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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122806
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】避難口ハッチ
(51)【国際特許分類】
   A62B 5/00 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
A62B5/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030572
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000227043
【氏名又は名称】日精株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596013224
【氏名又は名称】株式会社関東技研
(74)【代理人】
【識別番号】100208672
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 愼一
(72)【発明者】
【氏名】赤石 仁
(72)【発明者】
【氏名】小野 洋伸
(72)【発明者】
【氏名】立若 正弘
(72)【発明者】
【氏名】菊池 良一
【テーマコード(参考)】
2E184
【Fターム(参考)】
2E184FF04
2E184FF12
(57)【要約】
【課題】簡単な構造のロック錠を用いて、蓋の開閉時における安全性の向上を図ることができる避難口ハッチを提供することを目的とする。
【解決手段】避難口ハッチ1は、建物開口10Aに設けられる枠12と、枠12に対して一方が支持されて旋回して開閉する蓋14と、蓋14に設けられ、枠12に対して、蓋14の上側から解錠が行われるとともに、蓋14の下側から解錠が行われるロック錠20と、を有し、ロック錠20は、解錠部材20Aと、解錠部材20Aの回転によって枠12の施錠穴12Cに進退する施錠部材20Bと、施錠部材20Bの先端側で施錠穴12Cに係合して施錠する施錠部20Cと、を含んで構成され、施錠部材20Bは、上側から解錠具30が係合されて解錠具30を回転させることにより施錠穴12Cから施錠部20Cが退避されて解錠されるとともに、下側から手の操作のみで解錠される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に開口される建物開口に設置される避難口ハッチであって、
前記建物開口に設けられる枠と、前記枠に対して一方が支持されて旋回して開閉する蓋と、前記蓋に設けられ、前記枠に対して、前記蓋の上側から解錠が行われるとともに、前記蓋の下側から解錠が行われるロック錠と、を有し、
前記ロック錠は、解錠部材と、前記解錠部材の回転によって前記枠の施錠穴に進退する施錠部材と、前記施錠部材の先端側で前記施錠穴に係合して施錠する施錠部と、を含んで構成され、
前記施錠部材は、前記上側から解錠具が係合されて前記解錠具を回転させることにより前記施錠穴から前記施錠部が退避されて解錠されるとともに、前記下側から手の操作のみで解錠される、
避難口ハッチ。
【請求項2】
前記解錠部材は、前記解錠具が係合されたまま回転させると前記蓋に係合されて、上方に引き上げることで前記施錠部材が前記施錠穴から退避された状態で前記蓋が開放される、請求項1に記載の避難口ハッチ。
【請求項3】
前記解錠部材の前記施錠部材は、施錠状態において、前記施錠穴に対して付勢力を付与する付勢部材を有する、請求項1又は2に記載の避難口ハッチ。
【請求項4】
前記解錠部材が解錠方向に回転させられて前記蓋を引き上げると、前記蓋の開放方向に付勢力が付与される圧縮ダンパを有する、請求項1又は2に記載の避難口ハッチ。
【請求項5】
前記解錠部材が解錠方向に回転させられて前記蓋を引き上げると、前記蓋の開放方向に付勢力が付与される圧縮ダンパを有する、請求項3に記載の避難口ハッチ。
【請求項6】
前記施錠部材は、前記施錠部材の下方に向けて突出する解錠片を有し、手で前記施錠部材を解錠方向に移動することで解錠される、請求項1又は2に記載の避難口ハッチ。
【請求項7】
前記施錠部材は、前記施錠部材の下方に向けて突出する解錠片を有し、手で前記施錠部材を解錠方向に移動することで解錠される、請求項3に記載の避難口ハッチ。
【請求項8】
前記蓋は、前記蓋の下面に下方に向けて設けられる取手を有する、請求項1又は2に記載の避難口ハッチ。
【請求項9】
前記蓋は、前記蓋の下面に下方に向けて設けられる取手を有する、請求項3に記載の避難口ハッチ。
【請求項10】
前記解錠具は、把手と、把手の中央下部から下方に延びる作動棒と、前記作動棒の下端に前記解錠部材に係合する係合部を有する、請求項1又は2に記載の避難口ハッチ。
【請求項11】
前記蓋は、前記枠に設置される検知器に作用する押圧片を備え、前記押圧片が前記検知器に作用する閉鎖状態と、前記押圧片が前記検知器に作用しない開放状態と、を検知可能とされる、請求項1又は2に記載の避難口ハッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、避難口ハッチに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、床やベランダ等のスラブに設けられた開口部に嵌装・固定される収納枠(1)と、この収納枠(1)の床面側及び天井面側にそれぞれ俯仰揺動可能に枢着される上蓋(2)及び下蓋(3)と、これら上蓋(2)と下蓋(3)とを互いに連動して開閉動作させる開閉連動機構(5)と、収納枠(1)内に折畳まれて収納されると共に、上蓋(2)及び下蓋(3)が開らかれた際、階下の床若しくは、その近傍高さまで伸長するはしごとを具備し、この上蓋(2)の揺動遊端側での内面から下向きに突設した係止部材(7)と、この係止部材(7)と係脱可能な係合部材(8)とで構成したロック機構(6)と、前記下蓋の下方に突出する開放アーム(18)を有し、この開放アーム(18)の操作によって、該ロック機構(6)を解除可能に構成した避難用ハッチにおいて、前記係止部材(7)を上蓋(2)の揺動遊端側での内面に下向きに突出した係合フック部材で構成し、前記係合部材(7)を収納枠(1)の内面に対して昇降移動可能に支持され、前記係合フック部材(7)に係脱可能な縦長溝(10)をその側面部分に透設している係合片(8)で構成し、この係合片(8)の上部と収納枠(1)の側壁内面に支持させた回動式ロック解除具(14)とを連結索(16)で連結し、この回動式ロック解除具(14)を係合片のロック解除側に弾性付勢し、この回動式ロック解除具(14)に前記開放アーム(18)の先端部を当接させて回動式ロック解除具(14)を弾性付勢力に対抗する姿勢に保持するように構成したことを特徴とする避難用ハッチが記載されている。
【0003】
特許文献2には、ベランダ等のスラブに設けられた開口部に固定される収納枠と、この収納枠に開閉可能に枢着される上蓋及び下蓋と、上記収納枠内に折り畳まれて収納されると共に上記上蓋及び下蓋が開放されたとき、下方に伸長する梯子と、を具備する避難装置であって、上記上蓋の開放端側において鉛直方向に垂下される係止フックと、上記収納枠の内方側に突出される係止突起と、板状に形成され内部に長孔を有し、この長孔内に上記係止突起が離脱不可かつ長孔に沿って移動可能に設けられると共に、長孔上端部が上記係止フックに係合かつ離脱可能な係止部材と、を有するロック機構を具備してなり、上記上蓋における上記係止フックの上方の内面に、上記係止フックと係止部材とが係合状態において、上蓋が上下に揺動する際に上記長孔が係止フックから離脱する余剰ストロークを吸収する外れ止め部材を設けた、ことを特徴とする避難装置が記載されている。
【0004】
特許文献3には、建物の上階と下階の間のベランダや床に穿設された四角形の開口部に配設され、リンク機構20で連結され連動して開閉する上蓋2と下蓋3を備えた避難用ハッチ1において、前記上蓋2の前方部左右いずれか一方の側端部付近の裏面に固着された貫通長溝を有するロック金具5と、前記ロック金具5が固着された側のハッチ函体4の内側面前方部に固着されたベース11に枢設され、常時は上蓋2の前記ロック金具5の貫通長溝に挿入され、上蓋2を上部に引き上げて開こうとしたとき、前記ロック金具5の貫通長溝の閉塞部を係止して一定間隔以上開かないようにする係止片6bを有するロックレバー6と、前記ロックレバー6が枢設された側のハッチ函体4の内側面後方部に枢設され、前記ロックレバー6を回動して係止片6bを前記ロック金具5の溝から離脱させるためのロック開放用レバー7と、を備えてなることを特徴とする避難用ハッチが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-142519号公報
【特許文献2】特開2009-095354号公報
【特許文献3】特開2007-050080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された発明は、ハッチの内側に複雑な構造を有するロック機構が設けられており、階上でのロック解除操作時は、上蓋を僅かに持ち上げて係合片を係合フック部材から手で外さなければロックを解除することができず、ロック解除操作時に人の手や指を上蓋と収納枠との間に挟む危険がある。また、第三者が容易にハッチを開くことができることから、第三者のハッチ内への転落が発生する可能性がある。
【0007】
また、特許文献2に記載された発明は、収納枠から上蓋を引き上げて、その隙間から、ロック機構の係止フックから係止部材を手で外さなければロックを解除することができず、係止部材を係止フックから外す際に人の手や指を上蓋と収納枠との間に挟む危険がある。また、第三者が容易にハッチを開くことができることから、第三者のハッチ内への転落が発生する可能性がある。
【0008】
また、特許文献3に記載された発明は、上蓋の内側に複雑な構造を有するロック金具とロックレバーとで構成されたロック手段が設けられており、上蓋を開放する際には、上蓋の端部を引き上げてできる上蓋とハッチ函体との間の隙間に手を入れて、ロックレバーのロック開放用突起を押し下げてロックを解除しなければならず、ロックを解除する際に人の手や指を上蓋とハッチ函体との間に挟む危険がある。また、第三者が容易にハッチを開くことができることから、第三者のハッチ内への転落が発生する可能性がある。
【0009】
本発明は、簡単な構造のラッチ錠を用いて、蓋の開閉時における安全性の向上を図ることができる避難口ハッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1態様に係る避難口ハッチは、建物に開口される建物開口に設置される避難口ハッチであって、前記建物開口に設けられる枠と、前記枠に対して一方が支持されて旋回して開閉する蓋と、前記蓋に設けられ、前記枠に対して、前記蓋の上側から解錠が行われるとともに、前記蓋の下側から解錠が行われるロック錠と、を有し、前記ロック錠は、解錠部材と、前記解錠部材の回転によって前記枠の施錠穴に進退する施錠部材と、前記施錠部材の先端側で前記施錠穴に係合して施錠する施錠部と、を含んで構成され、前記施錠部材は、前記上側から解錠具が係合されて前記解錠具を回転させることにより前記施錠穴から前記施錠部が退避されて解錠されるとともに、前記下側から手の操作のみで解錠される。
【0011】
第2態様に係る避難口ハッチは、第1態様に係る避難口ハッチにおいて、前記解錠部材は、前記解錠具が係合されたまま回転させると前記蓋に係合されて、上方に引き上げることで前記施錠部材が前記施錠穴から退避された状態で前記蓋が開放される。
【0012】
第3態様に係る避難口ハッチは、第1態様又は第2態様に係る避難口ハッチにおいて、前記解錠部材の前記施錠部材は、施錠状態において、前記施錠穴に対して付勢力を付与する付勢部材を有する。
【0013】
第4態様に係る避難口ハッチは、第1態様又は第2態様に係る避難口ハッチにおいて、前記解錠部材が解錠方向に回転させられて前記蓋を引き上げると、前記蓋の開放方向に付勢力が付与される圧縮ダンパを有する。
【0014】
第5態様に係る避難口ハッチは、第3態様に係る避難口ハッチにおいて、前記解錠部材が解錠方向に回転させられて前記蓋を引き上げると、前記蓋の開放方向に付勢力が付与される圧縮ダンパを有する。
【0015】
第6態様に係る避難口ハッチは、第1態様又は第2態様に係る避難口ハッチにおいて、前記施錠部材は、前記施錠部材の下方に向けて突出する解錠片を有し、手で前記施錠部材を解錠方向に移動することで解錠される。
【0016】
第7態様に係る避難口ハッチは、第3態様に係る避難口ハッチにおいて、前記施錠部材は、前記施錠部材の下方に向けて突出する解錠片を有し、手で前記施錠部材を解錠方向に移動することで解錠される。
【0017】
第8態様に係る避難口ハッチは、第1態様又は第2態様に係る避難口ハッチにおいて、前記蓋は、前記蓋の下面に下方に向けて設けられる取手を有する。
【0018】
第9態様に係る避難口ハッチは、第3態様に係る避難口ハッチにおいて、前記蓋は、前記蓋の下面に下方に向けて設けられる取手を有する。
【0019】
第10態様に係る避難口ハッチは、第1態様又は第2態様に係る避難口ハッチにおいて、前記解錠具は、把手と、把手の中央下部から下方に延びる作動棒と、前記作動棒の下端に前記解錠部材に係合する係合部を有する。
【0020】
第11態様に係る避難口ハッチは、第1態様又は第2態様に係る避難口ハッチにおいて、前記蓋は、前記枠に設置される検知器に作用する押圧片を備え、前記押圧片が前記検知器に作用する閉鎖状態と、前記押圧片が前記検知器に作用しない開放状態と、を検知可能とされる。
【発明の効果】
【0021】
第1態様に係る避難口ハッチによれば、複雑なロック機構を有するものに比べて、簡単な操作で蓋の解錠と開閉が可能となり、蓋と枠との間に手を挿入しないため、手や指の挟み込みが防止され、第三者の蓋の開放を防止することができる。
【0022】
第2態様に係る避難口ハッチによれば、蓋の下面側にロック機構を有するものに比べて、蓋の上面の側から蓋の解錠と開放を容易に行うことができる。
【0023】
第3態様に係る避難口ハッチによれば、ロック機構が第三者でも開放できるものに比べて、施錠状態を確実に維持することができる。
【0024】
第4態様及び第5態様に係る避難口ハッチによれば、蓋の開放時に蓋が自重で閉鎖方向に自由落下するものに比べて、小さな力で蓋を開放することができ、蓋が不用意に閉鎖することを防止することができる。
【0025】
第6態様及び第7態様に係る避難口ハッチによれば、複雑なロック機構を有するものに比べて、蓋の下面の側から片手で容易に施錠部材を解錠することができる。
【0026】
第8態様及び第9態様に係る避難口ハッチによれば、蓋の下面を掌を上に向けて押し開くものに比べて、取手を掴んで蓋を押し開くため蓋の開放を容易に操作することができる。また、蓋を枠開口の中から閉める際に、開放方向に付勢されている蓋を下面の側から取手を引くことで容易に閉めることができ、安全性が向上する。
【0027】
第10態様に係る避難口ハッチによれば、蓋と枠との隙間から手を挿入して解錠するものに比べて、持ち運びが容易な道具だけで蓋を上面の側から解錠及び開放することができる。
【0028】
第11態様に係る避難口ハッチによれば、蓋の開閉状態を目視によって行うものに比べて、電気的信号によって蓋の開閉状態を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態の避難口ハッチを示す平面図である。
図2図1におけるA-A部分で切断した一部断面側面図である。
図3図1におけるB-B部分で切断した一部断面側面図である。
図4図1におけるC-C部分で切断した一部断面側面図であり、開閉蓋の開閉状態を示す一部断面側面図である。
図5】本発明のラッチ錠が枠にロックされている状態を示す一部断面側面図である。
図6】本発明のラッチ錠が解錠具によりロック解除された状態を示す一部断面側面図である。
図7】本発明の開閉蓋の開状態を示す一部断面側面図である。
図8】本発明の変形例を示す一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本実施形態に係る避難口ハッチの一例について図面を参照しながら説明する。なお、平面図において、紙面の手前側を上方又は上側と、またその反対側を下方又は下側と、それぞれ言う。
【0031】
[実施形態]
<避難口ハッチの全体構成>
図1に示すように、避難口ハッチ1は、建物10の建物開口10Aに設けられる枠12と、枠12に対して一方が支持されて旋回して開閉する蓋14と、蓋14に設けられ、枠12に対して、蓋14の上側から解錠が行われるとともに、蓋の下側から解錠が行われるロック錠20と、を有する。本実施形態では、蓋14の上面14Aは枠12の上面とほぼ同じレベルとされている。また、ロック錠20は、本実施形態では一例としてラッチ錠20を用いている。
【0032】
具体的には、図1から図3に示すように、枠12は、人が通過可能な大きさの枠開口12Aが形成され、枠開口12Aの内側に、一方が支持軸14Cに回転可能に支持される蓋14が設置されている。また、枠12と蓋14との間には圧縮ダンパ16が伸縮回動可能に設けられている。また、枠12の内面であって蓋14の開放自由端の側には、人が昇降する際に掴む取手12Bが設けられ、蓋14の下面14Bの側の下部部材14Dには、人が蓋14の下側から解錠する際の補助になるとともに蓋14を開放する際に掴み上げる取手14Eが設けられている。
【0033】
〔枠〕
図2及び図3に示すように、枠12は、上側が広く下側が上側より若干狭い階段状の断面を有する枠開口12Aを有し、この階段状の枠開口12Aの反対側がアングル材10Bによって建物開口10Aに固定されている。枠12と建物開口10Aとの間において、アングル材10Bの上部は耐火機能を有するシール材10Cによって封鎖されている。
また、枠開口12Aの階段状の下側に上記した取手12Bがふたつ設けられている。
【0034】
〔蓋〕
図2及び図3に示すように、蓋14は、上面14Aと下面14Bと下部部材14Dとで形成され、下部部材14Dの蓋14の開放自由端の側に、下方に向けて取手14Eが設けられている。蓋14は、下部部材14Dの縁部が枠開口12Aの階段状の部分の上面に接触した状態で乗ることにより、閉鎖状態とされている。また、蓋14は開放自由端の側に、後述するラッチ錠20を備える。
【0035】
〔圧縮ダンパ〕
図3に示すように、圧縮ダンパ16は、一方の端部が蓋14に回動可能に固定され、他方の端部が枠開口12Aの階段状の下側に回動可能に固定されている。図3においては、蓋14が閉鎖状態であるので、圧縮ダンパ16は縮圧された状態となっている。
【0036】
また、圧縮ダンパ16は、図4に示すように、筒体16Aと筒体16Aの内部で摺動可能とされるピストン16Bとを含んで構成され、ピストン16Bの内部には、ピストン16Bを伸張状態にする圧縮気体が封入されている。これにより、圧縮ダンパ16は、蓋14を開放方向に付勢乃至押圧することにより、蓋14を引き上げて開放する際の人の力を小さくすることができ、蓋14を押し下げて閉鎖する際にも蓋14の自重を支持することで、急激な閉鎖動作を回避して、人の手や指の蓋14と枠12との間の挟み込みを防止することができる。
【0037】
〔検知器と押圧片〕
図3及び図4に示すように、枠12の下側の枠開口12Aに検知器32が設けられている。検知器32は、上部に傾斜回転可能な検知部材32Aを有し、図示しない配線を介して建物10に設置される図示しない制御盤に連絡されている。一方、蓋14の下部部材には、蓋14が閉鎖状態の時に検知部材32Aを押圧して傾斜させる押圧片14Hが設けられている。図3及び図4の蓋14の閉鎖状態では、押圧片14Hが検知部材32Aを傾斜方向に回転させることにより、検知器32がON状態となり、制御盤に蓋14が閉鎖状態であることを示す閉鎖信号が送信される。本実施形態では、検知器32はリミットスイッチを用いている。
【0038】
また、図7に示すように、蓋14が開放状態の時は、検知器32の検知部材32Aと蓋14の押圧片14Hとが離間する。この状態では、検知部材32Aが直立して検知器32がOFF状態となり、制御盤に閉鎖信号が送信されないことをもって、蓋14が矢印Y方向に開放状態であることを報知することができる。
【0039】
<要部の構成>
次に、本発明の要部について、図4から図6を参照しながら説明する。
【0040】
[ラッチ錠]
図5図6に示すように、ラッチ錠20は、解錠部材20Aと、解錠部材20Aの回転によって枠12の施錠穴12Cに進退する施錠部材20Bと、施錠部材20Bの先端側で施錠穴12Cに係合して施錠する施錠部20Cと、を含んで構成され、施錠部材20Bは、上側から解錠具30が係合されて解錠具30を回転させることにより施錠穴12Cから施錠部20Cが退避されて解錠されるとともに、下側から手の操作のみで解錠される。下側から手で解錠するには、施錠部材20Bの施錠部20Cの反対側の端部から下方に延びる解錠片20Dを施錠部20Cの反対側に移動させることにより行う。
【0041】
ラッチ錠20の解錠部材20Aは、平面視円形をなし、上面に、後述する解錠具30の係合部30Cが係合する被係合凹部20Fが形成されている。解錠部材20Aは施錠部材20Bと作動連結されて、解錠部材20Aが回転することにより施錠部材20Bが、枠12の枠開口12Aに開口される施錠穴12Cに対して進退可能に作用する。
【0042】
また、ラッチ錠20は、蓋14の下面14Bの側で覆板18によって覆われている。覆板18は、蓋14の下面14Bに固定される立板18Aと、立板18Aに連続して形成される横板18Bと、施錠部材20Bの解錠片20Dを下方に突出させる開口18Cを有する。施錠部材20Bの施錠部20Cの反対側の端部は、覆板18の立板18Aとの間に設けられた付勢部材20Eによって蓋14の端面に開口される施錠部材通過穴14Gから突出する方向に付勢されている。本実施形態では、付勢部材20Eはコイルスプリングを用いている。
【0043】
〔解錠具〕
ラッチ錠20を解錠する解錠具30について、図5及び図6を参照しながら説明する。
【0044】
解錠具30は、把手30Aと、把手30Aの中央下部から下方に延びる作動棒30Bと、作動棒30Bの下端に解錠部材20Aに係合する係合部30Cを有する。解錠具30の係合部30Cは、蓋14の解錠部材20Aに対応する部分に開口される錠取付穴14Fを経由して、解錠部材20Aの被係合凹部20Fに係合乃至嵌合する。係合部30Cは被係合凹部20Fより僅かに小さく形成され、その平面視の形状はほぼ相似形を成している。
【0045】
<要部の作用>
次に、要部の作用について、図4から図7を参照しながら説明する。
【0046】
初期状態を図5に示す。図5に示すように、蓋14は枠12に施錠されている。この状態において、解錠具30の係合部30Cを蓋14の錠取付穴14Fを介して挿入し、解錠部材20Aの被係合凹部20Fに係合させる。係合部30Cは被係合凹部20Fの内部に嵌まり込む。
【0047】
図6に示すように、解錠具30を水平方向に回転させると、解錠部材20Aの回転に伴って作動連結された施錠部材20Bが枠12の施錠穴12Cから退避して解錠される。すなわち、図4に示す矢印Xの方向に施錠部材20Bが引き込まれることで解錠状態となる。このとき、解錠具30の係合部30Cも回転しており、係合部30Cの上面が蓋14の下面14Bに形成される係合面14Jに水平回転して接触する。
【0048】
この状態を維持したまま、人が解錠具30の把手30Aを引き上げると、図4に示すように、蓋14は支持軸14Cを回転軸として上方に回転して開放状態となり、蓋14の引き上げに用いた解錠具30を施錠部材20Bから解放する。
【0049】
このとき、圧縮ダンパ16は伸張状態となって、蓋14を開放方向に付勢乃至押圧を続けるが、図7に示すように、枠12の枠開口12Aから内方に突出して設けられたストッパ部材12Dと、蓋12の側面から突出して設けられた被ストッパ部材14Kとが衝接して、蓋14の開放を規制することで、蓋14の上面14Aと枠開口12Aの上端部との衝突を回避している。
【0050】
蓋14が開放状態の場合、検知器30の検知部材30Aと蓋14の押圧片14Hは離間しているため、検知器30はOFF状態となって、上述した制御盤へは閉鎖信号が送信されず、制御盤の側では、当該避難口ハッチ1の蓋14が開放状態であることを把握することができる。一方、蓋14が圧縮ダンパ16の付勢力に抗して矢印Z方向に閉鎖を開始して閉鎖状態(図4参照)にすれば、検知器30の検知部材30Aを蓋14の押圧片14Hが押圧して矢印W方向に傾斜させることで検知器30はON状態となって、上述した制御盤に閉鎖信号を送信することで制御盤の側では、当該避難口ハッチ1の蓋14が閉鎖状態であることを把握することができる。
【0051】
蓋14を枠開口12Aの中から閉める場合、圧縮ダンパ16によって開放方向に付勢されている蓋14を、作業者等の人が蓋14の下面14Bの側から取手14Eを引くことで容易に閉めることができる。この操作は、人が枠開口12Aの中から手を伸ばして蓋14を閉める状態になるため、取手14Eが蓋14の下面14Bの側に設けられていることにより、枠開口12A内に不安定な状態で居る人の蓋14の閉鎖行動が安定化され、人の転落等の危険な状態を未然に防止することができ、安全性が向上する。
【0052】
<変形例>
本発明の変形例について、図8を参照しながら説明する。なお、本実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、異なる構成にのみ新たな符号を付す。
【0053】
図8に示すように、本発明の変形例は、避難口ハッチ1が設けられる建物10、避難口ハッチ1の枠12及び蓋14のそれぞれの上面に化粧部材を設けた。これは、建物の意匠設計により、床面がタイル貼り、石貼り、クッションフロア材の施工等々の化粧部材が貼付されることを考慮したものである。この場合、ラッチ錠20が設置される部分は、化粧部材40に切り欠き部40Aを設けて、解錠具30の作用に支障を来たさぬようにした。
【0054】
以上、本発明は、建物10に開口される建物開口10Aに設置される避難口ハッチ1であって、建物開口10Aに設けられる枠12と、枠12に対して一方が支持されて旋回して開閉する蓋14と、蓋14に設けられ、枠12に対して、蓋14の上側から解錠が行われるとともに、蓋14の下側から解錠が行われるラッチ錠20と、を有し、ラッチ錠20は、解錠部材20Aと、解錠部材20Aの回転によって枠12の施錠穴12Cに進退する施錠部材20Bと、施錠部材20Bの先端側で施錠穴12Cに係合して施錠する施錠部20Cと、を含んで構成され、施錠部材20Bは、上側から解錠具30が係合されて解錠具30を回転させることにより施錠穴12Cから施錠部20Cが退避されて解錠されるとともに、下側から手の操作のみで解錠される。
【0055】
これにより、複雑なロック機構を有するものに比べて、簡単な操作で蓋14の解錠と開閉が可能となり、蓋14と枠12との間に手を挿入しないため、手や指の挟み込みが防止され、第三者の蓋14の開放を防止することができる。
【0056】
また、解錠部材20Aは、解錠具30が係合されたまま回転させると蓋14に係合されて、上方に引き上げることで施錠部材20Bが施錠穴12Cから退避された状態で蓋が開放される。
【0057】
これにより、蓋14の下面側にロック機構を有するものに比べて、蓋14の上面14Aの側から蓋14の解錠と開放を容易に行うことができる。
【0058】
また、解錠部材20Aの施錠部材20Bは、施錠状態において、施錠穴12Cに対して付勢力を付与する付勢部材20Eを有する。
【0059】
これにより、ロック機構が第三者でも開放できるものに比べて、施錠状態を確実に維持することができる。
【0060】
また、解錠部材20Aが解錠方向に回転させられて蓋14を引き上げると、蓋14の開放方向に付勢力が付与される圧縮ダンパ16を有する。
【0061】
これにより、蓋14の開放時に蓋14が自重で閉鎖方向に自由落下するものに比べて、小さな力で蓋14を開放することができ、蓋14が不用意に閉鎖することを防止することができる。
【0062】
また、施錠部材20Bは、施錠部材20Bの下方に向けて突出する解錠片20Dを有し、手で施錠部材20Bを解錠方向に移動することで解錠される。
【0063】
これにより、複雑なロック機構を有するものに比べて、蓋14の下面14Bの側から片手で容易に施錠部材20Bを解錠することができる。
【0064】
また、蓋14は、蓋14の下面14Bに下方に向けて設けられる取手14Eを有する。
【0065】
これにより、蓋14の下面14Bを掌を上に向けて押し開くものに比べて、取手14Eを掴んで蓋14を押し開くため蓋14の開放を容易に操作することができる。また、蓋を枠開口の中から閉める際に、開放方向に付勢されている蓋を下面14Bの側から取手14Eを引くことで容易に閉めることができ、安全性が向上する。
【0066】
また、解錠具30は、把手30Aと、把手30Aの中央下部から下方に延びる作動棒30Bと、作動棒30Bの下端に解錠部材20Aに係合する係合部30Cを有する。
【0067】
これにより、蓋14と枠12との隙間から手を挿入して解錠するものに比べて、持ち運びが容易な道具だけで蓋14を上面の側から解錠及び開放することができる。
【0068】
また、蓋14は、枠12に設置される検知器32に作用する押圧片14Hを備え、押圧片14Hが検知器32に作用する閉鎖状態と、押圧片14Hが検知器32に作用しない開放状態と、を検知可能とされる。
【0069】
これにより、蓋14の開閉状態を目視によって行うものに比べて、電気的信号によって蓋14の開閉状態を把握することができる。
【0070】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、本実施形態は一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更をして実施でき、また、本発明の権利範囲がこれら実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0071】
例えば、検知器32はリミットスイッチを用いていると説明したが、これに限らず、光電管によるストライカの検知としてもよく、蓋14の開閉状態を検知できるものであればいずれのものを用いてもよい。
【0072】
また、付勢部材20Eはコイルスプリングを用いていると説明したが、これに限らず、板ばね、弾性樹脂材、圧縮ダンパ等、施錠部材20Bを施錠穴12Cに向けて付勢できるものであればいずれのものでもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 避難口ハッチ
10 建物
10A 建物開口
10B アングル材
10C シール材
12 枠
12A 枠開口
12B 取手
12C 施錠穴
12D ストッパ部材
14 蓋
14A 上面
14B 下面
14C 支持軸
14D 下部部材
14E 取手
14F 錠取付穴
14G 施錠部材通過穴
14H 押圧片
14J 係合面
14K 被ストッパ部材
16 圧縮ダンパ
16A 筒体
16B ピストン
18 覆板
18A 立板
18B 横板
18C 開口
20 ラッチ錠(ロック錠の一例)
20A 解錠部材
20B 施錠部材
20C 施錠部
20D 解錠片
20E 付勢部材
20F 被係合凹部
30 解錠具
30A 把手
30B 作動棒
30C 係合部
32 検知器
32A 検知部材
40 化粧部材
40A 切り欠き部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8