(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122791
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】インデフレーションシステム及びインデフレーションシステムの制御方法
(51)【国際特許分類】
A61M 25/10 20130101AFI20240902BHJP
A61B 34/20 20160101ALI20240902BHJP
【FI】
A61M25/10 542
A61B34/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030537
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】230128026
【弁護士】
【氏名又は名称】駒木 寛隆
(72)【発明者】
【氏名】仲宗根 一樹
(72)【発明者】
【氏名】金谷 康平
(72)【発明者】
【氏名】福田 拓海
(72)【発明者】
【氏名】桑野 陽一郎
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA06
4C267AA32
4C267BB02
4C267BB61
4C267CC07
4C267EE11
4C267HH08
(57)【要約】
【課題】バルーンの異常に対してより適切に対応可能とする。
【解決手段】インデフレーションシステム1は、遠位部にバルーン32が設けられたカテーテル31内を加圧又は減圧するポンプ12の動作を制御する制御部11を備え、制御部11は、管腔内へ挿入されたカテーテル31の遠位部に設けられ、ポンプ12により加圧されたバルーン32の医療画像を取得し、加圧されたバルーン32の医療画像に基づき、バルーン32の異常の有無を検知し、バルーン32の異常が検知された場合に、バルーン32を減圧するようにポンプ12を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠位部にバルーンが設けられたカテーテル内を加圧又は減圧するポンプの動作を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
管腔内へ挿入された前記カテーテルの遠位部に設けられ、前記ポンプにより加圧された前記バルーンの医療画像を取得し、
前記加圧された前記バルーンの前記医療画像に基づき、前記バルーンの異常の有無を検知し、
前記バルーンの異常が検知された場合に、前記バルーンを減圧するように前記ポンプを制御する、
インデフレーションシステム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記ポンプにより加圧される前の前記バルーンの医療画像を取得し、
前記加圧される前の前記バルーンの前記医療画像と、前記加圧された後の前記バルーンの前記医療画像と、に基づき、前記ポンプの加圧の前後で前記バルーンの位置が予め定められた閾値を超えて変化したか否かを判定し、
前記ポンプの加圧の前後で前記バルーンの位置が前記閾値を超えて変化したと判定された場合に、前記バルーンの異常を検知する、
請求項1に記載のインデフレーションシステム。
【請求項3】
前記制御部は、
造影剤を含む流体を前記カテーテル内で移動させることにより前記カテーテル内を加圧又は減圧する前記ポンプの動作を制御し、
前記加圧された前記バルーンの前記医療画像の輝度分布が予め定められた閾値を超えて変化した場合に、前記バルーンの異常を検知する、
請求項1に記載のインデフレーションシステム。
【請求項4】
前記制御部は、
前記加圧された前記バルーンの前記医療画像において、前記バルーンが位置する部分と、前記管腔における前記バルーンの下流に位置する部分と、の少なくともいずれかを含む領域を関心領域として特定し、
前記特定された前記関心領域における輝度分布の変化に基づき、前記バルーンの異常の有無を検知する、
請求項3に記載のインデフレーションシステム。
【請求項5】
前記制御部は、
前記加圧された前記バルーンの医療画像を解析して前記バルーンの径を測定し、
前記バルーンが加圧されている場合において、当該バルーンについて測定された前記径が予め定められた閾値を超えて変化せず、又は、予め定められた閾値を超えて減少したときは、前記バルーンの異常を検知する、
請求項1に記載のインデフレーションシステム。
【請求項6】
前記制御部は、
前記バルーン内の圧力を取得し、
前記バルーンが加圧されている場合において当該バルーンについて取得された前記圧力の変化率が予め定められた基準よりも小さく、又は、当該バルーンについて取得された前記圧力が予め定められた基準を超えて減少したときは、前記予め定められた閾値としてより小さな値を用いて前記バルーンの異常を検知する、
請求項2から5のいずれか一項に記載のインデフレーションシステム。
【請求項7】
遠位部に前記バルーンが設けられた前記カテーテル内を加圧又は減圧する前記ポンプを更に備える、請求項1に記載のインデフレーションシステム。
【請求項8】
遠位部にバルーンが設けられたカテーテル内を加圧又は減圧するポンプの動作を制御する制御部を備えたインデフレーションシステムの制御方法であって、
前記制御部が、
管腔内へ挿入された前記カテーテルの遠位部に設けられ、前記ポンプにより加圧された前記バルーンの医療画像を取得する工程と、
前記加圧された前記バルーンの前記医療画像に基づき、前記バルーンの異常の有無を検知する工程と、
前記バルーンの異常が検知された場合に、前記バルーンを減圧するように前記ポンプを制御する工程と、
を含む、インデフレーションシステムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インデフレーションシステム及びインデフレーションシステムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バルーンカテーテルとは、遠位部にバルーンが設けられたカテーテルである。バルーンカテーテルは患者の体内に挿入され、バルーンが目標位置に配置された後に、カテーテル内の加圧又は減圧によりバルーンを拡張又は収縮させる。一般に、カテーテル内の加圧又は減圧は、血管形成バルーン用加圧器(インデフレータ)を用いて手動又は電力駆動により拡張流体を注入又は排出することにより行われている。特許文献1には、バルーンカテーテルの膨張及び収縮に関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の構成は、バルーンカテーテルを目標位置に配置した後、例えば、バルーンの破裂又はスリップ(位置ずれ)等の、バルーンの異常が発生した場合に適切に対応するという点で改善の余地があった。
【0005】
本開示の目的は、バルーンの異常に対してより適切に対応可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によれば、インデフレーションシステムは、
(1)遠位部にバルーンが設けられたカテーテル内を加圧又は減圧するポンプの動作を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
管腔内へ挿入された前記カテーテルの遠位部に設けられ、前記ポンプにより加圧された前記バルーンの医療画像を取得し、
前記加圧された前記バルーンの前記医療画像に基づき、前記バルーンの異常の有無を検知し、
前記バルーンの異常が検知された場合に、前記バルーンを減圧するように前記ポンプを制御する。
【0007】
(2)(1)のインデフレーションシステムにおいて、
前記制御部は、
前記ポンプにより加圧される前の前記バルーンの医療画像を取得し、
前記加圧される前の前記バルーンの前記医療画像と、前記加圧された後の前記バルーンの前記医療画像と、に基づき、前記ポンプの加圧の前後で前記バルーンの位置が予め定められた閾値を超えて変化したか否かを判定し、
前記ポンプの加圧の前後で前記バルーンの位置が前記閾値を超えて変化したと判定された場合に、前記バルーンの異常を検知してもよい。
【0008】
(3)(1)又は(2)のインデフレーションシステムにおいて、
前記制御部は、
造影剤を含む流体を前記カテーテル内で移動させることにより前記カテーテル内を加圧又は減圧する前記ポンプの動作を制御し、
前記加圧された前記バルーンの前記医療画像の輝度分布が予め定められた閾値を超えて変化した場合に、前記バルーンの異常を検知してもよい。
【0009】
(4)(3)のインデフレーションシステムにおいて、
前記制御部は、
前記加圧された前記バルーンの前記医療画像において、前記バルーンが位置する部分と、前記管腔における前記バルーンの下流に位置する部分と、の少なくともいずれかを含む領域を関心領域として特定し、
前記特定された前記関心領域における輝度分布の変化に基づき、前記バルーンの異常の有無を検知してもよい。
【0010】
(5)(1)から(4)のいずれかのインデフレーションシステムにおいて、
前記制御部は、
前記加圧された前記バルーンの医療画像を解析して前記バルーンの径を測定し、
前記バルーンが加圧されている場合において、当該バルーンについて測定された前記径が予め定められた閾値を超えて変化せず、又は、予め定められた閾値を超えて減少したときは、前記バルーンの異常を検知してもよい。
【0011】
(6)(2)から(5)のいずれかのインデフレーションシステムにおいて、
前記制御部は、
前記バルーン内の圧力を取得し、
前記バルーンが加圧されている場合において当該バルーンについて取得された前記圧力の変化率が予め定められた基準よりも小さく、又は、当該バルーンについて取得された前記圧力が予め定められた基準を超えて減少したときは、前記予め定められた閾値としてより小さな値を用いて前記バルーンの異常を検知してもよい。
【0012】
(7)(1)から(6)のいずれかのインデフレーションシステムにおいて、
遠位部に前記バルーンが設けられた前記カテーテル内を加圧又は減圧する前記ポンプを更に備えてもよい。
【0013】
本開示によれば、インデフレーションシステムの制御方法は、
(8)遠位部にバルーンが設けられたカテーテル内を加圧又は減圧するポンプの動作を制御する制御部を備えたインデフレーションシステムの制御方法であって、
前記制御部が、
管腔内へ挿入された前記カテーテルの遠位部に設けられ、前記ポンプにより加圧された前記バルーンの医療画像を取得する工程と、
前記加圧された前記バルーンの前記医療画像に基づき、前記バルーンの異常の有無を検知する工程と、
前記バルーンの異常が検知された場合に、前記バルーンを減圧するように前記ポンプを制御する工程と、
を含む。
【発明の効果】
【0014】
本開示の一実施形態によれば、バルーンの異常に対してより適切に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態に係るインデフレーションシステムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図1のインデフレーション装置及びバルーンカテーテルの外観の一例を示す図である。
【
図3】
図1のX線撮影装置の外観の一例を示す図である。
【
図4】インデフレーションシステムの動作例を示すフローチャートである。
【
図6】インデフレーションシステムの動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照して説明する。各図面中、同一の構成又は機能を有する部分には、同一の符号を付している。本実施形態の説明において、同一の部分については、重複する説明を適宜省略又は簡略化する場合がある。
【0017】
(インデフレーションシステムの構成)
図1は、第1実施形態に係るインデフレーションシステム1の構成例を示すブロック図である。インデフレーションシステム1は、インデフレーション装置10、バルーンカテーテル30、X線撮影装置50、及び、画像処理部60を備える。
図2は、
図1のインデフレーション装置10及びバルーンカテーテル30の外観の一例を示す図である。インデフレーション装置10は、バルーンカテーテル30内で流体を移動させることによりバルーンカテーテル30内を加圧又は減圧する。バルーンカテーテル30は、中空のカテーテル31の遠位部に、内圧に応じて拡張又は収縮するバルーン32が取り付けられた構成を有する(
図2参照)。バルーンカテーテル30は、一回使用すると破棄する使い捨て品としてもよい。X線撮影装置50は、バルーンカテーテル30が挿入された患者のバルーン32付近を撮影して医療画像(造影画像)を取得する。画像処理部60は、X線撮影装置50が取得した医療画像に対して画像処理を行い、バルーン32の異常を検知する。以下、インデフレーションシステム1を使用して患者の治療を行う者を総称して「ユーザ」と称する。ユーザは、例えば、医師又は看護士等を含む医療従事者であり、複数人がユーザとして操作を行ってもよい。
【0018】
インデフレーション装置10は、制御部11、ポンプ12、圧力センサ13、入力部14、出力部15、記憶部16、及び、電源17を備える。
図2に示すように、本実施形態において、インデフレーション装置10は、シリンジ20と、それ以外の構成である装置本体100とを分離することができる。インデフレーション装置10は、バルーンカテーテル30のカテーテル31が取り付けられたシリンジ20を装置本体100の収容部に装着して使用する。
【0019】
制御部11は、1つ以上のプロセッサを含む。一実施形態において「プロセッサ」は、汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用のプロセッサであるが、これらに限定されない。制御部11は、インデフレーション装置10を構成する各構成部と通信可能に接続され、インデフレーション装置10全体の動作を制御する。
【0020】
ポンプ12は、バルーンカテーテル30内で流体を移動させることによりバルーンカテーテル30内を加圧又は減圧する。ポンプ12は、ドライバ121、アクチュエータ122、及び、シリンジ20を備える。
【0021】
駆動部としてのドライバ121は、流体の移動に要する駆動力を提供する。ドライバ121は、例えば、モータ等を備えてもよい。
【0022】
アクチュエータ122は、ドライバ121が提供した駆動力をシリンジ20へ伝達する。アクチュエータ122がシリンジ20と連結された上でドライバ121が駆動すると、シリンジ20の押し子22に荷重が加えられる(
図2参照)。このような荷重の印加に応じて、押し子22は、シリンジ20のリザーバ21の長手方向に移動する。
図2の例において、アクチュエータ122は、固定部材1221,1222、及び、可動部1223を備える。固定部材1221,1222は、後述するシリンジ20の羽根部23を固定する部材である。可動部1223は、シリンジ20の押し子22の基端側(バルーンカテーテル30からより離れた側)が取り付けられ、ドライバ121の駆動に応じてシリンジ20の長手方向に移動する。
【0023】
シリンジ20は、リザーバ21及び押し子22を備える。リザーバ21は、カテーテル31内を加圧又は減圧するための媒体である流体を貯蔵する。リザーバ21に充填される流体は、例えば、造影剤を含む液体である。造影剤を含む流体を用いることで、X線撮影装置50が撮影した医療画像の表示を併用した経皮的冠動脈インターベンションにおいて、ユーザは、撮影画像におけるバルーンカテーテル30の位置及び形状を確認しながら施術を行うことができる。また、後述するように、施術中にバルーン32が破裂した場合、インデフレーションシステム1は、医療画像における造影剤の広がりにより、バルーン32の異常を認識することができる。押し子22は、流体が充填されたリザーバ21内に設けられ、リザーバ21の長手方向に移動して流体を移動させることが可能である。シリンジ20にバルーンカテーテル30が取り付けられると、リザーバ21及びバルーンカテーテル30の内部は連通する。羽根部23は、リザーバ21の外周に設けられた突起である。シリンジ20が装置本体100の収容部に収容されると、羽根部23は、固定部材1221,1222の間に固定される。これにより、リザーバ21の位置は、装置本体100に対して固定される。また、シリンジ20が装置本体100の収容部に収容されると、シリンジ20の押し子22の基端側は、シリンジ20の長手方向に移動可能な可動部1223に対して取り付けられる。したがって、ドライバ121は、可動部1223をリザーバ21に近づける方向へ移動させることで、リザーバ21内部を加圧することができる。ドライバ121は、可動部1223をリザーバ21から遠ざける方向へ移動させることで、リザーバ21内部を減圧することができる。
【0024】
本実施形態において、ポンプ12は、シリンジ20を用いたシリンジポンプであるが、ポンプ12の種類はこれに限られない。例えば、ポンプ12は、チューブポンプ、又は、シリンジポンプ以外のピストンポンプでもよい。
【0025】
圧力検出部としての圧力センサ13は、リザーバ21及びバルーンカテーテル30の内部における流体の圧力を測定する。
図2のように、圧力センサ13は、リザーバ21内に設けられてもよいが、バルーンカテーテル30等の他の部材に設けられてもよい。リザーバ21及びバルーンカテーテル30の内部は連通するため、リザーバ21内の圧力は、バルーンカテーテル30内の圧力と同一である。圧力センサ13が測定したバルーンカテーテル30内の圧力の測定値は制御部11へ出力される。圧力センサ13は、ダイヤフラム(例えば、ステンレスダイヤフラム、又は、シリコンダイヤフラム等)を介して、圧力を感圧素子で計測し、電気信号に変換し、圧力を示す電気信号を制御部11へ出力する。
【0026】
入力部14は、ユーザの入力操作を受け付けて、ユーザの操作に基づく入力情報を取得する1つ以上の入力インターフェースを含む。本実施形態において入力部14は、複数のボタン又はスイッチにより構成されるが、出力部15のディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーンとしてもよい。あるいは、入力部14は、物理キー、静電容量キー、ポインティングディバイス、又は音声入力を受け付けるマイク等でもよいが、これらに限定されない。
【0027】
出力部15は、ユーザに対して情報を出力し、ユーザに通知する1つ以上の出力インターフェースを含む。例えば、出力部15は、情報を画像として出力するディスプレイ(表示部)であるが、音声を出力するスピーカ等を更に備えてもよい。出力部15は、例えば、X線撮影装置50が撮影した医療画像を表示してもよい。このようなディスプレイは、例えば、液晶パネルディスプレイ又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等としてもよい。上述の入力部14及び出力部15の少なくとも一方は、インデフレーション装置10と一体に構成されてもよいし、別体として設けられてもよい。
【0028】
記憶部16は、SSD(Solid State Drive)、HDD(Hard Disk Drive)、ROM(Read-Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)等の任意の記憶モジュールを含む。記憶部16は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してもよい。記憶部16は、インデフレーション装置10の動作に用いられる任意の情報を記憶する。例えば、記憶部16は、システムプログラム、及び、アプリケーションプログラムの他、バルーンカテーテル30内の圧力を制御するために用いる各種情報を記憶してもよい。記憶部16は、X線撮影装置50が撮影した医療画像を記憶してもよい。記憶部16は、インデフレーション装置10に内蔵されているものに限定されず、外付けのデータベース又は外付け型の記憶モジュール(例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリ等)であってもよい。
【0029】
電源17は、インデフレーション装置10の動力源となる電力を供給する。本実施形態では、外部の商用電源から定常的な交流電流(AC)の供給を受け、インデフレーション装置10内で使用する直流電流(DC)に変換するACアダプタにより構成されるが、これに限られない。例えば、電源17は、リチウムイオンバッテリ等のバッテリにより構成されてもよい。
【0030】
図3は、
図1のX線撮影装置50の外観の一例を示す図である。X線撮影装置50は、造影剤が投入された血管等の生体組織に対してX線(放射線)を照射し、生体組織を透過したX線を検知して造影画像(アンギオ画像、X線画像、又は放射線画像とも称される。)を医療画像として取得する。本実施形態では、バルーンカテーテル30の圧力を制御するための流体にも造影剤が含まれており、バルーンカテーテル30の形状等も医療画像に表れる。
図3に示すように、X線撮影装置50は、X線発生部51,53、X線カメラ52,54、アーム55,56、及び、検査台57を備える。このように、X線撮影装置50は、2組のX線発生部51,53及びX線カメラ52,54を備え、異なる角度から撮影された2つの造影画像を取得することができるが、X線撮影装置50は、1組のX線発生部及びX線カメラを備える構成としてもよい。また、インデフレーションシステム1は、X線撮影装置50に代えて、バルーン32の異常を検出可能な医療画像を撮影する任意の種類の撮影装置を備えてもよい。
【0031】
X線発生部51は、X線カメラ52へ向けてX線を照射する。X線カメラ52は、X線発生部51から照射されたX線を検出して、造影画像を生成する。アーム55は、X線発生部51及びX線カメラ52を保持する。アーム55は、X線発生部51から照射されたX線をX線カメラ52が受信できるようにX線発生部51及びX線カメラ52の相対的な位置関係を保ちながら、被験者である患者に対するX線発生部51及びX線カメラ52の位置及び方向を変動させることができる。
【0032】
X線発生部53は、X線カメラ54へ向けてX線を照射する。X線カメラ54は、X線発生部53から照射されたX線を検出して、造影画像を生成する。アーム56は、X線発生部53及びX線カメラ54を保持する。アーム56は、X線発生部53から照射されたX線をX線カメラ54が受信できるようにX線発生部53及びX線カメラ54の相対的な位置関係を保ちながら、患者に対するX線発生部53及びX線カメラ54の位置及び方向を変動させることができる。
【0033】
検査台57は、被験者である患者が横たわる台である。X線発生部51及びX線カメラ52と、X線発生部53及びX線カメラ54とは、それぞれ造影画像を取得するX線撮影部を構成する。X線撮影装置50は、X線カメラ52及びX線カメラ54において生成された造影画像を、医療画像として画像処理部60へ送信する。X線撮影装置50は、インデフレーションシステム1が起動している間、複数のフレームからなる動画像の造影画像を連続的にX線撮影装置50へ出力してもよい。
【0034】
画像処理部60は、X線撮影装置50から受信した医療画像に対して画像処理を行う。具体的には、画像処理部60は、医療画像を解析してバルーン32の異常の有無を検知するための処理を行う。画像処理部60は、X線撮影装置50から受信した医療画像及びその医療画像の解析結果等をインデフレーション装置10へ送信する。インデフレーション装置10は、医療画像及び解析結果等を出力部15の表示部に表示する。
【0035】
上記のような構成において、制御部11は、管腔内へ挿入され、ポンプ12により加圧されたバルーン32の医療画像を取得し、医療画像に基づき、バルーン32の異常の有無を検知する。バルーン32の異常は、例えば、バルーン32の破裂又はスリップ(位置ずれ)である。制御部11は、このようなバルーン32の異常が検知された場合に、バルーン32を減圧するようにポンプ12を制御する。このように、インデフレーションシステム1は、加圧中のバルーン32の医療画像に基づきバルーン32の異常が検知された場合にバルーン32を自動的に減圧するため、バルーン32に異常が生じた状態で加圧を継続して管腔内を損傷することを防ぐことが可能である。
【0036】
本実施形態において、インデフレーションシステム1は、インデフレーション装置10、バルーンカテーテル30、X線撮影装置50、及び、画像処理部60を備え、インデフレーション装置10は、制御部11、ポンプ12、圧力センサ13、入力部14、出力部15、記憶部16、及び、電源17を備えるが、このような構成に限られない。例えば、ポンプ12及び圧力センサ13を備えた構成を独立の装置として構成し、このような装置の動作を制御部11、入力部14、出力部15、及び、記憶部16を備えたPC(Personal Computer)等の汎用の情報処理装置により制御するようにしてもよい。あるいは、インデフレーション装置10が、X線撮影装置50、及び、画像処理部60の一部又は全部の構成を備えてもよい。また、制御部11は、画像処理部60が実行する処理を実行してもよい。
【0037】
また、
図2の例において、圧力センサ13はリザーバ21内に設けられているが、これに限らず、例えば、バルーンカテーテル30と一体として構成されてもよい。さらに、
図2の例において、シリンジ20は、装置本体100から着脱可能であるが、装置本体100に一体として構成されてもよい。
(動作例1)
バルーンカテーテル30の加圧開始後、バルーン32のスリップが生じた場合に、自動的にバルーン32を減圧させる動作について、
図4を参照して説明する。
図4は、インデフレーションシステム1の動作例を示すフローチャートである。
図4を参照して説明するインデフレーションシステム1の動作はインデフレーションシステム1の制御方法の一つに相当してもよい。
図4の各ステップの動作は、インデフレーションシステム1の制御部11による制御に基づき実行されてもよい。
【0038】
インデフレーションシステム1が
図4のフローチャートの処理を実行する前に、ユーザは、インデフレーションシステム1の使用準備を行う。具体的には、ユーザは、インデフレーション装置10を起動し、流体が充填されたシリンジ20を装置本体100に取り付ける。ユーザは、バルーンカテーテル30のチューブ等の必要な器具をシリンジ20に取り付け、バルーンカテーテル30内に空気が混入しないように、流体の流路から気泡を除去するプライミング操作を行う。プライミング操作の完了後、ユーザは、バルーンカテーテル30を患者の血管等の体管に挿入し、出力部15の表示部に表示された医療画像を見ながらバルーン32を病変部等の目標位置に到達させる。ユーザは、バルーンカテーテル30内の圧力の目標値(目標圧力値)等の必要な情報を入力した上で、インデフレーション装置10に対して加圧を指示する。インデフレーション装置10は、ユーザから加圧の指示を受けたことに応じて、ステップS1以降の処理を開始する。
【0039】
ステップS1において、制御部11は、バルーンカテーテル30の加圧を開始する。具体的には、制御部11は、ドライバ121に対して制御信号を送信し、リザーバ21内で押し子22がリザーバ21の先端側(バルーンカテーテル30が連結されている側)へ移動するように、ドライバ121を駆動させる。ドライバ121の駆動に応じて押し子22がリザーバ21の先端側へ移動すると、リザーバ21内に充填されている流体がバルーンカテーテル30内へ流入する。バルーンカテーテル30への流体の流入に応じて、バルーンカテーテル30内の圧力が高まり、バルーン32は拡張する。
【0040】
ステップS2において、制御部11は、医療画像におけるバルーン32の位置の監視を開始する。例えば、制御部11は、画像処理部60を制御して、X線撮影装置50により取得された医療画像において、予め機械学習により取得された学習モデルを用いてバルーン32の位置を認識してもよい。あるいは、制御部11は、画像処理部60を制御して、バルーン32に予め付されたマーカーによりバルーン32の位置を認識してもよい。制御部11は、バルーン32の初期位置を記憶部16に記憶させる。
【0041】
ステップS3において、制御部11は、バルーン32を収縮させるか否かを判定する。制御部11は、例えば、ユーザから処理終了の指示を受けたり、加圧を開始してから一定時間が経過したりした場合に、バルーン32を収縮させると判定してもよい。制御部11は、バルーン32を収縮させる場合(ステップS3でYES)はステップS6へ進み、そうでない場合(ステップS3でNO)はステップS4へ進む。制御部11は、ステップS3でバルーン32を収縮させると判定するまで、ステップS4の処理を予め定められた時間間隔(サイクル)で繰り返す。
【0042】
ステップS4において、制御部11は、バルーン32が初期位置から移動したか否かを判定する。具体的には、制御部11は、画像処理部60から、現在のバルーン32の位置を取得する。制御部11は、現在のバルーン32の位置と、記憶部16に記憶されたバルーン32の初期位置との距離が予め定められた閾値よりも大きい場合に、バルーン32が初期位置から移動したと判定してもよい。制御部11は、バルーン32が初期位置から移動した場合(ステップS4でYES)はステップS5へ進み、そうでない場合(ステップS4でNO)はステップS3に戻る。
【0043】
バルーン32が初期位置から移動した場合、バルーン32にはスリップ(位置ずれ)が生じている。このまま加圧を継続すると、病変部からずれたバルーン32が正常な血管を拡張してしまい、血管かい離等の損傷を生じさせる可能性がある。そこで、制御部11は、ステップ5以降において、ユーザに警告するとともに、バルーン32を収縮させる。
【0044】
ステップS5において、制御部11は、バルーン32のスリップが生じたことを示すアラート(警告)を出力部15の表示部に表示する。さらに、制御部11は、出力部15のスピーカからアラーム音を出力してもよい。
【0045】
ステップS6において、制御部11は、バルーンカテーテル30を減圧して、バルーン32を収縮させる。具体的には、制御部11は、ドライバ121に対して制御信号を送信し、リザーバ21内で押し子22がリザーバ21の基端側(バルーンカテーテル30が連結されていない側)へ移動するように、ドライバ121を駆動させる。ドライバ121の駆動に応じて押し子22がリザーバ21の基端側へ移動すると、バルーンカテーテル30内の流体がリザーバ21へ流出する。バルーンカテーテル30からの流体の流出に応じて、バルーンカテーテル30内の圧力が下がり、バルーン32は収縮する。なお、制御部11は、ステップS6の減圧によるバルーン32の収縮を行った後に、ステップS5のアラート表示を行ってもよい。
【0046】
ステップS7において、制御部11は、医療画像におけるバルーン32の位置の監視を終了する。ステップS7の処理を終えると、制御部11は、
図4のフローチャートの処理を終了する。
【0047】
このように、動作例1において、インデフレーションシステム1は、画像処理部60により、X線撮影装置50で撮影された拡張中のバルーン32の移動を監視する。インデフレーションシステム1は、拡張中のバルーン32の移動を検知した場合、ドライバ121に命令を送り、バルーン32を収縮する。したがって、インデフレーションシステム1によれば、バルーン32のスリップが生じたにもかかわらず加圧を継続することで血管等の体管を損傷することを防ぐことができる。
【0048】
(動作例2)
バルーンカテーテル30の加圧開始後、バルーン32の破裂が生じた場合に、自動的にバルーン32を減圧させる動作について、
図5及び
図6を参照して説明する。
【0049】
図5は、医療画像の一例を示す図である。医療画像81には、血管の領域82が示されている。血管の領域82は、血流に造影剤を流すことで他の領域と区別して医療画像81上に表示される。
図5の例では、血管の領域82上に狭窄部84が生じている。狭窄部84は、医療画像81における血管の領域82の幅83が狭まっている部分である。インデフレーションシステム1は、このような狭窄部84にバルーン32が位置づけられた上で、加圧開始後、狭窄部84の下流側の領域85を関心領域として監視する。ここで、
図5では、方向Dは、血流の方向を示す。
【0050】
バルーン32に許容量以上の流体が注入されて圧力が過剰に上昇したり、バルーン32に不慮の傷が存在したり、あるいは、又は外部環境からの刺激が加えられたりすること等によって、バルーン32が破損してしまうことがある。このような場合、即座にバルーン32への加圧を停止し、減圧をすることが望ましい。バルーン32が破裂すると、狭窄部84の下流に造影剤が流出し、領域85の輝度分布が変化する。そこで、インデフレーションシステム1は、領域85の輝度分布が予め定められた閾値を超えて変化した場合に、バルーン32の破裂等の異常があったと判定し、バルーン32を減圧する。
【0051】
図6は、インデフレーションシステム1の動作例を示すフローチャートである。
図6を参照して説明するインデフレーションシステム1の動作はインデフレーションシステム1の制御方法の一つに相当してもよい。
図6の各ステップの動作は、インデフレーションシステム1の制御部11による制御に基づき実行されてもよい。
【0052】
インデフレーションシステム1が
図6のフローチャートの処理を実行する前に、ユーザは、バルーン32を狭窄部84等の目標位置に配置する等の、インデフレーションシステム1の使用準備を行う。使用準備の詳細は、前述の動作例1と同様である。
【0053】
ステップS11において、制御部11は、画像処理部60を制御して医療画像における狭窄部を取得する。具体的には、
図5を参照して説明したように、画像処理部60は、医療画像81の輝度に基づき血管の領域82を特定し、血管の幅83が予め定められた閾値よりも小さい部分を狭窄部84として判定してもよい。あるいは、画像処理部60は、医療画像におけるバルーン32の位置を狭窄部の位置として取得してもよい。例えば、画像処理部60は、
図3のステップS2同様に、予め取得された学習モデル、又は、バルーン32に付されたマーカー等を用いてバルーン32の位置を認識してもよい。画像処理部60は、取得した狭窄部84を制御部11へ通知する。
【0054】
ステップS12において、制御部11は、画像処理部60を制御して医療画像において関心領域を特定する。関心領域は、画像処理部60が輝度分布に基づきバルーン32の異常を判定するための領域である。
図5を参照して説明したように、画像処理部60は、狭窄部84の下流側の一定の領域85を関心領域として特定してもよい。あるいは、画像処理部60は、狭窄部84を含む一定の領域を関心領域として特定してもよい。例えば、画像処理部60は、狭窄部84を中心とする、四角形又は円形の領域を関心領域としてもよい。画像処理部60は、特定した関心領域を制御部11へ通知する。制御部11は、特定された関心領域における医療画像を記憶部16に記憶してもよい。
【0055】
ステップS13において、制御部11は、バルーン32を加圧する。具体的には、制御部11は、ドライバ121に対して制御信号を送信し、リザーバ21内で押し子22がリザーバ21の先端側(バルーンカテーテル30が連結されている側)へ移動するように、ドライバ121を駆動させる。ドライバ121の駆動に応じて押し子22がリザーバ21の先端側へ移動すると、リザーバ21内に充填されている流体がバルーンカテーテル30内へ流入する。バルーンカテーテル30への流体の流入に応じて、バルーンカテーテル30内の圧力が高まり、バルーン32は拡張する。
【0056】
ステップS14において、制御部11は、ステップS12で特定した関心領域において輝度分布に変化があったか否かを判定する。具体的には、制御部11は、関心領域における現在の医療画像と、ステップS12で記憶部16に記憶した医療画像との、輝度に関する差分画像を取得してもよい。制御部11と、この差分画像の各画素の輝度値の合計値が予め定められた閾値を超えた場合に、輝度分布に変化があったと判定してもよい。制御部11は、関心領域において輝度分布に変化があった場合(ステップS14でYES)はステップS20へ進み、そうでない場合(ステップS14でNO)はステップS15へ進む。
【0057】
ステップS15において、制御部11は、圧力センサ13により計測されたバルーンカテーテル30内の圧力が目標圧力に到達したか否かを判定する。具体的には、制御部11は、バルーンカテーテル30内の圧力が目標値に到達した場合(ステップS15でYES)はステップS16へ進み、そうでない場合(ステップS15でNO)はステップS13へ戻る。制御部11は、ステップS15でバルーン32が目標圧力に到達したと判定するまで、ステップS13及びステップS14の処理を予め定められた時間間隔(サイクル)で繰り返す。
【0058】
ステップS16において、制御部11は、バルーンカテーテル30内の圧力を目標圧力で維持するように、ドライバ121を制御する。ステップS16~ステップS18において、制御部11は、所定時間だけバルーンカテーテル30内の圧力を目標圧力で維持する処理を行う。目標圧力を維持する所定時間は、例えば、ユーザにより指示された時間、又は、インデフレーションシステム1に予め設定されたデフォルト値の時間でもよい。
【0059】
ステップS17において、制御部11は、ステップS12で特定した関心領域において輝度分布に変化があったか否かを判定する。制御部11は、ステップS17の処理を、ステップS14と同様に行うことができる。制御部11は、関心領域において輝度分布に変化があった場合(ステップS17でYES)はステップS20へ進み、そうでない場合(ステップS17でNO)はステップS18へ進む。
【0060】
ステップS18において、制御部11は、バルーンカテーテル30内の圧力が目標圧力に到達してから前述の所定時間が経過したか否かを判定する。制御部11は、所定時間が経過した場合(ステップS18でYES)はステップS19へ進み、そうでない場合(ステップS18でNO)はステップS16へ戻る。制御部11は、ステップS18で所定時間が経過したと判定するまで、ステップS16及びステップS17の処理を予め定められた時間間隔(サイクル)で繰り返す。
【0061】
ステップS19において、制御部11は、バルーン32を減圧する。具体的には、制御部11は、ドライバ121に対して制御信号を送信し、リザーバ21内で押し子22がリザーバ21の基端側へ移動するように、ドライバ121を駆動させる。ドライバ121の駆動に応じて押し子22がリザーバ21の基端側へ移動すると、バルーンカテーテル30内の流体がリザーバ21へ流出する。バルーンカテーテル30からの流体の流出に応じて、バルーンカテーテル30内の圧力が下がり、バルーン32は収縮する。ステップS19の処理を終えると、制御部11は、
図6のフローチャートの処理を終了する。
【0062】
ステップS20において、制御部11は、バルーン32を減圧する。ステップS20の処理は、ステップS19と同様に行うことができる。
【0063】
ステップS21において、制御部11は、バルーン32の破裂が生じたことを示すアラート(警告)を出力部15の表示部に表示する。さらに、制御部11は、出力部15のスピーカからアラーム音を出力してもよい。なお、制御部11は、ステップS21のアラート表示を行った後に、ステップS20の減圧によるバルーン32の収縮を行ってもよい。ステップS21の処理を終えると、制御部11は、
図6のフローチャートの処理を終了する。
【0064】
このように、動作例2において、インデフレーションシステム1は、画像処理部60により、X線撮影装置50で撮影された拡張中のバルーン32の周辺(例えば、バルーン32の下流側の領域)の輝度を監視する。インデフレーションシステム1は、輝度分布の変化を検知した場合、ドライバ121に命令を送り、バルーン32を収縮する。したがって、インデフレーションシステム1によれば、バルーン32の破損が生じたにもかかわらず加圧を継続することで流体を血管等に送り出すことを防ぐことができる。
【0065】
以上のように、インデフレーションシステム1は、遠位部にバルーン32が設けられたカテーテル31内を加圧又は減圧するポンプ12の動作を制御する制御部11を備える。制御部11は、管腔内へ挿入されたカテーテル31の遠位部に設けられ、ポンプ12により加圧されたバルーン32の医療画像を取得する。制御部11は、加圧されたバルーン32の医療画像に基づき、バルーン32の異常の有無を検知し、バルーン32の異常が検知された場合に、バルーン32を減圧するようにポンプ12を制御する。
【0066】
このように、インデフレーションシステム1は、加圧中のバルーン32の医療画像に基づきバルーン32の異常が検知された場合にバルーン32を減圧するため、管腔内の損傷を防ぐことが可能である。
【0067】
なお、制御部11は、ポンプ12により加圧される前のバルーン32の医療画像を取得してもよい。制御部11は、加圧される前のバルーン32の医療画像と、加圧された後のバルーン32の医療画像と、に基づき、ポンプ12の加圧の前後でバルーン32の位置が予め定められた閾値を超えて変化したか否かを判定してもよい。制御部11は、ポンプ12の加圧の前後でバルーン32の位置が閾値を超えて変化したと判定された場合に、バルーン32の異常を検知してもよい。
【0068】
このように、インデフレーションシステム1は、ポンプ12の加圧の前後でバルーン32の位置の変化が判定された場合にバルーン32の異常を検出する。したがって、インデフレーションシステム1によれば、加圧に応じてバルーン32がスリップした場合にバルーン32を加圧し続けることによる管腔内の損傷を防ぐことが可能である。
【0069】
また、制御部11は、造影剤を含む流体をカテーテル31内で移動させることによりカテーテル31内を加圧又は減圧するポンプ12の動作を制御してもよい。制御部11は、加圧されたバルーン32の医療画像の輝度分布が予め定められた閾値を超えて変化した場合に、バルーン32の異常を検知してもよい。
【0070】
このように、インデフレーションシステム1は、ポンプ12が造影剤を含む流体の移動によりカテーテル31内を加圧又は減圧する場合において、医療画像の輝度分布の変化に基づきバルーン32の異常の有無を検知する。したがって、インデフレーションシステム1によれば、管腔内でバルーン32が破損したことを効果的に検出してバルーン32を減圧することが可能である。
【0071】
また、制御部11は、加圧されたバルーン32の医療画像において、バルーン32が位置する部分と、管腔におけるバルーン32の下流に位置する部分と、の少なくともいずれかを含む領域85を関心領域として特定してもよい。制御部11は、特定された関心領域における輝度分布の変化に基づき、バルーン32の異常の有無を検知してもよい。
【0072】
このように、インデフレーションシステム1は、バルーン32が位置する部分と管腔におけるバルーン32の下流に位置する部分との少なくともいずれかを含む関心領域における輝度分布の変化に基づきバルーン32の異常の有無を検知する。したがって、インデフレーションシステム1によれば、管腔内でバルーン32が破損したことを更に効果的に検出することが可能である。
【0073】
さらに、制御部11は、加圧されたバルーン32の医療画像を解析してバルーン32の径を測定してもよい。制御部11は、バルーン32が加圧されている場合において、そのバルーン32について測定された径が予め定められた閾値を超えて変化せず、又は、予め定められた閾値を超えて減少したときは、バルーン32の異常を検知してもよい。
【0074】
このように、加圧しているにもかかわらずバルーン32の径が変化せず、又は、減少した場合は、管腔内でバルーン32が破損している可能性が高い。そこで、インデフレーションシステム1は、バルーン32の径に着目することで、バルーン32の異常を効果的に検出してバルーン32を減圧することが可能である。
【0075】
さらに、制御部11は、医療画像だけでなく、圧力センサ13が検出したバルーンカテーテル30内の圧力を参照して、バルーン32の異常を検知してもよい。
【0076】
具体的には、例えば、制御部11は、バルーン32内の圧力を取得し、バルーン32が加圧されている場合においてそのバルーン32について取得された圧力の変化率が予め定められた基準よりも小さく、又は、そのバルーン32について取得された圧力が予め定められた基準を超えて減少したときは、予め定められた閾値としてより小さな値を用いてバルーン32の異常を検知してもよい。このように、加圧中にもかかわらずバルーン32内の圧力の変化率が小さいか、圧力が減少しているときは、バルーン32にピンホール(小さい穴)の破損が存在する可能性がある。そのような場合、インデフレーションシステム1は、より小さな閾値を用いてバルーン32における異常の検知感度を高めることで、バルーン32の異常を効果的に検出してバルーン32を減圧することが可能である。
【0077】
あるいは、狭窄部84を一定圧で拡張中のバルーン32がスリップした場合、バルーン32が正常血管へ移動するため、拘束が解放され、バルーン32の内部の圧力低下が発生する。狭窄部84を一定圧で拡張中のバルーン32が破裂した場合も、圧力が低下する。そこで、インデフレーションシステム1は、このような意図しない圧力低下を検出した場合、バルーン32に異常があったと判定して、バルーン32を収縮してもよい。インデフレーションシステム1は、このような処理を行うことで、正常な血管への損傷を防ぐことができる。
【0078】
本開示は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、ブロック図に記載の複数のブロックは統合されてもよいし、又は一つのブロックは分割されてもよい。フローチャートに記載の複数のステップは、記述に従って時系列に実行する代わりに、各ステップを実行する装置の処理能力に応じて、又は必要に応じて、並列的に又は異なる順序で実行されてもよい。その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲での変更が可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 インデフレーションシステム
10 インデフレーション装置
11 制御部
12 ポンプ
121 ドライバ
122 アクチュエータ
1221 固定部材
1222 固定部材
1223 可動部
123 力センサ
13 圧力センサ
14 入力部
15 出力部
16 記憶部
17 電源部
20 シリンジ
21 リザーバ
22 押し子
23 羽根部
30 バルーンカテーテル
31 カテーテル
32 バルーン
50 X線撮影装置
51 X線発生部
52 X線カメラ
53 X線発生部
54 X線カメラ
55 アーム
56 アーム
57 検査台
60 画像処理部
81 医療画像
82 領域
83 幅
84 狭窄部
85 領域
100 装置本体