(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122822
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】ポリスチレン系樹脂発泡シート及び包装用容器
(51)【国際特許分類】
C08J 9/04 20060101AFI20240902BHJP
B65D 1/00 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CET
B65D1/00 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082214
(22)【出願日】2023-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2023029887
(32)【優先日】2023-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000239138
【氏名又は名称】株式会社エフピコ
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】広末 康弘
(72)【発明者】
【氏名】青木 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】白石 奏
【テーマコード(参考)】
3E033
4F074
【Fターム(参考)】
3E033AA10
3E033BA22
3E033BB01
3E033CA03
3E033CA20
3E033DE20
3E033FA01
4F074AA13
4F074AB01
4F074AB05
4F074AC32
4F074BA37
4F074BA38
4F074CA22
4F074CC05Z
4F074CC22X
4F074DA02
4F074DA03
4F074DA23
4F074DA34
(57)【要約】
【課題】ポリスチレン系樹脂発泡シートは、成形体の嵌合性及び成形性の向上を図る。
【解決手段】発泡層を有し、前記発泡層は、ポリスチレン樹脂(A)とゴム変性ポリスチレン樹脂(B)とを含む樹脂を含み、前記ポリスチレン樹脂(A)の含有量は、前記樹脂の総質量に対して20~98質量%であり、前記ゴム変性ポリスチレン樹脂(B)の含有量は、前記樹脂の総質量に対して2~80質量%であり、樹脂の質量平均分子量は270,000~370,000であり、樹脂の総質量に対するゴムの純分は0.2~1.5質量%であり、加熱減量の変化率、加熱寸法変化率及び落錘衝撃試験の最大荷重が特定の範囲であることよりなる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡層を有し、
前記発泡層は、ポリスチレン系樹脂(A)とゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)とを含む樹脂を含み、
前記ポリスチレン系樹脂(A)の含有量は、前記樹脂の総質量に対して20~98質量%であり、
前記ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)の含有量は、前記樹脂の総質量に対して2~80質量%であり、
前記樹脂の質量平均分子量は270,000~370,000であり、
前記樹脂の総質量に対するゴムの純分は0.2~1.5質量%であり、
前記発泡層は、製造から7日後に前記発泡層を150℃で1時間加熱した際の質量の減少率(R7D)に対する、製造から90日後に前記発泡層を150℃で1時間加熱した際の質量の減少率(R90D)の割合が80~99%であり、
125℃で150秒間の加熱処理を施した際のMD方向の寸法変化率(RMD)及び125℃で150秒間の加熱処理を施した際のTD方向の寸法変化率(RTD)は、いずれも90~110%であり、
かつ、前記RTDに対する前記RMDの比(RMD/RTD比)は0.82~1.22であり、
落錘衝撃試験の最大荷重が30~150Nである、ポリスチレン系樹脂発泡シート。
【請求項2】
厚さが、0.9~1.4mmであり、
坪量が、160~300g/m2である、
請求項1に記載のポリスチレン系樹脂発泡シート。
【請求項3】
発泡層を有するポリスチレン系樹脂発泡シートを熱成形してなり、底壁部と、前記底壁部を囲み上端に開口部を形成する側壁部を有する包装用容器において、
前記発泡層は、ポリスチレン系樹脂(A)とゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)とを含む樹脂を含み、
前記ポリスチレン系樹脂(A)の含有量は、前記樹脂の総質量に対して20~98質量%であり、
前記ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)の含有量は、前記樹脂の総質量に対して2~80質量%であり、
前記樹脂の質量平均分子量は270,000~370,000であり、
前記樹脂の総質量に対するゴムの純分は0.2~1.5質量%であり、
前記発泡層は、製造から7日後に前記発泡層を150℃で1時間加熱した際の質量の減少率(R7D)に対して、製造から90日後に前記発泡層を150℃で1時間加熱した際の質量の減少率(R90D)の割合が80~99%であり、
前記ポリスチレン系樹脂発泡シートは、125℃で150秒間の加熱処理を施した際のMD方向の寸法変化率(RMD)及び125℃で150秒間の加熱処理を施した際のTD方向の寸法変化率(RTD)は、いずれも90~110%であり、かつ、前記RTDに対する前記RMDの比(RMD/RTD比)は0.82~1.22であり、
前記ポリスチレン系樹脂発泡シートは、落錘衝撃試験の最大荷重が30~150Nであり、
前記側壁部は、前記底壁部の外縁から上方に立ち上がる内側側壁部と、前記内側側壁部の上端から外方に張り出すフランジ部と、前記フランジ部の外縁から下方へ延びる外側側壁部とを有し、
前記外側側壁部は、前記フランジ部寄りに前記開口部を塞ぐ蓋体と嵌合可能な嵌合部を有する第一スカート部と、前記第一スカート部の外縁から下方へ延びる第二スカート部とを有し、
前記第二スカート部の下端は、前記開口部を上方にして置いた際に、載置面に接し、
前記内側側壁部は、前記外側側壁部の方向に張り出す張出部を有する、
包装用容器。
【請求項4】
前記張出部は、上方から下方に向かうに従い厚くなる、請求項3に記載の包装用容器。
【請求項5】
前記第二スカート部は、前記内側側壁部に向く面に周方向に延びる段部を有する、請求項3又は4に記載の包装用容器。
【請求項6】
底壁部と、前記底壁部を囲み上端に開口部を形成する側壁部を有し、
前記側壁部は、前記底壁部の外縁から上方に立ち上がる内側側壁部と、前記内側側壁部の上端から外方に張り出すフランジ部と、前記フランジ部の外縁から下方へ延びる外側側壁部とを有し、
前記外側側壁部は、前記フランジ部寄りに前記開口部を塞ぐ蓋体と嵌合可能な嵌合部を有する第一スカート部と、前記第一スカート部の外縁から下方へ延びる第二スカート部とを有し、
前記第二スカート部の下端は、前記開口部を上方にして置いた際に、載置面に接し、
前記内側側壁部は、前記外側側壁部の方向に張り出す張出部を有する包装用容器の製造方法であって、
請求項1又は2に記載のポリスチレン系樹脂発泡シートを熱成形して、前記包装用容器とする工程を有する、包装用容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリスチレン系樹脂発泡シート、包装用容器及び包装用容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
店舗で食品を購入し、これを自宅等へ持ち帰る、いわゆるテイクアウト商品がある。例えば、総菜等のテイクアウト商品には、樹脂の非発泡シートを成形してなる容器が汎用されている。これらのテイクアウト商品用の容器は、本体と、本体の周縁に嵌合する蓋体とを有している。かかる容器には、衝撃に対する耐性と、蓋体と本体との嵌合状態を維持できる強度とが要求されている。
【0003】
従来、ポリスチレン系樹脂発泡シートを成形してなるポリスチレン系樹脂発泡シート成形体(以下、「発泡シート成形体」ということがある)である容器が知られている。発泡シート成形体は、非発泡シートの成形体に比べて、樹脂量を減らしつつ、強度を維持できる。
例えば、特許文献1には、ポリスチレン系樹脂、ゴム変性ポリスチレン系樹脂及びスチレンブタジエンブロック共重合樹脂の混合樹脂からなり、押出方向の引張破断強度が特定の範囲である発泡シート成形体が提案されている。特許文献1に記載された発明によれば、柔軟性及び容器強度の両立を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された発明は、柔軟性を有して内容物を保護できるものの、蓋体と本体とを嵌合状態にすると容器本体が破損したり、嵌合状態を維持できなかったりする(嵌合性に劣る)という問題がある。また、発泡シートには、所望の形状に成形できる(成形性に優れる)ことが求められる。
そこで、本発明は、成形体の嵌合性及び成形性に優れる、ポリスチレン系樹脂発泡シートを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1>
発泡層を有し、
前記発泡層は、ポリスチレン系樹脂(A)とゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)とを含む樹脂を含み、
前記ポリスチレン系樹脂(A)の含有量は、前記樹脂の総質量に対して20~98質量%であり、
前記ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)の含有量は、前記樹脂の総質量に対して2~80質量%であり、
落錘衝撃試験の最大荷重が30~150Nである、
ポリスチレン系樹脂発泡シート。
<2>
厚さが、0.8~1.8mmであり、
坪量が、150~400g/m2である、
<1>に記載のポリスチレン系樹脂発泡シート。
【0007】
本発明はさらに以下の態様を有する。
<11>
発泡層を有し、
前記発泡層は、ポリスチレン系樹脂(A)とゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)とを含む樹脂を含み、
前記ポリスチレン系樹脂(A)の含有量は、前記樹脂の総質量に対して20~98質量%であり、
前記ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)の含有量は、前記樹脂の総質量に対して2~80質量%であり、
前記樹脂の質量平均分子量は270,000~370,000であり、
前記樹脂の総質量に対するゴムの純分は0.2~1.5質量%であり、
前記発泡層は、製造から7日後に前記発泡層を150℃で1時間加熱した際の質量の減少率(R7D)に対する、製造から90日後に前記発泡層を150℃で1時間加熱した際の質量の減少率(R90D)の割合が80~99%であり、
125℃で150秒間の加熱処理を施した際のMD方向の寸法変化率(RMD)及び125℃で150秒間の加熱処理を施した際のTD方向の寸法変化率(RTD)は、いずれも90~110%であり、
かつ、前記RTDに対する前記RMDの比(RMD/RTD比)は0.82~1.22であり、
落錘衝撃試験の最大荷重が30~150Nである、ポリスチレン系樹脂発泡シート。
<12>
厚さが、0.9~1.4mmであり、
坪量が、160~300g/m2である、
<11>に記載のポリスチレン系樹脂発泡シート。
【0008】
<13>
発泡層を有するポリスチレン系樹脂発泡シートを熱成形してなり、底壁部と、前記底壁部を囲み上端に開口部を形成する側壁部を有する包装用容器において、
前記発泡層は、ポリスチレン系樹脂(A)とゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)とを含む樹脂を含み、
前記ポリスチレン系樹脂(A)の含有量は、前記樹脂の総質量に対して20~98質量%であり、
前記ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)の含有量は、前記樹脂の総質量に対して2~80質量%であり、
前記樹脂の質量平均分子量は270,000~370,000であり、
前記樹脂の総質量に対するゴムの純分は0.2~1.5質量%であり、
前記発泡層は、製造から7日後に前記発泡層を150℃で1時間加熱した際の質量の減少率(R7D)に対して、製造から90日後に前記発泡層を150℃で1時間加熱した際の質量の減少率(R90D)の割合が80~99%であり、
前記ポリスチレン系樹脂発泡シートは、125℃で150秒間の加熱処理を施した際のMD方向の寸法変化率(RMD)及び125℃で150秒間の加熱処理を施した際のTD方向の寸法変化率(RTD)は、いずれも90~110%であり、かつ、前記RTDに対する前記RMDの比(RMD/RTD比)は0.82~1.22であり、
前記ポリスチレン系樹脂発泡シートは、落錘衝撃試験の最大荷重が30~150Nであり、
前記側壁部は、前記底壁部の外縁から上方に立ち上がる内側側壁部と、前記内側側壁部の上端から外方に張り出すフランジ部と、前記フランジ部の外縁から下方へ延びる外側側壁部とを有し、
前記外側側壁部は、前記フランジ部寄りに前記開口部を塞ぐ蓋体と嵌合可能な嵌合部を有する第一スカート部と、前記第一スカート部の外縁から下方へ延びる第二スカート部とを有し、
前記第二スカート部の下端は、前記開口部を上方にして置いた際に、載置面に接し、
前記内側側壁部は、前記外側側壁部の方向に張り出す張出部を有する、
包装用容器。
<14>
前記張出部は、上方から下方に向かうに従い厚くなる、<13>に記載の包装用容器。
<15>
前記第二スカート部は、前記内側側壁部に向く面に周方向に延びる段部を有する、<13>又は<14>に記載の包装用容器。
【0009】
<16>
底壁部と、前記底壁部を囲み上端に開口部を形成する側壁部を有し、
前記側壁部は、前記底壁部の外縁から上方に立ち上がる内側側壁部と、前記内側側壁部の上端から外方に張り出すフランジ部と、前記フランジ部の外縁から下方へ延びる外側側壁部とを有し、
前記外側側壁部は、前記フランジ部寄りに前記開口部を塞ぐ蓋体と嵌合可能な嵌合部を有する第一スカート部と、前記第一スカート部の外縁から下方へ延びる第二スカート部とを有し、
前記第二スカート部の下端は、前記開口部を上方にして置いた際に、載置面に接し、
前記内側側壁部は、前記外側側壁部の方向に張り出す張出部を有する包装用容器の製造方法であって、
<11>又は<12>に記載のポリスチレン系樹脂発泡シートを熱成形して、前記包装用容器とする工程を有する、包装用容器の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリスチレン系樹脂発泡シートによれば、成形体の嵌合性及び成形性の向上を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第一の実施形態に係る成形体を示す平面図である。
【
図3】スチレン系樹脂発泡シートの製造装置の一例を示す模式図である。
【
図4】本発明の第二の実施形態に係る包装用容器を示す斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態を示し、
図5の領域S2を拡大した内側側壁部の端面図である。
【
図7】本発明の一実施形態を示し、
図5の領域S2を拡大した内側側壁部の端面図である。
【
図8】本発明の一実施形態を示し、
図5の領域S2を拡大した内側側壁部の端面図である。
【
図9】本発明の一実施形態を示し、
図5の領域S1を拡大した第二スカート部の端面図である。
【
図10】本発明の一実施形態を示し、
図5の領域S1を拡大した第二スカート部の端面図である。
【
図11】本発明の第二の実施形態に係る包装用容器の使用方法を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(ポリスチレン系樹脂発泡シート)
本発明のポリスチレン系樹脂発泡シート(以下、単に「発泡シート」ということがある)は、ポリスチレン系樹脂を含む樹脂を含む発泡層を有する。
発泡シートは、発泡層のみからなる単層構造でもよいし、発泡層の片面又は両面に非発泡層を備える多層構造でもよい。非発泡層は、印刷を施した樹脂フィルムでもよいし、無地の樹脂フィルムでもよい。
【0013】
発泡シートの厚さは、用途を勘案して決定でき、例えば、0.8~1.8mmが好ましく、0.9~1.6μmがより好ましい。後述する第二の実施形態の包装用容器の製造に用いる場合には、発泡シートの厚さは、0.9~1.4mmがさらに好ましい。厚さが上記下限値以上であると、成形体の強度をより高め、嵌合性をより高められる。厚さが上記上限値以下であると、成形体のさらなる軽量化を図り、樹脂量のさらなる低減を図れる。加えて、厚さが上記上限値以下であると、成形性をより高め、成形体である容器等をスタックさせた際に、高さをより低減できる。
【0014】
発泡シートの坪量は、用途を勘案して決定でき、例えば、160~380g/m2が好ましく、160~300g/m2がより好ましい。坪量が上記下限値以上であると、成形体の剛性をより高めて、嵌合性をより高められる。坪量が上記上限値以下であると、成形体のさらなる軽量化を図り、樹脂量のさらなる低減を図れる。
【0015】
発泡シートは、落錘衝撃試験の最大荷重が30~150Nであり、35~130Nが好ましく、40~110Nがより好ましい。最大荷重が上記下限値以上であると、成形体の柔軟性を高めて、嵌合性を高められる、最大荷重が上記上限値以下であると、成形体の剛性を抑えて、嵌合性を高められる。
落錘衝撃試験の最大荷重は、ASTM D-3763-15に準じて測定される値である。
落錘衝撃試験の最大荷重は、発泡層樹脂の種類、発泡層の組成、エアー風量、気泡径等の組み合わせにより調節される。
【0016】
発泡シートの加熱減量の変化率は、80~99%が好ましく、82~99%がより好ましく、84~99%がさらに好ましい。
発泡シートが非発泡層を有する多層構造である場合、加熱時における発泡層の加熱寸法変化率が著しく小さいと、熱成形で得られた成形体において、発泡層と非発泡層との伸長にずれが生じる。例えば、非発泡層に印刷が施されており、発泡層と非発泡層との加熱寸法変化率が著しく異なると、印刷が所望の位置から大きくずれてしまう(定位置性が低い)。加熱減量の変化率が上記下限値以上であると、経日での二次発泡率の低下を抑制して、成形性をより高め、定位置性をより高められる。加えて、加熱減量の変化率が上記下限値以上であると、成形体の厚さを高めて、成形体の強度をより高められる。加熱減量の変化率の上限値は、特に限定されないが実質的な値である。
加熱減量の変化率は、発泡シートの製造方法における円筒状の発泡シートの引き取り速度、冷却用エアーの温度、発泡層樹脂の組成等の組み合わせにより調節できる。
【0017】
加熱減量の変化率の測定方法を説明する。
製造日から7日後に、発泡層を150℃で1時間の加熱処理を施す。加熱処理前の発泡層の質量(加熱前質量)をw1、加熱処理後の発泡層の質量(加熱後質量)をw2とし、下記(1)式により、7日後の質量減少率(R7D)を求める。
なお、「製造日」とは、後述する発泡シートの製造方法において、押出機から押し出した時が属する日(0日目)である。
【0018】
R7D(%)=(w1-w2)÷w1×100 ・・・(1)
【0019】
製造日から90日後に、発泡層を150℃で1時間加熱する。加熱前の発泡層の質量(加熱前質量)をw11、加熱後の発泡層の質量(加熱後質量)をw12とした際に、下記(2)式により、90日後の質量減少率(R90D)を求める。
【0020】
R90D(%)=(w11-w12)÷w1×100 ・・・(2)
【0021】
求められたR7DとR90Dとから(3)式により加熱減量の変化率(R90D/R7D)を求める。
【0022】
加熱減量の変化率(%)=R90D÷R7D×100 ・・・(3)
【0023】
発泡シートを125℃で加熱した際のMD方向の寸法の変化率(加熱寸法変化率(MD)=RMD)は、90~110%が好ましく、92~108%がより好ましく、93~107%がさらに好ましい。RMDが上記範囲内であると、加熱成形後の寸法の減少が小さく、定位置性をより高められる。
【0024】
RMDの測定方法について説明する。
発泡シートに対して125℃で150秒間の加熱処理を施す。加熱処理前のMD方向の長さをd1、加熱処理後のMD方向の長さをd2とし、下記(11)式によりRMDを求める。
【0025】
RMD(%)=d2÷d1×100 ・・・(11)
【0026】
発泡シートを125℃で加熱した際のTD方向の寸法の変化率(加熱寸法変化率(TD)=RTD)は、90~110%が好ましく、92~108%がより好ましく、93~107%がさらに好ましい。RTDが上記範囲内であると、加熱成形後の寸法の減少が小さく、定位置性をより高められる。
【0027】
RTDの測定方法について説明する。
発泡シートに対して125℃で150秒間の加熱処理を施す。加熱処理前のTD方向の長さをd11、加熱処理後のMD方向の長さをd12とし、下記(12)式によりRTDを求める。
【0028】
RTD(%)=d12)÷d11×100 ・・・(12)
【0029】
RTDに対するRMDの比(RMD/RTD比)は、0.82~1.22が好ましく、0.82~1.10がより好ましく、0.84~1.05がさらに好ましい。RMD/RTD比が上記範囲内であると、MD方向とTD方向との伸縮の程度のバランスが良好となり、定位置性をより高められる。
【0030】
<発泡層>
発泡層は、樹脂(発泡層を構成する樹脂を「発泡層樹脂」ということがある)と、発泡剤とを含有する樹脂組成物(発泡性樹脂組成物)を発泡してなる層である。
発泡層樹脂は、ポリスチレン系樹脂(A)(以下、「(A)成分」ということがある)とゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)(以下、「(B)成分」ということがある)とを含む。
【0031】
発泡層の厚さは、0.8~1.8mmが好ましく、0.9~1.6mmがより好ましい。後述する第二の実施形態の包装用容器の製造に用いる場合には、発泡シートの厚さは、0.9~1.4mmがさらに好ましい。発泡層の厚さが上記下限値以上であると、剛性を高めて、嵌合性をより高められる。発泡層の厚さが上記上限値以下であると、成形性を高められる。発泡層の厚さは、TD方向の任意の10点をノギスで測定し、その平均値として求められる。
【0032】
発泡層の発泡倍率は、2~13倍が好ましく、2.5~9倍がより好ましい。発泡倍率が上記下限値以上であると、剛性を高めて、嵌合性をより高められる。発泡倍率が上記上限値以下であると、耐衝撃性を高められる。発泡層の発泡倍率は、1を「発泡層の見掛け密度(g/cm3)」で除した値である。
【0033】
発泡層の坪量は、用途を勘案して決定でき、例えば、160~380g/m2が好ましく、170~360g/m2がより好ましい。坪量が上記下限値以上であると、成形体の剛性をより高めて、嵌合性をより高められる。坪量が上記上限値以下であると、成形体のさらなる軽量化を図り、樹脂量のさらなる低減を図れる。
【0034】
発泡層の平均気泡径は、例えば、80~450μmが好ましく、150~400μmがより好ましく、200~350μmがさらに好ましい。発泡層の平均気泡径が上記下限値以上であると、成形体の耐衝撃性を高められる。発泡層の平均気泡径が上記上限値以下であると、発泡層の表面平滑性を高められる。
発泡層の平均気泡径は、ASTM D2842-69に記載の方法に準拠して測定できる。
【0035】
発泡層の独立気泡率は、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、100%でもよい。発泡層の独立気泡率は、JIS K7138:2006「硬質発泡プラスチック-連続気泡率及び独立気泡率の求め方」に記載の方法に準拠して測定できる。
【0036】
≪(A)成分:ポリスチレン系樹脂≫
(A)成分は、ポリスチレン系樹脂である(但し、後述の(B)成分を除く)。即ち、(A)成分は、単量体成分として共役ジエンを含まない。(A)成分は、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i-プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等のスチレン系モノマーの単独重合体又はこれらの共重合体;スチレン系モノマーを主成分(50質量%以上)とし、スチレン系モノマーとこれに重合可能なビニルモノマーとの共重合体等である。
スチレン系モノマーと重合可能なビニルモノマーは、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレート、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレート等の二官能性モノマー等である。これらのビニルモノマーは、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
これらの(A)成分は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
(A)成分が共重合体である場合、共重合体に用いられる単量体の総質量に対するスチレン系単量体の量は、50質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましい。
共重合体に、スチレン系単量体と共重合可能なビニル単量体が用いられる場合、ビニル単量体の配合量は、発泡シートの用途等に応じて適宜決定され、例えば、共重合体に用いられる単量体の総質量に対して5質量%以下が好ましい。
【0037】
(A)成分は、市販されているポリスチレン系樹脂、懸濁重合法等の方法で新たに調製されたポリスチレン系樹脂等、リサイクル原料でないポリスチレン系樹脂でもよいし、リサイクル原料のポリスチレン系樹脂でもよい。
リサイクル原料は、使用済みのポリスチレン系樹脂発泡成形体である。リサイクル原料は、魚箱、家電緩衝材、食品包装用トレー等を回収し、リモネン溶解方式や加熱減容方式によって再生したもの等である。また、使用できるリサイクル原料は、家電製品(例えば、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン等)や事務用機器(例えば、複写機、ファクシミリ、プリンター等)から分別回収された非発泡のポリスチレン系樹脂成形体を粉砕し、溶融混練してリペレット化したものでもよい。
【0038】
(A)成分のメルトフローレイト(MFR)は、0.5~6.0g/10分が好ましく、0.7~3.0g/10分がより好ましい。
(A)成分のMFRが上記下限値以上であると、発泡樹脂層の厚さをより均一にできる。(A)成分のMFRが上記上限値以下であると、発泡樹脂層の発泡倍率をより高められる。
【0039】
本発明において、(A)成分のメルトフローレイト(MFR)は、JIS K 7210:1999「プラスチック-熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」B法記載の方法に準拠し、試験温度200℃、試験荷重49.03N、予熱時間5分の条件で測定される値をいう。
【0040】
(A)成分の質量平均分子量は、100,000~500,000が好ましく、200,000~400,000がより好ましい。(A)成分の質量平均分子量が上記下限値以上であると、発泡倍率が高まり、独立気泡率が高まる(連続気泡率が低下する)。(A)成分の質量平均分子量が上記上限値以下であると、溶融時の流動性が高まり、生産性が高まる。
【0041】
本発明において、樹脂の質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定したポリスチレン(PS)換算質量平均分子量を意味する。
質量平均分子量は、例えば、次のようにして測定する。試料6mgをTHF(テトラヒドロフラン)6mLに溶解させ(浸漬時間:6±1hr(完全溶解))、試料溶液を得た。(株)島津ジーエルシー製非水系0.45μmシリンジフィルターにて試料溶液をろ過してろ液を得る。下記測定条件にてクロマトグラフを用いてろ液を測定する。質量平均分子量(Mw)は、予め作成しておいた標準ポリスチレン検量線から求める。
【0042】
<測定条件>
使用装置=東ソー(株)製 「HLC-8320GPC EcoSEC」 ゲル浸透クロマトグラフ(RI検出器・UV検出器内蔵)。
≪GPC測定条件≫
[カラム]
・サンプル側
ガードカラム=東ソー(株)製 TSK guardcolumn SuperMP(HZ)-H(4.6mmI.D.×2cm)×1本。
測定カラム=東ソー(株)製 TSKgel SuperMultiporeHZ-H(4.6mmI.D.×15cm)×2本直列。
・リファレンス側
東ソー(株)製 TSKgel Super HZ1000(6.0mmI.D.×15cm)×1本。
カラム温度=40℃。
移動相=THF。
[移動相流量]
サンプル側ポンプ=0.2mL/min。
リファレンス側ポンプ=0.2mL/min。
検出器=RI検出器
試料濃度=0.1wt%。
注入量=20μL。
測定時間=26min。
サンプリングピッチ=200msec。
検量線用標準ポリスチレン試料は、昭和電工(株)製の製品名「STANDARD SM-105」および「STANDARD SH-75」で質量平均分子量が5,620,000、3,120,000、1,250,000、442,000、151,000、53,500、17,000、7,660、2,900、1,320のものを用いる。
上記検量線用標準ポリスチレンをA(5,620,000、1,250,000、151,000、17,000、2,900)およびB(3,120,000、442,000、53,500、7,660、1,320)にグループ分けした後、Aを(2mg、3mg、4mg、4mg、4mg)秤量後THF30mLに溶解し、Bも(3mg、4mg、4mg、4mg、4mg)秤量後THF30mLに溶解する。標準ポリスチレン検量線は、作製したAおよびB溶解液を20μL注入して測定後に得られた保持時間から較正曲線(一次式)を作成することにより得る。その検量線を用いて質量平均分子量を算出する。
【0043】
発泡層中の(A)成分の含有量は、発泡層樹脂の総質量に対して、20~98質量%が好ましく、30~96質量%がより好ましく、40~95質量%がさらに好ましい。(A)成分の含有量が上記下限値以上であると、成形体の剛性がより高まり、嵌合性をより高められる。(A)成分の含有量が上記上限値以下であると、柔軟性を高めて、成形性をより高められる。
【0044】
≪(B)成分:ゴム変性ポリスチレン系樹脂≫
(B)成分は、ポリスチレン系樹脂に共役ジエン系重合体を混合してなる高分子アロイ、及び、ポリスチレン系樹脂に共役ジエン系重合体をグラフト共重合してなるグラフト共重合体をそれぞれ包含する。
(B)成分は、ポリスチレン系樹脂の連続相(海)中に、粒径(ゴム粒径)が0.3~10μmの共役ジエン系重合体からなる粒子(島)が分散している海島構造を有し、一般的にはハイインパクトポリスチレンと称される。
なお、(B)成分では、共役ジエン系重合体部分(共役ジエンブロック)の二重結合に対する水素添加は行われていない。
【0045】
(B)成分におけるポリスチレン系樹脂には、上述した(A)成分と同様のものが用いられる。
共役ジエン系重合体としては、例えば、共役ジエンの重合体又は共重合体、共役ジエンと芳香族ビニル化合物との共重合体が挙げられる。共役ジエン系重合体が共役ジエンの共重合体、又は共役ジエンと芳香族ビニル化合物との共重合体である場合、共役ジエン系重合体は、ブロック共重合体であってもよいし、ランダム共重合体のいずれであってもよい。この共役ジエンとしては、例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられ、ブタジエンが好ましい。芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i-プロピルスチレン、t-ブチルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等が挙げられ、スチレンが好ましい。
【0046】
(B)成分中のスチレン系単量体単位の含有量は、(B)成分を構成する単量体単位の総質量に対して、75~99質量%が好ましく、80~97質量%がより好ましい。
スチレン系単量体単位の含有量が上記下限値以上であると、発泡シートの成形性がより高まる。スチレン系単量体単位の含有量が上記上限値以下であると、発泡シートの柔軟性が高まって、耐衝撃性が高まる。
【0047】
(B)成分のMFRは、1.5~4.0g/10分が好ましく、2.5~4.0g/10分がより好ましい。
(B)成分脂のMFRが上記下限値以上であると、発泡層の厚さをより均一にできる。(B)成分のMFRが上記上限値以下であると、発泡層の発泡倍率をより高められる。
なお、(B)成分のMFRは、(A)成分のMFRと同じ条件で測定する。
【0048】
(B)成分の質量平均分子量は、100,000~350,000が好ましく、150,000~300,000がより好ましい。
(B)成分脂の質量平均分子量が上記下限値以上であると、発泡樹脂層の独立気泡率が高まり、発泡樹脂層の厚さが高まる。ゴム変性ポリスチレン系樹脂の質量平均分子量が上記上限値以下であると、溶融時の流動性が高まり、生産性が高まる。
【0049】
(B)成分は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0050】
(B)成分のゴムの純分(ゴム分)の含有量は、(B)成分の総質量に対し、1~20質量%が好ましく、1.5~16質量%が好ましい。ゴム分の含有量が上記数値範囲内であると、成形性がより高まる。
発泡層樹脂中のゴム分の含有量は、発泡層樹脂の総質量に対して、0.1~16質量%であり、0.2~13質量%がより好ましく、0.3~10質量%がさらに好ましい。ゴム分の含有量が上記下限値以上であると、柔軟性を高めて、成形性をより高められる。ゴム分の含有量が上記上限値以下であると、成形体の剛性をより高めて、嵌合性をより高められる。
【0051】
ゴム分の測定方法について、説明する。
試料約0.1gをクロロホルム約20mLに溶解し、ホットプレートでフィルムを作製する。キューリー点が590℃の日本分析工業(株)製「パイロホイル」強磁性金属体で試料を包んで試験体を作製する。試験体は強磁性金属体が試料に圧着するように作製する。日本分析工業(株)製「JPS-700型」キューリーポイントパイロライザー装置にて試験体を加熱し、試料を分解させる。分解によって生成したブタジエンモノマーと4-ビニルシクロヘキセンをアジレント・テクノロジー(株)製「GC7820」ガスクロマトグラフ(検出器=FID)を用いて測定し、合計ピーク面積を求める。試料に含まれるブタジエンゴム量は、予め作成しておいた検量線より算出する。
【0052】
≪測定条件≫
・加熱=590℃-5sec。
・オーブン温度=300℃。
・ニードル温度=300℃。
・カラム=Agilent Technologies製「DB-5」(0.25μm×0.25mmφ×30m)。
≪GCオーブン昇温条件≫
・初期温度=50℃(0.5min保持)。
・第1段階昇温速度=10℃/min(200℃まで、0min保持)。
・第2段階昇温速度=20℃/min(320℃まで)。
・最終温度=320℃(0.5min保持)。
・キャリアーガス=He。
・He流量=25mL/分。
・注入口圧力=100kPa。
・カラム入口圧力=100kPa。
・注入口温度=300℃。
・検出器温度=300℃。
・スプリット比=1/50。
検量線作成用標準試料は、例えば、POLYSCIENCES.INC製St/BD=85/15(CAT#07073)樹脂を使用する。
【0053】
(B)成分の含有量は、発泡層樹脂の総質量に対して、2~80質量%であり、3~70質量%がより好ましく、5~60質量%がさらに好ましい。(B)成分の含有量が上記下限値以上であると、柔軟性がより高まる。(B)成分の含有量が上記上限値以下であると、成形体の剛性がより高まり、嵌合性をより高められる。
【0054】
≪その他の樹脂≫
発泡層樹脂は、(A)成分及び(B)成分以外の樹脂(任意樹脂)を含んでもよい。任意樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等が挙げられる。
任意樹脂の含有量は、発泡層樹脂の総質量に対して、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
【0055】
発泡層樹脂の質量平均分子量は、例えば、270,000~370,000が好ましく、280,000~360,000がより好ましく、290,000~350,000がさらに好ましい。発泡層樹脂の質量平均分子量が上記下限値以上であると、樹脂がより良好に伸びて成形性をより高め、樹脂の曲げ強度をより高めて成形体の強度をより高められる。発泡層樹脂の質量平均分子量が上記上限値以下であると、発泡層を製造する際に押し出し圧力が低下して、生産性をより高められる。
発泡層樹脂の質量平均分子量が上記上限値以下であると、加熱寸法変化率が適度となり、定位置性をより高められる。
【0056】
発泡層樹脂に含まれるゴム分は、発泡層樹脂の総質量に対して、例えば、0.2~1.5質量%が好ましく、0.2~1.3質量%がより好ましく、0.2~1.0質量%がさらに好ましい。ゴム分が上記下限値以上であると、成形体をより割れにくくしし、後述する身蓋容器において、蓋体を嵌合した際の破損をより良好に防止できる。ゴム分が上記上限値以下であると、剛性がより高まり、加熱減量の変化率を低減できる。
【0057】
≪発泡剤≫
発泡剤は、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン等の炭化水素;テトラフルオロエタン、クロロジフルオロエタン、ジフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素等である。中でも、発泡剤としては、ブタンが好適である。ブタンは、ノルマルブタン又はイソブタンの単独でもよいし、ノルマルブタンとイソブタンとの組み合わせでもよい。
これらの発泡剤は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
発泡剤の配合量は、発泡剤の種類や、発泡層に求める全体密度等を勘案して決定される。発泡剤の含有量は、発泡層樹脂100質量部に対して1.0~7.0質量部が好ましい。
【0058】
≪任意成分≫
発泡層は、発泡層樹脂及び発泡剤以外の任意成分(発泡層任意成分)を含んでもよい。発泡層任意成分としては、例えば、気泡調整剤、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、消臭剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤等が挙げられる。
発泡層任意成分の種類は、発泡シートに求められる物性等を勘案して決定される。
発泡層任意成分は、1種単独でもよく、2種以上の組み合わせでもよい。また、発泡層任意成分は、マスターバッチとして配合されてもよい。
【0059】
気泡調整剤としては、例えば、タルク、シリカ等の無機粉末等の混合物等が挙げられる。これらの気泡調整剤は、発泡シートの独立気泡率を高め、発泡層を形成しやすい。
安定剤としては、例えば、カルシウム亜鉛系熱安定剤、スズ系熱安定剤、鉛系熱安定剤等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、酸化セシウム系紫外線吸収剤、酸化チタン系紫外線吸収剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、酸化セリウム、酸化セリウム/ジルコニア固溶体、水酸化セリウム、カーボン、カーボンナノチューブ、酸化チタン、及びフラーレン等が挙げられる。
着色剤としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、チタンイエロー、酸化鉄、群青、コバルトブルー、焼成顔料、メタリック顔料、マイカ、パール顔料、亜鉛華、沈降性シリカ、カドミウム赤等が挙げられる。
消臭剤としては、例えば、シリカ、ゼオライト、リン酸ジルコニウム、ハイドロタルサイト焼成物等が挙げられる。
【0060】
発泡層任意成分の含有量は、発泡層樹脂100質量部に対して、例えば、0.05~20質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましく、0.3~5.0質量部がさらに好ましい。発泡層任意成分の含有量が上記下限値以上であると、発泡層任意成分に由来する効果を発揮できる。発泡層任意成分の含有量が上記上限値以下であると、ダイ等への目詰まりをより良好に防止し、発泡層の外観をより良好にできる。
【0061】
<発泡シートの製造方法>
発泡シートは、従来公知の製造方法により製造される。
図3の発泡シートの製造装置1は、押出成形により発泡シートを得る装置である。製造装置1は、押出機10と、発泡剤供給源18と、サーキュラーダイ20と、マンドレル30と、2つの巻取機40とを備える。
押出機10は、いわゆるシングル型押出機である。押出機10は、ホッパー14を備える。押出機10には、発泡剤供給源18が接続されている。
押出機10には、サーキュラーダイ20が接続されている。サーキュラーダイ20の下流には、カッター32を備えるマンドレル30が設けられている。サーキュラーダイ20とマンドレル30との間には、冷却用送風機(不図示)が設けられている。
なお、製造装置1の押出機10はシングル型押出機以外の押出機でもよいし、いわゆるタンデム型押出機でもよい。
また、製造装置1の押出機10は単軸押出機であってもよいし、二軸押出機等の多軸押出機であってもよい。
【0062】
発泡層を構成する原料(発泡層樹脂、発泡層任意成分)をホッパー14から押出機10に投入する。
押出機10では、原料を任意の温度に加熱しながら混合して樹脂溶融物とし、発泡剤供給源18から発泡剤を押出機10に供給し、樹脂溶融物に発泡剤を混合して発泡性樹脂組成物とする。
加熱温度は、樹脂の種類等を勘案して、樹脂が溶融しかつ任意成分が変性しない範囲で適宜決定される。
【0063】
発泡性樹脂組成物は、押出機10にて、さらに混合される。発泡性樹脂組成物は、任意の温度にされた後、サーキュラーダイ20内の樹脂流路に導かれる。
樹脂流路に導かれた発泡性樹脂組成物は、サーキュラーダイ20の吐出口から吐出され、発泡剤が発泡して、発泡体である円筒状の発泡シート2aとなる(押出発泡工程)。この発泡シート2aは、発泡層のみで形成されている。
円筒状の発泡シート2aは、冷却用送風機から送風された冷却用のエアーが吹き付けられつつ、マンドレル30に案内される。円筒状の発泡シート2aは、マンドレル30の外面を通過し、任意の温度に冷却されて発泡硬化物となり、カッター32によって2枚に切り裂かれて発泡シート2となる(切開工程)。発泡シート2は各々ガイドロール42とガイドロール44とに掛け回され、巻取機40に巻き取られて発泡シートロール4となる。
【0064】
サーキュラーダイ20の吐出口における発泡性樹脂組成物に対するせん断速度は、7500s-1以下が好ましく、6500s-1以下がより好ましく、6000s-1以下がさらに好ましい。
【0065】
(成形体)
本発明の成形体は、本発明の発泡シートを熱成形してなる。
成形体としては、食品用等の容器、緩衝材等が挙げられる。
容器としては、平面視で、真円形、楕円形、半円形、多角形、扇形等のトレー、丼形状の容器、有底円筒状又は有底角筒状等の容器、納豆用容器等の蓋付容器等の種々の容器;容器本体に装着される蓋体等が挙げられる。これらの容器の用途としては、例えば、食品用が好ましい。
また、容器としては、喫食時に一時的に用いる食器等の容器、食品等の包装に用いる容器(包装用容器)等が挙げられる。
容器としては、内部に収容部を有し上端に開口部を有する容器本体と、容器本体の開口部を塞ぐ蓋体と、を有する容器(いわゆる身蓋容器)が好ましい。身蓋容器とすることで、容器本体と蓋体との嵌合性を高められる。
身蓋容器としては、蓋体の周縁と、容器本体の開口部周縁とに、互いに嵌合する嵌合部を有する容器が好ましい。
【0066】
<第一の実施形態>
本発明の包装用容器の第一の実施形態である身蓋容器の一例について、説明する。
図1~2に示すように、容器100は、容器本体110と、蓋体120とを有する。容器本体110は、平面視円形の底壁部112と、底壁部112の周縁から立ち上がる側壁部114とを有する。容器本体110は、側壁部114の上端で囲われた開口部113を有し、内部に収容部111を有する。
側壁部114は、その上端に、開口部113から外方に張り出す本体フランジ部116を有する。
蓋体120は、平面視円形の天壁部122と、天壁部122の周縁から外方に広がりつつ下方に向かう肩部124と、肩部124の下端から外方に張り出し、次いで下方に延びる蓋体フランジ部126とを有する。平面視で、蓋体フランジ部126は、蓋体120の外周を周回している。
本実施形態においては、蓋体フランジ部126と本体フランジ部116とで嵌合部を構成する。
【0067】
容器100の大きさは、特に限定されないが、例えば、平面視での長手又は直径が100~350mm、側面視での高さが30~150mmとされる。
【0068】
図2に示すように、容器100は、蓋体120で容器本体110の開口部113を塞いぐと、本体フランジ部116が蓋体フランジ部126の内部に挿入し、本体フランジ部116は蓋体フランジ部126で把持される。こうして、蓋体120が容器本体110に嵌め合わされる。この時、蓋体120は、落錘衝撃試験の最大荷重が特定値以上である発泡シートからなるため、蓋体フランジ部126を本体フランジ部116に嵌め合わせる際に、蓋体フランジ部126が破損せず、優れた嵌合性を発揮する。また、蓋体120は、落錘衝撃試験の最大荷重が特定値以下である発泡シートからなるため、蓋体フランジ部126の剛性が高まり、蓋体フランジ部126が本体フランジ部116に嵌め合わされた状態が容易に解除されず、優れた嵌合性を発揮する。
【0069】
<第一の実施形態の製造方法>
成形体は、従来公知の製造方法により製造され、例えば、発泡シートを任意の温度を加熱しつつ、雌型と雄型とで挟み込んで、任意の形状に成形する方法(熱成形)等が挙げられる。
この時、本発明の発泡シートは、落錘衝撃試験の最大荷重が特定値以上であるため、雌型及び金型の形状に追随し、より高い精度で所望の形状の成形体を得られる。
【0070】
<第二の実施形態>
本発明の包装用容器の第二の実施形態について、説明する。
図4の包装用容器200は、蓋体と独立した身蓋容器の容器本体の一例である。包装用容器200は、平面視四角形の底壁部210と、底壁部210を囲む側壁部220とを有する。即ち、包装用容器200は、平面視で四角形である。包装用容器200は、その上端に側壁部220で囲まれた開口部201を有する。包装用容器200は、底壁部210と側壁部220とで囲まれた空間で収容部211を形成している。
本実施形態の包装用容器200は、本発明の発泡シートの成形体であり、底壁部210及び側壁部220は、発泡層を有する。
また、包装用容器200は、包装用容器200の底面視形状が、包装用容器200の平面視形状を受け入れる形状となっている。これにより、2つ以上の包装用容器200を重ねた際に、高さを抑制できる。
【0071】
側壁部220は、内側側壁部222と、フランジ部224と、外側側壁部226とを有する。内側側壁部222は、底壁部210の外縁から開口部201の方向(即ち、上方)に立ち上がってる。フランジ部224は、内側側壁部222の上端から外方(開口部201から離れる方向)に張り出している。外側側壁部226は、フランジ部224の外縁から下方に延びている。
外側側壁部226は、第一スカート部225と、第二スカート部227とを有する。本実施形態において、第一スカート部225は、フランジ部224の外縁から下方に向かって延び(垂下部)、次いで外方に延びている(即ち、第一スカート部225はフランジ部224寄りに位置する)。本実施形態において、第一スカート部225の垂下部は、フランジ部224の外縁から下方に向かって延びている。加えて、第一スカート部225の垂下部は、上方から下方に向かうに従い内側側壁部222に近づく形状、即ちテーパー状に形成してもよい。第一スカート部225は、係る形状を有することで、蓋体(不図示)が第一スカート部225の外周に嵌合(外嵌合)できる。即ち、第一スカート部225は、蓋体と嵌合可能な嵌合部を有する。第二スカート部227は、第一スカート部225の外縁から下方に向かって延びている。
なお、嵌合部は上述の形態に限定されず、蓋体の形状等に応じて適宜決定できる。
本実施形態において、第二スカート部227の下端(即ち、外側側壁部226の下端)229は、底壁部210よりも下方に位置している。これにより、開口部201を上方にして、包装用容器200をテーブル等に置いた時に、下端229はテーブル等の載置面に接する。加えて、開口部201を上方にして、包装用容器200をテーブル等に置いた時に、底壁部210の下面は、設置面に接しない。
【0072】
内側側壁部222は、下面、即ち外側側壁部226に向く側の面(被収容物が収容されない側の面)に張出部223を有する。張出部223は、外側側壁部226の方向に張り出し、その下方の内側側壁部222に対して段差を形成する。
本実施形態において、張出部223は、内側側壁部222の周方向に連なって周回している。但し、張出部223は、内側側壁部222の周方向に断続的に位置してもよいし、周方向の一部のみに位置してもよい。
【0073】
例えば、張出部としては、
図6に示す張出部223aが挙げられる。張出部223aは、フランジ部224(即ち、上方)から下方に向かうに従い厚くなっている。加えて、張出部223aは、上方から下方に向かうに従い外側側壁部226方向に近づいている。
また例えば、張出部としては、
図7に示す張出部223bが挙げられる。張出部223bは、上方から下方に向かうに従い厚くなっている。但し、張出部223bは、上方から下方に向かうに従い外側側壁部226方向に近づかない。載置面に対して略垂直とは、載置面に対して90°±5°であることをいう。
あるいは例えば、張出部としては、
図8に示す張出部223cが挙げられる。張出部223cは上方から下方に向かい段差を形成している。
【0074】
なお、張出部223は、その下方の内側側壁部222に対して段差を形成できればよく、上方から下方に向かう従い外側側壁部226から離れる形状でもよい。
また、張出部223は、上方から下方に向かうに従い薄くなっていてもよいし、厚さが変わらなくてもよい。
【0075】
内側側壁部222は、内側側壁部222の上下方向において、1つの張出部223を有してもよいし、2つ以上の張出部223を有してもよい。
例えば、
図6の内側側壁部222は、内側側壁部222の上下方向において、1つの張出部223aを有する。
図7の内側側壁部222は、内側側壁部222の上下方向において、1つの張出部223bを有する。
図8の内側側壁部222は、内側側壁部222の上下方向において、2つの張出部223cを有する。
【0076】
第二スカート部227は、下面(即ち、内側側壁部222に向く面)に、外側側壁部226の周方向に延びる2つの段部228を有する。段部228は、外側側壁部226の周方向に連なっていてもよいし、断続的でもよい。あるいは、段部228は、外側側壁部226の周方向の一部にのみ位置してもよい。但し、成形性及び強度をより高める観点から、段部228は、周方向に連なるか、周方向に断続的に存在することが好ましい。
本実施形態において、第二スカート部227は、2つの段部228を有する。段部228と、その段部228よりも下方に位置する段部228との境界に形成された面(端面)228aは、下方に向いている。
例えば、
図9に示す第二スカート部227のように、段部228の端面228a1は、載置面に対して略水平である。なお、載置面に対して略水平とは、載置面に対して0±5°であることをいう。
あるいは、
図10に示す第二スカート部227のように、段部228の端面228a2は、載置面に対して、傾斜している。端面228a2は、第二スカート部227の下面から外方に向かうに従い、下方に近づいている。
【0077】
本実施形態において、第二スカート部227、第二スカート部227の上下方向において、2つの段部228を有するが、上下方向における段部228の数は、1つでもよいし、3つ以上でもよい。
【0078】
包装用容器200の大きさは、特に限定されないが、例えば、長さ100~400mm×幅100~400mm×高さ20~50mmが好ましい。包装用容器200の長さは、平面視における任意の方向の長さであり、包装用容器200の幅は前記の任意の方向に直交する方向の長さである。包装用容器200の高さは、下端229からフランジ部224の天面までの距離である。
【0079】
本実施形態の包装用容器200は、平面視四角形であるが、本発明はこれに限定されず、包装用容器の平面視は、円形でもよいし、四角形以外の多角形でもよい。
【0080】
包装用容器200の壁の厚さは、発泡シートの厚さと同様である。
包装用容器200の壁の坪量は、発泡シートの坪量と同様である。
【0081】
包装用容器200の発泡層は、ポリスチレン系樹脂(A)とゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)とを含む樹脂(発泡層樹脂)を含む。包装用容器200の発泡層樹脂の組成は、本発明の発泡シートの発泡層樹脂の組成と同様である。
包装用容器200の発泡層樹脂の質量平均分子量は、270,000~370,000が好ましい。
包装用容器200の発泡層樹脂の総質量に対するゴム分は、例えば、0.2~1.5質量%が好ましく、0.2~1.3質量%がより好ましく、0.2~1.0質量%がさらに好ましい。ゴム分が上記下限値以上であると、より割れにくくなり、蓋体を嵌合した際の破損をより良好に防止できる。ゴム分が上記上限値以下であると、剛性がより高まり、加熱減量の変化率を低減できる。
【0082】
包装用容器200が非発泡層を有する場合、非発泡層の厚さは、発泡シートの厚さと同様である。
包装用容器200が非発泡層を有する場合、非発泡層の組成は、発泡シートの組成と同様である。
【0083】
包装用容器における落錘衝撃試験の最大荷重は、上述の発泡シートにおける落錘衝撃試験の最大荷重と同様である。
【0084】
包装用容器200の底壁部210及び側壁部220の厚さは、発泡シートの厚さと同様である。底壁部210の厚さと側壁部220の厚さとは、同じでもよいし、異なってもよい。包装用容器200の厚さは、包装用容器200に求める剛性等を勘案して適宜決定できる。
【0085】
包装用容器200の底壁部210及び側壁部220の坪量は、発泡シートの坪量と同様である。底壁部210の坪量と側壁部220の坪量とは、同じでもよいし、異なってもよい。包装用容器200の坪量は、包装用容器200に求める強度等を勘案して適宜決定できる。
【0086】
包装用容器200は、それ自体を輸送又は保管する際には、2つ以上が重ねられる。2つ以上の包装用容器200を重ねる場合、上に位置する包装用容器200の底面視形状(即ち、下面)が、下に位置する包装用容器200の平面視形状(即ち、上面)を受け入れて、両者を重ねる(
図11)。この際、下に位置する包装用容器200の内側側壁部222の上面又はフランジ部224の上面が、上に位置する包装用容器200の内側側壁部222の張出部223に当接する。このため、下に位置する包装用容器200が、上に位置する包装用容器200に過度にスタックすることなく、上に位置する包装用容器200と下に位置する包装用容器200とを容易に分離できる。
加えて、包装用容器200は、第二スカート部227の下面に段部228を有するため、2つ以上の包装用容器200を重ねた場合に、上に位置する包装用容器200の第二スカート部227の下面と、下に位置する包装用容器200の第二スカート部227の上面との接触面積が小さくなる。このため、上に位置する包装用容器200の第二スカート部227の下面と、下に位置する包装用容器200の第二スカート部227の上面との抵抗が小さくなり、上に位置する包装用容器200と下に位置する包装用容器200とを容易に分離できる。なお、上面とは、被収容物が収容される側の面であり、開口部201を鉛直方向上方に向けた状態で、上方に向く面である。下面とは、被収容物が収容される側とは反対側の面であり、開口部201を鉛直方向上方に向けた状態で、下方に向く面である。
【0087】
包装用容器200を1つずつ分離したのち、開口部201を上にして、被収容物を開口部201から底壁部210の上に乗せる。こうして、被収容物を包装用容器200の収容部211に入れる。
被収容物としては、握りずしや巻きずし等の米飯類、総菜類等の調理済食品が挙げられる。
【0088】
包装用容器200に被収容物を収容した後、蓋体で開口部201を塞ぐ。包装用容器200の側壁部220は、特定の組成の発泡層を有し、かつ落錘衝撃試験の最大荷重が特定の範囲であるため、蓋体を第一スカート部225に嵌合した際に、割れを生じない。
包装用容器200において、外側側壁部226の下端229が底壁部210よりも下方に位置している。即ち、包装用容器200をテーブル等に対置した際、底壁部210が載置面から離間している。かかる形状であっても、包装用容器200は、特定の組成の発泡層を有し、かつ落錘衝撃試験の最大荷重が特定の範囲であるため、被収容物を収容した状態で、過度の変形を生じず、持ち運びするのに十分な強度を有する。
このため、包装用容器200は、例えば、調理済食品の持ち帰り用容器として好適である。
【0089】
<第二の実施形態の製造方法>
包装用容器200は、従来公知の製造方法により製造され、例えば、発泡シートを任意の温度を加熱しつつ、雌型と雄型とで挟み込んで、任意の形状に成形する方法(熱成形)等が挙げられる。
本実施形態の製造方法に用いる発泡シート(第二の実施形態の発泡シート)は、上述した本発明の発泡シートである。
第二の実施形態の発泡シートの発泡層樹脂の質量平均分子量は、270,000~370,000が好ましい。
第二の実施形態の発泡シートの発泡層樹脂の総質量に対するゴム分は、例えば、0.2~1.5質量%が好ましく、0.2~1.3質量%がより好ましく、0.2~1.0質量%がさらに好ましい。ゴム分が上記下限値以上であると、より割れにくくなり、蓋体を嵌合した際の欠損をより良好に防止できる。ゴム分が上記上限値以下であると、剛性がより高まり、加熱減量の変化率を低減できる。
【0090】
第二の実施形態の発泡シートの加熱減量の変化率は、80~99%が好ましく、82~99%がより好ましく、84~99%がさらに好ましい。加熱減量の変化率が上記下限値以上であると、経日での二次発泡率の低下を抑制して、成形性をより高め、定位置性をより高められる。加えて、加熱減量の変化率が上記下限値以上であると、成形体の厚さを高めて、成形体の強度をより高められる。加熱減量の変化率の上限値は、特に限定されないが実質的な値である。
【0091】
第二の実施形態の発泡シートにおいて、RMD及びRTDは、いずれも90~110%が好ましく、92~108%がより好ましく、93~107%がさらに好ましい。RTD及びRMDが上記下限値以上であると、加熱成形後の寸法の減少が小さく、定位置性をより高められる。RTD及びRMDが上記上限値以下であると、加熱成形後の寸法の減少が小さく、定位置性をより高められる。なお、RMDとRTDとは同じでもよいし、異なってもよい。
【0092】
第二の実施形態の発泡シートにおいて、RTDに対するRMDの比(RMD/RTD比)は、0.82~1.22が好ましく、0.82~1.10がより好ましく、0.84~1.05がさらに好ましい。RMD/RTD比が上記範囲内であると、MD方向とTD方向との伸縮の程度のバランスが良好となり、定位置性をより高められる。
【0093】
第二の実施形態の発泡シートにおける落錘衝撃試験の最大荷重は、上述の発泡シートにおける落錘衝撃試験の最大荷重と同様である。
【0094】
第二の実施形態の発泡シートを熱成形した際、第二の実施形態の発泡シートは、落錘衝撃試験の最大荷重が特定値以上であるため、雌型及び金型の形状に追随し、より高い精度で所望の形状の成形体を得られる。
第二の実施形態の発泡シートは、R7Dに対するR90Dの割合が特定の範囲であるため、熱成形時において定位置性、成形性をより高められる。
第二の実施形態の発泡シートは、RMD及びRTDが特定の範囲であり、かつRMD/RTD比が特定の範囲であるため、定位置性をより高め、成形性をより高められる。
【0095】
以上説明した通り、本発明の発泡シートによれば、特定の樹脂を含む発泡層を含み、落錘衝撃試験の最大荷重が特定の範囲であるため、成形体の嵌合性及び成形性を高められる。
【実施例0096】
[製造例1]
(使用原料)
<(A)成分>
・A-1:HRM18、東洋スチレン社製。
・質量平均分子量=278,000。
・MFR=4.9g/10min。
・A-2:G9305、PSJ社製。
・質量平均分子量=330,000。
・MFR=1.5g/10min。
・A-3:HRM40、東洋スチレン社製。
・質量平均分子量=345,000。
・MFR=1.0g/10min。
【0097】
<(B)成分>
・B-1:EX7、東洋スチレン社製。
・質量平均分子量=172,000。
・MFR:3.3g/10min。
・ゴム分:13.4質量%
・ゴム粒径:4.8μm。
・B-2:E641N、東洋スチレン社製。
・質量平均分子量=210,000。
・MFR:3.4g/10min。
・ゴム分:6質量%
・ゴム粒径:2.7μm。
・B-3:475D、PSJ社製。
・質量平均分子量=237,000。
・MFR:2.6g/10min。
・ゴム分:5.9質量%。
・ゴム粒径:3.4μm。
【0098】
<発泡剤>
・混合ブタン:イソブタン/ノルマルブタン=70/30(質量比)。
【0099】
<任意成分>
・タルクマスターバッチ(タルクMB):DSM1401A、東洋スチレン社製。タルク=40質量部、ポリスチレン=60質量部。
【0100】
(製造例1-1~1-13)
図3の発泡シートの製造装置と同様の製造装置を用い、下記のようにして発泡シートを得た。
表1の組成に従い、(A)成分と(B)成分と発泡層任意成分とを押出機に投入し、最高到達温度300℃で加熱し、溶融混練して樹脂溶融物とした。
押出機に発泡剤(イソブタン:ノルマルブタン=70:30(質量比)の混合物)を供給し、樹脂溶融物と発泡剤とを混合して発泡性樹脂組成物とした。発泡剤の配合量は、表中に示す質量部とした。
発泡性樹脂組成物を190℃に冷却し、サーキュラーダイ(口径200mm)で押し出し、発泡させて円筒状の発泡体を得た。この際、サーキュラーダイから押し出された直後に、円筒状の発泡シートの内面及び外面に冷却用のエアー(30℃)を吹き付けて冷却した。
冷却後の円筒状の発泡シートを押出方向に沿って切り裂いて、各例の発泡シートを得た。
得られた発泡シートについて、成形性、嵌合性を評価し、その結果を表中に示す。
【0101】
(試験方法)
<落錘衝撃試験>
落錘衝撃試験の最大荷重を、ASTM D-3763-15に準拠し測定した。すなわち、最大荷重は、CEAST社製「CEAST9350」落錘衝撃試験機、計測ソフト「CEAST VIEW」を用いて、測定した。試験片サイズは、長さ100mm×幅100mmとした。試験条件は次の通りとした。
【0102】
≪測定条件≫
・試験速度:1.79m/sec。
・試験荷重:1.9265kg。
・試験片支持スパン:φ76mm。
・使用タップ:4.5kN計装化タップ(先端φ12.7mm半球状)。
試験片の数は最小5個とした。試験片はASTM D618-13のProcedureA(23±2℃、相対湿度50±10%)の環境で40時間かけて状態調節し、測定に用いた。測定は同じ温度環境下で行った。最大荷重は、計測ソフトにて自動検出されたPeakPointにおける荷重とした。
【0103】
<成形性>
嵌合性の評価に用いた容器を成形し、成形された容器を目視で観察し、下記評価基準に従って評価した。
【0104】
≪評価基準≫
〇:容器に割れやひびが生じていない。
×:容器に割れ又はひびが生じ、容器として使用できない。
【0105】
<嵌合性>
各例の発泡シートで、
図1~2の容器100と同様の容器(平面視で直径180mm、側面視で高さ45mm)を製造した、蓋体を容器本体に嵌め合わせた際の状態を観察し、下記評価基準に従って、評価した。
【0106】
≪評価基準≫
〇:蓋体を容器本体に嵌め合わせた際にフランジ部の破損がなく、かつ、蓋体をつかんで持ち上げても、蓋体が容器本体から外れない。
×:蓋体を容器本体に嵌め合わせた際にフランジ部の破損があるが、破損がなくても、蓋体をつかんで持ち上げると、蓋体が容器本体から外れる。
【0107】
【0108】
表1に示す通り、本発明を適用した製造例1-1~1-8は、いずれも成形性及び嵌合性の評価が「〇」であった。
落錘衝撃試験の最大荷重が155Nである製造例1-9は、成形性の評価が「〇」であるが、嵌合性の評価が「×」であった。
落錘衝撃試験の最大荷重が20~28Nである製造例1-10~1-13は、成形性及び嵌合性の評価が「×」であった。
これらの結果から、本発明を適用することで、成形体の嵌合性及び成形性を高められることを確認できた。
【0109】
[製造例2]
(使用原料)
<(A)成分>
・A-11:HRM18、東洋スチレン社製。
・質量平均分子量=278,000。
・MFR=4.9g/10min。
・A-12:G9305、PSJ社製。
・質量平均分子量=330,000。
・MFR=1.5g/10min。
・A-13:HRM40、東洋スチレン社製。
・質量平均分子量=345,000。
・MFR=1.0g/10min。
・A-14:HMT-1、東洋スチレン社製。
・質量平均分子量=385,000。
・MFR=1.0g/10min。
・A-15:HMR-12、東洋スチレン社製。
・質量平均分子量=240,000。
・MFR=5.5g/10min。
【0110】
<(B)成分>
・B-11:EX7、東洋スチレン社製。
・質量平均分子量=172,000。
・MFR:3.3g/10min。
・ゴム分:13.4質量%
・ゴム粒径:4.8μm。
・B-12:E641N、東洋スチレン社製。
・質量平均分子量=210,000。
・MFR:3.4g/10min。
・ゴム分:6質量%
・ゴム粒径:2.7μm。
・B-13:475D、PSJ社製。
・質量平均分子量=237,000。
・MFR:2.6g/10min。
・ゴム分:5.9質量%。
・ゴム粒径:3.4μm。
【0111】
<発泡剤>
・混合ブタン:イソブタン/ノルマルブタン=70/30(質量比)。
【0112】
(製造例2-1~2-24)
図3の発泡シートの製造装置と同様の製造装置を用い、下記のようにして発泡シートを得た。
表2~3の組成に従い、(A)成分と(B)成分と発泡層任意成分とを押出機に投入し、最高到達温度300℃で加熱し、溶融混練して樹脂溶融物とした。押出機に発泡剤を供給し、樹脂溶融物と発泡剤とを混合して発泡性樹脂組成物とした。発泡剤の配合量は、表中に示す質量部とした。発泡性樹脂組成物を160.5℃に冷却し、サーキュラーダイ(口径は表中に記載)で押し出し、発泡させて円筒状の発泡体を得た。この際、サーキュラーダイから押し出された直後に、円筒状の発泡シートの内面及び外面に冷却用のエアー(30℃)を吹き付けて冷却した。冷却後の円筒状の発泡シートを押出方向に沿って切り裂いて、各例の発泡シートを得た。得られた発泡シートについて、加熱減量の変化率、RMD、RTD、RMD/RTD比を測定し、成形性、嵌合性、定位置性を評価し、その結果を表中に示す。
【0113】
<加熱寸法変化率>
測定資料は、円筒状の発泡シートを切り裂いた双方から、それぞれからMD方向100mm×TD方向100mmの四角形の測定試料を幅方向に5枚を切り出した(測定資料計10枚)。
測定試料に対して、恒温槽で125℃、150秒間の加熱処理を施し、MD方向の長さ及びTD方向の長さを測定した。
1枚の測定試料のMD方向の長さは、MD方向に沿う2辺の長さの平均値である。また、MD方向に沿う各辺の長さは、発泡シートの表裏における長さの平均値である。10枚のMD方向の長さの平均値を各例の加熱処理後のMD方向長さとした。
1枚の測定試料のTD方向の長さは、TD方向に沿う2辺の長さの平均値である。また、TD方向に沿う各辺の長さは、発泡シートの表裏における長さの平均値である。10枚のTD方向の長さの平均値を各例の加熱処理後のTD方向長さとした。
加熱処理前のMD方向の長さ(d1=100mm)と加熱処理後のMD方向の長さ(d2)とからRMDを算出した。
加熱処理前のTD方向の長さ(d11=100mm)と加熱処理後のTD方向の長さ(d12)とからRMDを算出した。
【0114】
<加熱減量の変化率>
各例の発泡シートについて、製造から7日後及び90日後に、下記方法により加熱前質量、加熱後質量を測定した。
各例の発泡シートからMD方向100mm×TD方向100mmの四角形の測定試料10枚を切り出した。測定資料は、円筒状の発泡シートを切り裂いた双方から、それぞれ10枚×3組を切り出した(測定試料計60枚)。各組の測定資料の質量を測定し、加熱前質量とした。
測定試料に対して、恒温槽で150℃、1時間の加熱処理を施した。加熱処理を施した測定試料の質量を測定し、加熱後質量とした。
得られた加熱前質量と加熱後質量とから、加熱減量の変化率(R90D/R7D)を算出し、6組の平均値をとった。
【0115】
<成形性>
嵌合性の評価に用いた包装用容器を成形し、成形された包装用容器を目視で観察し、下記評価基準に従って評価した。
【0116】
≪評価基準≫
◎:包装用容器に割れやひびが生じておらず、張出部、段部の形状がシャープである。
〇:包装用容器に割れやひびが生じておらず、張出部、段部の形状が部分的にシャープでない。
△:包装用容器に割れやひびが生じていないが、張出部、段部の角部が全体的にシャープでない。
×:包装用容器に割れ又はひびが生じ、容器として使用できない。
【0117】
<嵌合性>
各例の発泡シートで、
図4の包装用容器200と同様の包装用容器(平面視で、長さ378mm×幅378mm×高さ34mm)を製造した。ポリスチレン製の蓋体を包装用容器に嵌め合わせた際の状態を観察し、下記評価基準に従って、評価した。
【0118】
≪評価基準≫
◎:蓋体を包装用容器に嵌め合わせた際にフランジ部の破損がなく、かつ、蓋体をつかんで持ち上げても、蓋体が包装用容器から外れない。さらに、蓋体を包装用容器から外した際に、包装用容器に変形が認められない。
〇:蓋体を包装用容器に嵌め合わせた際にフランジ部の破損がなく、かつ、蓋体をつかんで持ち上げても、蓋体が包装用容器から外れない。さらに、蓋体を包装用容器から外した際に、包装用容器のフランジ部の一部のみにしか変形が認められない。
△:蓋体を包装用容器に嵌め合わせた際にフランジ部の破損がなく、かつ、蓋体をつかんで持ち上げても、蓋体が包装用容器から外れない。さらに、蓋体を包装用容器から外した際に、包装用容器のフランジ部の全体に変形が認められる。
×:蓋体を包装用容器に嵌め合わせた際にフランジ部の破損があるが、破損がなくても、蓋体をつかんで持ち上げると、蓋体が包装用容器から外れる。
【0119】
<定位置性>
印刷柄の境界線が、内側側壁部の上面(収容部側)における底壁部とフランジ部との間で、内側側壁部を周回するように形成される設計とした。
各例の発泡シートで可剛性の評価に用いた包装用容器と同様の包装用容器を成形し、4辺の内側側壁部における境界線の位置(フランジ部の天面からの距離)を測定した。対向する内側側壁部における境界線の位置の差を求め、下記評価基準に従って評価した。
【0120】
≪評価基準≫
〇:対向する内側側壁部における境界線の位置の差が5mm以内である。
×:対向する内側側壁部における境界線の位置の差が5mm超である。
【0121】
【0122】
【0123】
製造例2-1~2-13、2-23は、上述した第二の実施形態の製造に用いるのに好適な発泡シートである。
表2~3に示すように、製造例2-1~2-13、2-21~2-23は、成形性、嵌合性及び定位置性のいずれの評価も「◎」、「〇」又は「△」であった。
発泡層樹脂のゴム分が1.5質量%であり、加熱減量の変化率が75.2%であり、落錘衝撃試験の最大荷重が154Nである製造例2-14は、定位置性が「×」であった。
発泡層樹脂のゴム分が0.18質量%で、落錘衝撃試験の最大荷重が27Nである製造例2-15は、嵌合性が「×」であった。
発泡層樹脂の質量平均分子量が378,000、RTDが111%、RMD/RTD比が0.79である製造例2-16は、定位置性が「×」であった。
発泡層樹脂の質量平均分子量が264,000、RTDが108%、RMD/RTD比が0.93である製造例2-17は、定位置性が「×」であった。
加熱減量の変化率が78.7%である製造例2-18は、定位置性が「×」であった。
RTDが112%である製造例2-19、及びRTDが88%である製造例2-20は、定位置性が「×」であった。
落錘衝撃試験の最大荷重が23Nである製造例2-24は、成形性、嵌合性及び定位置性のいずれの評価も「×」であった。