(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122771
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】定着装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
G03G15/20 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030499
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 泰禎
(72)【発明者】
【氏名】宗田 真
(72)【発明者】
【氏名】田口 和奈
(72)【発明者】
【氏名】池野 雄一
(72)【発明者】
【氏名】西村 拓也
(72)【発明者】
【氏名】畠山 真一
(72)【発明者】
【氏名】植木 俊介
(72)【発明者】
【氏名】今宮 圭一
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA06
2H033BA11
2H033BA12
2H033BB12
2H033BB18
2H033BB21
2H033BB30
2H033BB33
2H033BB34
2H033BE00
2H033BE03
(57)【要約】
【課題】軸方向における端部のニップ幅が大きくなることを抑制する。
【解決手段】定着装置は、ベルトと、ヒータ10と、ホルダ20と、ステイ40と、加圧ローラ3とを備える。ホルダ20は、ヒータ10を支持するヒータ支持面22Aと、ヒータ支持面22Aとは反対側に位置する接触面(先端面24M)とを有する。ステイ40は、ホルダの接触面と接触する。加圧ローラ3は、ヒータ10との間でベルトを挟む。加圧ローラ3は、シャフト3Aと、シャフト3Aの外周面を覆う弾性層3Bとを有する。加圧ローラ3は、軸方向において、両端から中央に向うにつれて直径が小さくなる形状を有する。ホルダ20がステイ40およびヒータ10と組み立てられる前の状態において、接触面は、軸方向においてホルダ20の両端から中央に向うにつれて、ヒータ支持面22Aを通る軸方向に平行な一の直線からの距離が大きくなる形状を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状のベルトと、
前記ベルトの内側に配置されたヒータであって、基板と、前記基板に配置される抵抗発熱体とを含むヒータと、
前記ヒータを保持するホルダであって、前記ヒータを支持するヒータ支持面と、前記ヒータ支持面とは反対側に位置する接触面とを有するホルダと、
前記ホルダの接触面と接触するステイと、
軸方向に延びる回転軸を中心に回転する加圧ローラであり、前記ヒータとの間で前記ベルトを挟む加圧ローラであって、シャフトと、前記シャフトの外周面を覆う弾性層と、を有する加圧ローラと、を備え、
前記加圧ローラは、前記軸方向において、両端から中央に向うにつれて直径が小さくなる形状を有し、
前記ホルダが前記ステイおよび前記ヒータと組み立てられる前の状態において、前記接触面は、前記軸方向において前記ホルダの両端から中央に向うにつれて、前記ヒータ支持面を通る前記軸方向に平行な一の直線からの距離が大きくなる形状を有することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記シャフトは、前記軸方向の両端から中央に向かうにつれて直径が大きくなる形状を有することを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記弾性層は、前記軸方向の両端から中央に向かうにつれて厚さが小さくなる形状を有することを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項4】
前記ホルダは、前記ヒータ支持面とは反対側に突出する複数の突起であって、前記軸方向に並ぶ複数の突起を有し、
接触面は、前記複数の突起の先端面であることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項5】
前記複数の突起は、前記軸方向において、両端に位置する突起よりも中央に位置する突起の方が突出量が大きいことを特徴とする請求項4に記載の定着装置。
【請求項6】
前記軸方向の中央における、前記ヒータ支持面を通る前記軸方向に平行な一の直線から前記接触面までの距離と、前記軸方向の両端における前記一の直線から前記接触面までの距離と、の差は、25μm以上、且つ、700μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項7】
前記軸方向の中央における前記弾性層の厚さと、前記軸方向の両端における前記弾性層の厚さと、の差は、0.1mm以上、且つ、1mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項8】
前記軸方向の中央における前記シャフトの直径と、前記軸方向の両端における前記シャフトの直径と、の寸法差は、0.1mm以上、且つ、9mm以下であることを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【請求項9】
前記ステイは、
前記接触面と直交する直交方向に延び、前記直交方向における一端が前記接触面と接触する第1壁と、
前記直交方向に延び、前記直交方向における一端が前記接触面と接触する第2壁であって、前記第1壁と前記軸方向および前記直交方向に直交する方向に間隔をあけて配置された第2壁と、を有することを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項10】
前記ステイは、
前記第1壁の前記直交方向における他端と、前記第2壁の前記直交方向における他端を連結する第3壁と、を有し、
前記軸方向から見て、U字形状を有することを特徴とする請求項9に記載の定着装置。
【請求項11】
前記ステイは、前記ホルダと接触するホルダ支持面を有し、
前記ホルダ支持面は、前記軸方向における中央部が、前記軸方向における両端部よりも突出する形状を有することを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項12】
前記ホルダが前記ステイおよび前記ヒータと組み立てられる前の状態において、前記ヒータ支持面は、前記軸方向における中央部が、軸方向における両端部よりも突出した形状を有することを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の定着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートにトナー像を定着させる定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置の装置本体内に配置され、シートにトナー像を定着させる定着装置が知られている(特許文献1参照)。この定着装置の加圧ローラは、両端の外径が中央の外径より大きい形状、いわゆる逆クラウン形状を有する。加圧ローラが逆クラウン形状を有することで、定着装置はシートを中央から両端に向けて引き延ばしながら搬送できるため、シートに発生するシワを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、逆クラウン形状を有する加圧ローラを有する定着装置においては、加圧ローラの軸方向において、端部のニップ幅が大きくなるという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は、定着装置において、加圧ローラの軸方向における端部のニップ幅が大きくなることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係る定着装置は、ベルトと、ヒータと、ホルダと、ステイと、加圧ローラと、を備える。
ベルトは、無端状である。ヒータは、ベルトの内側に配置されている。ヒータは、基板と、基板に配置される抵抗発熱体とを含む。ホルダは、ヒータを保持する。ホルダは、ヒータを支持するヒータ支持面と、ヒータ支持面とは反対側に位置する接触面とを有する。
ステイは、ホルダの接触面と接触する。加圧ローラは、軸方向に延びる回転軸を中心に回転する。加圧ローラは、ヒータとの間でベルトを挟む。加圧ローラは、シャフトと、シャフトの外周面を覆う弾性層と、を有する。加圧ローラは、軸方向において、両端から中央に向うにつれて直径が小さくなる形状を有する。
ホルダがステイおよびヒータと組み立てられる前の状態において、接触面は、軸方向においてホルダの両端から中央に向うにつれて、ヒータ支持面を通る軸方向に平行な一の直線からの距離が大きい。
【0007】
加圧ローラが軸方向の両端から中央に向かうにつれて直径が小さくなる、いわゆる逆クラウン形状を有するため、シートを中央から両端に向けて引き延ばしながら搬送できる。このため、シートに発生するシワを抑制できる。この場合において、ホルダの接触面が軸方向における両端から中央に向かうにつれてヒータ支持面を通る軸方向に平行な一の直線からの距離が大きいことで、軸方向の中央のニップ圧が両端のニップ圧に比べて小さくなることを抑制できる。この結果、加圧ローラが逆クラウン形状を有していても、加圧ローラの軸方向における端部のニップ幅が大きくなることを抑制できる。
【0008】
また、シャフトは、軸方向の両端から中央に向かうにつれて直径が大きくなる形状を有してもよい。
【0009】
シャフトが軸方向の両端から中央に向かうにつれて直径が大きくなる形状を有することで、弾性層が熱膨張した場合に、軸方向の中央より両端部が大きく膨張する。このため、熱膨張した場合であっても、搬送されるシートが軸方向の中央から両端に向けて伸ばされて、シワの発生を抑制できる。
【0010】
また、弾性層は、軸方向の両端から中央に向かうにつれて厚さが小さくなる形状を有してもよい。
【0011】
弾性層が軸方向の両端から中央に向かうにつれて厚さが小さくなる形状を有することで、弾性層が熱膨張した場合に、軸方向の中央より両端部が大きく膨張する。このため、熱膨張した場合であっても、搬送されるシートが軸方向の中央から両端に向けて伸ばされて、シワの発生を抑制できる。
【0012】
また、ホルダは、ヒータ支持面とは反対側に突出する複数の突起であって、軸方向に並ぶ複数の突起を有してもよい。そして、接触面は、複数の突起の先端面であってもよい。
【0013】
また、複数の突起は、軸方向において、両端に位置する突起よりも中央に位置する突起の方が突出量が大きくてもよい。
【0014】
また、軸方向の中央における、ヒータ支持面を通る軸方向に平行な一の直線から接触面までの距離と、軸方向の両端における一の直線から接触面までの距離と、の差は、25μm以上、且つ、700μm以下であってもよい。
【0015】
また、軸方向の中央における弾性層の厚さと、軸方向の両端における弾性層の厚さと、の差は、0.1mm以上、且つ、1mm以下であってもよい。
【0016】
また、軸方向の中央におけるシャフトの直径と、軸方向の両端におけるシャフトの直径と、の寸法差は、0.1mm以上、且つ、9mm以下であってもよい。
【0017】
また、ステイは、接触面と直交する直交方向に延び、直交方向における一端が接触面と接触する第1壁と、直交方向に延び、直交方向における一端が接触面と接触する第2壁であって、第1壁と軸方向および直交方向に直交する方向に間隔をあけて配置された第2壁と、を有してもよい。
【0018】
また、ステイは、第1壁の直交方向における他端と、第2壁の直交方向における他端を連結する第3壁と、を有してもよい。そして、ステイは、軸方向から見て、U字形状を有してもよい。
【0019】
また、ステイは、ホルダと接触するホルダ支持面を有し、ホルダ支持面は、軸方向における中央部が、軸方向における両端部よりも突出する形状を有してもよい。
【0020】
ステイのホルダ支持面が、軸方向における中央部がホルダに向けて突出する形状を有することで、軸方向の中央のニップ圧が両端のニップ圧に比べて小さくなることを抑制できる。この結果、加圧ローラが逆クラウン形状を有していても、軸方向における両端部のニップ幅が大きくなることを抑制できる。
【0021】
また、ホルダがステイおよびヒータと組み立てられる前の状態において、ヒータ支持面は、軸方向における中央部が、軸方向における両端部よりも突出した形状を有してもよい。
【0022】
ホルダのヒータ支持面の軸方向における中央部が、軸方向における両端部よりも突出していることで、軸方向の中央のニップ圧が両端のニップ圧に比べて小さくなることを抑制できる。この結果、加圧ローラが逆クラウン形状を有していても、軸方向におけるニップ幅が大きくなることを抑制できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、定着装置において、加圧ローラの軸方向における端部のニップ幅が中央部のニップ幅よりも大きくなることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施形態に係る定着装置を示す断面図(a)と、ヒータ周りを拡大して示す断面図(b)である。
【
図2】ニップしていない状態の加熱ユニットと、加圧ローラを示す断面図である。
【
図3】加熱ユニットの分解斜視図と、加圧ローラの斜視図である。
【
図4】ホルダの一部を拡大した斜視図(a)と、両端に位置する突起の斜視図(b)と、中央に位置する突起の斜視図(c)である。
【
図5】ステイ、ホルダ、ヒータおよび加圧ローラを側面から見た断面図である。
【
図6】他の形態におけるステイの断面図(a),(b)である。
【
図7】他の形態におけるホルダの断面図(a),(b)である。
【
図8】他の形態における加圧ローラの側面図(a),(b)である。
【
図9】実施例1、実施例2および比較例における軸方向における各地点のニップ幅測定結果の表(a)と、測定結果のグラフ(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1(a)に示すように、定着装置1は、シートSにトナー像を定着させる装置である。定着装置1は、プリンタなどの画像形成装置の装置本体に取り付けられる。定着装置1は、加熱ユニット2と、加圧ローラ3と、を備える。
【0026】
以下の説明では、シートSの搬送方向を「搬送方向」という。また、加圧ローラ3の軸方向を「軸方向」という。軸方向は、シートSの幅方向であり、搬送方向と直交している。また、搬送方向および軸方向に直交する方向を「直交方向」という。
【0027】
加熱ユニット2は、ヒータ10と、ホルダ20と、ステイ40と、ベルト50とを有する。ヒータ10は、一部がベルト50の内側に配置されている。ヒータ10は、ベルト50を介してシートSを加熱する。
【0028】
図1(b)に示すように、ヒータ10は、基板11と、抵抗発熱体12と、カバー13とを有する。基板11は、酸化アルミニウムを材料とするセラミックの細長い長方形の板からなる。ヒータ10は、いわゆるセラミックヒータである。抵抗発熱体12は、基板11に配置されている。抵抗発熱体12は、基板11の一方の面に、印刷により形成されている。カバー13は、抵抗発熱体12を覆っている。カバー13は、例えば、ガラスからなる。
【0029】
図1(a)に示すように、ホルダ20は、ヒータ10を支持するとともに、ベルト50を案内する。ホルダ20は、例えば、樹脂からなる。
図2に示すように、ホルダ20は、ベース部21と、凹部22と、ベルトガイド23と、複数の突起24と、を有する。
【0030】
図3に示すように、ベース部21は、軸方向に長い長方形の板形状を有し、搬送方向および軸方向に延びている。
【0031】
図2に示すように、凹部22は、ヒータ10が入り込む、ベース部21の一方側の面に形成された凹みである。凹部22は、ヒータ支持面22Aを有する。ヒータ支持面22Aは、凹部22の底面である。ヒータ支持面22Aは、ヒータ10を支持する面である。
【0032】
ベルトガイド23は、ベース部21からベルト50の内周面に沿って搬送方向の上流側と下流側にそれぞれ延びている。
図3に示すように、ベルトガイド23は、軸方向に並んだ複数のリブからなる。ベルト50は、ベルトガイド23の複数のリブに沿って案内される。
【0033】
図4に示すように、複数の突起24は、ベース部21からヒータ支持面22Aとは反対側に突出している。複数の突起24は、軸方向に並んでいる。複数の突起24は、搬送方向に2個ずつ配置され、軸方向に複数並んでいる。本実施形態では、複数の突起24は、軸方向において、等間隔に20個以上並んでいる。複数の突起24は、軸方向において、両端に位置する突起24Bよりも軸方向の中央Cの近くに位置する突起24Aの方がベース部21からの突出量が大きい。複数の突起24は、軸方向の中央Cに近づくにつれて、突出量が大きくなっている。すなわち、軸方向の中央Cに一番近い突起24Aの突出量T1は、軸方向の中央Cから一番遠い突起24Bの突出量T2より大きい(T2<T1)。
【0034】
複数の突起24は、それぞれ、矩形の先端面24Mを有する。各先端面24Mは、ヒータ支持面22Aとは反対側を向いている。この複数の先端面24Mは、それぞれ、ステイ40と接触する接触面である。すなわち、複数の先端面24Mは、接触面の一例である。別の言い方をすると、ホルダ20は、ステイ40と接触する接触面の一例としての、複数の先端面24Mを有する。
【0035】
図5に示すように、複数の先端面24Mは、軸方向における中央部が軸方向における両端部よりもヒータ支持面22Aを通る軸方向に平行な一の直線L1から突出する形状を有する。別の言い方をすると、ホルダ20がステイ40およびヒータ10と組み立てられる前の状態において、複数の先端面24Mは、軸方向においてホルダ20の両端から中央Cに向うにつれて、ヒータ支持面22Aを通る軸方向に平行な一の直線L1からの距離が大きい。すなわち、軸方向の中央Cに一番近い突起24Aにおける、ヒータ支持面22Aを通る軸方向に平行な一の直線L1から接触面である先端面24Mまでの距離D1は、軸方向の中央Cから一番遠い突起24Bにおける一の直線L1から先端面24Mまでの距離D2より大きい(D2<D1)。距離D2と距離D1との差は、一例として、25μm以上、且つ、700μm以下である。望ましくは、距離D2と距離D1との差は、100μm以上、且つ、450μm以下である。さらに望ましくは、距離D2と距離D1との差は、150μm以上、且つ、350μm以下である。
なお、距離D2と距離D1との差の適正値は、ステイ40の形状、加圧ローラ3の形状により変わるので、適宜テストを行うことにより決定される。
【0036】
図2に示すように、熱伝導部材30は、ヒータ10の長手方向に熱を伝導して、ヒータ10の温度を均一化するための部材である。熱伝導部材30は、板形状を有する。熱伝導部材30は、ヒータ10とホルダ20との間に位置する。熱伝導部材30は、例えばアルミニウムからなる。
【0037】
ステイ40は、ホルダ20を支持する。ステイ40は、例えば金属からなる。ステイ40は、軸方向から見て、U字形状を有する。具体的に、ステイ40は、第1壁41と、第2壁42と、第3壁43と、ホルダ支持面40Aと、を有する。
【0038】
第1壁41は、直交方向に延びている。第1壁41は、直交方向における一端が先端面24Mと接触する。
【0039】
第2壁42は、第1壁41と搬送方向に間隔をあけて配置されている。第2壁42は、直交方向に延びている。第2壁42は、直交方向における一端が先端面24Mと接触する。
【0040】
第3壁43は、搬送方向に延びている。第3壁43は、第1壁41の直交方向における他端と、第2壁42の直交方向における他端を連結する。
【0041】
ホルダ支持面40Aは、第1壁41および第2壁42の端面である。ホルダ支持面40Aは、ホルダ20と接触する面である。ホルダ支持面40Aは、軸方向と平行である。
【0042】
ベルト50は、無端状である。ベルト50は、ホルダ20に案内されながら、ヒータ10の周りを回転する。ベルト50は、外周面と内周面を有する。外周面は、加圧ローラ3または加熱対象となるシートSと接触する。内周面は、ヒータ10と接触する。ベルト50は、回転することで加圧ローラ3と共にシートSを搬送する。
【0043】
加圧ローラ3は、軸方向に延びる回転軸X3を中心に回転する。加圧ローラ3は、ヒータ10との間でベルト50を挟む。加圧ローラ3は、ベルト50との間でシートSを挟持する。加圧ローラ3は、回転することでベルト50と共にシートSを搬送する。加圧ローラ3は、シャフト3Aと、弾性層3Bとを有する。シャフト3Aは、円柱形状を有し、例えば金属からなる。弾性層3Bは、円筒形状を有し、例えばシリコンゴムからなる。弾性層3Bは、シャフト3Aの外周面を覆う。
【0044】
図1(b)に示すように、加圧ローラ3は、加熱ユニット2のベルト50との間でニップ部NPを形成する。以下の説明では、搬送方向におけるニップ部NPの長さを「ニップ幅」という。
【0045】
図5に示すように、加圧ローラ3は、軸方向において、両端から中央に向うにつれて直径が小さくなる形状、いわゆる逆クラウン形状を有する。具体的には、軸方向の中央Cにおける加圧ローラ3の直径A1は、軸方向の両端における加圧ローラ3の直径A2より小さい(A1<A2)。軸方向の両端における加圧ローラ3の直径A2と、軸方向の中央における加圧ローラ3の直径A1との差は、0.1mm以上、且つ、1mm以下である。
【0046】
また、シャフト3Aは、軸方向の両端から中央に向かうにつれて直径が大きくなる形状を有している。軸方向の中央Cにおけるシャフト3Aの直径B1は、軸方向の両端におけるシャフト3Aの直径B2より大きい(B2<B1)。具体的には、軸方向の中央におけるシャフト3Aの直径B1と、軸方向の両端におけるシャフト3Aの直径B2と、の寸法差は、0.1mm以上、且つ、9mm以下である。
【0047】
また、弾性層3Bは、軸方向の両端から中央Cに向かうにつれて厚さが小さくなる形状を有する。軸方向の中央Cにおける弾性層3Bの厚さC1は、軸方向の両端における弾性層3Bの厚さC2より小さい(C1<C2)。具体的には、軸方向の中央における弾性層3Bの厚さC1と、軸方向の両端における弾性層3Bの厚さC2と、の差は、0.1mm以上、且つ、1mm以下である。
【0048】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
本実施形態における定着装置1は、加圧ローラ3が軸方向の両端から中央Cに向かうにつれて直径が小さくなる、いわゆる逆クラウン形状を有するため、シートSが中央Cから両端に向けて引き延ばしながら搬送できる。このため、シートSに発生するシワを抑制できる。
ここで、定着装置においては、逆クラウン形状を有する加圧ローラを採用した場合、加圧ローラの軸方向において端部のニップ幅が大きくなりやすいという問題点があった。
しかし、本実施形態における定着装置1は、ホルダ20の先端面24Mが軸方向における両端から中央に向かうにつれてヒータ支持面22Aを通る軸方向に平行な一の直線L1からの距離が大きい。このため、軸方向の中央のニップ圧が両端のニップ圧に比べて小さくなることを抑制できる。この結果、加圧ローラ3が逆クラウン形状を有していても、軸方向における端部のニップ幅が大きくなることを抑制できる。このように、定着装置1では、軸方向における端部のニップ幅が大きくなることを抑制できるため、ニップ幅が軸方向における位置によらず均一になる。
【0049】
また、加圧ローラ3のシャフト3Aが軸方向の両端から中央Cに向かうにつれて直径が大きくなる形状を有することで、加圧ローラ3の弾性層3Bが熱膨張した場合に、軸方向の中央Cより両端部が大きく膨張する。このため、熱膨張した場合であっても、搬送されるシートSが軸方向の中央Cから両端に向けて伸ばされて、シワの発生を抑制できる。
【0050】
また、加圧ローラ3の弾性層3Bが軸方向の両端から中央Cに向かうにつれて厚さが小さくなる形状を有することで、弾性層3Bが熱膨張した場合に、軸方向の中央Cより両端部が大きく膨張する。このため、熱膨張した場合であっても、搬送されるシートSが軸方向の中央から両端に向けて伸ばされて、シワの発生を抑制できる。
【0051】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
【0052】
上述した実施形態では、ステイ40がホルダ20と接触するホルダ支持面40Aが、軸方向と平行であったが、この形態に限定されない。
【0053】
例えば、
図6(a)に示すステイ140は、ホルダ20と接触するホルダ支持面140Aを有する。ホルダ支持面142Aは、軸方向における中央部が、軸方向における両端部よりも突出する形状を有している。ホルダ支持面140Aは、ステイ140の第2壁142から直交方向に突出する複数の突起である。複数の突起は、軸方向の中央に近づくにつれて、突出量が大きくなっている。
【0054】
この
図6(a)に示すステイ140が軸方向における中央部が、軸方向における両端部よりも突出する形状を有していることで、加圧ローラ3が逆クラウン形状を有していても、軸方向における両端部のニップ幅が大きくなることを抑制できる。
【0055】
例えば、
図6(b)に示すステイ240は、ホルダ20と接触するホルダ支持面240Aを有する。ホルダ支持面240Aは、軸方向における中央部が、軸方向における両端部よりも突出する形状を有している。ホルダ支持面240Aは、ステイ240の第2壁242の端面である。ホルダ支持面240Aは、軸方向の一端から他端まで連続しており、軸方向の中央に近づくにつれて、突出量が大きくなっている。
【0056】
この
図6(b)に示すステイ240が軸方向における中央部が、軸方向における両端部よりも突出する形状を有していることで、加圧ローラ3が逆クラウン形状を有していても、軸方向における両端部のニップ幅が大きくなることを抑制できる。
【0057】
上述した実施形態では、ホルダ20のヒータ支持面22Aが、軸方向と平行であったが、この形態に限定されない。
【0058】
例えば、
図7(a)に示すホルダ120は、ホルダ120がステイ40およびヒータ10と組み立てられる前の状態において、ヒータ支持面122Mは、軸方向における中央部が、軸方向における両端部よりも突出した形状を有している。ヒータ支持面122Mは、直交方向に突出する複数の突起である。複数の突起は、軸方向の中央に近づくにつれて、突出量が大きくなっている。
【0059】
この
図7(a)に示すヒータ支持面122Mの軸方向における中央部が、軸方向における両端部よりも突出していることで、加圧ローラ3が逆クラウン形状を有していても、軸方向における両端部のニップ幅が大きくなることを抑制できる。
【0060】
例えば、
図7(b)に示すホルダ220は、ホルダ220がステイ40およびヒータ10と組み立てられる前の状態において、ヒータ支持面222Mは、軸方向における中央部が、軸方向における両端部よりも突出した形状を有している。ヒータ支持面222Mは、軸方向の一端から他端まで連続しており、軸方向の中央に近づくにつれて、突出量が大きくなっている。
【0061】
この
図7(b)に示すヒータ支持面222Mの軸方向における中央部が、軸方向における両端部よりも突出していることで、軸方向の中央のニップ圧が両端のニップ圧に比べて小さくなることを抑制できる。この結果、加圧ローラ3が逆クラウン形状を有していても、軸方向における両端部のニップ幅が大きくなることを抑制できる。
【0062】
上述した実施形態では、加圧ローラ3のシャフト3Aが軸方向の両端から中央に向かうにつれて直径が大きくなる形状を有していたが、この形態に限定されない。
【0063】
例えば、
図8(a)に示す加圧ローラ103のシャフト103Aは、軸方向の両端から中央まで同じ直径B1である。弾性層103Bは、軸方向の両端から中央に向かうにつれて厚さが小さくなる形状を有する。軸方向の中央Cにおける弾性層103Bの厚さC3は、軸方向の両端における弾性層103Bの厚さC4より小さい(C3<C4)。この加圧ローラ103においても、前記各実施形態と同様に、加圧ローラ103の軸方向における両端部のニップ幅が大きくなることを抑制できる。
【0064】
例えば、
図8(b)に示す加圧ローラ203のシャフト203Aは、軸方向の両端から中央に向かうにつれて直径が小さくなる形状を有している。軸方向の中央におけるシャフト203Aの直径B5は、軸方向の両端におけるシャフト203Aの直径B6より小さい(B5<B6)。そして、軸方向の中央における弾性層203Bの厚さC5は、軸方向の両端における弾性層203Bの厚さC6と略同じである(C5=C6)。この加圧ローラ203においても、前記各実施形態と同様に、加圧ローラ203の軸方向における端部のニップ幅が中央部のニップ幅よりも大きくなることを抑制できる。
【0065】
上述した実施形態では、複数の突起24は、軸方向に等間隔に20個以上並んでいたが、20個より少なくてもよい。
【0066】
上述した実施形態では、ステイ40と接触する接触面が複数の突起24の先端面24Mであったが、この構成に限らない。例えば、ホルダ20が複数の突起24を形成しておらず、ベース部21の他方側の面がステイ40と接触する接触面であってもよい。
【0067】
加圧ローラ3の弾性層3Bは、シリコンゴムに限らず、他の材料であってもよい。また、ホルダは、樹脂に限らず、他の材料であってもよい。また、ステイは、金属に限らず、他の材料であってもよい。
【0068】
上述した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【実施例0069】
以下、本発明の実施例について説明する。
[評価方法]
実施例1、実施例2、比較例の3つの定着装置について、加圧ローラ3および加熱ユニット2で形成されたニップ部NPにおける搬送方向の長さであるニップ幅を測定した。
図5に示すように、ニップ幅の測定箇所は、軸方向の端部1、端部2、中央、端部3、端部4の5つの位置である。端部2は、端部1と中央の間である。端部3は、中央と端部4の間である。
実施例1は、ホルダ20のヒータ支持面22Aの軸方向における中央と両端部の突出量の差ΔTが150μmの場合である。
実施例2は、ホルダ20のヒータ支持面22Aの軸方向における中央と両端部の突出量の差ΔTが350μmの場合である。
実施例2は、ホルダ20のヒータ支持面22Aの軸方向における中央と両端部の突出量の差ΔTが0(ゼロ)μmの場合である。
なお、突出量の差ΔTは、軸方向の中央Cにおける、ヒータ支持面22Aを通る軸方向に平行な一の直線L1から接触面である先端面24Mまでの距離D1と、軸方向の両端における一の直線から接触面までの距離と、の差(ΔT=D1-D2)である。
【0070】
[測定結果]
実施例1、実施例2、比較例の3つの定着装置について、ニップ幅の測定結果を
図9(a)の表と、
図9(b)のグラフに示した。
なお、ヒータ10の基板11の短手方向の長さは、7±0.2mmであった。
ヒータ10のカバー13の短手方向の長さは、6.4mmであった。
比較例では、中央のニップ幅が小さく、両端に向かうにつれてのニップ幅が大きかった。すなわち、比較例では、両端のニップ幅が中央のニップ幅に比べてかなり大きいため、シートSの幅方向において均一な定着性能が期待できない。
実施例1では、両端のニップ幅が中央のニップ幅より大きいが、両端ニップ幅と中央のニップ幅の差が比較例と比べて小さかった。すなわち、実施例1では、シートSの全体に渡って比較的均一な定着性能を期待できる。
実施例2では、中央のニップ幅が両端(端部1、端部4)のニップ幅と略同じ大きさであった。また、端部2および端部3のニップ幅が両端(端部1、端部4)のニップ幅より小さかったがニップ幅の差が比較例と比べて小さかった。すなわち、実施例2では、シートSの全体に渡って比較的均一な定着性能を期待できる。
以上の結果からΔTは、150~350μmであることが望ましいことがわかる。