(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122789
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】制御装置、インデフレーションシステム、及びインデフレーション方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/329 20210101AFI20240902BHJP
A61M 25/10 20130101ALI20240902BHJP
A61B 5/022 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
A61B5/329
A61M25/10 540
A61B5/022 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030535
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100176728
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 太輝人
(72)【発明者】
【氏名】桑野 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】金谷 康平
【テーマコード(参考)】
4C017
4C127
4C267
【Fターム(参考)】
4C017AA08
4C017AA19
4C017AC16
4C017BC26
4C017DD11
4C017DD14
4C017FF30
4C127AA02
4C127CC04
4C127GG09
4C127GG16
4C267AA07
4C267BB27
4C267BB62
4C267CC08
4C267EE03
4C267EE11
4C267HH08
4C267HH11
4C267HH22
(57)【要約】
【課題】バルーンの拡張に起因する合併症、又は血流不足による心筋細胞壊死などの不可逆的な損傷による機能低下を防止若しくは軽減しやすくする。
【解決手段】患者の管腔器官に挿入されたカテーテルを通じて当該カテーテルの遠位部に取り付けられたバルーンを加減圧することで前記バルーンを拡張及び収縮させるポンプの加減圧動作を制御する制御装置が、前記ポンプに加圧動作を行わせる前に、前記患者のバイタルを測定して得られた第1バイタルデータを取得し、少なくとも前記ポンプに前記加圧動作を行わせている間に、前記患者のバイタルを測定して得られた第2バイタルデータを取得し、取得した第2バイタルデータを前記第1バイタルデータと比較することで前記患者のバイタルに異常が生じたかどうかを判定し、異常が生じたと判定すると、予め設定された減圧タイミングよりも前に前記ポンプに減圧動作を行わせる制御部を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の管腔器官に挿入されたカテーテルを通じて当該カテーテルの遠位部に取り付けられたバルーンを加減圧することで前記バルーンを拡張及び収縮させるポンプの加減圧動作を制御する制御装置であって、
前記ポンプに加圧動作を行わせる前に、前記患者のバイタルを測定して得られた第1バイタルデータを取得し、少なくとも前記ポンプに前記加圧動作を行わせている間に、前記患者のバイタルを測定して得られた第2バイタルデータを取得し、取得した第2バイタルデータを前記第1バイタルデータと比較することで前記患者のバイタルに異常が生じたかどうかを判定し、異常が生じたと判定すると、予め設定された減圧タイミングよりも前に前記ポンプに減圧動作を行わせる制御部を備える制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記ポンプに前記加圧動作を行わせて前記バルーンの圧力を目標圧力に到達させた後も、前記減圧タイミングまで前記第2バイタルデータを取得し続け、前記患者のバイタルに異常が生じたと判定すると、前記減圧タイミングよりも前に前記ポンプに前記減圧動作を行わせる請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記第1バイタルデータは、前記加圧動作が行われる前の前記患者の心電波形を示すデータを含み、
前記第2バイタルデータは、前記加圧動作が行われた後の前記患者の心電波形を示すデータを含む請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記第1バイタルデータは、前記加圧動作が行われる前の前記患者の血圧を示すデータを含み、
前記第2バイタルデータは、前記加圧動作が行われた後の前記患者の血圧を示すデータを含む請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記第1バイタルデータは、前記加圧動作が行われる前のアンギオグラフィで得られた画像データを含み、
前記第2バイタルデータは、前記加圧動作が行われた後のアンギオグラフィで得られた画像データを含む請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、少なくとも前記ポンプに前記加圧動作を行わせている間に、前記患者の表情の変化を観察して前記患者の苦痛レベルを判定し、判定した苦痛レベルが基準を超えた場合は、前記患者のバイタルに異常が生じたと判定しなくても、前記減圧タイミングよりも前に前記ポンプに前記減圧動作を行わせる請求項1に記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第2バイタルデータを前記第1バイタルデータと比較する際に、前記管腔器官の内部で前記バルーンが配置された位置、又は当該位置に存在する病変に応じて、前記第1バイタルデータと前記第2バイタルデータとの差分に重み付けを行う請求項1に記載の制御装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の制御装置と、
前記ポンプと
を備えるインデフレーションシステム。
【請求項9】
ポンプにより、患者の管腔器官に挿入されたカテーテルを通じて当該カテーテルの遠位部に取り付けられたバルーンを加減圧することで前記バルーンを拡張及び収縮させることと、
制御装置により、前記ポンプに加圧動作を行わせる前に、前記患者のバイタルを測定して得られた第1バイタルデータを取得することと、
前記制御装置により、少なくとも前記ポンプに前記加圧動作を行わせている間に、前記患者のバイタルを測定して得られた第2バイタルデータを取得し、取得した第2バイタルデータを前記第1バイタルデータと比較することで前記患者のバイタルに異常が生じたかどうかを判定することと、
前記制御装置により、前記患者のバイタルに異常が生じたと判定すると、予め設定された減圧タイミングよりも前に前記ポンプに減圧動作を行わせることと
を含むインデフレーション方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置、インデフレーションシステム、及びインデフレーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
体内に挿入されるバルーンカテーテルは、拡張媒体の注入量に応じて拡張及び収縮するバルーンを有する。特許文献1には、バルーンを自動で拡張及び収縮させる自動インデフレーションデバイスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バルーンで病変部が拡張されている間は拡張部分の末梢への血流がなくなるため、心虚血によりショック状態又はVFなどの術中合併症が起こり得る。「VF」は、ventricular fibrillation(心室細動)の略語である。バルーンが手動で拡張される場合、術者が血圧低下、心拍数低下、又は心電図異常などのバイタル変化を見て合併症の予兆をつかみ、早期にバルーンを収縮して血流を再開させることで合併症を防ぎ得る。血流不足による心筋細胞壊死などの不可逆的な損傷による機能低下も軽減し得る。しかし、術者が熟達していない場合、又はバルーンが自動で拡張される場合は、合併症の予兆が見落とされるおそれがある。特許文献1には、血流に異常が確認されたときにバルーンを収縮させることが記載されているが、バイタル変化を見て合併症の予兆をつかむことができるわけではない。
【0005】
本開示の目的は、バルーンの拡張に起因する合併症、又は血流不足による心筋細胞壊死などの不可逆的な損傷による機能低下を防止若しくは軽減しやすくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の幾つかの態様を以下に示す。
【0007】
[1]
患者の管腔器官に挿入されたカテーテルを通じて当該カテーテルの遠位部に取り付けられたバルーンを加減圧することで前記バルーンを拡張及び収縮させるポンプの加減圧動作を制御する制御装置であって、
前記ポンプに加圧動作を行わせる前に、前記患者のバイタルを測定して得られた第1バイタルデータを取得し、少なくとも前記ポンプに前記加圧動作を行わせている間に、前記患者のバイタルを測定して得られた第2バイタルデータを取得し、取得した第2バイタルデータを前記第1バイタルデータと比較することで前記患者のバイタルに異常が生じたかどうかを判定し、異常が生じたと判定すると、予め設定された減圧タイミングよりも前に前記ポンプに減圧動作を行わせる制御部を備える制御装置。
【0008】
[2]
前記制御部は、前記ポンプに前記加圧動作を行わせて前記バルーンの圧力を目標圧力に到達させた後も、前記減圧タイミングまで前記第2バイタルデータを取得し続け、前記患者のバイタルに異常が生じたと判定すると、前記減圧タイミングよりも前に前記ポンプに前記減圧動作を行わせる[1]に記載の制御装置。
【0009】
[3]
前記第1バイタルデータは、前記加圧動作が行われる前の前記患者の心電波形を示すデータを含み、
前記第2バイタルデータは、前記加圧動作が行われた後の前記患者の心電波形を示すデータを含む[1]又は[2]に記載の制御装置。
【0010】
[4]
前記第1バイタルデータは、前記加圧動作が行われる前の前記患者の血圧を示すデータを含み、
前記第2バイタルデータは、前記加圧動作が行われた後の前記患者の血圧を示すデータを含む[1]から[3]のいずれか1項に記載の制御装置。
【0011】
[5]
前記第1バイタルデータは、前記加圧動作が行われる前のアンギオグラフィで得られた画像データを含み、
前記第2バイタルデータは、前記加圧動作が行われた後のアンギオグラフィで得られた画像データを含む[1]から[4]のいずれか1項に記載の制御装置。
【0012】
[6]
前記制御部は、少なくとも前記ポンプに前記加圧動作を行わせている間に、前記患者の表情の変化を観察して前記患者の苦痛レベルを判定し、判定した苦痛レベルが基準を超えた場合は、前記患者のバイタルに異常が生じたと判定しなくても、前記減圧タイミングよりも前に前記ポンプに前記減圧動作を行わせる[1]から[5]のいずれか1項に記載の制御装置。
【0013】
[7]
前記制御部は、前記第2バイタルデータを前記第1バイタルデータと比較する際に、前記管腔器官の内部で前記バルーンが配置された位置、又は当該位置に存在する病変に応じて、前記第1バイタルデータと前記第2バイタルデータとの差分に重み付けを行う[1]から[6]のいずれか1項に記載の制御装置。
【0014】
[8]
[1]から[7]のいずれか1項に記載の制御装置と、
前記ポンプと
を備えるインデフレーションシステム。
【0015】
[9]
ポンプにより、患者の管腔器官に挿入されたカテーテルを通じて当該カテーテルの遠位部に取り付けられたバルーンを加減圧することで前記バルーンを拡張及び収縮させることと、
制御装置により、前記ポンプに加圧動作を行わせる前に、前記患者のバイタルを測定して得られた第1バイタルデータを取得することと、
前記制御装置により、少なくとも前記ポンプに前記加圧動作を行わせている間に、前記患者のバイタルを測定して得られた第2バイタルデータを取得し、取得した第2バイタルデータを前記第1バイタルデータと比較することで前記患者のバイタルに異常が生じたかどうかを判定することと、
前記制御装置により、前記患者のバイタルに異常が生じたと判定すると、予め設定された減圧タイミングよりも前に前記ポンプに減圧動作を行わせることと
を含むインデフレーション方法。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、バルーンの拡張に起因する合併症、又は血流不足による心筋細胞壊死などの不可逆的な損傷による機能低下を防止若しくは軽減しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本開示の実施形態に係るインデフレーションシステムの構成を示す図である。
【
図2】本開示の実施形態に係るポンプ及びインデフレータの斜視図である。
【
図3】本開示の実施形態に係るバルーンカテーテルの概略図である。
【
図4】本開示の実施形態に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図5】本開示の実施形態に係る制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図6】本開示の実施形態に係る制御装置の動作の変形例を示すフローチャートである。
【
図7】本開示の実施形態に係るインデフレーションシステムの構成の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の一実施形態について、図を参照して説明する。
【0019】
各図中、同一又は相当する部分には、同一符号を付している。本実施形態の説明において、同一又は相当する部分については、説明を適宜省略又は簡略化する。
【0020】
【0021】
ポンプ30は、患者の管腔器官に挿入されたカテーテルを通じて当該カテーテルの先端などの遠位部に取り付けられたバルーン60を加減圧することでバルーン60を拡張及び収縮させる。バルーン60は、本実施形態では血管拡張用のバルーンであるが、血管内留置用ステントのデリバリーシステムのバルーンなど、他の種類のバルーンでもよい。制御装置20は、ポンプ30の加減圧動作を制御する。具体的には、制御装置20は、ポンプ30に加圧動作を行わせる前に、患者のバイタルを測定して得られた第1バイタルデータ11を取得する。制御装置20は、少なくともポンプ30に加圧動作を行わせている間に、患者のバイタルを測定して得られた第2バイタルデータ12を取得し、取得した第2バイタルデータ12を第1バイタルデータ11と比較することで患者のバイタルに異常が生じたかどうかを判定する。制御装置20は、異常が生じたと判定すると、予め設定された減圧タイミングよりも前にポンプ30に減圧動作を行わせる。したがって、本実施形態によれば、バルーン60が自動で拡張されている間に、バイタル変化を見て合併症の予兆をつかみ、早期にバルーン60を収縮して血流を再開させることで合併症を防ぐことができる。すなわち、バルーン60の拡張に起因する合併症を防止しやすくなる。血流不足による心筋細胞壊死などの不可逆的な損傷による機能低下も軽減しやすくなる。
【0022】
本実施形態では、制御装置20は、ポンプ30に加圧動作を行わせてバルーン60の圧力を目標圧力に到達させた後も、予め設定された減圧タイミングまで第2バイタルデータ12を取得し続け、取得した第2バイタルデータ12を第1バイタルデータ11と比較することで患者のバイタルに異常が生じたかどうかを判定する。制御装置20は、異常が生じたと判定すると、減圧タイミングよりも前にポンプ30に減圧動作を行わせる。したがって、本実施形態によれば、バルーン60が自動で拡張された後も、バイタル変化を見て合併症の予兆をつかみ、早期にバルーン60を収縮して血流を再開させることで合併症を防ぐことができる。血流不足による心筋細胞壊死などの不可逆的な損傷による機能低下も軽減することができる。
【0023】
図1を参照して、本実施形態に係るインデフレーションシステム10の構成を説明する。
【0024】
インデフレーションシステム10は、制御装置20と、ポンプ30とを備えるとともに、インデフレータ40と、圧力センサ50とを備えている。
【0025】
制御装置20は、ポンプ30を制御するコンピュータである。ポンプ30は、ドライバ31と、アクチュエータ32とを備えている。ドライバ31は、電源90から給電されてアクチュエータ32を駆動する。電源90は、本実施形態では商用電源などの外部電源であるが、バッテリなどの内部電源でもよく、インデフレーションシステム10に備えられていてもよい。アクチュエータ32は、ドライバ31により駆動されて動力を発生させる。アクチュエータ32は、例えば、モータである。インデフレータ40は、造影剤又は生理食塩水などの拡張媒体をバルーン60に注入するための器具である。拡張媒体は、アクチュエータ32から発生した動力によってインデフレータ40からバルーン60へ自動的に注入又は排出される。制御装置20は、ドライバ31を制御してアクチュエータ32から発生する動力を調整することで、拡張媒体の注入量を調整することができる。圧力センサ50は、バルーン60の内部の圧力を測定するセンサである。制御装置20は、圧力センサ50から得られる測定値を参照して拡張媒体の注入量を調整することで、バルーン60の内部の圧力を所望の圧力に調整することができる。
【0026】
制御装置20は、ケーブルで、若しくは無線で、又はLANなどのネットワークを介して、バイタル測定機器70と接続されている。「LAN」は、local area networkの略語である。制御装置20は、本実施形態では、ネットワークを介して、バイタル測定機器70と双方向通信を行うが、バイタル測定機器70からHDMI(登録商標)などの入出力端子を介して一方向でデータを入力されてもよい。「HDMI(登録商標)」は、High-Definition Multimedia Interfaceの略語である。バイタル測定機器70は、例えば、心電計、血圧計、X線撮像装置、又はこれらの任意の組合せを含む。バイタル測定機器70が心電計を含む場合、第1バイタルデータ11は、加圧動作が行われる前の患者の心電波形を示すデータを含む。第2バイタルデータ12は、加圧動作が行われた後の患者の心電波形を示すデータを含む。バイタル測定機器70が血圧計を含む場合、第1バイタルデータ11は、加圧動作が行われる前の患者の血圧を示すデータを含む。第2バイタルデータ12は、加圧動作が行われた後の患者の血圧を示すデータを含む。バイタル測定機器70がX線撮像装置を含む場合、第1バイタルデータ11は、加圧動作が行われる前のアンギオグラフィで得られた画像データを含む。第2バイタルデータ12は、加圧動作が行われた後のアンギオグラフィで得られた画像データを含む。
【0027】
図2を参照して、本実施形態に係るポンプ30及びインデフレータ40の具体的な構成を説明する。
【0028】
ポンプ30は、筐体33を有している。筐体33には、インデフレータ40を着脱自在に収容するための凹部34が形成されている。凹部34には、アクチュエータ32の回転運動を直線運動に変換する軸35と、軸35により往復移動自在に支持されたスライダ36と、軸35の一端側に固定された1対の板39とが取り付けられている。インデフレータ40は、シリンジ41と、プランジャ42とを備えている。シリンジ41は、羽根44を有している。インデフレータ40が、シリンジ41の羽根44を1対の板39の間に嵌め込み、かつプランジャ42をスライダ36に密着及び固定させるように凹部34に嵌め込まれた後、ドライバ31が制御装置20により制御されてアクチュエータ32を回転駆動することでスライダ36が移動すると、プランジャ42がシリンジ41の内側に押し込まれ、シリンジ41内の拡張媒体がチューブ43を介してバルーン60に注入される。その結果、バルーン60の圧力が増加してバルーン60が拡張する。一方、ドライバ31が制御装置20により制御されてアクチュエータ32を逆回転駆動することでスライダ36が逆方向に移動すると、プランジャ42がシリンジ41の外側に引き抜かれ、バルーン60に注入されていた拡張媒体がチューブ43を介してシリンジ41内に戻る。その結果、バルーン60の圧力が減少してバルーン60が収縮する。
【0029】
ポンプ30の筐体33には、ポンプ30の動作に関連する操作を行うためのスイッチ群37と、ポンプ30の動作に関連する情報を表示するディスプレイ38とが更に設けられている。ディスプレイ38は、例えば、LCD又は有機ELディスプレイである。「LCD」は、liquid crystal displayの略語である。「EL」は、electro luminescentの略語である。
【0030】
制御装置20は、本実施形態では、筐体33に収容されてポンプ30と一体化されているが、筐体33の外部に設置され、ケーブルで、若しくは無線で、又はLANなどのネットワークを介してポンプ30と接続されていてもよい。あるいは、制御装置20は、物理的には複数の機器として実装されていてもよい。例えば、制御装置20は、患者のバイタルに異常が生じたかどうかを判定する検知機器と、異常が生じたという判定結果をエラー信号として検知機器から受信すると、予め設定された減圧タイミングよりも前にポンプ30に減圧動作を行わせる制御機器との組合せとして実装されていてもよい。制御機器は、筐体33に収容されてポンプ30と一体化され、検知機器は、筐体33の外部に設置され、ケーブルで、若しくは無線で、又はLANなどのネットワークを介して制御機器と接続されていてもよい。圧力センサ50も、本実施形態では、ポンプ30と一体化されているが、インデフレータ40と一体化されていてもよいし、又はポンプ30及びインデフレータ40とは別個に設置されていてもよい。インデフレータ40も、ポンプ30に一体化されていてもよいが、上述したように、本実施形態ではポンプ30とは別個に提供される。そのため、インデフレータ40は、ディスポーザブルでもよい。
【0031】
インデフレーションシステム10は、バルーン60の内部の気泡を検知する気泡センサを更に備えていてもよい。気泡センサは、ポンプ30と一体化されていてもよいし、インデフレータ40と一体化されていてもよいし、又はポンプ30及びインデフレータ40とは別個に設置されていてもよい。
【0032】
図3を参照して、本実施形態に係るカテーテルであるバルーンカテーテル61の具体的な構成を説明する。
【0033】
バルーンカテーテル61は、バルーン60を備えるとともに、シャフト62と、ハブ63と、ガイドワイヤポート64とを備えている。
【0034】
シャフト62は、シャフト62の内腔がハブ63内の流路と連通した状態で、ハブ63と接続されている。シャフト62の先端などの遠位部は、バルーン60と一体的に接合している。ハブ63は、インデフレータ40と接続可能なポート65を有している。バルーン60は、ハブ63のポート65からシャフト62の内腔を通じて拡張媒体が注入されることにより、シャフト62の動径方向に拡張する。シャフト62の内腔には、ガイドワイヤ67が挿通可能なガイドワイヤルーメン66が形成されている。ガイドワイヤルーメン66の基端は、ガイドワイヤポート64と連通している。
【0035】
図4を参照して、本実施形態に係る制御装置20の構成を説明する。
【0036】
制御装置20は、制御部21と、記憶部22と、通信部23とを備える。
【0037】
制御部21は、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つのプログラマブル回路、少なくとも1つの専用回路、又はこれらの任意の組合せを含む。プロセッサは、CPU若しくはGPUなどの汎用プロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。「CPU」は、central processing unitの略語である。「GPU」は、graphics processing unitの略語である。プログラマブル回路は、例えば、FPGAである。「FPGA」は、field-programmable gate arrayの略語である。専用回路は、例えば、ASICである。「ASIC」は、application specific integrated circuitの略語である。制御部21は、制御装置20の各部を制御しながら、制御装置20の動作に関わる処理を実行する。
【0038】
記憶部22は、少なくとも1つの半導体メモリ、少なくとも1つの磁気メモリ、少なくとも1つの光メモリ、又はこれらの任意の組合せを含む。半導体メモリは、例えば、RAM、ROM、又はフラッシュメモリである。「RAM」は、random access memoryの略語である。「ROM」は、read only memoryの略語である。RAMは、例えば、SRAM又はDRAMである。「SRAM」は、static random access memoryの略語である。「DRAM」は、dynamic random access memoryの略語である。ROMは、例えば、EEPROMである。「EEPROM」は、electrically erasable programmable read only memoryの略語である。フラッシュメモリは、例えば、SSDである。「SSD」は、solid-state driveの略語である。磁気メモリは、例えば、HDDである。「HDD」は、hard disk driveの略語である。記憶部22は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能する。記憶部22には、制御装置20の動作に用いられるデータと、制御装置20の動作によって得られたデータとが記憶される。
【0039】
通信部23は、少なくとも1つの通信モジュールを含む。通信モジュールは、例えば、Ethernet(登録商標)などの有線LAN通信規格、IEEE802.11などの無線LAN通信規格、Bluetooth(登録商標)などの近距離無線通信規格、又はLTE、4G規格、若しくは5G規格などの移動通信規格に対応したモジュールである。「IEEE」は、Institute of Electrical and Electronics Engineersの略称である。「LTE」は、Long Term Evolutionの略語である。「4G」は、4th generationの略語である。「5G」は、5th generationの略語である。通信部23は、少なくともポンプ30、圧力センサ50、及びバイタル測定機器70と通信を行う。通信部23は、制御装置20の動作に用いられるデータを受信し、また制御装置20の動作によって得られるデータを送信する。
【0040】
制御装置20の機能は、本実施形態に係るプログラムを、制御部21としてのプロセッサで実行することにより実現される。すなわち、制御装置20の機能は、ソフトウェアにより実現される。プログラムは、制御装置20の動作をコンピュータに実行させることで、コンピュータを制御装置20として機能させる。すなわち、コンピュータは、プログラムに従って制御装置20の動作を実行することにより制御装置20として機能する。
【0041】
プログラムは、非一時的なコンピュータ読取り可能な媒体に記憶しておくことができる。非一時的なコンピュータ読取り可能な媒体は、例えば、フラッシュメモリ、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、又はROMである。プログラムの流通は、例えば、プログラムを記憶したSDカード、DVD、又はCD-ROMなどの可搬型媒体を販売、譲渡、又は貸与することによって行う。「SD」は、Secure Digitalの略語である。「DVD」は、digital versatile discの略語である。「CD-ROM」は、compact disc read only memoryの略語である。プログラムをサーバのストレージに格納しておき、サーバから他のコンピュータにプログラムを転送することにより、プログラムを流通させてもよい。プログラムをプログラムプロダクトとして提供してもよい。
【0042】
コンピュータは、例えば、可搬型媒体に記憶されたプログラム又はサーバから転送されたプログラムを、一旦、主記憶装置に格納する。そして、コンピュータは、主記憶装置に格納されたプログラムをプロセッサで読み取り、読み取ったプログラムに従った処理をプロセッサで実行する。コンピュータは、可搬型媒体から直接プログラムを読み取り、プログラムに従った処理を実行してもよい。コンピュータは、コンピュータにサーバからプログラムが転送される度に、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行してもよい。サーバからコンピュータへのプログラムの転送は行わず、実行指示及び結果取得のみによって機能を実現する、いわゆるASP型のサービスによって処理を実行してもよい。「ASP」は、application service providerの略語である。プログラムには、電子計算機による処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるものが含まれる。例えば、コンピュータに対する直接の指令ではないがコンピュータの処理を規定する性質を有するデータは、「プログラムに準ずるもの」に該当する。
【0043】
制御装置20の一部又は全ての機能が、制御部21としてのプログラマブル回路又は専用回路により実現されてもよい。すなわち、制御装置20の一部又は全ての機能が、ハードウェアにより実現されてもよい。
【0044】
図5を参照して、本実施形態に係る制御装置20の動作を説明する。
図5に示した動作は、本実施形態に係る自動インデフレーション制御方法に相当する。
【0045】
ステップS101において、制御装置20の制御部21は、第1バイタルデータ11を、通信部23を介してバイタル測定機器70から取得する。制御装置20の制御部21は、取得した第1バイタルデータ11を確認することで、ポンプ30に加圧動作を行わせる前に患者のバイタルに異常が発生したかどうかを判定する。具体的には、制御装置20の制御部21は、第1バイタルデータ11で示される術前又は加圧前のバイタルが正常範囲内であるかどうかを判定する。
【0046】
例えば、制御装置20の制御部21は、術前又は加圧前に得られた心電図波形と記憶部22に予め記憶されている一般的な心電図波形又は同じ患者の正常時に得られた心電図波形との相違を画像処理で解析し、相違が許容範囲内であるかどうかを判定する。あるいは、制御装置20の制御部21は、術前又は加圧前に測定された血圧が記憶部22に予め記憶されている一般的な血圧の正常範囲内であるかどうかを判定してもよい。あるいは、制御装置20の制御部21は、術前又は加圧前に撮影されたアンギオグラフィ画像と記憶部22に予め記憶されている同じ患者の正常時に撮影されたアンギオグラフィ画像との相違を画像処理で解析し、相違が許容範囲内であるかどうかを判定してもよい。心電図波形又はアンギオグラフィ画像の画像処理には任意の手法を用いることができる。深層学習などの機械学習が用いられてもよい。
【0047】
ステップS101で患者のバイタルに異常が発生したと判定された場合は、ステップS102の処理が実行される。一方、ステップS101で患者のバイタルに異常が発生していないと判定された場合は、ステップS103の処理が実行される。
【0048】
ステップS102において、制御装置20の制御部21は、アラートを出力する。具体的には、制御装置20の制御部21は、術前又は加圧前に患者のバイタルに異常が発生したことを示すアラートメッセージをポンプ30のディスプレイ38に表示させる。アラートメッセージの表示に代えて又は加えて、アラート音の出力、アラートランプの点灯、若しくはこれらの両方が行われてもよい。
【0049】
ステップS103において、制御装置20の制御部21は、ポンプ30に加圧動作を行わせる。具体的には、制御装置20の制御部21は、インデフレータ40からバルーン60へ拡張媒体が注入されてバルーン60が加圧されるようにポンプ30を制御する。
【0050】
ステップS104において、制御装置20の制御部21は、第2バイタルデータ12を、通信部23を介してバイタル測定機器70から取得する。制御装置20の制御部21は、取得した第2バイタルデータ12をステップS101で取得した第1バイタルデータ11と比較することで、ポンプ30に加圧動作を行わせている間に患者のバイタルに異常が生じたかどうかを判定する。具体的には、制御装置20の制御部21は、第2バイタルデータ12で示される加圧中のバイタルが第1バイタルデータ11で示される術前又は加圧前のバイタルに照らして正常範囲内であるかどうかを判定する。
【0051】
例えば、制御装置20の制御部21は、加圧中に得られた心電図波形と術前又は加圧前に得られた心電図波形との相違を画像処理で解析し、相違が許容範囲内であるかどうかを判定する。あるいは、制御装置20の制御部21は、加圧中に測定された血圧と術前又は加圧前に測定された血圧との相違を算出し、相違が許容範囲内であるかどうかを判定してもよい。具体例として、制御装置20の制御部21は、収縮期血圧が術前又は加圧前より30mmHg以上低下したときに、心原性ショックが起こったと判定してもよい。あるいは、制御装置20の制御部21は、加圧中に撮影されたアンギオグラフィ画像と術前又は加圧前に撮影されたアンギオグラフィ画像との相違を画像処理で解析し、相違が許容範囲内であるかどうかを判定してもよい。
【0052】
制御装置20の制御部21は、加圧中に測定された血圧が基準範囲内であるかどうかによって、心原性ショックが起こったかどうかを更に判定してもよい。具体例として、制御装置20の制御部21は、収縮期血圧が90mmHg以下になったときに、心原性ショックが起こったと判定してもよい。制御装置20の制御部21は、血圧と、心拍数、SpO2、又は呼吸数など、他の1種類以上のバイタルとの組合せから、心原性ショックが起こったかどうかを複合的に判定してもよい。「SpO2」は、percutaneous oxygen saturationの略語である。組合せによる判定には、バイタルの種類ごとの閾値が適用されてもよいし、又はバイタルの組合せを入力情報として構築された機械学習モデルが適用されてもよい。
【0053】
制御装置20の制御部21は、第2バイタルデータ12を第1バイタルデータ11と比較する際に、患者の管腔器官の内部でバルーン60が配置された位置、又はその位置に存在する病変に応じて、第1バイタルデータ11と第2バイタルデータ12との差分に重み付けを行ってもよい。例えば、制御装置20の制御部21は、バルーン60の位置、又は標的病変の位置から合併症リスクを予測し、加圧中に得られた心電図波形と術前又は加圧前に得られた心電図波形との相違に対し、予測した合併症リスクが高いほど大きい重み付け係数を適用してもよい。例えば、右冠動脈起始部周辺でバルーン60が拡張される際は、洞結節枝が閉塞されるため、VFのリスクを高く見積もって、大きい重み付け係数を適用することが考えられる。
【0054】
ステップS104で患者のバイタルに異常が生じたと判定された場合は、ステップS111の処理が実行される。一方、ステップS104で患者のバイタルに異常が生じていないと判定された場合は、ステップS105の処理が実行される。
【0055】
ステップS105において、制御装置20の制御部21は、圧力センサ50から得られる測定値を参照して、バルーン60の圧力が予め設定された目標圧力に到達したかどうかを判定する。目標圧力は、バルーン種別ごとに設定されていてもよい。制御装置20の制御部21は、バルーン60の圧力が目標圧力に到達したと判定するまでステップS103の加圧動作を継続する。加圧動作の継続中は、ステップS104の処理も繰り返し実行される。制御装置20の制御部21は、バルーン60の圧力が目標圧力に到達したと判定すると、ステップS106でタイマーを開始する。
【0056】
ステップS107において、制御装置20の制御部21は、ステップS104と同様に、第2バイタルデータ12を、通信部23を介してバイタル測定機器70から取得する。制御装置20の制御部21は、取得した第2バイタルデータ12をステップS101で取得した第1バイタルデータ11と比較することで、ポンプ30に加圧動作を行わせてバルーン60の圧力を目標圧力に到達させた後に患者のバイタルに異常が生じたかどうかを判定する。具体的には、制御装置20の制御部21は、第2バイタルデータ12で示される加圧後のバイタルが第1バイタルデータ11で示される術前又は加圧前のバイタルに照らして正常範囲内であるかどうかを判定する。
【0057】
例えば、制御装置20の制御部21は、加圧後に得られた心電図波形と術前又は加圧前に得られた心電図波形との相違を画像処理で解析し、相違が許容範囲内であるかどうかを判定する。あるいは、制御装置20の制御部21は、加圧後に測定された血圧と術前又は加圧前に測定された血圧との相違を算出し、相違が許容範囲内であるかどうかを判定してもよい。具体例として、制御装置20の制御部21は、収縮期血圧が術前又は加圧前より30mmHg以上低下したときに、心原性ショックが起こったと判定してもよい。あるいは、制御装置20の制御部21は、加圧後に撮影されたアンギオグラフィ画像と術前又は加圧前に撮影されたアンギオグラフィ画像との相違を画像処理で解析し、相違が許容範囲内であるかどうかを判定してもよい。ステップS104と同様の他の判定が更に行われてもよい。
【0058】
ステップS107で患者のバイタルに異常が生じたと判定された場合は、ステップS111の処理が実行される。一方、ステップS107で患者のバイタルに異常が生じていないと判定された場合は、ステップS108の処理が実行される。
【0059】
ステップS108において、制御装置20の制御部21は、バルーン60の圧力を目標圧力に到達させてからポンプ30の減圧動作を開始するまでの所望の時間として予め設定された第1維持時間が経過したかどうかを判定する。第1維持時間は、望ましくは5秒以上30秒以下の範囲内であり、例えば10秒である。第1維持時間は、バルーン種別ごとに設定されていてもよい。制御装置20の制御部21は、第1維持時間が経過したと判定するまでは、後述するステップS110の減圧動作を開始せず、バルーン60の圧力を目標圧力に維持させる。減圧動作の開始前は、ステップS107の処理が繰り返し実行される。制御装置20の制御部21は、第1維持時間が経過したと判定すると、ステップS109でタイマーを停止する。
【0060】
ステップS110及びステップS111のいずれにおいても、制御装置20の制御部21は、ポンプ30に減圧動作を行わせる。具体的には、制御装置20の制御部21は、バルーン60からインデフレータへ拡張媒体が吸入されてバルーン60が減圧されるようにポンプ30を制御する。ステップS110では、第1維持時間の経過時、すなわち、予め設定された減圧タイミングで減圧動作が行われる。一方、ステップS111では、第1維持時間の経過前、かつ異常検知時、すなわち、減圧タイミングよりも前に減圧動作が行われる。
【0061】
ステップS111の後、ステップS112において、制御装置20の制御部21は、アラートを出力する。具体的には、制御装置20の制御部21は、加圧中又は加圧後に患者のバイタルに異常が発生したことを示すアラートメッセージをポンプ30のディスプレイ38に表示させる。アラートメッセージの表示に代えて又は加えて、アラート音の出力、アラートランプの点灯、若しくはこれらの両方が行われてもよい。
【0062】
図5に示した動作は、ステップS102、ステップS110、及びステップS112のいずれかの処理が実行された後に終了する。ステップS101及びステップS102の処理は省略されてもよい。
【0063】
図6を参照して、本実施形態に係る制御装置20の動作の変形例を説明する。
【0064】
ステップS201及びステップS202の処理については、それぞれ
図5のステップS101及びステップS102の処理と同様であるため、説明を省略する。
【0065】
図5に示した動作では、制御装置20の制御部21は、ステップS103からステップS105の後のステップS106でタイマーを開始する。一方、
図6に示した動作では、制御装置20の制御部21は、
図5のステップS103からステップS105にそれぞれ対応するステップS204からステップS206の前のステップS203でタイマーを開始する。
【0066】
ステップS207の処理については、
図5のステップS107の処理と同様であるため、説明を省略する。
【0067】
ステップS208において、制御装置20の制御部21は、ポンプ30の加圧動作を開始してからポンプ30の減圧動作を開始するまでの所望の時間として予め設定された第2維持時間が経過したかどうかを判定する。第2維持時間は、第1維持時間と、予め設定された加圧時間との合計時間である。加圧時間も、第1維持時間と同様に、バルーン種別ごとに設定されていてもよい。制御装置20の制御部21は、第2維持時間が経過したと判定するまでは、ステップS210の減圧動作を開始せず、バルーン60の圧力を目標圧力に維持させる。減圧動作の開始前は、ステップS207の処理が繰り返し実行される。制御装置20の制御部21は、第2維持時間が経過したと判定すると、ステップS209でタイマーを停止する。
【0068】
ステップS210及びステップS211の処理については、それぞれ
図5のステップS110及びステップS111の処理と同様であるため、説明を省略する。ステップS212の処理についても、
図5のステップS112の処理と同様であるため、説明を省略する。
【0069】
図6に示した動作は、ステップS202、ステップS210、及びステップS212のいずれかの処理が実行された後に終了する。ステップS201及びステップS202の処理は省略されてもよい。
【0070】
図7を参照して、本実施形態に係るインデフレーションシステム10の構成の変形例を説明する。
【0071】
制御装置20は、ケーブルで、若しくは無線で、又はLANなどのネットワークを介して、カメラ80と更に接続されていてもよい。この変形例において、制御装置20の制御部21は、少なくともポンプ30に加圧動作を行わせている間に、患者の表情の変化を観察して患者の苦痛レベルを判定する。具体的には、制御装置20の制御部21は、患者の表情を撮影して得られた画像データ13を、通信部23を介してカメラ80から取得する。制御装置20の制御部21は、取得した画像データ13を画像処理で解析することで患者の苦痛レベルを判定する。この画像処理には既知の手法を用いることができる。深層学習などの機械学習が用いられてもよい。制御装置20の制御部21は、判定した苦痛レベルが基準を超えた場合は、患者のバイタルに異常が生じたと判定しなくても、予め設定された減圧タイミングよりも前にポンプ30に減圧動作を行わせる。すなわち、制御装置20の制御部21は、患者が一定以上の苦痛を感じている場合は心機能に異常が生じていると判定して減圧動作を開始する。
【0072】
上述したように、本実施形態では、ポンプ30により、バルーン60を加減圧することでバルーン60を拡張及び収縮させることと、制御装置20により、ポンプ30に加圧動作を行わせる前に、第1バイタルデータ11を取得することと、制御装置20により、少なくともポンプ30に加圧動作を行わせている間に、患者のバイタルを測定して得られた第2バイタルデータ12を取得し、取得した第2バイタルデータ12を第1バイタルデータ11と比較することで患者のバイタルに異常が生じたかどうかを判定することと、制御装置20により、患者のバイタルに異常が生じたと判定すると、予め設定された減圧タイミングよりも前にポンプ30に減圧動作を行わせることとを含むインデフレーション方法が用いられる。したがって、本実施形態によれば、バルーン60の拡張に起因する合併症を防止しやすくなる。血流不足による心筋細胞壊死などの不可逆的な損傷による機能低下も軽減しやすくなる。
【0073】
本開示は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、ブロック図に記載の2つ以上のブロックを統合してもよいし、又は1つのブロックを分割してもよい。フローチャートに記載の2つ以上のステップを記述に従って時系列に実行する代わりに、各ステップを実行する装置の処理能力に応じて、又は必要に応じて、並列的に又は異なる順序で実行してもよい。その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲での変更が可能である。
【符号の説明】
【0074】
10 インデフレーションシステム
11 第1バイタルデータ
12 第2バイタルデータ
13 画像データ
20 制御装置
21 制御部
22 記憶部
23 通信部
30 ポンプ
31 ドライバ
32 アクチュエータ
33 筐体
34 凹部
35 軸
36 スライダ
37 スイッチ群
38 ディスプレイ
39 板
40 インデフレータ
41 シリンジ
42 プランジャ
43 チューブ
44 羽根
50 圧力センサ
60 バルーン
61 バルーンカテーテル
62 シャフト
63 ハブ
64 ガイドワイヤポート
65 ポート
66 ガイドワイヤルーメン
67 ガイドワイヤ
70 バイタル測定機器
80 カメラ
90 電源