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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122798
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】燃料電池装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04746 20160101AFI20240902BHJP
   H01M 8/0606 20160101ALI20240902BHJP
   H01M 8/04225 20160101ALI20240902BHJP
   H01M 8/04302 20160101ALI20240902BHJP
   H01M 8/04701 20160101ALI20240902BHJP
   H01M 8/04694 20160101ALI20240902BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20240902BHJP
【FI】
H01M8/04746
H01M8/0606
H01M8/04225
H01M8/04302
H01M8/04701
H01M8/04694
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030556
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 伸
(72)【発明者】
【氏名】藏本 将也
(72)【発明者】
【氏名】山内 亨祐
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA07
5H127AC02
5H127AC04
5H127BA02
5H127BA05
5H127BA13
5H127BA34
5H127BA57
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB19
5H127BB37
5H127DA01
5H127DC02
5H127DC22
5H127DC82
5H127DC83
5H127DC84
(57)【要約】
【課題】起動時のCOの発生量を低減させる。
【解決手段】燃料電池装置10は改質器11と燃料電池セル12と燃焼部13と点火部14と制御装置15とを有する。燃焼部13は燃料電池セル12において未反応の燃料ガスを燃焼させた熱を用いて改質器11を加熱可能である。点火部14は燃焼部13に供給される燃料ガスに点火する。制御装置15は第1の工程と第2の工程とを含む起動処理を行う。第1の工程は点火部14を作動させる。第2の工程は第1のサブ工程を含む。第1のサブ工程は第1の工程に連続する。制御装置15は酸素含有ガスを第1の工程よりも第1のサブ工程において多くなるように燃料電池セル12に供給させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原燃料及び水を水蒸気改質することにより燃料ガスを生成する改質器と、
前記燃料ガス及び酸素含有ガスを用いて発電する燃料電池セルと、
前記燃料電池セルにおいて未反応の前記燃料ガスを燃焼させた熱を用いて前記改質器を加熱可能な燃焼部と、
前記燃焼部に供給される前記燃料ガスに点火する点火部と、
前記点火部を作動させる第1の工程と、前記第1の工程に連続する第1のサブ工程を含む第2の工程とを有する起動処理を行う制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記酸素含有ガスを、前記第1の工程よりも前記第1のサブ工程において多くなるように前記燃料電池セルに供給させる
燃料電池装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記起動処理における前記第1の工程以前に、前記改質器に水を供給させる
請求項1に記載の燃料電池装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記起動処理において、前記燃焼部の温度が複数回低下するように、前記点火部を制御する
請求項1又は2に記載の燃料電池装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記点火部の作動停止による前記燃焼部の温度低下が、複数回の前記燃焼部の温度低下の最後の温度低下となるように、前記点火部を制御する
請求項3に記載の燃料電池装置。
【請求項5】
前記第2の工程は、前記第1のサブ工程に連続する第2のサブ工程を含み、
前記制御装置は、前記酸素含有ガスを前記第2のサブ工程よりも前記第1のサブ工程において多くなるように前記燃料電池セルに供給させ、前記改質器及び前記燃料電池セルへの空燃比を前記第2のサブ工程より前記第1のサブ工程において大きくなるように前記原燃料及び前記酸素含有ガスを供給させる
請求項1又は2に記載の燃料電池装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記空燃比を、前記第1の工程より前記第2のサブ工程において大きくなるように前記原燃料及び前記酸素含有ガスを供給させる
請求項5に記載の燃料電池装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物形燃料電池では、水蒸気改質により原燃料から燃料電池セルに供給する燃料ガスを生成している。水蒸気改質反応は吸熱反応であり、反応に必要な熱は燃料電池セルから排出されるオフガス及びオフガスに含まれる未反応ガスの燃焼により供給される。このような固体酸化物形燃料電池において、起動方法についての多様な考案が検討されている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4761259号公報
【特許文献2】特許第5500504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、起動中の一酸化炭素(CO)の発生量を低減することは検討されていなかった。
【0005】
かかる点に鑑みてなされた本開示の目的は、本発明の構成を用いない構成と比べ燃料電池装置の起動時のCOの発生量を低減するである
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した諸課題を解決すべく、第1の観点による燃料電池装置は、
原燃料及び水を水蒸気改質することにより燃料ガスを生成する改質器と、
前記燃料ガス及び酸素含有ガスを用いて発電する燃料電池セルと、
前記燃料電池セルにおいて未反応の前記燃料ガスを燃焼させた熱を用いて前記改質器を加熱可能な燃焼部と、
前記燃焼部に供給される前記燃料ガスに点火する点火部と、
前記点火部を作動させる第1の工程と、前記第1の工程に連続する第1のサブ工程を含む第2の工程とを有する起動処理を行う制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記酸素含有ガスを、前記第1の工程よりも前記第1のサブ工程において多くなるように前記燃料電池セルに供給させる
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、起動時のCOの発生量が低減する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る燃料電池装置の概略構成を示す構成図である。
図2図1の制御装置による燃焼部の温度を複数回低下させる制御による時間に対する温度の関係を示すグラフである。
図3図1の制御装置が実行する第1の起動処理を説明するためのフローチャートである。
図4図1の制御装置が実行する第2の起動処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。以下の図面に示す構成要素において、同じ構成要素には同じ符号を付す。
【0010】
図1に示すように、本開示の一実施形態に係る燃料電池装置10は、改質器11、燃料電池セル12、燃焼部13、点火部14、及び制御装置15を含んで構成される。燃料電池装置10は、更に、第1の温度センサ16、第2の温度センサ20、第1の調整機構17、第2の調整機構18、及び第3の調整機構19を含んで構成されてよい。
【0011】
改質器11は、原燃料及び水蒸気を用いて水蒸気改質することにより燃料ガスを生成する。原燃料は、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン等の軽質炭化水素である。水蒸気は、液状の改質水として改質器11に供給され、改質器11に設けられる気化部において水蒸気に気化されてよい。燃料ガスは、例えば、水素ガスを含む。
【0012】
燃料電池セル12は、固体酸化物形燃料電池セルであってよい。燃料電池セル12は複数であってよい。複数の燃料電池セル12は、セルスタックを構成してよい。燃料電池セル12は、改質器11が生成した燃料ガス、及び空気等の酸素含有ガスを用いて、電気化学反応により発電する。
【0013】
燃焼部13は、燃料電池セル12における未反応燃料ガスを、未反応の酸素含有ガスを用いて燃焼させる。燃焼部13は、当該未反応燃料ガスを燃焼させた熱を用いて改質器11を加熱可能である。燃焼部13は、例えば、燃料電池装置10の設計上の設置姿勢において、改質器11の鉛直下方に位置してよい。燃焼部13は、改質器11を加熱することにより、改質器11における水蒸気改質反応を行わせるエネルギーを付与してよい。
【0014】
点火部14は、燃焼部13に供給される未反応燃料ガスに点火する。点火部14は、燃焼部13近傍を加熱可能であってよい。点火部14は、例えば着火用のヒータである。
【0015】
第1の温度センサ16は、燃焼部13の温度を検出してよい。第2の温度センサ20は、燃料電池セル12の温度を検出してよい。第1の温度センサ16及び第2の温度センサ20は、例えば、熱電対である。
【0016】
第1の調整機構17は、酸素含有ガスの燃料電池セル12への供給量を調整してよい。第1の調整機構17は、例えば、デューティー比を変更可能なブロワであってよい。
【0017】
第2の調整機構18は、水の改質器11への供給量を調整してよい。第2の調整機構18は、例えば、デューティー比を変更可能なポンプであってよい。
【0018】
第3の調整機構19は、原燃料の改質器11への供給量を調整してよい。第3の調整機構19は、例えば、デューティー比を変更可能なポンプであってよい。
【0019】
制御装置15は、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つの専用回路又はこれらの組み合わせを含んで構成される。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等の汎用プロセッサ又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。専用回路は、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等であってもよい。
【0020】
制御装置15は、燃料電池装置10の動作を制御してよい。例えば、制御装置15は、燃料電池装置10を停止状態から発電可能状態に遷移させる起動処理を行う。
【0021】
制御装置15は、起動処理において、燃焼部13の温度が複数回低下するように点火部14を制御してよい。具体的には、制御装置15は、起動処理中の改質器11における水の蒸発気化の開始後に、点火部14を作動させるように制御することにより、燃焼部13の温度を複数回低下させてよい。より具体的には、制御装置15は、点火部14の作動停止による燃焼部13の温度低下が、複数回の燃焼部13の温度低下の最後の温度低下となるように、点火部14を制御してよい。例えば、制御装置15は、後述する第1のサブ工程中に、点火部14の作動を維持してよい。
【0022】
温度を複数回低下させる制御について、以下に説明する。起動処理においては、図2に示すように、水蒸気改質反応が安定的に進み且つ燃料電池セル12が安定的に発電可能となる安定化温度に燃焼部13の温度が昇温するように制御される。起動処理の開始後、燃焼部13の温度が上昇するものの、改質器11において水の蒸発器化が開始すると温度は低下する。水蒸気改質反応の開始後から安定化温度に昇温するまでの間に、連続的又は断続的に、点火部14が作動することにより、燃焼部13の温度が複数回低下し得る。
【0023】
起動処理の詳細が、以下に説明される。起動処理は、第1の工程及び第2の工程を含む。
【0024】
第1の工程は、制御装置15が点火部14を作動させる工程である。言換えると、第1の工程中において、制御装置15は、点火部14の作動状態を維持してよい。したがって、第1の工程中、点火部14は周囲に熱エネルギーの供給を維持する。
【0025】
又、制御装置15は、第1の工程において、第1の調整機構17が酸素含有ガスを燃料電池セル12に供給するように制御してよい。又、制御装置15は、第1の工程において、第3の調整機構19が原燃料を改質器11に供給するように制御してよい。制御装置15は、第1の工程において、空燃比が任意の設定値に一致するように、第1の調整機構17及び第3の調整機構19を制御してよい。空燃比は、本願明細書においては、改質器11への原燃料の供給量に対する燃料電池セル12への酸素含有ガスの供給量の比である。
【0026】
又、制御装置15は、第1の工程において、水の改質器11への供給の停止を継続するように第2の調整機構18を制御してよい。第1の工程における酸素含有ガスの供給量は一定であってよい。なお、後述のように、第1の工程前に水の改質器11への供給が行われる構成においては、制御装置15は、第1の工程において、当該供給を停止する。
【0027】
第2の工程は、水の供給が行われる工程であってよい。第2の工程は、少なくとも第1のサブ工程を含む。第2の工程は、第1のサブ工程に連続する第2のサブ工程を更に含んでよい。第2の工程は、第2のサブ工程に連続する第3のサブ工程を更に含んでよい。
【0028】
第1のサブ工程は、第1の工程に連続して実行される工程である。第1のサブ工程は、燃焼部13の温度が第1の温度閾値に到達する場合に開始される工程であってよい。第1の温度閾値は、例えば600~700℃の範囲で設定され、COの自然発火を促進可能な任意の温度である。制御装置15は、第1の工程において、第1の温度センサ16が検出する燃焼部13の温度が、第1の温度閾値に到達した場合、第1の工程を終了して、第1のサブ工程を開始してよい。
【0029】
制御装置15は、第1のサブ工程における酸素含有ガスの燃料電池セル12への供給量を、第1の工程における供給量より増加させる。具体的には、制御装置15は、酸素含有ガスの供給量を増加させるように第1の調整機構17を制御する。
【0030】
又、制御装置15は、第1のサブ工程において、第2の調整機構18が水を改質器11に供給開始するように制御してよい。又、制御装置15は、第1のサブ工程において、第3の調整機構19が原燃料を改質器11に供給するように制御してよい。又、制御装置15は、第1のサブ工程において、改質器11におけるS/Cが任意の設定値に一致するように、第2の調整機構18及び第3の調整機構19を制御してよい。S/Cは、改質器11に供給する原燃料中の炭素のモル数に対する水のモル数の比である。
【0031】
又、制御装置15は、第1のサブ工程における空燃比を第1の工程における空燃比より増加するように第1の調整機構17及び第3の調整機構19を制御してよい。
【0032】
又、制御装置15は、第1のサブ工程において一定の供給量、言い換えると流量で原燃料を供給するように第3の調整機構19を制御してよい。第1のサブ工程における原燃料の供給量は、第1の工程における原燃料の供給量と同じであってよく、低くてよく、高くてよい。例えば、原燃料の供給量を減少させる場合には、具体的には、制御装置15は、原燃料の供給量を低減させるように第3の調整機構19を制御する。
【0033】
第2のサブ工程は、第1のサブ工程に連続して実行される工程である。第2のサブ工程は、燃焼部13の温度が第2の温度閾値に到達する場合に開始される工程であってよい。第2の温度閾値は、第1の温度閾値より高い値であり、例えば700~800℃の範囲で設定される、水の気化が安定化する任意の温度である。制御装置15は、第1のサブ工程において、第1の温度センサ16が検出する燃焼部13の温度が、第2の温度閾値に到達した場合、第1のサブ工程を終了して、第2のサブ工程を開始してよい。
【0034】
制御装置15は、第2のサブ工程における酸素含有ガスの燃料電池セル12への供給量を、第1のサブ工程における酸素含有ガスの供給量より低減させてよい。具体的には、制御装置15は、酸素含有ガスの供給量を低減させるように第1の調整機構17を制御する。又は、第2のサブ工程における酸素含有ガスの燃料電池セル12への供給量は、第1のサブ工程における酸素含有ガスの供給量と同じであってよく、高くてよい。
【0035】
又、制御装置15は、第2のサブ工程において第1のサブ工程と同様に、空燃比が任意の設定値に一致するように、第1の調整機構17及び第3の調整機構19を制御してよい。第1のサブ工程及び第2のサブ工程において、原燃料の供給量は同一であってよい。前述のように、第2のサブ工程において第1のサブ工程より酸素含有ガスの供給量を低下させる場合に、制御装置15は、第2のサブ工程における空燃比を第1のサブ工程における空燃比より低下するように第1の調整機構17及び第3の調整機構19を制御してよい。
【0036】
又、制御装置15は、第2のサブ工程における空燃比を第1の工程における空燃比より増加するように第1の調整機構17及び第3の調整機構19を制御してよい。
【0037】
又、制御装置15は、第2のサブ工程におけるS/Cを第1のサブ工程におけるS/Cより増加するように第1の調整機構17及び第3の調整機構19を制御してよい。
【0038】
又、制御装置15は、第2のサブ工程において一定の供給量、言い換えると流量で原燃料を供給するように第3の調整機構19を制御してよい。第2のサブ工程における原燃料の供給量は、第1のサブ工程における原燃料の供給量と同じであってよい。
【0039】
又、制御装置15は、第2のサブ工程を開始する時に、点火部14の作動を停止させてよい。
【0040】
第3のサブ工程は、第2のサブ工程に連続して実行される工程である。第3のサブ工程は、燃焼部13の温度が第4の温度閾値に到達する場合に開始される工程であってよい。第4の温度閾値は、第2の温度閾値より高い値であり、例えば800~900℃の範囲で設定される、改質器11に内包される改質触媒の耐久性を考慮した任意の温度である。制御装置15は、第2のサブ工程において、第1の温度センサ16が検出する燃焼部13の温度が、第4の温度閾値に到達した場合、第2のサブ工程を終了して、第3のサブ工程を開始してよい。
【0041】
第3のサブ工程における酸素含有ガスの燃料電池セル12への供給量は、第2のサブ工程における酸素含有ガスの供給量と同じであってよく、低くてよく、高くてよい。例えば、酸素含有ガスの供給量と同じとする場合には、具体的には、制御装置15は、酸素含有ガスの供給量を同じとなるように第1の調整機構17を制御する。
【0042】
又、制御装置15は、第3のサブ工程において第2のサブ工程と同様に、空燃比が任意の設定値に一致するように、第1の調整機構17及び第3の調整機構19を制御してよい。第1のサブ工程、第2のサブ工程及び第3のサブ工程において、原燃料の供給量は同一であってよい。
【0043】
又、制御装置15は、第3のサブ工程におけるS/Cを第2のサブ工程におけるS/Cより増加するように第1の調整機構17及び第3の調整機構19を制御してよい。
【0044】
又、制御装置15は、第3のサブ工程において一定の供給量、言い換えると流量で原燃料を供給するように第3の調整機構19を制御してよい。第3のサブ工程における原燃料の供給量は、第2のサブ工程における原燃料の供給量と同じであってよい。
【0045】
制御装置15は、起動処理における第1の工程以前に、改質器11に水を供給するように第2の調整機構18を制御してよい。
【0046】
制御装置15は、起動処理の実行中に、燃料電池セル12の温度が第3の温度閾値に到達する場合、起動処理を完了してよい。燃料電池セル12の温度は、燃料電池セル12を収納容器内に収納してモジュール化している構成では、モジュールの中心温度であってよい。第3の温度閾値は、例えば500~600℃の範囲で設定される、燃料電池セル12における発電可能な温度である。起動処理が完了すると、燃料電池装置10は発電可能な状態に遷移する。
【0047】
次に、本実施形態において制御装置15が実行する第1の起動処理について、図3のフローチャートを用いて説明する。第1の起動処理は、第2の工程が第1のサブ工程及び第2のサブ工程を含み、第3のサブ工程を含まない構成における起動処理である。第1の起動処理は、例えば、燃料電池装置10を起動する操作入力を燃料電池装置10の入力部が検知する場合に開始する。
【0048】
ステップS100において、制御装置15は、水の改質器11への供給を開始させる。供給開始後、プロセスはステップS101に進む。
【0049】
ステップS101において、制御装置15は、第1の工程を開始する。具体的には、制御装置15は、点火部14の作動を開始させる。又、制御装置15は、水の供給を停止させる。又、制御装置15は、酸素含有ガスの燃料電池セル12への供給を開始させる。又、制御装置15は、原燃料の改質器11への供給を開始させる。第1の工程の開始後、プロセスはステップS102に進む。
【0050】
ステップS102において、制御装置15は、第1の温度センサ16が検出する燃焼部13の温度が第1の温度閾値に到達しているか否かを判別する。第1の温度閾値に到達していない場合、プロセスはステップS102に戻る。第1の温度閾値に到達している場合、プロセスはステップS103に進む。
【0051】
ステップS103において、制御装置15は、第1の工程を完了して、第1のサブ工程を開始する。具体的には、制御装置15は、点火部14の作動を維持させる。又、制御装置15は、水の改質器11への供給を開始させる。又、制御装置15は、酸素含有ガスの供給量を増加させる。又、制御装置15は、原燃料の改質器11への供給を減少させる。第1のサブ工程の開始後、プロセスはステップS104に進む。
【0052】
ステップS104において、制御装置15は、第1の温度センサ16が検出する燃焼部13の温度が第2の温度閾値に到達しているか否かを判別する。第2の温度閾値に到達していない場合、プロセスはステップS104に戻る。第2の温度閾値に到達している場合、プロセスはステップS105に進む。
【0053】
ステップS105において、制御装置15は、第1のサブ工程を完了して、第2のサブ工程を開始する。具体的には、制御装置15は、点火部14の作動を停止させる。又、制御装置15は、水の改質器11への供給量を増加させる。又、制御装置15は、酸素含有ガスの供給量を低減させる。又、制御装置15は、原燃料の改質器11への供給を維持させる。第2のサブ工程の開始後、プロセスはステップS106に進む。
【0054】
ステップS106において、制御装置15は、第2の温度センサ20が検出する燃料電池セル12の温度が第3の温度閾値に到達しているか否かを判別する。第3の温度閾値に到達していない場合、プロセスはステップS106に戻る。第3の温度閾値に到達している場合、第1の起動処理は終了する。
【0055】
次に、本実施形態において制御装置15が実行する第2の起動処理について、図4のフローチャートを用いて説明する。第2の起動処理は、第2の工程が第1のサブ工程、第2のサブ工程、及び第3の工程を含む構成における起動処理である。第2の起動処理は、第1の起動処理と同様に、例えば、燃料電池装置10を起動する操作入力を燃料電池装置10の入力部が検知する場合に開始する。
【0056】
ステップS200~ステップS205では、制御装置15は、第1の起動処理のステップS100~ステップS105と同じ制御を行う。ステップS205において、第2のサブ工程の開始後、プロセスはステップS206に進む。
【0057】
ステップS206において、制御装置15は、第1の温度センサ16が検出する燃焼部13の温度が第4の温度閾値に到達しているか否かを判別する。第4の温度閾値に到達していない場合、プロセスはステップS206に戻る。第4の温度閾値に到達している場合、プロセスはステップS207に進む。
【0058】
ステップS207において、制御装置15は、第2のサブ工程を完了して、第3のサブ工程を開始する。具体的には、制御装置15は、水の改質器11への供給量を増加させる。又、制御装置15は、点火部14の作動停止を維持させる。又、制御装置15は、酸素含有ガスの供給量を維持させる。又、制御装置15は、原燃料の改質器11への供給を維持させる。第3のサブ工程の開始後、プロセスはステップS208に進む。
【0059】
ステップS208において、制御装置15は、第2の温度センサ20が検出する燃料電池セル12の温度が第3の温度閾値に到達しているか否かを判別する。第3の温度閾値に到達していない場合、プロセスはステップS208に戻る。第3の温度閾値に到達している場合、第2の起動処理は終了する。
【0060】
以上のような構成の本実施形態の燃料電池装置10は、原燃料及び水を水蒸気改質することにより燃料ガスを生成する改質器11と、燃料ガス及び酸素含有ガスを用いて発電する燃料電池セル12と、燃料電池セル12において未反応の燃料ガスを燃焼させた熱を用いて改質器11を加熱可能な燃焼部13と、燃焼部13に供給される燃料ガスに点火する点火部14と、点火部14を作動させる第1の工程と第1の工程に連続する第1のサブ工程を含む第2の工程とを有する起動処理を行う制御装置15とを備え、制御装置15は酸素含有ガスを第1の工程よりも第1のサブ工程において多くなるように燃料電池セル12に供給させる。このような構成により、燃料電池装置10は、第1の工程では点火の確実性を向上させながら、第1のサブ工程において酸素含有ガスの供給量を増加することにより、燃焼部13における酸素不足を抑制し得る。したがって、燃料電池装置10は、第1のサブ工程において一酸化炭素(CO)の発生量を低減させ得る。
【0061】
又、燃料電池装置10は、起動処理における第1の工程以前に、改質器11に水を供給させる。このような構成により、燃料電池装置10は、改質器11において炭素が析出する可能性を低減し得る。
【0062】
又、燃料電池装置10は、起動処理において、燃焼部13の温度が複数回低下するように、点火部14を制御する。前述のように、燃料電池装置10の起動処理において、蒸発気化が始まると、燃焼部13の温度が低下する。このような事象に対して、上述の構成を有する燃料電池装置10は、温度低下が複数回に亘るように点火部14を制御することにより、蒸発気化による温度低下が低減する。したがって、燃料電池装置10は、燃焼部13の温度が第3の温度閾値に到達するまでにかかる時間、言い換えると起動処理の時間を短縮し得る。
【0063】
又、燃料電池装置10は、点火部14の作動停止による燃焼部13の温度低下が複数回の燃焼部13の温度低下の最後の温度低下となるように点火部14を制御する。このような構成により、燃料電池装置10は、改質器11における蒸発器化の安定後に点火部14の作動を停止させ得るので、燃焼部13の温度低下を低減し得る。したがって、燃料電池装置10は、失火耐性を向上する。
【0064】
又、燃料電池装置10は、酸素含有ガスを第2のサブ工程よりも第1のサブ工程において多くなるように燃料電池セル12に供給させ、改質器11及び燃料電池セル12への空燃比を第2のサブ工程より第1のサブ工程において大きくなるように原燃料及び酸素含有ガスを供給させる。このような構成により、燃料電池装置10は、第1のサブ工程におけるCOの発生量を低減させながら、酸素含有ガスによる改質器11及び燃料電池セル12の冷却を抑制し得、起動処理の時間を短縮し得る。
【0065】
又、燃料電池装置10は、空燃比を第1の工程より第2のサブ工程において大きくなるように原燃料を改質器11に供給させる。このような構成により、燃料電池装置10は、第1の工程における燃焼部13の着火を確実化し得る。
【0066】
一実施形態において、(1)燃料電池装置は、
原燃料及び水を水蒸気改質することにより燃料ガスを生成する改質器と、
前記燃料ガス及び酸素含有ガスを用いて発電する燃料電池セルと、
前記燃料電池セルにおいて未反応の前記燃料ガスを燃焼させた熱を用いて前記改質器を加熱可能な燃焼部と、
前記燃焼部に供給される前記燃料ガスに点火する点火部と、
前記点火部を作動させる第1の工程と、前記第1の工程に連続する第1のサブ工程を含む第2の工程とを有する起動処理を行う制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記酸素含有ガスを、前記第1の工程よりも前記第1のサブ工程において多くなるように前記燃料電池セルに供給させる。
【0067】
(2)上記(1)の燃料電池装置では、
前記制御装置は、前記起動処理における前記第1の工程以前に、前記改質器に水を供給させる。
【0068】
(3)上記(1)又は(2)の燃料電池装置では、
前記制御装置は、前記起動処理において、前記燃焼部の温度が複数回低下するように、前記点火部を制御する。
【0069】
(4)上記(3)の燃料電池装置では、
前記制御装置は、前記点火部の作動停止による前記燃焼部の温度低下が、複数回の前記燃焼部の温度低下の最後の温度低下となるように、前記点火部を制御する。
【0070】
(5)上記(1)乃至(4)のいずれかの燃料電池装置では、
前記第2の工程は、前記第1のサブ工程に連続する第2のサブ工程を含み、
前記制御装置は、前記酸素含有ガスを前記第2のサブ工程よりも前記第1のサブ工程において多くなるように前記燃料電池セルに供給させ、前記改質器及び前記燃料電池セルへの空燃比を前記第2のサブ工程より前記第1のサブ工程において大きくなるように前記原燃料及び前記酸素含有ガスを供給させる。
【0071】
(6)上記(5)の燃料電池装置では、
前記制御装置は、前記空燃比を、前記第1の工程より前記第2のサブ工程において大きくなるように前記原燃料を前記改質器に供給させる。
【0072】
以上、燃料電池装置10の実施形態を説明してきたが、本開示の実施形態としては、装置を実施するための方法又はプログラムの他、プログラムが記録された記憶媒体(一例として、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、CD-RW、磁気テープ、ハードディスク、又はメモリカード等)としての実施態様をとることも可能である。
【0073】
又、プログラムの実装形態としては、コンパイラによってコンパイルされるオブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラムコード等のアプリケーションプログラムに限定されることはなく、オペレーティングシステムに組み込まれるプログラムモジュール等の形態であってもよい。さらに、プログラムは、制御基板上のCPUにおいてのみ全ての処理が実施されるように構成されてもされなくてもよい。プログラムは、必要に応じて基板に付加された拡張ボード又は拡張ユニットに実装された別の処理ユニットによってその一部又は全部が実施されるように構成されてもよい。
【0074】
本開示に係る実施形態について説明する図は模式的なものである。図面上の寸法比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。
【0075】
本開示に係る実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は改変を行うことが可能であることに注意されたい。従って、これらの変形又は改変は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0076】
本開示に記載された構成要件の全て、及び/又は、開示された全ての方法、又は、処理の全てのステップについては、これらの特徴が相互に排他的である組合せを除き、任意の組合せで組み合わせることができる。又、本開示に記載された特徴の各々は、明示的に否定されない限り、同一の目的、同等の目的、又は類似する目的のために働く代替の特徴に置換することができる。したがって、明示的に否定されない限り、開示された特徴の各々は、包括的な一連の同一、又は、均等となる特徴の一例にすぎない。
【0077】
さらに、本開示に係る実施形態は、上述した実施形態のいずれの具体的構成にも制限されるものではない。本開示に係る実施形態は、本開示に記載された全ての新規な特徴、又は、それらの組合せ、あるいは記載された全ての新規な方法、又は、処理のステップ、又は、それらの組合せに拡張することができる。
【0078】
本開示において「第1」及び「第2」等の記載は、当該構成を区別するための識別子である。本開示における「第1」及び「第2」等の記載で区別された構成は、当該構成における番号を交換することができる。例えば、第1の調整機構は、第2の調整機構と識別子である「第1」と「第2」とを交換することができる。識別子の交換は同時に行われる。識別子の交換後も当該構成は区別される。識別子は削除してよい。識別子を削除した構成は、符号で区別される。本開示における「第1」及び「第2」等の識別子の記載のみに基づいて、当該構成の順序の解釈、小さい番号の識別子が存在することの根拠に利用してはならない。
【符号の説明】
【0079】
10 燃料電池装置
11 改質器
12 燃料電池セル
13 燃焼部
14 点火部
15 制御装置
16 温度センサ
17 第1の調整機構
18 第2の調整機構
19 第3の調整機構
20 第2の温度センサ
図1
図2
図3
図4