(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122795
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】燃料電池装置
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04694 20160101AFI20240902BHJP
H01M 8/0606 20160101ALI20240902BHJP
H01M 8/04228 20160101ALI20240902BHJP
H01M 8/04303 20160101ALI20240902BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20240902BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20240902BHJP
H01M 8/04791 20160101ALI20240902BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20240902BHJP
【FI】
H01M8/04694
H01M8/0606
H01M8/04228
H01M8/04303
H01M8/04746
H01M8/0432
H01M8/04791
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030553
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 伸
(72)【発明者】
【氏名】山内 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】藏本 将也
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA07
5H127BA02
5H127BA05
5H127BA12
5H127BA13
5H127BA34
5H127BA57
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB19
5H127BB37
5H127DA11
5H127DB79
5H127DC82
5H127DC83
(57)【要約】
【課題】停止時間を短縮する。
【解決手段】燃料電池装置10は改質器11と燃料電池12と燃焼部13と制御装置14とを有する。改質器11は原燃料及び水を水蒸気改質することにより燃料ガスを生成する。燃料電池セル12は燃料ガス及び酸素含有ガスを用いて発電する。燃焼部13は燃料電池セル12において未反応の燃料ガスを燃焼させた熱を用いて改質器11を加熱可能である。制御装置14は停止モードにおいて原燃料及び水の供給を維持しながら失火制御を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原燃料及び水を水蒸気改質することにより燃料ガスを生成する改質器と、
前記燃料ガス及び酸素含有ガスを用いて発電する燃料電池セルと、
前記燃料電池セルにおいて未反応の前記燃料ガスを燃焼させた熱を用いて前記改質器を加熱可能な燃焼部と、
前記改質器、前記燃料電池セル、及び前記燃焼部の運転停止状態へ切替える停止モードにおいて、前記原燃料及び前記水の供給を維持しながら、前記燃焼部を失火させる失火制御を行う制御装置と、を備える
燃料電池装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記失火制御において、前記原燃料の供給量を、前記燃焼部の再着火を抑制可能な量に低減させる
請求項1に記載の燃料電池装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記燃焼部の失火後に、前記停止モードの開始時点の前記原燃料の供給量を上限として、前記原燃料の供給量を増加させる
請求項2に記載の燃料電池装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記燃焼部の温度が所定の温度以下に低下した後に前記原燃料の供給量を増加させる
請求項3に記載の燃料電池装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記停止モードにおいて、前記改質器に供給する水に対する前記原燃料の比であるS/Cを前記停止モードの開始以前より上昇させる
請求項1から4のいずれか1項に記載の燃料電池装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池装置は一般的に高温で運転されている。運転を停止させる場合にも、安定的な停止状態に遷移させるのに時間がかかる。運転状態から安定的な停止状態に遷移させるまでの停止時間の短縮化が望まれており、短縮化のための運転停止方法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明以外の方法によっても、停止時間の短縮化が求められている。
【0005】
かかる点に鑑みてなされた本開示の目的は、本開示の構成を用いない構成に比べて停止時間を短縮化することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した諸課題を解決すべく、第1の観点による燃料電池装置は、
原燃料及び水を水蒸気改質することにより燃料ガスを生成する改質器と、
前記燃料ガス及び酸素含有ガスを用いて発電する燃料電池セルと、
前記燃料電池セルにおいて未反応の前記燃料ガスを燃焼させた熱を用いて前記改質器を加熱可能な燃焼部と、
前記改質器、前記燃料電池セル、及び前記燃焼部の運転停止状態へ切替える停止モードにおいて、前記原燃料及び前記水の供給を維持しながら、前記燃焼部を失火させる失火制御を行う制御装置と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、燃料電池装置の停止時間が短縮化される
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る燃料電池装置の概略構成を示す構成図である。
【
図2】
図1の制御部が実行する停止処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。以下の図面に示す構成要素において、同じ構成要素には同じ符号を付す。
【0010】
図1に示すように、本開示の一実施形態に係る燃料電池装置10は、改質器11、燃料電池セル12、燃焼部13、及び制御装置14を含んで構成される。燃料電池装置10は、更に、温度センサ15、第1の調整機構16、第2の調整機構17、及び第3の調整機構18を含んで構成されてよい。
【0011】
改質器11は、原燃料及び水を用いて水蒸気改質することにより燃料ガスを生成する。原燃料は、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン等の軽質炭化水素である。水は、液状の改質水として改質器11に供給され、改質器11に設けられる気化部において水蒸気に気化されてよい。燃料ガスは、例えば、水素ガスを含む。
【0012】
燃料電池セル12は、固体酸化物形燃料電池セルであってよい。燃料電池セル12は複数であってよい。複数の燃料電池セル12は、セルスタックを構成してよい。燃料電池セル12は、改質器11が生成した燃料ガス、及び空気等の酸素含有ガスを用いて、電気化学反応により発電する。
【0013】
燃焼部13は、燃料電池セル12における未反応の燃料ガスを、未反応の酸素含有ガスを用いて燃焼させる。燃焼部13は、当該未反応燃料ガスを燃焼させた熱を用いて改質器11を加熱可能である。燃焼部13は、例えば、燃料電池装置10の設計上の設置姿勢において、改質器11の鉛直下方に位置してよい。燃焼部13は、改質器11を加熱することにより、改質器11におkける水蒸気改質反応を行わせるエネルギーを付与してよい。
【0014】
温度センサ15は、周囲温度を検出してよい。温度センサ15は、改質器11、燃料電池セル12、及び燃焼部13の少なくとも1つに設けられてよい。具体的には、温度センサ15は、燃焼部13に設けられる。温度センサ15は、例えば、熱電対である。
【0015】
第1の調整機構16は、原燃料の改質器11への供給量を調整してよい。第1の調整機構16は、制御装置14の制御に基づいて、供給量を調整してよい。第1の調整機構16は、例えば、デューティー比を変更可能なポンプであってよい。
【0016】
第2の調整機構17は、水の改質器11への供給量を調整してよい。第2の調整機構17は、制御装置14の制御に基づいて、供給量を調整してよい。第2の調整機構17は、例えば、デューティー比を変更可能なポンプであってよい。
【0017】
第3の調整機構18は、酸素含有ガスの燃料電池セル12への供給量を調整してよい。第3の調整機構18は、制御装置14の制御に基づいて、供給量を調整してよい。第3の調整機構18は、例えば、デューティー比を変更可能なブロワであってよい。
【0018】
制御装置14は、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つの専用回路又はこれらの組み合わせを含んで構成される。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等の汎用プロセッサ又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。専用回路は、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等であってもよい。
【0019】
制御装置14は、燃料電池装置10の動作を制御してよい。例えば、制御装置14は、停止モードにおいて、以下に説明するように、改質器11、燃料電池セル12、及び燃焼部13の運転停止状態への切替えを行う。
【0020】
制御装置14は、停止モードにおいて、原燃料及び水の供給を維持しながら、失火制御を行う。失火制御は、燃焼部13を意図的に失火させるための燃料電池装置10の各部の制御である。例えば、失火制御は、未反応の燃料ガスの燃焼部13への供給量の低減、及び酸素含有ガスの燃焼部13への供給量の増加の少なくとも一方であってよい。失火させるための未反応の燃料ガスの供給量、酸素含有ガスの供給量、及びその組合せは、燃焼部13の設計により定められてよい。失火させるための未反応の燃料ガスの供給量は、燃焼部13における再着火を抑制可能な量であってよい。制御装置14は、失火制御において、燃焼部13を失火させる燃料ガスの供給量となるように、原燃料ガスの供給量を調節してよい。
【0021】
制御装置14は、燃焼部13の失火後に、上限値以下の範囲で原燃料の供給量を増加させてよい。上限値は、停止モードの開始時点の原燃料の供給量であってよい。制御装置14は、温度センサ15が検出する温度に基づいて燃焼部13が失火していると判別してよい。制御装置14は、例えば、温度センサ15が検出する温度が所定の温度以下である場合に、燃焼部13が失火していると判別してよい。所定の温度は、例えば、燃料ガス、言換えると水素の発火点である。又は、制御装置14は、例えば、温度センサ15が検出する温度の時間変化の傾きが不連続となる場合に、燃焼部13が失火していると判別してよい。
【0022】
制御装置14は、停止モード中の改質器11におけるS/Cが、停止モードの開始以前のS/Cより上昇させてよい。S/Cは、改質器11に供給する原燃料中の炭素のモル数に対する水蒸気化させた水のモル数の比である。
【0023】
制御装置14は、温度センサ15が検出する温度が閾値以下に降下する場合、原燃料及び水の改質器11への供給を停止してよい。閾値は、温度センサ15が燃焼部13に設けられている構成においては、例えば、200℃から300℃の間で任意に定められてよい。
【0024】
次に、本実施形態において制御装置14が実行する停止処理について、
図2のフローチャートを用いて説明する。停止処理は、例えば、燃料電池装置10の動作モードが停止モードに切替えられる場合に開始する。
【0025】
ステップS100において、制御装置14は、失火制御を開始する。前述のように、失火制御において、原燃料の供給量の低減、及び酸素含有ガスの供給量の増加の少なくとも一方が行われる。失火制御の開始後、プロセスはステップS101に進む。
【0026】
ステップS101では、制御装置14は、失火しているか否かを判別する。前述のように、制御装置14は、温度センサ15が検出する温度に基づいて失火の判別を行う。失火していない場合、プロセスはステップS101に戻る。失火している場合、プロセスはステップS102に進む。
【0027】
ステップS102では、制御装置14は原燃料の供給量を増加させるように、第1の調整機構16を制御する。供給量の増加後、プロセスはステップS103に進む。
【0028】
ステップS103では、制御装置14は、温度センサ15が検出する温度が閾値以下であるか否かを判別する。閾値以下でない場合、プロセスはステップS103に戻る。閾値以下である場合、プロセスはステップS104に進む。
【0029】
ステップS104では、制御装置14は、原燃料及び水の供給を停止するように第1の調整機構16及び第2の調整機構17を制御する。原燃料及び水の供給停止後、停止処理は終了する。
【0030】
以上のような構成の本実施形態の燃料電池装置10は、改質器11、燃料電池セル12、及び燃焼部13の運転停止状態へ切替える停止モードにおいて、原燃料及び水の供給を維持しながら、燃焼部13を失火させる失火制御を行う。このような構成により、燃料電池装置10は、失火制御を行うので、停止モード切替後の失火までにかかる時間を短縮し得る。それゆえ、燃料電池装置10は、安定的な停止状態、言換えると冷却された停止状態に到達するまでの停止時間を短縮し得る。又、上述の構成により、燃料電池装置10は、失火制御中に原燃料及び水の供給を維持するので、酸素含有ガスのみが燃料電池セル12に供給することが防がれる。したがって、燃料電池装置10は、失火制御を行いながらも、燃料電池セル12の酸化を抑制し得る。
【0031】
又、燃料電池装置10は、失火制御において、原燃料の供給量を燃焼部13の再着火を抑制可能な量に低減させる。このような構成により、燃料電池装置10は、燃焼部13の再着火による再加熱を防止するので、停止時間短縮の確実性を向上させる。
【0032】
又、燃料電池装置10は、燃焼部13の失火後に停止モードの開始時点の原燃料の供給量を上限として、原燃料の供給量を増加させる。このような構成により、燃料電池装置10は、失火後に燃料ガスの燃料電池セル12への供給量を増加することにより、燃料電池セル12の酸化を更に抑制し得る。
【0033】
又、燃料電池装置10は、停止モードにおいてS/Cを停止モードの開始以前より上昇させる。このような構成により、燃料電池装置10は、改質器11における炭素析出の可能性を低減し得る。
【0034】
一実施形態において、(1)燃料電池装置は、
原燃料及び水を水蒸気改質することにより燃料ガスを生成する改質器と、
前記燃料ガス及び酸素含有ガスを用いて発電する燃料電池セルと、
前記燃料電池セルにおいて未反応の前記燃料ガスを燃焼させた熱を用いて前記改質器を加熱可能な燃焼部と、
前記改質器、前記燃料電池セル、及び前記燃焼部の運転停止状態へ切替える停止モードにおいて、前記原燃料及び前記水の供給を維持しながら、前記燃焼部を失火させる失火制御を行う制御装置と、を備える。
【0035】
(2)上記(1)の燃料電池装置では、
前記制御装置は、前記失火制御において、前記原燃料の供給量を、前記燃焼部の再着火を抑制可能な量に低減させる。
【0036】
(3)上記(2)の燃料電池装置では、
前記制御装置は、前記燃焼部の失火後に、前記停止モードの開始時点の前記原燃料の供給量を上限として、前記原燃料の供給量を増加させる
【0037】
(4)上記(3)の燃料電池装置では、
前記制御装置は、前記燃料部の温度が所定の温度以下に低下した後に前記原燃料の供給量を増加させる。
【0038】
(5)上記(1)乃至(4)の燃料電池装置では、
前記制御装置は、前記停止モードにおいて、前記改質器に供給する水に対する前記原燃料の比であるS/Cを前記停止モードの開始以前より上昇させる。
【0039】
以上、燃料電池装置10の実施形態を説明してきたが、本開示の実施形態としては、装置を実施するための方法又はプログラムの他、プログラムが記録された記憶媒体(一例として、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、CD-RW、磁気テープ、ハードディスク、又はメモリカード等)としての実施態様をとることも可能である。
【0040】
又、プログラムの実装形態としては、コンパイラによってコンパイルされるオブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラムコード等のアプリケーションプログラムに限定されることはなく、オペレーティングシステムに組み込まれるプログラムモジュール等の形態であってもよい。さらに、プログラムは、制御基板上のCPUにおいてのみ全ての処理が実施されるように構成されてもされなくてもよい。プログラムは、必要に応じて基板に付加された拡張ボード又は拡張ユニットに実装された別の処理ユニットによってその一部又は全部が実施されるように構成されてもよい。
【0041】
本開示に係る実施形態について説明する図は模式的なものである。図面上の寸法比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。
【0042】
本開示に係る実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は改変を行うことが可能であることに注意されたい。従って、これらの変形又は改変は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0043】
本開示に記載された構成要件の全て、及び/又は、開示された全ての方法、又は、処理の全てのステップについては、これらの特徴が相互に排他的である組合せを除き、任意の組合せで組み合わせることができる。又、本開示に記載された特徴の各々は、明示的に否定されない限り、同一の目的、同等の目的、又は類似する目的のために働く代替の特徴に置換することができる。したがって、明示的に否定されない限り、開示された特徴の各々は、包括的な一連の同一、又は、均等となる特徴の一例にすぎない。
【0044】
さらに、本開示に係る実施形態は、上述した実施形態のいずれの具体的構成にも制限されるものではない。本開示に係る実施形態は、本開示に記載された全ての新規な特徴、又は、それらの組合せ、あるいは記載された全ての新規な方法、又は、処理のステップ、又は、それらの組合せに拡張することができる。
【0045】
本開示において「第1」及び「第2」等の記載は、当該構成を区別するための識別子である。本開示における「第1」及び「第2」等の記載で区別された構成は、当該構成における番号を交換することができる。例えば、第1の調整機構は、第2の調整機構と識別子である「第1」と「第2」とを交換することができる。識別子の交換は同時に行われる。識別子の交換後も当該構成は区別される。識別子は削除してよい。識別子を削除した構成は、符号で区別される。本開示における「第1」及び「第2」等の識別子の記載のみに基づいて、当該構成の順序の解釈、小さい番号の識別子が存在することの根拠に利用してはならない。
【符号の説明】
【0046】
10 燃料電池装置
11 改質器
12 燃料電池セル
13 燃焼部
14 制御装置
15 温度センサ
16 第1の調整機構
17 第2の調整機構
18 第3の調整機構