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特開2024-122842壁貫通部材及び壁貫通部材の固定構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122842
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】壁貫通部材及び壁貫通部材の固定構造
(51)【国際特許分類】
   F16L 5/02 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
F16L5/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023144807
(22)【出願日】2023-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2023029345
(32)【優先日】2023-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】河野 洋一
(72)【発明者】
【氏名】玉木 聡史
(72)【発明者】
【氏名】田中 園子
(57)【要約】
【課題】建物壁と壁貫通部材との間を容易に止水できる壁貫通部材及び壁貫通部材の固定構造を提供する。
【解決手段】壁100に形成された貫通孔102に設置されるとともに螺子溝15、17および円周面16を有する本体部10と、前記壁100の一方側に配置され、外径が前記貫通孔102よりも大径に形成されて前記螺子溝15、17に螺合する第1のリング3と、前記壁100の他方側に配置され、外径が前記貫通孔102よりも大径に形成され、前記本体部10に設けられた第2のリング5と、前記壁100と前記第1のリング3との間の前記本体部10の円周面16に設置され、外径が前記貫通孔102よりも大径に形成され、前記壁100と前記第1のリング3との間で挟持されて前記壁100と前記第1のリング3の間で圧縮されることで、内周部が径方向内側へ縮径して内径が減少するパッキン4と、を有することを特徴とする壁貫通部材1。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁に形成された貫通孔に設置されるとともに螺子溝および円周面を有する本体部と、 前記壁の一方側に配置され、外径が前記貫通孔よりも大径に形成されて前記螺子溝に螺合する第1のリングと、
前記壁の他方側に配置され、外径が前記貫通孔よりも大径に形成され、前記本体部に設けられた第2のリングと、
前記壁と前記第1のリングとの間の前記本体部の円周面に設置され、外径が前記貫通孔よりも大径に形成され、前記壁と前記第1のリングとの間で挟持されて前記壁と前記第1のリングの間で圧縮されることで、内周部が径方向内側へ縮径して内径が減少する第1のパッキンと、を有することを特徴とする壁貫通部材。
【請求項2】
壁に形成された貫通孔に設置されるとともに螺子溝および円周面を有する本体部と、 前記壁の一方側に配置され、外径が前記貫通孔よりも大径に形成されて前記螺子溝に螺合する第1のリングと、
前記壁の他方側に配置され、外径が前記貫通孔よりも大径に形成され、前記本体部に設けられた第2のリングと、
前記壁と前記第1のリングとの間の前記本体部の円周面に設置され、外径が前記貫通孔よりも大径に形成され、前記壁と前記第1のリングとの間で挟持されて前記壁と前記第1のリングの間で圧縮されることで、内周部が径方向内側へ縮径して内径が減少する第1のパッキンと、
前記壁と前記第2のリングとの間の前記第2のリングの平行面に設置され、外径が前記貫通孔よりも大径に形成され、前記壁と前記第2のリングとの間で挟持されて前記壁と前記第2のリングの間で圧縮され、前記第2のリングと前記壁と前記第2のリングとの隙間を密封する第2のパッキンと、を有することを特徴とする壁貫通部材。
【請求項3】
前記第2のリングは、前記螺子溝に螺合する、請求項1または請求項2に記載の壁貫通部材。
【請求項4】
前記第2のリングは、前記本体部と一体である、請求項1または請求項2に記載の壁貫通部材。
【請求項5】
前記第1のリングと前記第2のリングは、前記本体部の螺子溝に螺合する螺子溝を有し、各々自身の内径より大きい外径を有する、請求項1または請求項2に記載の壁貫通部材。
【請求項6】
前記第2のリングは、前記壁に平行な平行面を有し、
前記第2のリングは、前記平行面に前記貫通孔の内径より小径である突起部を有する請求項1または請求項2に記載の壁貫通部材。
【請求項7】
前記第1のパッキンの内径が、前記本体部の円周面の外径より0.8倍以上であり、
前記第1のパッキンの最小厚みが、前記第1のパッキンと接触する壁面の最大凹凸高さ以上である、請求項1または請求項2に記載の壁貫通部材。
【請求項8】
前記第2のパッキンの内径が、前記貫通孔の内径より小径な突起部の外径より0.8倍以上であり、前記第2のパッキンの最小厚みが、前記第2のパッキンと接触する壁面の最大凹凸高さ以上である、請求項2に記載の壁貫通部材。
【請求項9】
前記第2のリングは、前記壁に平行な平行面を有し、
前記第2のリングは、前記平行面に前記貫通孔の内径より小径である突起部を有し、
前記突起部の突出長さは前記第2のパッキンの厚さ以上である、請求項2に記載の壁貫通部材。
【請求項10】
前記本体部の前記円周面は、前記第1のリングおよび前記第2のリングと螺合しない面であり、前記円周面の外径は、前記本体部の前記螺子溝における雄螺子部分の外径以下である、請求項1または請求項2に記載の壁貫通部材。
【請求項11】
請求項1または請求項2に記載の壁貫通部材を含む壁貫通部材の固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁貫通部材及び壁貫通部材の固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物壁を開口して建物内外を連通する孔に設置される壁貫通部材(管継手)として壁貫通部材が知られている。壁貫通部材は、例えば特許文献1に示すように、壁貫通部材の継手本体を軸に、屋外側から屋内側に向かって順に、外側固定リング、パッキン、中側固定リング、内側固定リングが配置されている。配置された壁貫通部材は、外側固定リング、中側固定リング、内側固定リング等の螺合により軸上を屋内側あるいは屋外側に移動可能である。
【0003】
この壁貫通部材は、建物壁にパッキンを外側固定リングで圧縮することにより建物壁と外側固定リングとの間をパッキンで止水している。また、パッキンを外側固定リングで中側固定リングに圧縮することにより、パッキンを継手本体の螺子溝に合わせて圧縮変形させて継手本体と外側固定リングとの間をパッキンで止水している。これにより、建物壁に対して止水した状態に壁貫通部材を設置することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-26340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の壁貫通部材は、外側固定リングを継手本体の螺子溝に回転させて螺合することによりパッキンが中側固定リングに押さえ付けられる。よって、外側固定リングの回転時にパッキンが回転して中側固定リングも供回りすることが考えられる。中側固定リングが回転した場合、パッキンを継手本体の螺子溝に適切に圧縮することができない。このため、外側固定リングの回転時に中側固定リングの回転を抑える作業が必要になる。
【0006】
継手本体の螺子溝にパッキンを適切に圧縮するためには、パッキンを一定量締め付けて、螺子溝側に膨出する変形量を管理する必要がある。しかし、中側固定リング及び外側固定リングは継手本体の螺子溝に螺子結合されている。よって、中側固定リング及び外側固定リングは、継手本体の軸方向へ自由に移動する。このため、例えば外側固定リングと中側固定リングとを位置決めするために長さを計る等の作業が必要になる。しかし、これらの作業には時間がかかり、習熟も必要である。
また、外側固定リングは螺合で回転してパッキンを中側固定リングに押さえつけるが、回転時に環状パッキンも回転し、中側固定リングも回転することがある。螺合部分に適切にパッキンを圧縮するには、パッキンの変形量を管理する必要がある。その為には、外側固定リングと中側固定リングの位置決めなどが必要である。これらの作業には時間がかかり、習熟も必要である。これらの課題を解決する為、中側リングを使わず、パッキンの圧縮を簡便にできる構成について検討した。
【0007】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、建物壁と壁貫通部材との間を容易に止水できる壁貫通部材及び壁貫通部材の固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
<1>本発明の一態様に係る壁貫通部材は、壁に形成された貫通孔に設置されるとともに螺子溝および円周面を有する本体部と、前記壁の一方側に配置され、外径が前記貫通孔よりも大径に形成されて前記螺子溝に螺合する第1のリングと、前記壁の他方側に配置され、外径が前記貫通孔よりも大径に形成され、前記本体部に設けられた第2のリングと、前記壁と前記第1のリングとの間の前記本体部の円周面に設置され、外径が前記貫通孔よりも大径に形成され、前記壁と前記第1のリングとの間で挟持されて前記壁と前記第1のリングの間で圧縮されることで、内周部が径方向内側へ縮径して内径が減少する第1のパッキンと、を有する。
<2>本発明の一態様に係る壁貫通部材は、壁に形成された貫通孔に設置されるとともに螺子溝および円周面を有する本体部と、前記壁の一方側に配置され、外径が前記貫通孔よりも大径に形成されて前記螺子溝に螺合する第1のリングと、前記壁の他方側に配置され、外径が前記貫通孔よりも大径に形成され、前記本体部に設けられた第2のリングと、前記壁と前記第1のリングとの間の前記本体部の円周面に設置され、外径が前記貫通孔よりも大径に形成され、前記壁と前記第1のリングとの間で挟持されて前記壁と前記第1のリングの間で圧縮されることで、内周部が径方向内側へ縮径して内径が減少する第1のパッキンと、前記壁と前記第2のリングとの間の前記第2のリングの平行面に設置され、外径が前記貫通孔よりも大径に形成され、前記壁と前記第2のリングとの間で挟持されて前記壁と前記第2のリングの間で圧縮され、前記第2のリングと前記壁と前記第2のリングとの隙間を密封する第2のパッキンと、を有する。
【0009】
この発明によれば、第1のリングと壁の間で第1のパッキンを挟持することで止水するため、第1のパッキンを表裏2方向からリングで挟持する必要がなく、リングの共回りなどの問題が起こりにくい。さらに、円周面が第1のパッキンの取り付け位置となるため、リングと第1のパッキンとの挿入位置の測定や第1のパッキン締付量の測定などの作業を実施しなくても良い。また、第1のパッキンの内周部が径方向内側へ縮径して第1のパッキンが本体部に対して円周面に負荷をかけられて密封性が向上するため、建物壁と壁貫通部材との間を容易に止水できる。
【0010】
加えて、建物壁の貫通孔と壁貫通部材との間の開口に、例えば、ペースト状のシーリング材(コーキング材)を充填して、建物壁と壁貫通部材との間の止水性を確保する必要がない。これにより、建物壁の貫通孔に壁貫通部材を固定する作業に熟練を必要とすることなく、建物壁と壁貫通部材との間を容易に止水できる。
【0011】
第1のパッキンに加え、第2のパッキンを備えることにより、第2のリングと壁との隙間を密封することができるので、壁の貫通孔の一側と他側にそれぞれ止水機能を設けた2重止水構造を実現でき、止水性能が一層向上する。
第2のパッキンにおいても、第2のリングと壁の間で第2のパッキンを挟持することで止水するため、第2のパッキンを表裏2方向からリングで挟持する必要がなく、リングの共回りなどの問題が起こりにくい。
【0012】
<3>上記<1>または<2>に係る壁貫通部材では、前記第2のリングは、前記螺子溝に螺合してもよい。
【0013】
<4>上記<1>または<2>に係る壁貫通部材では、前記第2のリングは、前記本体部と一体であってもよい。
【0014】
この発明によれば、第2のリングを本体部に締め込む工程を介さずに建物壁と壁貫通部材との間を容易に止水できる。
【0015】
<5>上記<1>または<2>に係る壁貫通部材では、前記第1のリングと前記第2のリングは、前記本体部の螺子溝に螺合する螺子溝を有し、各々自身の内径より大きい外径を有してもよい。
【0016】
<6>上記<1>または<2>に係る壁貫通部材では、前記第2のリングは、前記壁に平行な平行面を有し、前記第2のリングは、前記平行面に前記貫通孔の内径より小径である突起部を有してもよい。
【0017】
このように、第2のリングの平行面を建物壁の壁面に対して平行とした。また、第2のリングに貫通孔の内径より小径とした突起部を設けた。よって、第2のリングの平行面を壁面に接触させた状態において突起部を貫通孔に挿入できる。これにより、本体部を貫通孔に挿通した際に、第2のリングの平行面を壁面に接触させて本体部を軸線方向において容易に位置決めできる。また、突起部を貫通孔に挿入することにより、本体部を突起部により貫通孔に沿って容易に位置決めできる。したがって、例えば、第1のリングで第1のパッキンを圧縮する作業を容易に進めることができる。
【0018】
<7>上記<1>または<2>に係る壁貫通部材では、前記第1のパッキンの内径が、前記本体部の円周面の外径より0.8倍以上であり、前記第1のパッキンの最小厚みが、前記第1のパッキンと接触する壁面の最大凹凸高さ以上であってもよい。
【0019】
<8>上記<2>に係る壁貫通部材では、前記第2のパッキンの内径が、前記貫通孔の内径より小径な突起部の外径より0.8倍以上であり、前記第2のパッキンの最小厚みが、前記第2のパッキンと接触する壁面の最大凹凸高さ以上であってもよい。
【0020】
ここで、パッキンの内径を円周面の外径の0.8倍未満とした場合、円周面にパッキンを嵌めることが困難になり、施工に手間がかかったり、本体部の外周面にパッキンの内周面が引っ掛かってパッキンが内径から破損したりするおそれがある。
そこで、パッキンの内径を円周面の外径の0.8倍以上とし、施工性を高めること等ができる。
【0021】
また、パッキンの厚みがパッキンと接触する壁面の最大凹凸高さの未満の場合、パッキンの厚みが小さすぎる。このため、例えば第1のリングを螺子溝に螺合してパッキンを圧縮する際に、壁面の凹凸に沿ってパッキンを押し付けることが難しい。
そこで、パッキンの厚みをパッキンと接触する壁面の最大凹凸高さ以上とした。これにより、第1のリングを螺子溝に螺合してパッキンを圧縮する際に、壁面の凹凸に沿ってパッキンを適切に押し付けることができる。
【0022】
パッキンを介して本体部を貫通孔に挿入する部位を円周面とし、円周面を螺子溝が設けられていない部位とした。これにより、例えば円周面を、螺子溝を加工する際の逃げ加工部とすることができ、本体部に螺子溝を適切に加工できる。また、第1のリングを螺子溝に螺合したとき、第1のリングで締め付けてゆくと第1のパッキンが圧縮されて、第1のパッキン内周部が径方向内側へ縮径することにより、円周面の全域に適切に押し付けることができる。また、円周面に螺子溝を設けないことで密封性が良くなる。
【0023】
<9>上記<2>に係る壁貫通部材において、前記第2のリングは、前記壁に平行な平行面を有し、前記第2のリングは、前記平行面に前記貫通孔の内径より小径である突起部を有し、前記突起部の突出長さは前記第2のパッキンの厚さ以上である、構成を採用してもよい。
【0024】
<10>上記<1>または<2>に係る壁貫通部材において、前記本体部の前記円周面は、前記第1のリングおよび前記第2のリングと螺合しない面であり、前記円周面の外径は、前記本体部の前記螺子溝における雄螺子部分の外径以下である、構成を採用してもよい。
【0025】
<11>本発明の一態様に係る壁貫通部材の固定構造は、<1>または<2>に記載の壁貫通部材を含む。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、建物壁と壁貫通部材との間を容易に止水できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1実施形態に係る壁貫通部材を示す側面図を中心に示し、かつ、その側面図の左右に正面図および背面図をそれぞれ示した図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る壁貫通部材を建物壁に固定した状態を示す側面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る建物壁に固定した壁貫通部材を矢印II方向からみた正面図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る第1のリングを矢印II方向からみた正面図を上方に示し、かつ、その正面図の下方に側面図を示した図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る第1のパッキンを矢印II方向からみた正面図を上方に示し、かつ、その正面図の下方に側面図を示した図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る第2のリングを矢印II方向からみた正面図を下方に示し、かつ、その正面図の上方に側面図、背面図をこの順に示した図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る壁貫通部材を示す側面図を中心に示し、かつ、その側面図の左右に正面図および背面図をそれぞれ示した図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る壁貫通部材を建物壁に固定した状態を示す側面図である。
図9】(A)は本発明の第3実施形態に係る壁貫通部材を建物壁に固定した状態を示す側面図であり、(B)は第3実施形態に用いる第2のパッキンを示す図である。
図10】本発明の第4実施形態に係る壁貫通部材を建物壁に固定した状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図1から図6を参照しつつ本発明の一実施形態に係る壁貫通部材及び壁貫通部材の固定構造について説明する。
[第1実施形態]
図1図3は壁100に形成された貫通孔102に設置されるとともに螺子溝17、螺子溝15および円周面16を有し、螺子溝17、螺子溝15と円周面16が異なる径である本体部10を備える壁貫通部材1を示す側面図である。壁100は、例えば屋外103側の面100aに凹部105を有する。凹部105は、貫通孔102に対して同軸上に形成されている。凹部105は、内周面106と、底面107と、を有する。内周面106は、円形に形成されている。底面107は、壁100の屋外103側の面100aに対して平行に形成されている。
なお、第1実施形態では、壁100を建物壁100ということがある。また、底面107を建物壁100の外壁面(壁面)107ということがある。さらに、建物壁100の右側を屋外103、建物壁100の左側を室内104として説明する。
【0029】
壁貫通部材1は、壁100の一方側に配置され、外径が貫通孔102よりも大径に形成されて螺子溝15に螺合する第1のリング3と、壁100の他方側に配置され、外径が貫通孔102よりも大径に形成され、本体部10の螺子溝17に螺合する第2のリング5を有する。また、壁貫通部材1は筒部材2を備える。筒部材2は、管状に形成されている。筒部材2は、建物壁100の貫通孔102を貫通する管継手である。筒部材2は、例えば青銅や真鍮の金属、あるいは樹脂等で形成されている。筒部材2は、本体部10と、屈曲部11と、ワンタッチ継手12と、端部13と、を有する。
【0030】
本体部10は、建物壁100の貫通孔102より小径に形成されている。本体部10は、貫通孔102に沿って直線状に延びている。本体部10は、外周(表面)に設けられた第2螺子溝(螺子溝、雄螺子溝)17を有する。本体部10の左端部(室内104側の端部)には、例えば屈曲部11が一体に設けられている。屈曲部11は、例えば90°に屈曲されている。なお、屈曲部11は、90°に屈曲されていなくてもよく、例えば、45°に屈曲されていてもよい。
【0031】
屈曲部11の先端には、例えばワンタッチ継手12が設けられている。ワンタッチ継手12は、一般に知られている継手である。なお、屈曲部11の先端にはワンタッチ継手12以外の継手、配管等が取り付けられてもよい。すなわち、第1実施形態では、L字形状の筒部材2を例に説明するが、筒部材2を直線形状や他の形状としてもよい。言い換えると、屈曲部11がなくてもよい。
【0032】
また、本体部10の右端部(屋外103側の端部)には端部13が一体に設けられている。端部13は、本体部10の右端部から屋外103側に直線状に延びている。端部13の軸線は、本体部10の軸線上に配置されている。端部13は、外周(表面)に設けられた第1螺子溝(螺子溝、雄螺子溝)15を有する。第1螺子溝15と第2螺子溝17は、例えば、同一方向の螺旋をなしているが、反対方向の螺旋をなしていてもよい。
さらに、端部13は、本体部10側の接続部に円周面16が設けられている。円周面16は、第1螺子溝15が設けられていない円周状の面である。
以下、端部13の軸線及び本体部10の軸線20を「軸線20」と略記し、端部13の径方向及び本体部10の径方向を「径方向」と略記することがある。
【0033】
端部13には第1のリング3が配置される。第1のリング3は、例えば筒部材2と同様に、青銅や真鍮の金属、あるいは樹脂等で環状に形成されている。図4は、第1のリング3を図2の矢印II方向からみた正面図である。第1のリング3は、本体部10の螺子溝15と螺合可能な雌螺子24を有し、第1のリングは、第1のリングの内径より大きい外径を有する。第1のリング3の雌螺子24は、端部13の第1螺子溝15に螺合する。また、第1のリング3は、第1のリング3の内径より1.1倍以上かつ6倍以下の外径を有することが好ましい。6倍を超える大きにすると製造コストが不要に高くなる。すなわち、第1のリング3は自身の内径より大きい外径を有する。
【0034】
壁貫通部材1は、第1のパッキン4を有する。第1のパッキン4は、壁100と第1のリング3との間の円周面16に設置されている。第1のパッキン4の外径は、貫通孔102よりも大径に形成されている。第1のパッキン4は、壁100と第1のリング3との間で挟持されて第2のリング5を回転することで壁100と第1のリング3の間で圧縮されることで、内周部が径方向内側へ縮径して内径が減少する。具体的に、第1のパッキン4は、円周面16に嵌め込まれるように設置される。第1のパッキン4は、環状に形成されている。第1のパッキン4は、例えばエチレンプロピレンジエンジエンゴム(EPDM)等の弾性材料で形成されている。
第1のパッキン4は、第1のリング3と本体部10との間に配置される。また、第1のパッキン4は円周面16に対して径方向から負荷をかけるように締め付ける。よって、第1のパッキン4の内周部が径方向内側へ縮径する。これにより密封性が良くなる。
【0035】
図5は、第1のパッキン4を図2の矢印II方向からみた正面図である。第1のパッキン4の内径は、円周面16の外径より0.8倍以上である。なお、ここでの第1のパッキン4の内径とは、第1のパッキン4を圧縮変形させていない状態(無負荷状態)での内径を意味する。すなわち、第1のパッキン4の内径とは、第1のパッキン4が、円周面16に対して締め付けられていない状態を前提としたときの大きさである。第1のパッキン4の内径が、円周面16の外径の1倍よりも大きい方が好ましい。円周面16の外径は、前記本体部の螺子溝における雄螺子部分の外径以下である。
また、壁100に接する面の第1のパッキン4の最小厚みが第1のパッキン4と接触する外壁面(壁面)107の最大凹凸高さ以上である。ここでの第1のパッキン4の厚みとは、第1のパッキン4を圧縮変形させていない状態(無負荷状態)での厚みを意味する。すなわち、第1のパッキン4の厚みとは、第1のパッキン4が、円周面16に対して締め付けられていない状態を前提としたときの大きさである。
外壁面107は、第1のパッキン4(具体的には、第1のパッキン4の側面4a)と接触する壁面であり、本実施形態では、凹部105の底面107である。外壁面107の最大凹凸高さは、例えば、接触式の表面粗さ計や、レーザーなどの非接触式の3D形状測定機などによって測定することができる。なお例えば、最大凹凸高さは1mmであり、第1のパッキン4の厚みは5mmである。また、壁100に接する面の第1のパッキン4の最小厚みは、第1のパッキン4と接触する外壁面(壁面)107の最大凹凸高さの1倍以上5倍以下とすることがより好ましい。5倍を超えて大きくすると製造コストが不要に上昇する。
【0036】
図2に示すように、建物壁100は、第1のリング3と反対側に内壁面(壁の面、壁面)100bを有する。すなわち、内壁面100bは、第1のリング3と反対側の建物壁100の面である。また、本体部10には第2のリング5が螺合されている。第2のリング5は、建物壁100の内壁面100bに配置されている。図6は、第2のリング5を図2の矢印II方向からみた正面図である。第2のリング5は、本体部10の螺子溝17と螺合可能な雌螺子27を有する。第2のリング5の雌螺子27は、第2螺子溝17に螺合する。
【0037】
第2のリング5は、建物壁100に平行な平行面31を有し、かつ第2のリング5は、平行面31に貫通孔102の内径より小径である突起部32を有する。平行面31は、建物壁100の内壁面100bと平行に配置されている。平行面31は、内壁面100bと面接触する。平行面31には突起部32が一体に設けられている。突起部32は、平行面31から軸線20と同軸上に貫通孔102へ向けて突出されている。突起部32は、環状に形成されている。突起部32の内周面には、第2のリング5の雌螺子27が連続して設けられている。突起部32の外周面は、貫通孔102の内径より小径に形成されている。よって、突起部32は、貫通孔102に挿入可能である。
【0038】
つぎに、壁貫通部材1を建物壁100に固定する手順(施工方法)について説明する。 まず、本体部10に設けられた第2螺子溝17に第2のリング5の雌螺子27を螺合する。第2螺子溝17に螺合した第2のリング5を回転して屈曲部11側に配置する。第2のリング5を屈曲部11側に配置した後、筒部材2を室内104側から建物壁100の貫通孔102に挿入する。第2のリング5の平行面31が建物壁100の内壁面100bに接触するとともに、第2のリング5の突起部32が貫通孔102に挿入する。
【0039】
筒部材2を貫通孔102に貫通した状態において、筒部材2の端部13が貫通孔102から屋外103に突出する。貫通孔102から突出した端部13に環状の第1のパッキン4を嵌合する。端部13に環状の第1のパッキン4を嵌合した後、端部13に設けられた第1螺子溝15に第1のリング3の雌螺子24を螺合する。
【0040】
第1螺子溝15に螺合した第1のリング3を回転して第1のパッキン4の側に移動する。第1のリング3と外壁面107との間に第1のパッキン4を挟持して圧縮する。室内104側から第2のリング5を抑えながら第1のリング3及び外壁面107で第1のパッキン4を圧縮することにより、第1のパッキン4が径方向に縮径し、筒部材2を屋外103側に移動する引張力が発生する。よって、第2のリング5の平行面31が建物壁100の内壁面100bに押し付けられる。これにより、壁貫通部材1を第1のリング3及び第2のリング5で建物壁100に固定できる。また、第1のリング3で第1のパッキン4を圧縮する。なおこのとき、円周面16に押し付けるように第1のパッキン4の内周部4bが径方向内側へ膨出してもよい。これにより、壁貫通部材1を建物壁100に固定する手順が完了し、壁貫通部材1の固定構造が形成される。なお第1のリング3をねじ込むことで第1のパッキン4を圧縮することに代えて、第2のリング5をねじ込んで(建物壁100の反力を利用して)第1のパッキン4を圧縮してもよい。
【0041】
以上説明した第1実施形態の壁貫通部材1によれば、第1のリング3と壁100の間で第1のパッキン4を挟持することで止水するため、第1のパッキン4を表裏2方向からリングで挟持する必要がなく、リングの共回りなどの問題が起こらない。さらに、円周面16が第1のパッキン4の取り付け位置となるため、リングと第1のパッキン4との挿入位置の測定や第1のパッキン4締付量の測定などの作業を実施しなくても良い。また、第1のパッキン4の内周部が径方向内側へ縮径して第1のパッキン4が本体部10に対して径方向に負荷をかけることで密封性が良くなるため、建物壁100と壁貫通部材1との間を容易に止水できる。
【0042】
加えて、建物壁100の貫通孔102と壁貫通部材1との間の開口に、ペースト状のシーリング材(コーキング材)を充填して、建物壁100と壁貫通部材1との間の止水性を確保する必要がない。これにより、建物壁100の貫通孔102に壁貫通部材1を固定する作業に熟練を必要とすることなく、建物壁100と壁貫通部材1との間を容易に止水できる。
【0043】
ここで、第1のパッキン4の内径を円周面16の外径の0.8倍以上とした理由について詳しく説明する。
すなわち、第1のパッキン4の内径が円周面16の外径の0.8倍未満の場合、筒部材2の端部13に第1のパッキン4を嵌めることが困難になり、施工に手間がかかったり、端部13の外周面に第1のパッキン4の内周面が引っ掛かって第1のパッキン4が内径から破損したりするおそれがある。
そこで、第1のパッキン4の内径を円周面16の外径の0.8倍以上とした。これにより、施工性を高めること等ができる。
【0044】
さらに、第1のパッキン4の最小厚みを第1のパッキン4と接触する壁面107の最大凹凸高さ以上とした理由について詳しく説明する。
すなわち、第1のパッキン4の厚みが外壁面107の最大凹凸高さの1倍未満の場合、第1のパッキン4の厚みが小さすぎる。このため、例えば第1のリング3を第1螺子溝15に螺合して第1のパッキン4を圧縮する際に、外壁面107の最大凹凸に満たないため止水できない場合がある。
一方、第1のパッキン4の厚みが外壁面107の最大凹凸高さより大きく上回る場合、第1のパッキン4の製造が困難で、外壁面107からの第1のパッキン4の突出量が大きくなることで壁貫通部材1の見栄えが悪くなる。
そこで、第1のパッキン4の最小厚みを第1のパッキン4と接触する壁面107の最大凹凸高さ以上とした。また、壁100に接する面の第1のパッキン4の最小厚みは、第1のパッキン4と接触する外壁面(壁面)107の最大凹凸高さの1倍以上5倍以下とすることがより好ましい。よって、第1のパッキン4の厚みを好適にできる。これにより、第1のリング3を第1螺子溝15に螺合して第1のパッキン4を圧縮する際に、外壁面107の凹凸に沿って第1のパッキン4を適切に押し付けることができる。
【0045】
加えて、第1のリング3の外径と内径の関係について説明する。
すなわち、第1のリング3の外径を第1のリング3の内径の1.1倍未満の外径とする場合、第1のリング3を第1のパッキン4に接触させる面積を十分に確保することが難しい。このため、例えば第1のリング3を第1螺子溝15に螺合して第1のパッキン4を圧縮する際に、接触面積が小さいので、第1のパッキン4が捻じれる可能性がある。これにより、第1のパッキン4を第1のリング3で適切に圧縮することが難しい。また、第1のパッキン4の外周部が第1のリング3から径方向外側に露出して損傷、劣化するおそれがある。
一方、第1のリング3の外径を第1のリング3の内径の6倍を上回る外径とする場合、第1のリング3の外径が大きすぎる。このため、例えば壁貫通部材1を設置する際に、用途の制約を多く受けることや、取扱いの観点から好ましくないことが考えられる。
第1のリング3は第1のリング3の内径の1.1倍以上かつ6倍以下の外径を有することが好ましい。よって、第1のリング3を好適な大きさにできる。これにより、第1のリング3を第1螺子溝15に螺合することにより第1のパッキン4を第1のリング3で適切に圧縮できる。また、第1のパッキン4の外周部が第1のリング3から径方向外側に露出することを防止できる。さらに、壁貫通部材1の用途の制限を少なくでき、取扱いを容易にできる。
【0046】
さらに、第2のリング5は、壁100に平行な平行面31を有し、かつ平行面31に貫通孔102の内径より小径である突起部32を有する。よって、第2のリング5の平行面31を内壁面100bに接触させた状態において突起部32を貫通孔102に挿入できる。これにより、筒部材2を貫通孔102に挿通した際に、第2のリング5の平行面31を内壁面100bに接触させて筒部材2を軸線20方向において容易に位置決めできる。また、突起部32を貫通孔102に挿入することにより、筒部材2を突起部32により貫通孔102に沿って容易に位置決めできる。したがって、第1のリング3で第1のパッキン4を圧縮する作業を容易にできる。あるいは、第2のリング5をねじ込むことで第1のパッキン4を圧縮することに代えてもよい。
【0047】
また、端部13が本体部10に接続する部位を円周面16とし、円周面16を螺子溝15、17が設けられていない部位とした。よって、円周面16に第1螺子溝15を加工する必要がない。円周面16の外径は螺子溝15、17の外径以下である。これにより、例えば円周面16を、第1螺子溝15を加工する際の逃げ加工部とすることができる。
また、端部13が本体部10に接続する部位を円周面16とすることにより、例えば、円周面16に代えて螺子溝15、17が設けられている場合に比べて、第1のパッキン4を本体部10の外周面(つまり、円周面16)の全域に適切に押し付けることができる。
【0048】
また、第1実施形態の壁貫通部材1の固定構造によれば、上述で述べた壁貫通部材1を含む。これにより、第1のリング3と外壁面107の間で第1のパッキン4を圧縮するようにした。よって、第1のリング3と建物壁100との間を第1のパッキン4で容易に止水し、さらに、円周面16が第1のパッキン4の取り付け位置となり、パッキン4の内周部が径方向内側へ縮径して第1のパッキン4が本体部10に対して径方向に負荷をかけることで密封性が良くなるため、第1のリング3と本体部10の間を容易に止水できる。
【0049】
加えて、建物壁100の貫通孔102と壁貫通部材1との間の開口に、ペースト状のシーリング材(コーキング材)を充填して、建物壁100と壁貫通部材1との間の止水性を確保する必要がない。これにより、建物壁100の貫通孔102に壁貫通部材1を固定する作業に熟練を必要とすることなく、建物壁100と壁貫通部材1との間を容易に止水できる。
【0050】
つぎに、第2実施形態の壁貫通部材及び壁貫通部材の固定構造を図7図8に基づいて説明する。なお、第2実施形態の壁貫通部材及び壁貫通部材の固定構造において第1実施形態の壁貫通部材及び壁貫通部材の固定構造と同一、類似の構成については同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
【0051】
[第2実施形態]
図7図8に示すように、本体部56が外周部に少なくとも1種類のフランジ部200(第2のリング)を備えている。フランジ部200は第2のリング5の代わりである。その他の構成は第1実施形態の壁貫通部材1と同様である。
【0052】
筒部材52は、第1実施形態の本体部10を本体部56に代えたものである。本体部56は、建物壁100の貫通孔102より小径に形成されている。本体部56は、貫通孔102に沿って直線状に延びている。本体部56の外周(表面)は、円形状に形成されている。すなわち、本体部56は、第1実施形態の本体部10から第2螺子溝17を除いたものである。
【0053】
フランジ部200は、本体部56の外周から径方向外側に向けて拡径するように一体に設けられている。フランジ部200は、建物壁100の内壁面100bに配置される。フランジ部200の外径は、第1実施形態の第2のリング5の外径と同様に形成されている。また、フランジ部200は、第1実施形態の第2のリング5と同様に、平行面201と、突起部202と、を有する。
【0054】
よって、フランジ部200の平行面201を内壁面100bに接触させた状態において突起部202を貫通孔102に挿入できる。これにより、筒部材52を貫通孔102に挿通した際に、フランジ部200の平行面201を内壁面100bに接触させて筒部材52を軸線20方向において容易に位置決めできる。また、突起部202を貫通孔102に挿入することにより、筒部材52を突起部202により貫通孔102に沿って容易に位置決めできる。したがって、第1のリング3で第1のパッキン4を圧縮する作業を容易にできる。
【0055】
以上説明した第2実施形態の壁貫通部材50、および、壁貫通部材50の固定構造によれば、第1実施形態の壁貫通部材1と同様に、第1のリング3(すなわち、壁貫通部材1)と建物壁100との間を第1のパッキン4で容易に止水できる。さらに、第1のリング3と筒部材52(具体的には、円周面16)との間を第1のパッキン4で容易に止水できる。これにより、建物壁100と壁貫通部材50との間を容易に止水できる。
加えて、第2実施形態の壁貫通部材50、および、壁貫通部材50の固定構造によれば、第1実施形態の壁貫通部材1、および、壁貫通部材50の固定構造における他の作用、効果と同様の作用、効果を得ることができる。
【0056】
[第3実施形態]
図2に示す第1実施形態の壁貫通部材の取付構造に替えて図9(A)に示す第3実施形態の壁貫通部材の取付構造を採用することができる。
第3実施形態に係る壁貫通部材の取付構造において、先の第1実施形態に係る壁貫通部材の取付構造と異なる点は、壁100の内壁面と第2のリング5の間に第2のパッキン60を設けた点である。
第2のパッキン60は先に説明した第1のパッキン4と同等の材料からなるリング状(図9(B)参照)に形成されている。図9に示す例において、第2のパッキン60の外径は、第2のリング5の外径とほぼ等しい外径に形成され、第2のパッキン60の内径は、第2のリング5に形成されている突起部32の外径とほぼ等しく形成されている。
【0057】
第2のパッキン60は、突起部32に外挿されるとともに、壁100の内壁面100bと第2のリング5の平行面31との間に挟まれた状態で設けられている。第2のパッキン60は、第2のリング5の平行面31により内壁面100bに押し付けられている。このため、第2のリング5の平行面31と内壁面100bの隙間が第2のパッキン60により密閉され、止水されている。よって、突起部32の突出長は、第2のパッキン60の厚さ以上である。
【0058】
先の第1実施形態と同様に第1のパッキン4を設けた上に第2のパッキン60を設けているので、第3実施形態の構造において止水性は更に向上している。例えば、屋外103側の第1のパッキン4による止水部分が仮に突破された場合であっても、第2のパッキン60で止水する構造を有するため、ダブルシール構造となり、より優れた止水性を発揮する。
また、図9に示す構造では、第2のリングに設けた突起部32の高さ(突起部32の突出方向長さ)が第1実施形態の構造よりも高く(長く)形成されている。
第1実施形態において、図2に示すように平行面31から右方向に(壁側に)突出する突起部32の長さと、第3実施形態において、第2のパッキン60の右側面から右方向(壁側に)に突出する突起部32の長さが同程度と仮定すると、第2のパッキン60の厚み分、第3実施形態の突起部32の方が長く形成されている。
その他構造は先の第1実施形態の構造と同等であるため、第3実施形態の構造であっても、先の第1実施形態と同等の作用効果を得ることができる上に、上述の如くより優れた止水性を得ることができる。
【0059】
なお、第2のリング5と内壁面100bとの間で第2のパッキン60を挟持して止水するので、従来技術のようにパッキンを表裏2方向からリングで挟持する必要がない。パッキンを表裏両面からリングで挟持すると共回りの問題を生じるおそれがあり、確実にパッキンを挟持したのか否か、判断をし難くなり、作業に熟練を要することとなる。第3実施形態の構造において、第2のパッキン60を挟持する部分の止水構造を実現する場合、共回りの問題は生じないので、確実な止水構造を実現できる。
第1実施形態において説明したように第1のパッキン4の部分でも確実な止水構造とできるので、第3実施形態の構造では、確実な2重止水構造を提供できる。
第2のパッキン60においても、先の第1のパッキン4と同等の技術思想でパッキンの厚みをパッキンと接触する壁面の最大凹凸高さの1倍以上、5倍以下として安全性を高めることをコスト上昇を抑えつつ実現できる。
【0060】
図9に示す構成を採用する場合、図示したように第2のリング5を第2螺子溝17の室内側端部まで移動させておき、第2のリング5の位置決めを行った後、第2のパッキン60を第2のリング5に形成されている突起部32の外径に装着し、第2のリング5の平行面31側に添わせる。この状態で第1のリング3と第1のパッキン4を本体部10から外しておき、室内側から壁100の貫通孔102に本体部10の先端側を挿通する。本体部10の先端が壁100の室外側に突出したならば、第1のパッキン4を本体部10に装着し、第1のリング3を第1螺子溝15に螺合して締め付ける。この締め付け力により第1のパッキン4と第2のパッキン60に適切な圧縮力を与えることにより、優れた止水構造を得ることができる。
【0061】
[第4実施形態]
図8に示す第2実施形態の壁貫通部材の取付構造に替えて図10に示す第4実施形態の壁貫通部材の取付構造を採用することができる。
第4実施形態に係る壁貫通部材の取付構造において、先の第2実施形態に係る壁貫通部材の取付構造と異なる点は、壁100の内壁面と第2のリング5の間に第2のパッキン60を設けた点である。
第2のパッキン60は先に説明した第1のパッキン4と同等の材料からなるリング状に形成されている。図10に示す例において第2のパッキン60の外径は、第2のリング5の外径とほぼ等しい外径に形成され、第2のパッキン60の内径は、第2のリング5に形成されている突起部32の外径とほぼ等しく形成されている。
【0062】
第2のパッキン60は、突起部202に外挿されるとともに、壁100の内壁面100bと第2のリング200の平行面201との間に挟まれた状態で設けられている。第2のパッキン60は、第2のリング200の平行面201により内壁面100bに押し付けられている。このため、第2のリング200の平行面201と内壁面100bの隙間が第2のパッキン60により密閉され、止水されている。第4実施形態の突起部202が第2実施形態の突起部202より長く形成されている点は、第1実施形態の突起部32と第3実施形態の突起部32の対比と同様である。
【0063】
先の第2実施形態と同様に第1のパッキン4を設けた上に第2のパッキン60を設けているので、第4実施形態の構造において止水性は更に向上している。例えば、屋外103側の第1のパッキン4による止水部分が仮に突破された場合であっても、第2のパッキン60で止水する構造を有するため、ダブルシール構造となり、より優れた止水性を発揮する。
【0064】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0065】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、本実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0066】
1,50…壁貫通部材、2,52…筒部材、3…第1のリング、
4…第1のパッキン、5…第2のリング、10,56…本体部、13…端部、
15…第1螺子溝(螺子溝)、16…円周面、17…第2螺子溝(螺子溝)、
31…平行面、32…突起部、60…第2のパッキン、100…建物壁(壁)、
100b…内壁面(第1のリングと反対側の壁の面、壁面)、102…貫通孔、
107…外壁面(壁面)、200…フランジ部(第2のリング)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10