(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122831
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】ガスエンジン
(51)【国際特許分類】
F02B 23/08 20060101AFI20240902BHJP
F02B 43/04 20060101ALI20240902BHJP
F02B 43/00 20060101ALI20240902BHJP
F02P 13/00 20060101ALI20240902BHJP
F02B 43/08 20060101ALI20240902BHJP
F02B 31/04 20060101ALI20240902BHJP
F02D 19/02 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
F02B23/08 C
F02B23/08 U
F02B23/08 M
F02B43/04
F02B43/00 Z
F02P13/00 302Z
F02B43/08
F02B31/04 540Z
F02D19/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023122055
(22)【出願日】2023-07-26
(62)【分割の表示】P 2023029708の分割
【原出願日】2023-02-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】519042478
【氏名又は名称】ライズピットカンパニー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 邦男
(72)【発明者】
【氏名】山崎 貴弘
【テーマコード(参考)】
3G019
3G023
3G092
【Fターム(参考)】
3G019AA00
3G019AB07
3G019KA17
3G023AA01
3G023AB02
3G023AB03
3G023AC01
3G023AC07
3G023AD03
3G023AD05
3G023AD06
3G023AD14
3G092AB06
3G092AC08
3G092DE04
(57)【要約】
【目的】食物残滓,動物の糞尿等の無酸素状態で加熱された有機物の燃料にて稼働し、燃料の可燃性物質を有効に燃焼させて稼働させる作動効率の極めて高いガスエンジンを提供すること。
【構成】吸気バルブシート14を有する吸気ポート13と排気バルブシート16を有する排気ポート15が設けられた燃焼室壁面12aを有するシリンダーヘッド12と、吸気バルブ31と排気バルブ32と、2個の点火プラグ21,22と備える。シリンダヘッド12に第1の点火プラグ21,吸気バルブ31,第2の点火プラグ22及び排気バルブ32が周回りに配置され、吸気ポート13から吸気したガス燃料の噴射の中心線上に第1の点火プラグ21の点火ギャップ21aが配置され、第1の前記点火プラグ21と第2の点火プラグ22との間隔dは、前記シリンダ部11の内径Dの1/2以下とし、食物残滓,動物の糞尿等の水分を含む有機物による気体を燃料とするガスエンジンとする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気バルブシートを有する吸気ポートと排気バルブシートを有する排気ポートが設けられた球殻状の燃焼室壁面を有するシリンダーヘッドと、シリンダ部と、吸気バルブと排気バルブと、2個の点火プラグと備え、
前記シリンダヘッドを平面的に見て、該シリンダヘッドに第1の前記点火プラグ,前記吸気バルブ,第2の前記点火プラグ及び前記排気バルブが周回りに配置されると共に前記吸気ポートから吸気したガス燃料による混合気の噴射の中心線上に第1の前記点火プラグの点火ギャップが配置され、前記点火プラグの前記点火ギャップには、前記吸気ポートから噴射されるガス燃料を直接受けるようにし、
第1の前記点火プラグと第2の前記前記点火プラグとの間隔は、前記シリンダ部の内径の1/2以下とし、
食物残滓,動物の糞尿等の水分を含む有機物が無酸素状態で加熱されて熱分解されることによって発生する気体を燃料とすることを特徴としたガスエンジン。
【請求項2】
請求項1に記載のガスエンジンにおいて、ガス発生炉から直接燃料ガスを導き、該燃料ガスの圧力が2.8kPa~4kPaの場合は、そのまま燃料圧力2.8kPa付近の圧力に調整する燃料圧力調整器に導きそこからエンジンのミキサに供給し、前記ガス発生炉出口のガス圧力が前記圧力の最低値より低い場合は、圧縮機で2.8kPa~4kPaになるようにして加圧して燃料圧力調整器に供給してなることを特徴とするガスエンジン。
【請求項3】
請求項1に記載のガスエンジンにおいて、ガス発生炉からのガスを圧力容器などに加圧して充填した場合は減圧弁で50kPa以下になるように減圧して燃料圧力調整器に供給してなることを特徴とするガスエンジン。
【請求項4】
請求項1に記載のガスエンジンにおいて、前記点火ギャップにおける水素の体積割合が混合ガスである燃料と空気の混合気の体積に対して5%にしてなることを特徴とするガスエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食物残滓,動物の糞尿などの無酸素状態で加熱された有機物から生成される燃料によって稼働し、且つ燃料の可燃性物質を有効に燃焼させて稼働させることができる作動効率の極めて高いガスエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食物の生ゴミ,残滓或いは家畜等の動物の糞尿による有機物から生成されるガスを燃料(バイオ系ガス燃料とも呼ばれる)として稼働するエンジンが発電用或いは通常の動力用として使用されるようになってきた。生ゴミ,残滓,家畜動物の糞尿は、無酸素状態で蒸し焼きにして固化して埋め立てるというゴミ処理が一般的に行われており、その過程で発生するガスが大気に放出されると環境汚染になる。そこで、この燃え難いガスを燃焼させて発電のエネルギとして使えれば再生資源の有効活用となり、環境保全に大いに寄与することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような再生資源を活用したガスエンジンについては、多く存在するものであり、その一例として特許文献1を上げてみる。これらの従来技術は、より一層、発電効率を向上させるものであり、優れた効果を生み出している。しかし、ガスエンジンの燃料の再生資源として、生ゴミ,残滓,家畜動物の糞尿から生成したガスつまりバイオ系ガス燃料を使用する場合には、以下の問題点が存在する。
【0005】
生ゴミ,残滓,家畜動物の糞尿から生成したガスの燃料には、種々の物質が含まれており、粗悪な燃料となり、したがって、これをそのまま、ガスエンジンの燃料として使用した場合には、ガスエンジンは、その動作を十分に発揮することができないものである。そのために、再生資源を利用したガスエンジンの燃料は、有効に使用可能にするための精製装置等の種々の装置が必要となり、これらを使用すると、極めて大掛かりな装置及び設備となり、その結果、このような装置及び設備は高価且つ大型の施設となってしまう。
【0006】
そのため、中小の発電所等で使用するガスエンジンにおいて、再生資源を燃料とすることは、不可能又は極めて困難であった。そこで、本発明が解決しようとする課題(技術的
課題又は目的等)は、上記のように大掛かりな精製装置等の種々の装置を使用することな
く、バイオ系ガス燃料を略そのままガスエンジンの燃料として使用することができるガスエンジンを極めて簡単な構成で且つ低価格に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、発明者は上記課題を解決すべく鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、吸気バルブシートを有する吸気ポートと排気バルブシートを有する排気ポートが設けられた球殻状の燃焼室壁面を有するシリンダーヘッドと、シリンダ部と、吸気バルブと排気バルブと、2個の点火プラグと備え、前記シリンダヘッドを平面的に見て、該シリンダヘッドに第1の前記点火プラグ,前記吸気バルブ,第2の前記点火プラグ及び前記排気バルブが周回りに配置されると共に前記吸気ポートから吸気したガス燃料による混合気の噴射の中心線上に第1の前記点火プラグの点火ギャップが配置され、前記点火プラグの前記点火ギャップには、前記吸気ポートから噴射されるガス燃料を直接受けるようにし、第1の前記点火プラグと第2の前記前記点火プラグとの間隔は、前記シリンダ部の内径の1/2以下とし、食物残滓,動物の糞尿等の水分を含む有機物が無酸素状態で加熱されて熱分解されることによって発生する気体を燃料とすることを特徴としたガスエンジンとしたことにより、上記課題を解決した。
【0008】
請求項2の発明を、請求項1に記載のガスエンジンにおいて、ガス発生炉から直接燃料ガスを導き、該燃料ガスの圧力が2.8kPa~4kPaの場合は、そのまま燃料圧力2.8kPa付近の圧力に調整する燃料圧力調整器に導きそこからエンジンのミキサに供給し、前記ガス発生炉出口のガス圧力が前記圧力の最低値より低い場合は、圧縮機で2.8kPa~4kPaになるようにして加圧して燃料圧力調整器に供給してなることを特徴とするガスエンジンとしたことにより、上記課題を解決した。
【0009】
請求項3の発明を、請求項1又は2に記載のガスエンジンにおいて、ガス発生炉からのガスを圧力容器などに加圧して充填した場合は減圧弁で50kPa以下になるように減圧し
て燃料圧力調整器に供給してなることを特徴とするガスエンジンとしたことにより、上記課題を解決した。
【0010】
請求項4の発明を、請求項1又は2に記載のガスエンジンにおいて、前記点火ギャップにおける水素の体積割合が混合ガスである燃料と空気の混合気の体積に対して5%にしてなることを特徴とするガスエンジンとしたことにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明では、食物残滓,動物の糞尿等の水分を含む有機物が無酸素状態で加熱されて熱分解されることによって発生する気体を燃料とするエンジンにおいて、燃料効率に優れたものにできる。また、このような、効果を有するものでありながら、極めて簡易な構成で且つ低価格に提供することができる。つまり、生ゴミ,残滓,家畜動物の糞尿から生成したガスの燃料は、一般的に粗悪なものである。したがって、これをそのまま、ガスエンジンの燃料として使用した場合には、ガスエンジンは、その動作を十分に発揮することができないものであった。
【0012】
本発明におけるガスエンジンでは吸気バルブシートを有する吸気ポートと排気バルブシートを有する排気ポートが設けられた球殻状の燃焼室壁面を有するシリンダーヘッドと、吸気バルブと排気バルブと、2個の点火プラグと備え、前記シリンダヘッドを平面的に見て、該シリンダヘッドに第1の前記点火プラグ,吸気バルブ,第2の前記点火プラグ及び排気バルブが周回りに配置されると共に前記吸気ポートから吸気したガス燃料の噴射の中心線上に第1の前記点火プラグの点火ギャップが配置される構成としたものである。
【0013】
これによって、吸入行程時に吸気ポートから吸気バルブシートを介してシリンダヘッド内に流入するガス燃料と吸入空気との混合気は速度が付勢されて強いスワールを発生し、且つスワールが圧縮行程から膨脹行程初期まで持続することができ、前述したように燃料効率に優れたガスエンジンにすることができる。そして、上記のように大掛かりな精製装置等の種々の装置を使用することなく、バイオ系ガス燃料を略そのままガスエンジンの燃料として使用することができる。
【0014】
また、請求項1の発明において、第1の点火プラグ21と第2の22との間隔dを、シリンダ部11の内径Dの略(1/2)以下とすることで、点火と着火、火炎伝播に影響を与えるものである。請求項2乃至請求項4の発明では、より一層効率の良いガスエンジンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明のガスエンジンで発電システム全体を構成した全体図である。
【
図2】(A)は吸気バルブと排気バルブを含む部分のシリンダーヘッドの断面図、(B)は点火プラグを含むシリンダヘッドの要部断面図、(C)はスワールの状態を模式的に示す図である。
【
図3】(A)は吸気ポートから点火プラグに燃料噴射している状態を示す平面略示図、(B)は吸気ポートから吸気バルブシートを介して第1の点火プラグに燃料噴射している状態を示す要部縦断面図、(C)は(B)の(β)部拡大図である。
【
図4】(A)は吸気バルブシートのスロート側から見た平面図、(B)は吸気バルブシートのバルブ当たり面側から見た平面図、(C)は(B)のX1-X1矢視断面図、(D)は(B)のX2-X2矢視断面図、(E)の(B)のX3-X3矢視断面図。
【
図5】(A)は第1の点火プラグに対応する吸気バルブシートの斜視図、(B)は
図4(B)のX1-X1矢視部分で断面とした斜視図、(C)はは
図4(B)のX3-X3矢視部分で断面とした斜視図である。
【
図6】点火にける燃料ガスの分布状態を模式的に示すグラフである。
【
図7】(A)乃至(E)は点火にける燃料ガスの分布状態を模式的に示す図。
【
図8】ガス燃料の分子量と不燃ガス/可燃ガスの割合の算出を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。本発明におけるガスエンジンAは、直列4シリンダの構成としたエンジンとして説明する。基本的な構造としては、シリンダ部11とシリンダヘッド12とから構成されるシリンダブロック1とを備えている〔
図2(A)参照〕。シリンダブロック1は、複数のシリンダ部11,11,…が直列に配置された構造を有するものである。本発明では、発電機用ガスエンジンを4気筒として説明する。つまり、シリンダ部11の数を4として説明する(
図1参照)。
【0017】
ピストンが上下運動可能に収納されたシリンダ部11の上部にはシリンダヘッド12が設けられ、該シリンダヘッド12の下面が燃焼室壁面12aとして形成されている〔
図3(B),(C)参照〕。該燃焼室壁面12aは、略球面形状さらに具体的には扁平球面状凹面をなしている。前記シリンダヘッド12(又は前記シリンダ部11)の上面側から平面的に見て、2個の点火プラグ21,22〔
図2(B)参照〕と、吸気バルブ31及び排気バルブ32〔
図2(A)参照〕が設けられている。
【0018】
具体的には、前記吸気バルブ31,点火プラグ21,前記排気バルブ32及び点火プラグ22が4等分で周回りに配されている〔
図3(A)参照〕。2個の点火プラグ21,22は、同一物であるが、燃焼室壁面12aに設置される位置が異なり、点火プラグ21は、吸気ポート13からシリンダヘッド12内に流入するガス燃料による混合気(混合気体又
は混合ガスと称することもある)の噴射を最初に受けるものである。したがって、点火プ
ラグ21は、混合気を最初に受けるので、第1の点火プラグ21と称する。また、点火プラグ22は、ガス燃料による混合気を第1の点火プラグ21の次(つまり2番目)に受けるので、第2の点火プラグ22と称する。
【0019】
第1の点火プラグ21は、吸気ポート13からの燃料吸気による混合気を吸気バルブシート14からの噴射方向の線上に位置している。換言すると、吸気ポート13の燃焼室壁面12aの開口箇所から該開口箇所に装着された吸気バルブシート14を介してシリンダヘッド12内に噴射されるガス燃料の噴射方向の中心線の延長上に第1の点火プラグ21の点火ギャップ21aが配置されるように第1の点火プラグ21が配置されている。
【0020】
このような構成としているので、第1の点火プラグ21の点火ギャップ21aには、吸気ポート13から噴射されるガス燃料を直接受けることになる。そして、ガス燃料による吸気の速度を付勢して強いスワール(渦流とも言う)Sを発生させ、且つ該スワール(渦流)Sが圧縮行程から膨脹行程初期まで持続するようにしている。
【0021】
強いスワール(渦流)Sを発生させることにより、シリンダヘッド12内に流入した混合気に大きな遠心力を与え、混合気内の質量の小さい成分と、質量の大きい成分とを分離することができる。強いスワールSを発生させるために、燃焼室壁面12aにおける吸気ポート13の開口に装着された吸気バルブシート14は、シリンダヘッド12内に流入する混合気のほとんどが点火プラグ21の点火ギャップ21aに集中して向うかうようにするための形状構造を有している。この構造については、後述する。
【0022】
前記燃焼室壁面12aの曲率半径Rは、前記シリンダ部11の中心軸n上の任意の点Pに位置している。さらに、2個の前記点火プラグ21及び点火プラグ22のそれぞれの中心軸m,m及び、前記吸気バルブ31及び排気バルブ32のそれぞれの中心軸n,nは、前記点P上を通過するように構成されている。つまり、中心軸m,m及び中心軸n,nは、前記点Pで交わる構成となっている。前述したように、シリンダヘッド12には、吸気ポート13及び排気ポート15が設けられており、燃焼室壁面12aには吸気ポート13の開口及び排気ポート15の開口が形成されている。
【0023】
そして、シリンダヘッド12の燃焼室壁面12aにおいて、吸気ポート13の開口に吸気バルブシート14が設けられ、排気ポート15の開口には排気バルブシート16が設けられている〔
図2(A),
図3(A)参照〕。吸気バルブシート14及び排気バルブシート16は、リング状の肩部が一致するように、また点火プラグ21の先端の縁も一致するように取り付けられている。これらの中心線は、燃焼室壁面12aの半径Rの中心点Pを通る放射状の線分である。排気バルブシート16は、吸気バルブシート14とは異なり、通常のバルブシートが使用されても構わない。
【0024】
第1の点火プラグ21と第2の22との間隔dは、シリンダ部11の内径Dの略(1/2)以下であり、数式で示すとd≦(1/2)Dとなる。このような構成は、点火と着火、火炎伝播に影響を与えるものである。第1,第2の両点火プラグ21,22の点火ギャップ21a,22aは,燃焼室壁面12aより僅かに(具体的には、6mm以下)突き出た方がスワールSに厚みがあることにより、点火時のスワールSの厚さ方向の中央にした方が着火性に有利である。
【0025】
本発明のガスエンジンAにおいて、後述するバイオマス系のガス燃料を有効に活用し、スワールSを強めるための構成を有するものである。つまり、吸気ポート13からシリンダヘッド12及びシリンダ部11内に流入するガス燃料の混合気の噴射によって、最初にスワールSが高速で第1の点火プラグ21の点火ギャップ21aに向かいつつ、スワールSに強い遠心力が発生するようにしたものである。そのために、吸気バルブシート14を以下のような構成としている。その構成としては、吸気バルブシート14を非対称の形状としている(
図4,
図5参照)。
【0026】
シリンダヘッド12の燃焼室壁面12aにおける吸気ポート13のガス燃料の流入開口に吸気バルブシート14が設けられている。該吸気バルブシート14は、バルブ当たり面141,スロート部142及び内周側面部143を有している。バルブ当たり面141には、吸気バルブ31の円錐状側面を有する傘形状部31aが密着状に当接する部位である。したがって、バルブ当たり面141は、吸気バルブ31の樹傘形状部31aの円錐側面に対応する円錐状凹み面をなしている。
【0027】
バルブ当たり面141の円錐状凹み面を構成する開口部分は吸気バルブシート14の外周側面144と同心円である。また、吸気バルブシート14の裏側、つまり吸気ポート13につながる部分の開口部分断面積は最も小さく、この箇所がスロート部142である。吸気バルブシート14のスロート部142は、外周側面144と同心円ではなく、また真円又は略真円でもない〔
図4(A)参照〕。そして、吸気バルブシート14における吸気バルブ31とのバルブ当たり面141は円形である。シリンダヘッド12の母材はアルミ合金の鋳物であるが、吸気バルブシート14,排気バルブシート,バルブガイドは、熱伝導のよい耐磨耗性の合金や金属である。
【0028】
一般の吸気バルブシートでは、吸気バルブシートの外周、スロート部、吸気バルブの当たり面は全て同心円となるように構成されている。これに対し本発明では、シリンダヘッド12の上方から見て〔
図3(A)参照〕、吸気ポート13の中心線g上に第1の点火プラグ21の点火ギャップ21aが配置された構成としている。換言すると、吸気ポート13に設けられた吸気バルブシート14を介してシリンダヘッド12内に中心線gに沿って噴射される混合気の流れの先に点火プラグ21の点火ギャップ21aが配置された構成としている(
図3参照)。
【0029】
吸気ポート13の前記中心線gとは、吸気ポート13の長手方向に直交する断面における径方向の中心が集合して構成されてなる、混合気の流れを代表する仮想線である〔
図3(A)参照〕。つまり、吸気ポート13を流れる混合気の流線を一本にまとめた代表の線である。中心線gは、吸気ポート13からシリンダヘッド12内に飛び出した部分は、平面(上面)より見て、第1の点火プラグ21の点火ギャップ21aに位置まで直線に延びている〔
図3(A)参照〕。
【0030】
また、吸気バルブシート14の外周側面144及びバルブ当たり面141の直径中心は、平面(上面)より見て、吸気ポート13の中心線g上に位置している〔
図3(A)参照〕。そして、シリンダヘッド12及びシリンダ部11に流入する混合気の主流が点火ギャップ21aの位置に向いてスワールSを発生させるようになっている〔
図2(C)参照〕。また、前述の結果、吸気バルブシート14のスロート部142の中心は吸気バルブシート14の外周側面144の中心から偏心している。
【0031】
ここで、吸気バルブシート14は、平面より見て環状であり、シリンダヘッド12の吸気ポート13に適正に装着された状態で、吸気バルブシート14の外周側面144の直径中心と、第1の点火プラグ21とを結ぶ方向に対して直交する径方向線で二つに分けた領域を設定する。円周方向において、二つに分けた領域は、第1の点火プラグ21に近い半周部分を前方側半周領域14fとし、該前方側半周領域14fとは反対側で、第1の点火プラグ21から遠い半周部分を後方側半周領域14rとする。
【0032】
吸気バルブシート14の内周の一部で且つ第1の点火プラグ21側の周壁面の断面は直線状とすると共に吸気バルブシート14の内周の一部で且つ第1の点火プラグ21側と反対側の周壁面の断面は弧状として構成されている。具体的には、内周側面部143の前方側半周領域14fには、直線状内周面143aが形成され、後方側半周領域14rには後述する凸円弧状内周面143bが形成されている。
図4(A),(B)は、吸気バルブシート14のバルブ当たり面141とスロート部142とから見た形状を示すものであり、
図4(C),(D),(E)において、各部分の断面形状を示している。
【0033】
内周側面部143における第1の点火プラグ21側寄りの部分、つまり前方側半周領域14fにおける周方向に直交する断面形状は傾斜直線状であり、直線状内周面143aが形成されている。また前方側半周領域14fと反対側の後方側半周領域14r部分は略円弧状rからなる断面凸円弧状に膨出する凸円弧状内周面143bが形成されている。
【0034】
そして、第1の点火プラグ21に近い側となる一方の内周側面部143の前方側半周領域14fの周方向に直交する断面形状は傾斜直線状に形成され、バルブ当たり面141側に向かうに従い内径が拡がるように形成されている〔
図4(C),(D),(E),
図5参照〕。この直線状断面部分が傾斜直線状内周面143aである。該傾斜直線状内周面143aは前方側半周領域14f全体に亘って形成されており、周方向に直交する断面形状は同一又は略同一である。
【0035】
また、吸気バルブシート14の内周側面部143において、第1の点火プラグ21に近い側とは反対側となる後方側半周領域14rでは、周方向に直交する断面形状は、内周側面部143の内方側に向かって凸形弧状に膨出する形状となっている〔
図4(C),(D),(E)参照〕。具体的には、吸気バルブシート14のスロート部142の開口周縁から内周側面部143に向かって一旦内方に食い込むように膨出しつつ、そのままバルブ当たり面141側に向かうに従い膨出量が少なくなり凹むように形成されている。
【0036】
凸円弧状内周面143bは、周方向に直交する径上は小さい円弧rで滑らかに連続する弧状面としている。凸円弧状内周面143bの断面は、略円弧状であるが、必ずしも真円ではなく、略円弧状であるということである。後方側半周領域14rにおいて、周方向における第1の点火プラグ21から最も離れた位置で凸円弧状内周面143bの膨出量は最大となり、前方側半周領域14fに近づくに従い、凸円弧状内周面143bの膨出量は小さくなる。
【0037】
そして、前方側半周領域14fと後方側半周領域14rとの境界では、凸円弧状内周面143bは、円弧状の膨出部分が消滅し、略傾斜直線状内周面143aの断面形状と等しく又は略等しい形状となる。また、弧状内周面143bにおいて、凸円弧状内周面143bは、周方向において、前方側半周領域14fに近づくにつれて、緩やかに膨出量が減少するように形成されており、凸円弧状内周面143bから直線状内周面143aへの形状の変形は極めて緩やかに行われる。
【0038】
このような形状とすることにより、吸気ポート13から流入するガス燃料の流れにおいて、吸気バルブシート14における前方側半周領域14fでは、内周側面部143は直線状内周面143aとして形成されているので、混合気が流れる流路は直線状であり、抵抗が小さく噴射(流入)速度を速くすることができる。また、後方側半周領域14rにおいて、第1の点火プラグ21から離れた位置にある凸円弧状内周面143b側では、凸円弧状内周面143bの膨出により、混合気の流れに対して抵抗となり、後方側半周領域14rからシリンダヘッド12内に流入する混合気の量は少なくなる。
【0039】
これによって、吸気バルブシート14の前方側半周領域14f側、つまり、第1の点火プラグ21に近い側からの混合気のシリンダヘッド12内への噴射流入量が後方側半周領域14rよりも多く、また混合気の噴射の勢いも前方側半周領域14fが後方側半周領域14rよりも強いものである。これよって、吸気バルブシート14の前方側半周領域14fからの混合気の噴射によってスワールSの勢いを増し、該スワールSの速度を速くすると共に遠心力を大きくし、ガス燃料の可燃性成分と、不燃性成分を分離し、可燃性成分を中央に集中させ、不燃性成分を外周に集中させ、燃焼効率を向上させることができる(図
7参照)。
【0040】
前述したように、吸気バルブシート14における吸気バルブ31の傘形状部31aが当接,離間するバルブ当たり面141と外周側面144とは同心円になるが、吸気バルブシート14のスロート部142は同心とはならず、また円形でもない。吸気バルブシート14の内周14c,吸気バルブ31とのバルブ当たり面141はすべて円形である。シリンダヘッド12の母材はアルミ合金の鋳物であるが、吸気バルブシート14,排気バルブシート15,バルブガイドは、熱伝導のよい耐磨耗性の合金や金属である。
【0041】
吸気バルブ31が開きピストン時では、上死点が下方向に動くと吸気ポート13内よりシリンダ内の圧力が低くなるので吸気ポート13から混合気がシリンダに流入しはじめる。ピストンの下降する速さは一様ではなく、上死点付近では遅く、クランク角が80度位でもっとも速くなり、それから減速し、下死点でゼロになるが、それでも吸気ポート13はまだ開いている。これは混合気には慣性があるのでその勢いでピストンが下死点を過ぎて、再び上昇しだしてもまだ混合気のシリンダへの流入が続くからである。
【0042】
図3では、吸気バルブシート14の吸気バルブ31とのバルブ当たり面141と吸気バルブ31の傘形状部31aの隙間を通ってシリンダ部11に流入する混合気の運動量(ガ
スの分子の質量×流速)がスワールSの元となる。前記吸気バルブ31によって吸気させ
る吸気ポート13は、前記吸気バルブ31からの吸気が前記シリンダ部11を平面的に見て、接線方向乃至接線に近似する方向から該シリンダ部11内に流入して渦流になるように構成されている。該シリンダ部11内のピストンが下降時において、このスワールSが発生する。
【0043】
エンジンの中心線を挟んで吸気側/排気側に分かれる。それぞれに吸気マニホールド51、ブランチ51a、吸気バルブシート14のスロート部142,排気マニホールド52、排気バルブシートのスロート部があり、吸気系/排気系を形成する。シリンダヘッド12のクランク軸後端に取り付けられたカップリング53から該カップリング53を介して発電機54が駆動される。
【0044】
排気マニホールド52の後流に装着された三元触媒55で排気中のHC/CO/NOxを無害化するが、そのためにはシリンダ部11内で燃焼後には、酸素も可燃性の物質(燃
料)も余らないように、エンジンを理論空燃比で作動させなければならない。そのために
空燃比センサ又はO2センサ56で排気中のO2濃度を検出して空燃比を理論空燃比になるようにECU(エンジンコントロールユニット)57でフィードバック制御を行う。即ち、燃料圧力調整器58でミキサ59に供給する燃料の圧力を制御する。O2があれば理論空燃比より薄いので燃料圧力調整器58の出口の燃料の圧力を基準値(例えば、2.8kPa)より高く、O2が無ければ基準値より低くなるようにフィードバック制御する。
【0045】
燃料圧力調整器58でミキサ59に供給する燃料の圧力を±2kPaの範囲程度で制御す
る。ここでSガスを圧力容器に充填する場合は10MPa(100気圧)以上と高いため、そ
のまま燃料圧力調整器58に導くと該燃料圧力調整器58が破損するのでボンベと燃料圧力調整器58との間に減圧弁(減圧バルブ)66を介在させて50kPa程度に減圧するこ
ともある(
図1参照)。
【0046】
発生するガスには水分(水蒸気)や固形物などを除去する。また、エアクリーナ61で吸入空気を濾過して、ミキサ59で流量を制御しながらシリンダヘッド12に供給する。
図1において、符号67はモータ付きのタービンであり、符号68はバッテリであり、符号69はフライホイールである。タービン67のモータはECU57によって制御される。
【0047】
エンジン回転数とクランク角度をクランクセンサ62で検出して、点火時期をECU57で調整したり、エンジン回転数を調整する。所定の回転数(例えば、2000rpm)より高ければスロットルモータ63でミキサ59のスロットル開度を小さくなるように、また低くければ大きくなるようにスロットル開度を大きくなるようにフィードバック制御を行う。
【0048】
ガス発生炉64で発生する燃え難い分子や燃えない二酸化炭素CO2などを含んでいるためにシリンダ部11内で間欠燃焼させるのは困難である。そして、燃えにくい分子、重質の炭化水素などを十分に燃焼させるためには、各シリンダ部11に最低でも二つの点火プラグ21を最適な位置に配設し、その点火ギャップ21aの間に水素H2が後述する濃度以上になるように集める構成とする。ガス発生炉64には燃料フィルタ兼水分除去器65が繋がっている。
【0049】
その水素(分子量は2)と分子量の大きな二酸化炭素(分子量44)や重質の炭化水素を、遠心力を使って分離するのにシリンダ内のスワールSを利用するものである。そのために、シリンダヘッド12内の吸気ポート13を滑らかに歪曲させて該吸気ポート13の中心線gの延長が点火プラグ21の先端の方向に向くように設定する。また、第1の点火プラグ21と第2の点火プラグ22の位置は吸気バルブ31と排気バルブ32とを結ぶ線と直交する線上で且つ、シリンダ径Dの1/2かそれより若干小さい直径dのシリンダ11と同芯円となる円周上に配置される〔
図3(A)参照〕。
【0050】
以上の構成を述べると、シリンダ列あるいは単シリンダエンジンにおいてはクランク軸中心線上に、シリンダ毎に2個の点火プラグ、つまり第1の点火プラグ21及び第2の点火プラグ22をシリンダ11の直径の1/2或いはこれより若干狭い間隔をあけて配設し、シリンダ11の直径中心で前記クランク軸中心線上と直交する線分上に対称に吸気バルブ31と排気バルブ32とを1個ずつ配設すると共に、上(又は平面)から見て吸気ポート13の中心線g、つまり該吸気ポート13からシリンダヘッド12内に流入する混合気の噴射方向を示す中心線gの直線部分の延長が第1の点火プラグ21の点火ギャップ21aに向かうようにしたものである。
【0051】
強いスワールにより空気と混合された複数の成分で構成される気体燃料を大まかに分離する原理を次の手順で算出し説明する。
(1)燃料の成分を仮定し理論空燃比を求める
(2)理論空燃比における燃料と空気の密度を求める
(3)吸入負圧によるスワールの速度を求める
(4)スワールによる各分子に働く遠心力を求める。
【0052】
〔仮定した組成の燃料の理論空燃比〕
ガス発生炉64で蒸し焼きにされて発生する燃料の組成を体積割合でCO
2を30%、COを21%、H
2を20%、CH
4を10%、C
2H
6を8%、C
3H
8を6%、
C
4H
10を5%として計算する。質量割合で可燃性ガスの質量54.5%、不燃性ガス
の質量45.5%となる。これらのことは、
図8に体積割合及び質量割合等をまとめた表に開示されている。
【0053】
炉で発生する燃料ガスの1モル(22.4、分子数で約6×1023個)の質量は29.
02gであり、これを燃焼させるのに必要な空気(O2は空気の体積の21%、空気1モ
ル中のO2の質量は6.7g)の質量は180.9(6.23モル)、従って理論空気燃比=180.9g/29.02g=6.23となる。ちなみにC3H8は15.6である。
【0054】
〔理論空気燃比における燃料と空気の混合ガス(1気圧,0℃)の密度〕
燃料1モルと空気6.23モルの混合気の体積は
V=(1+6.23)×22.4リットル=162リットルである。
一方その質量はM=29.02g+29×6.23g=209.7g
従って、混合気の密度は
ρ=209.7g/162.8リットル=1.294kg/m2となる。
【0055】
〔吸入負圧によるスワール速度と遠心方向の加速度〕
吸気ポート13とシリンダ部11内との圧力差を4kPa、流速をvm/sとすると、
4×103Pa=(1/2)×1.294kg/m3×v2、
v=78.6m/sとなる。
もし、この速度でシリンダ部11の内周部(100mm=0.1m)を回るとすれば、旋回数はN=78.6(m/s)/0.1π=250回/s
角速度はω=2π×25=157rad/sとなる。
シリンダ部11中心から0.02m離れた点火プラグ付近での(遠心力の元となる遠心方向(半径方向の)の加速度は
α=0.02×ω2=492m/s2=50G
これに質量を掛けたら遠心力になる。
【0056】
50Gとは、地上で1kgのものが50kgの力を発生させることになる。1Gでも地表から深い穴や古井戸の底に分子量の大きい、すなわち重いガスCO2が溜まるように、スワールにより重いCO2や重質の炭化水素がシリンダの周辺部に集まり、軽いH2がシリンダの中央部分に集まり易くなる。
【0057】
吸気バルブ31と排気バルブ32はシリンダ部11の中心線に対して対称である。ただし、吸気バルブ31につながる吸気ポート13は滑らかに歪曲してその中心線の延長は点火プラグ21,22の中心の方向に向いている。半径Rの球殻状の燃焼室壁面12aに、吸気バルブシート14や排気バルブシート16におけるリング状の肩部が一致するように設けられ、また第1及び第2の点火プラグ21,22の先端の縁も一致するように取り付けられている。
【0058】
しかも、これらの中心線は前記の半径Rの中心点Pを通る放射状の線分である。こうすることにより、燃焼室壁面内に吸気バルブ31、排気バルブ32や点火プラグ21,22の先端部が燃焼室壁面12aの表面となだらかにつながり、該燃焼室壁面12aに凹凸ができるのを最小限にしている。
【0059】
これにより後述のスワールを発生させ易くすと同時に、該スワールが減衰するのを防ぐことができる。さらに燃焼室壁面の対称性を得るため、4本の放射状の線分とシリンダ部
11の中心線となす角はすべてθである。このθは、約20度程度以下が望ましい。吸気バルブ31は、吸気カムシャフト33がバルブリフタ31aを押し下げることによりリフト動作を行い、バルブスプリング35により戻されて着座する。排気バルブ32についても、吸気バルブ31と同様に、排気カムシャフト34がバルブリフタ32aを押し下げることによりリフト動作を行い、バルブスプリング35により戻されて着座する。排気カムシャフト34により開閉される〔
図2(A)参照〕。
【0060】
吸気バルブシート14の吸気バルブのバルブ当たり面141と吸気バルブ31の傘形状部31aの隙間を通ってシリンダヘッド12内に流入する混合気の運動量(ガスの分子の
質量×流速)がスワールSの元となる。そこでピストンの位置に対するスワールSの接線
方向の速さをスワールSの強さとして模式的に
図6に示す。横軸は各行程でありのTDC(Top Dead Center)はピストンの上死点、BDC(Bottom Dead Center)は下死点を示す。
【0061】
吸入行程でスワールSは発生し、吸気バルブ31が閉じた後の圧縮行程で押しつぶされながら減衰しながらも、まだ持続している。圧縮行程が終了する一瞬手前で2箇所の点火ギャップ21a,22aから火花が飛ぶ。ところがこのときにも、まだスワールSが持続していて、H2などの燃え易い分子が点火ギャップ21a,22aのギャップ間に多く存在するようにする。ここで燃えやすいH2などの燃え易い分子が先ず着火し、周囲のガスの燃焼の起爆剤のような役目を果たす。
【0062】
スワールSによりH2などの燃え易い分子が中央付近に、絶対に燃えない二酸化炭素C
O
2や燃えにくい重質の炭化水素が外側の外周ゾーン12dに集まる。その中間ゾーン部12bが高い温度になると何とか燃えだすガスの部分である。この中間ゾーン12bが燃焼すると二酸化炭素や重質の炭化水素などの可燃性ガスの分子が集まる中心ゾーン12cにある重質の炭化水素の大部分も燃やすことができる(
図7参照)。
【0063】
ここで、初期の火炎が伝播しながら広がってゆくようにするため、初期における既燃領域の拡大が必須である。そのために点火プラグ21を適度に離す方が、二箇所からの既燃領域が重なるまでは、既燃領域が2倍となる。そこで既述のように二つの第1の点火プラグ21と第2の点火プラグ22との間隔は
図3(A)に示すようにシリンダ11の直径の1/2かこれよりより若干狭くすることが好適である。
【0064】
次に、本発明におけるガスエンジンのガス燃料による混合気の吸入行程から膨張行程に亘る状態を
図6に基づいて説明する。エンジンのシリンダーヘッド12で、吸気ポート13からガス燃料による混合気が入り込む。このガス燃料は、食物残滓,動物の糞尿等の水分を含む有機物が無酸素状態で加熱されて熱分解されることによって発生するガス(気体)燃料を元にしたものである。このガス燃料はバイオ系ガス燃料とも称される。
【0065】
このガス燃料は、残滓等を無酸素状態で蒸し焼き酸にして製造するものであっても、加熱による熱で有機物中の炭素原子Cと、酸素Oが反応して、二酸化炭素CO2が生成され、二酸化炭素CO2がガス全体において体積割合で約30%含まれることになる。ガス燃料としては粗悪なものである。また、ガス燃料に二酸化炭素CO2が多く含まれることで、燃焼し難くなるという特性を有することになる。本発明のガスエンジンは、上記の粗悪なガス燃料を有効に活用することができるものである。吸入行程の初期では、吸気ポート13からガス燃料が流入する。ガス燃料は、吸気ポート13からシリンダヘッド12及びシリンダ部11に流入する前行程でミキサ59により成分が均一となるように混ぜられた状態である〔
図7(A)参照〕。
【0066】
次に、吸入行程の中期ではシリンダヘッド12及びシリンダ部11内への流入時におけるスワールSによりガス燃料は各成分に分離され、シリンダヘッド12及びシリンダ部11内で中央部分にH2をはじめ、CH4のように軽い分子が集まり、外周にはC4H10やCO2のように重い分子が集まる〔
図7(B)参照〕。つまり、スワールSによって燃焼し易い分子と、燃焼し難い分子が分離される〔
図7(C)参照〕。
【0067】
そして、中央部分に集中した成分は燃焼し易いH2,CH4のみとなり燃焼効率が向上し、点火プラグ21により点火されることによって、良好な燃焼が行われる〔
図7(D)参照〕。そして、水素は燃焼して水蒸気となり、その熱で一酸化炭素は二酸化炭素となり、同様に炭化水素は水蒸気と二酸化炭素となる。したがって、燃焼後は全て二酸化炭素と水蒸気だけになる〔
図7(E)参照〕。
【符号の説明】
【0068】
1…シリンダブロック、12…シリンダーヘッド、12a…燃焼室壁面、
13…吸気ポート、14…吸気バルブシート、15…排気ポート、
16…排気バルブシート、21…(第1の)点火プラグ、21a…点火ギャップ、
22…(第2の)点火プラグ、31…吸気バルブ、32…排気バルブ、59…ミキサ、
58…燃料圧力調整器、64…ガス発生炉。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
吸気バルブシートを有する吸気ポートと排気バルブシートを有する排気ポートが設けられた球殻状の燃焼室壁面を有するシリンダーヘッドと、シリンダ部と、吸気バルブと排気バルブと、2個の点火プラグと備え、
前記シリンダヘッドを平面的に見て、該シリンダヘッドに第1の前記点火プラグ,前記吸気バルブ,第2の前記点火プラグ及び前記排気バルブが周回りに配置されると共に前記吸気ポートから吸気したガス燃料による混合気の噴射の中心線上に第1の前記点火プラグの点火ギャップが配置され、第1の前記点火プラグの前記点火ギャップには、前記吸気ポートから噴射されるガス燃料を直接受けるようにし、
第1の前記点火プラグと第2の前記前記点火プラグとの間隔は、前記シリンダ部の内径の1/2以下にすると共に、該シリンダ部内の中央部分に吸入行程の前記シリンダ部内にお
けるスワールにより可燃性ガスの分子が集中するようにし、
食物残滓,動物の糞尿等の水分を含む有機物が無酸素状態で加熱されて熱分解されることによって発生する気体を燃料とすることを特徴としたガスエンジン。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
そこで、発明者は上記課題を解決すべく鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、吸気バルブシートを有する吸気ポートと排気バルブシートを有する排気ポートが設けられた球殻状の燃焼室壁面を有するシリンダーヘッドと、シリンダ部と、吸気バルブと排気バルブと、2個の点火プラグと備え、前記シリンダヘッドを平面的に見て、該シリンダヘッドに第1の前記点火プラグ,前記吸気バルブ,第2の前記点火プラグ及び前記排気バルブが周回りに配置されると共に前記吸気ポートから吸気したガス燃料による混合気の噴射の中心線上に第1の前記点火プラグの点火ギャップが配置され、第1の前記点火プラグの前記点火ギャップには、前記吸気ポートから噴射されるガス燃料を直接受けるようにし、
第1の前記点火プラグと第2の前記前記点火プラグとの間隔は、前記シリンダ部の内径の1/2以下にすると共に、該シリンダ部内の中央部分に吸入行程の前記シリンダ部内にお
けるスワールにより可燃性ガスの分子が集中するようにし、食物残滓,動物の糞尿等の水分を含む有機物が無酸素状態で加熱されて熱分解されることによって発生する気体を燃料とすることを特徴としたガスエンジンとしたことにより、上記課題を解決した。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
吸気バルブシートを有する吸気ポートと排気バルブシートを有する排気ポートが設けられた球殻状の燃焼室壁面を有するシリンダーヘッドと、シリンダ部と、吸気バルブと排気バルブと、2個の点火プラグと備え、
前記シリンダヘッドを平面的に見て、該シリンダヘッドに第1の前記点火プラグ,前記吸気バルブ,第2の前記点火プラグ及び前記排気バルブが周回りに配置されると共に前記吸気ポートから吸気したガス燃料による混合気の噴射の中心線は前記シリンダヘッド内に飛び出した部分は、平面より見て、第1の前記点火プラグの点火ギャップの位置まで直線に延びると共に前記中心線上に第1の前記点火プラグの点火ギャップが配置され、第1の前記点火プラグの前記点火ギャップには、前記吸気ポートから噴射されるガス燃料を直接受けるようにし、
第1の前記点火プラグと第2の前記前記点火プラグとの間隔は、前記シリンダ部の内径の1/2以下にすると共に、該シリンダ部内の中央部分に吸入行程の前記シリンダ部内におけるスワールにより可燃性ガスの分子が集中するようにし、
排気マニホールドの排気側後流にO2センサが装着され、該O2センサの後流側に三元触媒が装着され、前記O2センサはECUにフィードバック制御が行われて、理論空燃比となるように制御され、
食物残滓,動物の糞尿等の水分を含む有機物が無酸素状態で加熱されて熱分解されることによって発生する気体を燃料とすることを特徴としたガスエンジン。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
そこで、発明者は上記課題を解決すべく鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、吸気バルブシートを有する吸気ポートと排気バルブシートを有する排気ポートが設けられた球殻状の燃焼室壁面を有するシリンダーヘッドと、シリンダ部と、吸気バルブと排気バルブと、2個の点火プラグと備え、前記シリンダヘッドを平面的に見て、該シリンダヘッドに第1の前記点火プラグ,前記吸気バルブ,第2の前記点火プラグ及び前記排気バルブが周回りに配置されると共に前記吸気ポートから吸気したガス燃料による混合気の噴射の中心線は前記シリンダヘッド内に飛び出した部分は、平面より見て、第1の前記点火プラグの点火ギャップの位置まで直線に延びると共に前記中心線上に第1の前記点火プラグの点火ギャップが配置され、第1の前記点火プラグの前記点火ギャップには、前記吸気ポートから噴射されるガス燃料を直接受けるようにし、第1の前記点火プラグと第2の前記前記点火プラグとの間隔は、前記シリンダ部の内径の1/2以下にすると共に、該シリンダ部内の中央部分に吸入行程の前記シリンダ部内におけるスワールにより可燃性ガスの分子が集中するようにし、排気マニホールドの排気側後流にO2センサが装着され、該O2センサの後流側に三元触媒が装着され、前記O2センサはECUにフィードバック制御が行われて、理論空燃比となるように制御され、食物残滓,動物の糞尿等の水分を含む有機物が無酸素状態で加熱されて熱分解されることによって発生する気体を燃料とすることを特徴としたガスエンジンとしたことにより、上記課題を解決した。