し、前記光源から前記生体に対して発せられた入射光が前記反射体によって反射され、該反射体による反射光が前記光位置検出センサに入力されるように光路が構成される、
付記1に記載の検出装置。
(付記9)
前記反射体からの前記反射光が得られる方向と略同方向を撮像可能なカメラを更に備える、
付記8に記載の検出装置。
(付記10)
前記検出部は、前記入射光及び/又は前記反射光の軌道を制御する1又は複数の光学部材を更に有する、
付記8に記載の検出装置。
(付記11)
前記1又は複数の光学部材は、
前記入射光の光軸と前記反射光の光軸とを、前記反射体と該光学部材との間の区間において略一致させ、該光学部材と前記光源又は前記光位置検出センサとの間の区間において分離させるハーフミラー、及び、
前記反射体と前記光位置検出センサとの間の区間に設けられることで、該区間における前記入射光の光軸と前記反射光の光軸とを制御する反射ミラー、
の少なくともいずれかを含む、
付記10に記載の検出装置。
(付記12)
前記反射体からの前記反射光が得られる方向を撮像可能なカメラを更に備え、
前記1又は複数の光学部材のうち少なくとも1つの光学部材は、前記反射光を含む前記生体側からの入力光を、前記光位置検出センサに入る前記反射光を少なくとも含む光と、前記カメラに入る前記生体側からの可視光を少なくとも含む光とに分離するスプリッタである、
付記10に記載の検出装置。
(付記13)
前記反射体は、再帰性反射体である、
付記8に記載の検出装置。
(付記14)
生体が載せられた状態で異なる場所へ搬送可能な搬送型診療台であって、
生体が載せられる載置部と、
前記載置部に載せられた前記生体の表面位置及び/又は体動変位を検出する検出部と、
前記搬送型診療台と共に移動可能なバッテリであって、外部の給電設備から切り離された状態で前記検出部へ給電可能なバッテリと、
前記検出部から出力される信号に応じたデータを外部装置に対して無線伝送する通信部と、
前記検出部を前記可搬型診療台に接続する接続部であって、該可搬型診療台において可動である前記載置部の動きに合わせて前記検出部を移動可能に接続する接続部と、
該搬送型診療台を移動可能とするための搬送部と、
を備える、搬送型診療台。
(付記15)
前記バッテリは、前記検出部に加えて、前記搬送部へ給電する、
付記14に記載の搬送型診療台。
(付記16)
前記搬送型診療台は、前記載置部を平行移動及び/又は回転させる駆動部を更に備え、
前記バッテリは、前記検出部に加えて、前記駆動部へ給電する、
付記14に記載の搬送型診療台。
(付記17)
生体が載せられた状態で異なる場所へ搬送可能な搬送型治療台と、前記生体に対する治療用のビーム照射を行う照射装置と、入力されたデータに応じて前記照射装置を制御する信号制御装置と、を備える治療システムであって、
前記搬送型治療台は、
生体が載せられる載置部と、
前記載置部に載せられた前記生体の表面位置及び/又は体動変位を検出する検出部と、
前記搬送型治療台と共に移動可能なバッテリであって、外部の給電設備から切り離された状態で前記検出部へ給電可能なバッテリと、
前記検出部から出力される信号に応じたデータを外部装置に対して無線伝送する通信部と、
前記検出部を前記搬送型治療台に接続する接続部であって、該搬送型治療台において可動である前記載置部の動きに合わせて前記検出部を移動可能に接続する接続部と、
該搬送型治療台を移動可能とするための搬送部と、を備え、
前記信号制御装置は、
前記通信部によって無線伝送された前記データを受信するデータ受信部と、
受信された前記データに基づいて、前記照射装置による前記ビーム照射を制御することが可能な信号を出力する制御信号出力部と、を備える、
治療システム。
(付記18)
前記信号制御装置は、
受信された前記データに基づいて、前記生体の表面位置及び/又は体動変位を表す波形を生成する波形生成部を更に備え、
前記制御信号出力部は、前記波形において前記生体の表面位置及び/又は体動変位が安定していると判定するための所定の条件を満たすタイミングで前記ビーム照射が行われるように、前記照射装置に対して前記ビーム照射を制御するための信号を出力する、
付記17に記載の治療システム。
(付記19)
生体が載せられる載置部を有する治療台に設置され、前記載置部に載せられた前記生体の表面位置及び/又は体動変位を検出する検出部と、
前記生体に設置される反射体と、を備え、
前記検出部は、光源及び光位置検出センサを有し、前記光源から前記生体に対して発せられた入射光が前記反射体によって反射され、該反射体による反射光が前記光位置検出センサに入力されるように光路が構成される、
検出装置。
(付記20)
前記反射体からの前記反射光が得られる方向と略同方向を撮像可能なカメラを更に備える、
付記19に記載の検出装置。
(付記21)
前記検出部は、前記入射光及び/又は前記反射光の軌道を制御する1又は複数の光学部材を更に有する、
付記19に記載の検出装置。
(付記22)
前記1又は複数の光学部材は、
前記入射光の光軸と前記反射光の光軸とを、前記反射体と該光学部材との間の区間において略一致させ、該光学部材と前記光源又は前記光位置検出センサとの間の区間において分離させるハーフミラー、及び、
前記反射体と前記光位置検出センサとの間の区間に設けられることで、該区間における前記入射光の光軸と前記反射光の光軸とを制御する反射ミラー、
の少なくともいずれかを含む、
付記21に記載の検出装置。
(付記23)
前記反射体からの前記反射光が得られる方向を撮像可能なカメラを更に備え、
前記1又は複数の光学部材のうち少なくとも1つの光学部材は、前記反射光を含む前記生体側からの入力光を、前記光位置検出センサに入る前記反射光を少なくとも含む光と、前記カメラに入る前記生体側からの可視光を少なくとも含む光とに分離するスプリッタである、
付記21に記載の検出装置。
【符号の説明】
【0093】
1 搬送型治療台
5 検出装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12