(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122800
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】組成物、前処理剤セット、前処理方法、及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
D06P 5/00 20060101AFI20240902BHJP
D06M 13/342 20060101ALI20240902BHJP
D06M 13/352 20060101ALI20240902BHJP
D06M 11/65 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
D06P5/00 104
D06M13/342
D06M13/352
D06M11/65
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030559
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100227019
【弁理士】
【氏名又は名称】安 修央
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 篤史
(72)【発明者】
【氏名】柳田 晴輝
(72)【発明者】
【氏名】岡田 吾郎
【テーマコード(参考)】
4H157
4L031
4L033
【Fターム(参考)】
4H157AA01
4H157CB02
4H157CC01
4H157GA06
4L031AB31
4L031BA13
4L031BA15
4L031BA31
4L033AB04
4L033AC15
4L033BA53
4L033BA54
4L033BA89
(57)【要約】
【課題】 前処理剤を利用するシーンにおいて、ユーザの使用の目的等に応じて機能付加成分を使用することが可能となり、利便性が向上する。
【解決手段】 本発明の組成物は、インクジェットプリンタによる顔料インクの吐出の前に布帛に塗布される前処理剤セットに含まれる組成物であって、前記組成物は、アミノ酸及び架橋剤の少なくとも一方を含み、前記架橋剤は、オキサゾリン基含有化合物を含む。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットプリンタによる顔料インクの吐出の前に布帛に塗布され、水と、多価金属塩、ポリマー及び界面活性剤の少なくとも一つと、を含む第1組成物と前処理時に混合される、第2組成物であって、
前記第2組成物は、アミノ酸及び架橋剤の少なくとも一方を含み、
前記架橋剤は、オキサゾリン基含有化合物を含む、
組成物。
【請求項2】
前記アミノ酸が、ベタインである、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記ベタインが、トリメチルグリシンである、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
前記架橋剤が、オキサゾリン基含有化合物である、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
前記第1組成物は、前記多価金属塩を含み、
前記第2組成物に含まれる前記アミノ酸の含有割合が、前記多価金属塩100重量部に対して、0重量部を超え200重量部以下である、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記第1組成物は、前記ポリマーを含み、
前記第2組成物に含まれる前記架橋剤の含有割合が、前記ポリマー100重量部に対して、0重量部を超え120重量部以下である、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
前記前処理時に水で希釈して使用される、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
インクジェットプリンタによる顔料インクの吐出の前に布帛に塗布される前処理剤セットであって、
前記前処理剤セットは、第1組成物及び第2組成物を含み、
前記第1組成物は、水と、多価金属塩、ポリマー及び界面活性剤の少なくとも一つとを含み、
前記第2組成物は、アミノ酸及び架橋剤の少なくとも一方を含み、
前記架橋剤は、オキサゾリン基含有化合物を含む、
前処理剤セット。
【請求項9】
前記アミノ酸が、ベタインである、請求項8記載の前処理剤セット。
【請求項10】
前記ベタインが、トリメチルグリシンである、請求項9記載の前処理剤セット。
【請求項11】
前記架橋剤が、オキサゾリン基含有化合物である、請求項8記載の前処理剤セット。
【請求項12】
前記第1組成物は、前記多価金属塩を含み、
前記第2組成物に含まれる前記アミノ酸の含有割合が、前記多価金属塩100重量部に対して、0重量部を超え200重量部以下である、請求項8記載の前処理剤セット。
【請求項13】
前記第1組成物は、前記ポリマーを含み、
前記第2組成物に含まれる前記架橋剤の含有割合が、前記ポリマー100重量部に対して、0重量部を超え120重量部以下である、請求項8記載の前処理剤セット。
【請求項14】
インクジェットプリンタによる顔料インクの吐出の前に布帛に塗布される組成物であって、
前記組成物は、アミノ酸及び架橋剤の少なくとも一方を含む第2組成物であり、
前記架橋剤は、オキサゾリン基含有化合物を含み、
前記組成物は、水と、多価金属塩、ポリマー及び界面活性剤の少なくとも一つと、を含む第1組成物と前処理時に混合される、
組成物。
【請求項15】
インクジェットプリンタにより顔料インクを吐出して印刷される布帛の前処理方法であって、
前処理剤混合工程及び前処理工程を含み、
前記前処理剤混合工程は、第1組成物に第2組成物を混合する工程であり、
前記第1組成物は、水と、多価金属塩、ポリマー及び界面活性剤の少なくとも一つとを含み、
前記第2組成物は、アミノ酸及び架橋剤の少なくとも一方を含み、
前記架橋剤は、オキサゾリン基含有化合物を含み、
前記前処理工程は、前記第2組成物が混合された前記第1組成物により前記布帛を前処理する工程である、
前処理方法。
【請求項16】
インクジェットプリンタを用いた布帛への画像形成方法であって、
前処理工程及び画像形成工程を含み、
前記前処理工程は、第2組成物が混合された第1組成物により前記布帛を前処理する工程であり、
前記第1組成物は、水と、多価金属塩、ポリマー及び界面活性剤の少なくとも一つとを含み、
前記第2組成物は、アミノ酸及び架橋剤の少なくとも一方を含み、
前記架橋剤は、オキサゾリン基含有化合物を含み、
前記画像形成工程は、前処理された前記布帛に対して印刷により画像を形成する工程である、
画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、前処理剤セット、前処理方法、及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
衣類等の布帛にインクジェット方式によりインクを吐出して画像を形成する場合、例えば、前記インクの発色等をよくするために、画像を形成する部分に対して予め前処理剤を付与する方法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、前記前処理剤には、洗濯堅牢性の向上等の特定の機能を付加するために、各種機能付加成分が含まれることがある。一方で、ユーザが機能付加を望まない場合にも前記各種機能付加成分が含まれることは、ユーザの利便性において問題となる。
【0005】
そこで、本発明は、前処理剤を利用するシーンにおいて、ユーザの使用の目的等に応じて機能付加成分を使用することが可能となり、利便性が向上する、組成物、前処理剤セット、前処理方法、及び画像形成方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の組成物は、
インクジェットプリンタによる顔料インクの吐出の前に布帛に塗布され、水と、多価金属塩、ポリマー及び界面活性剤の少なくとも一つと、を含む第1組成物と前処理時に混合される、第2組成物であって、
前記第2組成物は、アミノ酸及び架橋剤の少なくとも一方を含み、
前記架橋剤は、オキサゾリン基含有化合物を含む。
【0007】
本発明の前処理剤セットは、
インクジェットプリンタによる顔料インクの吐出の前に布帛に塗布される前処理剤セットであって、
前記前処理剤セットは、第1組成物及び第2組成物を含み、
前記第1組成物は、水と、多価金属塩、ポリマー及び界面活性剤の少なくとも一つとを含み、
前記第2組成物は、アミノ酸及び架橋剤の少なくとも一方を含み、
前記架橋剤は、オキサゾリン基含有化合物を含む。
【0008】
本発明の組成物は、
インクジェットプリンタによる顔料インクの吐出の前に布帛に塗布される組成物であって、
前記組成物は、アミノ酸及び架橋剤の少なくとも一方を含む第2組成物であり、
前記架橋剤は、オキサゾリン基含有化合物を含み、
前記組成物は、水と、多価金属塩、ポリマー及び界面活性剤の少なくとも一つと、を含む第1組成物と前処理時に混合される。
【0009】
本発明の前処理方法は、
インクジェットプリンタにより顔料インクを吐出して印刷される布帛の前処理方法であって、
前処理剤混合工程及び前処理工程を含み、
前記前処理剤混合工程は、第1組成物に第2組成物を混合する工程であり、
前記第1組成物は、水と、多価金属塩、ポリマー及び界面活性剤の少なくとも一つとを含み、
前記第2組成物は、アミノ酸及び架橋剤の少なくとも一方を含み、
前記架橋剤は、オキサゾリン基含有化合物を含み、
前記前処理工程は、前記第2組成物が混合された前記第1組成物により前記布帛を前処理する工程である。
【0010】
本発明の画像形成方法は、
インクジェットプリンタを用いた布帛への画像形成方法であって、
前処理工程及び画像形成工程を含み、
前記前処理工程は、第2組成物が混合された第1組成物により前記布帛を前処理する工程であり、
前記第1組成物は、水と、多価金属塩、ポリマー及び界面活性剤の少なくとも一つとを含み、
前記第2組成物は、アミノ酸及び架橋剤の少なくとも一方を含み、
前記架橋剤は、オキサゾリン基含有化合物を含み、
前記画像形成工程は、前処理された前記布帛に対して印刷により画像を形成する工程である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、前処理剤を利用するシーンにおいて、前処理成分と機能付加成分とを前処理時に混合して使用するため、ユーザの使用の目的等に応じて機能付加成分を使用することが可能となり、利便性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の前処理方法の一例を示すフローチャートである。
【
図2】
図2は、本発明の画像形成方法の一例を示すフローチャートである。
【
図3】
図3(a)及び(b)は、本発明の画像形成方法における前処理剤の塗布例を示す図である。
【
図4】
図4は、インクジェット記録装置の構成の一例を示す概略図である。
【
図5】
図5は、
図4に示すインクジェット記録装置のインクジェットプリンタの構成の一例を示す正面図である。
【
図6】
図6(a)は、
図4に示すインクジェット記録装置のプラテンに布帛をセットした状態を示す平面図であり、
図6(b)は、
図6(a)のA-A方向から見た断面図である。
【
図7】
図7は、
図4に示すインクジェット記録装置の記録制御装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の組成物について説明する。
【0014】
本発明の組成物は、前述のとおり、インクジェットプリンタによる顔料インクの吐出の前に布帛に塗布され、水と、多価金属塩、ポリマー及び界面活性剤の少なくとも一つと、を含む第1組成物と前処理時に混合される、第2組成物であって、前記第2組成物は、アミノ酸及び架橋剤の少なくとも一方を含み、前記架橋剤は、オキサゾリン基含有化合物を含む。
【0015】
前記アミノ酸は、例えば、ベタインがあげられる。前記ベタインは、例えば、トリメチルグリシン、カルニチン、γ-ブチロベタイン、タウロベタイン、リジンベタイン、アラニンベタイン等があげられる。前記ベタイン以外のアミノ酸としては、例えば、グリシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジン等があげられる。前記第2組成物としてアミノ酸を使用することで、アミノ酸を使用しなかった場合と比べて前処理後の塗布跡が良化する。また、前記アミノ酸がベタインである場合、前記第1組成物と前記第2組成物とを混合した後の保存安定性が向上する。さらに、前記ベタインがトリメチルグリシンである場合、前記塗布跡がより良化する。前記アミノ酸は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0016】
前記架橋剤は、例えば、オキサゾリン基含有化合物に加えて、カルボジイミド基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、アジリジン基含有化合物、エポキシ基含有化合物、ポリカルボジイミド樹脂に親水性セグメントを付与させた水性架橋剤等の他の架橋剤を含んでもよい。前記他の架橋剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。また、前記架橋剤は、例えば、オキサゾリン基含有化合物であってもよい。前記第2組成物としてオキサゾリン基含有化合物を含む架橋剤を使用することで、洗濯堅牢性が向上する。
【0017】
本発明の組成物は、前述のとおり、インクジェットプリンタによる顔料インクの吐出の前に布帛に塗布される組成物であって、前記組成物は、アミノ酸及び架橋剤の少なくとも一方を含む第2組成物であり、前記架橋剤は、オキサゾリン基含有化合物を含み、前記組成物は、水と、多価金属塩、ポリマー及び界面活性剤の少なくとも一つと、を含む第1組成物と前処理時に混合される。
【0018】
前記水は、例えば、イオン交換水、純水等があげられる。
【0019】
前記多価金属塩は、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、及び亜鉛の少なくともいずれかの水溶性塩を用いることができる。具体的には、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、リン酸二水素カルシウム、チオシアン酸カルシウム、乳酸カルシウム、フマル酸カルシウム、クエン酸カルシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩化バリウム、臭化バリウム、ヨウ化バリウム、硝酸バリウム、チオシアン酸バリウム、塩化銅、臭化銅、硫酸銅、硝酸銅、酢酸銅、塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄、シュウ酸鉄、乳酸鉄、フマル酸鉄、クエン酸鉄、硫酸マンガン、硝酸マンガン、リン酸二水素マンガン、酢酸マンガン、サリチル酸マンガン、安息香酸マンガン、乳酸マンガン、塩化ニッケル、臭化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、硫酸スズ、塩化チタン、塩化亜鉛、臭化亜鉛、硫酸亜鉛、チオシアン酸亜鉛、酢酸亜鉛塩化カルシウム及びそれらの水和物等があげられる。前記多価金属塩は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0020】
前記ポリマーは、例えば、分散媒(例えば、水等)に対して溶解状態ではなく、特定の粒子径を持って分散したもの(樹脂エマルション)であってもよい。前記ポリマーは、例えば、アクリル酸系樹脂、マレイン酸系エステル樹脂、酢酸ビニル系樹脂、カーボネート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂、エチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びこれらの共重合体樹脂等があげられる。前記共重合体樹脂は、例えば、アクリル-スチレン共重合体樹脂、アクリル-ウレタン共重合体樹脂等があげられる。前記アクリル酸系樹脂は、例えば、ポリアクリル酸又はポリアクリル酸エステルを主成分とする樹脂粒子であり、使用できる単量体としては、(メタ)アクリル酸やメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、チシリル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルがあげられる。前記ポリマーは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0021】
前記界面活性剤は、例えば、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等があげられる。前記ノニオン性界面活性剤としては、例えば、アセチレングリコール型界面活性剤、プルロニック(登録商標)型界面活性剤、アルキルエーテル型界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等があげられる。前記アニオン性界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル型界面活性剤、スルホン酸塩型界面活性剤、カルボン酸塩型界面活性剤、リン酸エステル型界面活性剤等があげられる。前記カチオン性界面活性剤としては、例えば、アミン塩型界面活性剤、四級アンモニウム塩型界面活性剤、ピリジニウム塩型界面活性剤等があげられる。前記両性界面活性剤としては、例えば、アミノ酸型界面活性剤、ベタイン型界面活性剤、アミンオキシド型界面活性剤等があげられる。
【0022】
前記第1組成物は、例えば、必要に応じて、他の成分を含んでもよい。前記他の成分としては、例えば、水溶性有機溶剤、pH調整剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、防黴剤等があげられる。
【0023】
前記水溶性有機溶剤としては、例えば、多価アルコール、多価アルコール誘導体、アルコール、アミド、ケトン、ケトアルコール、エーテル、含窒素溶剤、含硫黄溶剤、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等があげられる。前記多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、へキシレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、1,5-ペンタンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール等があげられる。前記多価アルコール誘導体としては、例えば、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール-n-プロピルエーテル、エチレングリコール-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコール-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコール-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコール-n-ヘキシルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコール-n-プロピルエーテル、トリエチレングリコール-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコール-n-プロピルエーテル、プロピレングリコール-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコール-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールエチルエーテル、トリプロピレングリコール-n-プロピルエーテル、トリプロピレングリコール-n-ブチルエーテル等があげられる。前記アルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、ベンジルアルコール等があげられる。前記アミドとしては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等があげられる。前記ケトンとしては、例えば、アセトン等があげられる。前記ケトアルコールとしては、例えば、ジアセトンアルコール等があげられる。前記エーテルとしては、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン等があげられる。前記含窒素溶剤としては、例えば、ピロリドン、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、シクロへキシルピロリドン、トリエタノールアミン等があげられる。前記含硫黄溶剤としては、例えば、チオジエタノール、チオジグリコール、チオジグリセロール、スルホラン、ジメチルスルホキシド等があげられる。前記水溶性有機溶剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0024】
本発明の組成物は、前述のとおり、インクジェットプリンタによる顔料インクの吐出の前に布帛に塗布され、水と、多価金属塩、ポリマー及び界面活性剤の少なくとも一つと、を含む第1組成物と前処理時に混合される。そのため、本発明の組成物(前記第2組成物)は、例えば、製造時において前記第1組成物と混合されるものではない。また、前記前処理時は、例えば、本発明の組成物及び前記第1組成物をユーザが入手した後の任意の時であってもよく、例えば、前記塗布するための準備の時であってもよいし、前記塗布される直前であってもよい。
【0025】
前記第1組成物は、例えば、前記多価金属塩を含み、前記第2組成物に含まれる前記アミノ酸の含有割合が、前記多価金属塩100重量部に対して、下限値が、0重量部を超え、5重量部以上、10重量部以上、13重量部以上、15重量部以上、20重量部以上、25重量部以上、30重量部以上、40重量部以上、50重量部以上、又は55重量部以上であってもよく、上限値が、200重量部以下、190重量部以下、185重量部以下、180重量部以下、150重量部以下、130重量部以下、100重量部以下、90重量部以下、85重量部以下、70重量部以下、又は60重量部以下であってもよい。
【0026】
前記第1組成物は、例えば、前記ポリマーを含み、前記第2組成物に含まれる前記架橋剤の含有割合が、前記ポリマー100重量部に対して、下限値が、0重量部を超え、5重量部以上、10重量部以上、13重量部以上、15重量部以上、20重量部以上であってもよく、上限値が、120重量部以下、115重量部以下、112重量部以下、100重量部以下、90重量部以下、70重量部以下、50重量部以下、40重量部以下、35重量部以下、又は30重量部以下であってもよい。
【0027】
前記第2組成物は、例えば、前処理時に水で希釈して使用される。前記水は、例えば、イオン交換水、純水等があげられる。前記希釈は、特に限定されず、例えば、前記第2組成物を使用するユーザの使用用途に応じて任意の倍率に希釈してもよい。前記第2組成物を前処理時に水で希釈して使用することを前提とした濃度にすることで、例えば、前記第2組成物を運搬する際の利便性が向上する。また、前記運搬する際のコストも低減する。さらに、前記希釈によって前記第1組成物と前記第2組成物とを混合した前処理剤としての性能を調整してもよい。
【0028】
つぎに、本発明の前処理剤セットについて説明する。
【0029】
本発明の前処理剤セットは、前述のとおり、インクジェットプリンタによる顔料インクの吐出の前に布帛に塗布される前処理剤セットであって、前記前処理剤セットは、第1組成物及び第2組成物を含む。
【0030】
前記第1組成物は、水と、多価金属塩、ポリマー及び界面活性剤の少なくとも一つとを含む。前記第1組成物は、例えば、前述の本発明の組成物において説明した第1組成物と同様のものである。
【0031】
前記第2組成物は、アミノ酸及び架橋剤の少なくとも一方を含み、前記架橋剤は、オキサゾリン基含有化合物を含む。前記第2組成物は、例えば、前述の本発明の組成物において説明した第2組成物と同様のものである。
【0032】
つぎに、本発明の前処理方法について、
図1を用いて説明する。
図1は、本発明の前処理方法の一例を示すフローチャートである。
【0033】
本発明の前処理方法は、前述のとおり、インクジェットプリンタにより顔料インクを吐出して印刷される布帛の前処理方法であって、前処理剤混合工程(S10)及び前処理工程(S11)を含む。
【0034】
前記前処理剤混合工程(S10)は、第1組成物及び第2組成物を混合する工程である。前記第1組成物は、水と、多価金属塩、ポリマー及び界面活性剤の少なくとも一つとを含む。前記第1組成物は、例えば、前述の本発明の前処理剤セットにおいて説明した第1組成物と同様のものである。前記第2組成物は、アミノ酸及び架橋剤の少なくとも一方を含み、前記架橋剤は、オキサゾリン基含有化合物を含む。前記第2組成物は、例えば、前述した本発明の前処理剤セットにおいて説明した第2組成物と同様のものである。
【0035】
前記前処理剤混合工程(S10)は、例えば、前記インクジェットプリンタが備える、前記第1組成物及び前記第2組成物を混合する前処理剤混合手段により行われてもよい。また、前記前処理剤混合工程は、例えば、前記インクジェットプリンタ以外の混合装置等により行われてもよく、前記第1組成物を使用するユーザの手作業により行われてもよい。
【0036】
前記前処理工程(S11)は、前記第2組成物が混合された前記第1組成物(以下、「混合後の前処理剤」という場合がある。)により前記布帛を前処理する工程である。前記前処理工程(S11)は、例えば、前記第2組成物が混合された前記第1組成物を前記インクジェットプリンタに供給して前記布帛を前処理する工程であってもよく、前記第2組成物が混合された前記第1組成物をユーザの手作業により前記布帛を前処理する工程であってもよい。前記手作業は、例えば、スプレー、スタンプ、刷毛、ローラー等による作業があげられる。また、前記前処理工程(S11)は、例えば、前記インクジェットプリンタが備える前処理手段により行ってもよいし、前記インクジェットプリンタ以外の前処理装置により行ってもよい。
【0037】
前記インクジェットプリンタは、例えば、プラテンを備えてもよく、後述の
図4に示すインクジェットプリンタのプラテンと同様の構成であってもよい。
【0038】
つぎに、本発明の画像形成方法について、
図2を用いて説明する。
図2は、本発明の画像形成方法の一例を示すフローチャートである。
【0039】
本発明の画像形成方法は、前述のとおり、インクジェットプリンタを用いた布帛への画像形成方法であって、前処理工程(S20)及び画像形成工程(S21)を含み、前記前処理工程(S20)は、第2組成物が混合された第1組成物により前記布帛を前処理する工程である。前記第1組成物は、水と、多価金属塩、ポリマー及び界面活性剤の少なくとも一つとを含む。前記第1組成物は、例えば、前述の本発明の前処理剤セットにおいて説明した第1組成物と同様のものである。前記第2組成物は、アミノ酸及び架橋剤の少なくとも一方を含み、前記架橋剤は、オキサゾリン基含有化合物を含む。前記第2組成物は、例えば、前述した本発明の前処理剤セットにおいて説明した第2組成物と同様のものである。前記画像形成工程(S21)は、前処理された前記布帛に対して印刷により画像を形成する工程である。本発明の画像形成方法は、例えば、後述の熱処理工程、圧縮工程、熱定着工程等の工程を有してもよい。本発明の画像形成方法は、例えば、特開2019-183126号公報に記載の画像形成方法であってもよい。
【0040】
前記前処理工程(S20)において、前記混合後の前処理剤の付与は、前記布帛の画像形成面の全面でもよいし、一部でもよい。一部に付与する場合、前記布帛の画像形成面の少なくともインクによる印刷部分と概ね同じ領域が前処理剤付与部になる。一部に付与する場合、前処理剤付与部の大きさは、印刷部分よりも大きい方がよい。例えば、
図3(a)に示すように、布帛(本例では、Tシャツ)100に対し、文字(X)を印刷する場合は、前記文字の線幅よりも大きな線幅で前処理剤付与部110を形成するように前記混合後の前処理剤を付与してもよい。また、
図3(b)に示すように、布帛(Tシャツ)100に対し、図柄を印刷する場合は、前記図柄よりも大きな前処理剤付与部120を形成するように前記前処理剤を付与してもよい。
【0041】
つぎに、本発明の画像形成方法は、前記前処理工程(S20)後、前記前処理剤付与部に熱処理を施す熱処理工程及び前記前処理剤付与部を圧縮する圧縮工程の少なくとも一方の工程を有してもよい。前記熱処理は、例えば、市販のホットプレス機、オーブン、ベルトコンベアオーブン等を用いてもよい。前記ホットプレス機を用いる場合には、前記前処理剤付与部上に、表面が平滑なテフロン(登録商標)シートを置いた状態で熱処理を行ってもよい。これにより、前記布帛のケバを抑えられ、例えば、本工程後に前記画像形成工程(S21)を実施する場合に、その実施がよりスムースとなる。前記熱処理の温度は、特に限定されないが、例えば、160℃~185℃である。前記圧縮は、例えば、市販のホットプレス機を用いて、前記熱処理と同様の条件で実施してもよい。
【0042】
前記画像形成工程(S21)は、前記前処理剤付与部に第1のインクを用いてベース部を形成するベース部形成工程と、前記ベース部に第2のインクを用いて画像を形成する画像形成工程とを有してもよい。例えば、前記第1のインクとして、ホワイトインクを用いてもよく、前記第2のインクとして、カラーインクを用いてもよい。この態様によれば、地色の濃い布帛に対しても、発色性に優れたカラー画像が形成される。
【0043】
前記画像形成工程(S21)は、例えば、
図4に示すインクジェット記録装置を用いて実施できる。
図4に示すとおり、このインクジェット記録装置30は、布帛にインクを吐出して所望の画像を記録するインクジェットプリンタ31と、前記所望画像の画像データを取得し、かつ、インクジェットプリンタ31を制御する記録制御装置70とがインターフェースを介して接続されて構成されている。
【0044】
インクジェットプリンタ31は、
図5に示すように、枠体状のフレーム52を備えている。フレーム52は、プリンタ31の底部に位置する水平部52hと、水平部52hの両端から垂直に立ち上がる2つの垂直部52vとを有している。なお、
図5において、
図4と同一部分には同一符号を付しており、
図6以降の図面においても同様である。
【0045】
2つの垂直部52vの上部同士を連結するように、スライドレール53が水平に支架されている。スライドレール53には、キャリッジ54が、スライドレール53の長手方向(主走査方向)に沿って摺動自在に備えられている。このキャリッジ54の下面には、5色のインクを吐出させるために色毎に配設された5個の圧電式のインクジェットヘッド(インク吐出手段)55が設けられている。
【0046】
2つの垂直部52vの上部には、それぞれ、プーリ56、57が支持され、一方のプーリ56には、垂直部52vによって支持されるモータ58のモータ軸が連結されている。両プーリ56、57の間には無端ベルト59が架け渡されており、キャリッジ54は、この無端ベルト59の適宜の部分に固定される。
【0047】
このような構成により、一方のプーリ56が、モータ58の駆動により正逆回転されると、それに伴ってキャリッジ54がスライドレール53の長手方向(主走査方向)に沿って直線往復駆動され、この結果、インクジェットヘッド55の往復移動が行われる。
【0048】
2つの垂直部52vには、それぞれ、インクカートリッジ60を着脱可能に搭載する搭載部50が形成されている。2つの搭載部50は、一方が2色分の、他方が3色分のインクカートリッジ60を装着するようになっており、このインクカートリッジ60の内部に形成されているインク袋(図示せず)が可撓性チューブ62によって、インクジェットヘッド55のそれぞれの上部に位置する5つのインクタンク61と接続される。なお、5つのインクタンク61は、後述するようにインクジェットヘッド55とそれぞれ連通しているため、インクカートリッジ60からインクジェットヘッド55へとインクが供給される。
【0049】
フレーム52の水平部52hの上には、搬送手段としてのスライド機構41が設置され、このスライド機構41の上にプラテン(支持体)42が支持される。このプラテン42には、Tシャツ等の布帛を、その記録部分が上面に来るように位置決めして、かつ、ピンと張った皺のない平坦な状態でセットするように固定フレーム(固定手段)45が設けられている。また、本例のインクジェットプリンタ31では、プラテン42の数は、1つである。ただし、本発明において、前記プラテンの数は1つに限定されず、必要に応じて増やしてもよい。
【0050】
また、プラテン42を
図5の紙面垂直方向(スライド機構41におけるスライド方向であって、インクジェットプリンタ31の副走査方向)に往復移動させるために、プラテン搬送機構が配設されている(図示せず)。前記プラテン搬送機構には、例えば、ラック、ピニオン機構や、無端ベルトを用いた機構等を適用してもよい。
【0051】
図6に、プラテンに布帛をセットした状態を示す。
図6(a)は、平面図であり、
図6(b)は、
図6(a)のA-A方向から見た断面図である。
図6に示すように、プラテン42は、平面視で副走査方向に長手方向を有する長方形状とされるとともに、Tシャツ100を支持する支持面46を有している。また、
図6(b)の紙面垂直方向奥側のプラテン42の下面は、それと対向する位置のスライド機構41と支持部材47とによって連結されている。
【0052】
また、固定フレーム45は、L字形状の断面を有するフレームがプラテン42の支持面46の4辺を覆うように構成されている。固定フレーム45のプラテン42の支持面46と対向する面には、プラテン42の支持面46の面積より若干小さい開口面積を有する開口部45aが形成されている。プラテン42にTシャツ100をセットする際は、Tシャツ100の裾側からプラテン42の支持面46を覆うようにして被せ、固定フレーム45で固定する。また、固定フレーム45は、プラテン42の
図6(b)の紙面垂直方向奥側の端部に設けられた回動部(図示せず)によって回動可能に設けられており、Tシャツ100をプラテン42に被せた後に固定フレーム45をプラテン42に嵌合するように回動させて、Tシャツ100をプラテン42と固定フレーム45とで挟むようにして固定している。
【0053】
また、インクジェットプリンタ31は、カバー43を備えており、インクジェットヘッド55やスライド機構41等を覆っている。なお、
図5においては、カバー43を二点鎖線で描いて透視的に図示している。カバー43の前面の右上部には、液晶パネルや操作ボタンを備える操作パネル44が配設されている。
【0054】
図5に示す5つのインクジェットヘッド55は、5色のインク(ホワイト、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラック)に対応して、キャリッジ54の往復移動方向に沿って並設されており、それぞれに対応したインクカートリッジ60と、可撓性チューブ62及びインクタンク61を介して連通されている。インクジェットヘッドにインクを供給するための構成としては、例えば、従来公知のものを使用してもよい(例えば、特開2004-291461号公報参照)。なお、5つのインクジェットヘッド55は、4色のインク(イエロー、マゼンタ、シアン及びブラック)をそれぞれ吐出する吐出部を備えたヘッドユニットと、ホワイトインクを吐出する吐出部を備えたヘッドユニットを、副走査方向に並べるように配置してもよい。インクジェットプリンタ31は、5つのインクジェットヘッド55とは別に、さらに、前記混合後の前処理剤を事前に布帛に付与する手段としての液体吐出手段を含んでもよい。また、インクジェットプリンタ31は、例えば、スプレー等によって前記混合後の前処理剤を事前に布帛に付与する手段を含んでもよい。
【0055】
インクジェットヘッド55は、インクジェットヘッド55の下面とプラテン42の支持面46との間にわずかな隙間を形成するように配置され、Tシャツ100に画像を記録する際に、プラテン42にセットされたTシャツ100の記録部分が前記隙間に搬送される構成を取る。前記構成で、インクジェットヘッド55がキャリッジ54によって往復移動されつつ、Tシャツ100上にインクジェットヘッド55の底面に多数並べて形成された微小径の吐出ノズルから各色のインクを吐出し、各色のインクが布帛の表面上に保持される。この結果、所望のカラー画像がTシャツ100に記録される。
【0056】
図4に示す記録制御装置70は、例えば、汎用のパーソナルコンピュータ(PC)を用いて構成され、本体71と、表示部72としてのディスプレイと、操作部75としてのキーボード73及びマウス(ポインティングデバイス)74とを備えている。
【0057】
図7は、
図4に示す記録制御装置70の構成を示したブロック図である。記録制御装置70は、CPU(Central Processing Unit)81、ROM(Read Only Memory)82、RAM(Random Access Memory)83、HD(Hard Disk)84、操作部75、表示部72、インターフェース(I/F)85を備えており、これらは、バスを介して相互に接続されている。
【0058】
HD84には、記録制御装置70の動作を制御するために用いられる各種プログラムが格納されている。また、HD84には、インターネット等からダウンロードされた、又はソフトウェアによって作成された種々の画像データ、及びTシャツ等の布帛の種類毎の各種データが格納されている。CPU81は、操作部75によって入力された信号と、ROM82、RAM83及びHD84内の各種プログラム、及びデータとに基づいて各種演算等の処理を行う。そして、インターフェース85を介して、インクジェットプリンタ31にデータ等を送信する。RAM83は、読み出し・書き込み可能な揮発性記憶装置であって、CPU81での各種演算結果等が記憶される。インターフェース85は、インクジェットプリンタ31のインターフェースと接続されており、記録制御装置70とインクジェットプリンタ31との間の通信を可能にするものである。
【0059】
本例のインクジェット記録装置30を用いたTシャツ100への所望画像の記録は、例えば、つぎのようにして実施してもよい。まず、記録制御装置70のキーボード73及びマウス74を通じて、Tシャツ100に記録したい画像データを取得する。前記画像データの取得においては、記録制御装置70にインストールされたソフトウェアを使用して画像データを作成するか、予めHD84に記憶された画像データを選択する。
【0060】
つぎに、Tシャツ100を、プラテン42に固定する。すなわち、Tシャツ100を、プラテン42に裾から被せ、プラテン42の支持面46に沿わせて皺のない状態にしつつ固定フレーム45で固定する。
【0061】
ついで、ユーザが記録の実施を指示すると、前記画像データが前記インクジェットプリンタ31にインターフェース85を介して送信され、この画像データに基づいてインクジェットヘッド55からインクが吐出されて、プラテン42に固定されたTシャツ100への記録が実施される。
【0062】
つぎに、本発明の画像形成方法は、前記画像形成工程(S21)後、布帛の前記印刷部分に熱処理を施すことで、前記インクを前記布帛に熱定着させる熱定着工程を有してもよい。前記熱定着工程は、例えば、前記熱処理と同様の装置、条件にて実施してもよい。また、前記熱定着工程は、例えば、特開2009-209493号公報に記載の装置を用いて実施してもよい。この装置によれば、布帛に対して180℃の加熱と共に加圧される。
【実施例0063】
つぎに、本発明の実施例について比較例と併せて説明する。なお、本発明は、下記の実施例及び比較例により限定及び制限されない。
【0064】
[実施例1~14及び比較例1~12]
表1~4における第1組成物に対して、表1~4における第2組成物を加えて撹拌混合することで、表1~4に示す実施例1~14及び比較例1~12の第1組成物及び第2組成物(前処理剤セット)を得た。なお、表4の比較例7~12において、表4の各成分を含む場合には黒丸(●)を付し、含まない場合には空欄とした。
【0065】
実施例1~14及び比較例1~6の前処理剤セットについて、(a)利便性評価、(b)第1組成物のみでの前処理の可否評価、(c)保存安定性評価、(d)前処理塗布跡評価、(e)洗濯堅牢性評価、及び(f)発色性評価を、下記方法により実施した。なお、比較例7~12の前処理剤セットについては、(a)利便性評価、(b)第1組成物のみでの前処理の可否評価のみを行った。
【0066】
(a)利便性評価
以下の評価基準に従って、利便性評価を行った。
【0067】
利便性評価 評価基準
○:ユーザの購入時(入手時)の形態において第1組成物と第2組成物とが混合されていない。
×:ユーザの購入時(入手時)の形態において第1組成物と第2組成物とが混合されている。
【0068】
(b)第1組成物のみでの前処理の可否評価
表1~4記載の、実施例1~14及び比較例1~12の第1組成物のみを用いて、黒色のTシャツ(GILDAN社製、商品名:Ultra Cotton、材質:綿100%)に、下記工程により画像を形成し、評価サンプルを得た。得た評価サンプルの第1組成物の塗布部及び非塗布部のL*値を、X-Rite社製のCIE1976L*a*b*色空間スケール測色計eXactを用いて測定した。
【0069】
(前処理工程)
表1~4記載の各第1組成物を、スプレーを用いて、Tシャツの画像形成面に塗布した。第1組成物の塗布量は、0.03g/cm2とした。
【0070】
(熱処理工程)
前処理工程後のTシャツの第1組成物塗布部に、180℃に設定したヒートプレス機を用いて、35秒熱処理を施した。
【0071】
(画像形成工程)
インクジェットプリンタ(ブラザー工業(株)製、商品名:GTXPro)を用いて、第1組成物を塗布したTシャツにインクを吐出することで、印刷をした。インクとしては、ホワイト(ブラザー工業(株)製、商品名:GCX-4W)、ブラック(ブラザー工業(株)製、商品名:GCX-4K)、マゼンダ(ブラザー工業(株)製、GCX-4M)、シアン(ブラザー工業(株)製、商品名:GCX-4C)、イエロー(ブラザー工業(株)製、商品名:GCX-4Y)を用いた。
【0072】
(熱定着工程)
画像形成工程後、160℃に設定したオーブンを用いて、ホワイトインクをTシャツの印刷部分に熱定着させた。熱定着における加熱時間は、3.5分とした。
【0073】
第1組成物のみでの前処理の可否評価 評価基準
○:ΔL*が80以上であった。
×:ΔL*が80未満であった。
【0074】
(c)保存安定性評価
表1~3記載の実施例1~14及び比較例1~6について、ガラス容器に(i)第1組成物のみ、又は(ii)第1組成物及び第2組成物を入れ、72℃の環境下で72時間保管し、保管前後の外観変化を、下記評価基準に従って、目視評価した。
【0075】
保存安定性評価 評価基準
○:ガラス容器の内壁に固形成分が析出せず、また、組成物が相分離しなかった。
×:ガラス容器の内壁に固形成分が析出するか、または、組成物が相分離した。
【0076】
(d)前処理塗布跡評価
表1~3記載の、実施例1~14及び比較例1~6の前処理剤セットを用いて、赤色のTシャツ(トムス(株)製、品番:00085-CVT、材質:綿100%)に、下記工程により前処理を行い、評価サンプルを得た。得た評価サンプルの前処理塗布部および未塗布部のL*a*b*を、X-Rite社製のCIE1976L*a*b*色空間スケール測色計eXactを使用して測色した。サンプルの前処理塗布部分と前処理未塗布部分の色差として以下の式に従いΔE*abを計算した。なお、ΔE*abが小さいほど、前処理塗布跡が目立ちにくいことを意味している。
ΔE*ab={(L1
*-L2
*)2+(a1
*-a2
*)2+(b1
*-b2
*)2}1/2
L1
*:前処理塗布部分のL*値
L2
*:前処理未塗布部分のL*値
a1
*:前処理塗布部分a*値
a2
*:前処理未塗布部分のa*値
b1
*:前処理塗布部分*値
b2
*:前処理未塗布部分のb*値
【0077】
(前処理工程)
表1~3記載の各前処理剤セットを、スプレーを用いて、Tシャツに塗布した。前処理剤セットの塗布量は、0.03g/cm2とした。
【0078】
(熱処理工程)
前処理工程後のTシャツの前処理部に、180℃に設定したヒートプレス機を用いて、35秒熱処理を施した。
【0079】
(熱定着工程)
画像形成工程後、160℃に設定したオーブンを用いて、ホワイトインクをTシャツの印刷部分に熱定着させた。熱定着における加熱時間は、3.5分とした。
【0080】
前処理剤塗布跡評価 評価基準
A: ΔE*ab≦2
B:2<ΔE*ab≦3
C:3<ΔE*ab≦5
D:5<ΔE*ab≦6
E:6<ΔE*ab
【0081】
(e)洗濯堅牢性評価
第1組成物に代えて、表1~3記載の実施例1~14及び比較例1~6の各前処理剤セットを用いて前処理工程を行ったこと以外は、前述の「第1組成物のみでの前処理の可否評価」と同様の手順で前処理工程を行った。その後、前述の「第1組成物のみでの前処理の可否評価」と同様の手順で熱処理工程を行った。つぎに、前述の「第1組成物のみでの前処理の可否評価」と同様の手順で画像形成工程を行った。その後、前述の「第1組成物のみでの前処理の可否評価」と同様の手順で熱定着工程を行い、洗濯堅牢性評価用の評価サンプルを得た。評価サンプルをJIS L1930 C4M法に従って試験を実施し、洗濯堅牢性を洗濯等級により評価した。なお、洗濯等級は下記の評価基準のとおり、「1」が最も悪く、「5」が最も良い。
【0082】
洗濯堅牢性評価 評価基準
洗濯堅牢性評価の評価基準は、「5」「4-5」「4」「3-4」「3」「2-3」「2」「1-2」「1」の9段階で評価した。
【0083】
(f)発色性評価
表1~3記載の、実施例1~14及び比較例1~6の各前処理剤セットを用いて、前述の「洗濯堅牢性評価」と同様の手順で、発色性評価用の評価サンプルを得た。得た評価サンプルの印刷部分のL*値を、X-Rite社製のCIE1976L*a*b*色空間スケール測色計eXactを用いて測定した。
【0084】
発色性評価 評価基準
○:ΔL*が80以上であった。
×:ΔL*が80未満であった。
【0085】
実施例1~14及び比較例1~12の前処理剤セットの組成及び評価結果を、表1~4に示す。
【0086】
【0087】
表1~3に示すとおり、実施例1~14の前処理剤セットは、前処理を行うユーザの購入時の形態において第1組成物と第2組成物とが分かれているため、利便性が高い。特に、比較例7~9のように、第2組成物にコストが高い成分が含まれている場合、予め第1組成物と第2組成物とが混合されていることでユーザのコスト負担が増えてしまう。一方で、実施例1~14の前処理剤セットは、ユーザの購入時の形態において第1組成物と第2組成物とが分かれているため、コスト面の利便性も高い。
【0088】
また、実施例1~14の前処理剤セットにおける第1組成物は、多価金属塩を含まない比較例6とは異なり、「第1組成物のみでの前処理の可否評価」においてΔL*が80以上であったことから、第1組成物のみでも前処理が可能であることがわかった。すなわち、実施例1~14の前処理剤セットによれば、ユーザは第1組成物のみを用いて前処理をしたり、あるいは必要に応じて第1組成物と第2組成物を混合することで、第1組成物に対して任意の機能付加(例えば、前処理跡を低減や、洗濯堅牢性の向上等)をしたりする選択肢が得られる。
【0089】
さらに、実施例1~14の前処理剤セットは、第1組成物と第2組成物の濃度比を調整することができるため、例えば、ユーザは第1組成物に対する機能付加の程度を必要に応じて調整してもよい。
【0090】
加えて、実施例1~14の前処理剤セットは、第1組成物のみでの保存安定性が良好であった。
【0091】
上記に加えて、表1に示すとおり、第2組成物としてトリメチルグリシンを含むもの(実施例1~7)は、前処理塗布跡の評価結果が良好であった。また、表2に示すとおり、アミノ酸としてカルニチン又はグリシンを含む場合(実施例9又は10)であっても、前処理塗布跡の評価結果が良好であった。
【0092】
さらに、表3に示すとおり、第2組成物としてオキサゾリン基含有化合物を含む架橋剤を含むもの(実施例11~14)は、含まないもの(比較例1~5)と比べて、洗濯堅牢性の評価結果が良好であった。
【0093】
一方で、前述のとおり、第1組成物として多価金属塩を含まないもの(比較例6)は、多価金属塩を含むもの(実施例1~14)とは異なり、「第1組成物のみでの前処理の可否評価」においてΔL*が27であった。すなわち、比較例6は、第1組成物のみでの前処理ができなかった。
【0094】
また、従来の前処理剤(比較例7~9)は、ユーザの購入時の形態において第1組成物と第2組成物とが混合されているため、利便性が悪かった。
【0095】
さらに、多価金属塩を第1組成物から分けたもの(比較例10~12)は、第1組成物のみでの前処理ができなかった。
【0096】
上記実施形態及び実施例の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載し得るが、以下には限定されない。
(付記1)
インクジェットプリンタによる顔料インクの吐出の前に布帛に塗布され、水と、多価金属塩、ポリマー及び界面活性剤の少なくとも一つと、を含む第1組成物と前処理時に混合される、第2組成物であって、
前記第2組成物は、アミノ酸及び架橋剤の少なくとも一方を含み、
前記架橋剤は、オキサゾリン基含有化合物を含む、
組成物。
(付記2)
前記アミノ酸が、ベタインである、付記1記載の組成物。
(付記3)
前記ベタインが、トリメチルグリシンである、付記2記載の組成物。
(付記4)
前記架橋剤が、オキサゾリン基含有化合物である、付記1から3のいずれかに記載の組成物。
(付記5)
前記第1組成物は、前記多価金属塩を含み、
前記第2組成物に含まれる前記アミノ酸の含有割合が、前記多価金属塩100重量部に対して、0重量部を超え200重量部以下である、付記1から4のいずれかに記載の組成物。
(付記6)
前記第1組成物は、前記ポリマーを含み、
前記第2組成物に含まれる前記架橋剤の含有割合が、前記ポリマー100重量部に対して、0重量部を超え120重量部以下である、付記1から5のいずれかに記載の組成物。
(付記7)
前記前処理時に水で希釈して使用される、付記1から6のいずれかに記載の組成物。
(付記8)
インクジェットプリンタによる顔料インクの吐出の前に布帛に塗布される前処理剤セットであって、
前記前処理剤セットは、第1組成物及び第2組成物を含み、
前記第1組成物は、水と、多価金属塩、ポリマー及び界面活性剤の少なくとも一つとを含み、
前記第2組成物は、アミノ酸及び架橋剤の少なくとも一方を含み、
前記架橋剤は、オキサゾリン基含有化合物を含む、
前処理剤セット。
(付記9)
前記アミノ酸が、ベタインである、付記8記載の前処理剤セット。
(付記10)
前記ベタインが、トリメチルグリシンである、付記9記載の前処理剤セット。
(付記11)
前記架橋剤が、オキサゾリン基含有化合物である、付記8から10のいずれかに記載の前処理剤セット。
(付記12)
前記第1組成物は、前記多価金属塩を含み、
前記第2組成物に含まれる前記アミノ酸の含有割合が、前記多価金属塩100重量部に対して、0重量部を超え200重量部以下である、付記8から11のいずれかに記載の前処理剤セット。
(付記13)
前記第1組成物は、前記ポリマーを含み、
前記第2組成物に含まれる前記架橋剤の含有割合が、前記ポリマー100重量部に対して、0重量部を超え120重量部以下である、付記8から12のいずれかに記載の前処理剤セット。
(付記14)
インクジェットプリンタによる顔料インクの吐出の前に布帛に塗布される組成物であって、
前記組成物は、アミノ酸及び架橋剤の少なくとも一方を含む第2組成物であり、
前記架橋剤は、オキサゾリン基含有化合物を含み、
前記組成物は、水と、多価金属塩、ポリマー及び界面活性剤の少なくとも一つと、を含む第1組成物と前処理時に混合される、
組成物。
(付記15)
インクジェットプリンタにより顔料インクを吐出して印刷される布帛の前処理方法であって、
前処理剤混合工程及び前処理工程を含み、
前記前処理剤混合工程は、第1組成物に第2組成物を混合する工程であり、
前記第1組成物は、水と、多価金属塩、ポリマー及び界面活性剤の少なくとも一つとを含み、
前記第2組成物は、アミノ酸及び架橋剤の少なくとも一方を含み、
前記架橋剤は、オキサゾリン基含有化合物を含み、
前記前処理工程は、前記第2組成物が混合された前記第1組成物により前記布帛を前処理する工程である、
前処理方法。
(付記16)
インクジェットプリンタを用いた布帛への画像形成方法であって、
前処理工程及び画像形成工程を含み、
前記前処理工程は、第2組成物が混合された第1組成物により前記布帛を前処理する工程であり、
前記第1組成物は、水と、多価金属塩、ポリマー及び界面活性剤の少なくとも一つとを含み、
前記第2組成物は、アミノ酸及び架橋剤の少なくとも一方を含み、
前記架橋剤は、オキサゾリン基含有化合物を含み、
前記画像形成工程は、前処理された前記布帛に対して印刷により画像を形成する工程である、
画像形成方法。
以上のように、本発明によれば、ユーザの使用の目的等に応じて機能付加成分を使用することが可能となり、利便性が向上する。本発明の組成物、前処理剤セット、前処理方法、及び画像形成方法の用途は、特に限定されず、各種布帛への画像形成前の前処理に広く適用可能である。