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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122825
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】感温センサー
(51)【国際特許分類】
   G01K 11/06 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
G01K11/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094523
(22)【出願日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】P 2023029120
(32)【優先日】2023-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】599140781
【氏名又は名称】株式会社ジークエスト
(74)【代理人】
【識別番号】100076093
【弁理士】
【氏名又は名称】藤吉 繁
(72)【発明者】
【氏名】小田代 健
(72)【発明者】
【氏名】荷口 みどり
【テーマコード(参考)】
2F056
【Fターム(参考)】
2F056UB01
(57)【要約】
【課題】
化学物質やワックスなどの融解現象を利用した従来の温度感知シールでは、設定温度超過の事実は、この温度感知シールの設置場所において、直接目視しなければ知ることが出来ず、遠隔地や高所、狭隘箇所あるいは人体に有害な環境下にある場所などでの温度管理は、この従来の温度感知シールでは無理だった。
【手段】
リード線の一端が接続された導電性を有する一対の磁石片の間に、予め設定された温度で固体から液体に相変化する固形状かつ非導電性の熱融解物質片を挟み込み、前記一対の磁石片を非接触状態に保持した状態で、容器内に収容せしめて感温センサーを構成した。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれリード線の一端が接続された導電性を有する一対の磁石片の間に、予め設定された温度で固体から液体に相変化する固形状かつ非導電性の熱融解物質片を挟み込み、これら一対の磁石片を非接触状態に保ちつつ相互に引き合う状態で、容器内に収容せしめたことを特徴とする感温センサー。
【請求項2】
リード線の一端が接続された導電性を有する磁石片と、別のリード線の一端が接続された軟磁性体の金属片との間に、予め設定された温度で固体から液体に相変化する固形状かつ非導電性の熱融解物質片を挟み込み、前記磁石片と金属片とを非接触状態に保ちつつ磁石片が金属片を吸引した状態で、容器内に収容せしめたことを特徴とする感温センサー。
【請求項3】
磁石片を構成する磁石それ自体が導電性を有することを特徴とする請求項1又は2記載の感温センサー。
【請求項4】
非導電性の磁石の外側を導電性を有する軟磁性体の金属で覆って磁石片を構成したことを特徴とする請求項1又は2記載の感温センサー。
【請求項5】
熱融解物質片が炭化水素を主成分とするワックスを素材としていることを特徴とする請求項1又は2記載の感温センサー。
【請求項6】
容器が中空の箱型であることを特徴とする請求項1又は2記載の感温センサー。
【請求項7】
容器が軟質合成樹脂製の袋体であることを特徴とする請求項1又は2記載の感温センサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は感温センサー、詳しくは、温度管理を必要とする各種機器類に取り付け、あらかじめ設定された温度に達したとき、その事実を不可逆的に感知する感温センサーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種機器類の温度管理は、機器類の安定的な稼動の為に重要であることは言うまでもなく、あらかじめ設定された温度に達したとき、発色現象によってその事実を表示する温度感知シールを対象機器類に貼付して温度管理の用に供することは、従来から広く行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4789083号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】なし
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在主流となっている温度感知シールは、特許文献1に示すものの様に、あらかじめ設定された設定温度で融解して固体から液体に相変化する化学物質やワックスなどの熱融解物質を薄い紙に浸み込ませたシート状の不透明な感温材を、一方の面に色彩が施された紙の彩色面の上に重ね合せ、この熱融解物質の融解現象によって、それまで外部から遮蔽され見えなかった色紙の彩色面が透けて見える様にすることにより、設定温度超過の事実を不可逆的に表示するものであり、各種機器類の所望部位に簡単に貼付られ、狭いスペースにも適用可能で、電源等を必要とせず、安価であるので、あらゆる産業界において広く用いられている。
【0006】
しかし、この温度感知シールによる温度管理の場合、これを貼付けた場所において直接目視しなければ設定温度超過の事実を知ることが出来ず、遠隔地や高所、狭隘箇所、あるいは人体に有害な環境下にある場所などでの温度管理は、この温度感知シールでは無理であった。
【0007】
設置個所の温度変化を電気的に感知し、電気信号に変え、外部に伝えられる様にするなら、遠隔地や高所、狭隘箇所あるいは人体に有害な環境下にある場所などでの温度感知も可能となるが、その為には、発色現象を用いた上述の温度感知シールよりはるかに複雑な構造のものを必要とし、それに伴い製造コストも上昇するので、安価なことが大きなメリットである従来の温度感知シールの代替には到底なり得なかった。
【0008】
本発明者は、遠隔地や高所、狭隘箇所あるいは人体に有害な環境下など、従来の温度感知シールを用いることが困難な場所でも、低コストかつ高精度で不可逆的な温度感知が可能となる感温センサーを実現すべく鋭意研究を行った結果、従来の温度感知シールと同等の手軽さで設置出来、感知結果を遠隔地でも知ることが出来る画期的な感温センサーを開発することに成功し、本発明としてここに提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
それぞれリード線の一端が接続された導電性を有する一対の磁石片の間、あるいはリード線の一端が接続された導電性を有する磁石片と別のリード線の一端が接続された軟磁性体の金属片との間に、予め設定された温度で固体から液体に相変化する固形状かつ非導電性の熱融解物質片を挟み込み、前記磁石片や金属片を非接触状態に保ちつつ吸引力を保持した状態で、容器に収容せしめて感温センサーを構成することにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0010】
温度測定しようとする機器類の所望位置に取り付けたり、所望箇所に載置すると共に、接続されているリード線を所望の観測地点まで延設し、観測地点に電球などの表示手段を配置して使用に供するものであり、機器類の取り付け位置や載置箇所があらかじめ設定された設定温度を超えると、磁石片や金属片の間に挟み込まれている熱融解物質片は融解して液状化するが、磁石片や金属片は磁力によって相互に引き合っているので、熱融解物質片は液状化すると同時に磁石片や金属片の間から強制的に押し出され、磁石片や金属片は磁力によって強固に密着し、両者は電気的に接続される。
従って、磁石片や金属片にそれぞれ接続されている一対のリード線が導通し、観測地点において電球の点灯などにより設定温度超過の事実を表示する。
【0011】
なお、この感温センサーの設置箇所の温度が設定温度超過後に設定温度以下に低下したとしても、磁石片や金属片の磁力による接合状態はそのまま強固に維持されるので、設定温度超過の事実はそのまま不可逆的に表示され続ける。
又、磁石片や金属片の接合は磁力によるものなので、この感温センサーに振動が加わったとしても、接合状態は安定的に維持される。
この様に、この感温センサーにおいては、磁力による磁石片や金属片の接合という単純だが確実な手段を用いているので、設置個所の設定温度超過の事実を正確、確実かつ安定的に感知し、電気信号として取り出すことが出来、遠隔地や高所、狭隘箇所あるいは人体に有害な環境下など、従来の温度感知シールを用いることが困難な場所でも低コストかつ高精度で不可逆的な温度感知が実現出来るすぐれた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明に係る感温センサーの一実施例の横断面図。
図2】同じく、その一部を切欠いて描いた斜視図。
図3】同じく、他の実施例の横断面図。
図4】同じく、その一部を切欠いて描いた斜視図。
図5図1に示す感温センサーにおける一対の磁石片と熱融解物質片とからなる感温体の拡大斜視図。
図6】同じく、感温体の他例の拡大斜視図。
図7】同じく、磁石片の他例の拡大斜視図。
図8】同じく、容器の他例の拡大斜視図。
図9】熱融解物質片が融解し、磁石片同士が磁力によって密着し、回路が形成された状態の横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
導電性を有する一対の磁石片の間、あるいは、導電性を有する磁石片と軟磁性体の金属片との間に、予め設定された温度で固体から液体に相変化する固形状かつ非導電性の熱融解物質片を挟み込み、前記磁石片や金属片を非接触状態を保ちつつ吸引力を保持した状態で、容器内に収容せしめ、熱融解物質の融解作用によって磁石片や金属片が磁力によって接合し回路を形成することにより、設定温度超過の事実を電気的に検出出来る様にした点に最大の特徴が存する。
【実施例0014】
図1乃至図9を参照しながら、この発明に係る感温センサーの実施例について説明する。
図中1は小径の円盤状をなした導電性を有する一対の磁石片であり、それぞれのN極とS局とが相互に磁力によって引き合う相対的位置関係を保って対向せしめられている。なお、この実施例においては、図5に示す様に、磁石片1は円盤状を呈しているが、図6に示す様に、板状やブロック状でもよく、その形状は問わない。
【0015】
磁石片1は導電性を有することが肝要であり、アルニコ磁石などが好適に使用されるが、図7に示す様に、フェライト磁石などそれ自体導電性を有しない非導電性磁石9の外側を軟磁性体金属10で覆ったものであっても良い。
【0016】
そして、これら一対の磁石片1の間には、板状をなした非導電性の固形状の熱融解物質片3が挟み込まれており、磁石片1、熱融解物質片3、磁石片1の順で重ね合わされ、感温体4を構成している。
【0017】
なお、上記実施例においては、一対の磁石片1.1の間に熱融解性物質片3を挟み込んでいるが、図3及び図4に示す様に、一方の磁石片1を、磁力によって吸引される性質を持った軟磁性体金属からなる金属片2に代えても良く、その場合は、磁石片1、熱融解物質片3、金属片2の順に重ね合せて感温体を構成する。
この場合、金属片2は磁石に引き付けられる性質と共に導電性を有することが必要であり、軟磁性体である鋼材が好適に使用される。
【0018】
熱融解物質片3に用いる熱融解物質とは、予め設定された温度で融解して固体から液体に相変化する物質であり、直鎖状炭化水素を主体とするワックスやトリラウリン、ミリスチン酸、ベヘン酸、ステアリン酸アミドなどの化学物質がこれに該当し、従来の感温ラベルに用いられている熱融解物質と基本的に同じである。
【0019】
又、磁石片1や金属片2には、それぞれリード線5の一端が接続されている。
更に、感温体4は図1図2及び図3図4に示す様に、合成樹脂製の容器6内に収容されている。
これら実施例における容器6は軟質合成樹脂を素材とした中空の扁平な箱型を呈したものであるが、その内部空間に感温体4を収容出来るものであるなら、その形状は問わずに、図8に示す様な軟質合成樹脂製の袋状のものであっても良い。
【0020】
これら実施例は上記の通りの構成を有し、温度測定しようとする機器類の所望位置に取り付けたり、所望箇所に載置すると共に、磁石片1や金属片2に一端が接続されたリード線5.5を所望の観測地点まで延設し、観測地点に電球7などの表示手段8を配置して使用に供するものであり、機器類の取り付け位置や載置箇所があらかじめ設定された設定温度を超えると、図9に示す様に、容器6内において磁石片1や金属片2に挟み込まれている融解物質片3は融解して液状化するが、磁石片1や金属片2は磁力によって相互に引き合っているので、液状化した熱融解物質片3は磁石片1や金属片2の間から強制的に押し出され、磁石片1や金属片2は磁力によって強固に密着し、両者は電気的に接続される。
【0021】
従って、磁石片1や金属片2にそれぞれ接続されている一対のリード線5.5が導通し、観測地点に設置された表示体8としての電球7などを点灯させ、設定温度超過の事実を表示する。
なお、容器6の設置箇所の温度が設定温度超過後に、設定温度以下に低下し、融解物質片3の融解物質が再び固体に戻ったとしても、磁石片1や金属片2の磁力による接合状態はそのまま強固に維持されるので、設定温度超過の事実はそのまま不可逆的に表示され続ける。
又、磁石片1や金属片2の接合は磁力によるものなので、この感温センサーに振動が加わったとしても、接合状態は安定的に維持される。
なお、図1及び図2に示す熱融解物質片3を一対の磁石片1.1で挟み込んだ実施例のものにおいては、一対の磁石片1.1は磁力によって相互に引き合っているので、吸引力が非常に強く、小さな磁石片1でも十分な吸引力を確保出来、感温センサー全体のコンパクト化を図ることが可能となる。
【0022】
この様に、この実施例における感温センサーにおいては、磁力による接合という単純だが確実な手段を用いているので、設置個所の設定温度超過の事実を正確、確実かつ安定的に感知し、電気信号として取り出すことが出来、遠隔地や高所、狭隘箇所あるいは人体に有害な環境下など、従来の温度感知シールを用いることが困難な場所でも低コストかつ高精度で不可逆的な温度感知が実現出来るすぐれた効果を有する。
【産業上の利用可能性】
【0023】
電力業界、食品製造業界、半導体製造業界、鉄道運送業界など、温度管理を必要とするあらゆる産業分野において大いに利用可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 磁石片
2 金属片
3 熱融解物質片
4 感温体
5 リード線
6 容器
7 電球
8 表示手段
9 非導電性磁石
10 軟磁性体金属
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9