(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122790
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】制御装置、インデフレーションシステム、及びインデフレーション方法
(51)【国際特許分類】
A61M 25/10 20130101AFI20240902BHJP
【FI】
A61M25/10 540
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030536
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100176728
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】福田 拓海
(72)【発明者】
【氏名】桑野 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】金谷 康平
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA07
4C267BB28
4C267BB62
4C267CC08
4C267EE03
4C267EE13
4C267HH07
4C267HH08
4C267HH11
4C267HH22
(57)【要約】
【課題】バルーンの内部に気泡が存在する場合に即座に対処しやすくする。
【解決手段】患者の管腔器官に挿入されたカテーテルを通じて当該カテーテルの遠位部に取り付けられたバルーンを加減圧することで前記バルーンを拡張及び収縮させるポンプの加減圧動作を制御する制御装置が、少なくとも前記ポンプに加圧動作を行わせている間に、前記管腔器官を撮像して得られた画像データを取得し、取得した画像データを参照して、前記加圧動作で前記バルーンに注入された拡張媒体に気泡が混入しているかどうかを判定し、気泡が混入していると判定すると、予め設定された減圧タイミングよりも前に前記ポンプに減圧動作を行わせる制御部を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の管腔器官に挿入されたカテーテルを通じて当該カテーテルの遠位部に取り付けられたバルーンを加減圧することで前記バルーンを拡張及び収縮させるポンプの加減圧動作を制御する制御装置であって、
少なくとも前記ポンプに加圧動作を行わせている間に、前記管腔器官を撮像して得られた画像データを取得し、取得した画像データを参照して、前記加圧動作で前記バルーンに注入された拡張媒体に気泡が混入しているかどうかを判定し、気泡が混入していると判定すると、予め設定された減圧タイミングよりも前に前記ポンプに減圧動作を行わせる制御部を備える制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記拡張媒体に気泡が混入していると判定すると、前記ポンプに前記バルーンを減圧させながら、前記管腔器官を撮像して得られた第2画像データを取得し、取得した第2画像データを、前記ポンプに前記バルーンを加圧させながら取得した第1画像データと比較して、前記拡張媒体に混入している気泡の大きさの変化を確認した上で、前記予め設定された減圧タイミングよりも前に前記ポンプに前記減圧動作を行わせる請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記拡張媒体に気泡が混入していると判定すると、前記第2画像データを取得した後に、前記ポンプに前記バルーンを加圧させながら、前記管腔器官を撮像して得られた画像データを前記第1画像データとして取得する請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記第1画像データは、前記拡張媒体に気泡が混入していると判定された際に前記制御部により参照された画像データである請求項2に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記ポンプに前記加圧動作を行わせている間に、前記バルーンの圧力の変化を観察して前記拡張媒体に気泡が混入している可能性を判定し、判定した可能性が基準を超えた場合に、前記加圧動作で前記バルーンに前記拡張媒体を注入する速度を低下させる請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記ポンプに前記加圧動作を行わせている間に、前記加圧動作の停止を要求するユーザ操作を受け付けると、前記加圧動作を停止し、前記拡張媒体に気泡が混入していると判定していなくても、前記予め設定された減圧タイミングよりも前に前記ポンプに前記減圧動作を行わせる請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、バルーン内媒体量の変化に対するバルーン内圧力の変化の特性をバルーン種別ごとに定義した特性データを参照して、前記バルーンの種別に応じた特性を特定し、前記加圧動作における前記拡張媒体の量の変化に対する、観察した圧力の変化を、特定した特性と比較することで、前記拡張媒体に気泡が混入している可能性を判定する請求項5に記載の制御装置。
【請求項8】
前記画像データは、アンギオグラフィで得られたデータを含む請求項1に記載の制御装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の制御装置と、
前記ポンプと
を備えるインデフレーションシステム。
【請求項10】
ポンプにより、患者の管腔器官に挿入されたカテーテルを通じて当該カテーテルの遠位部に取り付けられたバルーンを加減圧することで前記バルーンを拡張及び収縮させることと、
制御装置により、少なくとも前記ポンプに加圧動作を行わせている間に、前記管腔器官を撮像して得られた画像データを取得し、取得した画像データを参照して、前記加圧動作で前記バルーンに注入された拡張媒体に気泡が混入しているかどうかを判定することと、
前記制御装置により、前記拡張媒体に気泡が混入していると判定すると、予め設定された減圧タイミングよりも前に前記ポンプに減圧動作を行わせることと
を含むインデフレーション方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置、インデフレーションシステム、及びインデフレーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
体内に挿入されるバルーンカテーテルは、拡張媒体の注入量に応じて拡張及び収縮するバルーンを有する。特許文献1から特許文献3には、バルーンを自動で拡張及び収縮させる自動インデフレーションデバイスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-159578号公報
【特許文献2】特開2003-079738号公報
【特許文献3】特表2017-531460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バルーンカテーテルは、使用される前に造影剤又は生理食塩水などの流体で内部がプライミングされる。プライミングの際にはバルーンカテーテルの内部に気泡が残ることがある。しかし、バルーンカテーテルの先端寄り、特にバルーンの内部に気泡が存在することは回避することが望ましい。
【0005】
本開示の目的は、バルーンの内部に気泡が存在する場合に即座に対処しやすくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の幾つかの態様を以下に示す。
【0007】
[1]
患者の管腔器官に挿入されたカテーテルを通じて当該カテーテルの遠位部に取り付けられたバルーンを加減圧することで前記バルーンを拡張及び収縮させるポンプの加減圧動作を制御する制御装置であって、
少なくとも前記ポンプに加圧動作を行わせている間に、前記管腔器官を撮像して得られた画像データを取得し、取得した画像データを参照して、前記加圧動作で前記バルーンに注入された拡張媒体に気泡が混入しているかどうかを判定し、気泡が混入していると判定すると、予め設定された減圧タイミングよりも前に前記ポンプに減圧動作を行わせる制御部を備える制御装置。
【0008】
[2]
前記制御部は、前記拡張媒体に気泡が混入していると判定すると、前記ポンプに前記バルーンを減圧させながら、前記管腔器官を撮像して得られた第2画像データを取得し、取得した第2画像データを、前記ポンプに前記バルーンを加圧させながら取得した第1画像データと比較して、前記拡張媒体に混入している気泡の大きさの変化を確認した上で、前記予め設定された減圧タイミングよりも前に前記ポンプに前記減圧動作を行わせる[1]に記載の制御装置。
【0009】
[3]
前記制御部は、前記拡張媒体に気泡が混入していると判定すると、前記第2画像データを取得した後に、前記ポンプに前記バルーンを加圧させながら、前記管腔器官を撮像して得られた画像データを前記第1画像データとして取得する[2]に記載の制御装置。
【0010】
[4]
前記第1画像データは、前記拡張媒体に気泡が混入していると判定された際に前記制御部により参照された画像データである[2]に記載の制御装置。
【0011】
[5]
前記制御部は、前記ポンプに前記加圧動作を行わせている間に、前記バルーンの圧力の変化を観察して前記拡張媒体に気泡が混入している可能性を判定し、判定した可能性が基準を超えた場合に、前記加圧動作で前記バルーンに前記拡張媒体を注入する速度を低下させる[1]から[4]のいずれか1項に記載の制御装置。
【0012】
[6]
前記制御部は、前記ポンプに前記加圧動作を行わせている間に、前記加圧動作の停止を要求するユーザ操作を受け付けると、前記加圧動作を停止し、前記拡張媒体に気泡が混入していると判定していなくても、前記予め設定された減圧タイミングよりも前に前記ポンプに前記減圧動作を行わせる[5]に記載の制御装置。
【0013】
[7]
前記制御部は、バルーン内媒体量の変化に対するバルーン内圧力の変化の特性をバルーン種別ごとに定義した特性データを参照して、前記バルーンの種別に応じた特性を特定し、前記加圧動作における前記拡張媒体の量の変化に対する、観察した圧力の変化を、特定した特性と比較することで、前記拡張媒体に気泡が混入している可能性を判定する[5]又は[6]に記載の制御装置。
【0014】
[8]
前記画像データは、アンギオグラフィで得られたデータを含む[1]から[7]のいずれか1項に記載の制御装置。
【0015】
[9]
[1]から[8]のいずれか1項に記載の制御装置と、
前記ポンプと
を備えるインデフレーションシステム。
【0016】
[10]
ポンプにより、患者の管腔器官に挿入されたカテーテルを通じて当該カテーテルの遠位部に取り付けられたバルーンを加減圧することで前記バルーンを拡張及び収縮させることと、
制御装置により、少なくとも前記ポンプに加圧動作を行わせている間に、前記管腔器官を撮像して得られた画像データを取得し、取得した画像データを参照して、前記加圧動作で前記バルーンに注入された拡張媒体に気泡が混入しているかどうかを判定することと、
前記制御装置により、前記拡張媒体に気泡が混入していると判定すると、予め設定された減圧タイミングよりも前に前記ポンプに減圧動作を行わせることと
を含むインデフレーション方法。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、バルーンの内部に気泡が存在する場合に即座に対処しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本開示の実施形態に係るインデフレーションシステムの構成を示す図である。
【
図2】本開示の実施形態に係るポンプ及びインデフレータの斜視図である。
【
図3】本開示の実施形態に係るバルーンカテーテルの概略図である。
【
図4】本開示の実施形態に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図5】本開示の実施形態に係る制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図6】本開示の実施形態に係る撮像装置により撮影される画像の例を示す図である。
【
図7】本開示の実施形態に係る制御装置の動作の変形例を示すフローチャートである。
【
図8】本開示の実施形態に係る制御装置の付加的な動作を示すフローチャートである。
【
図9】本開示の実施形態に係るバルーンの特性の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の一実施形態について、図を参照して説明する。
【0020】
各図中、同一又は相当する部分には、同一符号を付している。本実施形態の説明において、同一又は相当する部分については、説明を適宜省略又は簡略化する。
【0021】
【0022】
ポンプ30は、患者の管腔器官に挿入されたカテーテルを通じて当該カテーテルの先端などの遠位部に取り付けられたバルーン60を加減圧することでバルーン60を拡張及び収縮させる。制御装置20は、ポンプ30の加減圧動作を制御する。具体的には、制御装置20は、少なくともポンプ30に加圧動作を行わせている間に、管腔器官を撮像して得られた画像データ11を取得し、取得した画像データ11を参照して、加圧動作でバルーン60に注入された拡張媒体に気泡が混入しているかどうかを判定する。制御装置20は、気泡が混入していると判定すると、予め設定された減圧タイミングよりも前にポンプ30に減圧動作を行わせる。したがって、本実施形態によれば、バルーン60の内部に気泡が存在する場合に即座に対処しやすくなる。例えば、自動インデフレーションによる施術を即座に中止し、術者がバルーン60から気泡を除去してから手術を再開することができる。
【0023】
図1を参照して、本実施形態に係るインデフレーションシステム10の構成を説明する。
【0024】
インデフレーションシステム10は、制御装置20と、ポンプ30とを備えるとともに、インデフレータ40と、圧力センサ50とを備えている。
【0025】
制御装置20は、ポンプ30を制御するコンピュータである。ポンプ30は、ドライバ31と、モータ32とを備えている。ドライバ31は、電源90から給電されてモータ32を駆動する。電源90は、本実施形態では商用電源などの外部電源であるが、バッテリでもよく、インデフレーションシステム10に備えられていてもよい。モータ32は、ドライバ31により駆動されて動力を発生させる。インデフレータ40は、造影剤又は生理食塩水などの拡張媒体をバルーン60に注入するための器具である。拡張媒体は、モータ32から発生した動力によってインデフレータ40からバルーン60へ自動的に注入又は排出される。制御装置20は、ドライバ31を制御してモータ32から発生する動力を調整することで、拡張媒体の注入量を調整することができる。圧力センサ50は、バルーン60の内部の圧力を測定するセンサである。制御装置20は、圧力センサ50から得られる測定値を参照して拡張媒体の注入量を調整することで、バルーン60の内部の圧力を所望の圧力に調整することができる。
【0026】
制御装置20は、ケーブルで、若しくは無線で、又はLANなどのネットワークを介して、撮像装置70と接続されている。「LAN」は、local area networkの略語である。撮像装置70は、本実施形態ではアンギオグラフィ装置であるが、CT装置又はMRI装置でもよい。「CT」は、computed tomographyの略語である。「MRI」は、magnetic resonance imagingの略語である。画像データ11は、本実施形態では、アンギオグラフィで得られたデータを含む。
【0027】
図2を参照して、本実施形態に係るポンプ30及びインデフレータ40の具体的な構成を説明する。
【0028】
ポンプ30は、筐体33を有している。筐体33には、インデフレータ40を着脱自在に収容するための凹部34が形成されている。凹部34には、モータ32の回転運動を直線運動に変換する軸35と、軸35により往復移動自在に支持されたスライダ36と、軸35の一端側に固定された1対の板39とが取り付けられている。インデフレータ40は、シリンジ41と、プランジャ42とを備えている。シリンジ41は、羽根44を有している。インデフレータ40が、シリンジ41の羽根44を1対の板39の間に嵌め込み、かつプランジャ42をスライダ36に密着及び固定させるように凹部34に嵌め込まれた後、ドライバ31が制御装置20により制御されてモータ32を回転駆動することでスライダ36が移動すると、プランジャ42がシリンジ41の内側に押し込まれ、シリンジ41内の拡張媒体がチューブ43を介してバルーン60に注入される。その結果、バルーン60の圧力が増加してバルーン60が拡張する。一方、ドライバ31が制御装置20により制御されてモータ32を逆回転駆動することでスライダ36が逆方向に移動すると、プランジャ42がシリンジ41の外側に引き抜かれ、バルーン60に注入されていた拡張媒体がチューブ43を介してシリンジ41内に戻る。その結果、バルーン60の圧力が減少してバルーン60が収縮する。
【0029】
ポンプ30の筐体33には、ポンプ30の動作に関連する操作を行うためのスイッチ群37と、ポンプ30の動作に関連する情報を表示するディスプレイ38とが更に設けられている。ディスプレイ38は、例えば、LCD又は有機ELディスプレイである。「LCD」は、liquid crystal displayの略語である。「EL」は、electro luminescentの略語である。
【0030】
制御装置20は、本実施形態では、筐体33に収容されてポンプ30と一体化されているが、筐体33の外部に設置され、ケーブルで、若しくは無線で、又はLANなどのネットワークを介してポンプ30と接続されていてもよい。圧力センサ50も、本実施形態では、ポンプ30と一体化されているが、インデフレータ40と一体化されていてもよいし、又はポンプ30及びインデフレータ40とは別個に設置されていてもよい。インデフレータ40も、ポンプ30に一体化されていてもよいが、上述したように、本実施形態ではポンプ30とは別個に提供される。そのため、インデフレータ40は、ディスポーザブルでもよい。
【0031】
図3を参照して、本実施形態に係るカテーテルであるバルーンカテーテル61の具体的な構成を説明する。
【0032】
バルーンカテーテル61は、バルーン60を備えるとともに、シャフト62と、ハブ63と、ガイドワイヤポート64とを備えている。
【0033】
シャフト62は、シャフト62の内腔がハブ63内の流路と連通した状態で、ハブ63と接続されている。シャフト62の先端などの遠位部は、バルーン60と一体的に接合している。ハブ63は、インデフレータ40と接続可能なポート65を有している。バルーン60は、ハブ63のポート65からシャフト62の内腔を通じて拡張媒体が注入されることにより、シャフト62の動径方向に拡張する。シャフト62の内腔には、ガイドワイヤ67が挿通可能なガイドワイヤルーメン66が形成されている。ガイドワイヤルーメン66の基端は、ガイドワイヤポート64と連通している。
【0034】
図4を参照して、本実施形態に係る制御装置20の構成を説明する。
【0035】
制御装置20は、制御部21と、記憶部22と、通信部23とを備える。
【0036】
制御部21は、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つのプログラマブル回路、少なくとも1つの専用回路、又はこれらの任意の組合せを含む。プロセッサは、CPU若しくはGPUなどの汎用プロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。「CPU」は、central processing unitの略語である。「GPU」は、graphics processing unitの略語である。プログラマブル回路は、例えば、FPGAである。「FPGA」は、field-programmable gate arrayの略語である。専用回路は、例えば、ASICである。「ASIC」は、application specific integrated circuitの略語である。制御部21は、制御装置20の各部を制御しながら、制御装置20の動作に関わる処理を実行する。
【0037】
記憶部22は、少なくとも1つの半導体メモリ、少なくとも1つの磁気メモリ、少なくとも1つの光メモリ、又はこれらの任意の組合せを含む。半導体メモリは、例えば、RAM、ROM、又はフラッシュメモリである。「RAM」は、random access memoryの略語である。「ROM」は、read only memoryの略語である。RAMは、例えば、SRAM又はDRAMである。「SRAM」は、static random access memoryの略語である。「DRAM」は、dynamic random access memoryの略語である。ROMは、例えば、EEPROMである。「EEPROM」は、electrically erasable programmable read only memoryの略語である。フラッシュメモリは、例えば、SSDである。「SSD」は、solid-state driveの略語である。磁気メモリは、例えば、HDDである。「HDD」は、hard disk driveの略語である。記憶部22は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能する。記憶部22には、制御装置20の動作に用いられるデータと、制御装置20の動作によって得られたデータとが記憶される。
【0038】
通信部23は、少なくとも1つの通信モジュールを含む。通信モジュールは、例えば、Ethernet(登録商標)などの有線LAN通信規格、IEEE802.11などの無線LAN通信規格、Bluetooth(登録商標)などの近距離無線通信規格、又はLTE、4G規格、若しくは5G規格などの移動通信規格に対応したモジュールである。「IEEE」は、Institute of Electrical and Electronics Engineersの略称である。「LTE」は、Long Term Evolutionの略語である。「4G」は、4th generationの略語である。「5G」は、5th generationの略語である。通信部23は、少なくともポンプ30、圧力センサ50、及び撮像装置70と通信を行う。通信部23は、制御装置20の動作に用いられるデータを受信し、また制御装置20の動作によって得られるデータを送信する。
【0039】
本実施形態では、バルーン内媒体量の変化に対するバルーン内圧力の変化の特性をバルーン種別ごとに定義した特性データ12が記憶部22に記憶される。特性データ12は、予め記憶部22に記憶されていてもよいし、又は通信部23を介して外部のサーバからダウンロードされて記憶部22に記憶されてもよい。
【0040】
制御装置20の機能は、本実施形態に係るプログラムを、制御部21としてのプロセッサで実行することにより実現される。すなわち、制御装置20の機能は、ソフトウェアにより実現される。プログラムは、制御装置20の動作をコンピュータに実行させることで、コンピュータを制御装置20として機能させる。すなわち、コンピュータは、プログラムに従って制御装置20の動作を実行することにより制御装置20として機能する。
【0041】
プログラムは、非一時的なコンピュータ読取り可能な媒体に記憶しておくことができる。非一時的なコンピュータ読取り可能な媒体は、例えば、フラッシュメモリ、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、又はROMである。プログラムの流通は、例えば、プログラムを記憶したSDカード、DVD、又はCD-ROMなどの可搬型媒体を販売、譲渡、又は貸与することによって行う。「SD」は、Secure Digitalの略語である。「DVD」は、digital versatile discの略語である。「CD-ROM」は、compact disc read only memoryの略語である。プログラムをサーバのストレージに格納しておき、サーバから他のコンピュータにプログラムを転送することにより、プログラムを流通させてもよい。プログラムをプログラムプロダクトとして提供してもよい。
【0042】
コンピュータは、例えば、可搬型媒体に記憶されたプログラム又はサーバから転送されたプログラムを、一旦、主記憶装置に格納する。そして、コンピュータは、主記憶装置に格納されたプログラムをプロセッサで読み取り、読み取ったプログラムに従った処理をプロセッサで実行する。コンピュータは、可搬型媒体から直接プログラムを読み取り、プログラムに従った処理を実行してもよい。コンピュータは、コンピュータにサーバからプログラムが転送される度に、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行してもよい。サーバからコンピュータへのプログラムの転送は行わず、実行指示及び結果取得のみによって機能を実現する、いわゆるASP型のサービスによって処理を実行してもよい。「ASP」は、application service providerの略語である。プログラムには、電子計算機による処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるものが含まれる。例えば、コンピュータに対する直接の指令ではないがコンピュータの処理を規定する性質を有するデータは、「プログラムに準ずるもの」に該当する。
【0043】
制御装置20の一部又は全ての機能が、制御部21としてのプログラマブル回路又は専用回路により実現されてもよい。すなわち、制御装置20の一部又は全ての機能が、ハードウェアにより実現されてもよい。
【0044】
図5を参照して、本実施形態に係る制御装置20の動作を説明する。
図5に示した動作は、本実施形態に係る自動インデフレーション制御方法に相当する。
【0045】
ステップS101において、制御装置20の制御部21は、ポンプ30に加圧動作を行わせる。具体的には、制御装置20の制御部21は、インデフレータ40からバルーン60へ拡張媒体が注入されてバルーン60が加圧されるようにポンプ30を制御する。
【0046】
ステップS102において、制御装置20の制御部21は、画像データ11を、通信部23を介して撮像装置70から取得する。制御装置20の制御部21は、取得した画像データ11を参照して、ステップS101の加圧動作でバルーン60に注入された拡張媒体に気泡が混入しているかどうかを判定する。具体的には、制御装置20の制御部21は、画像データ11として、
図6に示したようなアンギオグラフィ画像71を取得する。例えば、患者の血管72は、造影剤を流すとX線により一時的に視認可能になる。拡張媒体に造影性がある場合、ステップS101の加圧動作でバルーン60が拡張媒体で満たされるとバルーン60の形状がX線により視認可能になる。気泡は造影されないため、視認可能になったバルーン60の中で造影されない部分があればその部分が気泡であると推定できる。制御装置20の制御部21は、アンギオグラフィ画像71の中から、血管72の、バルーン60が配置された位置に対応する画像領域73を抽出する。制御装置20の制御部21は、抽出した画像領域73を画像処理で解析し、画像領域73に気泡に相当する画素群74が含まれるかどうかを判定することで、拡張媒体に気泡が混入しているかどうかを判定する。画像処理には任意の手法を用いてよいが、例えば、画像領域73内で気泡のエッジを検出する手法を用いることができる。深層学習などの機械学習が用いられてもよい。
【0047】
ステップS102で拡張媒体に気泡が混入していると判定された場合は、ステップS108の処理が実行される。一方、ステップS102で拡張媒体に気泡が混入していないと判定された場合は、ステップS103の処理が実行される。
【0048】
ステップS103において、制御装置20の制御部21は、圧力センサ50から得られる測定値を参照して、バルーン60の圧力が予め設定された目標圧力に到達したかどうかを判定する。目標圧力は、バルーン種別ごとに設定されていてもよく、術者が任意で設定してもよい。制御装置20の制御部21は、バルーン60の圧力が目標圧力に到達したと判定するまでステップS101の加圧動作を継続する。バルーン60の圧力が目標圧力を超えた場合は、減圧動作を実施してもよい。加圧又は減圧動作の継続中は、ステップS102の処理も繰り返し実行される。制御装置20の制御部21は、バルーン60の圧力が目標圧力に到達したと判定すると、ステップS104でタイマーを開始する。
【0049】
ステップS105において、制御装置20の制御部21は、バルーン60の圧力を目標圧力に到達させてからポンプ30の減圧動作を開始するまでの所望の時間として予め設定された維持時間が経過したかどうかを判定する。維持時間は、望ましくは1秒以上30秒以下の範囲内であり、例えば10秒である。維持時間は、バルーン種別ごとに設定されていてもよく、術者が任意で設定してもよい。制御装置20の制御部21は、維持時間が経過したと判定するまでは、後述するステップS107の減圧動作を開始せず、バルーン60の圧力を目標圧力に維持させる。このとき、バルーン60の圧力に変化があれば目標圧力を維持できるように加圧又は減圧動作を行ってもよい。制御装置20の制御部21は、維持時間が経過したと判定すると、ステップS106でタイマーを停止する。
【0050】
ステップS107及びステップS108のいずれにおいても、制御装置20の制御部21は、ポンプ30に減圧動作を行わせる。具体的には、制御装置20の制御部21は、バルーン60からインデフレータへ拡張媒体が吸入されてバルーン60が減圧されるようにポンプ30を制御する。ステップS107では、維持時間の経過時、すなわち、予め設定された減圧タイミングで減圧動作が行われる。一方、ステップS108では、維持時間の経過前、かつ気泡検知時、すなわち、予め設定された減圧タイミングよりも前に減圧動作が行われる。
【0051】
ステップS108の後、ステップS109において、制御装置20の制御部21は、アラートを出力する。具体的には、制御装置20の制御部21は、バルーン60の内部の拡張媒体に気泡が混入していることを示すアラートメッセージをポンプ30のディスプレイ38に表示させる。アラートメッセージの表示に代えて又は加えて、アラート音の出力、アラートランプの点灯、若しくはこれらの両方が行われてもよい。
【0052】
図5に示した動作は、ステップS107及びステップS109のいずれかの処理が実行された後に終了する。
【0053】
図7を参照して、本実施形態に係る制御装置20の動作の変形例を説明する。
【0054】
ステップS201からステップS207の処理については、それぞれ
図5のステップS101からステップS107の処理と同様であるため、説明を省略する。
【0055】
ステップS202で拡張媒体に気泡が混入していると判定された場合、ステップS208において、制御装置20の制御部21は、ポンプ30にバルーン60を減圧させながら、患者の管腔器官を撮像して得られた第2画像データを、通信部23を介して撮像装置70から取得する。ステップS209において、制御装置20の制御部21は、ステップS208で取得した第2画像データを、ポンプ30にバルーン60を加圧させながら取得した第1画像データと比較して、拡張媒体に混入している気泡の大きさの変化を確認する。気泡が減圧時に大きくなり、加圧時に小さくなっている場合は、ステップS202の、拡張媒体に気泡が混入しているという判定結果が正しいことになるが、そうでない場合は、ステップS202の判定結果が誤っているおそれがある。
【0056】
第1画像データは、拡張媒体に気泡が混入していると判定された際に制御装置20の制御部21により参照された画像データ11、すなわち、ステップS202で取得された画像データ11でもよいが、本実施形態では、新たに撮像装置70から取得される。すなわち、ステップS208において、制御装置20の制御部21は、第2画像データを取得した後に、ポンプ30にバルーン60を加圧させながら、患者の管腔器官を撮像して得られた新たな画像データを第1画像データとして、通信部23を介して撮像装置70から取得する。減圧と加圧とがそれぞれ2回以上交互に繰り返されてもよい。すなわち、第2画像データと第1画像データとがそれぞれ2回以上交互に取得されてもよい。気泡が減圧の度に大きくなり、加圧の度に小さくなっている場合は、ステップS202の判定結果が正しいことになるが、そうでない場合は、ステップS202の判定結果が誤っているおそれがある。
【0057】
ステップS209でステップS202の判定結果が正しいことが確認された場合は、ステップS210の処理が実行される。一方、ステップS209でステップS202の判定結果が正しいことが確認できなかった場合は、ステップS203の処理が実行される。
【0058】
ステップS210及びステップS211の処理については、それぞれ
図5のステップS108及びステップS109の処理と同様であるため、説明を省略する。
【0059】
図7に示した動作は、ステップS207及びステップS211のいずれかの処理が実行された後に終了する。
図7に示した動作によれば、拡張媒体に気泡が混入していると誤って判定してしまうことによる手術の中止又は遅延を回避しやすくなる。
【0060】
図8を参照して、本実施形態に係る制御装置20の付加的な動作を説明する。
図5のステップS102又は
図7のステップS202で拡張媒体に気泡が混入していないと判定された場合は、
図8に示した動作を追加で行ってもよい。
【0061】
ステップS301において、制御装置20の制御部21は、圧力センサ50から得られる測定値を時系列でモニタリングすることで、バルーン60の圧力の変化を観察して拡張媒体に気泡が混入している可能性を判定する。具体的には、制御装置20の制御部21は、特性データ12を記憶部22から取得する。制御装置20の制御部21は、取得した特性データ12を参照して、バルーン60の種別に応じた、バルーン内媒体量の変化に対するバルーン内圧力の変化の特性を特定する。制御装置20の制御部21は、
図5のステップS101又は
図7のステップS201の加圧動作における拡張媒体の量の変化に対する、観察した圧力の変化を、特定した特性と比較することで、拡張媒体に気泡が混入している可能性を判定する。ここで、「拡張媒体に気泡が混入している可能性」が高いことは、拡張媒体に気泡が混入している確率が高いことを意味してもよいし、又は拡張媒体に混入していると推定される気泡の量が多いことを意味してもよい。
【0062】
図9に示すように、バルーン内媒体量の変化に対するバルーン内圧力の変化の特性は、バルーン種別ごとの基準線L1によって定まるが、拡張媒体に気泡が混入している場合は、曲線L2のように基準線L1とのズレが生じる。
図8に示した動作では、このズレが事前に定められた基準よりも大きいことを検知することで、拡張媒体に気泡が混入している可能性を判定することが可能となる。
【0063】
ステップS301で判定された可能性が基準を超えた場合、すなわち、拡張媒体に気泡が混入している可能性が高いと判定された場合は、ステップS303の処理が実行される。一方、ステップS301で判定された可能性が基準を超えていない場合、すなわち、拡張媒体に気泡が混入している可能性が低いと判定された場合は、ステップS302の処理が実行される。
【0064】
ステップS302において、制御装置20の制御部21は、通常の加圧制御を継続する。すなわち、制御装置20の制御部21は、
図5のステップS101又は
図7のステップS201の加圧動作でバルーン60に拡張媒体を注入する速度を現状の速度に維持させる。
【0065】
ステップS303において、制御装置20の制御部21は、アラートを出力する。具体的には、制御装置20の制御部21は、バルーン60の内部の拡張媒体に気泡が混入している可能性が高いことを示すアラートメッセージをポンプ30のディスプレイ38に表示させる。アラートメッセージの表示に代えて又は加えて、アラート音の出力、アラートランプの点灯、若しくはこれらの両方が行われてもよい。
【0066】
ステップS303の後、ステップS304において、制御装置20の制御部21は、気泡検知用の加圧制御を開始する。すなわち、制御装置20の制御部21は、
図5のステップS101又は
図7のステップS201の加圧動作でバルーン60に拡張媒体を注入する速度を低下させる。その結果、術者が加圧動作を停止するかどうかを決めるための時間を長く確保することができる。
【0067】
制御装置20の制御部21は、ポンプ30に加圧動作を行わせている間に、加圧動作の停止を要求するユーザ操作を受け付けてもよい。そのようなユーザ操作を行うためのスイッチとして、緊急停止スイッチがポンプ30のスイッチ群37に含まれていてもよい。制御装置20の制御部21は、ユーザ操作に応じて、加圧動作を停止し、拡張媒体に気泡が混入していると判定していなくても、予め設定された減圧タイミングよりも前にポンプ30に減圧動作を行わせてもよい。
【0068】
上述したように、本実施形態では、ポンプ30により、バルーン60を加減圧することでバルーン60を拡張及び収縮させることと、制御装置20により、少なくともポンプ30に加圧動作を行わせている間に、画像データ11を取得し、取得した画像データ11を参照して、加圧動作でバルーン60に注入された拡張媒体に気泡が混入しているかどうかを判定することと、制御装置20により、拡張媒体に気泡が混入していると判定すると、予め設定された減圧タイミングよりも前にポンプ30に減圧動作を行わせることとを含むインデフレーション方法が用いられる。したがって、本実施形態によれば、バルーン60の内部に気泡が存在する場合に即座に対処しやすくなる。
【0069】
本開示は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、ブロック図に記載の2つ以上のブロックを統合してもよいし、又は1つのブロックを分割してもよい。フローチャートに記載の2つ以上のステップを記述に従って時系列に実行する代わりに、各ステップを実行する装置の処理能力に応じて、又は必要に応じて、並列的に又は異なる順序で実行してもよい。その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲での変更が可能である。
【符号の説明】
【0070】
10 インデフレーションシステム
11 画像データ
12 特性データ
20 制御装置
21 制御部
22 記憶部
23 通信部
30 ポンプ
31 ドライバ
32 モータ
33 筐体
34 凹部
35 軸
36 スライダ
37 スイッチ群
38 ディスプレイ
39 板
40 インデフレータ
41 シリンジ
42 プランジャ
43 チューブ
44 羽根
50 圧力センサ
60 バルーン
61 バルーンカテーテル
62 シャフト
63 ハブ
64 ガイドワイヤポート
65 ポート
66 ガイドワイヤルーメン
67 ガイドワイヤ
70 撮像装置
71 アンギオグラフィ画像
72 血管
73 画像領域
74 画素群
90 電源